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第1回委員会における指摘事項と 検討結果

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第1回委員会における指摘事項と 検討結果
資料−2
平成25年度 第2回
岩木山火山噴火緊急減災対策砂防計画検討委員会
第1回委員会における指摘事項と
検討結果
第1回委員会における審議事項
項目
審議結果
審議・確認事項
水蒸気噴火の想定火口範囲の設定案
について、楕円の設定で良いか
想定火口の見直し
水蒸気噴火とマグマ噴火で、想定火口
を区別することで良いか
溶岩流を対象外とすることについて
噴火に伴う現象
楕円の設定で良い
根拠:従来の想定火口を異常現象が確認された範囲ま
で拡大する必要があるため
区別して良い
根拠:水蒸気噴火については上記のとおりだが、マグマ
噴火は山頂付近に集中しており、従来の想定火口を変
更しないため
噴火シナリオに含めなくて良い
根拠:岩木山では溶岩流の噴出は考えにくいため
(学識委員の意見を反映)
噴火シナリオに追加して良い
火口噴出型泥流の追加について
根拠:岩木山と共通点が多い雌阿寒岳では、2006年に噴
火と同時に火口噴出型泥流が発生・流下しており、岩木
山でも発生が想定されるため
噴火活動の想定で、他の推移パターン
は想定しなくて良いか
噴火シナリオ(案)
対象現象の想定条件や基礎的データ
土砂移動の想定で、火山性地震や噴火 を確認・考慮して検討する
と同時に発生する斜面崩壊・地すべり、
雪崩への対応を計画に含めるか否か
2
第1回委員会における指摘事項と検討結果
項目
岩木山の現
状について
第1回委員会での指摘事項
事務局での検討結果
岩木山周辺の登山道の利用状況数は、どのようにして調べたの
か。月ごとのデータもあるのか。次回、提示してほしい。
登山者数は、県観光国際戦略局の統計データであるが、月
別のデータはない。参考として、岩木山周辺の観光地点に
おける観光入込数と、岩木高原県立自然公園の月別観光
客数を収集整理した。(本資料p4,5に提示)
青森県は「土砂災害防止法に基づく基礎調査」が進んでおり、全
箇所調査が終了し、2順目の調査に入っていると伺っている。
「火山緊急減災対策砂防計画」で火山噴火に伴う土砂移動を想
定されている渓流と保全対象の位置関係を把握するため、次回
の委員会資料に、基礎調査の結果である「土石流の警戒区域」
を示してほしい。
土砂災害防止法に基づく基礎調査の成果より、土石流の
「土砂災害警戒区域図」(土石流・地すべり・急傾斜)を整理
した。(本資料p6-8に提示)
他火山で発生した事例も参考にし、現象を想定するという考え方
は良いと思うが、噴火シナリオに伴う現象に対する緊急対策やそ
の優先度を考える際、対象現象の想定条件(「実績」 or「他火山
事例」という点)も考慮に入れた方が良いと感じた。
岩木山の噴
火シナリオ
(案)について
「火口噴出型泥流」も、他火山で発生した事例を参考に想定現象
に加えたと理解した。
火山性地震に伴う「雪崩」、「地すべり、崩壊」を想定現象に加え
る根拠を教えてほしい。
「雪崩」を想定現象とするか判断するに際し、岩木山の積雪期間・
積雪量、雪崩の到達エリアと保全対象の位置関係等、基礎的な
データも確認しておくこと。
各現象について、岩木山の噴火実績を整理した。(本資料
p9に提示)
火口噴出型泥流については、岩木山と類似性が高い雌阿
寒岳等での発生実績をもとに想定現象に加えた。(本資料
p10に火口噴出型泥流の他火山事例を提示)
火山性地震に伴う斜面崩壊・地すべりおよび雪崩について
は、当初は岩木山の地域特性(積雪期の雪崩発生実績な
ど)を考慮して、想定現象に加えた。
他火山事例や一般的な発生条件等により岩木山での概略
影響範囲を検討した結果、これらの現象による保全対象へ
の影響は低いと考えられる。(本資料p11-20に提示)
岩木山8合目には、防災科学研究所が設置した積雪計が
ある。解析には、このデータも活用している。これらのデータ
も含め、積雪状況や雪崩の発生実績を整理した。(本資料
p16-20に提示)
3
岩木山の観光客数について
参考として、岩木山周辺の観光地点における観光入込数と、岩木高原県立自然公園の月別観光客数
(5ページ参照)を収集整理した。
●補足資料:
岩木山周辺の観光地点 年間入込客数
観光地点(施設等)入込客数
所在地
観光地点名
(単位:人)
平成21年
平成22年
平成23年
岩木山
16,775
14,594
13,252
夏山リフト
28,895
24,707
23,653
津軽岩木スカイライン
70,650
61,347
55,874
山野草の里
88,000
52,600
47,600
68,277
62,299
65,526
岩木山百沢スキー場
18,834
19,466
26,188
岩木山総合公園
55,230
82,656
86,591
岩木トレイルセンター
32,065
29,600
26,965
百沢・嶽・湯段温泉
69,236
54,690
143,880
夏山リフト
弘前市 弥生いこいの広場
弥生いこいの広場
津軽岩木スカイライン
嶽温泉
岩木トレイルセンター
湯段温泉
山野草の里
百沢温泉
岩木山総合公園
岩木山百沢スキー場
出典:平成23年青森県観光入込客統計 青森県観光国際戦略局
4
岩木山の観光客数について
●補足資料:岩木高原県立自然公園の月別観光客入込数
岩木山の南麓に位置する岩木高原県立自然公園の観光客数は、8月∼9月に最も多く、
次いで1月に多い。この時期には、閑散期の2倍を超える観光客が訪れているため、火山
活動活発化時には、登山客・観光客への情報提供なども重要となる。
凡 例
スキー
登山・レジャー
岩木高原
県立自然公園
自然公園地域
国土数値情報ダウンロードサービスによる自然公園地域データ(国土交通省国土政策局 H23)
平成23年,22年,21年 青森県観光入込客統計(青森県観光国際戦略局)をもとに作成
※平成22年の観光統計から国が定めた「観光入込客統計に関する共通基準」に基づき調査を実施する
こととしたため、自然公園の入込数については、公園来訪者の推計ではなく、当該自然公園内にある観
光地点の入込数の合計を計上することとした(平成23年青森県観光入込客統計)。
5
岩木山周辺の土砂災害警戒区域図(土石流)
土砂災害警戒区域(土石流)の定義
■土石流の発生のおそれのある渓流において、扇頂部から下流で勾配が2度以上の区域
土砂災害特別警戒区域(土石流)の定義
■土石流が発生した場合に、建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる区域
マグマ噴火の
想定火口
凡例 (土石流)
土砂災害特別警戒区域
土砂災害警戒区域
保全対象(建物)
6
岩木山周辺の土砂災害警戒区域図(地すべり)
土砂災害警戒区域(地すべり)の定義
■ 地すべり区域(地すべりしている区域または地すべりするおそれのある区域)
■ 地すべり区域下端から、地すべり土塊の長さに相当する距離(250mを超える場合は、250m)の範囲内の区域
土砂災害特別警戒区域(地すべり)の定義
■地すべりが発生した場合に、建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる区域
マグマ噴火の
想定火口
凡例 (地すべり)
土砂災害特別警戒区域
土砂災害警戒区域
地すべりブロック
保全対象(建物)
7
岩木山周辺の土砂災害警戒区域図(急傾斜地)
土砂災害警戒区域(急傾斜地)の定義
■傾斜度が30度以上で高さが5m以上の区域
■急傾斜地の上端から水平距離が10m以内の区域
■急傾斜地の下端から急傾斜地高さの2倍(50mを超える場合は50m)以内の区域
土砂災害特別警戒区域(地すべり)の定義
■急傾斜地の崩壊が発生した場合に、建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる区域
マグマ噴火の
想定火口
凡例 (急傾斜地)
土砂災害特別警戒区域
土砂災害警戒区域
保全対象(建物)
8
噴火シナリオで対象とする現象の想定条件
噴火シナリオで想定する現象について、岩木山の噴火履歴をもとに発生実績と可能性を整理した。
※活動記録は歴史資料や地質調査の記録を基に整理
●水蒸気噴火では噴石と降灰が発生している。
●マグマ噴火では噴石、降灰、溶岩ドーム、火
砕流が発生している。
<土砂移動現象>
●噴火に伴う土砂移動として明確に記述されてい
るのは1600年の噴火である。
鳥ノ海火口は、1600年の噴火前には火口湖で
あったため、1600年噴火により火口湖が決壊し、
泥流として流下したと考えられる。
●北海道駒ヶ岳1996年噴火(噴出量12万トン※)
など小規模な水蒸気噴火でも、降灰後の土石流
の発生実績がある。岩木山1600年の水蒸気噴火
の推定噴出量は20万トンであるため、岩木山にお
いても噴火発生時には降灰後の土石流が発生し
たと推定される。
※吉本充宏(2011)日本の活火山(13)北海道駒ヶ岳.
砂防と治水 第201号
1986 昭和61
1985 昭和60
1978 昭和53
1977 昭和52
1976 昭和51
1972 昭和47
1970 昭和45
1863 文久3
1856 安政3
1845 弘化2
1833 天保4
1807 文化4
1800 寛政12
1794 寛政6
1782 天明2
1770 明和7
1709 宝永6
1704 宝永元
1694 元禄7
1686 貞享3
1672 寛文12
1640 寛永17
1638 寛永15
1618 元和4
1605 慶長10
1600 慶長5
1571 元亀2
2000年前
5000年前
6000年前
15000年前
30000年前
50000年前
異
異
異
異
異
異
異
水
異
水
異
異
異
異
水
異
異
異
異
異
異
異
異
水
異
水
異
マ
マ
マ
マ
マ
マ
噴火現象
噴
石
降
灰
溶
岩
ド
ー
<噴火現象>
噴
火
噴火年代
様
式
異常現象
硫
黄
発
地
火
震
・
・
発
鳴
光
動
・
噴
気
○
○
○
○
○
○
○
○
△
△
○
○
△
○
○
○
○
△
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
△
△
○
○
○
○
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
土砂移動
火
砕
流
ム
融
雪
型
火
山
泥
流
降
灰
後
の
土
石
流
○
△
△
△
△
△
○
○
△
△
○
△
○
○
△
△
△
△
△
△
△
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
△
△
△
○
○
○
△
△
△
△
△
△
火
口
噴
出
型
泥
流
○
主な活動
南西山麓で地震多発、最大M4.5
北東山麓で地震多発、最大M3.6
赤倉沢で活発な噴気活動を発見
東山麓で地鳴りを伴う地震群発
地鳴り
北東麓で地震
鶴田町付近M4.6。岳温泉で温度上昇、立木の一部枯死。
火砕物降下。噴石。
硫黄坑発火
噴煙、硫黄噴出。噴火場所は鳥の海火口?
硫黄坑発火
硫黄坑発火
硫黄坑発火
硫黄坑発火
火砕物降下。鳴動、噴石砂、新火口生成。
鳴動、発光
硫黄坑発火
羽後津軽の地震の衝撃により硫黄坑発火
能代の地震により、硫黄坑発火
発光。
地震による山崩れ。
鳴動、地震
鳴動、地震
火砕物降下。降灰。
発光。
火砕物降下、泥流。地震、降灰
2月15∼17日。発光。
鳥ノ海溶岩ドーム形成
岩木山山頂溶岩ドーム形成
岩木山中央溶岩ドーム形成
岩木山山頂西溶岩ドーム形成
鳥海山溶岩ドーム形成
西法寺森溶岩ドーム形成
噴火様式 マ:マグマ噴火 水:水蒸気噴火 異:異常現象発生
活動履歴 ○:発生した記録がある、または噴出物がある現象
△:記録などはないが学識者からの助言や類似火山での実績に基づき
発生した可能性があると判断した現象
9
火口噴出型泥流の発生に関する他火山事例
火口噴出型泥流は、火口から直接噴き出し、流下するもののことをいう。温度が高い場合が
知られており、熱泥流と呼ばれることもある。
国内の火口噴出型泥流の発生事例
火山名
噴火年
発生概要と被害等
2000年 学校、住宅地が埋没。流路工閉塞。
流下距離
被害
800m
あり
3/31
4/1∼4/10
水
7/25
不明
不明
不明
500m-1.5km
(間欠的)
あり
水
3/21
3/21
400
約10時間
1km
なし
水
8/16
8/16
2000
数時間?
約100m
なし
水
12/7
噴火前(10月)
不明
不明
不明
あり
水
5-8月
5-8月
不明
不明
不明
なし
水
なし
6月、9/1
不明
不明
100m
なし
1974年 火山灰を含んだ泥水が火口から直接噴出して流下した。
水
7/28
7/28
不明
不明
不明
なし
1915年 噴火の際に泥流が梓川を塞き止めて大正池を生成した。
水
2月, 6/6,
7/6, 7/12
6/6
不明
不明
不明
なし
水
6/17
6/18∼19
不明
1-2日
約2.5km
なし
マ水→水
10/11
10/11
4800
∼1日
約200m
なし
水
なし
7月∼11月
不明
間欠的
なし
(火口近傍)
なし
1910
7月25日に金比羅山で爆発が始まり、次いで金比羅山か
ら東丸山の西に至る間に約45個の爆裂火口が次々に生
じ、土砂・岩屑を噴出し、また泥流を流した。泥流で死者1
名
雌阿寒岳
2006年 約1km流下。被害なし
秋田焼山
1997年
1977年
吾妻山
1966年
被害なし。VEI=0の小規模水蒸気爆発の際に火口から泥
3
流(約2000m )が流出。泥以外に火山岩塊等も含む。
酸性の泥水が噴出して養魚場の魚に被害。1966年にも
大穴火口から泥水噴出が確認されている。
安達太良山 1996年 沼の平火口で泥水噴出。半径100mの範囲に飛散。
焼岳
噴出量
流出時間
㎥
不明
不明
(間欠的)
マ水→水
有珠山
新潟焼山
噴火様式 噴火開始日 泥流発生日
1962年には噴火翌日から火口から直接泥流発生。この
泥流発生後には噴火前まで土砂移動が見られなかった
1962年 沢で土石流が頻発するようになった。
九重山
1995年 白水川の源頭部付近から4800m3の泥流が発生
伽藍岳
1995年 り、11月中旬頃には土手の高さ約1m、火口の長径約10
火口地形内で新たな泥火山生成。初めは直径約1mの
大きさであった噴気孔が、7月末頃から次第に大きくな
雌阿寒岳は、積雪地、溶岩ドーム形成、標高の
高い位置まで変質帯がある、山麓に温泉地があ
るなど、岩木山と共通点が多い火山
想定火口
想定火口の外
で小規模噴火
火口噴出型
泥流が流下
佐々木寿ほか(2006) 雌阿寒岳2006年3月21日噴火.火山 51巻. 5号
気象庁活火山総覧(第4版)ほか、調査研究事例より収集整理
水:水蒸気噴火,マ水:マグマ水蒸気噴火
m、短径約7m、深さ約4mの楕円状の泥火山となった。
火口噴出型泥流についての詳細な調査・研究事例は少ない。
■ほとんどが噴火と同時∼数時間以内に発生している。
■流出時間は数時間∼最大1日(数日∼数か月にわたって断続的に流下する場合もある)
■噴出量(堆積土砂量)は400∼4800㎥
■火口からの流下距離は数百m∼2.5km
10
火山性地震に伴う斜面崩壊・地すべり、雪崩の他火山事例
マグニチュードの大きな火山性地震
■火山付近ではM6クラスの地震が、火山活動の活発化したときなどにしばしば発生する。
■火山活動時に発生した地震のなかで最大のものは、桜島の大正噴火(1914年)に発生したM7.0の地震。
■これらのうち、火山性地震に伴う土砂災害が発生した事例は3件。
※雲仙岳1792年(山体崩壊)、桜島1914年(斜面崩壊)、三宅島1983年(斜面崩壊)
火山周辺で発生したマグニチュードの大きな地震と、崩壊・地すべり・雪崩の発生実績
火山名
桜島
年月日
M
1914.1.12
7
5.7
6.2
5.1
4.3
4.9
5.9
6.2
1912.7.16
浅間山
1916.2.22
1910.7.24
有珠山
1977-1978
2000.4.1
1962.8.26
1983.10.3
三宅島
2000.7-8
箱根山
霧島山
1920.12.27
1968.2.21
1792.5.21
雲仙岳
1922.12.8
伊豆大島
伊豆東部火山群
岩手山
1986.11.22
1989.7.9
1998.9.3
6以上6回
(最大6.5)
5.6
6.1
6.4
6.9と6.5
6.0
5.5
6
噴火前日
Abe,1979
噴火活動期
気象庁地震月報
噴火活動期
気象庁地震月報
噴火終息直後
気象庁地震月報
噴火終息直後
気象庁地震月報
地すべり・
崩壊の発生
○(崩壊)
×
×
×
×
×
×
○(崩壊)
三宅島,神津島,
式根島近海
気象庁地震月報
×
×
気象庁地震月報
×
×
○(崩壊)
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
備考
噴火
出典
阿部1981
Abe,1979
理科年表
加久藤カルデラ
気象庁地震月報
眉山崩壊
理科年表
理科年表
噴火終息直後
気象庁地震月報
海底噴火直前
気象庁地震月報
火山活動期
気象庁地震月報
出典:「日本の火山性地震と微動」西村大志・井口正人(2006, 京都大学学術出版会)に加筆
雪崩の
発生
×
×
×
×
×
×
×
×
11
火山性地震に伴う斜面崩壊・地すべり、雪崩の他火山事例
【火山性地震に伴う斜面崩壊】
火山性地震に伴う斜面崩壊の他火山での発生事例を整理した。
桜島1914年(斜面崩壊)
三宅島1983年(斜面崩壊)
三宅島付近を震源とするマグ
ニチュード6.2(深さ20km)の
地震により、島内22か所で斜
面崩壊が発生。
概略44°以上の急傾斜の斜
面で大部分が発生している。
出典:昭和58年(1983年)三宅島噴火
による火山災害,国立防災科学技術セ
ンター研究速報第51号,1984年3月
雲仙岳1792年(山体崩壊)
5月21日強い地震と同時に眉山(当時前山)が大崩壊を起し、有明海
に流れ込み津波発生。このため島原及び対岸の肥後・天草に被害、
死者約15000名、「島原大変肥後迷惑」、崩壊量4.4×108m3。
(気象庁活火山総覧第4版,2013)
震源
眉山
斜面崩壊の発生箇所
(現:鹿児島市田上町)
眉山
▲雲仙岳
出典:雲仙復興事務所HP
▲桜島
震源
※なお、構造性の地震
の可能性もあるが断層
との関係は不明である
×
地震により倒壊した石垣
雲仙断層群と1792年の推定震源位置
(地震研究推進本部HPに加筆)
12
出典:1914桜島噴火報告書(中央防災会議災害教訓の継承に関する専門調査会,平成20年3月)
火山性地震に伴う斜面崩壊・地すべり、雪崩の他火山事例
火山地域における地すべりや雪崩は日本国内で多数発生しているものの、火山性地震を誘因とするものは事例がない。
ただし、火山地域特有の災害事例として、ここでは紹介する。
【火山地域における地すべり災害】
■火山地域における地すべり災害として、秋田県の
八幡平における澄川地すべり(1997年)、神奈川県
箱根町(箱根山)の早雲山地すべり等が代表的な例
として挙げられる。
【澄川地すべり】
・地すべりの滑動に伴って岩屑なだれが発生。同時に水蒸気
噴火も発生した。
・過去に活動した地すべり地形(温泉変質した地質)が、融雪
による地下水の浸透で再動したと考えられている(田中・井口,
1998)。
澄川地すべり(八幡平)
撮影:アジア航測株式会社
×震源
【火山地域での地震に伴う雪崩災害】
■2013年2月25日栃木県北部を震源とする地震(M6.2)に伴う
雪崩・土砂崩壊が発生(震源から4~6kmの距離)。奥鬼怒温泉
(日光白根山北部)では、雪崩で道路がふさがり旅館など4軒
が一時孤立した。
雪崩・土砂崩壊
発生範囲(8箇所)
▲日光白根山
2km
2013年2月25日栃木県北部で発生した地震
の震源と雪崩・土砂崩壊発生箇所
13
岩木山周辺での火山性地震に伴う斜面崩壊の発生可能性について
■航空レーザ計測による地形データをもとに、斜面崩壊の一般的な発生条件である傾斜30°以上のエリアを抽出した。
■山頂周辺や源頭部など高標高部に傾斜30°以上の斜面が存在し、崩壊地形も多数認識できる。
■岩木山において、火山性地震を誘因とする斜面崩壊の発生実績は認識されていない。
凡例
傾斜50°~
傾斜50~40°
傾斜40~35°
傾斜35~30°
崩壊地形
扇状地
保全対象(建物)
(解析範囲外)
14
岩木山周辺での火山性地震に伴う地すべりの発生可能性について
■地すべり地形分布図データベース(防災科学研究所)をもとに、岩木山周辺の地すべり地形を整理した。
■地すべり地形は、中村川沿いおよびそれより西側に多数分布するが、岩木山の山体周辺にはない。
凡例
地すべりブロック
扇状地
保全対象(建物)
データ出典:(独)防災科学研究所 地すべり地形分布図データベース
15
岩木山周辺の積雪状況
積雪観測所 位置図
岩木山周辺の観測所における年最大積雪深の推移
※8合目観測所、2006-2009年
は欠測のためデータなし
500
岳
弘前
鰺ヶ沢
五所川原
8合目
450
400
年最大積雪深(cm)
350
300
250
200
150
100
50
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986
1985
1984
1983
1982
1981
1980
1979
1978
1977
0
2012年11月∼2013年5月の8合目積雪深計データ(積雪深-気温)
気温(℃)
積雪深(cm)
積雪深
気温
11月
12月
1月
2月
3月
4月
5月
■8合目観測所(標高1,238m)における年最大積雪深3m~4.5m (2000年∼2012年)
■積雪期間は11月中旬∼5月下旬、積雪深が最も大きくなるのは、2月下旬∼3月下旬
6月
16
雪崩の一般的な発生条件について
表層雪崩と全層雪崩
雪崩の発生条件(地形)
■雪崩の発生事例が多い発生区の斜面傾斜角は35°~45°程度
■30°以下および60°以上での発生は少ない傾向にある
■植生によっては30°以下で発生することもある
雪崩到達の目安
■雪崩の到達距離は、雪崩堆積区間の末端から発生区を見通
した仰角が表層雪崩では18°以上、全層雪崩では24°以上と
なる範囲であることが経験的に知られている。
出典:「雪崩現象の基礎に関する技術資料(案)」(独)土木研究所 寒地土木研究所,平成22年3月
17
岩木山周辺での火山性地震に伴う雪崩の発生可能性について
■航空レーザ計測による地形データをもとに、雪崩の発生条件(地形)である傾斜30°以上のエリアを抽出した。
■高標高部には傾斜30°以上の斜面が多数存在。過去に雪崩が発生した地点についても上記条件に該当する地点で発生している。
■岩木山において火山性地震を誘因とする雪崩の発生実績は認識されていない。
凡例
傾斜45°~
傾斜45~40°
傾斜40~35°
傾斜35~30°
保全対象(建物)
雪崩の発生記録
平成11年4月
平成15年4月
平成20年4月
(解析範囲外)
流域の出口付近に人家が存在する「百沢地区(蔵助川)」と
「岳地区(湯ノ沢」について、雪崩の概略影響範囲を検討した
18
岩木山周辺での火山性地震に伴う雪崩の発生可能性について
平成11年雪崩の発生域
・最も遠くまで流下した平成11年の雪崩では、百沢地区の約1.5km手
前まで約3km流下している。
蔵助川・本川
雪崩発生の一般的な地形条件および到達範囲をもとに、蔵助川で概
略の雪崩到達範囲を検討した。
①主流路を対象に200m区間の平均勾配を算出。
②平均勾配が30°以上の区間を抽出(区間0-400m)。
③②の区間を雪崩発生域と仮定して、仰角が18°となる下流の地点
を算出(ここではより到達距離が大きい表層雪崩を想定)。
雪崩の発生記録
平成11年4月
平成15年4月
平成20年4月
④③で求めた地点は区間3000-3200m。ここまでの範囲を蔵助川にお
ける雪崩到達範囲と想定。
凡例
同様の手法で各渓流について検討することで、地形条件からみた概略の雪崩影響範囲を把握す
ることは可能。ただし、ここでは、流域源頭部付近からの雪崩を想定しており、道路や保全対象付
近の法面や小規模な急崖における雪崩発生については想定していない。
平成11年雪崩
流下域の末端
百沢スキー場
傾斜45°~
傾斜45~40°
傾斜40~35°
傾斜35~30°
保全対象(建物)
人家が存在するエリア
百沢地区
県道3号
発生点(想定)
平成11年の雪崩発生地点(上端)
蔵助川・本川の縦断図
平成11年の雪崩
流下域末端
流域界末端
発生域
(30°以上)
18°
蔵助川で発生した雪崩が百沢地区の人家まで
到達する可能性は低いと考えられる。
百沢スキー場
県道(ネックレスロード)
雪崩の想定到達範囲
保全対象(百沢地区)
19
岩木山周辺での火山性地震に伴う雪崩の発生可能性について
湯ノ沢
■百沢地区と同様に、岳地区について湯ノ沢上
流からの雪崩を想定して概略の影響範囲を検
討した。
■その結果、湯ノ沢で発生した雪崩が岳地区の
人家まで到達する可能性は低いと考えられる。
平成11年雪崩
流下域の末端
岳温泉
人家が存在するエリア
凡例
傾斜45°~
傾斜45~40°
傾斜40~35°
傾斜35~30°
県道3号
保全対象(建物)
発生点(想定)
湯ノ沢 縦断図
流域界末端
県道(ネックレスロード)
18°
発生域
(30°以上)
雪崩の想定到達範囲
20
岩木山周辺での火山性地震に伴う雪崩の発生可能性について
■蔵助川、湯ノ沢と同様の手法で、下流に保全対象のある主な流域について、地形条件からみた概略の雪崩影響範囲を把握した。
⇒岩木山では山頂周辺から発生する雪崩が山麓部の保全対象(人家)に到達する可能性は低いと考えられる。
凡例
雪崩発生地点(想定)
雪崩の流下方向
雪崩到達地点
(表層雪崩が到達する
仰角18°となる地点)
想定される雪崩の
到達範囲(概略検討)
傾斜45°~
傾斜45~40°
傾斜40~35°
傾斜35~30°
保全対象(建物)
世帯数
事業所数
平成22年度国勢調査結果より世帯数(赤)、平成21年経済センサス基礎調査より事業所数(青)を500mメッシュごとに示している。
21
資料-5
平成25年度 第2回
岩木山火山噴火緊急減災対策砂防計画検討委員会
今後のスケジュール
岩木山火山噴火緊急減災対策砂防計画検討ロードマップ(案)
噴火警戒レベル導入に係る
地域防災計画への反映検討
気象庁、県市町村
主体の関連検討
噴火警戒レベルの導入検討
平常時からの準備など
火山噴火緊急減災対策砂防計画策定
各活動ステージにおける準備事項検討
緊急ソフト対策ドリル
平常時からの準備事項検討
緊急ハード対策ドリル
対策方針の設定
影響範囲と被害把握
噴火シナリオ作成
現状把握
社会条件、整備状況等
噴火履歴調査
火山地形判読
航空レーザ計測
国、県の砂防部局主体の
岩木山火山噴火緊急減災対策砂防計画検討
2月頃 第4回
検討委員会
10月頃 第3回
検討委員会
1/17 第2回
検討委員会
10/2 第1回
作業部会
7/31 第1回
検討委員会
計画策定段階
基本事項整理段階
H27年度以降
H26年度
H25年度
H24年度
まで
H20
年度
年度
検討委員会の枠組(案)と討議スケジュール(案)
検討委員会
議事内容を検討し、決定な
らびに承認を行う。
助言、承認
検討・作業結果
を提出・報告
作業部会
事務局が主体となり、委員
会の討議内容について検
討・作業する。
第1回検討委員会 : 平成25年7月31日
火山噴火緊急減災対策砂防計画の概要
岩木山の現状と噴火シナリオについて
第2回検討委員会 : 平成26年1月17日
噴火影響範囲・被害の想定について
対策方針の設定について
第3回検討委員会 : 平成26年10月頃
緊急対策ドリルについて
平常時準備事項について
とりまとめの方向について
第4回検討委員会 : 平成27年2月頃
岩木山火山噴火緊急減災対策砂防計画(案)のとりまとめ
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