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資料 4 平成16年度 産業構造審議会 国際資源循環ワーキンググループ 第2回 アジアにおける リユース・リサイクル 2004年7月13日 アジア経済研究所 小島道一 アジアのリサイクルに対する 正反対のイメージ • アジアでは、リサイクル が進んでいる – 日本で、リユース・リサイ クルできないものが海外 に輸出され、リユース、 リサイクルされている。 – 古いものがリユースされ るなど、長期にわたって 使われている。 – 韓国の使い捨て製品の 規制など、先進的な取り 組みがおこなわれてい る。 • アジアでは、リサイクル が遅れている。 – 分別収集がおこなわれ ていない。 – リサイクルに関する法制 が整備されていない。 – リサイクルの過程での 汚染の問題が生じてい る。 – 日系企業では、現地で リサイクルできないもの を日本に送り返している。 2 なぜ異なるイメージが生まれるのか • 地域による違い – 韓国、台湾では、すでに、リサイ クルを促進するような法・制度が 導入されている。 – リサイクル産業の発展状況が各 国で異なる。 • 技術がない • リサイクル産業が育つだけの再 生資源の量が足りない。再生資 源を効率よく集めるインフラが 未整備。 – 政府の財政状況、所得水準の 違いなどから、消費者・政府の 役割が異なる。 • 物質による違い – 紙や鉄スクラップ、汎用性の高 い多くのプラスチックなど、リサイ クルが容易なものについては、 リサイクルが経済的におこなわ れている。 – 鉛バッテリーのリサイクルなどで は、環境対策が必要にも関わら ず、十分な対策がとられていな い。 – リサイクル・適正処理の際にコス ト負担が必要な場合、法・制度 が整っていなければ、リサイクル がおこなわれない。 日本、韓国、台湾などでは、リサイクル法制が整い、公害関 連の規制も効果を挙げていると考えられる。本報告では、日 本、韓国、台湾以外のアジア地域を中心に報告する。 3 アジアにおける リユース • 都市で使われなくなった使用済 みになったモノが農村に流れて いく。 • 中古家電、中古バイク、中古自 転車などの中古市場があり、に ぎわっている。 • 中古品として、日本から輸入され たと見られるノートパソコン、 ファックスつき電話機、コピー機 などが北京や広州の中古市場で 売られている。また、ベトナムの ハノイの中古市場では、ラジカセ などのオーディオ製品が、ホーチ ミンでは、中古コンピューターが 売られている。フィリピンでは、テ レビ、冷蔵庫などが日本から輸 入され販売されているという。 ↑中国広州市の中古市場 2002年11月 ←日本から 輸入されたラ ジカセ。ベト ナム・ハノイ。 2004年6月 → 日本から輸入され たコンピューター・モニ ターを修理している。 ベトナム・ホーチミン 市。2004年6月 4 140 120 100 80 60 40 20 0 冷蔵庫(都市) カラーテレビ(都市) 洗濯機(都市) 冷蔵庫(農村) カラーテレビ(農村) 洗濯機(農村) 19 87 19 89 19 91 19 93 19 95 19 97 19 99 20 01 19 85 100世帯あたりの普及台数 図1 中国における耐久消費財の普及 年 5 アジアにおける リサイクル(1) • 人件費が安く手作業による 解体・分別が採算にあう。 • スカベンジャーが、家庭を 回ったり、埋め立て処分場 で有価物を回収している。 • 経済が成長しており、再生 資源としての需要が旺盛で ある。 • 有害物質でないものは、埋 め立て費用が安く、逆有償 でのリサイクルは成立しに くい。 • リサイクル法制が未成立。 日本から輸出された大型スピーカーを手 作業で解体(↑)、金属類を分類(↓)。中 国・台州市。2002年11月 6 アジアにおけるリサイクル(2) • • 公害対策が不十分で環境汚染を引き起こ している場合がある。 – 鉛など金属類のリサイクル 適切なリサイクル技術がない場合がある – 発泡スチロール(インドネシア) – ブラウン管ガラス(タイ、フィリピン、中 国) – 基板(フィリピン、タイ、マレーシア) • 中古品やパーツ、再生資源の 扱いで、中古のパソコン、テレビ、 オーディオ製品などの欧米や日本。 韓国からの輸入が拡大。携帯電 話なども急速に普及。E-waste (使用済み電気・電子機器)の処 理がアジア地域でも課題となって きている。また、寄付扱いで大量 の中古パソコンなどが輸入される ものの、使えないものも多く、処 理・処分に困っている。(WG第1 回参考資料15にも中国の実例) ←基板・外枠など有価ものが取り除かれ、 ブラウン管ガラスは廃棄される(タイ・バン コク郊外で、2003年11月) 7 E-wasteの処理(1) 基板の処理 • 環境対策を行った基 板処理の工場もある が、基板の不適切な 処理も行われている。 – 物理的にあるいは、 熱でハンダを溶かして 部品をとる。ハンダも 回収。 – 酸を使って、金を取り 出す。 ↑基板から部品などを回収。 Greenpeace China(2004)。 ↓インドにおけるプリント配線基板処理。 酸を使って 金を回収。 GTZなどの 援助をうけ インドの NGOなどが 調査。 Jain(2004) 8 E-wasteの処理(2) 工場設立の動き ←基板はまとめ て韓国に輸出。 2004年6月 • フィリピン HMR Envirocycle – フィリピンにあるオーストラリア系 の会社。中古商品の買取、販売 をおこなう。 – コンピューターの解体工場を建 設。CRTガラスは、ガラスカレッ トにし、韓国に輸出する予定。基 板も韓国に輸出。 – 企業等から処理費用を受け取っ て処理。 ↓CRTガラスの 破砕機。2004年 6月 • タイなどでも、e-wasteの処理に 関して事業認可をうけた企業が 出てきている。 • 途上国国内では、e-wasteが集 められない場合、海外から集め ることを考えている企業もある。 9 鉛蓄電池の リサイクル(1) • 1990年に台湾で、輸入廃 鉛蓄電池をリサイクルして いた工場の近くの幼稚園で 幼児の知能指数が低下し た。 • バーゼル条約の対象となり、 貿易量は大きく減少した。 • 途上国内で発生する鉛蓄 電池のリサイクルの過程で は、依然、汚染が生じてい る。 • ベトナムに進出した日系企 業では、適切なリサイクル 先が見つからないとして、 鉛蓄電池を工場内に保管 している。 インド・デリー市内の車のパーツ市場の店の 奥で、鉛蓄電池の組み立てを行う。原料は 廃鉛蓄電池をとかしたもの。2001年10月。 ベトナム・ハノイ市郊外の小規模鉛リサイ 10 クル工場。2004年6月。 鉛蓄電池のリサイクル(2)フィリピン 原材料 Philippine インフォーマル Recyclers 小規模精錬 Inc. 工場 輸入 (電解 バッテリー 液処理済) 電極版 国内 国内 インフォーマル リコンディショナー /家内精錬 国内 及び 解体済み バッテリー 製品 精錬済み鉛 未精錬鉛の 未精錬鉛の の塊 塊 塊 鉛回収率 98% 約90% 出所)Hoffmann(1999)をもとに作成 約40% 11 インドネシア金属リサイクル 工場からの地下水汚染 • 大手企業などから委託を受けた小 規模な金属リサイクル工場が、金属 を取り出す過程で重金属による物質 を汚染を引き起こした。 • 地下水を汚染し、付近の住民が生活 に利用していた井戸水も汚染される。 •2001年8月の訪問時には、 付近の住民に、皮膚病が出 るなど、健康被害が生じてい た。2003年7月でのヒアリン グでは、上水道が引かれ、 汚染された井戸水を使わなく なったという。 12 アジア地域の廃棄物輸入統計 (単位:千トン) 台湾 廃物 1990 中国 2003 インドネシア 1990 2003 1990 2003 プラ 紙 0 1807 63 1121 24 423 3024 9382 28 462 4 2014 鉄 2563 3176 183 9293 946 964 銅 15 80 21 3162 1 3 鉛 34 0 5 0 35 0.7 13 香港環境保護署による輸入廃棄物の管理 • 環境保護署に、輸入廃棄物と輸出廃棄物の検査チームをお き、税関などの通報に基づき、検査を実施。中古家電につい ては、輸出前の動作確認、適切な梱包をもとめる通達を昨年 秋に輸入業者へ送付。 日本から香港に輸出され、香港でシップバックされた最近のケース 年 有害廃棄物 02 廃コンピューター・モニター 重量 72トン 03 廃コンピューター・モニターと廃テレビ 03 廃コンピューター・モニター 14トン 出所:香港環境保護署資料。 28トン 詳細 1100台。メタルスクラッ プに隠されていた 800台 130台のモニターとそ の他の電子廃棄物 14 フィリピンのバーゼル条約に基づく輸入 • フィリピンのバーゼル条 約の対象物質は、日本 の定義よりも広くなって いる。日本では届け出 が出されていないもの が、フィリピンでは届け 出が必要となっている。 日本からは、バーゼル の規制対象としていな い旨の回答を出してい ると考えられる。 フィリピンではバーゼル条約に基 づいて届け出がされ、日本から輸 入されたもの。(2003年) 対象物 量 100トン 中古テレビ アルミ金属屑 1200トン 再生自動車 17,362kg 用バッテリー 中古テレビ・エア 計465台 コン・ステレオなど 出所:環境・天然資源省資料。 15 越境移動に関する規制強化 • 中国: – 廃家電の輸入を禁止(2000) – 廃家電とその破砕品の輸入を禁止(2002) – 輸出企業の登録制(2004年11月より) • タイ: – 廃家電の輸入禁止、中古家電の輸入制限(2003/10) • バーゼル条約の改正案の批准(有害廃棄物のリサ イクル目的での先進国から途上国への輸出を禁止、 1995年採択、批准国数が少なく未発効) – 中国 2001年1月に批准 – マレーシア 2001年10月に批准 – スリランカ 1999年1月に批准 16 適切なリサイクル先が見 つからない場合の対応 • あまり環境対策を意識していな ければ、地元政府の指導などに 従い、埋め立て処分をしたり、引 き取り業者に渡す。 • 工場内に溜め込む。 • 日本に送り返してリサイクルをお こなう。 メッキ工程から出るスラッジは、レンガの 発色などに使用できるため、80年代には 業者に逆有償で引き渡していた。業者が 近くの川に捨てていることがわかり、工場 内での保管に切り替えた。インドネシア の日系工場で。1991年。↑ – バーゼル条約に則って日本に輸 入された有害廃棄物としては、 基板、蛍光灯、銅スラッジなどが ある。(WG第1回参考資料7) – 有害廃棄物の輸出が禁止され ている国(ベトナム)では、有害 物質を無害なものにしてから輸 出するケースもある。 ↑塩化銅(バーゼル対象)を酸化銅(バー 17 ゼル対象外)に変換してから日本に輸出。 ベトナムの日系工場で。2004年6月。 再生資源・中古品の国際循環に関する問題点 資源利用面 環境保全面 80 再生資源の利用が徐々に活 台湾などで、廃鉛バッテリー、廃 年 発になる。 電線などのリサイクルの過程で 代 環境汚染の問題が発生。 対 バーゼル条約(1992年発効)事前通知・承認の制度。特定有 応 害廃棄物を対象。各国が対象物質をきめることもでき、また、 輸入禁止などより強い措置をきめることもできる。 BAN改正(先進国から途上国への輸出を禁止する)未発効。 問 各国の定義が異なること、手 バーゼルの規制対象外として 題 続きに時間がかかること、よ 輸出されているものに、リサイ り厳しい規制をとっている国 クルできないものが混入。輸 点 があることなどから、貿易が スムーズにいかなかったり、 貿易ができなくなっている。 出先のリサイクルの過程で汚 染が生じている。使用済みと なった中古品が適切に処理さ 18 れていない。 基本的な姿勢 • 有害廃棄物については、バーゼル条約の事前通知・承認の 制度を維持する。 • リサイクルが適切に行われ、不適切なリサイクルが行われる 危険性が少ないものについては、手続きの簡素化。 • 税関などでの検査の強化など、運用面での監督強化。 • E-waste・中古家電製品については、バーゼル条約の手続 きを必要としている国もあること、香港からのシップバックの 事例も出ていることから、日本でも事前通知・承認の対象と する。 • バーゼル条約BAN改正は、適切にリユース・リサイクルされ るものの越境移動を妨げることになりかねないため、二国間 条約の締結など対応が必要。 • アジア地域への企業進出、技術移転などを通したリサイクル 産業の育成を支援。 19 国際的な越境移動に関連して • バーゼルにもとづく輸出手続きが整 備されていない国・地域については、 輸出手続きを定めるようにうながす。 • – 輸入国のみの規制に抵触。=>輸入 国の規制を輸出国でも周知。 – 輸入国・輸出国ともに規制に抵触。 輸出側での税関での管理の強化。 – ベトナム(今年末には、環境法を改 正し、輸出できるようにする予定との こと) • • 輸出国、輸入国の片方のみがバー ゼル対象としているケースについて の手続きも明確にする。 手続きの簡素化(?) – 定期的に貿易されるようなケース – 日本の廃棄物処理法とバーゼル対 応法の両方の手続きが必要な場合 は、一部手続きの共通化などで手続 きを簡素化 • 各国のバーゼル対象物質の情報を 各国で共有。対象の共通化も視野に 情報交換をおこなう。 シップバックされた船の情報の公開、 アジア各国での情報の共有。検査の 強化。シップバックの理由の明確化 • • • • 税関の共同研修、検査マニュアルの 共同作成や再生資源の流通に関す る共同調査の実施。(EUの経験 (IMPEL-TFS)が参考になる。) 輸出できる再生資源の品質基準をさ だめる。 輸出業者の要件を定める。 BAN改正案への対応 – 輸入できる国(Annex VII諸国)の定 義の明確化。 – 二国間協定。 20 EU:IMPEL-TFS • European Network for the Implementation and Enforcement of Environmental Law (IMPEL) のTransfrontier Shipments of Wasteに 関するプロジェクト。1992年に設立。 • 共同で、有害廃棄物の輸出入の管理についてのプ ロジェクトを実施。 – 不法に運搬されたものの返送に関するマニュアルの作成 – Seaport Project: 書類、貯蔵施設、輸送の検査に関する マニュアルの作成 • 輸出先である香港の環境保護署も参加。 21 アジア地域でのリサイクルの推進 • アジア各国でリサイクルのシステ ムができる前に、日本からの再 生資源の輸出を促進すると反発 を招く可能性もある。 – 各国でのリサイクルのシステム 構築を刺激するような形の方が、 望ましい。 • E-wasteに、関心が集まってきて いる。 – UENPアジア太平洋事務所主催 “Regional Expert Meeting on e-waste” 2004年6月。(インベン トリーの作成のためのマニュア ル作りなどを行う構想) – 中国、フィリピンやタイでは、適 正な処理技術を導入し、ewasteの処理に乗り出す企業も 出てきている。 • JICAの研修などでは、家電リサ イクル工場などの見学がおこな われているが、解体工場だけで はなく、周辺のリサイクル技術に ついての理解を深めてもらう必 要がある。 鉛リサイクル ブラウン管ガラスの洗浄 基板の処理 廃プラスチック・古紙などの圧 縮・梱包技術 – セメント工場での廃棄物の利用 – 電炉(鉄)での医療廃棄物処理 – – – – • 日本の1970年代の中小のリサイ クル産業の公害対策支援、設備 の近代化などの経験が参考にな る。 22 各国で異なる担当省庁 • 輸出入に関する検査の実行部隊 – 香港:税関の協力を得ながら、環境保護署の検査チーム がおこなう。 – タイ:工業省に検査チームがおかれている。中古コン ピューターの動作確認も行っている。 – 中国:地方の出入境検験検疫局が担当。 – 日本では税関が中心。 • 日本でも他のアジア諸国でも複数の省庁が関与し ている。総合的な政策対話では、関係省庁すべて の参加をすすめる必要がある。個別の案件では、相 手国の適切な部署とコンタクトをとっていく必要があ る。 23 生産設備の途上国への移転 リサイクル先が進 出先にはなく、貯 蔵あるいは、輸出 再生資源の先進国から発展途上 国への輸出が拡大 先進国での再生資源 の回収の拡大 不適正なリサイクルの拡大 人件費が安く、成長も著し く、再生資源の需要が拡 大。埋め立て費用も安い 適正なリサイクル技術の移 転・企業進出 途上国のリサイクル産業への環 境規制の執行が十分でない 環境規制を実施 する体制が不十 分 監視の 強化 バーゼル条約などの越境 移動を規制する措置 規制対象 のすりあわ せ 適切なリサイクルを行えるものに 関しても、貿易がしにくい、貿易が できない。 適切にリサイクルできるもの:越境移動を容易にする制度 バーゼル条 約の規制対 象の判断が 各国に任せ られている部 分がある 24