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研究報告書 - 日本音声言語医学会

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研究報告書 - 日本音声言語医学会
平成
日本音声言語医学会理事長
22
年
7
月
30
日
殿
所属施設・部局
ATR-Promotions, BAIC
申 請 者 (代 表 者 )
高野
佐代子
( 署 名・捺 印 )
所属部局責任者
正木
信夫
( 署 名・捺 印 )
研究報告書
プロジェクトの 名 称 :
運 動 機 能 の 解 明 を 目 指 し た 口 腔 咽 頭 領 域 の 高 精 細 MRIと webに よ る わ か り や す い 資 料 公 開
1.
実施結果の概要
我 々 は MRI( Magnetic Resonance Imaging: 磁 気 共 鳴 画 像 装 置 ) を 用 い て 口 腔 部 位 の 形 態 学
的 お よ び 運 動 学 的 な 研 究 を 行 っ て い る 。本 助 成 金 に お け る 研 究 で は さ ま ざ ま な MRI撮 像 方 法
や工学的な画像処理技術を利用し、口腔部位の嚥下や呼吸、発声などの運動機能の解明に
役 立 つ MRI解 剖 の 資 料 を 作 成 す る 。具 体 的 に は (1) 3T-MRIを 用 い て 生 体 の 口 腔 咽 頭 領 域 の 筋
肉 走 行 や 血 管 な ど の 軟 組 織 の 高 精 細 MRIを 各 種 撮 像 法 で 撮 像 し 、(2) 一 目 で わ か る 資 料 の 作
成 と し て MRI-RGB法 を 開 発 し 、 骨 や 組 織 の カ ラ ー 化 を 試 み 、 (3) 得 ら れ た 資 料 を web上 で 使
いやすいインターフェイスをつけた上で資料を公開する。
( 1 ) に つ い て は MRIの 代 表 的 な 撮 像 パ ラ メ ー タ 設 定 で あ る 4つ の 撮 像 法 を 用 い て 、 口 腔
領域について矢状面、冠状面、水平面の各方向からの撮像を行った。ひとつの撮像法につ
き 、FOV=256 mm x 256 mm、厚 さ 4 mm、21枚 の デ ー タ を 得 た 。 各 撮 像 法 を 用 い る こ と に よ り 、
た と え ば 歯 列 の 可 視 化 、 血 管 、 脂 肪 組 織 間 の 違 い が そ れ ぞ れ MRI上 の 輝 度 値 で 表 現 さ れ る 。
(2)得 ら れ た 3種 の 異 な る 撮 像 法 の MRIを カ ラ ー チ ャ ン ネ ル の 赤 、緑 、青 に 割 り 当 て 、口 腔 部
位 の MRI-RGB画 像 を 作 成 し た 。さ ら に 別 の 撮 像 法 の デ ー タ を 元 に 歯 列 を 抜 き 出 し 、空 気 と の
境 界 の エ ッ ジ 抽 出 を 行 っ た 。 元 画 像 や MRI- RGB画 像 に 対 し 、 歯 列 の 有 無 、 口 腔 部 位 の 切 り
出 し な ど の 操 作 を 行 い 、 計 1000枚 以 上 の デ ー タ を 作 成 し た 。 (3) に つ い て は 、
http://www.baic.jp/people/takano/research/onseiG_MRI-RGB/index.htmlに 使 い や す い
イ ン タ ー フ ェ イ ス を つ け た 上 で そ の デ ー タ を ウ ェ ブ 上 に ア ッ プ す る 。 2010年 10月 頃 に 公 開
予定である。
助 成 金 に つ い て は MRI撮 像 16万 8000円 x2コ マ 、平 成 22年 度 お よ び 平 成 23年 度 の 音 声 言 語 医
学会研究発表会に関わる参加費および旅費等の支出に利用した。
1
2.本研究に関わる将来展望
研究成果とそのインパクト
本 研 究 は 図 1 に 示 す よ う に (1) 口 腔 咽 頭 部 位 の MRI撮 像 、 (2) 画 像 処 理 を 用 い た 歯 列 と 組 織
の 抽 出 、お よ び MRI-RGB合 成 図 の 作 成 、(3) 解 剖 学 的 な MRIデ ー タ の webに よ る 公 開 か ら な る 。
MRIを 元 に 画 像 処 理 や 合 成 さ れ た MRI-RGB画 像 は 、 骨 や 各 組 織 の 違 い な ど が 明 瞭 に な り 、
初学者でも比較的容易に生体における体内の様子を観察できるようになった。これにより
垂直舌筋を除くほぼすべての内舌筋、外舌筋および各種の顎筋の走行が再確認された。
さ ら に 一 般 の 研 究 者 が 利 用 で き る MRIの 基 礎 デ ー タ と し て 公 開 す る こ と に よ り 、口 腔 部 位
の解剖学に関連する基礎研究の門戸を広げることができると考えている。発話や嚥下、呼
吸など口腔における運動機能に関わる研究をしていても、体内の様子は観察できないため
に、筋肉活動などの運動の起源にまで踏み込めなかった面がある。本研究で得た基礎デー
タ を も と に 、MRIを 用 い て 発 話 や 嚥 下 、呼 吸 な ど の 舌 変 形 が 生 じ る 際 の 筋 肉 な ど の 解 剖 学 お
よ び 形 態 学 的 な 研 究 が 遂 行 し や す く な っ た と 考 え ら れ る 。我 々 の 研 究 デ ー タ の 公 開 に よ り 、
口 腔 咽 頭 領 域 に 関 わ る MRI技 術 者 、医 者 、聴 覚 言 語 士 な ど の さ ま ざ ま な 分 野 を 通 し た 全 体 的
の研究レベル向上が期待できる。
3. web上での公開
2. 一目でわかる資料の作成
および各部位の撮像
1. MRI撮像パラメータの整理
および各部位の撮像
舌筋
口唇
喉頭
口腔部位での各撮像法の比較
骨の可視化
三次元化
連続断面での比較
(筋肉走行の追跡)
組織のカラー化
ラベリング
各器官名へのアクセス
図1.本研究の枠組みと課題
[方 法 と 結 果 ]
(1) MRIの 撮 像 : 成 人 健 常 者 1名 ( 59歳 ) を 被 験 者 と し て MAGNETOM Trio, A Tim System (3
T)(Siemens社 製 )を 用 い て 仰 臥 位 の 安 静 状 態 で 撮 像 を 行 っ た 。MRIの 撮 像 は 骨 、筋 、結 合 織 、
脂 肪 等 を 考 慮 し 、 そ れ ぞ れ を 最 大 限 に 区 別 で き る 撮 像 法 の セ ッ ト と し て 4種 類 ( FE(in),
FE(op), SE(T1w)お よ び SE(PDw)) を 用 い て 口 腔 咽 頭 領 域 の 撮 像 範 囲 (Field of View: FOV)
を 高 解 像 度 の MRI撮 像 (FOV 25.6 x 25.6, 画 像 マ ト リ ッ ク ス 512 x 512 pixel、 厚 さ 4 mm)
を 行 っ た 。 こ れ に よ り 得 ら れ た 画 像 の う ち 矢 状 正 中 面 に つ い て 図 2に 示 す 。
(a) FE(in)
(b) FE(op)
(c) SE(PDw)
(d) SE(T1w)
図 2 . 本 研 究 で 得 た 4種 類 の 撮 像 法 に よ る 矢 状 正 中 面 の 口 腔 部 位 の MRI
2
(2) 画 像 処 理 : MRI-RGB合 成 画 像 の 作 成 に 際 し て 、図 3 に 示 す よ う に 異 な る 3種 の 撮 像 法 を
用 い て 、 赤 (red: R)に は FE(op)、 緑 (green: G)に は SE(PDw)、 青 (blue: B)に は SE(T1w)を 配
置 し た 。 ま た 撮 像 法 の 一 種 の FE(in)を 用 い て 歯 列 の 抽 出 お よ び 空 気 と の 境 界 の edge抽 出 を
行 っ た 。さ ら に 観 察 を 容 易 に す る た め に 、歯 列 と 顎 骨 は 8bit中 50%の 輝 度 値 を 付 加 し 、組 織
の 境 界 線 は Bチ ャ ン ネ ル に 加 算 す る こ と に よ り 、舌 筋 の MRI-RGB合 成 画 像 と し て TIFフ ァ イ ル
形 式 で 保 存 し た ( 図 4 )。
red
green
(a) FE(op)
blue
(b) SE(PDw)
(c) SE(T1w)
(d) color
(e) teeth
(f) surface
(g)MRI-RGB合成画像
図 3 . 元 MRIと 歯 列 お よ び 組 織 境 界 の 重 ね 合 わ せ に よ る MRI-RGB合 成 画 像
(3) Webに よ る 資 料 公 開 : 現 在 、 画 像 処 理 さ れ た デ ー タ を web上 に 公 開 す る べ く 準 備 中 で あ
る。一般の研究者は、引用元を明らかにすることによりデータを利用できるようにする予
定 で あ る 。 デ ー タ は 各 断 面 21枚 、 4撮 像 法 ( FE(in), FE(op), SE(T1w)お よ び SE(PDw))、 歯
列 お よ び 組 織 の 2 値 化 、 各 撮 像 法 の MRIへ の 歯 列 挿 入 、 MRI-RGB画 像 お よ び 歯 列 組 織 境 界 の
付 加 な ど が あ り 計 1,000枚 以 上 か ら な る 。
現 在 作 成 中 の webペ ー ジ の ス ク リ ー ン シ ョ ッ ト を 図 5 示 す 。表 示 は 1カ ラ ム も し く は 3カ ラ
ム を 用 意 し て い る 。 1カ ラ ム 表 示 で は 各 画 像 を 1枚 ず つ 観 察 で き る 。 ユ ー ザ ー 自 身 が 画 像 を
前 後 で 比 較 し た り 、異 な る 撮 像 法 を 連 続 的 に 比 較 閲 覧 す る こ と を 想 定 し て い る 。ま た 3カ ラ
ム表示ではファイルを横に並べることにより、画面上で比較できる。同じ部位に対して
sag-cor-tranの 異 な る 断 面 で 比 較 し た り 、同 じ 部 位 を 異 な る 撮 像 法 ご と に 3種 類 並 べ た り す
る こ と に よ り 、 1枚 表 示 で は 見 え に く か っ た さ ま ざ ま な 比 較 が 可 能 で あ る 。
3
図 4 . 得 ら れ た MRI-RGB合 成 図 の 一 部 ( 上 段 : 矢 状 面 、 中 段 : 冠 状 面 、 下 段 : 水 平 面 )
今後はさらに筋の走行をラベリング
して3D化することにより、スライ
ス単位ではわかりにかった筋の立体
的な配置を直感的に可視化できる表
示 に す る 予 定 で あ る 。ま た MRI撮 像 お
よび画像処理等を唇および喉頭に拡
張する。このような基礎的なデータ
作成は将来的にも音声言語医学会な
どさまざまな分野の研究者に役立つ
資料となると考えている。
MRIの 撮 像 に あ た っ て は
ATR-Promotions、 脳 活 動 イ メ ー ジ ン
グ セ ン タ ( Brain Activity Imaging
Center, BAIC) の 島 田 育 廣 氏 お よ び
藤 本 一 郎 氏 の 協 力 を 得 た 。Webの イ ン
ターフェイス作成には
ATR-Promotionsの 足 立 隆 弘 氏 の 協 力
を得た。ここに厚く御礼申し上げま
す。
図 5 . Webに よ る デ ー タ 公 開
4
4.実績発表(発表予定を含む)
代表者・分担者氏名
発表論文名・著者名等
(著者名、論文名、学会等名、巻(号)、発表年(西暦))
【論文】
"口 腔 咽 頭 領 域 の 高 精 細 MRI~ 舌 筋 の MRI-RGB合 成 画 像 の 作 成 ~ "
高野佐代子, 本多清
音 声 言 語 医 学 会 . (Accepted)
志, 正木信夫.
【学会発表】
"口 腔 咽 頭 領 域 の 高 精 細 MRIデ ー タ の webに よ る わ か り や す い 資
高 野 佐 代 子 正 木 信 夫 料 公 開 ( 第 二 報 ) 音 声 言 語 医 学 会 研 究 発 表 会 .(2010発 表 予 定 ).
本多清志.
高野佐代子 正木信夫
本多清志.
正木信夫 本多清志
"運 動 機 能 の 解 明 を 目 指 し た 口 腔 咽 頭 領 域 の 高 精 細 MRIと webに よ
る わ か り や す い 資 料 公 開 ."音 声 言 語 医 学 会 研 究 発 表 会 (2009).
共著分の業績は上記に記載済み
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