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区分 学内公募 所属 人間文化研究科 補職 准教授 氏名 佐野直子 分担

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区分 学内公募 所属 人間文化研究科 補職 准教授 氏名 佐野直子 分担
1 . 標 題 : 少 数 言 語 を使 用 する「特 別 な場 」の創 出
―オクシタン語 ネットワーク形 成 の拠 点 事 例 としての「書 店 」
区分
学内公募
所属
人間文化研究科
補職
准教授
氏名
佐野直子
分担者
2.要旨:
本 研 究 は 、「 危 機 に 瀕 す る 言 語 」 の 一 つ で あ る オ ク シ タ ン 語 の 保 護 活 動 と し て の 「 書 籍
出 版 」、特 に そ れ を 売 買 す る 書 店 に 焦 点 を あ て 、そ こ で 働 く 人 々 へ の 聞 き 書 き を 通 し て 、少
数言語保護運動の変容や言語のありかたの変容について明らかにすること を目的として実
施 さ れ た 。 モ ン ペ リ エ 、 ト ゥ ー ル ー ズ 、 オ ー リ ヤ ッ ク で の 書 店 員 、 書 店 経 営 者 、 NPO 書 店
メンバー合計 4 名への聞き書きを実施した結果、
「 危 機 に 瀕 す る 言 語 」を 書 記 化 し た 後 、そ
の言語で読ませる・書かせるための(当該言語の話しことばとも、他の言語とも異なる)
独 自 の 自 立 し た ネ ッ ト ワ ー ク が 、「 書 店 」 を 中 心 に 形 成 さ れ て い る こ と 、 そ し て 現 在 、「 書
籍 」「 書 店 」 そ れ 自 体 が 危 機 に 陥 っ て い る 中 で 、 そ の 役 割 が 変 容 す る こ と が 、「 危 機 に 瀕 す
る言語」のみならずあらゆる言語のありかたを変容させる可能性があることが明らかにな
った。
キ ー ワ ー ド :「 危 機 に 瀕 す る 言 語 」
書記言語ネットワーク
書店
聞き書き
3.概要
①研究目的:
「 危 機 に 瀕 す る 言 語 」 の 一 つ で あ る オ ク シ タ ン 語 の 保 護 活 動 と し て の 「 書 籍 出 版 」、 特
にそれを売買する書店に焦点をあて、そこで働く人々への聞き書きを通して、少数言語保
護運動の変容や言語のありかたの変容について明らかにする。危機言語がほとんど話され
な く な る 一 方 で 、識 字 率 が 非 常 に 高 い 現 代 社 会 に お い て 、
「 書 く 」こ と に よ る 危 機 言 語 の 保
護・復興がむしろ世界的な運動の中心となっている現在、 中世以来の「文学語」という地
位を持ち、
「 書 籍 」文 化 と の 親 和 性 が 高 い な が ら も 危 機 に 陥 っ て い る オ ク シ タ ン 語 の 事 例 は
他 の あ ら ゆ る 言 語 に と っ て も 示 唆 的 で あ る 。 ま た 、「 書 籍 」「 書 店 」 そ の も の が 、 イ ン タ ー
ネ ッ ト の バ ー チ ャ ル な 空 間 に お け る 書 記 言 語 使 用 の 覇 権 の 中 で 危 機 に 陥 っ て お り 、そ の『 書
店」の持つ独自の役割を考察することも、本研究の目的に含まれる。
②研究方法:
本 年 度 は 、 調 査 を 実 施 す る の み に と ど ま っ た 。 2015 年 2 月 に モ ン ペ リ エ 、 ト ゥ ー ル ー ズ 、
オ ー リ ヤ ッ ク で 、 そ れ ぞ れ の 書 店 員 や 書 店 経 営 者 の 4 名 に お 話 を 伺 い 、 1 −3 時 間 の ラ イ フ ス
ト ー リ ー に つ い て の 聞 き 書 き を 実 施 し た 。言 語 は オ ク シ タ ン 語 と フ ラ ン ス 語 で 行 っ た 。彼 ら の
オ ク シ タ ン 語 を 習 得 し た 経 緯 も 交 え て 話 を 伺 い た か っ た た め で あ る 。今 後 、こ の デ ー タ を ト ラ
ン ス ク リ プ ト に 起 こ し 、フ ラ ン ス 語 と オ ク シ タ ン 語 の コ ー ド き り か え な ど に つ い て も 分 析 を 進
め る ほ か 、そ の ラ イ フ ス ト ー リ ー を 編 集 す る こ と で 、こ れ ら の 語 り 手 と と も に あ っ た 数 十 年 の
オクシタン語のあり方とその変容について考察していく予定である。
③研究成果及び考察とまとめ:
本研究はまだ調査・データ収集の段階であり、その分析や学術誌・図書としての発表は、
今年度以降の計画となっている。ただ、それぞれの書店員や書店経営者への聞き書きを通
じて明らかになったこととして、まず「はなしことば」と「書記言語」の持つネットワー
クが大きく異なるという点が挙げられる。特に国家の後ろ盾を持たない「危機に瀕する言
語 」野 場 合 、話 し こ と ば と し て 使 用 す る 場 面 が 著 し く 制 限 さ れ る 中 で 、
「 書 記 言 語 」に つ い
て は 、 さ ま ざ ま な NPO の 活 動 等 を 通 し て 、 そ の 教 育 が 行 わ れ る こ と で ネ ッ ト ワ ー ク が 形
成 さ れ て き た 。そ し て 、そ の よ う に し て 書 記 化 さ れ た 言 語 は 、今 度 は 、
「 何 を 書 き 、何 を 読
むのか」という問いに直面し、より質の高い作品を求め、それを流通させるためのネット
ワークを、独立して形成していかなくてはならなくなる。ほかの多くの言語活動とは異な
り、
「 出 版 」が 作 り 出 す ネ ッ ト ワ ー ク は 、他 の 言 語 に よ る 既 存 の ネ ッ ト ワ ー ク と は 容 易 に「 混
淆 」す る こ と が で き な い ゆ え に 、そ れ を 築 き 上 げ る こ と が 困 難 で あ る と 同 時 に 、
「言語の独
自性」を外から支える大きな契機であり、しかもそれが経済活動に結びつくことから、 よ
り広がりを持つ形でのネットワークを作り上げることになる点が非常に興味深い 点である。
そ の 一 方 で 、現 在 、
「 オ ク シ タ ン 語 出 版 ネ ッ ト ワ ー ク 」に 限 ら ず 、あ ら ゆ る 言 語 の 出 版 ネ
ットワークがインターネットのバーチャルな空間における書記言語使用の覇権の中で危機
に陥っている。インターネット空間でのさまざまな言語使用についてはまた別の研究成果
を 待 つ 必 要 が あ る が 、「 書 籍 の 出 版 」 と い う 、 言 語 の 「 個 別 化 」「 物 質 化 」 と い う 側 面 を 担
うドメインは、言語の保護・維持・復興において大きな意義を持つことはかわりがない。
今 後 、「 書 籍 」 の 持 つ 意 味 が 世 界 に お い て 変 容 す る こ と が 、「 危 機 に 瀕 す る 言 語 」 の み な ら
ずあらゆる言語のありかたをも変容させる可能性がある。
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