Comments
Description
Transcript
ユーザの移動変化によるデッドライン変動 を考慮したタスク
卒業論文 年度 平成 年度 ユーザの移動変化によるデッドライン変動 を考慮したタスクスケジューリングモデル 指導教員 慶應義塾大学環境情報学部 徳田 英幸 村井 純 楠本 博之 中村 修 南 正樹 慶應義塾大学環境情報学部 鈴木 源太 目次 第 章 序論 本研究の背景 本研究の目的及び意義 本論文の構成 章 待ち時間問題 想定するサービスとその待ち時間問題 モバイルリザベーション モバイルリザベーション概要 モバイルリザベーションの機器要件 想定シナリオ モバイルリザベーションにおける待ち時間問題 待ち時間問題の解決手法考察 サービスプロバイダ数増加による解決 タスクスケジューリングによる解決 ! 用語定義 # " 本章のまとめ 第 $ 章 タスクスケジューリングとデッドライン変動 デッドライン変動 % デッドライン変動によるスケジューリング問題 & ! 関連研究 & 本章のまとめ 第 章 '('*) モデル , -.-0/ モデル概要 % + , デッドライン確率分布 , ソフトデッドラインの --1/ , -325476,8 設定 , 傾き,定義域の変動 :9 , 再スケジューリングのタイミング ,! 傾斜したソフトデッドラインの --1/ ,!, -325476,8 設定 第 ; , , 第 第 , !, ,!, 傾き,定義域の変動 再スケジューリングのタイミング デッドライン予測法が複数混在したタスクスケジューリング 本章のまとめ シミュレーション環境 + 章 シミュレーション環境 変数設定 リクエスト到着の設定 ユーザ移動の設定 --1/ ソフトデッドラインの 評価 ノンプリエンプタブルなタスク プリエンプタブルなタスク --1/ 評価 傾斜したソフトデッドラインの ノンプリエンプタブルなタスク 比較対象 ! 本章のまとめ > 章 " < = = = = = = = = = <+ = = 結論 今後の課題 まとめ ;; 図目次 ! , , , ,! -325476,81/?6,@BADC ;E @ -325476,8/?6,@,AFC ;E @ ソフトデッドライン デッドライン確率分布 -32=476,8/?6,@BADC ;E @ 傾斜したソフトデッドライン デッドライン確率分布 従来のサービス利用の時間図 想定するサービス利用の時間図 想定するサービス利用のシナリオ例 想定するサービス利用の時間図 自動調理販売機の ;7;; # " :9 " 表目次 , --1/ の優先度設定例 デッドライン予測方式の違いによる デッドラインの変動要因 ;G 第H 章 序論 本章では,本研究の意義および本論文の内容構成について述べる. I# 本研究の背景 J DK 近年,ユビキタスコンピューティング環境 が実現しつつある.ユビキタスコン ピューティング環境とは,あらゆる所に偏在したコンピュータを いつでも どこでも 利用可能なコンピューティング環境である.現在,携帯端末,ウェアラブルコンピュー タ(以下, ),情報家電等が , , , 等 を介して相互接続されている. ユビキタスコンピューティング環境では,ユーザは移動し,移動先のサービスを利 用する.それゆえ,サービスを円滑に利用できることがより重要である.サービスの 円滑な利用とは,サービスの利用に際してユーザにとって不必要な時間が少なく,さ らに煩わしい操作なしにサービスを利用することを指す.必要な時間に,必要なサー ビスを,即時に利用できることが望ましい. しかしながら,ユーザにとって円滑なサービス利用を困難にする 個の要因がある. それを以下の から で示す. M N R CTS,8VUW@,8DC XYRZRZR[ " D\ J! K ] 476,8FC E%E ^C S _J K X U^`ba OQP L 利用したいサービスを検索すること 利用するサービスに対して必要な入力を行なうこと サービスの処理を待つ時間 円滑なサービス利用を妨げる最初の要因は,利用したいサービスを検索することで ある.周囲の環境に埋め込まれたサービスなど,視覚的に発見しづらいサービスをユー ザが発見し,その情報を得ることは大変困難である.このサービス検索の問題を解決 するために, や といったディレクトリサービスが提案されている. これらは,ユーザの現在の位置情報から周辺のサービスを検索できる.ディレクトリ サービスを利用することによって,ユーザは利用したいサービスがある場合,その場 ですぐに携帯端末や から周辺のサービスを検索し,その情報を得ることが容易と なる.これによってユーザはより快適にサービスを利用できる. 二番目の要因は,利用するサービスに対する,ユーザの直接的な入力である.ある サービスを利用する際に,毎回同じ入力をユーザが直接行うことはユーザにとって煩 わしいことである.この問題を解決するために,サービス利用にあたってのユーザの 入力を減少させることによって,円滑なサービス利用を提案する研究がある. システム は,情報家電に対するユーザの直接的な入力を学習し,以後のユーザの直 ではユーザの所持する携 接的な入力を減少させる.また, 帯電話や と認証サーバとの間でユーザ アプリケーション間の認証をユーザの 直接的な入力無しで即時に実行する. 円滑なサービス利用を困難にする最後の要因は,サービスの処理を待つ時間をユー ザが課されることである.サービス検索,必要な入力を終えた後,サービス側がサービ ス利用に必要な処理を実行する時間がある.ユーザのサービス利用にとって,この時 間が不必要なものであるならば,この時間は待たされる時間である.印刷などの時間 a0cda1e*a J! K f `ba0g J_ K OQP Jml K gZ`ta gZhji1ka n 8DU E5oqp C E=r a.6dC^S,8D@sC ; AV25C ;E @ J_ K u のかかる処理を行なうサービスや,複数のユーザの処理を実行しなければならないも のにとっては,この待ち時間はサービスの円滑な利用を妨げる最大の要因となりうる. サービスを提供するハードウェアがより高性能で処理速度が高速なものになれば,こ の待ち時間は減少する.しかし,すべてのハードウェアの性能向上には時間とコスト がかかるうえ,限界もある.しかも,高速で処理できるハードウェアが誕生したとこ ろで,全てのサービス提供者がそれをすぐに用意するとは限らない.したがって,こ の解決策は得策ではない.サービスの処理速度向上に頼らず,既存の処理速度でユー ザの待たされる時間が減少できれば,よりユーザは快適にサービスを利用でき非常に 有益である. I 本研究の目的及び意義 本研究の目的は,ユビキタスコンピューティング環境において,サービスの処理に よってユーザが待たされる時間を減少させることである.待ち時間の減少によって, ユーザはより円滑にサービスを利用できる.また,円滑に利用できるサービスを提供 することによってユーザが増加すれば,サービス提供者側も大きな利益を得られる. Iwv 本論文の構成 本論文は,本章を含め全 章から成る.次章では,本研究が想定するサービス利用 環境を述べ,そこで待ち時間問題を解決する方式を検討する.続く第 章では,適用 する待ち時間解決方式における大きな問題点であるデッドライン変動問題をとりあげ, その詳細を述べ既存の解決方式の問題点を指摘する.また,第 章において,デッド ライン変動問題を解決する モデルを提案し,その詳細を述べる.第 章で モデルの正当性を示すためのシミュレーションを説明し, システムを評価する. 最後に,第 章で,本論文をまとめ,今後の課題について言及する. --1/ 9 -.-1/ --1/ 第x 章 待ち時間問題 本章では,本研究で取り組む待ち時間問題を詳述する.本研究が取り上げるサービ スは,設置された場所にユーザが移動して利用する.そして,サービスの利用の際に ユーザに待ち時間が課されるものである .モバイルコンピューティング環境の普 及によって,ユーザはこのようなサービスへの要求を遠隔から行い,サービスはユー ザの到着前にそれを処理を終えておくことでユーザの待ち時間を減少させる方式が提 案されることが予測される( ). y^{z|B} {z7 I# 想定するサービスとその待ち時間問題 本論文におけるサービスとは,ユビキタスコンピューティング環境においてユーザ の移動先に点在する特別なハードウェア(以後,サービスプロバイダ)によって提供 されるものを指し,ユーザが所持するものは含まない.ユーザはこのようなサービス 利用する場合,サービスプロバイダの存在する場所(以後,サービス場所)へ移動す る.そして,そこに設置されたタッチパネルやユーザが携帯端末からメニューを選択 し,利用する.本論文では以後,このメニュー選択のように,サービス利用にあたっ てユーザの利用内容をサービス側へ伝達する行為をリクエストの発行とし,利用内容 をリクエストとする.また,リクエストに応じてサービス利用のためにサービス側で 行なうべき処理をタスクとする. サービス例として銀行の があげられる. で 現金を引き出す場合,ユーザはサービスプロバイダである のサービス場所まで 移動し, のタッチパネルやボタンで現金引き出しを指定して,リクエストを発行 が現金を引き出すタスクを実行した後,ユーザは現金を受け取り, する.その後, 現金引き出しというサービスを完了する. サービスの中には,タスクの実行時間が特に長いものがある.その例として,プリン タ, などのメディアにデータをコピーしてユーザに提供するサービス ,自動調 理販売機があげられる.本研究では,特にこれらのサービスを対象とする.これらを 利用する際,ユーザは印刷物やデータをコピーされたメディアを受け取るというサー ビス利用までに,タスク実行による待ち時間を課される.この時間経過を図 で示 す.横軸が時間,白帯はタスク の実行にかかる時間を示す.ユーザ到着後リクエス トを発行し,サービス側はタスクを実行し,その完了後ユーザはサービスを利用する. タスク開始から終了までの白帯の時間,ユーザはその場で待たされる.また,ユーザ の到着時に他のユーザがサービスを利用中であれば,さらに待たされる時間が長くな る.ここで,ユーザがサービス場所に到着後からサービス完了までの間サービス場所 で待たされる問題を,本論文では待ち時間問題と呼ぶことにする.待ち時間を減らし, 待ち時間問題を解決できれば,ユーザはより快適にサービスを利用できる. a~te a~te a.6BC E 2C ; A~8D4748VUbe 25AwS ; @,8& a~te a~te a~te e ` J 9K 図 従来のサービス利用の時間図 I モバイルリザベーション モバイルリザベーションは,前節の待ち時間問題を解決するために,提案されるで あろうサービス利用モデルとして定義する.本節ではまず,その概要を例を交えて述 べる.次にモバイルリザベーションによって新たに生じる待ち時間問題を説明する. W モバイルリザベーション概要 ユーザはより高機能な携帯端末を所持するようになってきている.その中には,自 身の詳細な位置情報を取得する機能がある.そして,ユーザの位置情報を利用したア プリケーションが研究されている.さらに,ユーザの移動先の環境が,ユーザの携帯 端末に対して,現在位置に依存して周辺のサービスの情報を提供するようなディレク トリサービスの研究がなされている.このことから,サービス場所以外でも,ユーザ の現在の位置情報に応じて,携帯端末からサービスに対してリクエストを発行できる ようになると考えられる.これをサービスへのモバイルリザベーションと呼ぶことに する. モバイルリザベーションによってどのようにしてユーザの待ち時間問題を解決する のかを図 で示す.リクエストをユーザ到着前に発行することによって,サービス 側はタスクをユーザ到着前に開始する.それによって図 で示された従来のサービ ス利用モデルに比べて,ユーザ到着後の待ち時間は減少すると考えられる. 図 想定するサービス利用の時間図 モバイルリザベーションの機器要件 ここで,モバイルリザベーションでユーザ側,サービス側双方で想定する機器と機 能をまとめる.ユーザはモバイルリザベーションを行なうために以下の機能を持った 携帯端末を所持する. リクエスト発行 サービス場所と遠隔からリクエストを発行する機能が必要である.リクエスト をサービス側へ送信することにより,サービス側は図 の白帯で示されるタス ク実行時間が取得できる.利用するサービスに関する情報とリクエスト発行機能 については, によって広く公開されているモデルや,ディレク トリサービスによって提供されているモデル,予めユーザ端末が所持しているモ デルを想定する.ユーザが所持する携帯端末にはそれぞれのモデルに必要な機能 を備わっている必要がある. O E TU 4 O ; B8 O 8V サービス場所への到着時刻予測 リクエスト発行機能とともに,サービス場所へのユーザの到着時刻を予測する機 能が必要である.ユーザの到着時刻は図 の黒棒で示される時刻である. ,サー ,超 ビス場所への到着時刻を取得するために, 音波センサ,加速時計といった位置情報,移動速度を取得可能なデバイスがユー ザの携帯端末に内蔵されるか,接続されて連動して動作する必要がある.また, サービス場所の位置情報も同様に取得できるように,サービス提供者によって公 開されている必要がある. 3g c 4 E ?2=4<g EpT; C ;7E @ ; @,c% p C^8 ユーザとサービス場所の位置情報からユーザの移動経路と残り移動距離を算出 し,これと移動速度からユーザのサービス場所への到着時刻を予測する.予測し た到着時刻をサービス側からの要求に応じて送信する. ネットワークコネクティビティ 以上の機能をユーザの移動中に行なうために,無線通信によるネットワークコ ネクティビティが確保されている必要がある. 次に,モバイルリザベーションを行なうためにサービス側に新たに追加される要件を 以下で示す. 遠隔からのリクエスト発行環境の提供 ユーザが遠隔からリクエストを発行するために,リクエスト発行環境が提供さ れている必要がある.前述のように,リクエスト発行は によっ て広く公開されているモデルや,ディレクトリサービスによって提供されている モデル,予めユーザ端末が所持しているモデルを想定する.それぞれのモデルに 必要な機能をサービス側はユーザに提供する. O E TU 4 O ; ,8 O 8V リクエストリダイレクション 受理したリクエストを必要な時刻に,リダイレクトしてタスクを実行する機能 である.この機能がサービスプロバイダ自体に搭載されていない場合,サービス プロバイダに接続された端末に同機能を搭載させる. 9 ネットワークコネクティビティ 以下の機能を実現するために,サービス側はサービスプロバイダは特定の場所 に設置されているため,有線,無線どちらかの通信によるネットワークコネク ティビティが確保されている必要がある. q 想定シナリオ 前項までで述べた,モバイルリザベーションを利用するシナリオの一例を図 で 等の携帯端末からリクエスト 示す.サービス場所から 離れた場所で,ユーザは を発行する.その後,ユーザは サービス場所へ歩行や自動車等任意の方法で移動する. ユーザのサービス場所への到着に合わせて,サービスはそのユーザのタスクを完了さ せておく.本シナリオ例では,サービスプロバイダとしてネットワークプリンタを挙 げた.ネットワークプリンタには,ユーザの到着に合わせて印刷処理(タスク)を行 なう機能が無いため,サーバを介してサーバがタスク実行を開始すべき時刻に印刷要 求をプリンタへリダイレクトする. g3`ba 図 想定するサービス利用のシナリオ例 モバイルリザベーションにおける待ち時間問題 前項までで,モバイルリザベーションによる待ち時間短縮の想定モデルを述べた.た だし,いつサービス側がユーザからのリクエストをリダイレクトし,タスクの実行開 始するかについては検討されていない.したがって,これを検討する必要がある. タスクの実行開始を決定する規則の選択によっては,複数のユーザが同時期にリク エストを発行した場合,新たな待ち時間問題が生じる可能性がある.たとえば,リク エストの到着順にタスクを処理する方法( : )では,不具合が で,それを示す. 起きる.図 さらに,自動調理販売機では,調理を行なうというタスクの完了がユーザのサービ ス場所への到着より充分早い場合,調理したものが冷めてしまう.これは,ユーザに ! / X / i / ;U p C X @ / ; U p Cbi06BC とって不利益である.さらにユーザにとって不利益ならば利用するユーザ数は減少し, サービス提供者にとっても不利益となる. したがって待ち時間, 図 Iwv B 想定するサービス利用の時間図 待ち時間問題の解決手法考察 ここで,待ち時間問題に対する 種類の解決法を考察し,本研究で取り組む解決法 を決定する. qjW サービスプロバイダ数増加による解決 一つのサービスについて同一の場所に複数のサービスプロバイダを用意する方法で ある.サービスプロバイダ数の増加により一度に処理できるユーザの要求が増えるた め,ユーザが複数の場合は待ち時間は減少する.しかし,サービス提供者にとってコ ストがかかり,コストを抑えたい場合にはこの解決策は適切ではない.また,利用す るユーザの数だけサービスプロバイダを用意することは困難であるため,サービスプ ロバイダを複数用意しても,サービスプロバイダの数がユーザの数より少ない場合は, 他のユーザ利用のために待たされるという事態は起こる. qj タスクスケジューリングによる解決 タスクスケジューリングによる解決では,一つのサービスリソースが複数のリクエ ストを受理し,実行するタスクの順序を定めた規則に従って決定する.また,デッド ラインという時間的な制約によってタスク完了の目標時刻を設定できる.本研究の想 定する環境においては,ユーザの位置情報や移動速度から計算されたサービス場所へ の予測到着時刻をデッドラインに設定する. デッドラインをもとにしたスケジューリングとしては,デッドラインの早い順番にス ケジューリングする スケジューリングや,デッドライン ,スケジューリング, の遅い順番にスケジューリングする 他のタスクと比較した場合の相対的なタスクの重要性を表すものとして を設定 合計を最大にするようにスケジューリングする し,全タスクの スケジューリングなどがあげられる. サービスプロバイダ数を増やすことなく,タスクスケジューリングによってユーザ スケジューリング の到着時刻に合わせたタスク実行ができる.また, によって,デッドライン前後のタスク終了価値を表すと,自動調理販売機の問題を解 決できる.図 で自動調理販売機の の例を示す.横軸を時間,縦軸 を とし をデッドラインとするとデッドライン前でのタスク終了は調理物の品 質低下によって が低下し,デッドライン後でのタスク終了はユーザの待ち時間 が低下する. によって このように,タスクスケジューリングでは限られたサービスプロバイダで目的を実 行でき,さらに想定するサービスをモデル化できる.ゆえに,本研究ではタスクスケ ジューリングによって待ち時間問題の解決を図ることにする. R `1/ R 2=UW4 ; 8 p C3`08V2=`1,/[4 ; @, 8b2/ C^; 8 U p p CtC `08&2=B4 ; @B80/ ; U p Cw f f -32=46,8 3- 2=476B8 -32=46,8/<6B@,ADC ;7E @ -325476,8/?6,@,AFC ;7E @ -32=46,8 ` -325476,8 -32=476B8/?6,@,AFC ;7E @ -325476,8 図 I 自動調理販売機の -325476,8/?6,@,AFC ;E @ 用語定義 以下で,本研究でタスクスケジューリングを行っていくうえでの用語を定義する. デッドライン タスク完了における時間的制約を デッドラインと呼び,本研究においてはデッドライ ンをユーザの到着時刻に設定する. &" プリエンプティブ 予め定義されたスケジューリング規則にしたがって,実行中のタスクが,実行可能状 態の他のタスクによって割り込まれることを示す. ノンプリエンプティブ タスクが一度実行を始めると終了するまでの間,他のタスクが割り込めないことを示す. I 本章のまとめ 本章では,待ち時間問題を詳説し,それを解決するためのモバイルリザベーション を提案した.そしてモバイルリザベーションを行なうために必要なタスク処理規則を, タスクスケジューリングによって決定することを示した = 第 章 タスクスケジューリングとデッドライン変動 前章にて,タスクスケジューリングによって待ち時間問題を解決することが適切であ ると示した.本章では,タスクスケジューリングによる解決を検討する.ユーザの移 動変化によって起こるデッドライン変動を詳説する( ).次に,デッドライン変動 がタスクスケジューリングにあたえる問題について述べる( ).最後に,タスクス ケジューリングの従来のアプローチによる解決の問題点を述べる( ). $z ${z ${z7$ vI# デッドライン変動 本研究が想定するモバイルリザベーション環境でタスクスケジューリングを行なう にあたり,ユーザのサービス場所への予想到着時刻をデッドラインとすることを前章 で示した.本節では予測したデッドラインの不正確性について言及する. ユーザがリクエストを発行してからサービス場所へ到着するまでの間,移動速度や, 移動経路選択といったユーザの移動状態が変化することがある.ユーザの移動状態の 変化すると,到着時刻予測であるデッドラインは変動する.表 でデッドライン変 動要因を詳しく分類する. 表 恒常的 ユーザ要因 決まった経路選択 自動車運転のくせ等 デッドラインの変動要因 偶発的 ユーザ要因 ユーザの突然の事故 突然の経路変更など 恒常的 環境要因 移動経路状態の変化 登り坂の道など 偶発的 環境要因 周辺の事故など デッドライン変動の一つ目の要因は,ユーザの要因で恒常的なものである.予測した 移動経路とは異なった経路で移動して,毎回同一のサービスを利用する場合や,ユー ザの移動のくせが例としてあげられる.移動速度や,移動経路が変化することによっ てデッドラインが変動する.このデッドライン変動は同一のユーザがサービスを利用 する場合には,毎回生じるデッドライン変動である. デッドライン変動の二つ目の要因は,ユーザの要因で偶発的に起こるものである. ユーザの突然の事故や,突然の移動経路変更である.これによってもデッドラインが 変動する. デッドライン変動の三つ目の要因は,環境の要因で恒常的なものである.例えば,移 動経路の傾斜である.歩行して移動している場合,移動経路の傾斜変化によってユー ザの移動速度が変化する.それにしたがってデッドラインは変動する.この他に車で 移動した場合,規定速度の変化,移動経路変動が恒常的な環境要因としてあげられる. デッドライン変動の最後の要因は,環境要因で偶発的に起こるものである.自動車 の渋滞や,信号などによってユーザの移動速度が変化する.これによって,デッドラ インが変化する. vI デッドライン変動によるスケジューリング問題 デッドライン変動によるスケジューリング問題は,スケジューリング時に期待した 結果が必ずしも得られないことである.ユーザの到着前に予測したデッドラインを , 結果的なデッドラインを とする. で, にもとづいてタスクをスケジュー リングしたとき,スケジューリング時に期待した結果と実際のデッドライン から得 ¡ B£ ¢ s B , ¡ " B られた結果とが異なる.たとえば, では待ち時間 となるようにスケジューリング されたタスクが,実際の では待ち時間が生まれてしまう場合がある.このように, デッドラインが変動することにより,時には大きなスケジューリングの誤差が生じる. s vIwv 関連研究 デッドライン変動問題への対処法は 通りある.デッドラインの予測をより正確な ものにしてデッドラインが変動しない場合と同様にスケジューリングする方法と,デッ ドラインが変動するものとして,それを考慮したスケジューリングを行なう方法であ る.前者の例として を利用した解決と??を,後者の例として??を関連研 究として取り上げる. A E e E C ;7E @ ¤¥§¦©¨ª¥?«:¬¥® を利用したデッドライン予測 より正確なデッドラインを予測できる.これによって,スケジューリング時の結果 を利用したアプローチ 予測と実際の結果との誤差の減少が期待できる. では,ユーザの履歴情報を利用して,目的地への移動経路とデッドラインを予測する .過去に同一のサービスを利用した履歴がある場合,ユーザの恒常的なデッドライ ン変更要因と環境の恒常的なデッドライン変更要因を考慮したデッドライン予測が可 能である.これは,ユーザの履歴情報を利用しない場合と比べ,より確実なデッドラ イン予測である. しかし,ユーザと環境の偶発的に起こるデッドライン変更要因は予測できず,本研 究が想定する環境においては,確実なデッドライン予測はできない. A E= e E C ;7E @ J! K J #"5K ¯ 関連研究2 ° 関連研究3 vI 本章のまとめ V 第± 章 ² ² ³ モデル 本論文では ´I# µ¶µ¸· モデル概要 -.-0ユーザの移動変化によるデッドライン変更に適したスケジューリングモデルである /j-325U ; 25,478b-32=476B8./?6,@,AFC ;E @< モデルを提案する.--1/ では,再スケジューリング毎 -32=46,8 に,全てのユーザのデッドライン取得をやり直し,デッドライン変化に応じて, /?6,@,AFC ;7E @ の定義域を変化させる.さらに,デッドラインの確率分布を予測したデッド -32=46,8/<6B@,ADC ;7E @ の傾きを変化させる. ラインまでの時間によって規定し,それに応じて -.-0/ を利用してデッドライ また,複数のデッドライン予測方式が混在する環境では, -.-0/ を詳述する. ン予測方式に優先度を付けられる.本章の以後の節で ´I デッドライン確率分布 前章で示した?突発的?なデッドライン変更は予測できない.したがって単位時間 当たりに突発的なデッドライン変更が起こる確率は,移動状況に関わらず一定である. とする.単位時間あたりにデッド 現在時刻と予測したデッドラインまでの時間を ラインが変更する確率を とし, のときの予測したデッドラインが正しいもの である確率? ?は 式で表せる. 式より,? ?は の減少と比例して?増加する. g , ¹ C£ @ gt@< B g@< @ º ? ?= ´Iwv ¹ C ¼ u ½w¾,» ¿ º ,: ソフトデッドラインの µ¶µ¸· ソフトデッドラインスケジューリングは,デッドライン以後のタスク完了に減少し た が得られるものである.一般的なソフトデッドラインの を図 で示す. サービス例としては,プリンタ,メディアにデータをコピーするサービスがあげら れる. lBl -32=476B81/?6,@,ADC ;7E @ -32=476B8 qjW ÀÂÁZÃWÄ0Å 設定 -32=46,8 本スケジューリングでは, を待ち時間によるユーザの満足度とする.待ち時間 の増加によって, は減少していく.これはソフトデッドラインの の形で表せる.ソフトデッドラインの を図 で示す.サービス要求 を発行した時刻から,デッドラインまでの間でタスクを完了した場合, は とす る.サービス要求を発行した時刻からタスク完了時刻までを とし,デッドラインまで の時間を ,正の定数を とすると,デッドライン以後のタスク完了は, で表される 式 .デッドライン以後のタスク完了は,待ち時間発生によるユーザ -32=46,8 È , -32=476B8/?6,@BADC ;E @ , Ç 2 -32=46,8t/<6B@,ADC ;7E @ -32=46,8 Æ Éu©Ê Ë Í u Ì -32=46,8 -.-0/ の 低下が起こる. 用する. 図 , では,デッドライン変更が起こらない場合にはこれを利 ソフトデッドライン -32=476B8/<6B@,ADC ;7E @ ;Ò ´ Ï Ó £ È ÉÔu´Õ Ö Ï u[È E C^SB8VUW× ;p 8 Î | Ï{ Ñ £ Ð É qj -.-0/ 傾き,定義域の変動 では,デッドライン確率分布に応じて,傾きを変動させる.デッドライン確率 分布では,現在時刻から予測したデッドラインまでの時間 に比例して,デッドライ ンが正確である確率は下がっていく.したがって, が大きくなるほどデッドラインの 信頼性は下がる.このことから, がある大きさ 以上のときは,デッドラインは無 視できるほどの信頼性であるとして, を 式のように設定する.これは,その タスクをいつスケジューリングしても が変わらないことを意味する.したがっ てそのタスクはスケジューリングされず,キューには入らない.これにより,通常の 計算に比べて計算量が減少する. U -325476,8 , -32=46,8 ~ U U -32=46,8&/?6,@,AFC ;E @ Î Ø ËW £ É ;ÒÙÚÛ ;Ò ´ Ï Ó £ ÉuÝÜ§Ü Þdß Õ | Ï uà E C^S,8DUW× ;7p 8 Î ËW Ñ £ Ð É #9 , 図 qjq , デッドライン確率分布 再スケジューリングのタイミング ノンプリエンプタブルなタスク プリエンプタブルなタスク ´I 傾斜したソフトデッドラインの µ¶µ · ほげほげ W ÀÂÁZÃWÄ0Å 設定 ほげほげ 図 , 傾斜したソフトデッドライン -325476,8/?6,@,AFC ;E @ 傾き,定義域の変動 ほげほげ q 再スケジューリングのタイミング ほげ ノンプリエンプタブルなタスク ほげげのげ プリエンプタブルなタスク ´I デッドライン予測法が複数混在したタスクスケジュー リング 複数のユーザが利用する状況では,ユーザ毎にデッドライン予測方法が異なること がある.たとえば,履歴を利用してデッドライン予測を行うユーザと,履歴を利用せず 移動距離と現在の移動速度のみからデッドライン予測を行うユーザが混在する場合で ある.現在のカーナビゲーションシステムにおいても,到着時刻予測は複数あり,製 品によって異なったものを採用していることがある.また,履歴を利用する場合にも, 履歴の量によって同一の予測方式でも異なったデッドライン予測を行う場合が多い.し たがって,ユーザは同じ場所,同じ速度でも,予測したデッドラインが異なる状況は避 けられない.この場合,ユーザの複数回の移動履歴を用いた方式のようにより信頼で 図 ,!, デッドライン確率分布 きるデッドライン予測方式の優先的にスケジューリングすることにより,スケジュー リング時に期待した により近い が結果的に得られる.優先度の設定には, ユーザ毎の優先度設定と同様に, の値を変化させる. は,デッドライン予測方式の違いを傾きで表すことが出来る.表 では,デ による優先度設定例を示す.デッドライン予測方式が ッドライン予測方式別の -32=46,8 -.-1/ Û â Ú Û ÚâÛäã ´Iwå á -325476,8 , -.-1/ 本章のまとめ " , -.-0/ 表 デッドライン予測方式の違いによる の優先度設定例 デッドライン ユーザ移動履歴 ユーザ移動履歴 ユーザ移動履歴 予測方式 利用しない 単数利用 複数利用 Û Û Û®ã 第æ 章 シミュレーション環境 '('*) 本論文では,シミュレーションによって 利用の理想値を明らかにする.本章で は,シミュレーション環境を述べる.しみゅれーしょんにおいて = I# シミュレーション環境 ( çW3W 変数設定 çW3 リクエスト到着の設定 リクエストの到着をポアソン到着で表す. ポアソン到着は,サービス要求の到着が以下の条件を満たす. è 定常性 同一幅の時間区間あたりの到着は時刻に依存せず定常である è 独立性 各到着は独立なものである è 希少性 微小時間内の到着が希少である çW3q ユーザ移動の設定 çW3 çW3ç I ( ソフトデッドラインの µ¶µ¸· 評価 çW ノンプリエンプタブルなタスク 比較対象 )éD)jê スケジューリング どれくらいの長さのタスクだと導入価値があるか 評価 ç プリエンプタブルなタスク 比較対象 )éD)jê スケジューリング 5 評価 Iwv 傾斜したソフトデッドラインの µ¶µ · 評価 ( çqjW ノンプリエンプタブルなタスク どれくらいの長さのタスクだと導入価値があるか çqj -.-0/ )éD)jê 比較対象 を以下のスケジューリングモデル(アルゴリズム?)と比較する. スケジューリング ラウンドロビンスケジューリング ラウンドロビンスケジューリングは,プロセススケジューリングで広く使われてい る,単純公平なスケジューリングアルゴリズムである.分割されたタスクを決まった 順序で繰り返し実行していく. 分割したタスクを 評価 (I 本章のまとめ 第ë 章 結論 = åI# 今後の課題 åI まとめ 5 謝辞 本研究を進めるにあたり,御指導を頂きました,慶應義塾大学環境情報学部教授徳田 英幸博士に深く感謝致します. このほかにもとめどなく溢れでる感謝の気持ちをあますことなくお伝えする予定です. " " 9 年 月 日 鈴木 源太 参考文献 J VKìeÍ O 8 ;7p 8VUVí L ~jS,8A Eîr 6BCT8VU Ò E UC^SB8C×ï8V@¡C o AD8V@¡C^6BUW N cdA ; 8V@¡C ;ð A1a 8VU ; AV2=@ " = O ; UT8D478 pTp f a0k O E U á ; @B U E 6 r J! K XYSsR3CWC RZr Rñ mòò5=U E 6 r 8VUD ; 8V8D8= E UTsòU E 6 r,p ò " òd#òd J_ K ] 476,8FC E%E C^S*c X í X @,A5?S¡CTC r óòò:×j×j×,46,8DC EdE C^S{ E UT¡òd J =Kk~j~b` E P E e E X @,A ., L ; モード全般N ,S¡CWC r mòò×j×j×!@¡CTC^ E A EE A E ô r ò ; ò ; @,,8\ä!S¡C 4 a0cda1eõa 適応的なサービス利用管理機構N 情 英幸, L J! K 永田 智大,西尾 信彦,徳田 "="B ,îE @¡C^S £ N¡=N í G=E 476 8 £ N 5N í@s6 §8VU £ N=N í r 2=8 p £ 報処理学会論文誌 N 9 o ===N J_ K LTf `ta.g N e ` にダウンロード öö , J 9K マルチメディア端末機で音楽を SsCWC r mòò×j×j× 6 î; \®!@,8DCwò îr ò {!SsC 4 J_ Ka.÷6B8D@¡CTS,Cw28V@¡e C ; A&2525C pC 6;7E î@ ; 2Bíøc E á E a E á ; íøe 2 p 2=@?2eõ6BU^2 p 8=íø2=@,Âù ; ,8Fd6 á ; ~ E á 6,,2 L^n 8VU E5op C Er N 2=U 2 pTp 85í P S,U ;p cdAwS 2=@,BC , LWf E A&2C ;7E @ o 2&×û2=UT8 ; @ ÒE U 2C ;7E @ ,8D4 ;G 8VUWUW × ; C^S J_ KAk.E25 C^2=e 4 ; E2úC e ;7E @ N J #"5Kk.25C^2=4 ; 2Ôe 2=U 2 pTp 8 ,P S,U ;p c%AwS 25@,BC , LTf E A&25C ;7E @*e E ,8D4 ; @, N hme E UWU ;7p L c r 2=@äa@ R @B8VUT5 o Rÿþ A ; 8D@sC J VK ] EdE P UW S,; 8V@,@{25í3C ;÷ÔE @õmü2 a47 ; E8 pWU E; CT@{S í ùÒ E ] U25~4ý2 E=á r®U ;E p 4 S,E @,(2=eõ@{í2 2=; @¡@BC^à 8D@?2=@,AD8 ; @õa. ù E A O ; UT8D478 pTp kt8DC× E U á p N Pa e´ò P ; A E XYRZ"=RZ"B:R Fí X @¡r,C^r 8D UT@?2o C ;7E íB@?a 2=4 r PU ; E4 @ Ò "8D"BUT=8V@B AV8 E @úe E ; 478 P Eîr 6BC ; @,2=@, k8DC× E U á ; @,|e E5o ¡ = 6{ítüBù8 ; ,8 25@,@{íb2=@,Q` R p CTU ; @{í L^ 8 E UT2 r S¡ o; @ ÒE U 8V R @,8VUW= P E @ p 8DU G 25C ;7E @ J K ÒE U a.0 ù E Ah E 6BC ; @, N a P e´ò XYRZRZRQX @¡C^8VUW@?25C ;7E @?254 P E @ Ò 8DUT8D@,AV8 E @*e E ; 48 P Eîr 6BC ; @, 2=@,*k8FC× E U á ; @,´Öe E ; A E= ""d:Fí rBr ó95" o BíBa r U ; 4 ""B J KìüB ; pTE @{í L ~jS,8e E ; 478 P E= 6B@ ; AV25C ;E @ p ù2=@,, EdE á%NXYRZRZR gUT8 pWp J &=K 重野 寛 í 松下 恩 í L ネットワーク・ユーザのための無線 f a0k 技術講座N cBh P íä 5