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カーボンナノチューブを用いた 発泡成形体の開発

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カーボンナノチューブを用いた 発泡成形体の開発
カーボンナノチューブを用いた
発泡成形体の開発
(H21-23)
工業技術センター
素材技術部
佐竹 康史
樹脂の発泡成形体
・用途
容器,断熱材,緩衝材,建材
・特徴(発泡スチロール) EPS
軽量,断熱性,緩衝性
有機溶媒への耐性が乏しい
・リサイクル利用
[マテリアルリサイクルの例]
使用済み発泡スチロール
破砕後に熱溶融
ストランドをペレット化
再生発泡スチロール
成形品 ビデオカセット等
(発泡スチロール協会 提供)
電磁波吸収体
目的:発泡成形体の高付加価値化
数百億円市場
電波吸収体
Electric Wave Absorber
【機能発現方法】
魚箱
電波吸収シート
導電性物質を添加
導電経路形成
導電性を持たせる
電磁波を熱に変換
・車載ミリ波レーダー
(衝突防止装置)
・ETC構造部材
・電子レンジ,無線LAN
電波吸収体
•導電性物質添加の問題点
カーボンブラック(粒子)
カーボンファイバー(繊維)
•多量添加が必要
•摩擦による脱落
•耐衝撃性の低下
カーボンナノチューブ(CNT)
細長い導電性材料
・炭素材料の一つ
黒鉛
ダイヤモンド
フラーレン
カーボンナノチューブ
(1991年 飯島澄男教授により発見)
・性質
電気伝導性、熱伝導性
高い比表面積
耐熱性,耐食性
細長い,低いパーコレーション閾値
CNT + EPS = EWA
CNTで発泡体を電波吸収体に変換
(NEDOホームページより)
【技術動向】
発泡成形の基本と主な検討項目
主な発泡成形法
[押出し法] :「流す」→「形にする」→「固める」
CNT分散 発泡押出し
原料
【押出法による研究で既知の問題点】
1.形状が限定的で、後加工が必要.
2.CNT分散と発泡の両立が困難.
3.精製CNTが高価格.(数千円/g)
スクリュー混練
[ビーズ法]
約50倍
融着
膨張
(水蒸気)
原料ビーズ
成形
県内企業
一次発泡ビーズ
発泡成形体 (自由形状)
(直径約1mm)
検討項目
要素
CNT添加方法
CNT処理法,樹脂発泡性,成形体形状
成形体の物性
電磁波吸収特性,導電性,断熱性,力学物性
社会・経済的側面
リサイクル性,CNT添加コスト(未精製品)
【予備試験結果】
CNT添加方法の検討
ポリスチレンビーズへの添加
溶媒
混合後
混合前
写真1.CNTと発泡ビーズ
写真2.CNT添加発泡ビーズ
【問題点】
・CNTの凝集
発泡粒が膨張する際に連続性と導電性を喪失
・樹脂の有機溶媒への耐久性
有機溶媒で樹脂の発泡性を喪失 → 水溶媒の検討
・CNTの材料コスト
→ 精製品から未精製CNTへの変更 (数十円/g)
3mm
写真3.CNT添加ビーズ
(溶媒DMFで混合)
【課題】
CNT添加方法の検討
未精製CNTを水溶媒で発泡体に添加する方法の検討
[ビーズ法]
約50倍
融着
膨張
(水蒸気)
成形
原料ビーズ
(直径約1mm)
一次発泡ビーズ
発泡成形体
前駆体
[前駆体表面塗布法]
未処理
表面塗布
CNT添加の「タイミング」と「コンビネーション」
超音波処理
融着
成形
写真4.CNT-水 分散液
写真5.CNT表面塗布前駆体
写真6.CNT添加発泡成形体
【予備試験結果】
CNT添加方法の検討
前駆体表面塗布法
CNT含有発泡体が得られた.
電気が通る発泡スチロールができた.
抵抗値:60Ω
10mm
写真7.煮沸によって生成した発泡体
写真8.シャーレで成形した発泡体
CNT添加方法の検討
発泡成形体中のCNTの状態観察
【開発の方向性】
水を溶媒に用いて発泡成形体を得る方法を確立.
導電経路
2mm
写真9.CNT添加発泡成形体の断面
写真10.粒界面のCNTの電子顕微鏡写真
・成形体内部:セルの界面が3次元網目構造を形成
・界面のCNT:互いに繋がり合ったパーコレーション状態
検討項目の詳細
発泡成形体の高付加価値化: CNT添加 → 電磁波吸収発泡体
【CNT添加条件】
課題
目標
CNT添加条件 1
水だけで液状化
CNT添加条件 2
発泡体表面塗布性
CNT添加条件 3
3次元網目構造の形成
【電磁波吸収特性】
1.00
成形体の物性 1
未添加
0.00
導電性の発現
[dB]
-1.00
市販品
成形体の物性 2
電磁波吸収特性の発現
-2.00
-3.00
開発品
成形体の物性 3
熱伝導率の変化
-4.00
0
0.5
1
1.5
周波数[GHz]
2
2.5
3
【リサイクル性】
コスト(材料価格)
未精製品,精製品
ストランド
リサイクル性
スチロール樹脂との違い
破片
ペレット
破砕粒
【特許出願内容】
CNT水性ゲル
未処理
CNT:水に不溶
超音波処理
(分散剤 or 界面活性剤 or 有機溶媒が必要)
CNT水性ゲルの調製に成功
水に不溶とされるCNTを液状化
40mm
前駆体表面塗布法に適用
写真11.CNT-水分散液
(7g / L)
【処理条件】
超音波撹拌装置 2分/約45℃(水)
一次発泡粒
【CNT発泡体開発における障壁】
① CNTが水に不溶な粉体 (取扱困難)
② 有機溶媒による発泡材料の変質
③ コスト上昇 (精製品 : 数千円/g)
CNT添加発泡粒
CNT添加発泡成形体
【CNT水性ゲルの活用】
① 流す → 形にする → 固める (基本プロセス)
② 母材の選択肢
→ 増加
(水溶媒)
③ 未精製品使用可能 → 数十円/g (安価)
【研究成果】
メインターゲット:発泡成形体
[5wt% CNT 発泡成形体について]
1.
2.
写真12.CNT添加発泡成形体
3.
4.
5.
表1.各材料の熱伝導率
材料
熱伝導率
(W/mK)
開発品(CNT発泡成形体)
0.0334
未添加発泡スチロール
0.0329
CNT
3000
銅
398
発泡成形体中にCNTによる
3次元網目構造を形成.
導電性が発現:抵抗発熱体
(体積抵抗率:106Ωcm)
電磁波吸収特性が発現.
熱伝導率:1割上昇.
抵抗発熱体として、融雪など
に利用可能.
県内企業に技術移転済み:量産化支援
前駆体表面塗布法
ガラス
1
一次発泡粒
樹脂
0.4
CNT添加発泡粒 CNT添加発泡成形体
【研究成果】
市販品と同等以上の電磁波吸収特性を発現.
電磁波吸収特性(同軸管法)
試料厚さ 10mm
1.00
未添加
0.00
[dB]
-1.00
-2.00
市販品
開発品
-3.00
-4.00
0
0.5
1m
主な利用例
1
1.5
周波数[GHz]
波長
2
2.5
3
10cm
VHF 超短波(UHF) ・電子レンジ ・無線LAN(2.4GHz)
【研究成果】
高周波帯域において幅広く電磁波を吸収できた.
高周波帯域の電磁波吸収特性
(自由空間法) 試料厚さ 10mm
0
反射減衰量 (dB)
-5
太線:開発品
細線:市販品
-10
-15
-20
実用レベル
-25
-30
0
20
40
1cm
マイクロ波
主な利用例
・無線LAN
・衛星通信
60
80
周波数 (GHz)
100
3.3mm
波長
ミリ波
・レーダー
・自動車衝突防止装置
120
【研究成果】
リサイクルの応用例
ストランド(ケーブル)とフィルム
写真13.CNT含有ケーブル
写真14.CNT含有樹脂フィルム
処理条件:200℃溶融 任意の形状に加工可能
製品特性:導電性,電磁波吸収特性を有する樹脂材料
加熱溶融法:リサイクル法として有効
加熱プレス法:二次加工法として有効
再生スチレン樹脂と同等
フィルム、ケーブル、成形品
再利用可能
【実施結果】
各検討項目と現在の状況
発泡成形体の高付加価値化: CNT添加 → 電磁波吸収発泡体
課題
目標
現在の状況
CNT添加条件 1
水だけで液状化
◎ 水性ゲル化成功(超音波)
CNT添加条件 2
発泡体表面塗布性
◎ 常温スプレー法,煮沸法
CNT添加条件 3
3次元網目構造の形成
◎ 前駆体表面塗布法で解決
成形体の物性 1
導電性の発現
○ 抵抗発熱体と同等
成形体の物性 2
電磁波吸収特性の発現
○ 市販品と同等以上 (20dB)
成形体の物性 3
熱伝導率の変化
◎ 断熱材と同等 (1割変化)
コスト(材料価格) 未精製CNTで機能発現
◎ 未精製品で可能 (35円/g)
リサイクル性
スチロール樹脂と同等
◎ フィルム,ケーブル,成形
特許
特許出願,実施許諾契約 ◎ 出願,実施契約 (各1件)
【事業のまとめ】
「カーボンナノチューブを用いた発泡成形体の開発」
[研究成果]
1.前駆体表面塗布法を用いて、内部に3次元網目構造を形成して
CNT同士が互いに繋がり合う発泡成形体の製造法を確立した.
2.軽量で断熱性と緩衝性に優れた発泡成形体に、
導電性と電磁波吸収特性を付加した新規な材料を創出できた.
[応用製品例]
1 電磁波吸収体 → 自動車衝突防止装置,ETC部材,電波暗室,無線LAN
2 発熱断熱材
→ 水道管凍結防止,融雪,園芸ハウス
3.特許出願を行い、県内企業と実施許諾契約を締結した.
技術移転を行い、実用レベルを確保し、製品の量産化を支援中である.
発明の
発明の名称:
名称:「多層カーボンナノチューブ
多層カーボンナノチューブ分散配合水性
カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル
分散配合水性ゲル及
ゲル及びその製造方法
びその製造方法」
製造方法」
(特開 2012ー
2012ー87041)
87041)
[技術移転状況] 移転先:県内発泡成形企業
CNT発泡成形製品の量産化を検討中
ご静聴ありがとうございました.
賜りましたご支援に感謝申し上げます.
ナノ材料を活用した技術開発,製品開発を通して
山形県の豊かさづくりに繋がるよう励んで参ります.
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