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ITプロジェクト・スコープ記述書

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ITプロジェクト・スコープ記述書
目次
序章 本書の構成と前提条件
序 -1
本書の目的と前提条件 ………………………………………………………… 2
序 -2
テキストの構成と学習方法……………………………………………………… 4
第 1 章 プレプロジェクトとプロジェクトの立ち上げ
1-1 プロジェクトとは ……………………………………………………………………… 9
1-2 プロジェクトの制約
……………………………………………………………… 13
1-3 プロジェクトマネジメント ………………………………………………………
17
1-4 プロジェクト・ライフサイクル …………………………………………………
21
1-5 プロジェクトの組織構造の特徴
1-6 プロジェクトの特定
1-7 プロジェクト選定
…………………………………………… 27
……………………………………………………………… 35
………………………………………………………………… 39
1-8 プロジェクト憲章の準備と承認 ………………………………………………
1-9 プロジェクト憲章の発行
47
……………………………………………………… 53
1-10 プロジェクトステークホルダーの特定と分析
……………………… 59
第 2 章 プロジェクト計画の作成
2-1 プロジェクト計画の概要
……………………………………………………… 69
2-2 プロジェクトスコープの定義
………………………………………………… 75
2-2-1
プロジェクトに対する要求事項の収集 ……………………………………… 76
2-2-2
スコープ定義 ………………………………………………………………… 80
2-2-3
スコープ記述書の作成 ……………………………………………………… 84
xi
2-2-4
スコープ記述書の承認 ……………………………………………………… 88
2-3 WBS の定義と作成 ………………………………………………………………
91
2-4 プロジェクトスケジュールの作成 ……………………………………………
99
2-4-1
アクティビティの定義 ………………………………………………………… 100
2-4-2
プロジェクトネットワーク図 …………………………………………………… 104
2-4-3
プロジェクトの工数や期間の見積り ………………………………………… 106
2-4-4
プロジェクトスケジュールの策定 …………………………………………… 110
2-5 コミュニケーション計画の作成 ……………………………………………… 121
2-6 リスクマネジメント計画の検討と作成
…………………………………… 127
2-6-1
リスクマネジメント計画の策定 ……………………………………………… 128
2-6-2
リスク識別 …………………………………………………………………… 132
2-6-3
リスク分析 …………………………………………………………………… 134
2-6-4
リスク対応計画 ……………………………………………………………… 138
2-7 WBS に基づく役割分担や使用する資源の確認
…………………… 143
2-7-1
プロジェクトチーム組織の役割・責任の特定 ……………………………… 144
2-7-2
人的資源の投資の確保 ……………………………………………………… 146
2-7-3
資源の平準化 ………………………………………………………………… 148
2-8 品質管理計画の検討と作成
………………………………………………… 151
2-8-1
品質管理計画 ………………………………………………………………… 152
2-8-2
品質管理の考え方の提唱者 ………………………………………………… 154
2-9 コスト見積りの実行と予算の作成
2-10 変更管理手順
………………………………………… 157
…………………………………………………………………… 163
2-11 調達計画の作成 ………………………………………………………………… 169
2-11-1 資源の投入と調達 …………………………………………………………… 170
2-11-2 調達のための契約方式 ……………………………………………………… 174
2-12 プロジェクト移行計画 ………………………………………………………… 177
2-13 プロジェクトマネジメント計画書
………………………………………… 181
2-13-1 プロジェクトマネジメント計画書の統合……………………………………… 182
xii
2-13-2 計画フェーズのレビュー ……………………………………………………… 186
第 3 章 プロジェクトの実行と運営
3-1 人的資源のパフォーマンス向上
…………………………………………… 195
3-1-1
プロジェクトチームの編成と結束力の強化 ………………………………… 196
3-1-2
プロジェクトチームの育成 …………………………………………………… 198
3-1-3
個人の業績評価の実施 ……………………………………………………… 202
3-1-4
コンフリクトの要因の特定と解消 …………………………………………… 204
3-2 キックオフミーティングの開催
……………………………………………… 207
3-3 プロジェクトに影響する組織の仕組みやルール ……………………… 211
3-4 計画に従ったプロジェクトの実行
………………………………………… 215
3-4-1
プロジェクトの実施管理項目 ………………………………………………… 216
3-4-2
プロジェクトにおける調整 …………………………………………………… 220
3-4-3
課題管理 ……………………………………………………………………… 222
第 4 章 プロジェクトの監視・コントロール
4-1 プロジェクトの進捗管理
……………………………………………………… 231
4-1-1
プロジェクトの進捗管理 ……………………………………………………… 232
4-1-2
プロジェクトの実績収集 ……………………………………………………… 234
4-1-3
是正処置と予防処置 ………………………………………………………… 238
4-2 アーンド・バリュー・マネジメント…………………………………………… 243
4-2-1
アーンド・バリュー分析による進捗把握 …………………………………… 244
4-2-2
アーンド・バリュー分析によるコスト予測 …………………………………… 250
4-3 プロジェクトのリスクマネジメント
4-4 プロジェクトの品質管理
………………………………………… 253
……………………………………………………… 257
4-4-1
プロジェクトの品質管理と品質保証 ………………………………………… 258
4-4-2
プロジェクトの品質管理技法 ………………………………………………… 262
4-5 変更管理 ……………………………………………………………………………… 267
4-5-1
変更要求の起票 ……………………………………………………………… 268
4-5-2
変更要求の分析 ……………………………………………………………… 270
xiii
4-5-3
変更要求の承認 ……………………………………………………………… 273
4-5-4
変更の適用 …………………………………………………………………… 274
4-6 プロジェクトスケジュールの調整 …………………………………………… 277
4-7 コミュニケーションマネジメント
…………………………………………… 281
4-7-1
コミュニケーション計画に基づいた情報配信 ……………………………… 282
4-7-2
顧客との良好な関係の維持 ………………………………………………… 286
第 5 章 プロジェクトの終結
5-1 プロジェクト終結の手続き
…………………………………………………… 295
5-2 調達先との契約の完了 ………………………………………………………… 301
5-3 受注プロジェクトの契約完了手順
xiv
………………………………………… 305
本書の全体像
第1章
プレプロジェクトとプロジェクトの立ち上げ
プロジェクト企画書
プロジェクト憲章
プ ロ ジェ ク ト の 活 動
第2章
プロジェクト計画の作成
プロジェクトマネジメント計画書
・WBS ・スケジュール ・見積もり
第3章
プロジェクトの
実行と運営
第4章
プロジェクトの
監視・コントロール
進捗報告書
第5章
プロジェクトの終結
プロジェクト完了報告書
xvi
1
プレプロジェクトと
プロジェクトの立ち上げ
1-10
プロジェクトステークホルダー
の特定と分析
1-10
プロジェクトステークホルダーの特定と分析
1-10 プロジェクトステークホルダーの特定と分析
59
1-10
プロジェクトステークホルダーの
特定と分析
プロジェクトの開始にあたってまず重要なことは、ステークホルダーを特定し、分析す
学習ポイント
ることです。プロジェクトから影響を受けたり、プロジェクトに影響を与える人を正確に
把握し、それぞれの立場を考慮しながらプロジェクトを実行する必要があります。
1 ステークホルダー
プロジェクトにはいろいろな人が関係します。プロジェクトを支援してくれるマネジメントもいれば、
プロジェクトの実行に反対するマネジメントもいます。また、プロジェクトの結果に影響を受ける人
はプロジェクトの実行に何らかの関心を示しますし、プロジェクトにあまり関係がないと思う人の協
力を得ることは難しいものです。
このように、プロジェクトに影響を与えたり、プロジェクトから影響を受ける組織や個人のことをス
テークホルダー(利害関係者)と呼ぶことは 1-7 で学びました。つまりステークホルダーは組織の
内部と外部の両方におけるすべての関係者ということもいえます。たとえば、あるプロジェクトに
おけるステークホルダーには、経営者や従業員はもちろんのこと、プロジェクトに参加していない従
業員、顧客、取引先企業、外部官庁なども含まれます。このように、
プロジェクトを構成するプロジェ
クトマネジャとプロジェクトチームメンバーはだけではなく、プロジェクトが所属する母体組織を中
心に多くの関係者がステークホルダーになります。
プロジェクト
経営者
株主
IT
ベンダー
労働組合
プロジェクト
マネジャ
家族
プロジェクト
チーム
メンバー
顧客の
利用者
行政
顧客の
担当者
顧客の
担当者
の上司
ステークホルダーの例
60
住民
ステークホルダーは、プロジェクトマネジメントに大きな影響を及ぼします。たとえば、プロジェクト
オーナー※やスポンサーなどのプロジェクトへの投資家は、プロジェクトの意思決定に関与し、重大
効果的に実行する役割を担うので、プロジェクトの成否に重大な影響を及ぼします。
2 ステークホルダーの特定
プロジェクト憲章が正式に発行されプロジェクトが開始された場合、まずそのプロジェクトのステー
クホルダーを特定することが重要です。そのプロジェクトに関係するいろいろな立場のステークホ
プレプロジェクトと
プロジェクトの立ち上げ
な影響力を持ちます。また、プロジェクトマネジャやプロジェクトチームメンバーは、プロジェクトを
1
ルダーを正しく特定する必要があります。
ステークホルダーを特定するには、そのプロジェクトの成果物やサービスの受益者を調査します。
プロジェクトの背景からそのプロジェクトに期待を持っている経営層や組織について、関係者を把
握するとともに、プロジェクト完成後に影響を受けるユーザーや関係組織についても調査します。
また、プロジェクトマネジャをはじめとするプロジェクト実行チームおよび母体組織についても関係
者がいますので、漏らさずピックアップします。
1-10
プロジェクトのステークホルダーそれぞれについて、
プロジェクトステークホルダーの特定と分析
3 ステークホルダーの分析
影響力
大
その利害、影響、要求などを分析することをステー
社長
利用
部門長
クホルダー分析と呼びます。ステークホルダーはプ
ロジェクトに対する利害関係に基づく要求を行い、
し、対応することはプロジェクトマネジメントを円滑
に行うために重要です。ステークホルダーは、プロ
情シス
低
高
参画度
影響を及ぼす存在のため、それらを認識して分析
顧客
オーナー
顧客
オーナー
社員
ジェクトとの利害や立場の違いによって、その要求
が異なります。プロジェクトマネジャは、ステークホ
ルダー分析を行ってステークホルダーそれぞれの要
求を整理し、調整を行う必要があります。
ステークホルダー分析として評価グリッドを使う方
顧客
オーナー
ユーザー
小
ステークホルダーグリッド分析(例)
法があります。たとえば、そのステークホルダーのプ
ロジェクトに対する「影響力」とプロジェクトへの「参画度」をグリッド上に表現します。この場合影
響力があり参画度も高いステークホルダーに対してより関心を払う必要があります。
プロジェクトオーナー
プロジェクトの成果物やサービスの受益者である経営層、顧客、母体組織のエンドユーザーなどは、成果物やサービスの機能や品質の影響を受
けますから、プロジェクトやプロジェクトマネジメントを制約する要求を行います。プロジェクトマネジメントを効果的に遂行するには、ステークホ
ルダーの存在を認識し、プロジェクト推進の合意を形成することが大切です。
61
4 ステークホルダー対応計画
ステークホルダー分析の結果、重要と考えたステークホルダーに対して対応計画を作成します。重
要なのは、プロジェクトにネガティブなステークホルダーです。このようなステークホルダーに対し
ては十分注意し真摯に対応しなければなりません。ステークホルダー分析を経て、最終的にはス
テークホルダーのプロジェクトに対する支援や合意をとりつけることです。
ステークホルダーマネジメントがうまく行かず、プロジェクトが失敗する例も多く見受けられます。
ステークホルダーをうまくマネジメントするポイントは、プロジェクトマネジャがステークホルダーを
直接マネジメントするのではなく、プロジェクトに対するステークホルダーの期待をマネジメントする
ことです。
プロマネからのアドバイス ❺
プロジェクトを開始するときは、重要なステークホルダーを特定し、協力を得
られる体制をとります。
プロジェクト成功のためには、プロジェクト開始時にステークホルダーを特定して、その対応に十分
配慮する必要があります。ステークホルダーの支援があることで、プロジェクトをスムーズに進める
ことができます。また重要な問題が発生したとき、味方になってもらえます。
ステークホルダーを味方につけるには、プロジェクト憲章作成、プロジェクトスコープ定義などの重
要なプロジェクトドキュメント作成にあたって、ステークホルダーを巻き込むことが良い方法です。
それぞれのドキュメントに対する承認を得ておくことも忘れてはいけません。キックオフミーティン
グなどの節目には、ステークホルダーも招待し、参画意識を高めておくことも有効です。
ただし、ステークホルダーは互いに利害関係を持っていますし、考え方もそれぞれ異なります。特
に重要なステークホルダーに対しては、どのような影響力を持っているか、関心度は高いかなどを
分析しておくことが重要になります。
プロマネからのアドバイス ❻
プロジェクトマネジャはステークホルダーの期待をマネジメントします。
プロジェクトマネジャはステークホルダーをマネジメントするのではなく、ステークホルダーの期待を
マネジメントするものであると言われています。ステークホルダーすべて自分の管理下にあるわけ
でなく、またステークホルダー間には相反する利害も少なくありません。このようにステークホル
ダーを直接管理することは難しく、プロジェクトマネジャはステークホルダーのプロジェクトに対する
期待や要望を管理するものであるということをしっかり理解してステークホルダーに接しましょう。
62
1
プレプロジェクトと
プロジェクトの立ち上げ
1-10
プロジェクトステークホルダーの特定と分析
63
1-10 プロジェクトステークホルダーの特定と分析
確認問 題
次の
1 1.
に当てはまる語句を答えてください。
プロジェクトの開始にあたってまず重要なことは、プロジェクトに影響を与える
①
を正確に
把握することです。
①
1 2.
それぞれについて、プロジェクトに対する利害、影響、要求などを分析する
①
分析が重要です。
1 3.
1 4.
①
分析の結果、重要と考えた
①
をうまくマネジメントするポイントは、プロジェクトマネジャが
ントするのではなく、プロジェクトに対する
①
に対しては
①
①ステークホルダー ②対応計画 ③期待
答 え
64
の
③
②
を作成します。
①
を直接マネジメ
をマネジメントすることです。
章末問題
大きな ROI が期待される新製品開発プロジェクトが承認され、A 君がそのプロジェクトマネ
ジャに任命されました。ROI が期待通りのものになるのかが心配されていますが、A 君はプ
ロジェクト管理においてどのようなことに気をつけるべきですか。
a.
予定通りの ROI になっているか毎月のデータを表にしてステークホルダーに報告
する。
b.
プロジェクト開始時に認められた予算の予実管理を毎月行うが、
ROIは関知しない。
c.
プロジェクト期間中、予算の使用実績と収入から予定通りの ROI になっているか
プレプロジェクトと
プロジェクトの立ち上げ
Q1
1
管理する。
d.
プロジェクトの投資額(Investment)とプロジェクトの成果物が生み出した回収額
(Return)を比較し、プロジェクトに期待された ROI が達成されたか確認する。
A
クトを選択するときに最も参照される数値です。投資額はプロジェクトコストと運用コスト、
1-10
効果はそのプロジェクトが生み出したプロダクトによってもたらされます。したがって、プロ
プロジェクトステークホルダーの特定と分析
b
ROI(Return on Investment)はプロジェクトの投資効果の指標であり、開始すべきプロジェ
ジェクトに責任を持つプロジェクトマネジャは、投資額のうちプロジェクトコストについてのみ
オーバーしないように管理する必要があります。効果についてはそれが表れるのはプロジェ
クトの完了後であり、その管理はプロジェクトマネジャの責任ではなくなります。
Q2
A
c
プロジェクト憲章に記述する内容としてふさわしいものは次のうちどれですか。
a.
詳細なコスト見積り額
b.
プロジェクトポートフォリオ(プロジェクト一覧) c.
ステークホルダーのサイン(承認)
d.
プロジェクト体制図
プロジェクト憲章には、プロジェクト名から始まり、プロジェクトの目的、プロジェクトの成果
物、主要マイルストーン、コスト概算、ステークホルダーなどを記述します。このようなプロ
ジェクトの概要とともに、プロジェクトマネジャやその権限の範囲などが重要な記載事項に
なります。さらに、プロジェクトを開始するにあたってステークホルダーの確認と今後の支援
を約束するためのサイン(承認)の欄は必須といえます。この段階で詳細なコスト見積りや
プロジェクトの体制図を作ることはできません。またプロジェクト憲章は単一のプロジェクト
について記述するものですから、組織のプロジェクト全体を表すような記述は行いません。
65
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