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雇用政策研究会報告書について

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雇用政策研究会報告書について
2008.2. No.478
目 次
雇用政策研究会報告書について
雇用政策研究会報告書について
1 はじめに
発展を可能とするためには、若者、女性、高齢
厚生労働省は雇用政策研究会においてとりま
者、障害者などの働く意欲と能力を持つすべて
とめられた「すべての人々が能力を発揮し、安
の人々が、生涯を通じ、その能力を蓄積しつつ、
心して働き、安定した生活ができる社会の実現
十分発揮し、仕事や地域への社会参加を行うこ
∼本格的な人口減少への対応∼」を平成 19 年
とにより充実感を得ることができ、人生の各段
12 月 25 日に公表しました。
階に応じて仕事と生活の調和が図られ、かつ公
今回の報告は、人口減少下における我が国の
正で多様性に満ちた豊かな社会を実現すること
経済・社会がどのように変わっていくのかとい
が重要となってくる。
うことを見据えた上で、今後我が国が目指すべ
き雇用労働の姿、形について検討をし、その姿
3 労働市場を取り巻く変化と課題
を視野においた当面 4 ∼ 5 年程度の雇用政策を、
(1)労働市場を取り巻く変化
どうやって展開していくのかということについ
○ グローバル化による国際競争や国内小売り
て基本的な考え方をまとめ、厚生労働大臣が定
産業等における競争の激化等の中で、企業
める中期ビジョンに反映させることを目的とし
の将来予測可能性の低下や短期的な需要の
ています。今月号では、その概要をご案内いた
変動の増大に対応するために、企業が外部
します。
労働市場を通じた雇用量の調整の動きを強
めるようになり、さらには海外投資家の参
2 基本的な認識
入や企業合併・買収の増大に伴って、株主
我が国は、2005 年から人口減少に転じ、将
に対する利益還元を以前よりも重視する経
来も一層の少子化・高齢化の進行によって、本
営がみられるようになってきている。
格的な人口減少社会が到来する見通しとなった。
○ IT化を中心とした技術革新の進展、また
また、経済のグローバル化や技術革新等の進展
付加価値を生み出す知識・知恵を源泉とす
に伴い、国内労働市場において、コスト削減圧
る知識経済化の進行によって、企業の中核
力による低賃金労働者や不安定な就労形態の者
を担う高付加価値人材や高度技術者、熟練
が増加するとともに、正社員においても、企業
技能者のニーズが高まる一方で、定型的な
が中核的人材を絞り込んだ結果、長時間労働が
業務を担う中間層ホワイトカラーのニーズ
問題化している。
が相対的に低下し、さらにそうした定型的
これらの課題を克服し、経済社会の持続的な
な業務については外部人材を活用する傾向
−1−
雇用政策研究会報告書について
がみられる。
○ 正社員においては、企業が中核的人材を絞
○ 人件費の変動費化や将来の不確実性の対応
り込んだ結果、長時間労働者の割合が高水
のため外部人材を含む正社員以外の者を活
準となっている。長時間労働により、健康
用することで正社員の割合が低下している。
を損なう者が出るとともに、肉体的、精神
正社員については長期雇用を基本的な雇用
的な疲労によって労働者の生産性にも影響
方針とする企業が依然として多数である一
を及ぼすおそれがある。また、雇用形態に
方で、正社員以外の者の積極的な活用を図
より、能力開発機会を享受できる者とでき
ろうとする企業もみられる。
ない者が分かれており、将来の人的資本に
○ 企業の人材マネジメントの変化や働く者の
差が生じる懸念が指摘される。
価値観が多様化することにより、正社員中
心だった働き方から、パート,派遣,契約
4 あるべき雇用・労働社会の姿
社員等といった多様な就業形態の増加が目
(1)安定の確保とキャリア形成
立ち、現在においては雇用者全体の約 3 割
労働者の生活の安定や技能蓄積などの観点か
を占めるに至っている。
ら雇用の安定が引き続き重要であるとともに、
労働者が、自らのキャリアをより開発・向上す
(2)労働市場を取り巻く変化により生じた課題
ることができるよう、職業能力開発などのキャ
○ フリーターやニート、日雇派遣労働者とい
リア形成支援や外部労働市場の整備などを行い、
った若者は、自己啓発もままならず、雇用
これらを通じて職業キャリアの発展と能力発揮
や将来の見通しについて不安を感じる者も
が可能となる。
おり、また正社員と比べて結婚することが
(2)多様性と自律性の尊重
困難といった状況がみられる。こうした状
性、年齢、障害の有無を問わず、労働者が、
況を背景として、若年層の間には所得格差
生涯を通じ、個人の価値観に基づき、人生の各
の拡大や格差の固定化、さらには非婚化に
段階に応じ、主体的に多様な働き方を選択でき
よる少子化の加速が懸念されている。
るようにすることにより、自らの能力を十分発
○ 女性の社会進出が着実に進んでいるものの、
仕事と育児・介護の両立の難しさ等から就
揮できるようになる。そして、企業は多様な人
材の能力を最大限に活用できるようになる。
業継続を希望しながらも離職を余儀なくさ
(3)公正の確保
れ、いったん退職すると正社員としての再
多様な働き方が可能となっていく中で、それ
就職・再就業が難しい状況もみられる。ま
ぞれの労働者の労働条件が、働き方にかかわり
た、高齢者は、他の年齢層と比べると求人
なく、公正で働き方に中立的な仕組みや制度の
倍率が低いなど、雇用・就業機会が十分で
もと、豊かな活力ある経済社会にふさわしい公
ない。これらの人々の意欲と能力に応じた
正なものとして決定される。
労働市場の参加が実現しない場合、将来的
に労働力人口が大きく減少する要因となり、
さらに経済成長の制約要因となることが懸
5 雇用政策の基本的な方向性
あるべき雇用・労働社会の姿を視野におきつ
念される。
つ、当面 5 年程度の間に取り組むべき雇用政策
−2−
の基本的な方向性の柱として、次のとおり提言
使が信頼関係に基づき長期的視点に立った労働
する。なお、それぞれの柱は相互に密接に関連
条件の調整に柔軟に対応しつつ、雇用安定機能
しており、相乗効果が期待できることから、雇
と人材育成機能を有する長期雇用を基本とする
用政策を最大限実効性あるものとするためには、
ことが引き続き重要であるとともに、労働者が、
個々の具体的な施策における相乗効果が発揮さ
自らのキャリアをより開発・向上することがで
れるよう、相互に連携しつつ一体となった政策
きるよう、職業能力開発などのキャリア支援や
の展開が重要である。
外部労働市場の整備などを通じて職業キャリア
(1)今後生まれる子どもが、労働市場への参加
の発展、安定が図られるようにする必要がある。
が可能となるまで(2030 年頃まで)にお
(3)多様性を尊重する「仕事と生活の調和が可
ける就業率の向上
能な働き方」への見直し
経済社会の持続的な発展の観点から、就業を
労働者の多様な価値観やニーズに的確に対応
希望しているにもかかわらず、様々な事情によ
するとともに、企業が多様な労働者の能力を最
り就業できない若者、女性、高齢者、障害者な
大限に活用し、生産性の向上や競争力の確保を
どについて、就業を阻害している要因を取り除
図っていくことができるようにするためには、
き、意欲と能力に応じた働き方を可能とするこ
多様な働き方が主体的に選択可能となるように
とにより、就業率の向上を図ることが重要であ
することが必要である。
る。
しかしながら、現実には例えば、正社員とそ
なお、将来の労働力不足の懸念に対して外国
うでない者の間における賃金などの労働条件、
人労働者の受入れ範囲を拡大した方がよいとい
能力開発機会、雇用管理などの面で大きな差が
った意見もあるが、労働市場の二重構造化が強
あり、多様な働き方の選択肢が限られている状
まるおそれがあることに加え、労働条件等の改
況にある。また、企業側が中核的人材を絞った
善や、それを通じたマッチングの促進・人材確
ことなどにより生じる長時間労働によって、健
保を阻害しないためにも、安易に外国人労働者
康を損ねたり、仕事と生活の調和が困難となる、
の受入れ範囲を拡大して対応するのでなく、ま
などの問題も現れている。
ずは国内の若者、女性、高齢者、障害者などの
そのため、生涯を通じ、また人生の各段階に
労働参加を実現していくことが重要である。
応じて、多様な働き方が主体的に選択可能とな
(2)雇用・生活の安定と職業キャリア形成によ
るとともに、様々な働き方の間を行き来できる
る生産性の向上
ような条件整備を進めていくことが必要である。
経済社会の激しい変化により様々なリスクが
増大する中、労働者の能力開発など職業キャリ
ア形成の基礎となる雇用・生活の安定・向上を
図ることは、ますます重要となっている。また、
労働は短期的な商品の売買取引とは異なり、よ
り継続的な関係が強いものであり、そのことが
労働者の能力・生産性とも深く関係していると
いう性格を考慮する必要がある。そのため、労
−3−
雇用政策研究会報告書について
労働力人口の見通し
人口減少下において、若者、女性、高齢者、障害者など全ての人が意欲と能力に応じて働く
ことのできる環境が整うことにより、現状のまま推移した場合の労働力人口の見通しと比較す
ると、2017年で約340万人増、2030年で約600万人増加するなど、将来的な労働力人口の減
少を一定程度抑制。
総人口
(12,776万人)
(12,446万人)
労働力人口
(6,657万人)
(6,217万人) 各種対策により (6,556万人)
約340万人増
約100万人減
約440万人減
60歳
以上
967
1,085
(11,522万人)
高齢者への就業支援
→約90万人増
(5,584万人) 各種対策により
約1,070万人減 約600万人増
4,362
4,055
15歳∼
29歳
1,329
1,077
仕事と家庭の両立支援
(女性への就業支援)
→約160万人増
(うち女性120万人増)
若者への就業支援
→約90万人増
労働市場への参加が
進まないケース
2006年
約480万人減
1,173
1,037
30歳∼
59歳
(6,180万人)
高齢者への就業支援
→約240万人増
1,274
仕事と家庭の両立支援
(女性への就業支援)
→約270万人増
(うち女性220万人増)
3,887
4,219
3,619
若者への就業支援
→約90万人増
1,163
928
労働市場への参加が
進むケース
労働市場への参加が
進まないケース
2017年
1,019
労働市場への参加が
進むケース
2030年
(資料出所)総人口については、2006年は総務省統計局「人口推計」、2017年、2030年は国立社会保障・人口問
題研究所「日本の将来推計人口」(2006年12月推計)による。
労働力人口については、2006年は総務省統計局「労働力調査」、2017年、2030年はJILPT「2007
年度需給推計研究会」における推計結果をもとに、雇用政策研究会において検討したもの。
(注)1.「労働市場への参加が進まないケース」とは、性・年齢別の労働力率が2006年実績と同じ水準で推
移すると仮定したケース。
2.「労働市場への参加が進むケース」とは、各種施策を講じることにより、若者、女性、高齢者等の方々
の労働市場への参加が実現すると仮定したケース。
企業年金ノート № 478
年金信託部
〒100-8112 東京都千代田区大手町1ー1ー2 ℡.03(5223)1992
〒540-8607 大阪市中央区備後町2ー2ー1 ℡.06(6268)1866
平成20年2月 りそな信託銀行発行
りそな信託銀行はインターネットにホームページを開設しております。
【http://www.resona-gr.co.jp/resona-tb/】
りそな信託銀行は、インターネットを利用して企業年金の各種情報を提供する「りそな企業年金ネットワーク」を開設しております。
ご利用をご希望の場合は、年金信託部までお問い合せ下さい。(TEL 06(6268)1813)
受付時間…平日 9:00∼17:00
※土、日、祝日、12月31日∼1月3日、5月3日∼5月5日はご利用いただけません。
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