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第7章 各種の権利の登記1

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第7章 各種の権利の登記1
第7章
第1節
1
各種の権利の登記1
地上権に関する登記
地上権に関する登記
1 地上権設定登記申請書において、設定の目的は必要的記載事項である。これ
に対して、存続期間、地代、支払時期の定めは、その定めがある場合に初めて記
載される任意的記載事項である(法111条1項)。
2 存続期間を50年以上として設定し、かつ期間の更新がない、いわゆる定期借
地権(借地借家法22条)、もっぱら事業の用に供する建物所有を目的とし、かつ存
続期間を10年以上20年以下として設定する、いわゆる事業用借地権(同法24条)の
定めがある場合もまた記載を要する(法111条1項)。
3 建物所有を目的として地上権を設定する場合、他の者と共同して借地権者と
なる時に限り、地上権設定者もまた自ら借地権者の一人となることができ(いわ
ゆる自己借地権,借地借家法15条1項)、その旨の登記をすることができる。
4 申請人は、登記権利者が地上権者、登記義務者が土地所有者である。
2
区分地上権に関する登記
地下または空間の上下の範囲を定め工作物を所有するために設定された地上権
を一般に区分地上権という(民法269条の2)。区分地上権の設定登記にあっては、
法111条1項所定の事項を申請書に記載するほか、地上権の目的である地下また
は空間の上下の範囲を記載しなければならない(同条2項本文)。
3
地上権設定の登記に関する先例
● 地上権の目的となしうる、工作物・竹木等の諸施設によって構成されるゴルフ場は、これ
を1個の工作物と考えられるから、ゴルフ場所有を目的とする地上権設定登記は受理される
(S47.9.19民三447号)。
● ゴルフ場所有を目的とする地上権設定登記申請と同様、スキー場所有を目的とする地上権
設定登記は受理される(S58.8.17民三4814号)。
● 臨時設備その他の一時使用のために設定したことが明らかな借地権については、借地借家
法の存続期間に関する規定の適用はない(借地借家法25条)。この借地権の設定の登記の目的の
記載は、「臨時建物所有」とする(H4.7.7民甲3930号)。
● 存続期間の満了した地上権の設定の登記がある場合に、抹消登記の手続をとることなく、
重複して地上権設定の登記の嘱託を行うことはできない(S37.5.4民甲1262号)。
● 借地借家法15条の規定により、他の者と共に借地権を有することとなるときに限り、自ら
を借地権者とする借地権を設定することができることとなったので、借地権の設定の登記につ
いては、登記義務者が同時に登記権利者となる場合でも、他に登記権利者があるときは、その
申請は受理される(H4.7.7民甲3930号)。
● 地代を「造林地の生産材(間伐木を含む)売払代金の100分の45」と表示して、地上権設定の
登記をしてさしつかえない(S39.9.22民三580号)。
● ①地上権移転又は抵当権設定の登記を申請するときは申請に先ち土地所有者の奥書割印を
受ける、②立木が災害で滅失したときにその損害木が50年未満のときは検査を受け再植込みを
することができる等の地上権の特約事項は、物権関係を生ずるものではないから登記すること
ができない(S34.12.19民甲2908号)。
-1-
● 金融機関が登記権利者としてする地上権、賃借権等の設定登記については、地上権者等の
支店名を表示することはできない(S36.9.14民甲2277号)。
● 登記簿上の存続期間経過後の日付を登記原因日付としてなされた地上権移転登記の申請は
却下すべきである(S35.5.18民甲1132号)。
(区分地上権関係)
● 特定の階層の区分建物の所有を目的として区分地上権(民法269条の2第1項)を設定する
ことはできない(S48.12.24民三9230号)。
● 区分地上権でない既登記の地上権について当事者の契約によりあらたにその上下を範囲の
定めをすることができるが、この場合には法56条1項の規定により、変更の登記を申請するこ
ととなる。なお、この場合、当該地上権を目的とする抵当権または処分の制限の登記等の第三
者の権利に関する登記が存するときは、これらの登記の名義人は、同項にいわゆる「登記上利
害の関係を有する第三者」に該当する(S41.11.14民甲1907号)。
● 農地の地下に工作物を設置することを目的とする地上権又は地役権を設定するには、農地
法第3条第1項、第5条第1項又は第73条第1項の規定による許可を要するものとして取り扱
うのが相当と考える(S44.6.17民甲1214号)。
● 区分地上権を設定しようとする土地についてその使用または収益をする権利およびこれら
の権利を目的とする権利が存する場合でも、民法269条の2第2項の規定によりこれらの権利
を有する第三者の承諾を得たときは、区分地上権を設定することができるが、その区分地上権
の設定の登記を申請する場合には、法35条1項4号の規定により、その第三者の承諾を証する
書面を添付することを要する(S41.11.14民甲1907号)。
第2節
1
地役権に関する登記
地役権に関する登記
(1) 地役権設定登記の申請に関し、「要役地の表示」、「設定の目的」、「範囲」は
必要的記載事項である(法113条1項前段)。なお、設定範囲が一部であるときは、
その範囲を明らかにするために、図面を添付しなければならない(同条2項)。
(2) 設定行為に別段の定め(民法281条1項但書)、承役地所有権者の修繕義務
などの負担の定め(同法286条)等があるときは、これを記載しなければならない
(任意的記載事項,法113条1項後段)。
(3) 地役権設定登記は、承役地の登記用紙の乙区になされる(法16条4項参照)。
したがって、承役地について所有権の登記がされていることが必要である。また、
要役地について所有権の登記がない場合、地役権設定の登記は、することができ
ない(法112条の2)。地役権は、要役地の登記用紙にも記載されるからである(法
114条1項)。
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2
地役権設定の登記に関する先例
● 地役権の登記においては、登記権利者たる地役権者を登記簿に表示することを要しない
(法第113条の2)。したがって、要役地につき所有権移転の登記がされた場合でも、地役権移
転の登記はする必要がない(本来、地役権移転の登記はすることができない)(S35.3.31民事甲
712号)。
● 甲地の一部を承役地とする通行地役権設定登記後、重ねて右甲地の同一部分を承役地とす
るBのため通行地役権設定登記の申請は、受理される(S38.2.12民甲390号)。
● 要役地の所有権移転登記を受けた者は、地役権の移転を登記なくして対抗することができ
るが、地役権移転の登記の申請があったときは、これを受理してさしつかえない(S31.6.16民
甲1363号)。
● ある高さ以上の建物を建築しないという日照地役権の設定登記はすることができるが、そ
の登記申請書の記載事項について、目的は、「日照の確保のため高さ何メートル以上の工作物
を設置しない」と記載する(S54.5.9民三2863号)。
● 特別高圧送電線架設に伴う承役地の地役権設定登記の申請書に記載する地役権設定の目的
は「特別高圧送電線の架設、保守のため、その特別高圧送電線の最下垂時における電線から
(何)米の範囲内に建造物築造の禁止及び送電線保守のための土地立入り。」でさしつかえない
(S38.10.5民甲2808号)。
● 要役地の地上権者は、その権利の存続期間の範囲内において地役権の主体となることがで
きる(S36.9.15民甲2324号)。
● 通行地役権設定登記に際して、承役地の通行方法を「徒歩及び軽自動車による通行」と限定
して登記することはできるが、「徒歩及び軽自動車(長さ382センチメートル以下、幅153センチ
メートル以下、高さ137センチメートル以下の小型自家用乗用車1台)による通行」という形で、
軽自動車の大きさ(長さ、幅、高さ)及び台数を限定した形の登記はできない(S59.10.15民三5
157号)。
● 地役権設定登記後、当該地役権の要役地になされた所有権移転登記の登記名義人(地役権
者)が、当該地役権につき登記義務者として登記を申請する場合には、登記義務者の権利に関
する登記済証として、要役地の所有権の登記名義人の所有権取得の登記の登記済証又はその者
の地役権取得の登記の登記済証のいずれを提出してもさしつかえない(S37.6.21民甲1652号)。
● 地役権図面の作製について地役権が存続すべき部分又は地役権設定の範囲については、地
積の測量の結果を図示することを要するが、その他の部分については見取図的なものでさしつ
かえない(S37.6.11民甲1559号)。
● 電気事業者の農地等を目的とする電線路のための地役権を設定した場合の登記の申請書に
は、地役権設定の目的として「電線の支持物の設置を除く電線路の施設」と記載すべきであり、
この場合には、農地法3条・5条等の許可を証する書面の添付を要しない(S31.8.4民甲1772
号)。
● 承役地の分筆登記をした場合、分割後の土地の一部にも地役権が存続するときには、要役
地の登記用紙に記載されている承役地の表示及び地役権の範囲に変更が生じるので、職権によ
り変更の付記登記することを要する(S36.5.17民甲1158号)。
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