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窒化鉄粉末の合成および熱分解過程における常磁性-強磁性

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窒化鉄粉末の合成および熱分解過程における常磁性-強磁性
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窒化鉄粉末の合成お よび熱分解過程 における常磁性 一強磁性相変化
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平塚信 之 1*, 北地誠 1
,柿崎浩一 1
,小林秀彦 1
,
, 中川順平 2
,露木祐理子 2
北原清志 2
,福 島洋一 2
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1 緒言
装置 に近赤外線 を用いた Fe
2
N 粉末の熱分解 について
検討 した。
データキャリアの一つである磁気カードは、銀行 のキャ
ッシュカー ド、信販会社 のクレジットカード、テレホンカー
ドやオレンジカードなどのプリペイドカードとして広く普及
している。しかし、テレホンカードをはじめとする磁気カー
ドは、磁 気ストライプ上の磁 気情報 の判 読 および書換 が
比較 的容 易であり、偽 造 ・
変造 ・
不正使 用 の危 険性 が高
く、セキュリティに問題 がある 1)。
そこで、磁 気 カー ドに強磁性 体 とともに塗布 した常磁
性体を低温 ・
短時間の熱分解で強磁性体-変化させるこ
とにより、一度使 用したメモリを再使 用できなくするセキュ
リティを考案した。すなわち、常磁性 体として構造 的 に不
2 実験方法
安定な Fe
2
N を選択し、それが熱分解後 に強磁性 窒化鉄
,
N,Fe
4
N、あるいは強磁性酸化鉄の 五
一
Fe
2
0,
,Fe
,
0.
の Fe
に変化することを利用した。
2
N の低温短時間での熱分解 を目的と
本研 究では、Fe
し、窒化鉄合成 の出発原料 となるシュウ酸鉄 (
Fe
C2
04
)
粉
末を、水 およびエタノールを‡
容妹 とした沈殿 法 により調製
C2
04粉末の熱分解 挙動 および合成した
し、得 られた Fe
Fe
2
N 粉末の熱分解挙動 と磁気特性 について比較 ・
検討
04粉末 につ
した。同時に、CFミル を用いて粉砕 した FeC2
2
N 粉末の熱分
いてもその熱分解挙動および合成した Fe
解挙動と磁気特性 について詳細 に調べた。併せて、加熱
Fe
C2
04粉末は、塩化鉄水溶液とシュウ酸アンモニウムの
Cl
2
a
q.
1即 H4
)
2
C2
0。
a
q.
とする)、および
組み合わせ (
以下 Fe
塩化鉄水溶液とシュウ酸エタノール溶液の組み合わせ (
以
C1
2
a
q.
-H2
C2
0。
・
Et
OH とする)を用いた沈殿法により調
下 Fe
C2
04を CFミルにより粉砕した粉末
製した。また、市販の Fe
(
以下粉砕 Fe
C2
04とする)
も使用した。
調製および粉砕 した FeC2
04粉末を、電気炉を用いて
NH3ガス流通下において 350∼600o
Cで熱処理し、窒化鉄
2
N 粉末を Arガス流通 下におい
を合成した。得られた Fe
て 200-500o
C、および大気 中において 1
00-300o
Cで電気
N 粉末を、近赤外線を用
炉を用いて熱処理した。また Fe2
いて熱分解した。
XRD)
得られた粉末中の結晶相の同定 には X 線 回折(
装 置 を、また粒 子 形 態 の観 察 には走査 型 電 子 顕微鏡
(
SEM)を、磁 気 特 性 の 測 定 に は振 動 試 料 型 磁 力 計
(
VSM)
をそれぞれ用いた。なお、各結晶相の生成割合は、
測定した X 線 回折図中の各結晶相のピーク面積 の割合
で算出した。
51
3 結果および考察
∫.
: III
i
一方、大気 中での熱分解では、1
50o
C で一部の Fe
2
N
が分解 し始め、強磁性 体である Fe
,
04が生成した。200o
C
以上でさらに Fe
2
N の分解 が進行 し200
-250o
Cの範 囲で
の分解生成物 は非磁性 の Fe
O,aFe
2
03および強磁性 の
Fe
3
0。
の混合物であり、その飽和磁化値 は20-23e
mu/
gで
,
N 粉末の熱処理時の雰囲気を酸化雰囲気 下
あったo Fe
とすることで、Fe
2
N の熱分解 温度 は約 200K低温側へ移
,04単一相
行したが、得られた分解生成物 は強磁性 の Fe
とはならなかった。
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q.
および Fe
Cl
2
a
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-H2
C2
04
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Et
OHを
Fe
C1
2
a
q∴(NH4
用 いた沈殿 法 により調 製 して得 られた Fe
C2
04粉 末の
SEM 写真を Fi
g.
1に示すO用いた溶媒により、粒子径 に
明確 な違 いが見られ 、前者 の組 み合わせ の場合 は(
a
)
に
m、後 者 の場 合 には(
ら)に示 す ように
示 す ように約 5p
0.
2-0.
5pm となり、粒子径 は 1
/
1
0以下となった。この原 因
として F
e
C204 の水およびエタノール-の溶解度 の相違
C204 はエタノール に不溶で
が考えられる。すなわち、Fe
あり、溶解度 は水の方 が高い。溶媒に対する溶解度 が低
いと、沈殿 時に過飽 和度 は瞬時に臨界値を超 えるため多
数 の核 が生成 し、しかも沈殿 物 の析 出が短 時 間に終 了
す るた め 、粒 成 長 を 伴 わ な い 。そ の 結 果 として
Fi
g.
4は市販の Fe
C2
04粉末および粉砕 Fe
C2
04粉末の
SEM 写真 を示 す。市販 の Fe
C2
04粉 末 は粒 子径 が約
6-1
0ト
I
m、粉砕 Fe
C2
04粉末は平均粒子径が約 1
.
7岬1と
なった。粉砕 処理を施すことにより粒子が微 細化されたこ
とが確認される。
Fe
Cl
,
a
q.
イNH4
)
2
C2
04
a
q.
の組 み 合 わせ の場合 に、微 細 な
F
e
C204粉末が得られたと考えられるO
粉砕 Fe
C,
04をNH,
ガス流通 下において 350-400o
Cで
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また、得られた2種類の Fe
C2
04
粉末をNH3ガス流通下で
)
2
C2
04
a
q.
より調製
1時間熱処理したところ、Fe
C1
2
a
qr押 H4
した Fe
C2
04では 450o
C において Fe
2
N の単一相が得ら
れ 、Fe
Cl
2
a
q.
一日2
C2
04
・
Et
OH より調 製 した Fe
C2
04で は
41
0-450o
C の範囲で Fe
2
N の単一相が得られたOこれ は
Fe
C2
04粉末の微細化 により反応性が向上したためと考え
られる。また、430o
C において得 られた Fe
2
N が最も飽和
磁化値が小さかったことから、この条件を Fe
2
N 粉末合成
の最適条件 とした。
卿
槍 成 した. N 現 艶秋野
31
前述の最適条件 により合成 した Fe
2
N粉末を Arガス流
通 下において 200-500o
Cで 30分間熱処理 した場合の、
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Fi
g.
3 にそれぞれ示す。Arガス流通 下での熱分解 では
300o
Cまで Fe
2
N の分解 は起こらないが、350o
Cでは分解
が始 まり Fe
3
N が生成 し始 める。さらに温度 を上 げると
400o
Cで Fe
3
N の単一相が、450o
Cで Fe
4
N の単一相が、
500o
Cで aI
Feの単-相がそれぞれ得られた。Fe
2
N 粉末
は Arガス流通 下において熱処理温度の上昇とともに、
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加熱温度と生成割合 および飽和磁化値の関係をFi
g.
2に、
また大気 中において 1
00-300o
Cで 30分間熱処理 した場
合 の、加 熱 温度 と生成割 合 および飽 和磁 化値 の関係 を
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Fe
2
N-Fe
3
N-Fe
ヰ
N-良一
Feと窒化鉄 中の N/
Fe比が連続
的 に小さくなる傾 向を示した。また、各熱処理温度で得ら
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1
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3
Nで 138emu/
g,
れた単一相の窒化鉄の飽和磁化値 は Fe
Fe
4
Nで 1
69e
mt
t
/
gとなり、過去に報告された Fe
3
N および
Fe
4N の磁化 値 1
23e
mu/
g,1
83e
mu/
g2)にそれぞれほぼ等
3
N
しいO以上より、常磁性 の Fe
2
Nは400o
Cで強磁性の Fe
へ変化することから、常磁性 一強磁性相 変化が実現でき
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1時間熱処理したときの加熱温度と生成割合および飽和
g.
5 に示 す 。Fe
2
N の単一相 は
磁 化 値 の 関 係 を Fi
360-400o
Cの範囲で得られた。これはエタノールを溶媒と
C2
04より合成できる Fe
2
N の温
し沈殿法により調製した Fe
度よりも低 い。粉砕 して新 しい表面をつくり出すと、表面
積が増加することにより余剰のエネルギーを持つ。この増
加したェネルギーのため、より活性な状態となり反応性が
向上したと推察される。飽和磁化値は Fe
2
Nの単一相が得
AOO
o
C で約 1
e
mu
/
g となり、強磁性を示さず
られた 360F
Fe
2
N の単一相であることが裏付けられる。
3
.
4 勝 砕顔によク合成 L
,
たFeN の熱分解
そこで、粉砕 Fe
C2
04粉末を7
削、
て、最も低温で単一相
o
C において合成した Fe
2
N 粉末を、Arガ
が得られた 360
ス流通下において 200
-50o
Cで 30分間熱処理した場合
の、加 熱 温 度 と生成 割 合 および飽 和磁 化 値 の関係 を
Fi
g.
6に、また大気 中において 1
00
-300
o
Cで 30分間熱処
理した場合の、加熱温度 と生成割合および飽和磁化値
g.
7にそれぞれ示す。Arガス流通下での熱分
の関係をFi
解では窒化鉄 と酸化鉄の生成 が確認 された。窒化鉄 に
関しては沈殿 法 によるものと同様 の傾 向を示 し Fe
2
NFe
3
N→ Fe
4
N- aFeとN/
Fe比が連続的に小さくなった。し
かし、それぞれの窒化鉄 はより低温で得 られた。飽和磁
化値 は Fe
3
N の生成する 35
0
o
Cで急激 に増大した。酸化
Cで Fe
30
。
、450
-5
00
o
Cで Fe
Oが
鉄については 250叫50o
生成した。Arガス流通下にも関わらず酸化鉄が生成する
原 因として、次のことが考えられる。粉砕 Fe
C2
04よりFe
2
N
を合成するときに、反応終了後すぐに反応生成物を系よ
り取り出す と、試料 が非常に活性なため、大気 中の酸素
と急速 に結合し燃焼してしまう。そこで、反応終了後 に系
を開放 にして 1
0分間放置し、急な燃焼を避けるという処
理をしているため、試料表面に酸化膜が形成されている
ことによると考えられる。
一方、大気 中での熱分解では、1
00
o
C で一部の Fe
,
N
が分解し始め、Fe
O が生成した。1
5
0
-200
o
C で強磁性体
304が生成したが飽和磁化値は 7
-1
0
e
mu
ノ
gと非常に
の Fe
低い値であった。また、加 熱温度 の上昇 とともに非磁性
の aFe
2
0,の生成量が増加し 300o
C で単一相となった。
C2
0。を出発原料 に用いることにより、沈殿法に比
粉砕 Fe
べ合成した Fe
2
Nはより低温で分解したが、Arガス流通下
においては酸化鉄 が生成 し、また大気 中においては非
磁性相の生成 により飽和磁化値が低くなった。
3
.
5棚
によるFe
N の熱分解
沈殿法からの最適条件 にI
より合成した Fe
2N 粉末を、
200
W の近赤外線装置を用いて Arガス流通下において
3
-5秒照射した場合の、照射時間と生成割合および飽和
g.
8に、また大気 中において 1
-5秒照
磁化値の関係を Fi
射 した場合 の、照射 時間と生成割合および飽和磁化値
の関係をFi
g.
9にそれぞれ示す。Ar流通下では 5秒 間の
照射で温度は 1
000
o
Cに達し、Fe
4
N,aFeが生成し、飽和
磁化値は 1
75
e
mu/
gとなった。大気 中では 1秒の照射で
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30.
,Fe
,
N,Fe
.
N,aFeが生成し
温度は 200o
Cに達し、Fe
た。近赤外線 は試 料 に直接 エネルギーを伝 えて加熱す
るため、熱の放射などによるエネルギーロスが無いため、
短時間で急速 に温度 が上昇す る。そのため、酸化よりも
脱窒素が先行したと考えられる。5秒 間の照射で aFeの
生成量が増加 し、約 1
5
0e
mu
/
gの飽和磁化値となった。
4 まとめ
2
N の合成および Fe
2
Nの低温 ・
短 時間
Fe
C204からのFe
での熱分解 について検討 したところ、以下の知 見が得 ら
れた。
(
1
)沈殿法による Fe
C204 の調製 において、溶媒をエタノ
ールとすることにより、粒子は微細化された。
(
2)微細化された Fe
C204より合成した Fe
2N は Ar
ガス流
通下では400
o
CでFe
3
Nを生成し、窒化鉄の常磁性 一
強磁性相変化 が実現できた。また、大気 中において
は熱分解が低温化されたが、強磁性体の Fe
30
.の単
一相とはならなかった。
(
3
)粉砕 Fe
C204よりFe
2
N を合成する温度は沈殿 法のそ
れより低くなった。また、得られた Fe
2
N の熱分解 は Ar
2N
ガス流通下および大気 中で沈殿法より合成した Fe
と比較して低温化した。
(
4)近赤外線照射 によりFe
2
N は大気 中において 1秒 間
で分解LaFeなどの強磁性体を生成した.
5 参考文献
1
)竹 田春美 :
データキャリア Ⅰ バーコード・
磁 気カー ド
編,日本工業新聞社(
1
991
)1
65
2)喜 多 英 治 ,田崎 明 :
エレクトロセラミクス,23(
1
992)
1
1
1
2
5
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