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千 曲 市 景 観 計 画
千 曲 市 景 観 計 画 平成 21 年 8 月 千 曲 市 未来へ引き継ぐふるさとの景観まちづくり 私たちの千曲市は、中央を流れる大河千曲川を中心に、周 囲を森林と清流を育む 1000m 級の山並みに囲まれた自然豊 かなまちです。 本市は、平成 15 年の1市 2 町の合併から5年が経過し、 18号バイパスや街路事業、平成21年開業予定のしなの鉄 道「千曲駅」など交通基盤を中心にした新しいまちづくりの 基礎が着々と整備されてきています。 これらの基盤整備は、私たちの生活のみならずあらゆる社 会・経済活動の広域化・活性化に大きく寄与するものと確信 しております。 しかし、広域化・活性化は土地利用形態の変化などにより、身近な自然・まちの 風景・眺望などの千曲市らしさも失っていくことが危惧されます。 本市には、長い歳月の歴史や文化によって育まれた「日本一のあんずの里」、 「姨 捨の棚田」、開湯 100 年余の「戸倉上山田温泉」、「土壁のまち稲荷山」など、市民 に共通する多くの貴重な財産があります。 これらの貴重な財産を守り、育て、次世代に引き継ぐことが、今の私たちに課せ られた責務であるとの認識から、本市の景観行政として直接かつ積極的に取り組む ことが重要と考え、千曲市景観計画を策定いたしました。 本計画では、美しい景観の保全と形成による個性あるまちづくりを実現するため、 市民・事業者・行政がそれぞれ責務を分担し、基本理念の下、千曲市全域を対象と して、そのあるべき姿などの方向性を示しています。 市内全域に共通する緩やかな基準は定めてありますが、まちづくりにおける景観 の保全・形成に向けた行動は、それぞれの地域の合意形成を基本としてあります。 何れにしましても、目標達成には紆余曲折が予想され、時間のかかる作業ではあ りますが、未来ある子供たちに誇れる千曲市のまちづくりを進めようではありませ んか。 最後に、この「千曲市景観計画」の策定にご尽力いただいた、千曲市景観計画策 定委員会の委員の皆様と、ご意見をいただきました市民をはじめとする関係者の皆 様方に心から感謝申し上げます。 平成 2 1 年 8 月 千曲市長 近藤 清一郎 目 次 第 1 章 千曲市景観計画策定にあたって························································ 1 1-1 千曲市景観計画策定の目的 ············································································1 1-2 千曲市景観計画の位置づけ ············································································2 1-3 千曲市景観計画の性格と構成 ·········································································3 1-4 上位関連計画での位置づけ ············································································4 第 2 章 千曲市の景観の現状と課題 ······························································· 5 2-1 千曲市の自然とまちの成り立ち ······································································5 2-2 千曲市の景観特性 ······················································································ 10 2-3 景観形成への取り組み状況 ·········································································· 23 2-4 景観形成に向けた課題 ················································································ 27 第 3 章 景観形成の基本理念と目標 ······························································33 3-1 景観形成の基本理念 ··················································································· 33 3-2 景観形成の目標 ························································································· 34 第 4 章 景観計画の区域(景観法第8条第2項第1号) ···································35 4-1 景観計画区域 ···························································································· 35 4-2 景観形成重点地区 ······················································································ 35 第 5 章 良好な景観の形成に関する方針(景観法第8条第2項第2号) ··············37 5-1 景観形成の主体と役割および実現施策 ··························································· 38 5-2 景観区分による市域全体を対象とした景観形成 ··············································· 43 5-3 景観形成重点地区における景観形成 ······························································ 61 第 6 章 行為の制限に関する事項(景観法第 8 条第 2 項第 3 号)·······················75 6-1 届出対象行為 ···························································································· 75 6-2 景観形成基準 ···························································································· 75 6-3 届出の審査手続 ························································································· 82 第 7 章 その他の景観形成に関する方針(景観法第 8 条第 2 項第 4 号)··············83 7-1 景観重要建造物・景観重要樹木の指定方針······················································· 83 7-2 屋外広告物の表示および掲示に際しての行為の制限に関する事項 ······················· 84 7-3 景観重要公共施設の整備に関する事項 ··························································· 85 7-4 景観農業振興地域整備計画の策定に関する基本的事項 ······································ 85 参考資料 ···································································································87 千曲市の景観資源図 ······························································································ 87 第1 章 景観 計画 策定 にあ たっ て 第 1 章 1-1 千曲市景観計画策定にあたって 千曲市景観計画策定の目的 1) 千曲市の景観の特色 きょうだいさん かむり き や ま 千曲市は、長野県北信地域南東部に位置し、東は鏡 台 山 (1,269m)、西は 冠 着山(1,252m) をはじめとする山々に囲まれ、変化に富んだ眺望景観が望めるまちです。 まちの中心に千曲川が流れ、その両岸に農地・集落による田園風景、市街地が展開しており、特色 ある地域的景観が広がっています。 また、日本有数の古墳群や、日本三大車窓の一つとなっている姨捨駅から見える美しい棚田、交通 の要衝として街道沿いに形成された宿場町などの、歴史的・文化的景観を有しています。 加えて、まちの玄関口として景観整備のなされた駅前市街地や、千曲川沿いに展開する温泉街、高 速道路や新幹線などのダイナミックな構造物による、近代的な都市景観を有しています。 2) これまでの取り組みと景観法による景観形成 千曲市以前の合併前旧市町では、都市計画マスタープラン等の中で景観の形成方針が示されてきま した。特に旧更埴市では、HOPE計画や景観形成基本計画、および美しいまちづくり景観条例が制 定され、稲荷山の白壁の蔵、あんずの里、姨捨棚田など、特色のある地域を中心に、景観形成を進め てきました。 国でも、個性ある美しい町並みや自然を保全する声の高まりのなかで、法整備が求められてまいり ました。このため、平成 16 年に制定された景観法では、我が国の都市、農山漁村等における良好な 景観の形成を促進することを目的として、具体的な規制手法や支援を定めています。また、景観形成 の基本理念として、 「良好な景観は、現在および将来における国民共通の資産」であり、 「地域の自然、 歴史、文化等と人々の生活、経済活動等との調和により形成されるため、適正な制限の下に、これら が調和した土地利用がなされる必要がある」としています。 千曲市では、議員提案により従来、更埴地域に適用されていた景観条例を市内全域に拡大するため 新たな「千曲市美しいまちづくり景観条例」を制定し、景観法との調整の上に「千曲市景観計画」を 策定することとしました。 3) 千曲市景観計画策定の目的 なりわい 千曲市の景観は、大地が育む豊かな自然と、そこに住む人々の生業と生活によって培われた歴史や 文化によって形づくられ、現在に至るまで脈々と伝えられてきた、固有の資源です。 私たちは、この景観を市民共有の財産として捉え、今後のまちづくりに活かすことを目指し、千曲 市独自の景観形成を進める必要があります。 これからの魅力ある千曲市独自の景観形成に向けては、市民・事業者・行政の役割分担と、相互の 合意形成の中で、景観の保全、育成、創出を推進する必要があります。 そのため、ここに、千曲市らしい景観形成の道筋となる基本的な方針や、施策並びに規制を位置づ ける景観計画を定めます。 1 1-2 千曲市景観計画の位置づけ 本計画は、景観条例第 1 条に掲げる目的を達成すべく、景観法第8条並びに景観条例第 6 条に規定 する景観計画として定めるものです。 また本計画は、景観行政を推進するためのマスタープランとして、総合計画および国土利用計画に 即し、またその他関連計画との整合を図るものとします。 さらに長野県景観育成計画との調整を取りながら、独自の景観行政の柱となる計画とします。 なお、以下景観法及び景観条例での同義条項は、景観法の条項を記載してあります。 景観法 千曲市美しい まちづくり景観条例 国土利用計画 千曲市計画 国土利用計画 千曲市計画 千曲市 千曲市都市計画マス 千曲市都市計画マス タープラン タープラン(策定中) 総合計画 (H19.4) (H20.6) 千曲市 千曲市 千曲市 景観計画 景観計画 景観計画 千曲市観光振興計画 H17.12) (H17.12 ( 千曲市環境基本計画 H18.3) (H18.3 ( 千曲市農業振興地域整 千曲市農業振興地域整 ( H16.4 ) 備計画 備計画 (H16.4) 千曲市森林整備計画 (H18.2) 調整 千曲市地域防災計画 長野県景観育成計画 長野県景観育成計画 (H17.12) (H17.12) 2 (H18.3) その他各種計画 その他各種計画 1-3 千曲市景観計画の性格と構成 本計画は、景観法に基づく景観形成の方針や規制などを示すものであり、千曲市全域を「景観計画 区域」と定め、ゆるやかな規制・誘導を行うものです。一方で、千曲市の景観の個性を強めるため、計 画区域の中に重点的に景観形成を図る地区(景観形成重点地区)を定めます。なお現時点では、景観 形成重点地区の候補地の選定と、候補地における景観形成の方向性までを示します。 良好な景観形成には、市民・事業者の理解や協力、社会情勢の変化への対応が必要です。本計画は 景観形成重点地区の指定や、行為の制限に関する事項についての内容の変更、下記 7 章の個別事項の 決定等を随時行ない、常に成長する計画とします。 本計画の構成は、以下のとおりです。 Ⅰ 千曲市景観計画の前提 第1章 千曲市景観計画策定にあたって 千曲市景観計画策定の目的/千曲市景観計画の位置づけ/千曲市景観計画の性格と構成 上位関連計画での位置づけ 第2章 千曲市の景観の現状と課題 千曲市の自然とまちの成り立ち/千曲市の景観特性/現状の課題と景観形成に向けた課題 第3章 基本理念と目標 どのような考えで景観形成を進めるか、理念と目標を示しています。 Ⅱ 千曲市景観計画 第4章 景観計画の区域【景観法第 8 条第 2 項第 1 号】 第5章 良好な景観の形成に関する方針 【景観法第 8 条第 2 項第 2 号】 良好な景観を形成するための方針を、以下の区分で示しています。 景観形成の主体と役割および実現施策/市域全体/景観形成重点地区 第6章 行為の制限に関する事項 【景観法第 8 条第 2 項第 3 号】 良好な景観の形成に関する方針をもとに、大規模開発行為に対して具体的な規制を示して います。 第7章 その他の景観形成に関する方針【景観法第 8 条第 2 項第 4 号】 今後指定等が想定される以下の事項についての方針を示しています。 景観重要建造物・景観重要樹木の指定方針/屋外広告物の表示および掲出等に関する事項/ 景観重要公共施設の整備に関する事項/景観農業振興地域整備計画の策定に関する事項 参考資料 3 1-4 上位関連計画での位置づけ 千曲市では、以下の上位・関連計画で景観に関する事項が定められています。 千曲市総合計画(基本構想:平成 19 年度~平成 28 年度) ひ ら く ま ち 将来像:千曲の魅力と 多彩な力が 未来を拓く 躍動の都市 基本理念 ○共生のまちづくり/○交流のまちづくり/○協働のまちづくり ■基本目標 2:ふるさとの自慢を未来に継ぐまち 達成方針 3:景観の美しいまちをつくる 《基本施策》 1.歴史や文化を感じる景観を形成する (歴史的まちなみの調査・保存とその活用/歴史的建造物の調査・保存/文化的景観の保存) 2.地域の特性を生かした良好な景観をつくる (都市景観の形成促進/農村景観の形成促進/地域との協働による景観形成の促進) 国土利用計画 千曲市計画(平成 20 年度~平成 28 年度) 【千曲市における土地利用の基本方向】 ①持続可能な市土の形成を図る ②豊かな自然環境と美しい景観の保全・創出 ③安全・快適な生活空間の創造 ④市土利用の総合的な経営・管理 千曲市観光振興計画(平成 18 年度~平成 27 年度) 観光の目標像:千曲ブランド※が息づく元気あふれる観光都市 千曲 ■取り組みの方針(景観に関する事項の抜粋) 温泉街の再生による観光振興 ○にぎわいゾーン※再整備実施計 画の策定と事業の段階的実施 にぎわい空間としての景観の創 出・再生 ・温泉街建築物の景観形成 ・景観を阻害する要因の排除 ○さらしな・姨捨名月の里エリア※ 名勝姨捨・棚田景観の活用による活動・交流の場の創出 棚田景観の保全/棚田景観の活用/姨捨棚田のPR ○旧街道蔵の街エリア 魅力ある旧街道・蔵の街の景観再生 ○あんず・科野の里エリア 「あんずまつり」の運営と里の景観保全による農業・ 地域振興」あんずの里の景観資源の保全と活用 千曲市環境基本計画(平成 18 年度~平成 27 年度) 望ましい将来像:清らかな千曲川のほとり、豊かな緑があふれ、だれもが心の豊かさを 感じられる、ふるさと千曲市 ■具体的な取り組みに向けた長期目標(景観に関する事項の抜粋) 泳ぎたい千曲川を復活します 生き物が豊かな小川や水辺を復活します 里山を守り、活かしていきます 環境に配慮した、やる気が持てる農林業を推進します ※ ※ ※ 「千曲ブランド」:千曲市に来ないと、目にしたり、手に入れたりすることができない、独自の景観・人材・産物・文化等に対するイ メージの総体。 「ゾーン」:地帯。区域。範囲。 「エリア」:区域。地域。ゾーンよりも、明確な境界をもつ区域を指す場合が多い。 4 第2 章 千曲 市景 観の 現状 と課 題 5 6 第 2 章 2-1 千曲市の景観の現状と課題 千曲市の自然とまちの成り立ち なりわい 千曲市の景観は、大地が育む豊かな自然を基盤に、そこに住む人々の生業と生活によって培われた、 歴史や文化によって、形づくられています。 ここではそれを踏まえ、千曲市の自然環境とまちの成り立ちについて、整理します。 1) 自然環境 (1) 変化に富んだ地形 きょうだいさん かむり き や ま 千曲市は、長野県北信地域の南東部に位置し、東は鏡 台 山(1,269m)、西は 冠 着山(1,252m) をはじめとする山々に囲まれています。そのほぼ中央を、くの字に大きく曲がりながら大河千曲川 が流れ、両岸に平地が広がっており、変化に富んだ地形となっています。 千曲川の川べりには、崎と呼ばれる山地の突出する地形(以下、「崎地形※」という)が見られま す。これは、旧河道※の侵食によって形成されたものです。 また、千曲川には多くの中小河川が流れ込み、細かな谷を形成しています。 冠着山、三峯山の北東斜面一帯では、地すべりによって形成されたなだらかな斜面が、広範囲に わたって広がっています。 ※ベース図:カシミール3D により作成 ※ 「崎地形」:千曲川の川べりの随所に見られる、山地の突出する地形。 (参考資料 ※ (1)自然系景観資源 p87-88、p93 参照) 「旧河道」 :蛇行が激しく水害がたびたび起こる暴れ川などで、河川を直線に改修したあとに残る、元の川の流れのこ と。 5 (2) 豊かな水環境 大河千曲川とその支流の中小河川に加え、近世より整備が進んだ農業用水路が、広域にわたって 張り巡らされています。また池沼、滝、湧水や、灌漑用のため池も各所に点在しています。 そのため市内各所で、水の流れるせせらぎを聞くことのできる、豊かな水環境を有しています。 (3) 多様な動植物の生息環境 千曲市は、東西に 1000m級の山々に囲まれ、年間の気温差が 27 度と大きいこと、また谷筋か ら千曲川へと流れこむ豊かな水系が存在していることから、多様な動植物が生息する環境を有して います。 動植物の名前を具体的にあげてみると、カタクリ、セツブンソウ、ハコネサンショウウオ、オオ ムラサキ、カワセミ等があげられます。 これら動植物は、市内を取り囲む森林や、河川に生息しており、そのたたずまいや鳴き声は、人々 の生活に癒しと安らぎを与えてくれます。 またこうした生息環境は、戦後の木材需要や、食料増産に向けた植林や農地の開墾など、農林業 なりわい を中心とした人々の生業によって形づくられたものです。 このように、人の手が継続的に加えられることでつくられた環境の中では、都市化された環境で はめったに見ることのできない景観が広がっています。 千曲高原大池 セツブンソウ 棚田と三峯山 オオムラサキ 6 三滝 カワセミ 2) まちの成り立ち (1) 古代~中世~近世 豊かな自然を背景に、縄文・弥生時代より人が住み続けてきました。その面影を残すものとして、 森将軍塚古墳を始めとした古墳群、条里制による遺構の残る屋代田んぼがあります。 たけ みず わけ じんじゃ 寺社仏閣にも古いものが多く、特に武水別神社は、中世に建立されたと伝えられています。 戦国時代には、たびたび戦場となったため、城跡が多く残されています。 こうした寺社仏閣や城跡は、いずれも崎地形の尾根線上や山すそにあり、特徴的な景観をつくり だす要素となっています。 江戸時代になると、善光寺道、谷街道、北国街道が整備され、併せて宿場が設置されました。 屋代田んぼ 武水別神社 森将軍塚古墳 ※出典: 『ふるさとアルバム 更埴・戸 倉・上山田』(撮影:千曲カラー) 谷街道 大雲寺 屋代宿 稲荷山宿 北国街道 荒砥城 善光寺道 下戸倉宿 智識寺 上戸倉宿 山・峠 崎地形 山すそ 街道 宿場 7 (2) 近代~現代 明治時代になると一帯は養蚕業によって栄え、善光寺道と谷街道が交差する稲荷山宿は、絹織物 や生糸の問屋を中心とした商業地へと発展しました。 明治半ばに鉄道が敷設され、駅が設置されると、稲荷山の繁栄は最盛期を迎えます。しかし昭和 時代に入ると商業地の中心は屋代駅に移っていきました。 大正時代には、度重なる水害からまちを守るため、堤防の整備も進みました。また川沿いには戸 倉上山田温泉が開発され、現在においても、県内では珍しい川沿いの温泉地となっています。 戦後になると、水害にも強い橋が架けられました。また衰退する養蚕業の代わりとして、りんご やぶどうの栽培が進む一方、工場の誘致も盛んに行われました。 平成時代に入ると、上信越自動車道、長野自動車道が整備され、併せて更埴インターチェンジ、 更埴ジャンクションが設置されました。 併せて、工業団地や住宅の整備によって都市化が進められてきました。その一方で、農地が減少 しています。 また、千曲川の河川敷は、市民の憩いの場としての公園整備が進んでいます。 雨宮地区 (昭和 5 年頃) ①戦前の風景と土地利用 屋代駅(昭和初期) ほ場整備前の屋代田んぼ (昭和 30 年頃) ※出典: 『ふるさとアルバム 更埴・戸倉・ 上山田』(撮影:中村義雄氏(故人)) 戸倉上山田温泉全景 (大正 6 年頃) 桑畑 水田 宅地 鉄道 街道 戸倉上山田温泉街 (昭和初期) 8 下戸倉宿(昭和 3 年) ②戦後~高度経済成長期の風景と土地利用 稲荷山地区 (昭和 52 年頃) 桑原地区(昭和 40 年頃) あんずの里の茅葺屋根民家 ※出典:『ふるさとアルバム 倉・上山田』 更埴・戸 桑畑 水田 果樹園 宅地 鉄道 主要道路 戸倉駅周辺のまちなみ(昭和 25 年頃) ③現在の風景と土地利用 屋代駅前(昭和 63 年) 水田 果樹園 畑 宅地 鉄道 高速道路 主要道路 戸倉駅周辺のまちなみ (平成 7 年頃) 9 2-2 千曲市の景観特性 自然環境とまちの成り立ちを踏まえ、千曲市の景観を区分すると、以下のようになります。 ここでは、区分ごとに、千曲市の景観特性を整理します。 眺望景観 ・高台から見渡してみるまちの景観 ・まちなかから見上げてみる山並みなどの景観 地域別の景観 公共の空間や施設の景観 山里・高原景観 ・山里・高原によって構成される、まちの背景 としての景観 田園景観 ・まちの周縁にあり、集落、農地、崎地形の山 里によって構成される景観 都市景観 ・まちの中心にあり、住宅、商店、工場等の集積 によって構成される景観 沿道景観 ・幹線道路沿道の建築物、農地によって構成され る景観 道路の景観 ・道路、街路樹、歩道によって構成される道路構 造物の景観 橋梁の景観 ・河川や道路の上空にあり、空間に象徴性を与え る橋梁構造物の景観 水辺の景観 ・水域、河畔林、堤防等によって構成される水辺 空間の景観 公園・緑地景観 ・公園、緑地、重要な樹木によって構成される空 間の景観 公益施設の景観 ・公民館、学校など、地域の交流の拠点となって いる公的な建築物の景観 10 1) 眺望景観の特性 千曲市は眺望景観に恵まれたまちです。折り重なる山々、細かな谷、崎地形、平地が組み合わさり、 変化に富んだ眺望景観を有しています。 また、JR篠ノ井線や国道 403 号からの車窓、千曲川展望公園、荒砥城・城山史跡公園、森将軍塚 古墳など、まちを見渡すことのできる場所が随所にあります。さらに、まちのどこにいても、背景に 山なみを望むことができます。 桑原~姨捨に至る道路・鉄道からの眺望 千曲川展望公園からの眺望 荒砥城からの眺望 姨捨SA上部からの夜景 ※出典:『ふるさとアルバム 千曲川河畔から見える山なみ 更埴・戸倉・上山田』 11 2) 地域別の景観特性 (1) 山里・高原景観 千曲市の山里・高原は、豊かな自然環境を身近に見ることのできる地域です。山里・高原をおおう 森林は、千曲市にとって重要な緑のまとまりであると同時に、災害時の土砂流出の防止や、豊かな かんよう 水環境をもたらす水源の涵養、CO2 削減など、防災面・環境面においても大きな役割を果たしてい ます。 しかし近年、木材利用の需要がなくなりつつあることから、荒廃が進んでいます。さらに、採石 場等において、山肌を見せているところもあります。 山里・高原には、湖畔に開発された別荘地やレクリエーション施設、わずかな谷地を利用して形成 された農村集落が展開しています。農村集落では、厳しい冬の生活に備えた重厚な造りの民家が多 く、自然環境と向き合う中で培った景観を見ることができます。 坊城平いこいの森 森林が創り出す緑のまとまり (2) 田園景観 千曲市では、平地や傾斜地に展開する水田や畑が、広がりのある豊かな田園景観をつくりだして います。 中でも屋代田んぼは、古代の条里制による遺構が残り、歴史的な景観を伝えています。 名勝「姨捨(田毎の月)」に代表される棚田は、傾斜地に階段状に広がる水田と、水田を縁取る畦 の曲線とがおりなす、美しい景観を形成しています。 広がりのある屋代田んぼ 姨捨棚田の文化的景観 12 傾斜地に広がる果樹園は、千曲市の緑を、より一層濃いものにしています。なお、森、倉科地区 に代表される東側の扇状地ではあんずを、漆原、八坂地区に代表される西側の扇状地ではりんご・桃・ ぶどうを栽培しており、西側と東側とで特徴的な景観を有しています。 しかし都市化の影響により、農地の広がりは大きく減少し、住宅団地や工場の整備も行われてい ます。 田園景観を維持することは、地すべりの防止や遊水池としての機能など、防災面や環境面での向 上につながっています。 西側の扇状地で見られるりんご畑 東側の扇状地で見られるあんず畑 ※出典:『ふるさとアルバム 更埴・戸倉・上山田』 田園景観の構成要素である集落は、変化に富んだ自然環境の中で、さまざまな景観を創出してい ます。以下に、千曲市で見られる特徴的な集落景観について示します。 ① 扇状地・山麓の集落 ■ふるさとの原風景を今に伝える景観 扇状地や山麓に、自然発生的に形成された農村集 落が展開しています。 集落は、川と平行に整備された道路を中心に、ま とまって展開しています。また寺社が、山と集落と の境界に立地しています。 ■日本一のあんずの里としての景観 森、倉科地区は、日本一のあんずの里であり、千 薬師展望台から見えるあんず畑 曲市を代表する観光地です。 森、倉科地区にはあんず畑を一望できる展望台や 公園、遊歩道が整備され、集落の中を散策しながら あんずの里の風景を楽しむことができます。 また、民家の敷地内にもあんずが植えられており、 あんずの花が咲く頃には、家々が桃色の花におおわ れます。 水害に備えた石積住宅が残る土口地区 13 ■統一感のある集落景観 江戸時代に整備された谷街道沿いの土口地区では、水害に備えた石積住宅が、集落景観に統一感 を与えています。 しかし都市化の影響により、統一感のある集落景観を見られる地区は、少なくなってきました。 大正時代までは、多くの集落で屋根に茅葺を使用した民家が見られましたが、その後はトタンや 瓦など、様々な材料が使用されるようになりました。また近年では、洋風建築も多く見られます。 ② 棚田とその周辺集落 ■市街地を眼下にして広がる棚田景観 江戸時代以降、大池の用水整備を契機に開発の進ん だ棚田と集落が、三峯山の北東斜面一帯の傾斜地に広 がっています。 一帯は、市街地を眼下にして広がる美しい棚田景観 が見られる眺望地点として、千曲市を代表する観光地 となっていますが、一部では、棚田の耕作放棄や、樹 園地化が進んでいます。 棚田景観と眼下のまちなみ ■耕作の継続の結果としての棚田景観 平成 11 年 5 月に、四十八枚田と荒廃した棚田を復 田した姪石地区の約 3ha が、「姨捨(田毎の月) 」と して国の名勝指定を受けました。 「姨捨(田毎の月)」は、棚田の耕作など自然と人 びとの営みの結果、育み出される文化的景観を有する として、我が国で初めて名勝に指定された棚田です。 ■文学史にも登場する棚田景観 姨捨の棚田から南にある冠着山を含めた一帯は、 「姨捨山」と呼ばれ、平安時代から観月の名所として 名高く、『古今和歌集』に収録された「我が心慰めか ねつ更級や姨捨山に照る月をみて」をはじめ、月と姨 捨の風景を題材とした和歌が『更級日記』や『新古今 和歌集』などに収録されています。 とく さ さらに中世になると、狂言本『木賊』に「田毎の月」 が登場します。江戸時代になると松尾芭蕉が来遊し 「面影や姨ひとり泣く月の友」と詠むなど、姨捨の「田 更科田毎の月 ※出典:(財)日本浮世絵博物館 毎の月」は、俳諧や紀行文の題材として注目されるようになりました。 長楽寺周辺には、こうした歴史や文化を示す、多くの句碑が残されています。 また、姨捨の「田毎の月」は、歌川広重の『信濃更科田毎月鏡台山』など、旅行や紀行のための 絵画の題材としても有名となりました。長楽寺を眺望地点として、長楽寺の境内や周辺の事物を取 り上げた「姨捨十三景」には、冠着山・千曲川・一重山・有明山・鏡台山などの遠景も数えられて います。 14 ③ 旧街道沿いの集落 あい のしゅく 北国街道、善光寺道、谷街道を通る農村集落のうち、雨宮、寂時、桑原地区は、 「間 宿 」として、 宿場町の補助的役割を担っていました。そのため、街道沿いに面していたところには、瓦屋根で漆 喰壁や土壁の建物が残り、連続したまちなみの面影を残しています。 桑原地区のまちなみ 雨宮地区のまちなみ ④ 川沿いの集落 千曲川がその河道を幾度となく変えることによって造りだした自然堤防上にある農村集落です。 集落は、水路、池、神社、学校等を中心としてまとまっており、集落の周囲に田畑が広がっていま す。 千曲川沿いにあり、国道などの幹線道路から離れた中、小船山、須坂地区などにおいては、こう した集落の形態が、良好な状態で残されています。 また、かつて養蚕で栄えた力石地区では、建物上部に乾燥室を備えた大きな構えの家が数軒残っ ており、集落の景観を風情あるものにしています。 畑と一体で展開する小船山地区の集落景観 重厚な長屋門、乾燥室をもつ力石地区の民家 15 (3) 都市景観 千曲川両岸の平地に市街地が展開し、主に戸建住宅、商店、工場によって構成されています。 千曲市は戦後より、長野市などからの人口流入の受け皿として宅地開発が進められました。 住宅地は既存の集落を基本として拡大しました。そのため近年、既存集落の周縁で、和風住宅と 洋風住宅との混在が見られるようになっています。 商店は駅前通りや、幹線道路沿いに立地しています。 工場は、国道 18 号沿いに中小規模の工場が、屋代工業団地、新田工業団地、八幡工業団地に大 規模の工場が立地しています。 以下に、都市景観の中でも、特徴的な景観について整理します。 ① 駅前市街地 千曲市には、長野新幹線の他に、しなの鉄道、長野電鉄屋代線、JR篠ノ井線が走っており、6 つの駅が設置されていますが、そのうちの屋代駅と戸倉駅では、駅前商店街が展開しています。 ■屋代駅前:まちの発展を象徴する景観 明治 21 年の信越本線の整備と同時に設置された屋代駅の駅前市街地は、明治 24 年に整備され た屋代駅から稲荷山へ向かう道路(現在のふれあい通り)沿いに発展しました。 現在、商店の多くは国道 18 号沿いを中心に立地し、大規模な駐車場の整備されたロードサイド ショップ※が、増加する傾向にあります。 その一方でふれあい通りでは、電線の地中化、歩道の整備が行われているほか、屋代駅前通り商 店街協同組合を中心とした歩道や植樹帯の清掃が行われています。 また、夏に行われる市民まつり「どんしゃんまつり」の練り歩きコースともなっており、屋代駅 前市街地の景観は、現在においてもまちの発展を象徴する景観です。 昭和 50 年頃の屋代駅前商店街 ※ 現在の屋代駅前商店街 「ロードサイドショップ」:幹線道路の沿道にあり、広い駐車場が整備された店舗のこと。 16 ■戸倉駅前:戸倉上山田温泉の玄関口としての景観 戸倉駅は、市民による請願活動の結果、戸倉上山田温泉の玄関口として、明治 45 年に設置され ました。 また付近には北国街道の宿場町として下戸倉宿が立地していました。その名残として、江戸時代 から続く造り酒屋だった、茅葺屋根の建物が残っており、歴史的な風情を創りだしています。 高度経済成長期、駅前商店街は駅前通りから国道 18 号沿い、そして大正橋までの道路沿いに広 がっていました。 しかし現在、商店の数は減り、かつての商店街の魅力は失われています。 現在の戸倉駅前 平成 5 年頃の戸倉駅前 ② 宿場町・門前町 江戸時代、街道と併せて整備された宿場は、その多くが、明治時代以降の鉄道駅や国道 18 号の 整備に伴う都市化の波から外れたため、現在においても宿場町としての名残をとどめています。 ■繭問屋街としての繁栄を今に伝える稲荷山の土壁のまちなみ 善光寺道と谷街道が交差する交通の要衝であった稲荷山宿は、戦国時代末期から市場町として栄 えました。江戸時代に善光寺地震が発生し、この時火災によって大きな被害を受けたため、その教 訓を活かして、土壁造りのまちなみが生まれました。 明治 24 年に屋代駅が設置されると、稲荷山は繭問屋街として発展し、県下でも最大の商業地と して栄えました。しかし現在は、日用品を販売する商店がわずかに残る通りとなっています。 こうした中で、当時の繁栄の象徴である黒い大屋根、白壁の豪壮な町家は今も残り、まちなみに 統一感を与えています。また細い路地や裏道が土壁の町家や蔵の間を縫うようにつながり、それに 沿って自然の小河川を活用した生活用水路が流れ、うるおいのある景観を創りだしています。 しかし、こうした豪壮な町家も、老朽化の進行とともに取り壊されるところが増え、まちなみの 連続性は失われつつあります。 一方、土壁造りが続くまちなみのすぐ背後に住宅団地が展開しているため、落ち着いた風情をも つ土壁造りのまちなみの広がりが乏しい現状もあります。 17 稲荷山の土壁のまちなみ 水路に備えられた花壇 ■武水別神社を中心とした門前町のまちなみ 稲荷山宿より南下した街道沿いにある武水別神社は、大きな鳥居と豊かなお宮の森や、歴史的な 建造物を有し、地域の象徴としての景観を形成しています。 また武水別神社は、中世より信仰の対象として多くの参拝客で賑い、参道に沿って門前町が形成 されました。しかし、現在は稲荷山地区と同様、日用品を販売する商店が所々に残る通りとなって います。また、神社の鳥居の傍や裏通りに面して伝統的な造りの家屋が残っており、歴史的な風情 を創りだしています。 武水別神社の通り沿いの商店 武水別神社の豊かな緑 18 ■須々岐水神社を中心とした屋代宿のまちなみ 屋代宿は、須々岐水神社を中心として、宿場の名残を留める旅館や、昭和 50 年代の商店街の名 残をとどめる商店が残り、まちなみに個性を与えています。 現在の屋代本町商店街 昭和 50 年代の屋代本町商店街 ■閑静な住宅地としての上戸倉宿(磯部)のまちなみ 上戸倉宿(磯部)は、明治時代以降、商業地として発展することはありませんでした。そのため、 閑静な住宅地の中に、古い町家が良好な状態で残っています。 また新しく建てられた建物も、周辺へ植栽を施したり、木質の住宅とするなど、古い町家との調 和に配慮したものが見受けられます。 木質で植栽を施した新しい建物 重厚な門塀と植栽のある古い町家 19 ③ 戸倉上山田温泉街 ■昭和時代の風情が残る温泉街の景観 県下では数少ない、平地部の河畔に形成された温泉街です。明治半ばより温泉開発が進み、昭和 30 年~40 年代に最盛期を誇りました。そのため温泉街には、当時建設された大型旅館やホテルが 多く建っており、一部では建物の老朽化も見受けられます。 また、温泉街の路地に入ると、約 200 軒以上の飲食店や劇場が建ち並び、それぞれのお店のネ オン看板等が、路地裏の温泉繁華街としての風情を漂わせています。 戸倉上山田温泉街の表通り ネオン街の入り口ゲート (4) 沿道景観 他市町村と連絡している国・県道や、市内の集落・市街地間を結ぶ市道から見る沿道は、建築物や 農地、看板、電柱によって構成される景観を形成しています。 沿道景観は、生活の中で毎日目にする景観であり、まち全体の景観イメージにも、大きな影響を 与えています。 現在千曲市では、交通量の多い国道 18 号において、さまざまな色彩・形態の看板や商店、電柱が 沿道に建てられ、雑然とした印象を与えています。 一方で、屋代駅前のふれあい通りでは、電線地中化が行われ、良好な景観を形成しています。 なお、国道 18 号の交通量を分散するため、国道 18 号バイパスの整備が進められています。現 在のところ、沿道の大半は農地となっていますが、今後新たな土地利用へ転換していくことが予想 されます。 雑然とした印象を与える国道 18 号の沿道 国道 18 号バイパス沿道に立地する大型店舗 20 3) 公共の空間や施設の景観特性 公共の空間や施設の景観は、千曲市の景観の骨格となります。以下に、各空間、施設の景観特性を 整理します。 (1) 道路の景観 景観に配慮した道路舗装や、植樹帯、歩道、まちかど公園が整備された道路は、地域の良好な景 観の骨格として機能しています。 しかし、植樹帯によっては管理しづらい樹種もあり、樹種の転換が必要な箇所もあります。 その他、ガードレールなど道路構造物の色彩が、景観を阻害している箇所もあります。 地域の景観に配慮した道路舗装 街路樹が整備された道路 (2) 橋梁の景観 橋は、水辺の景観に魅力を与える構造物です。千曲市では千曲川に架かる橋々に、象徴的な形態 のものが見られます。 また、高速道路および新幹線の高架橋が千曲市の田園地帯を走っており、特に屋代地区の北陸新 幹線屋代南・北橋梁は、背景にある北アルプスとの景観的調和を図った形態となっています。 北アルプスの景観に調和した 千曲市のランドマーク※となっている千曲橋 新幹線屋代南・北橋梁 ※ 「ランドマーク」:地域の景観を特徴づける目印。 21 (3) 水辺の景観 水域、河畔林、堤防等の構造物により構成される水辺の景観は、千曲市の景観の大きな特徴です。 中でも千曲川では、風物詩としての「つけば」や川釣りが行われ、河川敷は公園や畑として活用 されるなど、水と人との関わりを感じさせる独自の景観をつくりだしています。近年においては、 水辺の楽校プロジェクト※などによって、千曲市含め流域の市町村が連携をとりながら様々なイベン トを行うなど、水辺に親しむ取組みが流域全体で進んでいます。 しかし中には、周辺環境との連続性がなく、市民との生活上の関わりが薄くなっている水辺も見 られます。尾米川では、 「水環境創造事業」により生態系に配慮した、自然に近い河川整備がモデル 的に進められています。 千曲川の水辺 千曲川の釣り人 (4) 公園・緑地景観 公園・緑地は、まちなかにおける緑のまとまりを創出しています。特に千曲市では、多くの公園や 緑地が千曲川河畔に整備されているため、水辺の景観に魅力を与えています。 また、科野の里歴史公園や、さらしなの里古代体験パーク、城山史跡公園などでは、地域の歴史 的景観を今に伝えています。 寺社仏閣の社寺林や古木は、人々が古くからその場所に住んできたという歴史を今に伝え、また、 市街地や集落の景観にうるおいを与えています。 千曲川緑地公園 さらしなの里古代体験パーク (5) 公益施設の景観 公民館や学校、文化施設は、地域の交流の拠点であると同時に、周辺の景観形成を誘導する役割 を担う施設です。千曲市には多くの施設が整備されていますが、老朽化が進んでいる施設も見られ ます。また、鮮やかな色彩を使用し、地域と調和していない建築物も見られます。 ※ 「水辺の楽校プロジェクト」 :小中学校における完全学校週 5 日制や「総合的な学習の時間」の実施をうけ、水辺の環境学習 や自然体験活動のフィールドを安全に楽しく活動できるよう必要な整備を行ったり、水辺での イベントの実施を促す、国土交通省による事業。 22 2-3 景観形成への取り組み状況 1) 行政による景観形成への取り組み状況 (1) 計画の策定と、計画に基づく規制 ① 計画の策定 合併前の旧更埴市では、景観形成基本計画が策定され、地域ごと・景観区分ごとの景観形成の方針 の制定や、市民意識の向上に向けた啓発活動、重点地区指定に向けた取り組み等が行われてきまし た。併せて計画と連動した旧更埴市独自の景観条例が制定されました。 また、旧戸倉町、旧上山田町では都市計画マスタープランに景観形成の方針が示され、市民意識 の向上に向けた啓発活動が行われてきました。 合併後の千曲市では、新たな「千曲市美しいまちづくり景観条例」が平成 19 年 4 月 1 日に施行さ れ、景観法との調整の上に「千曲市景観計画」を策定することとしました。 (2) 景観形成に関わる事業の展開 ① 棚田の保全への取り組み 冠着山・三峯山の北東斜面一帯に展開する姨捨棚田は、 「田毎の月」として知られ、我が国有数の 棚田です。現在、地元耕作者、市民、関係団体、信州大学等と協働で、名勝指定地の棚田を中心に、 圃場整備された地区や棚田を潤す水源地等を含めて、 「姨捨棚田の文化的景観保全計画」が作成され ています。棚田の景観は、毎年の農業・耕作の継続によって保持されるものであるという認識のも とに、計画されました。この地域では、農業の継続と景観保全のために、以下のような整備や各種 の取り組みが行われてきました。 ●県営ほ場整備事業(昭和 56 年~平成9年) 急傾斜地での耕作条件の改善と耕作放棄の防止を目指して、姨捨棚田を含む約 120ha を対象 に、圃場整備が行われました。平成 5 年~6 年に整備された長尾根工区では、景観や安全性を考 慮した等高線区画等の工法が採用されました。 ●県営ふるさと水と土保全モデル事業(平成 7 年~8 年) 圃場整備事業の対象から除外され、耕作放棄地と化していた姪石地区 3ha が、この事業で昔の 区画形状に復田・整備されました。そして、この地区が国の名勝(姪石地区)に指定され、棚田 オーナー制度が導入されています。 ●名勝「姨捨(田毎の月)」の指定、日本の棚田百選の選定(平成 11 年) 平成 11 年、名勝「姨捨(田毎の月)」として、 「長楽寺の境内」、旧来の形態を保持する棚田の 「四十八枚田(0.25ha)」および復田整備された「姪石地区(3ha)」が指定されました。同年、地 域一帯の棚田 25ha が農林水産省の棚田百選に選定され、さらに平成 18 年に「姪石地区」に連 なる「上姪石地区」が名勝に追加指定されました。 ●県営ふるさと水と土ふれあい事業・団体営棚田保全緊急保全対策事業・県営里地棚田保全整備 事業(平成 9 年~20 年) 圃場整備の対象外の地区では、営農継続を可能にするために、棚田景観をも考慮した道路整備、 水路整備が行われ、耕作放棄地の解消もすすんでいます。 23 ●姨捨棚田シンポジウムの開催(平成 17 年~20 年) 千曲市と信州大学の主催で、姨捨棚田の実態や保全方策等をテーマに、3 回の市民対象のシン ポジウムが開催されました。棚田の景観保全への関心が高まりました。 以上のような事業や取り組みの結果、姨捨棚田では、地元の耕作者だけでなく、棚田オーナーや ボランティアの参加によって、新たな担い手が形成されつつあります。名勝の「四十八枚田地区」 では、地元のボランティア組織が、 「姪石地区」では棚田オーナー制が導入され、オーナーへの耕作 指導と日常管理をする「名月会」が耕作を支えています。さらに、周辺の棚田では耕作放棄田の耕 作を行う地元団体が活動しています。 ② HOPE 計画※に基づく整備(昭和 60 年~平成 13 年) 千曲市では様々な HOPE 計画が策定され、その 多くが事業化を実現しました。稲荷山土壁の街整 備基本計画が策定された稲荷山地区では、計画に 基づき「更埴ふるさと漫画館」、「稲荷山宿・蔵し 館」を建設したほか、土壁の景観に配慮した公衆 トイレの整備や、自然石を活用した街路舗装が行 われました。 また、あんずの里地区景観整備計画が策定され た森・倉科地区では、 「あんずの里スケッチパーク」 や公衆トイレの整備が行われました。 このほか、まちかど公園計画に基づき、休憩ス あんずの里スケッチパーク ペース、広報の場、モニュメントの設置スペース を設けたまちかど公園(ポケットパーク)を整備 しました。また、市営住宅の建て替えや住宅団地 の整備においては、地場産材を活用し、地域の伝 統的な家屋の形態に配慮して実施しました。 ③ 展望公園・河川敷公園の整備 (昭和 63 年~平成元年) 市内を眺望できる展望公園整備や、自然に配慮 千曲川展望公園 した河川敷公園の整備が行われました。 ④ 市民農園の開設(平成 2 年~3 年) 休耕地などを活用して市民農園が開設され、遊休地による景観阻害を防止する取り組みが行われ ています。 ※ 「HOPE 計画」 : 「地域住宅計画」を意訳した「Housing with Proper Environment」 〔地域固有の環境(自然環境、 資源的環境、文化的環境など)を活かした住まいづくり〕の略称。昭和 58 年に創設されたが、平成 6 年度からは、地方公共団体が策定する「住宅マスタープラン」の中に整理・統合されている。 24 ⑤ 街路事業等の実施(平成 8 年~13 年) 屋代駅前通りでの電線地中化や、幹線道路での街路樹の設置などを通し、景観まちづくりを行っ てきました。 ⑥まちづくり交付金を活用しての地域づくり(平成 17 年~) 森・倉科地区では、まちづくり交付金制度を活用した遊歩道 整備・ポケットパーク整備・サイン整備を通じ、地域を特色づ ける景観整備が行われています。また整備計画の策定にあた っては、市民ワークショップが開催され、景観に対する地域 の市民意識の底上げにもつながっています。 2) 市民意識と景観まちづくり活動 ワークショップの様子 (1) 市民意識 第一次千曲市総合計画策定時の市民意識調査では、景観に関連する市民意識を問う設問が設定さ れ、以下のとおりの結果となっています。 【歴史・文化】 【自然環境保全】 【生産と消費の循環】 【伝統行事】についての満足度を質問す る設問では、 「農山村の自然景観の保全」については比較的満足度が高い回答となっています。 その中での個別取り組みについて「田毎の月(棚田)などの文化的遺産や、農山村の自然 景観が保全されているか」との選択肢については、重要度、満足度ともに高い数値の回答が 寄せられました。 「稲荷山地区に見られるような歴史的街並みや建物が保全されているか」との選択肢につい ては、重要度は認識されているものの、満足度は比較的低い数値の回答が寄せられています。 地域の将来像を質問する設問では、8つの選択肢の中で「景観に配慮した快適な住宅地、 商業地が形成された新しい地域」が最も多く、3割を占めています。 また、学校区ごとには9つの小学校区のうち 7 つの小学校区で「景観に配慮…」 「…景観 が守られた地域」を第1位にあげています。 これらの結果から、棚田や農山村の自然景観については一定の評価が得られていますが、稲荷山 地区などの建物の保全やまちなみについては低い評価となっています。 25 (2) 市民による景観まちづくり活動等 千曲市では、高度経済成長期以後の急激な社会基盤整備や産業構造の変化による流入人口の増加 が進む一方で、市民の自主性や地域コミュニティの弱体化が懸念されてきました。 また千曲市は、依然として豊かな自然環境を有し、大都市と比較すれば大規模な開発も少ないた め、景観が悪化することへの危惧感や、景観形成への関心は、それほど高くありません。 そのため、景観形成に関する従来の地域活動やボランティア活動は、行政主導あるいは、外部の 人々の手に頼っている側面があり、担い手の確保が課題となってきました。 しかし最近、市民有志によるホタル・蝶などの昆虫やめだか類の保護・復活活動や、アダプト制 度※など、自主性に飛んだ取り組みが活発化しており、景観への関心を高める機会は増えつつありま す。 このような芽を育て、全市的な取り組みに波及させるためにも、本計画などを通しての景観まち づくりへの理解の底上げと、市民と行政、あるいは外部の人々とが協働で行う取り組みの継続、体 制の構築が必要です。 一度失われた良好な景観を取り戻すには、多くの経費と時間を要します。日常生活やコミュニテ ィ活動を通じて、景観形成に関する情報提供や広報活動を継続的に行うことが重要です。 清掃活動の様子 ※ 花いっぱい運動によってつくられた駅前の フラワータワー 「アダプト制度」 :行政が、道路、公園、河川などの公共施設について、市民や事業者と定期的に美化活動を行うよう 契約する制度。 26 2-4 景観形成に向けた課題 1) 景観特性からの課題 現状の景観特性からの課題は以下の通りとなります。 (1) 眺望景観 ~眺望景観の全体的な調和の維持~ 区分 眺望景観 課題 ・ 高台や、交通の重要な結節点である道路・鉄道、および生活エリアからの、 眺望景観の確保 ・ 地形や山地、田畑、集落、河川など様々な要素で構成される眺望の、全体 的な調和の維持 ・ 建築物・工作物による、眺望の阻害への配慮 (2) 地域別景観 ① 山里・高原景観 ~豊かな自然景観の保全とそれを実現する担い手の確保~ 区分 山里 課題 ●森林 ・ 荒廃している森林における継続的な維持・管理と、それを実現する担い手 の確保 山里・高原景観 ・ 採石場などの開発が行われた山肌における、緑地の回復 ●山間の田畑 ・ 集落との一体的な形態の保全 ●山間の集落(大田原地区) ・ 厳しい自然環境と向き合う中で培った集落形態の継承 高原 ●自然環境 ・ 貴重な動植物が生息する高原の自然景観の保全 ●レクリエーション施設 ・ ゴルフ場やキャンプ場、別荘地などにおける、高原の自然との調和 27 ② 田園景観 ~保全と開発のバランスの検討と、周辺環境との調和~ 区分 農地 課題 ●果樹園、田畑 ・ 地形や自然環境に即して展開する、果樹園や田畑の保全とそれを実現する 担い手の確保 ・ 広がりのある農地景観の維持 ・ 農地の転用や荒廃化を抑制するためのしくみや活用方策、および保全と開 発のバランスの検討 ●棚田 ・ 全国有数の歴史的・文化的景観である姨捨棚田の景観の維持 崎地形の山里 ・ 一重山や獅子ヶ崎、唐崎などの崎地形の山里における森林の維持・管理と、 それを実現する担い手の確保 田園景観 ・ 緑地環境の保全と新たな開発とのバランスの検討 集落 ●扇状地・山麓、川沿いの集落 ・ 民家や社寺、水路・中小河川、農地、森林等の要素で構成される昔ながら の集落形態の継承 ・ 「日本一のあんずの里」として有名な森、倉科、生萱地区での、観光客に とっても魅力的な景観になるような取組みの検討 ●旧街道沿いの集落(桑原地区、雨宮地区) ・ 民家が連続して建ち、まちなみを形成している、旧街道沿いの集落形態の 継承 ●棚田周辺の集落 ・ 姨捨棚田の重要な景観要素である、千曲高原大池の水源を中心に展開する 集落における、棚田景観と一体となった景観の創出 ●集落に隣接する住宅団地 ・ 隣接している昔ながらの集落との調和 28 ③ 都市景観 ~にぎわいの創出と安心・安全に配慮した、歩いて楽しい景観形成~ 区分 駅前市街地 課題 ●駅前広場 ・ まちの玄関口である駅前広場からの山なみの眺望の確保 ・ 都市景観を形成するにふさわしい建築物・空間などの都市機能の充実 ・ 訪れる人が心地よく思えるような景観整備 ●駅前商店街 ・ まちの発展を象徴する空間としてのにぎわいの創出と、安心・安全に配慮 した空間整備 宿場町・門前町 ●宿場町(稲荷山地区、磯部地区) ・ 旧街道や豪壮な町家、路地、蔵、寺社、生活用水路等によって構成される まちなみの継承 ・ 市民だけでなく、観光客にとっても魅力的な景観になるような取り組みの 検討 ●門前町(八幡地区) 都市景観 ・ 武水別神社を中心とした門前町の面影を活かした、地区の魅力づくり 温泉街 ●温泉街全体 ・ 市民や観光客が歩いて楽しい景観形成に向けた取組みの検討 ●温泉街表通り ・ 温泉街の情緒をつくりだしている周辺の山なみや河畔の景観との調和 ・ 温泉街としての風情ある景観形成 ●路地のネオン街 ・ ネオン看板等を活かした、路地裏の温泉繁華街としての景観形成 工業団地 ・ 工場地内の大きな建物や物品の集積による、周囲の山なみや川なみによる 景観の阻害への配慮 一般市街地 ・ 既存集落の面影を今に残す古い日本家屋や、社寺、水路を活かした景観形 成 ・ 既存集落の周辺に展開する新規住宅における、周辺景観への配慮と、植栽 などによる統一感のある景観形成 ・ 区画整理地や住宅団地では、その良好な都市基盤を活かした景観形成 29 ④ 沿道景観 ~統一感のある沿道景観の形成~ 区分 沿道景観 課題 ●国道 18 号 ・ 看板や電柱の乱立、ロードサイドショップの立地によって、雑然とした景 観になっている国道 18 号における、統一感のある景観形成 ●国道 18 号バイパス、その他都市計画道路 ・ 新たな開発に伴い、変化が懸念される景観への対処としての、計画的な土 地利用の検討 ●その他 ・ テーマ性と統一感のある景観形成 (3) 公共の空間や施設の景観 ~市域全体を見通した景観整備~ 区分 道路の景観 課題 ・ 道路整備の際の、構造物の色彩や素材、形態への配慮 ・ 市民の手で管理しやすい歩道環境の整備 橋梁の景観 ・ 地域のランドマークとして機能するような景観整備 水辺の景観 ●千曲川河畔林 ・ 都市景観に潤いと安らぎを与えるような空間の創出 ●中小河川、水路 ・ 市民との生活上の関わりが薄くなっている中小河川や水路、ため池におけ 公共の空間や施設の景観 る、身近に水辺に親しめる環境の整備 ●沢、沼地、滝 ・ 周辺の地形や緑との一体的な保全 ・ むやみな立ち入りやゴミの投棄が行われないような配慮 公園・緑地景観 ●河畔沿いの公園・緑地 ・ まちなかにおいて緑のまとまりを創出する貴重な空間としての維持・管理 ●史跡公園 ・ 地域の歴史的景観を多くの人が知り、地域への愛着をもつきっかけとなる 機能を発揮させる環境整備 ●社寺林・古木 ・ 人々の生活の歴史を伝え、また地域の景観にうるおいを与える緑としての 保全 公益施設の景観 ・ 周辺地域の景観整備を誘導する役割を担う施設としての、積極的な景観整 備 30 2) 景観形成の実現に向けた課題 これからの景観形成においては、次のような事項が課題となります。 課題1.景観への理解醸成 景観という概念は、近年社会的認知度が高まってきていますが、一般市民には依然として馴染み の薄い概念です。しかし、日ごろから見慣れている景観は、千曲市の形成の歴史や文化を物語るも のであるばかりでなく、森林・田畑・河川等の存在が、環境向上や防災面での機能を果たし、市民 の日常生活と無縁ではありません。また景観は、目に見える地形・地物だけでなく、音などの五感 で感じる要素も影響しています。一方、景観形成は市民・事業者の活動に担われる部分が多いため、 市民・事業者は、景観まちづくりの主体として、千曲市の特色ある景観の魅力や重要性を理解し、 良好な景観形成の推進に向けた体制づくりに取り組むことが必要となります。 課題2.賛同できるルールづくり 景観は、市民・事業者の経済活動や建築活動等により大きく変化します。千曲市においても今後、 開発や施設整備を通じ、景観が変化する可能性があります。今後、景観を保全・育成・創出していく ためには、市民・事業者がその考え方を理解するとともに、無理なく賛同できるルールづくりが必 要となります。 課題3.組織・体制・連携の構築 景観形成のためのルールを運用していくためには、個人の努力では限界があり、多様な主体によ る統制の取れた参画での取組みが不可欠です。そのため、各々の役割分担の認識の下、行政組織の 活性化、市民団体の活動環境の整備を通し、各主体の連携による取組みが必要となります。 課題4.制度、事業の活用 これからの景観形成は、景観法等による規制・誘導のみならず、積極的な整備や多様な視点での実 現化が求められます。そのため、主体の連携とともに、市民や行政にとって効果的な制度を適宜選 択し、また重層的に活用することが求められます。 課題5.時間をかけての景観まちづくり 千曲市の特色ある景観は、長い年月を経てつくられてきました。合併により生まれた千曲市での 一体的な景観形成は、市民の理解を得ながら、時間をかけ、熟成を重ねる中での地道な取組みが重 要です。そのため、本計画の周知を進める中で、新市千曲市としての景観形成の基本理念は継承し つつも、必要に応じて計画の見直しを行う必要があります。また計画の見直しに際しては、市民の 意向を十分に踏まえ、時代に適した計画へと成長させていけるような、柔軟な対応が必要です。 31 32 第3 章 景観 形成 の理 念と 目標 33 34 第 3 章 景観形成の基本理念と目標 第一次千曲市総合計画に示されるまちづくりの基本目標の一つである「ふるさとの自慢を未来に継ぐ まち」を踏まえ、景観形成の基本理念を以下のとおり掲げます。 3-1 景観形成の基本理念 基本理念1.良好な景観は未来の千曲市をつくる社会資本 冠着山・三峯山をはじめとする山なみや、幼いころから慣れ親しんだ大河千曲川、特色ある田畑の 風景、交通の要衝として産業が発展した宿場町や駅前市街地のまちなみ、豪壮な農家住宅による集落 の景観は、今後ますます重要視される観光振興に加え、市民がまちに誇りや愛着を持ち、今後も住み 続けたいと思えるまちづくりに寄与する、千曲市固有の社会資本です。 基本理念 2.千曲市の風景は、市民・来訪者にとってふるさと 周囲の山々や千曲川の豊かな恵みに抱かれて、四季折々に変化を見せる自然景観、周囲の山なみに 溶け込むように展開する集落や駅前市街地の景観、歴史・文化を伝える宿場町や日本有数の棚田の景 観は、市民だけでなく来訪者にとっても、どこかなつかしい、“ふるさと”を感じさせる景観である といえます。 基本理念 3.ふるさとの景観を多様な参画で、長期的につくりあげる 縄文時代から人が住み続け、長い年月を経て形成・維持されてきた千曲市の景観を、市民共有の財 産として、今後も次世代に引き継ぐことが、市民・事業者・行政の責務です。そのため、自然の保全、 集落・まちなみの修景、公共施設の整備などを通し、市民生活の快適性・安全性にも配慮しながら“ふ るさと”と呼べる景観をつくり上げていく必要があります。 良好な景観は一朝一夕に形成されるものではありません。時代の変化をふまえ、市民の意識の高揚 と協力に基づき、市民主体、市民参加によるふるさとづくりを進めます。 33 3-2 景観形成の目標 基本理念を踏まえ、これからの千曲市の景観形成の目標を以下のとおり設定します。 未来 へ 引き 継 ぐふ る さと の 景観 ま ちづ く り 目標1.雄大な自然景観を守り、未来に引き継ごう 地形からも民話・文学が生まれ、村人、旅人や商人など先人が眺め てきた自然景観を守り、未来に引き継ごう 目標2.日本の原風景やまちの発展を伝える歴史的・文 化的景観を育て、未来に引き継ごう 人々が古くからそこに住まうことで培われた集落の風景や、駅前の 商店街や宿場町などのまちの発展を象徴する、歴史的・文化的景観を、 守り、育て、活かしながら、未来に引き継ごう 目標3.新しい都市景観を創り、未来に引き継ごう 交通の要衝として発展し、産業振興を基盤として整備されてきた都 市景観を、今後も、安心・安全かつ心地よく美しい都市景観となるよ う創造し、未来に引き継ごう 目標4.景観まちづくりを未来に引き継ごう 現在に生きる私たちが景観の重要性を理解し、後世に引き継ぐため に、景観まちづくり活動を実践し、未来に引き継ごう 34 第4 章 景観 計画 の区 域 35 36 第 4 章 4-1 景観計画の区域(景観法第8条第2項第1号) 景観計画区域 平地から山地まで全ての地形が千曲市の景観の特性であること、平成 18 年に制定された「千曲市 美しいまちづくり景観条例」による規制・誘導が全市を対象にしていること、時代の要請に対応した開 発の際に、必要に応じた景観形成の指針を示す必要があること、これらに対応するため、景観計画区 域は、千曲市全域(119.84k㎡)とします。 千曲市景観計画区域 4-2 景観形成重点地区 千曲市を代表する個性ある地域について、重点的かつ段階的に景観形成を進めるために、以下の項 目に該当する地区において、景観形成重点地区を設定します。 (1)良好な眺望景観を有する地区 (2)歴史的・文化的景観を有する地区 (3)自然と調和した景観を有する地区 (4)商業・業務施設又は工業施設がそれぞれ一団となった景観を有する地区 (5)優れた住環境又は特徴ある住宅地の景観を有する地区 (6)主要な幹線道路、河川等に沿って特徴ある景観を有する地区 (7)その他市長が景観の形成上必要と認める地区 指定に際しては、地域の理解と賛同を得ながら、順次定めていくものとします。 35 36 第5 章 良 好 な 景 観 の 形 成 に 関 す る 方 針 37 38 第 5 章 良好な景観の形成に関する方針(景観法第8条第2項第2号) ここでは、景観形成の基本理念と目標を踏まえた上で、良好な景観を形成するにあたっての方針を定 めます。 千曲市の良好な景観形成に向けては、市民・事業者が主体となって取り組むことを基本とし、行政は その活動を支援していく体制をとることを目指します。 そこでまず、景観形成を実現していくための主体と役割を定め、それに基づいて具体的な施策を定め ます。 次に上記の実現施策に基づき、景観区分ごとに、市域全体についての景観形成方針を定めます。 さらに、千曲市の景観を代表する個性ある地域については、景観形成重点地区の指定を検討します。 なお、本計画においては、景観形成重点地区の候補地の選出までを行うこととし、候補地ごとに景観 形成の方向性を定めます。 ●市 景観形成の実現に向けた課題 未来へ引き継ぐふるさとの景観まちづくり 景観特性からみた課題 景観形成の主体と役割および実現施策 民:身近な景観まちづくり活動や、地域のルールづくりを通して 景観形成に対する理解醸成や継続を実現する原動力となる ●事業者:地域の景観づくりの模範となるような建築物・工作物の建築 や緑化、景観まちづくり活動への参加、地域のルールづくり を通して、良好な景観形成に貢献する ●行 政:土地利用規制や、支援制度、公共事業の実施を通して、景観 形成を支えていく 景観区分による市域全体の景観形成方針 景観形成重点地区(候補地)における 景観形成の方向性 ●姨捨地区 ●倉科・森地区 ●戸倉上山田温泉地区 37 ●桑原・稲荷山・八幡地区 ●磯部地区 ●力石地区 5-1 景観形成の主体と役割および実現施策 1) 景観形成の主体と役割 良好な景観形成の実現にあたっては、市民・事業者が主体となって取り組むことを基本とし、行政 はそれを支える役割を担っていきます。 ●市 民:身近な景観まちづくり活動や、地域のルールづくりを通して、景観形成に対する理解 醸成や継続を実現する原動力となる ●事業者:地域の景観づくりの模範となるような建築物・工作物の建築や、緑化、景観まちづく り活動への参加、地域のルールづくりを通して、良好な景観形成に貢献する ●行 政:土地利用規制や、支援制度、公共事業の実施を通して、景観形成を支えていく 2) 景観形成の実現施策 市民・事業者・行政の役割を踏まえ、以下に景観形成の実現施策を定めます。 (1)景観への理解醸成を図ります。 ① 市民・事業者の取組み ~ 市民・事業者の責務として ~ ■シンポジウム・イベント・地域会議への参加 ・ 景観に関するシンポジウム※イベントに参加し、景観形成の考え方を理解するとともに、地域へ の輪を広げます。 ■身近な景観まちづくり活動の実施 ・ 地域景観リーダーを中心に、地域全体でまちの景観について話し合います。 ・ 身近なところから、景観を美しくする活動を行います。 ② 行政による活動支援 ~ 市民・事業者の自主性を育てるために ~ ■広報・イベント等による広報活動 ・ 景観に関するシンポジウムの開催や、広報の活用により、市民意識の向上を図ります。 ・ 美しい景観の表彰などを通して、景観に目を向けるよう市民に呼びかけます。 ■市民による身近な景観まちづくり活動への支援・助成 ・ 景観形成に関する市民活動の中心となる、地域景観リーダー(景観形成に関する専門家)など の人材の育成を図ります。 ・ 市民による景観まちづくり活動の機会をより多く創出するため、情報交換の場を提供します。 ・ 模範となるような景観まちづくり活動に対し、顕彰制度や活動助成を行います。 ※ 「シンポジウム」:何らかの問題についての議論や研究成果についての発表会のこと。 38 【身近なところから景観を美しくする活動事例】 ◆地域の景観を紹介するタウンマガジンの発行 ◆小学校の総合学習で、地域の景観について知るための野外学 習を実施 ◆休耕田や歩道などで、花のある景観を創出するための花いっ ぱい運動を実施 ◆市民農園や、棚田オーナー制度を活用した耕作活動を実施 ◆森林や河川での不法投棄防止のためのゴミゼロ運動を実施 ◆千曲市景観百選の選定 ◆千曲市のイメージカラーを決める市民ワークショップの実 施 ◆千曲市 音景観(サウンドスケープ※)マップの作成 (川のせせらぎ、虫の声、商店街のにぎわい等) ◆アダプト制度を活用した、市民による歩道や街路樹の維持・ 管理 歩道にベンチや花壇を置き、 安らぎの景観を整えている ふれあい通り ◆景観写真・スケッチコンクールの実施 ◆星や夜景の観察会の実施 ◆わがまち景観発見ウォーキング大会の実施 ◆映画、テレビドラマ、CM などのロケ地として誘致 ◆インターネット上での景観形成に関する意見交換の場の 設定 (2)市民主体によるルールを定め運用します。 ① 市民・事業者によるルールづくり ~ 地域ごとのきめ細かな景観形成に向けて ~ ■景観協定・景観形成住民協定※の締結 ・ 市民主体のルールづくりを進めるため、景観協定および景観形成住民協定の締結を推進します。 ■様々な協定の活用(建築協定、緑地協定) ・ 建築協定による建築物の形態制限、緑地協定による緑化基準の制定など、市民・事業者による 景観形成に向けたルールづくりを進めます。 ※ 「サウンドスケープ」 : 「音」を意味する「サウンド【sound】 」と、 「~の眺め」を意味する接尾語「スケープ【―scape】 とを複合させたもの。旅行の時や日常生活等の中で見る風景の印象は、その場所で聞こえる音 が大きく影響を与えているということに着目した、カナダの現代音楽作曲家 R.マリー・シェー ファーが提唱した概念。 ※ 「景観形成住民協定」:景観協定は、景観法に基づく協定であり、締結に際しては区域の土地の所有権者および借地権 者の全員の合意を必要とする。一方、景観形成住民協定は、千曲市美しいまちづくり景観条例 に基づく協定であり、締結に際しては、区域の土地の所有権者および借地権者の3分の2以上 の合意が必要である。また、市民が独自に定めた協定に対して、景観行政団体の長は認定する のみであり、自由度の高い協定内容とすることができる。 39 (3)組織・体制づくりとその連携を図ります。 ① 行政での組織の立ち上げ ~ リーダーシップを発揮し総合的に進めるために ~ ■担当セクションの充実 ・ 景観計画に基づく市民への情報提供・啓発活動の実施、組織立ち上げなどに際して、技術的支援 や助成制度の設置、市民・事業者との連携支援などの検討を進めます。 ■庁内連絡会議 ・ 行政内部の様々な施策を横断的に運用し、景観形成に向けて総合化するため、庁内連絡会議を 行ないます。 ■行政連絡会議の設立 ・ 国、県など関係機関の施策との整合を図るために、行政連絡会議を行います。 ■パトロールの実施 ・ 市民団体などとの連携により、ゴミの不法投棄、廃車の不法存置などに対して、パトロールの 実施を行います。 ② 市民・事業者の組織活用と立ち上げ ~ 市民・事業者の活力を最大限活用するために ~ ※ ■景観整備機構 の指定 ・ 景観に関する市民の取組み支援や景観重要建造物、樹木の管理、耕作放棄地等の利用権の取得 を目指し、NPO法人や公益法人を景観整備機構として指定することを検討します。 ■既往組織の活用 ・ 商工会議所、商工会、旅館組合など市内で活動する様々な団体の景観形成への自主的取組みに 対して行政としての支援を行います。 ■地域ごとの景観懇談会 ・ 行政の景観に対する啓発活動と連携し、景観リーダーを中心に、皆でまちの景観について話し 合い、目標とする地域の景観まちづくりを考えます。 ■アダプト制度の活用 ・ 公共施設(道路、橋、公園、河川)の市民による維持管理に向け、アダプト制度の活用を図り ます。 ③ 事業者の取り組み ~ 景観形成の輪を広げるために ~ ■模範となる建築物の建築等および工作物の建設等 ・ 景観形成についての意義、目的等を理解し、本計画に沿った事業所づくりに取組むとともに、 地域の模範となる建築づくりに努めます。 ■緑化の推進 ・ 比較的大きな敷地を利用する事業所では、本計画や地域ルールに沿い、隣地境界、道路境界に 沿った面での緑化を進めます。 ※ 「景観整備機構」 :良好な景観の形成に関する事業を行う者に対し、当該事業に関する知識を有する者の派遣、情報の 提供、相談その他の援助を適正かつ確実に行うための組織で、公益法人又はNPO法人の中から指 定される団体。 40 (4)制度・事業の実施により保全・整備を図ります。 ① 景観法の活用 ~ 景観法の積極的な活用に向けて ~ ■大規模な建築物の建築等および工作物の建設等に対する規制・誘導 ・ 大規模な建築物・工作物は、周辺の景観に対して、大きな影響を及ぼすため、意匠・形態、色彩 などの景観形成基準を定め、届け出、勧告による規制・誘導を行います。 ■千曲市美しいまちづくり景観条例の継続・改正 ・ 本計画と連動した景観条例の改正を行ないます。 ■景観地区・準景観地区の指定 ・ 今後指定される重点地区等について、市民の理解と賛同を得ながら、景観地区や準景観地区と しての指定を検討します。 ■多様な制度の活用(景観重要建造物・樹木の指定、屋外広告物) ・ 今後、本計画に沿って、景観重要建造物・樹木の指定や、景観重要公共施設(道路、橋、公園、 河川)の指定を進めていきます。 ・ 屋外広告物の掲示方法や規模について、千曲市独自の屋外広告物条例を定め、規制・誘導を行い ます。 ② 都市計画法・建築基準法等の活用 ~ 景観法と連動し各種法制度の活用を ~ ■地域地区(用途地域、高度地区、風致地区、景観地区等) ・ 市民・事業者の建築活動や土地利用を把握し、必要に応じ都市計画担当部署との連携により、 用途地域の変更・指定、高度地区、風致地区※、景観地区等の指定を検討していきます。 ■地区計画 ・ 地区計画の都市計画決定により、建築用途の制限、建築物の意匠・形態の制限、地区施設の指定、 垣・柵の構造の制限等を定め、街区単位での景観形成を図ります。 ■開発許可制度の運用 ・ 開発許可を要する土地の開発は景観に大きな影響を与えることから、この規定を積極的に活用 します。 ■都市計画事業の実施 ・ 景観重要公共施設(道路、橋、公園、河川)の位置づけに基づき景観に配慮した整備を進めま す。 ※ 「風致地区」 :都市計画区域のうち、自然的要素に富んだ良好な景観を形成しており、都市の土地利用計画上、また都 市環境の保全を図るため、風致の維持を図ることが必要な地区であって、地域地区のひとつとして都市 計画に定める地区(都市計画法第 8 条)。 41 ③ その他法制度の活用 ~ 土地利用制度を活用して ~ ■農地法、農振法 ・ 農業振興地域の整備に関する法律による農業振興地域整備計画と連携し、優良農地の保全を進 めます。 ■都市緑地法 ・ 今後策定される緑の基本計画に基づく施策の展開を図ります。 ・ 特別緑地保全地区、緑地保全地域の指定を検討します。 ・ 緑地協定の締結による街区単位での緑化推進を図ります。 ■森林法 ・ 保安林の維持、千曲市森林整備計画による森林の保全を進めます。 ■文化財保護法 ・ 重要文化的景観の選定や登録有形文化財などの制度を、積極的に活用します。 ④ 事業の実施 ~ 規制誘導だけでない積極的な景観形成に向けて ~ ■景観法に基づく事業の実施 ・ 今後、制度設置が想定される景観形成に関する補助事業等を積極的に活用し、施設整備や環境 整備などに取組みます。 ■総合的事業制度の活用 ・ 「まちづくり交付金」など、景観形成に効果的かつ効率的な総合的事業の実施を検討していき ます。 ■市民参加による公共事業の実施 ・ 道路整備や、新たな開発が行われる地区における、歩道や植栽のデザイン検討の段階において、 市民参加による検討を取り込み、その後の、市民による維持・管理へ結実させる仕組みづくり を検討していきます。 (5)長期的視点で継続的な取り組みを実施します。 ① 計画の活用 ~ 仕組みと活動を継続するために ~ ■千曲市景観計画の活用 ・ 本計画に従い、市民・事業者・行政が協力して景観形成を進めるよう、市民・事業者への計画 書の周知、技術的支援に努めます。 ■千曲市景観計画の見直し ・ 社会経済状況の変化、景観に関する市民の意識、計画の認知度を勘案し、適宜本計画の見直し を行います。 ・ 重点地区の指定など、適宜本計画の見直し・充実を図ります。 ② 景観形成の取組みの継続 ~ 人から人へ引き継ぐために ~ ■次世代への継承 ・ 本計画での景観形成の理念を次世代に引き継ぐとともに、相続や譲渡に際しての建築物の建替 え・改修にあたっては、計画に基づいた取組みがなされるよう努めます。 42 5-2 景観区分による市域全体を対象とした景観形成 1) 眺望景観の形成 ① 基本的な考え方 千曲市は、起伏に富んだ地形に囲まれ、平地に広がる市街地等の各所から、山なみや傾斜地に展 開する農地が眺望できる環境にあります。 また、姨捨駅、城山史跡公園、森将軍塚古墳等の高台からは、雄大な千曲川、独特の崎地形、ま とまりある農地や集落、市街地などが一望できます。 そのため、こうした眺望景観を大切にする必要があります。 ② 景観形成の基本方針 基本的考え方に沿い、眺望を確保するための方針を以下のとおり定めます。 区分 内 容 ●眺望を阻害する要素を防ぐ ・ 行政は、市民・事業者との合意形成により、山なみをさえぎるような大規模 建築物・工作物の配置、意匠・形態の制限に努めます。 ・ 行政は、市民・事業者との合意形成により、棚田など、傾斜地の農地景観を 阻害するような工作物の形態・色彩の制限に努めます。 平地からの眺望 ●山なみや、傾斜地の農地・緑地の保全 ・ 千曲市森林整備計画との連携により、森林の保全を目指します。 ・ 山肌を見せている採石場跡地等において、事業者と行政との協働により、緑 の回復の実現を目指します。 ・ 農業振興地域整備計画等と連携し、農業の振興、耕作の継続によって傾斜地 の農地の保全を目指します。 ●様々な要素で構成される眺望の、全体的な調和を図る ・ 行政は届出制度によって、周囲とつりあいの取れない大規模な建築物の立地 の制限を図ります。 ・ 行政は、市民・事業者との合意形成により、まとまりある田園風景を阻害す るような建築物の意匠・形態、色彩の制限に努めます。 ●平地に広がる農地・緑地の保全 高台からの眺望 ・ 農業振興地域整備計画と連携し、農業の振興によって、平地におけるまとま った農地の確保に努めます。 ・ 市民・事業者を主体として、千曲高原や千曲川の河畔林、武水別神社等のお 宮の森等のまとまった緑を保全するよう努めます。 ●展望台周辺の緑化の推進 ・ 事業者・行政は、展望台などを整備する際、眺望を遮らない範囲で周辺の緑 化に努め、山なみを崩さないよう努めます。 43 電線地中化等により、眺望を 阻害する要素を防ぐ 山並みや、傾斜地の農地景観の 保全 展望台周辺の緑化の推進 平地に広がる農地・緑地の保全 様々な要素で構成される眺望 の、全体的な調和を図る 山・峠 崎 平地からの主要な眺望点 高台からの主要な眺望点 眺望のよい高速道路 眺望のよい鉄道 ハイキングコース サイクリングコース 水域 44 2) 地域別の景観形成 地域別の景観については、以下のような境界区分に基づき、方針を定めます。 区 山 里・高 原 地 域 田 園 地 域 都 市 地 域 沿 道 地 域 分 z 都市計画区域外の行政区域 z 都市計画法に基づき都市計画区域として定められた区域のうち、下記に 示す都市地域以外の地域 z 都市計画法に基づき用途地域が定められた地域 z 国土利用計画 千曲市計画において都市地域に位置づけられた区域 z 高速自動車国道、一般国道、主要地方道、一般県道、都市計画道路(計 画幅員 16m以上)の両側 30mの地域 山里・高原地域 田園地域 都市地域 沿道地域 水域 地域区分図 45 (1)山里・高原地域 ① 基本的な考え方 山里・高原地域は、豊かな森林を有する地域です。千曲市の森林の多くは、林業による植林や二 次林であり、人の手を加えることでその豊かさを維持する必要があります。 しかし近年、木材利用の需要がなくなりつつあることから間伐が行われず、森林の荒廃が進んで います。そのため、森林の新たな利用を検討し、それを維持管理していくことが求められます。 また、西側山間部のわずかな谷地を利用して形成された山あいの集落では、厳しい自然環境と向 き合う中で創りだされた景観の魅力を、今後も維持していくことが大切です。 高原では、高原の豊かな自然や水辺と調和した、落ち着いた景観を創出していくことが大切です。 ② 方針 基本的な考え方に沿い、以下の方針で景観形成を進めます。 区分 内 容 ●森林の整備による緑地環境の回復 ・ 千曲市森林整備計画との連携により、豊かな森林の継続的な維持・管理とそのた めの担い手の確保を目指します。 ・ 山肌を見せている採石場跡地等においては、事業者と行政との協働により、緑地 の回復の実現を目指します。 ・ 行政は、市民・事業者との合意形成により、建築物・工作物の立地や開発行為の制 限を行うことで、自然景観との調和を図ります。やむを得ず立地、開発行為を行 う場合、市民・事業者は、山なみを崩さないよう配慮します。 山 里 ●動物の声が遠くで聞こえるような、静かな音景観の維持 ・ 市民・事業者は、身近なところから景観を美しくする活動等を通して、遠くで動 物の鳴く声が聞こえるような、静かな音景観の維持に努めます。 ●耕作の継続による山間田畑の景観維持 ・ 市民は耕作の継続による景観維持に努めます。 ●山間の集落(大田原地区)における、森林との一体感のある景観の継承 ・ 森林との一体感ある景観を継承するため、市民・事業者は、集落内の建築物・工作 物の配置や意匠・形態、色彩等の配慮に努めます。 ●県立自然公園、自然環境保全地域の維持・管理による、豊かな自然環境の保全 ・ 行政は、適正な維持・管理によって、貴重な動植物が生息する豊かな自然環境の保 高 原 全に努めます。 ●自然環境と調和した別荘地、レクリエーション施設の維持・管理 ・ 新たな建築物・工作物の立地や開発行為に際し、事業者・行政は、自然環境との調 和を図ります。 46 ③ 方針図 山間の集落における、森林と の一体感のある景観の継承 県立自然公園、自然環境保全 地域の維持・管理による、豊 かな自然環境の保全 耕作の継続による、山間田 畑の景観維持 自然環境と調和した別荘地、レク リエーション施設の維持・管理 山肌における緑地の回復 県立自然公園、郷土環境保全地域 地域森林計画対象民有林 別荘地、レクリエーション施設 山あいの集落 47 (2)田園地域 ① 基本的な考え方 田園地域には、地域全体に張りめぐらされた水路網を基盤として、豊かな農地が広がっています。 しかし近年、都市化の影響により、農地を転用し、新たな産業の誘致を目指そうとする地区も見ら れるようになりました。 田園地域は、開発と保全のはざまで揺れ動く地域であり、他方で、農地や集落、森林によって構 成される、日本の原風景とも言うべき景観を有している地域です。 そのため、景観形成にあたっては、きめ細やかな配慮が必要です。 また、扇状地や山麓、川沿いなど、立地環境によってそれぞれ異なった形態を見せる集落では、 その特徴をさらに伸ばし、市民だけでなく観光客にとっても、日本の原風景として価値ある景観に 高めていくことが大切です。その際には、広がりのある農地景観や背後の山なみに調和しているこ とも大切です。 ② 方針 基本的な考え方に沿い、以下の方針で景観形成を進めます。 区分 内 容 ●まとまった農地の保全 ・ 農業振興地域整備計画と連携し、農業の振興によってまとまった農地の保全を目指 します。 ・ 市民は、農地内に屋外広告物やゴミや資材置き場等が立地しないよう配慮に努めま す。やむを得ず立地する場合は、緑化等によって周辺との調和を図ります。 ・ 行政は、大規模な建築物・工作物の立地および開発行為について、都市計画法によ る開発許可と本計画による届出制度により、開発と保全のバランスを検討します。 ・ 行政は市民農園や観光農園を奨励し、市民・事業者がそれを積極的に活用すること 農 地 で、農地の転用や荒廃の抑制を目指します。 ●継続的な耕作による棚田景観の保全 ・ 様々な主体との連携によって棚田の継続的な耕作を行い、棚田の保全を図ります。 ・ 姨捨棚田の文化的景観保存計画や重要文化的景観の選定と足並みをそろえつつ、棚 田の美しい景観を維持します。 ●休耕田における花のある景観の創出 ・ 市民主体による花いっぱい運動などの取組みを活かし、休耕田における花のある景 観を形成します。 ●鳥や虫、カエル等の鳴き声が聞こえる音景観の創出 ・ 市民・事業者は、農地において、鳥や虫、カエル等が生息できるような環境保全活 動に取り組みます。 48 区分 内 容 ●森林整備による緑地環境の保全 ・ 市民・事業者は、千曲市森林整備計画との連携により、豊かな森林の継続的な維持・ 管理と、そのための担い手の確保を目指します。 崎地形の 山 里 ●緑地の保全を基調とした大規模な建築物の建築等および工作物の建設等への規制・ 指導 ・ 行政は、大規模な建築物の建築等および工作物の建設等について、都市計画法によ る開発許可と、本計画による届出制度によって、緑地の保全を基調とした開発への 規制・誘導を図ります。 ●扇状地・山麓、川沿いの集落における、昔ながらの集落形態の継承 ・ 市民は、民家や社寺、水路・中小河川、農地、森林等で構成される、昔ながらの集 落の空間構成の継承に努めます。 ・ 事業者・行政は、集落を見渡せる場所の整備を検討します。 ・ 行政は、集落を見渡したときに、農地や緑地に包まれる集落の景観を阻害しないよ う市民・事業者との合意形成を図ります。市民・事業者は建築物・工作物の配置や 意匠・形態、色彩等の配慮に努めます。 ・ 市民は、土口地区に残る石積住宅など、各集落がもつ独自の形態の継承に努めます。 ・ 日本一のあんずの里として「桃源郷」の異名をもつ森・倉科地区では、より魅力的 な景観とするため、今後市民の理解を得ながら重点的な景観形成を図っていきま す。 ・ かつて養蚕で栄え、建物上部に乾燥室を備えた大きな構えの民家が残っている力石 地区においては、今後市民の理解を得ながら、重点的な景観形成を図っていきます。 集 落 ●旧街道沿いの集落(桑原地区、雨宮地区)における、連続感のあるまちなみの形成 ・ 市民は、建築物・工作物の配置や意匠・形態の統一により、連続感のあるまちなみ の形成に努めます。 ・ 市民・行政の協働によって、街道沿いに植栽や遊歩道を施し、歩いて楽しい空間と なるよう努めます。 ●棚田周辺の集落における、歴史・文学的景観の創出 ・ 行政は、市民の理解を得ながら、長楽寺一帯の歴史・文学的景観を保全します。 ・ 市民・行政の協働により、大池用水を地区形成の基盤として大切にし、親水性を高 めます。 ・ 高台や、まちなかから眺めたときに、広がりのある棚田の景観が阻害されないよう、 市民・事業者は、建築物・工作物の配置や意匠・形態、色彩の配慮に努めます。 ・ 今後市民の理解を得ながら、重点的な景観形成を図っていきます。 49 ③ 方針図 緑の保全を基調とした、大規 模開発行為の規制・指導 旧街道沿いの集落(桑原地区、 雨宮地区)における、連続感 のあるまちなみの形成 まとまった農地の保全 森林整備による緑地環境の 保全 棚田周辺の集落における、歴 史的・文学的景観の創出 扇状地・山麓、川沿いの集落 における、昔ながらの集落形 態の継承 継続的な耕作による棚田景 観の保全 ※出典:『ふるさとアルバム 更埴・戸倉・上山田』 休耕田における花のある景観 の創出 鳥や虫、カエル等の鳴き声が 聞こえる環境の創出 郷土環境保全地域 地域森林計画対象民有林 農業振興地域計画 農用地区域 名勝「姨捨(田毎の月)」 指定区域 扇状地・山麓の集落 棚田とその周辺の集落 ※出典:『ふるさとアルバム 街道沿いの集落 川沿いの集落 50 更埴・戸倉・上山田』 (3)都市地域 ① 基本的な考え方 都市地域では、戦後より長野市などからの人口流入の受け皿として、既存集落の周囲で住宅地開 発が進められました。 新しく建てられた建築物は、旧来のものと比較して、意匠・形態、材料、色彩等に様々なものが見 られ、多様な景観をつくりだしています。特に近年では、洋風の建築物が目立っています。 こうした景観は、一方ではにぎわいのある景観を創出していますが、他方では、雑然とした印象 を与えています。 そのため、都市地域では、人が集まりにぎわいのある景観を形成しつつも、背後の農地景観や山 なみに調和した景観を形成していくことが大切です。 今後策定される都市計画マスタープランとの連携を図り、魅力的な景観形成に努めます。 ② 方針 基本的な考え方に沿い、以下の方針で景観形成を進めます。 区分 内 容 ●駅前広場における、まちの玄関口としての安全で快適な景観整備 ・ 行政は、まちの玄関口としての象徴性を高める景観整備を進めます。整備に あたっては、駅前広場から見渡した時に山なみが美しく見えるような配慮、 安全で快適な空間整備のあり方について検討します。 駅前市街地 ●にぎわいや連続感のある駅前商店街の形成 ・ 市民・事業者は、通りに面する建築物の 1 階部分には、できるだけ商業施設 を入れるように努めます。 ・ 市民・事業者・行政の協働により、にぎわいを創り出すイベント等を積極的 に行える体制を整えます。 ●歩いて楽しい景観の形成 ・ 行政は、通りに植栽や遊歩道、まちかど公園を施し、歩いて楽しい景観を形 成します。 ・ 市民・事業者は、イベントの積極的な実施により、にぎわいを創出します。 ・ 今後市民・事業者の理解を得ながら、重点的な景観形成を図っていきます。 温 泉 街 ●温泉街表通りでの風情ある景観の形成 ・ 市民・事業者は建築物・工作物の配置や意匠・形態、色彩等に配慮し、温泉街 としての風情ある景観の形成に努めます。 ●路地のネオン街での、屋外広告物や街灯を活かした景観形成 ・ 行政は、路地の情緒を創出している屋外広告物や街灯等を活かした景観形成 を図るための、デザインガイドライン※の策定や、景観協定の締結支援を行 います。 ※ 「デザインガイドライン」:建築物・工作物等の意匠・形態について、守るべき規範を示したもの。 51 区分 内 容 ●宿場町(稲荷山地区、磯部地区)における、歴史的まちなみの連続性の創出と、 背後の住宅地への意匠・形態の継承 ・ 行政は、街道沿いに植栽や遊歩道、まちかど公園を施し、歩いて楽しい空間 となるよう努めます。 ・ 白壁を基調とした統一感のあるまちなみを形成している稲荷山地区において は、今後市民の理解を得ながら、重点的な景観形成を図っていきます。 ・ 古い町家が良好な状態で残っている磯部地区では、歴史的な面影を活かしつ つ、閑静な住宅地景観を保全するため、市民の理解を得ながら、重点的な景 宿 場 町 ・ 門 前 町 観形成を図っていきます。 ・ 宿場町背後の住宅地において、市民・事業者は、歴史的なまちなみの広がり を創出するため、宿場町に見られる建築物・工作物の意匠・形態の継承に努め ます。 ●門前町(八幡地区)としての面影を活かした整備の推進 ・ 市民・事業者を主体として、大きな鳥居と豊かなお宮の森や歴史的建造物を 有する武水別神社を、地域の景観にうるおいを与える緑として保全します。 ・ 行政は、武水別神社周辺における、門前町としての面影を活かした整備を検 討します。 ・ 今後市民の理解を得ながら、重点的な景観形成を図っていきます。 ●敷地の緑化による周辺景観との調和 ・ 事業者は、敷地内の緑化を積極的に行い、周囲の山なみや川なみの景観を阻 害しないよう配慮に努めます。 工 業 地 ・ 事業者は、敷地境界の植栽での縁取りを行うことで、周辺住宅地との景観の 連続性に努めます。 ●建築物・工作物の意匠・形態等への規制・指導による周辺景観との調和 ・ 事業者は、建築物・工作物について、周辺の住宅地に調和した配置や、意匠・ 形態、色彩となるよう努めます。 ●地域の歴史的景観を伝える、古い日本家屋や社寺の保全 ・ 市民は、既存集落の面影を残す古い日本家屋や、社寺、水路を、地域の歴史 的景観を伝える固有の要素として保全することを目指します。 ●緑化による景観形成 ・ 市民は、敷地境界に季節感を感じさせる植栽を施し、魅力ある景観形成に努 一般市街地 めます。 ●屋外広告物の規制や景観協定等の締結による統一感のある景観形成 ・ 住居専用地域に指定されている地域において、行政は、長野県の屋外広告物 条例に基づき、屋外広告物の掲出を禁止します。 ・ 市民・行政は、景観協定等の締結等によって、統一感のある景観の形成に努 めます。 52 ③ 方針図 宿場町(稲荷山地区、磯部地 区)における、歴史的まちな みの連続性の創出と、背後の 住宅地への意匠・形態の継承 駅前広場における、まちの玄 関口としての安全で快適な景 観整備 緑化による周辺景観との調和 建築物・工作物の意匠・形態等 への規制・指導による周辺景観 との調和 門前町(八幡地区)としての 面影を活かした整備の推進 にぎわいや連続感のある駅前 商店街の形成 地域の歴史的景観を伝える、 古い日本家屋や社寺の保全 緑化による景観形成 屋外広告物の規制や景観協定 等の締結による統一感のある 景観形成 千曲市国土利用計画で工業系 路地のネオン街での、屋外広 告物や街灯を活かした景観 形成 1 歩いて楽しい景観の形成 市街地に位置づけられた地域 温泉街表通りでの風情ある 景観の形成 住居専用地域 区画整理施行地域 地域森林計画対象民有林 駅前市街地 温泉街 宿場町・門前町 53 (4)沿道地域 ① 基本的な考え方 沿道地域は、幹線道路の沿道に広がり、まち全体の景観イメージに大きな影響を与える地域です。 現在、国道 18 号をはじめとして看板や電柱の乱立、派手な色彩のロードサイドショップの立地 が目立ちはじめています。こうした景観要素は、背後の山なみや豊かな川の流れといった、地域固 有の景観の魅力を阻害する恐れがあります。 そこで沿道地域では、地域固有の景観を阻害する恐れのある景観要素を、一つずつ取り除いてい くことが大切です。 また、新たに整備された国道 18 号バイパスなどの沿道に関しても、計画的な土地利用の検討に より、秩序ある景観を形成していきます。 ② 方針 基本的な考え方に沿い、以下の方針で景観形成を進めます。 区分 内 容 ●地域固有の景観の創出 ・ 行政は、市民・事業者との合意形成により、電線地中化、看板の意匠・ 高速自動車国道沿道、 形態の制限、建築物の色彩の制限に努めます。市民・事業者は、背後 一般国道沿道、 に見える山なみや、豊かな川の流れといった地域固有の景観が阻害さ 主要地方道沿道、 れないよう努めます。 一般県道沿道 ●敷地境界の緑化などによるまちなみの連続性の創出 ・ 事業者・行政は、大規模な建築物の建設や開発行為を行う場合、敷地 境界の緑化などを行い、まちなみの連続性を創出するように努めま す。 ●計画的な土地利用の検討による秩序ある景観の形成 都市計画道路 (計画幅員 16m以上) 沿道 ・ 行政は、道路整備と平行して沿道地域の計画的な土地利用の検討を行 い、秩序ある景観の形成に努めます。 54 ③ 方針図 地域固有の景観の創出 敷地境界の緑化などによる まちなみの連続性の創出 計画的な土地利用の検討によ る秩序ある景観の形成 高速自動車国道沿道 都市計画道路(計画幅員 16m)沿道 一般国道沿道 整備済 主要地方道沿道 事業中 一般県道沿道 未整備(拡幅整備含む) ※平成 20 年 11 月現在。 なお一部、計画幅員 12mの区間について も、参考として記載している箇所がある (点線で記載した箇所)。 55 3) 公共の空間や施設の景観形成 公共の空間や施設は、まちの基盤であると同時に、周辺の良好な景観形成を誘導する重要な役割を 果たしています。そこで公共・公益施設の種類ごとに、以下の方針を定めます。 公共施設(道路、橋、公園、川)の中で特に重要なもの関しては、景観重要公共施設に位置づけ、 積極的な景観整備を図っていきます。 なお、公共の空間や施設の景観整備にあたっては、使用する素材等によって発生する音が異なるた め、見た目の景観だけでなく、心地よい音景観の創出にも配慮することが大切です。 (1)道路の景観 屋代駅前ふれあい通り 国道 403 号線 区分 内 容 ●地域イメージを表現しつつも、周辺景観になじむデザインの創出 ・ 行政は、地域イメージを効果的に表せるよう、舗装、街路灯、案内看板 などのデザインに配慮し、デザイン検討過程において、市民参加を取り 道路構造物 込む仕組みを検討します。 ・ 行政は、騒音の出ない、環境にやさしい舗装素材を使用するよう努めま す。 ・ 市民・行政の協働により、管理しやすい街路樹の植栽に努めます。 ●緑化による、道路空間の質の向上 ・ 行政は、道路造成地の残地を利用し、まちかど公園の整備や、造成によ 道路造成地 って生じる法面の緑化に努めます。 ・ まちかど公園の整備にあたっては、デザイン検討の過程に、市民参加を 取り込む仕組みを検討します。 ●官民協働でデザインを考える・歩道・街路樹の維持・管理 歩道・街路樹の 整備体制 ・ 街路樹や歩道の維持・管理は、市民参加で検討したデザインによる刈込 みの実施や、アダプト制度の活用等により、官民協働で行う体制を整え ます。 56 (2)橋梁の景観 象徴的な構造を有する千曲橋 橋の中央にバルコニーが整備された 粟佐橋 区分 内 容 ●地域のランドマークとなるような意匠・形態の創出 ・ 行政は、千曲市のランドマークとなるような魅力的な意匠・形態となる よう、配慮に努めます。 橋梁構造物 ●眺望点の整備 ・ 市民・行政の協働により、市民や観光客が橋の上やたもとで、立ち止ま って景色を眺められるような場所づくりを検討します。 57 (3)水辺の景観 大正橋から見た千曲川と温泉街 水辺に親しみやすい水源ため池地域(大池-上池) 区分 内 容 ●親水性の高い空間整備 千 曲 川 ・ 行政は、関係組織との連携を図り、まとまりのある河畔林を保全しつつ も、市民や観光客が憩いや安らぎを持てる空間となるよう努めます。 ●身近に親しむ水辺空間の整備 ・ 行政は、川のせせらぎや、鳥や虫、カエル等の鳴き声が聞こえ、市民が 親しみを持って憩えるような護岸整備に努めます。 中小河川・水路 ・ 行政は、空間整備のデザイン検討の過程に市民参加を取り込む仕組みを 検討します。 ・ 市民・事業者は、鳥や虫、魚、カエル等が生息できるような環境保全活 動に取り組みます。 ●整備・開発の制限による景観の保全 ・ 周辺と一体となった美しい景観を保全するため、行政は、市民・事業者 湧水や渓流、 との合意形成により、建築物・工作物の立地や開発行為の制限に努めま 滝、ため池 す。 ・ 観光資源として活用する場合、行政は、美しい自然景観の保護を第一と し、むやみな立ち入りや、ゴミの投棄が行われないよう制限に努めます。 58 (4)公園・緑地景観 戸倉宿キティパーク 平和橋緑地公園 区分 内 容 ●憩いと安らぎを与えるデザインの配慮 ・ 行政は、市民や観光客が周囲の山なみや川の流れといった景色を楽しみな 河畔沿いの 公園・緑地 がら、安らげるような空間整備を検討します。 ●質の高い緑化の推進 ・ 事業者・行政は、植栽を選定する際、四季の移り変わりを感じることので きるものとなるよう、配慮に努めます。 ●歴史的景観を体感できる機会の創出 史 跡 公 園 ・ 行政・市民の協働によりイベントを実施し、歴史的景観を体感できる機会 を創出することで、地域の歴史的景観に愛着を持てるよう努めます。 ●地域の景観にうるおいを与える緑としての保全 社寺林・古木 ・ 市民による発意のもと、本計画による景観重要樹木の指定や文化財制度の 活用によって、地域の景観にうるおいを与える緑として、保全に努めます。 59 (5)公益施設の景観 更埴文化会館 旧屋代小学校 区分 内 容 ●地域の交流の拠点となるような意匠・形態の創出 ・ 行政は、地域の交流の拠点となり、また周辺の良好な景観を誘導するような、 魅力的な意匠・形態となるよう努めます。 建 築 物 ・ 行政は、デザイン検討の過程において、市民参加を取り込む仕組みを検討し ます。 ・ 事業者は、地域の文化を反映し、親しみのもてるものとなるよう、建築物の 配置や意匠・形態、色彩、素材、敷地の緑化等の配慮に努めます。 60 5-3 景観形成重点地区における景観形成 1) 景観形成重点地区とその候補地 当初、以下の6地区を、景観形成重点地区の候補地としましたが、うち姨捨地区は景観形成重点 地区第1号として指定しています。他の5候補地の具体的な区域、景観形成の方針、行為の制限に ついては、今後、地域の方の理解を得ながら地区ごとに定めていくものとします。指定された地区は、 千曲市の景観形成の先導的な役割を果たす地区として、良好な景観形成を推進します。 また、地区の景観の魅力をより確固としたものとするためには、景観法に基づく景観地区の指定も 視野に入れて取り組むものとします。 なお、ここに掲げる地区についての景観形成の方針、行為の制限については、当面は、「5-2 観区分による市域全体を対象とした景観形成」で定めたものを準用することとします。 候補地 地区の概要 選定基準(p35参照) 姨捨地区(指定済) 棚田が国の重要文化的景観に選定 (2)歴史的・文化的景観を有する地区 森・倉科地区 日本一のあんずの里 (3)自然と調和した景観を有する地区 桑原・稲荷山・八幡 明治・大正の繁栄の歴史を継承するかつて (2)歴史的・文化的景観を有する地区 地区 の宿場町 戸倉上山田温泉地区 開湯 100 年を迎えた千曲川ほとりの温泉 地 磯部地区 かつての宿場町としての風情を残す落ち着 いた雰囲気の集落 力石地区 養蚕で繁栄し、豪壮な民家が残る集落 桑原・稲荷山・八幡地区 森・倉科地区 姨捨地区 (景観形成重点地区) 戸倉上山田温泉地区 磯部地区 力石地区 ᥊ⷰᒻᚑ㊀ὐ߅ࠃ߮候補地の位置 61 景 2) 各地区の景観形成の方向性 (1) 姨捨地区(景観形成重点地区) ①景観形成方針 姨捨地区は、日本有数の棚田景観を有し、棚田の 一部は、国の名勝指定を受けています。 一方で、平安時代から観月の名所として親しまれ る姨捨の風景は、国の名勝指定を受けた地域だけで なく、姨捨の棚田地域から南に展開する冠着山を含 めた広域な空間によって形成されています。 その中でも特に、棚田の周辺に展開する集落景観 が風景の魅力に大きな影響を与えています。 加えて姨捨地区には、月の名所として有名な長楽 寺や、日本三大車窓の一つであるJR姨捨駅があり、 日本有数の棚田景観をもつ姨捨地区 そこから見渡す千曲川・鏡台山・善光寺平の広大な景観は、大きな観光資源です。また、棚田を 潤す水源の大池なども、千曲高原における魅力的な観光資源の一つになっています。 こうした姨捨地区の風景を、市民の財産として残していくため、景観形成を図ります。その際、 棚田だけでなく、灌漑水の水源となる大池や周辺の集落景観までを含めた風景を対象とします。 また観光資源等からの眺望景観の維持・向上に努めます。 姨捨地区の景観の維持・育成に向けては、営農が第一条件となります。そのため、現状の保全を 基本としながら、様々な方策により耕作の継続を支援します。 具体的には、姨捨棚田の文化的景観保存計画、重要文化的景観の選定と足並みをそろえながら、 棚田の美しい景観形成を図ります。 また、千曲市美しいまちづくり景観条例による規制・誘導だけでなく、地域住民をはじめ棚田耕作 者の理解と協力を得ながら、協働によって、姨捨地区の景観形成に努めます。 62 ■届出対象行為 区分 建築物の新築・増改築 工作物の新設・増改 築・移転、外観を変更 する修繕 建築物 工作物 土地の形質変更 (開発行為・土石 の採取等を含む) 土地の形質変更 電線路など 農作業小屋 貯水槽、飼料貯蔵タン クその他 自動販売機等 農地の整備、開墾 用排水施設 農道、林道 法面・擁壁 木竹の伐採 木竹の伐採等 屋外における物品 の集積 農業目的以外の物品の集積 規模等 10 ㎡を超える新築、改築 高さ 10mを超えるもの 10 ㎡を超えるもの 高さ 5mを超え、または築造面積 10 ㎡を超えるもの 高さ 1mを超えるもの 面積 10a を超えるもの 幅員1m以上のもの 幅員2m以上のもの 高さ 1.5mを超えるもの 高さ 5mを超え、かつ伐採面積が 300 ㎡を超えるもの 高さ 1.5m又は面積 50 ㎡を超え るもの ■景観形成基準 項目 共通事項 建築物および 屋敷地 指針 基準 ・農業的土地利用の持続を図る。 指針 ①建築物 (改修) ・伝統的様式を残す建築物は、外観の維持に配慮する改修を奨励する。(内部改 善は自由) (新築) ・基本的に周辺建築と調和するものを奨励する。 (付属屋) ・車庫等についても基本的に周辺建築と調和するものを推奨する。 (建築設備) ・基本的に周辺建築と調和するものを奨励する。 ②屋敷周り ・庭木、生垣等の美化に配慮する。 ①建築物 (規模) ・新築する建築物の高さは 10mを超えないこと。 (形態意匠) ・色彩は自然素材色を基調とする。 ①鉄塔等 ・送電線塔、電波塔等は極力設置しない。 ・周辺と調和する色彩とする。 ②各種工作物 ・農作業小屋等の施設配置に際しては、高さ・外壁等が周辺と調和するよう配慮 する。 ③自動販売機等 ・野立ての自動販売機はできるだけ設置しない。設置する場合も色彩等に配慮す る。 ①工作物 ・やむを得ず設置する工作物は、できるだけ周辺と調和させ、目立たせないよう にする。目安については、別途モデルを提示する。 基準 工作物 内容 ・歴史的に特徴ある棚田景観を次世代に継承する。 ・農業耕作の継続によって棚田景観を維持する。 ・棚田と一体的に連続し、形成された地域の景観を保全する。 指針 基準 63 項目 土地の形質変 更(開発行 為・土石の採 取等を含む) 内容 指針 基準 木竹の伐採等 指針 基準 屋外における 物品の集積 指針 基準 ※ ①土地の形質変更 ・農業目的以外の土地の形質の変更は原則行わない。 ②土石の採取等 ・農業目的以外の土石等の採取は原則行わない。 ①土地の形質変更 ・農業目的における基盤の整備(区画の改変・合併およびそれに伴う道路・水路 の改変等)は、名勝指定地および既圃場整備済地以外可能だが、最大面積規模 は 10a 程度とする。 ②新たな法面・擁壁、土地の造成 ・農作業上必要な法面形状の改変(足場小段設置等)は可能とするが、土羽以外 の構造物(ブロック積等)は極力採用しない。やむを得ず採用する場合は、色 彩・明度等に配慮すること。 ③道路舗装の明度※ ・道路舗装に際しては、明度に留意し、付帯構造物についても景観に配慮するこ と。 ①木竹、景観木等の保全 ・景観の素地をなす木竹、景観木を保全・維持管理する。 ②森林の保全 ・水源林を含め、適切な管理を実施する。 ①水源林の保全 ・棚田水源林を適切に管理・保全する。 ①農業目的以外の物品の集積 ・景観に不調和な露出した物品の集積は極力行わない。 ①農業目的以外のものの集積 ・高さ 1.5mまたは面積 50 ㎡を超える土石、廃棄物等の集積は原則行わない。 「明度」:色の明暗、「明るさ」の度合いを示す。明度が最大(100%)の場合には白となり、最も暗くなる(0%) と黒となる。 64 ②姨捨地区景観形成重点地区 位置図 内 景観形成重点地区指定 65 (2) 森・倉科地区 ① 基本的な考え方 森・倉科地区は日本一の「あんずの里」として全 国に知られ、平地から山地にかけ、緩やかに傾斜 する良好な景観をつくりだしています。 当地区は、稲作、養蚕、そして果樹生産へと推 移する地域の産業の歴史を今に伝える田園地帯で す。集落には、豪壮な民家や、多くの文化財が残 る観龍寺などの歴史的建造物も点在しています。 善光寺平の雪が消える頃、一帯は桃色に染まり ます。その風景は市民に春の訪れを知らせ、多く の観光客を楽しませています。 森・倉科地区に広がるあんず畑 そのため、あんず畑に包まれた良好な集落景観 をふるさとの景観として維持し、また観光資源と しての価値を高めるための景観形成を図ります。 具体的には、現在進められている「まちづくり交付金」を活用したまちづくりと連携しながら、 施設整備と併せ、農地の保全、樹園としての環境整備、のどかな農村風景の保全・育成を図ります。 ② 今後検討する項目(案) 地区の具体的な範囲や、景観形成の方針、行為の制限の策定に際しては、今後、以下の項目を地 域の方とともに検討していきます。 ● まとまった樹園地の保全 ● 農業用施設の景観形成(例:建築物の配置・規模・意匠・形態・材料・色彩等について) ● 地区の景観に配慮した散策路や農道、河川等公共施設の整備 ● 集落内建築物の景観形成(例:建築物の配置・規模・意匠・形態・材料・色彩等について) ● 地区の個性を強調する重要な建築物および樹木についての景観形成 ● 地区の景観に配慮した工作物・広告物等の整備 ● 樹園に包まれた集落景観を阻害する物品の集積又は貯蔵に関する事項 ● 高台、散策路からの眺望景観確保 66 ③ 想定地区の位置図 想定地区 郷土環境保全地域 河川、ため池 ハイキングコース 主要施設 山 高速道路 67 (3) 桑原・稲荷山・八幡地区 ① 基本的な考え方 桑原・稲荷山地区は善光寺道の宿場町として 栄え、江戸や明治の面影を残すとともに、昭和 のよき時代を連想させるまちなみを残してい ます。 八幡地区は、武水別神社の門前町として形成 され、豊かなお宮の森や、歴史的な建造物が当 時のにぎわいをしのばせています。 このようなまちなみは、地域の誇りであるだ けでなく、観光資源として活用が期待されるた め、まちなみを保全し特色のある景観を形成し 整備された稲荷山地区の蔵の小路 ていくことが求められます。 具体的には、現存する町屋や土壁の蔵を保全しながら、統一した建築様式や周辺に馴染む意匠で の建て替えにより、まちなみを整えることが必要です。 また、 「千曲市川西地区振興連絡協議会」により進められているまちづくり事業や、県宝松田家整 備事業、姨捨の名勝整備事業などと連携し、観光資源として活用を図る工夫も必要です。 ② 今後検討する項目(案) 地区の具体的な範囲や、景観形成の方針、行為の制限の策定に際しては、今後、以下の項目を地 域の方とともに検討していきます。 ● 街道沿道の連続性と統一感のある景観形成 (例:建築物の配置・規模・意匠・形態・材料・色彩等について) ● 建築物の保全と修景による歴史的まちなみの形成 ● 街道周辺地区での街道の景観に調和した景観形成 (例:建築物の配置・規模・意匠・形態・材料・色彩等について) ● 地区の個性を強調する重要な建築物および樹木についての景観形成 ● 地区の景観に配慮した道路や散策路、水路等、公共施設の整備 ● 地区の景観に配慮した工作物・広告物等の整備 ● まちなみの連続性を阻害する物品の集積又は貯蔵に関する事項 68 ③ 想定地区の位置図 想定地区 都市緑地 河川・池 ハイキングコース 高速道路 鉄道 主要施設 69 (4) 戸倉上山田温泉地区 ① 基本的な考え方 戸倉上山田温泉地区は、明治半ばからの温泉開 発によって地域の発展をとげ、その繁栄の歴史を 今に継承しています。市の中では、都市的景観を 形成する地区であり、今後も、市街地としての整 備改善を通して、良好な景観の育成に努めるもの とします。 現在の観光ニーズに対応した温泉地への方向 性として、これまでの男性中心、1泊宴会型から、 女性や高齢者、家族連れの客層を意識する上で、 心地よい雰囲気を演出するための景観形成が求 められます。 戸倉上山田温泉街の表通り そのため、 「千曲川のほとりにある情緒ある温泉地」の形成を目指し、千曲川や周辺の山なみを眺 望でき、歩いて楽しいと感じるまちなみを形成することが必要です。 具体的には、旅館・ホテル・マンション等の大型建築物と、商店・飲食店・一般住宅等の建築物 とが、温泉街としての風情を創出しながら、共存できる景観形成に努める必要があります。 また、表通りから続く路地のネオン街では、にぎわいを演出し、また特色ある通りとするため、 看板や店舗等について、秩序ある意匠・形態とすることが望まれます。 今後、千曲市観光振興計画や、カラコロにぎわい協議会等による活動との整合を取りながら、に ぎわいと自然を生かした景観形成を進めます。 ② 今後検討する項目(案) 地区の具体的な範囲や、景観形成の方針、行為の制限の策定に際しては、今後、以下の項目を地 域の方とともに検討していきます。 ● 温泉街の表通りでの統一感ある景観形成 (例:建築物の配置・規模・意匠・形態・材料・色彩等について) ● 路地のネオン街での特色ある景観形成 ● 地区の個性を強調する重要な建築物および樹木についての景観形成 ● 地区の景観に配慮した道路や散策路、水路等、公共施設の整備 ● 地区の景観に魅力を与える工作物・広告物等の整備 ● 温泉街の景観の連続性を阻害する物品の集積又は貯蔵に関する事項 70 ③ 想定地区の位置図 想定地区 都市緑地 河川・池 温泉通り 鉄道 主要施設 71 (5) 磯部地区 ① 基本的な考え方 磯部地区は、千曲市の中でも、静かに時を刻 んで昔の街道のたたずまいを残す貴重な一帯で す。 古い町屋が残るとともに、背後の山なみに溶け 込み、落ち着いた宿場町の景観を呈しています。 この歴史と自然豊かな風景を後世に残すため にも、まちなみ保存と修景により、景観形成を 進めます。 磯部地区の歴史的まちなみ ② 今後、検討する項目(案) 地区の具体的な範囲や、景観形成の方針、行為の制限の策定に際しては、今後、以下の項目を地 域の方とともに検討していきます。 ● 街道沿道の連続性と統一感ある景観形成 (例:建築物の配置・規模・意匠・形態・材料・色彩等について) ● 建築物の保全と修景による歴史的まちなみの形成 ● 地区の個性を強調する重要な建築物および樹木についての景観形成 ● 地区の景観に配慮した道路や散策路、水路等、公共施設の整備 ● 地区の景観に配慮した工作物・広告物等の整備 ● まちなみの連続性を阻害する物品の集積又は貯蔵に関する事項 ③ 想定地区の位置図 想定地区 河川 北国街道 主要施設 通りに残る宿場建築 72 (6) 力石地区 ① 基本的な考え方 力石地区は、養蚕で栄えた地域の歴史を伝える まちなみを今に引き継いでいます。 広い敷地に建ち乾燥室を有する独特の民家や、 風情ある清水神社および如法寺周辺の田園風景が 一体となり、力石本通りを通行する人々にかつて の歴史をしのばせます。 この歴史と自然豊かな風景を後世に残すため、 まちなみ保存と修景により、景観形成を進めます。 力石地区の歴史的まちなみ ② 今後検討する項目(案) 地区の具体的な範囲や、景観形成の方針、行為の制限の策定に際しては、今後、以下の項目を地 域の方とともに検討していきます。 ● 建築物の保全と修景による歴史的まちなみの形成 ● 街道沿道の連続性と統一感ある景観形成 (例:建築物の配置・規模・意匠・形態・材料・色彩等について) ● 地区の個性を強調する重要な建築物および樹木についての景観形成 ● 地区の景観に配慮した道路や散策路、水路等、公共施設の整備 ● 地区の景観に配慮した工作物・広告物等の整備 ● まちなみの連続性を阻害する物品の集積又は貯蔵に関する事項 ③ 想定地区の位置図 想定地区 河川 本通り 主要施設 73 第6 章 行為 の制 限に 関す る事 項 36 37 第 6 章 6-1 行為の制限に関する事項(景観法第 8 条第 2 項第 3 号) 届出対象行為 景観形成の基本理念を踏まえて設定された目標「未来に引き継ぐふるさとの景観まちづくり」を進 めるため、景観計画区域全域を対象に、以下の大規模開発行為を届出対象行為として設定します。 運用にあたっては、千曲市宅地開発指導要綱との調整を図っていきます。 届出のあった行為に対し、次項で定める景観形成基準に合致しない場合には、勧告を行います。 なお、千曲市美しいまちづくり景観条例に基づき、建築物の建築等および工作物の建設等を、特定 届出対象行為として位置づけます。 1) 特定届出対象行為 建築物の 建築等 ※1 工作物の建設等 (1) ※2 (2) 行為の種類 届出を要する規模 高さ 13mを超えるもの 新築、増築、改築若しくは移転 延床面積 1,000 ㎡を超えるもの 外観を変更することとなる修繕若しくは模 様替又は色彩の変更 変更に係る面積が 400 ㎡を超えるもの プラント類、自動車車庫(建築物とならな い機械式駐車装置)、貯蔵施設類、処理施 設類※3 の建設等 高さ 13mを超えるもの 電気供給施設等※4 の建設等 高さ 20mを超えるもの 上記以外の工作物の建設等 高さ 13mを超えるもの 建築物又は工作物の外観における公衆の関心を引く ための形態又は色彩その他の意匠※5(以下、「特定 外観意匠」という) 築造面積 1,000 ㎡を超えるもの 面積 25 ㎡を超えるもの 2) その他の届出対象行為 行為の種類 届出を要する規模 面積 1,000 ㎡※7を超えるもの (1) 土地の形質の変更 ※6 生じる法面・擁壁の高さ 3m又は長さ 20mを超え るもの 面積 1,000 ㎡※7を超えるもの (2) 土石類の採取 (3) 屋外における物品の集積 生じる法面・擁壁の高さ 3m又は長さ 20mを超え るもの 集積の高さ3m又は面積 1,000 ㎡を超えるもの ※1 「建築等」 :新築、増築、改築若しくは移転、外観を変更することとなる修繕若しくは模様替又は色彩の変更。 ※2 「建設等」 :新設、増築、改築若しくは移転、外観を変更することとなる修繕若しくは模様替又は色彩の変更。 ※3 「プラント類」:コンクリートプラント、クラッシャープラントその他これらに類するもの。 「貯蔵施設類」 :飼料、肥料、石油、ガス等を貯蔵する施設。 「処理施設類」 :汚物処理場、ごみ焼却場その他の処理施設。 ※4 「電気供給施設等」 :電気事業法(昭和 39 年法律第 170 号)第 2 条第 9 号に規定する「電気事業」のための施設又は電気通信事業法(昭和 59 年法律第 86 号)第 2 条第 1 号に規定 する「電気通信」のための施設。 ※5 当該意匠がある状態が 30 日を超えて継続しないものを除く。 ※6 「土地の形質の変更」:都市計画法第 4 条第 12 項に規定する開発行為および景観法施行令第 4 条第 1 項に規定する土地の形質の変更。 ※7 同一事業者が隣接する地域において同時又は異なる時点に行為を行う場合は、その合計面積が 1000 ㎡以上となるもの。 75 6-2 景観形成基準 届出対象行為に対し指導、勧告、変更命令を行うための景観形成基準については、景観計画区域を 都市地域、田園地域、山里・高原地域、沿道地域に分け、地域別に設定します(地域の境界区分は、 p45 を参照)。 景観形成基準の項目は、長野県景観育成基準との整合性を図るため、また千曲市の景観形成の基本 理念に即し広がりのある豊かな自然や歴史・文化が育んだふるさとの景観づくりを推進するため、現 時点で最低限必要となる内容を、景観法の範囲内で定めることとします。ただし、社会情勢の変化や 市民・事業者による景観への理解の醸成に応じて、随時変更を検討していきます。 以下に掲げる基準のうち、色彩に関する基準では、使用できる彩度※の範囲を設定します。また田園 地域を中心として、鉄塔など、一部の工作物の建設等を除いた行為については、高さの上限を原則と して 13mとします。 今後指定する景観形成重点地区においては、地区の方々ともに検討を重ね、より細かな基準を別途 設けていきます。 1) 特定届出対象行為に関する基準 特定届出対象行為について、変更命令の対象となる基準は、下表に示す、意匠・形態、材料、色彩 等とします。 (1) 建築物の建築等および工作物の建設等 都市地域 配置 ※ 沿道地域 田園地域 山里・高原地域 ■道路と接する建築 ■特に支障のある場合 ■ 道 路 か ら で き る だ ■ 道 路 側 に 既 存 林 を 物・工作物の外壁もし を除いて、5m以上道 け後退し、道路側に空 残 せ る よ う に 道 路 か くは垣・柵・塀の位置 路から後退するように 地 を 確 保 す る よ う 努 ら で き る だ け 後 退 す ること。 めること。 を、隣接地と相互に協 努めること。 力して統一させ、連続 した沿道景観を構成 するよう努めること。 ■駅前市街地、宿場 ■隣接の敷地境界からできるだけ離し、ゆとりのある空間を確保するこ 町・門前町、温泉街に と。 おける接道部は、公共 性を重視してできる だけ空地を創出し、休 憩するための椅子を 配置するなど、歩行者 が歩いて楽しい空間 となるよう努めるこ と。 ■敷地内に大径木や良好な樹林、樹木、河川や水辺がある場合、これを生かせる配置とすること。 「彩度」:色の鮮やかさを表す。彩度が高ければより鮮やかに、低ければ濁った色(グレー)となる。 76 都市地域 沿道地域 田園地域 山里・高原地域 ■敷地が河川、水路等の水辺および鉄道に面している場合、境界からできるだけ後退した配置と すること。 ■千曲川や、東西にそ ■ 地 形 の 高 低 差 を 生 びえる緑豊かな山々 かして、周辺の自然景 と崎地形、姨捨棚田へ 観 に 調 和 す る よ う な の眺望を極力阻害し 配置とすること。 ないような配置とす ■ 稜 線 や 斜 面 上 部 へ の配置は、寺社仏閣等 ること。 ■なお、棚田周辺の集 古 く か ら あ る 建 築 物 落においては、地形の を除き、できるだけ避 高低差を活かして周 けること。 辺の自然景観に調和 するような配置とす ること。 ■東西の高台から、あるいは千曲川河畔から眺めた時に、著しく突出した印象を与えないような 規模、建築物・工作物と敷地との釣り合い、高さとすること。 ■千曲川や、東西にそびえる緑豊かな山々と崎 地形、姨捨棚田への眺望を極力阻害しないよう な配置とすること。 規模 ■沿道からのまち並み の連続性に配慮すると ともに、高層の場合、 圧迫感を生じないよう 努めること。 ■周辺の建築物・工作 物の形態との調和に努 めること。 意匠 形態 ■駅前市街地、宿場町、 温泉街においては、歩 行者が歩いて楽しい魅 力的な景観となるよ う、建築物・工作物の 低層部および正面のデ ザインを工夫して質の 高いものとなるよう努 めること。 ■個々の建築物・工作 ■高層の場合には、空 物の規模、高さは極力 き地を十分にとり、圧 抑え、周辺の農地景観 迫感を生じないよう に調和するよう努め に努めること。 なお、高さの上限は、 ること。 なお、高さの上限は、 電気供給施設等を除 田園地域、山里・高原 き、13mとする。 地域を通る沿道地域 においては、電気供給 施設等を除き、13m とする。 ■背景の山なみおよび周辺の建築物・工作物 の形態との調和に努めること。 ■建築物・工作物の上 部および正面のデザ インを工夫して質の 高いものとなるよう 努めること。 ■高さは原則として 周辺の樹木の高さ以 内に留めるように努 め、樹高以上になる場 合には周辺の景観と 調和するよう形態等 に特に配慮すること。 ■周辺の山なみと調 和する形態とするこ と。 ■屋根は原則として勾配屋根で、適度な軒の出 を有するものとし、勾配は背景の山なみ、周辺 の建築物との調和に努めること。 ■土口地区の石積みや、稲荷山の白壁造り、力石の養蚕農家等、周辺に伝統的な様式を持つ建築 物が多い地域では、その様式を継承、又は取り入れた意匠とするよう努めること。 ■大規模な平滑面が生じないよう、陰影等壁面の処理に配慮すること。 ■周辺の基調となる建築物・工作物に比べて、規模が大きい場合には、屋根、壁面、開口部等の 意匠の工夫により圧迫感や威圧感を軽減し、周辺との調和を図ること。 ■河川、水路、鉄道および道路に面する壁面等は、公共性の高い部分であるためできる限り塀や フェンスを避け、使用する場合には高さやデザインに配慮すること。 77 ・ 都市地域 沿道地域 田園地域 山里・高原地域 ■屋上設備は外部から見えにくいよう、壁面、ルーバーの設置等の工夫をすること。 ■非常階段、パイプ等付帯設備や付帯の公告物等は、煩雑な印象を与えないようにデザインに配 慮し、建築物・工作物本体との調和を図ること。 ■周辺の景観と調和し、耐久性に優れた材料を用いること。 材料 ■反射光のある素材を使用する場合は周辺との調和に十分配慮すること。 ■地域の優れた景観を特徴付ける素材を活用すること。 色彩等 ■ 低彩 度の色 彩( 注 1)を基調とし、周辺 の建築物・工作物と調 和 した 色調と する こ と。 ■低彩度の色彩(注 1)かつ、できるだけ 落ちついた色彩を基 調とし、周辺の農地 や、建築物・工作物に 調和した色調とする こと。 ■低彩度の色彩(注 1)かつ、できるだけ 落ちついた色彩を基 調とし、周辺の農地や 集落の景観に調和し た色調とすること。 ■多色使い、アクセン ト 色の 使用等 に際 し ては、使用する色彩相 互の調和、使用する量 の バラ ンスに 十分 配 慮すること。 ■使用する色数を少なくするよう努めること。 ■低彩度の色彩(注 1)かつ、できるだけ 落ちついた色彩を基 調とし、周辺の自然景 観に調和した色調と すること。 ■ 光源 で動き のあ る ■照明を行う場合は、周辺の建築物・工作物との調和に留意すること。 ものは、周辺の景観と ■光源で動きのあるものは、できる限り使用を控えること。 の 調和 に留意 する こ と。 ■敷地境界には樹木等を植栽して景観の連続性を創出するよう努めるものとする。また、門、塀 等による場合についても、周辺の景観の連続性が保てるよう配慮すること。 ■周辺の建築物・工作物に比べて相当大規模な建築物・工作物にあっては、建物まわりの緑化に より圧迫感、威圧感の軽減に努めること。 敷地の緑化 ■駐車場、自転車置き場、焼却炉(一定規模)を設ける場合には、道路等から直接見えにくいよ うに周囲の緑化に努めること。 ■使用する樹種は地域の風土にあったものとし、特に道路等の公共空間や周囲の緑化との連続性 に配慮すること。 ■河川等がある場合は、樹木を活用して、水辺の景観に配慮すること。 78 (2) 建築物および工作物の特定外観意匠に関する事項 都市地域 沿道地域 田園地域 山里・高原地域 ■道路等からできるだけ後退させるよう努めること。 配置 ■千曲川や、東西にそびえる緑豊かな山々と崎地形、姨捨棚田への眺望を極力阻害しないよ うな配置とすること。 規模 意匠・ ■基調となる周辺の景観に調和するよう、必要最小限の規模とすること。 ■基調となる周辺の景観に調和する意匠・形態とすること。 形態 ■周辺の景観と調和し、耐久性に優れ、退色・はく離等の生じにくいものとすること。 ■反射光のある素材を使用する場合は、周辺との調和に十分配慮す 材料 ること。 ■低彩度の色彩(注 1)を基調とし、周 辺の建築物・工作物 と調和した色調とす ること。 色彩等 ■多色使い、アクセ ント色の使用等に際 しては、使用する色 彩相互の調和、使用 する量のバランスに 十分配慮すること。 ■光源で動きのある ものは、周辺の景観 との調和に留意する こと。 ■反射光のある素材 を極力使用しないよ うに努め、やむを得 ず使用する場合は、 着色等の工夫をする こと。 ■低彩度の色彩(注 1)かつ、できるだ け落ちついた色彩を 基調とし、周辺の自 然景観に調和した色 調とすること。 ■低彩度の色彩(注 ■低彩度の色彩(注 1)かつ、できるだ 1)かつ、できるだ け落ちついた色彩を け落ちついた色彩を 基調とし、周辺の農 基調とし、周辺の農 地や、建築物・工作 地や集落の景観に調 物に調和した色調と 和した色調とするこ すること。 と。 ■使用する色数を少なくするよう努めること。 ■光源で動きのあるものは、できる限り使用を控えること。 79 2) その他の届出対象行為に関する基準 (1) 土地の形質の変更に関する事項 都市地域 沿道地域 田園地域 山里・高原地域 ■大規模な法面、擁壁ができるだけ生じないようにし、やむを得ない場合は、緩やかな勾配とし、緑 化に努めること。 ■擁壁は材料、表面処理の工夫、前面の緑化等により周辺の景観との調和を図ること。 ■敷地内にある良好な樹木、その他の樹木、河川、水辺等は極力保全し、活用するよう努めること。 (2) 土石類の採取に関する事項 都市地域 沿道地域 田園地域 山里・高原地域 ■周辺からは目立ちにくいよう、採取の位置、方法を工夫し、敷地周辺の緑化等に努めること。 ■採取後は、自然植生と調和した緑化等により修景すること。 (3) 屋外における物品の集積に関する事項 都市地域 沿道地域 田園地域 山里・高原地域 ■物品を積み上げる場合には、高さをできるだけ低くするとともに、整然と、かつ威圧感のないよう に積み上げること。 ■道路等から見えにくいよう遮蔽し、その際には植栽の実施、木塀の設置等周辺の景観に調和するよ う努めること。 80 (注1)低彩度の色彩を、以下のように位置づける。 ① 日本工業規格(JIS)の Z8721(マンセル表色系)にお いて概ね以下の通りとする。 ・YR(橙)系の色相では、彩度6以下のもの ・Y(黄色)系、R(赤)系の色相では彩度4以下のもの ・その他の色相では、彩度3以下のもの ② 蛍光塗料を使用していないもの。 マンセル色相環 R(赤)系の色相(例:5R) YR(橙)系の色相(例:5YR) 低彩度の色彩の範囲 ※ここで掲げた色見本は、印刷などによ り、実際の色と異なる場合があるため、正 確には、マンセルチャートによって確認す る必要がある。 Y(黄色)系の色相(例:5Y) 81 6-3 届出の審査手続 届出の審査手続は、下に掲げるフローに基づき行います。 届出対象行為の届出 届出から 日間は行為の着手が制限(特定届出対象行為の 場合は、行為者への通知の後、 日まで延長可能) 千曲市 市長による助言・指導 30 景観形成基準に適合 景観形成基準に不適合 千曲市景観審議会による意見 90 特定届出対象行為 意匠・形態、材料、 色彩等の景観形成 基準が違反 その他の届出対象行為 意匠・形態、材料、 色彩等以外の景観 形成基準が違反 着手制限解除(通知) 変更等の命令 勧告 行為の着手 (命令に従わない場合) 罰金 (勧告に従わない場合)事 実の公表 ① 届出対象行為の届出 届出を要する行為については、行為の種類、場所、設計又は施工方法、着手予定日などを届け出 ることが義務付けられます(景観法第 16 条および千曲市美しいまちづくり景観条例の規定による)。 ② 変更等の命令 特定届出対象行為について、次項でさだめる景観形成基準のうち、意匠・形態、材料、色彩に関 する基準に違反した行為を行おうとする者又は行った者に対し、景観形成基準に適合するための必 要な限度において、設計の変更その他の必要な措置をとることを命じます。なお変更命令は、届出 のあった日から通常 30 日以内に行いますが、市長が実地調査の必要があると判断した場合、その 期間を 90 日まで延ばすことができます(景観法第 17 条)。 ③ 勧告 特定届出対象以外の行為において、景観形成基準に違反した行為を行おうとする者に対し、届出 のあった日から 30 日以内に、設計の変更その他の必要な措置をとることを勧告します(景観法第 16 条)。 ④ 罰則 変更等の命令に違反した者は、50 万円以下の罰金に処することがあります(景観法第 101 条)。 また、届出をせずに虚偽の届出を行った者、あるいは、行為の着手制限に違反し、届出に関わる行 為に着手した者は、30 万円以下の罰金に処することがあります(景観法第 102 条)。 82 第7 章 そ の 他 の 景 観 形 成 に 関 す る 方 針 72 第 7 章 7-1 その他の景観形成に関する方針(景観法第 8 条第 2 項第 4 号) 景観重要建造物・景観重要樹木の指定方針 1) 指定方針 地域の自然、歴史、文化などから見て、特徴的な外観を有し、日常的な暮らしの中で、市民にとっ てかけがえのない存在であると認められるものを指定します。 指定に当っては、景観法に基づく提案制度(法 20 条、法 29 条)を活用し、市民発意を原則とし ます。 なお、文化財保護法の規定により、国宝、重要文化財、特別史跡名勝天然記念物、史跡名勝天然記 念物として指定されている建造物、樹木は、指定することができません。 2) 指定手順 指定の手順は以下の通りです。 ①所有者および景観整備機構が、対象候補の景観上の重要性や今後の管理の方針等について述べた上 で、指定を提案します。 ②市長は、提案された案について、景観審議会と協議を行います。 ③市長が指定、不指定を決定し、提案者に通知します(不指定の場合、理由も通知する)。 獅子ヶ鼻のビャクシン 稲荷山宿・蔵し館 83 7-2 屋外広告物の表示および掲示に際しての行為の制限に関する事項 屋外広告物が景観に与える影響は大きく、今後は方針だけに留まらず、千曲市独自の具体的な行為 の制限を定めていく必要があります。 しかし、屋外広告物の行為の制限にあたっては事業者の理解が必要であり、また千曲市の美しいま ちづくり景観条例とは別に、千曲市独自の屋外広告物条例を制定する必要があります。 そこで現段階では、長野県の景観育成計画および屋外広告物条例に従うこととし、千曲市独自の具 体的な行為の制限は、今後、屋外広告物条例を制定することにより、規定していきます。 長野県の屋外広告物条例に基づき、千曲市では、屋外広告物禁止地域と、屋外広告物許可地域が位 置づけられています。屋外広告物禁止地域は、例外を除いて屋外広告物を設置できない地域、屋外広 告物許可地域は、屋外広告物を設置するにあたり許可を必要とする地域です。 ■規制区域 屋外広告物禁止地域 ( 住居専用地域) 屋外広告物許可地域 ■上記規制に際し基準となる路線 鉄道 高速道路 + 幹線道路(国道 18 号) 千曲市における屋外広告物規制適用地域 84 7-3 景観重要公共施設の整備に関する事項 1) 景観重要公共施設の指定方針 市全域から見て、あるいは、各地域において景観形成上重要な公共施設(道路、橋、公園、河川) を、景観重要公共施設に位置づけ、積極的な景観形成を図ります。 景観重要公共施設の指定に際しては、施設管理者と充分な協議を行い、随時追加指定できるものと します。 (1) 市全域から見て景観形成上重要な公共施設の例 ① 道路 ・ 国道 18 号 ・ 国道 403 号 ・ 国道 18 号バイパス ② 橋 ・ 粟佐橋、千曲橋、平和橋、冠着橋、大正橋、万葉橋、新幹線屋代南・北橋梁 ③ 河川 ・ 千曲川 (2) 各地域の中で景観形成上重要な公共施設の例 ① 道路 ・ 県道白石・千曲線 ・ 県道姨捨停車場線 ・ 上山田温泉本通り 2) 景観重要公共施設の整備に関する事項および占用等の許可基準 施設管理者が有する各施設の整備方針等との調整を図りながら、今後、千曲市の景観形成にふさわ しい整備の方針や、整備を行う際の手続き、占用等の許可の基準等を、制定していきます。 7-4 景観農業振興地域整備計画の策定に関する基本的事項 景観法による建築物・工作物に対する規制は、都市部での景観を念頭においたものであり、山里や 棚田などの農村地域の景観については建築物・工作物の規制とは異なる施策が必要となります。 そこで、良好な農地景観を有しているにもかかわらず、農業従事者の不足等から、営農の持続が難 しい地区に対しては、今後、景観農業振興地域整備計画を策定することを検討していきます。 85 86 参考 資料 87 88 参考資料 千曲市の景観資源図 千曲市固有の景観として、どのような景観資源がどの場所に存在し、どのような景観を構成してい るかを、以下の分類によって把握しました。 景観資源分類 内容 自然系景観資源 千曲市の基本的な景観の骨格を形づくっている、自然系の景観資源・・・山、 川、植物、動物など 歴史・文化系景観資源 人々が古くから住み続けたことで、積み重ねられてきた歴史・文化系の景 観資源…古墳、城跡、宿場、寺院、神社等の歴史的建造物、石仏など 都市施設系景観資源 現在の産業、文化、生活を反映する土地利用、交通網、建築物等の都市施 設系景観資源…駅などの象徴的な建造物、レクリエーション施設、道路、 橋、鉄道など 使用データ:千曲市観光振興計画 旧更埴市景観形成基本計画 千曲市の残したい自然 千曲市文化財一覧 その他庁内検討による (1)自然系景観資源 山地・高原 ■山・峠 ・ 有明山 ・ 三峯山 ・ 高雄山 ・ 霊諍山 ・ 大峰山 ・ 八頭山 ・ 鏡台山 ・ 大林山 ・ 冠着山 ・ 岩井堂山 ・ 篠山 ・ 葛尾山 ・ 小坂山 ・ 五里ヶ峯 ・ 宮坂峠 ・ 一本松峠 ・ 猿ヶ馬場峠 ・ 四十八曲峠 ■崎 ・ 岩井堂山 ・ 芳ヶ鼻 ・ 横吹の鼻 ・ 一重山 ・ 岩崎 ・ 唐崎 ・ 獅子ヶ鼻 ・ 笹崎 87 ■高原 ・ 聖山高原 ・ 千曲高原 ■県立自然公園 ・ 聖山高原 ■郷土環境保全地域 ・ 大雲寺自然探勝園 ・ 観龍寺大峰自然探勝園 河川・池沼 ■大規模河川 ・ 千曲川 ■中小河川 ・ 伊勢宮川 ・ 女沢川 ・ 一丁田川 ・ 草山川 ・ 荏沢川 ・ 打越川 ・ 横沢川 ・ 沢山川 ・ 蟹沢川 ・ 中村川 ・ 宮川 ・ 中沢川 ・ 金山川 ・ 兎沢川 ・ 五十里川 ・ 湯沢川 ・ 更級川 ・ 尾米川 ・ 黒川 ・ 柄木沢川 ・ 佐野川 ・ 鳴海川 ・ 三滝川 ・ 柳沢川 ・ 寺沢川 ・ 雄沢川 ・ 治田川 ■用水路 ・ 若宮用水 ・ 新田用水 ・ 埴科幹線水路 ・ 六ヶ郷用水 ■沢 ・ カマトギ沢 ・ 泰木場沢 ・ 安藤沢 ・ 濁沢 ・ 貝沢 ・ 地獄沢 ・ 寄合沢 ・ 田島沢 ・ 宮沢 ・ 南大沢 ・ 古家沢 ・ 日影沢 88 ・ 荒砥沢 ・ 普携寺沢 ・ 漆原沢 ・ 北ノ沢 ・ 床滑沢 ・ 北大沢 ・ 信陽沢 ■池沼 ・ なめ沢池 ・ 芝平池 ・ 荏沢池 ・ 新池 ・ 岡森池 ・ 新堤池 ・ 千曲高原大池 ・ 石杭池 ・ 花柄池 ・ 仙ヶ原池 ・ 外池 ・ 大雲寺池 ・ 樺池 ・ 栃窪池 ・ 熊久保池 ・ 梨窪池 ・ 山の神池 ・ 八幡林池 ・ 治田池 ・ 平沢池 ■滝・清水 ・ 不動滝 ・ 久露滝 ・ 樽滝 ・ 桜清水 ・ 三滝 ・ 強清水 ・ 女陰の滝 動物 ■鳥類 ・ 極楽寺の野鳥 ・ 倉科神社の野鳥 ・ 大宮神社の野鳥 ■チョウ ・ 山地のチョウ ・ 沢山川沿いのチョウ ・ ジャコウアゲハ ・ 三滝川沿いのチョウ ・ 水田地帯のチョウ ・ 大田原のチョウ ■トンボ ・ 中村川のミルンヤンマ ・ 梨窪池のトンボ ・ 平沢池のトンボ ・ 三滝川のミルンヤンマ ・ 中沢川のミルンヤンマ ■ホタル ・ 日陰沢のホタル ・ 沢山川のホタル 89 ・ 棚田のホタル ・ 内川のホタル ・ 更級川のホタル ・ 大田原のホタル ・ 寺沢川のホタル ・ 大池下流のホタル ■サンショウウオ ・ 氷清水のハコネサンショウウオ ・ 三滝川のハコネサンショウウオ (市指定天然記念物) ■カエル ・ 沢山川のカジカガエル ・ 千曲川の魚 ■魚類 ・ 佐野川上流のイワナ 植物 ■重要な植物 ・ ウマノスズクサ ・ セツブンソウ群生地 ・ カタクリ ■社寺林 ・ 古大穴神社の社寺林 ・ 雨宮坐日吉神社の社寺林 ・ 大宮神社の社寺林 ・ 水上布奈山神社の社寺林 ・ 千曲神社の社寺林 ・ 佐良志奈神社の社寺林 ・ 粟狭神社の社寺林 ・ 大雲寺の社寺林 ・ 三島社の社寺林 ・ 武水別神社の社寺林 ・ 智識寺の社寺林(市指定天然記念物) ・ 龍洞院の社寺林 ・ 治田神社の社寺林 ・ 観龍寺の社寺林 ■巨樹・巨木 ・ 開眼寺のサワラ、スギ ・ 大林山のシナノキ ・ 波閇下神社才兵衛ヒバ ・ 八頭山のブナ ・ 鏡台山のブナ ・ 冠着山のブナ ・ 大池水源のスギ林 ・ 大田原のイチイ ・ 中原りんご国光原木(市指定天然記 ・ 樺平のブナ ・ 姨捨長楽寺の桂ノ木(市指定天然記念物) 念物) ・ 治田公園桜並木 ・ 900 年けやき ・ 獅子ヶ鼻のビャクシン ・ 柏王の大柏(市指定天然記念物) ・ 更級小学校ムクロジ ・ 天狗のマツ(市指定天然記念物) ・ 四十八曲峠の桜 90 ■特徴的な植生 ・ 東西に広がる森林 ・ 姨捨棚田 ・ 屋代たんぼ ・ 漆原・八坂地区のりんご ・ 中原・八幡地区のりんご ・ 森地区のあんず ・ 倉科地区のあんず その他 ■温泉 ・ 八幡温泉 ・ 森温泉 ・ 稲荷山温泉 ・ 戸倉上山田温泉 ・ 新戸倉温泉 ■風穴 ・ 場所不明 91 92 自然系景観資源分布図 93 93 94 (2)歴史・文化系景観資源 古墳、城跡 ■古墳 ・ 森将軍塚古墳(国指定史跡) ・ 四ッ塚古墳群(市指定史跡) ・ 倉科将軍塚古墳(県指定史跡) ・ 堂上古墳(市指定史跡) ・ 土口将軍塚古墳(県指定史跡) ・ 観音林古墳(市指定史跡) ・ 白塚古墳(市指定史跡) ・ 金毘羅山古墳(市指定史跡) ・ 有明山将軍塚古墳(市指定史跡) ・ 釜屋一号墳(市指定史跡) ・ 北山古墳(市指定史跡) ・ 塚穴古墳(市指定史跡) ・ 中山古墳(市指定史跡) ■城跡 ・ 屋代城跡(市指定史跡) ・ 小坂城跡 ・ 荒砥城跡(市指定史跡) ・ 佐野城跡 ・ 入山城跡(市指定史跡) ・ 竜王城跡 ・ 村上城館跡(県指定史跡) 古道、旧宿場、 ■古道 門前町 ・ 北国街道 ・ 谷街道 ・ 善光寺道 ・ 四十八曲峠古道(市指定史跡) ・ 雨宮・妻女山遊歩道 ・ 倉科・松代遊歩道 ■旧宿場、門前町 歴史的建造物 あい のしゅく ・ 屋代宿 ・ 雨宮(間 宿 ) ・ 稲荷山宿 ・ 桑原(間 宿 ) ・ 上戸倉宿 ・ 寂蒔(間 宿 ) ・ 下戸倉宿 ・ 八幡(門前町) あい のしゅく あい のしゅく ■寺院 ・ 妙音寺 ・ 大日堂 ・ 観龍寺・・・木造千手観音坐像(県宝) 、木造十一面観音菩薩立像(県宝) 、木造聖観 音菩薩立像(県宝)、木造観音二十八部衆(市指定有形文化財)、木造不動明王立 像(市指定有形文化財) 、木造毘沙門天立像(市指定有形文化財) ・ 興正寺 ・ 禅透院 ・ 長雲寺・・・木造愛染明王坐像(国指定重要文化財) ・ 太子寺日輪堂 ・ 龍洞院 95 ・ 大雲寺 ・ 開眼寺 ・ 佐野薬師 ・ 長楽寺 ・ 明徳寺 ・ 長泉寺・・・木造聖観音坐像(県宝) ・ 柏岩寺・・・木造薬師如来坐像(市指定有形文化財) ・ 薬師寺 ・ 善光寺大本願別院 ・ 観音寺 ・ 普携寺・・・鉄像吉祥天立像(市指定有形文化財) ・ 智識寺・・・大御堂(国指定重要文化財)、仁王門(市指定有形文化財)、木造十一面 観音立像(国指定重要文化財)、木造地蔵菩薩立像(市指定有形文化財)、木造聖 観音菩薩立像(市指定有形文化財) 、木造釈迦如来坐像(市指定有形文化財) ・ 見性寺 ・ 如法寺・・・木造虚空像菩薩立像(市指定有形文化財) ・ 全長院 ■神社 ・ 雨宮坐日吉神社 ・ 須々岐水神社 ・ 天満宮 ・ 治田神社 ・ 武水別神社・・・摂社高良社本殿(県宝)、銅製釣燈篭銅製釣燈篭(県宝) 、金銅六角 釣燈篭(市指定有形文化財)、伎楽面木造金剛力士(市指定有形文化財) ・ 斉の森神社 ・ 水上布奈山神社・・・本殿(国指定重要文化財、)飯盛女の献灯(市指定有形文化財) ・ 佐良志奈神社・・・宝篋印塔(市指定有形文化財) ・ 八王子宮 ・ 稲荷社 ・ 波閇科神社・・・本殿(市指定有形文化財) ・ 澳津神社 ・ 三本木神社 ・ 清水神社・・・力石さん(市指定有形文化財) ・ 庄内神社 ・ 宇留司原神社 96 ■その他歴史的建造物 ・ 屋代小学校旧本館(市指定有形文化財) ・ 武水別神社神官 松田家住宅(県宝) ・ 坂井銘醸主屋、蔵(国指定登録有形文化財) ・ 笹屋ホテル別荘(国指定登録有形文化財) ・ 伴月桜記念館 名勝 ・ 姨捨(田毎の月)(国指定名勝) ・ 曽根堂の不動滝一円(市指定名勝) ・ 見性寺の境内一円(市指定名勝) 石・石仏・ ・ 上山田温泉第一号湯標石(市指定有形文化財) 石碑等 ・ 新山宿の石神様(市指定有形文化財) ・ 石組み井戸(市指定史跡) ・ 船つなぎ岩 ・ 霊諍山の石仏 ・ 寂蒔水除け土手 ・ 姨石、姪石、甥石 ・ 姨捨の歌碑(芭蕉の面影塚) 伝承・伝統芸能 ・ 雨宮の神事芸能(国指定重要無形民俗文化財) ・ 武水別神社の大頭祭(国指定選択無形民俗文化財) ・ 水上布奈山神社の御柱祭(市指定無形民俗文化財) ・ 女涙坂伝説 ・ ほたる橋建立の地 その他 ・ 雨宮の渡し 歴史的場所 ・ 佐久間象山大砲試射地 ・ こうがい 笄 の渡し 97 98 歴史・文化系景観資源分布図 99 99 100 (3)都市施設系景観資源 象徴的な ・ 屋代駅 ・ 姨捨駅 建造物 ・ 戸倉駅 ・ ふる里漫画館 ・ 屋代高校前駅 ・ 稲荷山宿蔵し館 ・ ふれあい情報館 ・ 姨捨観光会館 ・ 屋代駅市民ギャラリー ・ さらしなの里歴史資料館 ・ 更埴文化会館 ・ さらしなの里展望館 ・ アートまちかど ・ 戸倉酒造コレクション ・ 長野県立歴史館 ・ 戸倉創造館 ・ あんずの里物産館 ・ 戸倉図書館 ・ 森将軍塚古墳館 ・ 戸倉郷土館 ・ あんずの里スケッチパーク ・ 総合観光会館 ・ 千曲川展望公園 ・ 城山史跡公園 ・ 科野の里歴史公園 ・ 智識の森公園 ・ 中央公園 ・ 柏清水公園 ・ 沢山親水公園 ・ 戸倉宿キティパーク ・ 治田公園 ・ 千曲川緑地公園(湯の里親水パーク) ・ 稲荷山公園 ・ 平和橋緑地公園 ・ 倉科の里薬師山公園 ・ 千曲橋緑地 ・ 窪山展望公園 ・ 大西緑地公園 ・ おばすて公園 ・ 雨宮緑地 ・ さらしなの里古代体験パーク ・ 八幡親水緑地 公園・緑地 ・ 水と緑と潤いのある公園 ・ 萬葉の里スポーツエリア 観光・レクリ ・ 聖高原樺平保健休養地 ・ 坊城平いこいの森 エーション施 ・ オランダ菖蒲園 ・ 萬葉の里スポーツエリア 設 ・ ジャーマンアイリス園 ・ 大池市民の森 ・ あんずの里アグリパーク ・ 大池マレットゴルフ場 ・ あんずの里観光会館 ・ 大田原マレットパーク ・ あんずの里物産館 ・ 大池自然の家 ・ 上平展望台 ・ 千曲高原カントリークラブ ・ さらしなの里マレットパーク ・ 千曲高原別荘地 道路 ■高速道路 ・ 長野自動車道 ・ 上信越自動車道 101 ■幹線道路 ・ 国道 18 号 ・ 国道 18 号バイパス ・ 国道 403 号 ・ 主要地方道大町麻績インター線(県道 ・ 主要地方道長野・上田線(県道 77 号) 55 号) ・ 県道森・篠ノ井線(県道 335 号) ・ 県道戸倉停車場線(県道 336 号) ・ 県道屋代停車場線(県道 337 号) ・ 県道内川・姨捨停車場線(県道 338 号) ・ 県道姨捨停車場線(県道 340 号) ・ 県道小峰・稲荷山線(県道 390 号) ・ 県道白石・千曲線(県道 392 号) ・ 県道聖高原・千曲線(県道 498 号) ・ 西船山通り ・ 市道桜堂新田線 ・ 市道粟佐橋線 ■サービスエリア、インターチェンジ ・ 更埴インターチェンジ ・ 姨捨サービスエリア ・ 更埴ジャンクション ・ 新幹線屋代橋りょう ・ 大正橋 ・ 粟佐橋 ・ 冠着橋 ・ 千曲橋 ・ 万葉橋 ・ 平和橋 ・ こうがい橋 ・ 北陸新幹線 ・ しなの鉄道 ・ JR 篠ノ井線 ・ 長野電鉄屋代線 ハイキングコ ・ 猿ヶ馬場峠ハイキングコース ・ 五里ヶ峰登山参道 ース、サイク ・ 冠着山登山道 ・ 山とあんずの里ハイキングコース リングコース ・ 葛尾登山道 区画整理施行 ・ 杭瀬下区画整理施行地域 区域 ・ 上山田土地区画整理施行地域 工業団地 ・ 雨宮工業団地 ・ 新田工業団地 ・ 屋代工業団地 ・ 八幡工業団地 橋 鉄道 ・ 住吉土地区画整理施行地域 102 都市施設系景観資源分布図 103 103 104 ◆小林芳夫氏(千曲市在住)撮影写真◆ 9 ページ:あんずの里の茅葺屋根民家 11 ページ:姨捨SA上部からの夜景 13 ページ:西側の扇状地で見られるりんご畑 50 ページ:「継続的な耕作による棚田景観の保全」イメージ : 「休耕田における花のある景観の創出、鳥や虫、カエル等の鳴き声が聞こえる環 境の創出」イメージ 千 曲 市 景 観 計 画 平成 21 年 8 月発行 発行 千曲市 編集 千曲市 建設部 建設課 〒387-8511 長野県千曲市大字杭瀬下 84 電話: (026)273-1111 FAX:(026)273-1004