Comments
Description
Transcript
講演会 「震災と東北、そして文化」 「3.11以降の建築と都市」
講演会 フランス 「3.11―東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」展関連講演会 「3.11以降の建築と都市」 3 月 21日 パリ日本文化会館 Lectures 「東北学」を提唱する民俗学者の赤坂憲雄氏を中国に、建築展「3.11ーー東日本大震災の直後、 さまざまな建築物の被災事例を生々しく証言しました。映像や 建築家はどう対応したか」パリ開催に合わせて、同展を監修した建築史家・建築評論家の メディアを通してのみ被災地をみてきたパリの聴衆は、実際に 五十嵐太郎氏をフランスに、また 「劇団劇作家」代表を務め、震災をテーマに戯曲を書いた 震災を体験した五十嵐氏の話に聞き入っていました。 篠原久美子氏を米国に派遣し、講演を行って、東北と復興について考えました。 五十嵐氏は自らが被災地で感じた印象を交えながらも、建築 史家としての客観的な視点から、震災が建築そのもの、そし て建築のありように与えたインパクトを解説しました。さらに自 身の研究室が主導する復興プロジェクトをはじめ、建築家に 中国 よる具体的な試みの案をいくつも紹介しながら、復興のために 「震災と東北、 そして文化」講演会 建築分野の専門家がどのように貢献しうるかを示唆しました。 3 月 27 日 天津 南開大学日本研究院 3 月 28 日 北京 北京日本学研究センター 震災の記憶を風化させず、建築はなにができるかを、具体的 な構想を提示しつつ問いかけた講演内容で、展覧会の内容と パリ日本文化会館にはたくさんの聴衆が集まった 民俗学者である赤坂憲雄氏(学習院大学教授) は、かねてより 「東 北学」を提唱し、地域学の可能性を追求すると同時に、東北 地方の文化的コンテクストを読み直す研究を進め、東北芸術 工科大学・東北文化研究センターの設立などにも携わってきた 研究者です。今回の講演は、 「震災で大きな被害を受けた東北 の風土や人びとが育んできた文化の特色とその魅力」をテーマ として行われました。東北が置かれていた状況と、また震災に よって顕在化したさまざまな問題点、来るべき社会についての あわせて、今後の社会と建築のあり方を考える機会となりまし 3 月 6 日から 31日まで、パリ日本文化会館において 「3.11―東 た。聴衆は 「東日本大震災後の復興へ向けて実にさまざまな取 日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」展が開かれた り組みが考えられていることがわかった」といった感想を述べ 機会に、3 月 21日、同展監修者である五十嵐太郎氏 (東北大 ていました。 学大学院教授)による講演会を同じくパリ日本文化会館内の 翌 22 日には、関連の催しとして、ベルギー在住の本展出品者 ホールで開催しました。 ジョフレ・グルロア氏らがコーディネートする 「石巻建築ワーク 五十嵐氏は、講演のなかで、展覧会の企画の意図を説明する ショップ」やフランスの若手建築家を交えての交流会も開かれ、 とともに、東北大学の自身の研究室が入る建物のようすを含め 専門家同士の活発な意見交換の場となりました。 ビジョンと政治的リーダーの不在を含む、不透明な東北の現 状を指摘しつつ、東北のなかに根付いてきた自然観を振り返る ことの意義について議論が展開されました。 北京日本学研究センターで講演する赤坂憲雄氏 北京の会場では、ジャーナリストの陳言氏、北京日本学研究 米国 「SHINSAI: The Conversation」演劇関係者トークイベント 3 月12日 ニューヨーク ジャパン・ソサエティ センター主任の徐一平氏をゲストに迎え鼎談を行うとともに、 に日本劇作家協会も賛同し、日本の劇作家も作品を提供しま 中国社会科学院日本研究所文化研究室メンバーとの 「東北学」 した。 「民俗学」 「復興にまつわる諸課題」に関する活発なディスカッ 公演翌日の 12 日、マンハッタンのジャパン・ソサエティのオー ションが繰り広げられました。 ディトリアムで、このイベントを巡るトークセッションが行われ、 日本のこれからに対する中国の人びとの関心は高く、聴衆は 日本から 「劇団劇作家」代表の篠原久美子氏がスピーカーとし みな真剣に赤坂氏の講演に耳を傾けていました。天津と北京 て参加しました。篠原氏は戯曲 『北西の風~ 2011 年 4 月、飯 の講演で合わせて約 160 人の聴衆を集め、 「現在の日本社会の 舘村』を発表し、また、被災地をたびたび訪れ、演劇を通し ようすや日本人の気持ちが理解できた」 「災害とテクノロジー、 た被災地支援も行っています。篠原氏の他、ジェイムズ八重 エネルギー政策など中国にも参考になる良い視点」などの感 樫氏、作品を提供した三人の米国人劇作家、ジョン・ワイド 想が寄せられました。 マン氏、ジョン・グェア氏、フィリップ・カン・ゴタンダ氏を迎 篠原久美子氏 (左端)をはじめとするトークセッションのスピーカー達 会場には日本を研究する人をはじめ、多くの人が集まった 講演会に寄せて 赤坂憲雄氏のメッセージ まず、海外の皆さんに震災にまつわり多くのご支援をいただ ほぼ頂点を迎えているときに起きたとも言え、今後の復興は、 いたことに心より感謝を申し上げたい。 今の状態よりも大きく人口が減った 「8000 万人の日本列島」 この震災により、日本社会がはらんでいたさまざまな問題が を思い浮かべながら考えなくてはならない。エネルギー政策 むき出しになった。50 年後の日本は、人口が激減して国民 を根本から考え直すことはもちろん、さらには今回の教訓か 震 災を乗り越えて えました。このセッションは、USTREAM でリアルタイム配信 され、会場の聴衆や視聴者からの質問も受け付け、演劇にな このトークイベントは、前日、3 月11日にニューヨーク、クー にが出来るかを語り合う形ですすみました。イベントの終盤、 パー・ユニオン大学をはじめ全米各地で同時上演された「震 篠原氏に対して、日本国内の状況や、震災後、日本の劇作家 災 SHINSAI:Theaters for Japan」の関連イベントとして開 がどのように活動していくのか等、会場からもたくさんの質問 催されました。「震災 SHINSAI:Theaters for Japan」は山 が寄せられました。 形県出身でニューヨーク在住の俳優・演出家、ジェイムズ八 篠原氏は 「演劇に関わるために一番必要な能力は、共感する の 4 割を高齢者が占める、現在よりさらに進んだ高齢化社会 ら 「災害を完全に防ぐことはできない」という視点をもち、 「防 重樫氏が発案し、アメリカの劇作家や劇場関係者が協力して となっているはずで、各地で過疎化した集落が増えることに 災」よりも 「減災」を目指して人と自然の関係を新たに構築し、 才能だと聞いたことがある。他者の痛みに共感する才能が演 なるだろう。東北地方はとりわけ厳しい状況に直面すること 新しい復興のシナリオをつくっていくことを考えたい。 実現した企画で、震災をテーマに書き下ろした短編戯曲をチャ 劇には不可欠で、そういう意味で、優れた才能をもつアーティ リティで上演する団体に著作提供し、公演の収益金を被災し ストにここで巡り会えた」と述べ、トークセッションを締めくく た日本の演劇人に支援金として送るというものです。この趣旨 りました。 が予想される。東日本大震災は日本列島の人口や経済力が 12 撮影:Lee Wexler 講 演会 13