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オープンソースソフトウェア入門 講義ノート
オープンソースソフトウェア入門 講義ノート 2009年9月 株式会社サイバー創研 本資料は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA) 「2008 年度オープンソフトウェア利用促進事 業」の一環で、株式会社サイバー創研と学校法人津田塾大学が受託し、実施した「OSS モデルカ リキュラム導入実証」の講義に基づき、株式会社サイバー創研が作成したものです。 この著作物は「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス 表示 2.1 日本」により、株式会社サイ バー創研から利用許諾されています。 詳しい利用許諾条項は、http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/legalcode をご覧下さい。 カリキュラム概要 1.概 要 「今なぜ OSS なのか」という点を、その定義、分類、利用例・利用時のメリット、 問題点、ライセンスや知的財産権に至るまで、幅広く取り上げ、講義する。 2.受講前提 入門科目のため、特に規定しない。 3.学習目標 OSS 全般についての一般的知識の習得と、利用時のメリット/デメリット、実社会 システムへの導入事例、ライセンス・知的財産権について知識を得ること。 受講学生が OSS に興味を持ち、更に学習する動機づけとすること。 4.OSS モデル OSS 概要に関する基礎知識(Ⅰ、Ⅱ) カリキュラム 法務分野における基礎知識(Ⅰ、Ⅱ) 対応科目 5.講義時間 6.講義 第1回 講義内容 90 分(授業時間) × 13 回(講義回数) 第1回 オープンソースソフトウェアとは何か 第2回 普及と歴史 第3回 オープンソースソフトウェアの分類 第4回 個人利用 第5回 企業・社会・教育にとっての利用メリットと事例(その1) 第6回 企業・社会・教育にとっての利用メリットと事例(その2) 第7回 関連ビジネス 第8回 オープンソースソフトウェアの開発者 第9回 技術的側面からみた問題点(課題点) 第 10 回 人的側面からみた問題点(課題点) 第 11 回 ライセンス・知的財産権(1) 第 12 回 ライセンス・知的財産権(2) 第 13 回 ライセンス・知的財産権(3) オープンソースソフトウェア(OSS)とは何か 本講義の開設の意義について説明する。 オープンソースの言葉の定義と概念を講義する。 形式的な定義として、オープンソースイニシアティブの「The Open Source Definition」について説明する。 現実的には、拡大解釈されて取り上げられる場合が多いので、そのような事例 と考察を説明する。 達成目標 オープンソースの定義・理念について知識を得る。 3 第2回 普及と歴史 講義内容 オープンソースが普及した理由と歴史について、以下の観点から例を示しなが ら概説する。 ・ 利用者にとってのメリット ・ インターネットの普及 ・ ハードウェアの急激な高性能化 ・ 商用ソフトウェアとの比較 ・ OSS の歴史(インターネット、UNIX、GNU、Linux) 達成目標 OSS が普及している背景と歴史について知識を得る。 第3回 講義内容 オープンソースソフトウェアの分類 ライセンスの話題に集中しがちな OSS であるが、最近、企業が開発したソフ トウェアを OSS として利用することが多々ある。 個人やコミュニティが開発した場合との差異について説明する。 他の分類観点からも概説する。 達成目標 種々の OSS の形態について知識を得る。 第4回 講義内容 個人利用 個人が OSS を使う際のメリットを商用ソフトウェアと比較して説明する。 併せて、セキュリティや商用ソフトウェアとの連携についても説明する。 セキュリティや、ミッションクリテイカルな業務への利用についても概説す る。 達成目標 第5回 講義内容 メリットについて、商用ソフトウェアと比較し、知識を得る。 企業・社会・教育にとっての利用メリットと事例(その1) 企業や社会・教育機関など実社会で使われている OSS の実例を示す。 ・ 組織の観点からの利用のメリット ・ 導入事例・目的 ・ メリット別の導入事例 ・ 企業・社会・教育分野での利用 達成目標 企業や自治体・教育での利用例を知る。 4 第6回 講義内容 企業・社会・教育にとっての利用メリットと事例(その2) 商用ソフトウェアとの連携や使い分けについて説明し併せて、セキュリティの 観点からも説明する。 ・ 従来の商用ソフトウェアとの比較 ・ 利用の拡大(例 セキュリティ分野) ・ 市場規模 達成目標 実業務での OSS と商用ソフトウェアの比較によりその差異を理解する。 第7回 講義内容 関連ビジネス OSS とビジネスの関係について説明する。 ・ ビジネスを行っている企業やグループの例 ・ 考えられるビジネスモデル ・ その際のリスク 達成目標 第8回 講義内容 OSS 関連企業についての知識を得る。 オープンソースソフトウェアの開発者 OSS の開発コミュニティや、その成り立ち、関連ビジネスについて講義する。 従来と異なり、企業が開発した OSS もあるので併せて説明する。 (1) OSS情報の入手方法 ・ コミュニティポータルサイト ・ 企業運用のポータルサイト ・ メーリングリスト (2) プロジェクトの発達とコミュニティの形成 ・ プロジェクトの発達と運営 ・ コミュニティへの参加・貢献 ・ プロフェッショナル/コマーシャルオープンソース 達成目標 OSS の開発コミュニティについて、その実態を知る。 5 第9回 講義内容 技術的側面からみた問題点(課題点) OSS を利用する際の問題点を、以下の技術的な側面を中心に説明する。 ・ 情報の不足と分散の問題 ・ システムの維持管理の問題 ・ 商用ソフトとの組み合わせでの動作保証の問題 ・ アプリケーション不足の問題 達成目標 OSS 利用時の技術的側面の問題点を知る。 第 10 回 講義内容 人的側面からみた問題点(課題点) OSS を利用する際の、問題点を以下の人的な側面を中心に説明する。 ・ システムの維持管理の問題 ・ システム構築・運用人材不足の問題 ・ 調達する側のスキルと調達仕様書の問題 ・ OSS の発展とコミュニティ ・ リナックスは企業の OS 技術者がほとんどを開発している 達成目標 OSS 利用時の人的側面の問題点を知る。 第 11 回 講義内容 ライセンス・知的財産権(1) オープンソースライセンスの意味と各種ライセンスについて講義する。 (1)オープンソースライセンスの分類 GPL とコピーレフト ・ MPL類型 ・ BSD類型 (2)デュアルライセンス ・ MySQL の例 ・ Mozilla Project の例 (3)商用ライセンスとの比較 達成目標 ソフトウェアのライセンスについて理解すると共に、種々のライセンスの違い を知る。 6 第 12 回 講義内容 ライセンス・知的財産権(2) OSS の法的側面について講義する。 ・ 著作権と OSS ・ 特許権と OSS ・ 商標権と OSS ・ 実用新案権・意匠権と OSS ・ OSS の利用と法務面(知財産権関連、瑕疵担保責任、製造物責任) ・ 国際的な解釈の相違と紛争 達成目標 ソフトウェアのライセンスについて理解すると共に、種々のライセンスの違い を知る。 第 13 回 ライセンス・知的財産権(3) 講義内容 OSS 開発時におおいて考慮すべきライセンス問題と、知的所有権法や著作権 法に関する法的問題を回避しようとする Creative Commons について講義す る。 ・ OSS 開発とライセンス ・ Creative Commons とは 達成目標 OSS と知的財産権関連の法的側面について知見を得る。 7 オープンソースソフトウェア入門 -第 1 回- オープンソースソフトウェアとは何か 8 1. オープンソースソフトウェア(OSS)の定義 OSS の定義について最も広義に使われる場合は「ソースコードが公開されている」ことだ けを意味し、狭義の意味で使われる場合はオープンソースイニシアティブ(OSI)の認定マー ク付のソフトウェアか、オープンソースイニシアティブ認定のライセンスを使用しているこ とを意味している。この章では OSS とは何かについての簡単な意味と、オープンソースイ ニシアティブによって、Open Source Definition(以下 OSD とする)とされている厳密な 定義について記す。 1.1 OSS とは(広義の意味) OSS を簡単に表現すると、「ソースコードを公開して、プログラムを自由に使用・修正・ 配布できるようにする」としたソフトウェアとなる。OSS の定義には有償か無償かとい う考えは含まれていない。Linux をはじめとした多くの OSS は無償配布されているが、 これは「無償で配布しなくてはならないもの」だからではなく OSS は有償でも無償でも かまわない。どちらにするかは OSS の配布元や配布元となる組織やグループが決めるこ とである。これは、使う立場からすると、OSS は無償で入手できることが保証されては いない。 1.2 OSS とは(狭義の意味) オープンソースイニシアティブ(http://www.opensource.org/)によって、定義されている OSD は、http://www.opensource.org/docs/definition.html でみることができる。 9 2. まとめ 前章で述べたとおり厳密には OSS は以下のように整理される。 (1)~(3):利用にあたっての権利 (4)~(10):オープンソースライセンスの備えるべき条件 (1)自由な再頒布ができること (2)ソースコードが入手できること (3)派生物が存在でき、派生物に同じライセンスを適用できること (4)差分情報の配布を認める場合には、同一性の保持を要求できること (5)個人やグループ・コミュニティを差別しないこと (6)適用領域に基づいた差別をしないこと (7)再配布において追加ライセンスを必要としないこと (8)特定製品に依存しないこと (9)同じ媒体で配布される他のソフトウェアを制限しないこと (10)技術的な中立を保っていること 一般的には上記の(1) (2) (7)が強調され多くの注目を浴びており、様々な分野での普及利用や関連 ビジネスも発展しているが、一方で上記の条件が守られていないこと等誤った理解が存在している。 参考文献資料 URL: オープンソースイニシアティブ:http://www.opensource.org/ Open Source Definition:http://www.opensource.org/docs/definition.html 八田信行訳:オープンソースの定義:http://www.opensource.gr.jp/osd/osd-japanese.html 高木 正弘 、高岡 芳成:オープンソースの育て方 http://producingoss.com/ja/ (参考書籍 13 の電子版) Karl Fogel:Producing Open Source Software:http://producingoss.com/ 10 オープンソースソフトウェア入門 -第 2 回- 普及と歴史 11 本講義回は、オープンソースソフトウェアが現在のように注目され、また、利用されるに至った 歴史的な経緯を説明する。導入として、ソフトウェアに限らずモノが普及する条件からはじめ、 最終的にオープンソースソフトウェアの普及経緯を説明する。 1. モノの普及と条件 ソフトウェアに限らず、 「モノ」が普及するのに必要な条件を考察する。 どのように有用な、興味深いモノがあっても、グローバルに普及するには、 「流通」と「適 度に緩やかな入手条件」が必須な条件である。種々の例示を含めて説明する。 2. オープンソースソフトウェアの普及と条件 ソフトウェアについても、1.で考察した普及条件があてはまる。 有用な・興味深いソフトウェアが存在しても、厳しい契約締結や複雑な流通経路が必要であ れば、広く普及するのは難しい。 オープンソースソフトウェアについていえば、以下の 3 つが「モノ」 、 「流通」、 「条件」に相 当し、普及に加速がついた。 ・Unix(Linux)------------モノ ・Internet------------------モノ・流通 ・GNU License--------入手条件 以下、これら3つと、オープンソースソフトウェアの関係について、説明する。 3. Unix とオープンソース 1969 年に AT&T のベル研究所でマルチユーザ・マルチタスクの OS 開発を開始したが、 その利用や配布は、ベル研究所内や大学・研究機関など特定組織に限られていた。 1974 年にカリフォルニア大学バークレー校に Unix Ver.4.0 導入し、所謂 BSD ( Berkeley Software Distribution )の開発が始まった。1977 年から、 AT&T 社は Unix Version 6 か ら営利企業に対してもライセンス販売を開始した。 しかし、BSD Unix の配布は、AT&T Unix のユーザに対して配布できる制限付でのソースコード配布であった。1983 年頃 TCP/IP ネ ットワーキングプロトコルを含むバージョンの 4.2BSD Unix を開発し、各大学に配布され インターネットの発展に大きな役割を果たした。しかし、依然として Unix は AT&T 社がそ のソースコードのライセンスを保有しており、使用にはライセンス料が必要であった。 1994 年にバークレー校が、4.4BSD から Unix のコードを完全に排除した 4.4BSD-Lite を 発表し、ライセンス料なしでのソースコードの配布を開始した。この「ライセンス料無しで のソースコード配布」 、及び、ライセンスには、 「ソースを少しでも使った場合、データにそ 12 の旨明記する」という、現在のオープンソースソフトウェアの原型の一部がある。 これにより、各所で BSD Unix をプラットフォームとし、ソースコードの公開されたソフト ウェアが数多く開発された。つまり、1.で述べた「モノ」としての役割を果たした。 また、1991 年に Linus Torvalds が PC で稼動する Unix 互換 OS である Linux を出した頃 からオープンソースソフトウェアが広く注目を浴び始めた。 併せて、ディストリビュータによる、バイナリコードのパッケージ化と販売からオープンソ ースソフトウェアのビジネスも始まった。 4. インターネット技術のオープン思想 インターネットは、1969 年の米国での ARPANet で 4 台のコンピュータを接続したことか ら始まり、現在のグローバルな普及に至っている。技術的には、TCP/IP という開放性の高 い(オープンな)通信プロトコルを採用するとともに、オープンという観点からは、プロト コルの決定に於ける、以下の2点が挙げられる。 (1)RFC (Request For Comments) の方式を提唱 コメントを広く募集することにより、技術は評価され革新する。 研究結果、仕様など公開により、利用する人が増える。 現在は IETF ( Internet Engineer Task Force )によって管理されている。 (2)IETF ( Internet Engineer Task Force ) インターネット標準化策定組織 オープンな組織 メーリングリストに参加で、誰でも議論に参加することが可能(ボランティア) インターネットに関する仕様を作成し公開する。 また、3.で述べた様に、4.2BSD Unix には TCP/IP プロトコルが標準で装備されているよう に、インターネット接続に必要なソフトウェアの多くが、Unix 上でソースコードを公開し た形式で開発され、インターネット自身を用いて広く配布された。 つまり、インターネットが「流通経路」としての役割とともに「モノ」の役割を果たした。 5. GNU License 1984 年に Richard M.Stallman が GNU Project を、「自由に使用できるソフトウェアを開 発し、ソースコードを自由に利用できるように公開すること」を目的に始めた。 具体的には、 「Unix 互換 OS を開発(GNU) 」や「C コンパイラと GNU Emacs などを開 発し公開」から始まった。これらの、大量のソフトウェア開発とともに、そのライセンスと して、 「コピーレフトと、派生プログラムのライセンスの概念」を唱え、後のオープンソー スソフトウェアのライセンスに多大な影響を与えた。現在のオープンソースソフトウェアの 多くも、GPL(GNU Public License)やその派生ライセンスを適用している。 13 6. 今回のまとめ オープンソースソフトウェアが普及してきた歴史とその理由について述べた。 基本的には、以下の 3 つのオープン性が、前向きの相乗効果を生み広く発展を促した。 ・Unix(Linux) ・Internet ・GNU Project 14 オープンソースソフトウェア入門 -第 3 回- オープンソースソフトウェアの分類 15 1. 様々なソフトウェアとライセンス ソフトウェアには、ライセンスの違いから OSS をはじめ、フリーソフトウェア、フリーウェ ア、シェアウェア、パブリックドメイン・ソフトウェア、商用ソフトウェア等、数 10 種類を 超える様々な種類のものがある。OSS とはどの様な位置づけにあるソフトウェアなのかを明 確にする(OSI の定義と類似のソフトウェアの関係を整理する) 。 2. 分類視点 ソフトウェアに関しての分類視点があるが、OSS 並びにその類似ソフトウェアについて考慮 する場合には、以下の点に着目して分類する。 ・著作権の有無 ・ソースコード公開・非公開 ・有償・無償 ・コピー・改変・再配布の自由 ・派生ソフトウェアに関する制限 ・占有(商用)化の可否 3. ソフトウェアの特徴 各々のソフトウェアの特徴をまとめると以下のようになる。 3.1 Free Software(フリーソフトウェア) フリーソフトウェアのフリーは、フリーソフトウェア財団(Free Software Foundation)が提唱する「権利関係がフリー(自由)である」ソフトウェアを意 味し、自由とはユーザがソフトウェアを実行、複製、頒布、研究、変更そして改 良することを指している。より厳密にいえば、フリーソフトウェアの規定はソー スコードを入手することが可能なことを前提に、次の 4 種類の自由を意味し、こ れに当てはまるソフトウェアがフリーソフトウェアと呼ばれる。 *目的を問わず、プログラムを実行する自由 *プログラムがどのように動作しているか研究し、そのプログラムに必要に 応じて修正を加え、採り入れる自由 *コピーを再頒布する自由 *プログラムを改良し、コミュニティ全体がその恩恵を受けられるよう改良 点を発表する自由 16 3.2 Semi-free Software(疑似フリーソフトウェア) 疑似フリーソフトウェアは、非営利目的や個人にのみ複製、改変、配布を許可し ているところが、フリーソフトウェアと違っている。 3.3 Public domain Software(パブリックドメイン・ソフトウェア:PDS) パブリックドメイン(Public domain)は法律用語で「著作権や特許権が消失した状 態」をいう。具体的には、著作権が切れてしまったものか、意図的に著作権を放 棄したものであり、その特徴はソースコードの公開、無償、コピー、改変、配布 さらには、他のソフトウェアと組合せも可能で、このソフトウェアを商用ソフト として販売したり、ライセンスしても構わない。このことから、パブリックドメ イン・ソフトウェアは OSS の一種と考えられる。 3.4 MIT(Massachusetts Institute of Technology) License Software(X License or the X11 License)(MIT ライセンスソフトウェア) コピーレフトが主張されないフリーソフトウェアとして、MIT ライセンスソフト ウェアの X Window System が代表的な事例としてある。 MIT ライセンスソフトウェアのようにプログラムがフリーで、コピーレフトが主 張されなければ、そのコピーや改変されたソフトウェアを、ソフトウェア企業は コンパイルして実行形式ファイルを独占的なソフトウェア製品として頒布できる。 しかし、この MIT ライセンスソフトウェアも OSS に分類される。 3.5 Proprietary Software(独占的商用ソフトウェア) マイクロソフト社の Office シリーズに代表される、販売することで利益を得るこ とを目的としたソフトウェアである。一般的に商用ソフトウェアはバイナリコー ドだけが提供され、配布や改変は原則禁止されている。 3.6 Shareware(シェアウェア) シェアウェアは複製物を再配布することは許可しているが、そのソフトウェアを 使用する人は皆ライセンス料を支払わなければならないと主張するソフトウェア である。シェアウェアの本来意味するところは、「人に利用してもらう代わりに、 開発費の一部を分担してもらう(share)ソフトウェア」ということである。シェ アウェアはライセンス料を取っていることと、原則としてソースコードが入手で きないことからして、フリーソフトウェアではないし、疑似フリーソフトウェア でもない。 17 3.7 Freeware(フリーウェア) 「フリーウェア」という用語に、一般的に認められたはっきりした定義はない。 しかし、その多くは、再配布は許可しているが改変は許可されていないために、 ソースコードが公開されていない「フリー(無償) 」で使用可能なソフトウェア」 を指すのに使われている。こうしたことからフリーウェアはフリーソフトウェア ではないことになる。 3.8 Open Source Software(オープンソースソフトウェア:OSS) 説明は省略 4. まとめ オープンソースソフトウェアと紛らわしいソフトウェアについて分類を示した。 次表は、主要なソフトウェアの種類を取り上げ、著作権の有無、ソースコードの公開・非公 開、コピー・改変・再配布の自由、派生ソフトウェアの制限等の観点からその違いを見たも のである。ここで整理した項目は比較のために単純化している。 以下に、これらソフトウェアの包含関係図について図示する。 引用資料:http://www.gnu.org/philosophy/category.png 18 ソフトウェアの ソースコード 著作権 コピー・改変 有償・無償 種類 派生ソフトウェアに関する制限 公開・非公開 備考 ・再配布の自由 ソフトウェアの派生物もフリー フリーソフト 有り 公開 規定なし 自由 ソフトウェアでなければならな ウェア い 非営利目的や個人 疑似フリー 有り 公開 許可した配布先は 非営利目的であれば改変された 自由 派生ソフトウェアの頒布を許可 の使用は無償、商用 ソフトウェア 目的の場合は有償 パブリックドメ 著作権切れや著作 ソフトウェアコピーのサブライ イン・ソフトウ 放棄 公開 無償 自由 権を放棄したソフ センスや販売が可能 ェア トウェア 再頒布と改変の許 可が与えられてい MIT ライセンス ソフトウェア ライセンス契約を 開発者とユーザの ライセンス契約を ライセンス契約し ライセンス契約をしたユーザは るが、同時に再頒布 したユーザは無償 たユーザは自由 自由 や改変にあたって、 したユーザには公 契約による放棄 開 開発者が制限を追 加することも許可 独占的商用 有り 非公開 有償 不可 ― 有り 原則非公開 有償 原則不可 ― ソフトウェア シェアウェア 改変は不可、コピ フリーウェア 有り 原則非公開 無償 ー、配布は開発者の ― 判断による オープンソース 有り 公開 無償 自由 ソフトウェア 19 自由 オープンソースソフトウェア入門 -第 4 回- 個人利用 20 本講義回では、オープンソースソフトウェアの個人での利用について説明する。 導入として、オープンソースにかかわる集団区分とその変化を説明する。また最後に、受講生の 興味を惹くデモンストレーションを行い、そのライセンスについてふれる。 1. オープンソースにかかわる集団区分 下図に示すように、オープンソースにかかわる集団区分が、Linux が広く認知され始めた 1998 年を境に大きく変化している。 経済産業省 :「 オープンソースソフトウェアの利用状況調査/導入検討ガイド ライン」より引用 http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0004397/1/030815opensoft.pdf 1998 年以前は、開発者と密接に結びついたユーザのみの単純な関係であった。 その後、ビジネスとしての成立の可能性から、様々な組織・企業・コミュニティからなる複 雑な構造となってきた。その分、以前に比べるとオープンソースソフトウェアに関連する集 団・人々の増加や注目度の増加ともいうことができる。 2. 個人の位置づけの変化 集団区分の変化で述べたように、1998 年以前は、個人は利用者にも開発者にもなりえる存在 として位置づけられた。それ以後は、単なる利用者も存在するが、(開発・利用)企業、ユー ザグループの形成など、個人が幾つもの役割(ロール)を果たす可能性のある複雑な状況とな っている。 21 3. 利用技術者/開発者 個人の役割を、OSS 開発者/ OSS 利用技術者として分類すると以下の様に整理される。 大分類 中分類 OSS 開発者 - 役割 OSS 自身の開発者および OSS コミュニティ の活動家 アプリケーション開発者 OSS 利用開発者 主に企業の業務システム(いわゆるエンター プライズ分野)の開発 業務システム、ミドルウェア、デスクトップ パッケージ開発者 ソフトウェア等さまざまなパッケージソフ トウェアの開発 OSS 利用技術者 システム管理者 OSS を利用した情報システムの運用・管理 システムインテグレータ OSS を利用した情報システムの構築、導入 4. 個人利用者としてのメリット 個人利用者を OSS の利用者として定義した時、一般的なメリットとして以下の点が挙げられ る。 ソースコードが読める(保険的な役割・学習・開発材料)。 商用ソフトウェアと同等なソフトウェアが相対的に安価に使える。 ライセンスに留意して、改造・修正できる。 ユーザコミュニティとの情報の Give&Take 個人の有するソフトウェアに関する知識やスキルが十分な場合には、上記のメリットを享受 できる。但し、不十分な場合には、寧ろデメリットとなりうる。 この点については、本講義 第 9 回、第 10 回で再度説明する。 5. ポータル(Portal:玄関・入り口)サイトとその例 無数ともいえるオープンソースソフトウェアを、目的やライセンスに応じて探し出す出発点 としてポータルサイトの存在を説明する。併せて、講義中に代表的な以下のポータルサイトに アクセスして、受講生にその内容を紹介する。 例示したポータルサイト: ・オープンソース全般(開発・News・Wiki 等) http://sourceforge.net/ http://sourceforge.jp/ 22 ・オープンソースの OS(Linux,FreeBSD 等) http://www.distrowatch.com/ ・目的別分類 http://www.ossj.jp/profile/index.php ・GNU http://www.gnu.org/index.html http://www.gnu.org/index.ja.html 6. デモ(ARToolkit) 受講生の興味を惹くオープンソースソフトウェアとして Web カメラを用いて教室内を撮影し、 ARToolkit(http://www.hitl.washington.edu/artoolkit/ )を利用した例を、デモンストレーショ ンする。 併せて ARToolkit が、以下の 2 つのライセンスを持つことを説明し、一つのソフトウェアに 複数のライセンスが存在することを説明する。 7. • The GPL-licensed toolkit • Licenses for professional and commercial use 参考 URL 経済産業省 :「 オープンソースソフトウェアの利用状況調査/導入検討ガイドライン」 より引用 http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0004397/1/030815opensoft.pdf ポータルサイト例 ・オープンソース全般(開発・News・Wiki 等) http://sourceforge.net/ http://sourceforge.jp/ ・オープンソースの OS(Linux,FreeBSD 等) http://www.distrowatch.com/ ・目的別分類 http://www.ossj.jp/profile/index.php ・GNU http://www.gnu.org/index.html http://www.gnu.org/index.ja.html 23 オープンソースソフトウェア入門 -第 5 回- 企業・社会・教育にとっての利用メリット と事例(その1) 24 前回講義内容に対比する形で、本講義回と次回で、社会・組織としての利用を説明する。 入門講義としての役割に配慮し、利用場面や状況といった背景についても十分に説明する。 今回は、利用のメリットや導入事例について説明する。 1. 利用のメリット(組織の観点) 組織での利用の観点は、個人での利用メリット加え、以下の点が挙げられる。 但し、各項目に記した点を考慮しないと、必ずしもメリットを十分に期待できないことに、注 意する必要がある。 ① 商用ソフトウェアに比べて低コストで導入可能である。 運用・維持管理費用まで含めタトータルコストについては考慮の必要がある。 ② ソースの公開 個人利用と同様に、十分な技術力がないと、単なる保険的な意味しか成さない。 ③ ベンダフリー(特定の社の技術に支配されない) ①、②と関係し、ベンダロックを選んだ方がコスト的に有利な点がありうる。 ④ 品質・機能の向上 コミュニティや開発者との連携により、情報収集分析力がないとメリットとして 十分に生かせない。 ⑤ 技術蓄積 ②と同様に十分な技術力が必要とされる。 2. 導入事例/目的 以下に記す導入事例を、目的別に概要紹介し、オープンソースソフトウェアが身近に 使用されていることを説明する。また、オープンソースソフトウェアに限らず、社会・組織 体での情報システムについても補足説明をする。 紹介した導入事例と URL: ① コスト削減例 :統合承認パッケージ (http://powergres.sraoss.co.jp/s/ja/example/falconsc.php) ② 品質・機能例:検索システム (http://www.obci.jp/web/guest/member_only) ③ ベンダフリー例:自治体システム (http://www.pref.fukuoka.lg.jp/d08/standard-top.html) ④ 技術蓄積目的例:オンラインゲーム・ポータルサイト (http://powergres.sraoss.co.jp/s/ja/example/gcrest.php) 25 3. 企業・社会・教育・研究での利用例 公開されている事例について、情報システム全体の説明と併せて、以下の事例を説明する。 IPA にて公開されている、OSS 導入事例データベースにて紹介されている以下の事例を、引 用し説明する。 (引用 URL:http://ossipedia.ipa.go.jp/example/index.php) 組織名 利用例 三井住友銀行 法人向けインターネット・バンキング・サービス ニフティ blog サービス「ココログ」 住友電気工業 OpenOffice の社内利用 日本旅行 EC サイト「旅プラザ」 鹿児島県 徳之島 3 町 地域情報化基盤システム 栃木県 電子入札システムおよび入札情報サービス 名古屋大学医学部附属病院 病院総合情報システム 東京大学 宇宙線研究所 国立遺伝学研究所 生命情報・ DDBJ 研究センター 4. 「スーパーカミオカンデ」によるニュートリノ研究を支える実 験解析システム 世界最速の次世代バイオデータベース 今回のまとめ オープンソースソフトウェアを組織が使う際に、十分な技術力を持たず導入利用を行 うと、そのメリットを十分に享受できない(個人の場合と同様) 。 今回講義で取り上げた事例は公開された事例に基づくが、現実には、企業のもつ閉鎖 性や、競争原理から、非公開事例が多々ある。 特許・著作権との関係も生じるので、今講義の第 11 回以降で詳細に説明する。 現実的な、企業での利用例は、フルスクラッチから作成のコスト・時間・手間を圧縮 する目的で利用されている場合が少なからずある。 5. 引用 URL IPA OSS 導入事例データベース: http://ossipedia.ipa.go.jp/example/index.php 26 オープンソースソフトウェア入門 -第 6 回- 企業・社会・教育にとっての利用メリット と事例(その2) 27 前回講義に続き、商用ソフトウェアとの比較や、社会での利用拡大、市場規模などについて説明す る。 1. 商用ソフトウェアとの比較 入門講義を配慮し、オープンソースソフトウェアと商用ソフトウェアの特徴をステレオタイ プ的に比較説明する。具体的には講義スライドに提示したように、以下の内容を説明する。 (講義スライド内容再掲) OSS キーワード コスト 相対的に安価 高価? パフォーマンス 独自にカスタマイズ可能 開発元に依存 ビジネスモデル 新しいビジネスモデル 販売、保守 探索は利用者主体 開発元の営業行為 ソースコードが多数の目で検証 セキュリティホール対処は開 されている 発メーカによる 公開 原則非公開 開発者が決定 開発企業ごとに個別 アプリケーション セキュリティ ソースコード ライセンス 開発形態 コミュニティ(ボランティア、 品質・機能向上 入手方法 研修・認定制度 利用の拡大 - 企業)による分担開発 容易に入手可能 運用管理/サポート 2. 商用 開発企業 独自 開発元、販売店からの購入 自社(利用者)/コミュニティ/ サポートビジネス コミュニティ、非営利法人によ るサービス提供/資格ビジネス 契約による/個別製品 開発企業による個別製品ごと セキュリティ分野への利用 特定商用ベンダーの寡占分野であった、セキュリティ分野へのオープンソースソフトウェア の導入が進みつつあることを説明する。入門講義であることを配慮し、 「セキュリティ分野」 について、事前に以下の具体例の説明を行う。 28 3. セキュリティ分野のソフトウェア例 ネットワークファイアウォール(FW) PKI 電子署名、電子証明書 通信ログの収集 認証 脆弱性監査ツール 暗号化 要求される機能 信頼性 安定性 頑丈さ 利用の拡大 - セキュリティ分野 例 IPA の以下の公開資料に基づき、具体例を説明する。 引用:「セキュリティ関連 OSS の成熟度評価」2008 年 3 月 21 日、独立行政法人 情報処理 推進機構 4. 利用の拡大 -ミッションクリティカルな業務 従来、商用ソフトウェアが独占していたミッションクリティカルな業務へ、オープンソー スソフトウェアが導入・利用されつつあることを説明する。 入門講義であることを配慮し、「ミッションクリティカルな業務」について、事前に以下の 説明を行う。 ミッションクリティカルとは、 「24 時間 365 日止まらないことを要求される(とまら ないことが当然である)基幹業務」である。 具体的には、電子商取引、大規模プラントの制御、航空管制やその他の例を説明する。 トラブル(誤りや中断、セキュリティ)が発生した際には、巨額の損失の発生のみな らず、社会的な信用の失墜を招き、組織の存続が危ぶまれるシステムである。 このようなシステム(ソフトウェア)に要求される事項として、以下の点がある。 高い信頼性 耐障害性 障害発生時に被害を最小に食い止める様々な機能(フェイルセーフ)万全のサポー ト体制 29 5. 市場規模 - OSS を活用した市場規模 以下 2 つの図表に従い、OSS を活用したソフトウェア産業の市場規模見通しについて説明 する。 ソフトウェア業の2007 年市場規模 出典: 「第 2 回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査」 2009 年 1 月、独立行政法人 情報処理推進機構) 30 ソフトウェア業の2017 年までの市場規模の変化 出典: 「第 2 回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査」 2009 年 1 月、独立行政法人 情報処理推進機構) 6. 講義 まとめ ・オープンソースソフトウェアが成熟し、多様な組織への導入が拡大されつつある。 ・従来は、商用ソフトウェアの独壇場であった、ミッション クリテイカルな分野への導入 も進みつつある。 ・今後の課題としては、商用ソフトウェアとの共存・棲み分けが大きな課題として考えられ る 31 オープンソースソフトウェア入門 -第 7 回- 関連ビジネス 32 ここでは、オープンソースソフトウェアに関連するビジネスについて、実例を交えながら説明する。 特に、商用ソフトウェアのビジネスと異なり、大きな要素を占める「ライセンス」を強調して説明 する。 1. ビジネスを始める前に オープンソースソフトウェアに関連したビジネスを開始する前に考慮するべき点がある。そ れは、本講義 11 回~13 回で詳しく説明する「ライセンス」の問題である。 基本的に、ビジネスは、オープンソースソフトウェアを、利用・販売・改変・配布・サポー トなどして対価を得る行為と考えられる。 オープンソースソフトウェアも著作権法上の著作物であり、上に述べた行為(使用・販売・ 改変・配布・サポート)では、ライセンスに抵触しないか確認することが、始まりとなる。 今回講義でも概説するが、 「使用と利用の差異」については、第 11 回講義以降で詳しく説明 する。 2. ソフトウェアライセンスの概要 2.1 ソフトウェアライセンス ソフトウェアも著作権法上の著作物であり、コピー(複製) 、配布、改変するには著 作権者の許可が必要である。それぞれの意味と具体的な行為は次の通りである。 ・コピー(複製): ソフトウェアのコピー CD 等記録媒体に複製を作成、サーバからダウンロード(クライアントへコピー) ・配布 : ソフトウェアを配る、他の人に渡す 複製を含む記録媒体の販売やインターネット上で公開 ・改変 : ソフトウェアの修正 ソフトウェアの機能を変更したり、追加したりする 2.2 オープンソースライセンスの要約 オープンソースライセンスについては、第 1 回講義で要約したように、つぎのような 3つの権利の6つの条件にまとめられる。 (1)3つの権利(オープンソースの権利) ・ソースコードのコピーを作り配布できる ・ソースコードを入手できる ・ソースコードを改変できる すなわち、条件に従えばソースコードを自由に利用できる(複製、配布、改変) 。 (2)6つの条件 ・作者のソースコードの完全性を維持すること ・団体、個人に対して差別しない 33 ・使用分野を差別(制限)しない ・再配布時に追加ライセンスを必要としない ・特定の製品に固有のライセンスを使用しない ・他のソフトウェアに対する干渉をしない すなわち、団体や個人を差別しないので特定の国で利用禁止などにはできないこと、 OSS ライセンスはソースコードの再利用、共同開発を促進するために、できる限 り、複製、配布、改変を制限しないようになっている。 3. ビジネスモデル オープンソースソフトウェア(OSS)の定義・概念、OSS に関する概念・定義を十分理解し た上で、OSS を利用したり、運用・保守したりするビジネス、OSS を利用してプロジェクト 開発を請け負うビジネス、など、いろいろなビジネスが存在する。概略を図式化すると以下 の様になる。 OSS 定義・概念 OSS ライセンス 開発 新規 運用・保守 利用 既存 種々ビジネス 以下に、ビジネスを行う場合必須となるソフトウェアライセンスと OSS を利用する代表的な ビジネスについて述べる。 34 3.1 使うメリット (1) 利用編 OSS は基本的に無償のため、購入費用がかからずコスト削減になる。また、ソフトウェアを 配布しない場合にはソースコードを改変しても公開する義務はない。そのため、自由に業務 内容に合わせてカスタマイズすることが可能で、カスタマイズを自社内でやる場合、費用を 圧縮できる。この著名な例としては、Google や Amazon などがあり、サービス提供の基盤 となる内部のシステムにオープンソースを採用しコスト削減に成功している。 (2)開発編 OSS を利用すると、ゼロから開発するより、OSS をベースにした方が、開発時間の削減にな る。例として組み込みの分野で OSS を利用する動きが出てきている。ソースコードを公開す るメリットは「他社と共同開発できるので開発コストを低減でき、開発期間を短縮できるだ けでなく、世界的なソフトウェアの開発への参加は世界最高水準の技術者を育てる」*とい う点にある。 * CE Linux フォーラム、ホワイトペーパーより 実例としては以下のものがある。 ・シャープ:AQUOS http://www.sharp.co.jp/support/aquos/source/download/index.html ・ソニー: BRAVIA http://www.sony.net/Products/Linux ・NTT DoCoMo :FOMA 携帯電話 http://www.nttdocomo.co.jp/support/utilization/application/develop/source/index.html 3.2 サポートビジネス OSS に係るサポートおよびサービスを企業が有償で行うサービスで、サポートや保守サ ービスなどのサポート一式をメニュー化し、提供することで利益を得るというビジネス モデルである。 著名な例として Red Hat 社による Red Hat Enterprise Linux がある。 http://www.jp.redhat.com/rhel/benefits/ 35 3.3 ライセンスビジネス 無償ライセンスと商用ライセンスのデュアルライセンスにすることにより、利益面を確保 するビジネスである。以下の事例がある。 (1)MySQL : OSS ラ イ セ ン ス (GPL) に よ る MySQL Community Server と 商 用 ラ イセ ン ス の MySQL Enterprise に分かれている。 参考 URL: http://www-jp.mysql.com/ 3.4 OSS 製品からの派生物でのビジネス:FireFox での例 派製物を元に行うビジネスである。代表例として Mozilla/FireFox の派生物を作成す るビジネスがある。具体的には以下の 3 つに大別できる。 ・Mozilla をベースとした単体アプリケーション ・多種類な Firefox 向け拡張機能のプラットフォーム ・Web アプリケーションのためのプラットフォーム 参考 URL: http:/www.mozilla.org/projects/mozilla-based.html Mozilla をベースに選択した理由は次のとおりである。 ・オープンソース ・オープン標準 ・選択可能なソフトウェアライセンス ・マルチプラットフォーム対応 ・Firefox との親和性 ・Firefox コミュニティとグローバルな潮流 4. 今回のまとめ・参考資料 ・ビジネスの前にまずライセンスに配慮をすることが重要である。 ・種々のビジネス形態が存在する。 ・既存の著名な OSS から派生物を用いるビジネス形態も存在する。 36 オープンソースソフトウェア入門 -第 8 回- 開発者 37 今回は、オープンソースソフトウェアの開発について説明する。特に、従来の企業での開発アプロ ーチ、開発プロジェクト運用と対比する形で説明する。また、オープンソースソフトウェアの開発 意義・手法が企業での開発に与えた影響についても言及する。 最後に、日本でリーダーシップをとっているオープンソースソフトウェアについて説明する。 1. 開発形態 1.1 オープンソースコミュニティの形成 第 4 回講義で示したように、オープンソースソフトウェアに関連する人たちは、以前の開発 者とユーザの単純な構造から、開発者、利用者(エンドユーザ) 、ビジネス関連者が種々の役 割を果たし、かつ、相互に関連しあう 3 極構造を形成している。図表 8-1 に示すように、こ れら、3 極からなるコミュニティがオープンソースコミュニティを形成している。 エンドユーザ ビジネス OSS コミュニティ ボランティア・ スタッフ 図表 8-1 オープンソース構造(3極構造) 38 1.2 開発者コミュニティ 1.1 で述べた観点から開発者の位置づけを考えると、単に一極に存在しているのではなく、 各極の中に様々な立場で空間や組織を横断して存在し協調して活動している。 1.3 開発アプローチの対比 オープンソースソフトウェアの開発アプローチを、従来の企業での開発と対比すると以下 の図表 8-2 のように記される。 オープンソース開発 企業開発 ユーザー利益第一 企業利益を第一に 信頼 オープンソース 一般参加型 透明性 革新的 分散型セキュリティ 懐疑的 プロプラエタリィ 階層的 検閲 模倣的 選択的セキュリティ 図表 8-2 2. 開発アプローチの対比 開発者コミュニティの特徴 1.2 でも述べたように、開発者の間でコミュニティが形成されてきた。 その特徴は、1.3 で 記したとおり、従来の開発方法とは異なるユニークなアプローチをとり、スタッフ、ビジネ スパートナー等々、オープンソースコミュニティに参加している多くの人々が、対等な立場 で、インターネット経由で地域や時間を越えて開発や議論を行い、集団的な力を活用するも のである。 3. オープンソースと組織 3.1 従来型企業の組織形態 従来のソフトウェア開発は、図表 8-3 に示すような階層的な組織で行われることが多い。 39 経営層、 意思決定者 管理層 マネージャ 技術者 研究者 図表 8-3 従来の階層的な組織 特に、商用ソフトウェアなどの開発の形態において、このピラミッド型組織形態をとること が多く、開発規模によって、階層化され、責任分担、権限委譲を行う組織形成となっている。 この形の開発形態においては、各階層間においてプロジェクト情報共有が十分になされない という問題が上げられる。 3.2 OSS の開発組織 一般に、OSS の開発組織では、コアグループと一般貢献者から成り立ち、それぞれ次のよう な役割開発を推進している。なお、この区分は絶対的なものではなく柔軟性を持つ。 (1)コアグループ チームリーダ的存在 貢献度(プロジェクトに多大な貢献をした人)や選ばれた人から構成される。 プロジェクトの意思決定などの中心となり、最終決定などとりまとめを行う。 (2)一般貢献者 全ての参加者からなる。 これは、一見階層化(グループ化)のように見えるが、コアグループと一般貢献者とはプロ ジェクト情報については情報共有がなされ、その保持する情報の差異はない点が大きく異な る。 40 4. コミュニティの運用 4.1 オープンソースプロジェクト OSS コミュニティでのプロジェクトの形成・運用は、次の要素からなる。 プロジェクトの提案 プロジェクト参加メンバーの募集 プロジェクトマネージャ(コアメンバー)による運用 開発コミュニティとユーザコミュニティの緊密な連携 コミュニケーション これらを、インターネット上で開発・議論・情報交換を行うことですすめる。 5. 企業開発への影響 5.1 開発スタイルの利点 オープンソースソフトウェアの開発スタイルで行う利点として以下の点がある。 (1) 世界規模の開発環境、開発者のリソースを利用することで、問題解決の迅速化や評価・ 開発・テストのサイクルを通じて、コミュニティの貢献を最大限生かす。 (2) インターネットベースでの作業による、生産性の向上 (3) 成果物の共有化、再配布による普及推進、促進 5.2 企業開発への影響 5.1 で説明した開発スタイルの利点が認識され、企業内開発へ影響を与えつつある。 具体的には、以下に示す項目である。基盤にあるのは、インターネット利用である。 6. インターネットベースでのコミュニケーション(生産性の向上) 地域を問わず、世界中どこでも、雇用が可能 開発者のライフスタイルにも変化 国内製の製品開発から、グローバル製品開発へとシフト オープンスタンダードを意識した製品開発 日本でリーダーシップをとっている OSS 日本でリーダーシップをとっている OSS に関し、経済産業省の調査報告である、 「オープンソースソフトウェアの利用状況調査/導入検討ガイドライン」 (http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0004397/1/030815opensoft.pdf) をもとに、説明する。日本語化等の言語の部分を除くと、IPV6・Ruby・grub が着目される 程度であり、まだまだ、この分野での貢献度が低い。 41 7. 今回講義のまとめ ・開発コミュニティ形態について、以下の項目について説明した。 ・従来の企業内アプローチとの対比 ・コミュニティの形成や運用 ・プロジェクトとしての運用 ・オープンソースソフトウェアの開発形態が企業内での開発形態へ影響を及ぼし、変化を与 えつつある。 8. 参考資料 経済産業省:「オープンソースソフトウェアの利用状況調査/導入検討ガイドライン」 (http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0004397/1/030815opensoft.pdf) 42 オープンソースソフトウェア入門 -第 9 回- 技術的側面からみた問題点(課題点) 43 今回と次回で、オープンソースソフトウェアの組織や企業での利用導入に関して、一般的にある誤 解や導入阻害点など、技術的側面からみた問題点について説明する。 今回は、まず、誤解・課題点・問題点などの列挙を行う。 1. 利用面(特に組織)での疑問とためらい 従来、商用ソフトウェア、もしくは自組織内開発ソフトウェアを利用してきた組織には、オー プンソースソフトウェア導入利用に関して、種々のためらいや誤解があり、導入が阻害されて いる。 具体的には、以下の点が挙げられる。 ・本当に多く利用されているのか? ・どんな OSS があるのか? ・商用ソフトウェアと比較して十分な機能や保守が受けられるのか? ・技術やライセンスなど利用が難しくないのか? 等々である。 2. 様々な分野の OSS 「どのような OSS があるのか?」という疑問を、以下のポータルサイトの例にあるように、 種々分野・カテゴリーの OSS があることを説明する。 引用 URL:http://sourceforge.jp/softwaremap/trove_list.php http://sourceforge.net/softwaremap/trove_list.php?form_cat=576 3. Web Server での OSS 利用 「本当に多く利用されているのか?」という疑問点につき、以下の引用 URL に基づき、受 講生も既知である、Internet 上の Web サーバソフトの利用状況を比較し、Apache の利用 が他の商用サーバソフトに比べて、圧倒的に多いことを例示し、広く、また、受講生が 直接意識せぬ分野で、利用されていることを説明する。 引用 URL: http://news.netcraft.com/archives/web_server_survey.html ・Market Share for Top Servers Across All Domains August 1995 - September 2009 ・Market Share for Top Servers Across the Million Busiest SitesSeptember 2008 September 2009 44 4. 利用導入を阻む要素 組織導入時の代表的な問題(阻害点)は以下の 3 つに大別される。 5. OSS に対する誤解 導入時につまずく点と導入時のポイント 運用時のポイント 今回の講義のまとめ 組織が OSS を導入する際には多種多様な障壁となる点を、具体的に説明した。 受講生には、組織でのソフトウェア導入においては、永続的に利用し運用や保守が大きな考 慮要因である事を強調する。 次回講義では、今回の問題点(阻害点)について、解決策も含めて考察する。 45 オープンソースソフトウェア入門 -第 10 回- 人的側面からみた問題点(課題点) 46 まず、OSS が利用されるようになってきた背景から生じる、 「OSS のパラダイム」というべき点を 説明し、前回講義で列挙した導入を阻む種々の点につき、商用ソフトウェア導入・利用と対比しつ つ、その解決策・対応策について考察する。 1. OSSのパラダイム 前回講義で提示した、誤解や阻害点に対する回答・対策案を考察する前に、 「OSS のパラダ イム」とでもいうべき以下の点について説明する。 需要適合の原則 製品ソフトウェアと異なり、OSS ではマーケッティング戦略要素が排除さ れ利用者の需要が直接的にソフトウェアに反映されやすい傾向にある。その 結果、多くの人が利用する機能ほど、よりはやく、改良・改善が行われる。 これは、機能の問題だけではなく、安定性についても同様にいえる。 陳腐化の原則 上記の「需要適合の原則」から派生したものであり、開発者・利用者が増え るに従って驚異的なスピードで改良・発展が進む。よって、利用するには、 書籍やインターネットでの情報取得のみならず、得られた情報の新鮮度に注 意する必要がある。 早期公開の原則 実験的な機能でもどんどん公開されるという特徴がある。これは、どんな実 験的な機能でも多くのユーザに利用してもらうことで、品質を向上させたり、 機能に対するリクエストを受け付けやすくするためである。 実験的な機能はやはり、安定性に欠ける場合が多々あるので、自分が利用し ようとする機能について、確認する必要がある。 善意の原則 OSS の多くはもともと無償公開を目的として作られている。そのため、開 発・管理・保守はインターネット上のコミュニティで、非営利で行われてい る場合が多い。コミュニティに参加する人は基本的に善意に基づいて活動し ているのであり、利用・質問を行う際にもこれを忘れてはならない。 協調の原則 製品ソフトウェアと異なり、OSS では独自仕様や他製品の排除を目的とし た排他的な仕様となることは少なく、寧ろ、標準仕様にのっとって実装され ることが多い。これにより、他ソフトウェアとの連係動作等が容易に行える。 47 OSS 優先の原則 OSS 作成者の多くが、OSS のパラダイムを理解しており、OSS と製品のど ちらかでも選択できる場合には常に OSS を利用する傾向がある。 これは、OSS を利用する場合には、元来の開発プラットフォームに近い環 境で利用した方が、安定性や情報入手の観点からいっても好ましい。 部品の原則 OSS は、システム全体ではなくそれ自身が独立した部品として機能する。 また、OSS が他の OSS を部品として利用するケースも多々あり、ある OSS を利用する場合には、他の OSS が必要な場合も多々発生する。 2. 導入を阻む点の解決 前回講義で列挙した、導入・運用・利用を阻む点は以下の様な点がある。 ・誤解 ・導入時につまずく点 ・業者選定 ・スキルのミスマッチ これらの解消策は種々あるが、1.で述べた OSS のパラダイムに照合して考察すると以下の様 にまとめられる。 ・ソフトウェアで実現したい事を正確に把握しているか。 ・導入するソフトウェアが、要求される機能をもっているか、正確にかつ鮮度の良い情報を 入手し確認する。 ・導入、運用時の障害については、上で得られた情報に従って正確に一段階ずつ行う。それ でも不具合が発生する場合には、コミュニティへの質問や、サポート業者の支援を仰ぐ。 但し、その支援を理解し実行する技術力は自組織に要求される。 ・OSS も製品(商用)ソフトウェア導入運用と、同様の手順を踏んで行う。 換言すれば、従来ベンダーに全て対価を払って任せていた作業を、自組織内での自助努力 や、一部コミュニティやサポートベンダーの支援を得て解決する必要がある。 3. まとめ 今回は、導入/利用を阻む点の対処を提示した。 基本的には、OSS 固有の問題ではなく、商用ソフトウェアでも同様な問題が潜在する。 解決するには、講義中に示した、商用ソフトからのパラダイムシフトを行い、 「OSS の考え を正しく理解すること」が重要である。 4. 今講義回参考引用文献 48 濱野 賢一朗、鈴木 友峰 :オープンソースソフトウェアの本当の使い方 技術評論社、ISBN 978-4-7741-3086-6 恒川 裕康: オープンソースでメシが食えるか!?―成功するシステム構築のための OSS 活用術 秀和システム、ISBN 978-4-7980-2136-2 49 オープンソースソフトウェア入門 -第 11 回- ライセンス・知的財産権(1) 50 今回から最終回まで、オープンソースソフトウェアのライセンスについて説明する。 本講義回では、ソフトウェアが著作権法で保護される著作物であることから、オープンソースソフ トウェアのライセンスの導入部分まで説明する。 1. IP(知的財産権)とは IP(知的財産権)とは、形の無いものに関して財産権も認める法律である。 大きく 3 つに分けられ、 (1)産業財産権(特許権・実用新案権・意匠権・商標権) (2)著作権 (3)その他(回線配置利用権、育成者権 など) などからなる。 これについて、受講生に身近な例を用いて説明する。 また、 「国によって法律の対象範囲や解釈が異なり、本講義は日本国での考えを説明する」こ とも強調する。 2. プログラム:著作権法で保護される著作物 コンピュータのプログラムが、映画・音楽・本・書籍などと同様に、「著作権法で保護される 著作物である」ことを理解させる。 また、これにより、著作権に含まれる権利(①~③)がコンピュータプログラムにも適用され る。これらの権利を、書籍や音楽などを例にして説明する。 ① 複製権 ② 公衆放送権、頒布権、譲渡権、翻訳権等 ③ 二次的著作物の利用に関する原著作者の権利、など 3. ソフトウェアライセンス:著作権法では ソフトウェアのライセンスとは、 「著作物の利用の許諾」(著作権法 第 63 条) 「著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる」 であり、 その許諾に係わる利用方法及び条件(同条 2 項)がライセンス条文 「前項の許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲において、その許諾に係 る著作物を利用することができる」 であることを、以下の講義スライド図表 11-1 を用いて説明する。 51 著作権者によるソフトウェア利用(複製・配布・改変)許可 作者が権利をもつ部分 ソフトウエア ライセンス 自由に利用できる 制約 許可を受けた 範囲で使える 自由に利用できる 利用可能範囲変更 図表 11-1 ソフトウェアライセンスの範囲 ソフトウェアライセンスとは、著作権者がもつ権利であり、その著作物(ソフトウェア)の 利用可能範囲を指定変更するものであると、定義づけられる。 4. プログラム(著作物)利用と使用 通常の会話では特に意識せずに用いている「利用と使用」の違いを、著作物について説明する。 ・利用(exploit) 複製や公衆放送等著作権等の支分権*に基づく行為 ・使用(use) 著作物を見る、聞く等の様な単なる著作物の享受 * 権利の束で構成されている権利の1つ1つの権利のこと 理解を助けるため、具体例として、書籍、音楽などを含んだ例を図表 11-2 に示す。 また、商用パッケージと OSS の使用と利用についても図表 11-2 に示す。 52 図表 11-2 著作物での利用と使用の違い 使用 ー 支分権 利用(著作権者の権利) 複製機 翻訳権 公衆送信権 著作物 本・書籍 本を読む 複写 翻訳 出版 音楽 聞く、 口ずさむ CD製作 編曲 TV放送 プログラム バイナリを実 行する ソース 複製 改造・改変 商用パッケージ 使用許諾書 5. ソース非開示にして禁止 自由 OSS 再頒布 利用許諾書 オープンソースライセンスの位置づけ ここまでの説明により、オープンソースソフトウェアといえども、「単に自由に使える」もの ではなく、著作権者の定めたオープンソースライセンスにしたがって「使用」される。 ライセンスに従わないと、係争にいたる可能性もある。 商用ソフトウェアライセンスと対比すると、以下の違いがある。 (1)OSS ライセンス ・ソフトウェアの直接頒布を受けたユーザは、ライセンス不要で使用できる。 ・利用については、 「OSS ライセンス」に従う。 (2)商用ライセンス ・ユーザは、プログラム使用権を得るためにライセンスを購入する。 ・第 3 者への再頒布については、商行為としての契約違反となる。 6. OSS ライセンスの概要 以下、OSS ライセンスの分類並びに、典型的な OSS ライセンスの特徴について記す。 6.1 OSS ライセンスのポイント OSS ライセンスを考える場合のポイントは次の通りである。 6.2 無保証 コピーレフト条項を持つ場合がある 2つ以上のライセンスで運用されることがある ライセンス以外の条件で制約されることがある 特許条項、商標についてはライセンスにより取り扱いがことなる ソースコードとバイナリコードの配布条件は異なる場合がある OSS ライセンス分類-ソース配布の観点 53 「オープンソースソフトウェア」という用語から想定される「ソースコード」の配布につ いては、以下の2つに分類される。 (1) バイナリコード配布時にソースコード配布を強制する。 互恵(reciprocal)なライセンス (2) ソースコード配布を禁止しないが、強制ではない。 寛容(permissive)なライセンス 6.3 OSS ライセンス分類-中分類 次の 3 通りの分類が考えられるが、より詳細な分類は次回講義で行う。 (1)バイナリのみ配布可能か (2)二次著作物に対してのソースコード開示強制 (3)二次著作物のリバースエンジニアリング許可 6.4 OSS ライセンスの取り扱い 定義は第 1 回講義資料を参照されたい。 現在の OSI に基づく定義によれば、70 種類以上が存在する。 OSS のライセンスの考えの源は GPL(GNU Public License)である。 (第 2 回講義資料 参照) 6.5 コピーレフトとは GPL も含め今後の説明に頻出する GNU のコピーレフトについて説明する。 コピーレフトとは、著作権を保持したまま、二次的著作物も含めて、すべての者が著 作物を利用・再配布・改変できなければならないという考え方である。その定義を以 下に述べる。 著作物の利用、コピー、再配布、翻案を制限しない 改変したもの(二次的著作物)の再配布を制限しない 二次的著作物の利用、コピー、再配布、翻案を制限してはならない コピー、再配布の際には、その後の利用と翻案に制限が無いよう、全ての情報を 含める必要がある(ソフトウェアではソースコード含む) 利用、コピー、再配布、翻案のいずれにおいても、複製物又は二次的著作物にコ ピーレフトのライセンスを適用し、これを明記しなければならない 7. 今回のまとめ 今回の講義では、次の項目について説明した。 ソフトウェアライセンスが著作権法の対象である。 54 著作物に対する「利用と使用」の意味づけがことなる。 OSS ライセンスとは、何処までが利用許容範囲かを定めるものである。 OSS といえどもライセンス遵守の必要があり、違反した場合には法的な係争もあ りえる。 OSS のライセンスは、OSI 分類に従うと 70 種類以上が存在する。 OSS ライセンスの考えの源は GPL(GNU Public License)である。 Copyleft の定義について説明した。 受講生への留意点として以下のことを説明する。 「日本語訳条文も示すが、あくまでも参考訳であり英語の条文が正式なライセン ス条文である」 55 オープンソースソフトウェア入門 -第 12 回- ライセンス・知的財産権(2) 56 今回は、典型的なオープンソースソフトウェアライセンスについて、その分類観点に基づく比較 や、著名なライセンスの特徴について説明する。 1. OSS ライセンスの分類 OSS ライセンスの種類は多く、これまでいくつかの観点から分類がなされてきている。 ここでは、これまでの生物分類と同様な従来の OSI による分類ではなく、ライセンスありき で新たな OSI の分類がなされてきている状況を説明する。 換言すると、OSI の分類が先に存在したのではなく、各種ライセンスが先に存在しそれを新 たに OSI が分類したという事である。 1.1 OSS ライセンス種類(70 種類超) 従来の OSI による分類(生物分類と同様)ではうまくライセンスを分類できなくなり、新た に OSI が分類した結果を以下に示す。 URL:(カテゴリー別分類)http://opensource.org/licenses/category ・ポピュラーまたは有力なコミュニティのライセンス ・特殊用途のライセンス ・その他雑多なライセンス ・不要になったライセンス ・再利用不可能なライセンス ・取って代わられたライセンス ・自主的に廃棄されたライセンス ・カテゴライズされないライセンス 日本語訳(参考役) ・http://sourceforge.jp/projects/opensource/wiki/licenses 1.2 参照 分類の必要性と考慮点 1.1 で記した OSI による分類は網羅性においては優れているが、使い易さを考慮して、以 下の基準でカテゴリー分けをした。 考慮点 ・自分が使用 ・自分のシステムに組み込む 分類の観点 ①ソースコード開示(OSS 自身+GPL 利用プログラム) ②ライセンス伝播性の強さ リバースエンジニアリングの可否(LGPL 利用時) ③ドキュメント記載の必要性(バイナリィ配布のみの場合) 57 1.3 類型による分類 前節の分類基準により OSS ライセンスを類型化すると、以下の4つのカテゴリーに分類で きる。 (1)BSD タイプ Berkeley Software Distribution License とこれに似た OSS ライセンス類 BSD License、MIT License、Apache License、etc. (2)MPL タイプ Mozilla Public License とこれに似た OSS ライセンス類 MPL、Common Public License(CPL) 、Eclipse Public License(EPL) 、etc. (3)LGPL タイプ GNU Lesser General Public License とこれに似た OSS ライセンス類 LGPL、etc. (4)GPL タイプ GNU General Public License とこれに似た OSS ライセンス群 GPL、GNU Affero General Public License(Affero GPL) 、etc. 下記の図表は、1.2 での分類の観点から分類したものである。 ライセンス タイプ BSD OSS 自身 その他の扱い バイナリコードのみ ソース開示しない場合には、著作権表 の配布許可 示、ライセンス条文の掲載を要求③ MPL バイナリコードのみ 2次的著作物とみなされる利用プログ LGPL の配布不可ソースコ ラムには、リバースエンジニアリング ードの開示要求 ①Copyleft GPL を要求② 2次的著作物とみなされる利用プログ ラムにもソースコードの開示要求 ①Copyleft 注 図表内での①~③は、1.2 節の分類の観点の各番号に対応する 58 1.4 Copyleft に注目した詳細分類 前回講義で説明した、Copyleft に注目した詳細分類を以下の図表に示す。 2. OSS ライセンス 2.1 デュアルライセンス 著作権者が、複数のライセンスを提示して、利用者に選択させる方法である。 ライセンス文書の内容を変えることなく、条件に幅を持たせることができる。 例: MySQL (GPL+商用ライセンス) Firefox(MPL+GPL+LGPL) 2.2 修正 BSD ライセンス 以下の特徴を持つライセンスである。 (1)ソースコード形式であれバイナリ形式であれ、変更の有無にかかわらず、以下の条 件を満たす限りにおいて、再配布および使用を許可する ①ソースコード形式で再配布する場合、上記著作権表示、本条件書および第 2 項の責 任限定規定を必ず含める ②バイナリ形式で再配布する場合、上記著作権表示、本条件書および下記責任限定規 定を、配布物とともに提供される文書および/または他の資料に必ず含める (2)本ソフトウェアは無保証である。自己責任で使用する (3)著作権者の名前を、広告や宣伝に勝手に使用しない 59 2.3 MPL(Mozilla Public License)とその特長 OSI で承認されているオープンソースライセンスの一つで、主に Firefox、Thunderbird などの Mozilla 製品などで使用されている MPL は次のような特徴を持つ。 修正 BSD ライセンスより強力な内容 配布時には、著作権表示と免責条項を含める限定的なコピーレフト条項を持つ(追 加モジュールは対象外) 特許条項:ソフトウェア特許が含まれる場合には、明示すると共に利用許可を与 える 2.4 Apache ライセンス 2.0 とその特長 Apache ライセンス 2.0 は 2004 年 1 月に ASF が承認したもので、次の特徴を持つ。 修正 BSD ライセンスと同内容 配布時には、著作権表示と免責条項を含める コピーレフト条項なし Apache の名称を広告やソフトウェア名として許可なく使用しない 特許条項:対象ソフトウェアを利用する場合に限り、含まれる特許も自由に利用 できる 2.5 強力なコミュニティが採用(Apache Foundation) GNU 系共通の特徴 GNU 系ライセンスは、以下の 4 つの自由を守る事を目指すことを共通の目標としている特 徴がある。 使用(実行)の自由 (ソースコードの)改変の自由 (ソースコードの)再頒布の自由 (ソースコード改変点の)公表の自由 詳細は以下の URL 参照 http://www.gnu.org/philosophy/free-sw.ja.html 2.6 GPL2.0/LGPL2.1 の特長 GPL2.0/LGPL2.1 の特長は次に述べる通りである。 配布時には、著作権表示と免責条項を含める コピーレフト条項を持つ 修正 BSD ライセンス、MPL より強力な内容 特許条項:ソフトウェア特許の受け入れを認めるものではなく、問題がおきたら ソフトウェアの利用許諾を停止する 60 2.7 GPL3.0/LGPL3.0 の特長 GPL3.0/LGPL3.0 の特長は次に述べる通りである。 修正 BSD ライセンス、MPL より強力な内容 配布時には、著作権表示と免責条項を含める コピーレフト条項を持つ DRM を用いた配布制限の禁止 特許条項:Apache ライセンスや MPL と互換性を持つ そのために、GPL2/LGPL2.1 と完全互換ではない DRM:Digital Rights Management 2.8 AGPL3.0(Affero General Public License3.0)の特徴 AGPL3.0 の特徴は次の通りである。 修正 BSD ライセンス、MPL より強力な内容 配布時には、著作権表示と免責条項を含める コピーレフト条項を持つ Web サービスとしての提供時に、コピーレフトの対象 DRM を用いた配布制限の禁止 特許条項:Apache ライセンスや MPL と互換性を持つ 3.まとめ 今回は、具体的な著名なライセンスを以下の観点や、Copyleft の観点から分類し、特徴を説明 した。 ①ソースコード開示(OSS 自身+GPL 利用プログラム) ②ライセンス伝播性の強さリバースエンジニアリングの可否(LGPL 利用時) ③ドキュメント記載の必要性(バイナリィ配布のみの場合) 61 オープンソースソフトウェア入門 -第 13 回- ライセンス・知的財産権(3) 62 今回は、 「開発目的利用でのオープンソースライセンス」と 「Creative Commons」の考えの導入 部分を説明する。前回までは、使用する立場からのライセンスを考察してきたが、今回は作成した (作成する)ソフトウェアにライセンスを適用する立場から考察する。 また、本講義資料公開にあたっても適用され、ソフトウェアに限らず適用されることの多い、 「Creative Commons」について説明する。 1. 開発目的利用とライセンス 1.1 概要 ソフトウェア開発目的で OSS を利用する場合の考慮点を説明する。 (1)ライセンス条文以前に固有条件が、そのソフトウェアに無いか、確認する必要がある。 固有条件とは、ライセンス条文適用前の例外条件や、条文以前に選択肢が無いかの確 認を指す。 (2)ライセンス条文を確認する。 チェック優先順位は以下の通りである。 OSS ごとの固有条件>ライセンス条文>ライセンスの分類の説明 1.2 OSS 開発とライセンス (1)開発ソフトウェアにライセンスを適用するには、次の項目に留意する。 目的の明確化 ライセンス選択 連携するソフトウェアのライセンスは コピーレフト条項を盛り込みたいか 用途に適したライセンスか 幅広く使われているライセンスか ライセンス文書の用意 ソースコードのヘッダコメントの用意 ライセンスファイルの用意 配布準備 (2)他の OSS と連携、一部分として動作する場合には次の項目に留意する。 例えば、Linux ディストリビューションの一部として配布する場合は、次のように行う。 修正したソフトウェアのライセンスを決める 独自ソフトウェアのライセンスを決める 修正しないソフトウェアは、元のライセンスのまま 全体のライセンスは適用しない 63 2. Creative Commons 2.1 背景と基本的な考え インターネットの普及により、ネットワーク上の情報が多くなり、これら情報のライセンス や知的財産権の問題を解決する必要がある。 このようなインターネット上で扱う情報に関し、法的手段を利用して情報の創造、流通、検 索の便宜をはかる非営利団体が Creative Commons である。「クリエイティブ・コモンズ」 (Creative Commons)は米国の憲法学者 Lawrence Lessig 教授などが中心になって運営さ れているプロジェクトである。 「クリエイティブ・コモンズ」では,知的財産権によるコント ロールを意図的に制限し残りの部分を「コモンズ(共有地)」に置くことによって様々な創 造的活動を支援できると考えている。 「クリエイティブ・コモンズ」の活動としては多くのプロジェクトがある。 本講義の目的に併せて、以下の 2 つのプロジェクトについて説明する。 (1)「ライセンスプロジェクト」 (2)「国際的なコモンズ」 「ライセンスプロジェクト」が用意するライセンス・ツールのうち「Legal Code」と呼 ばれる部分を各国の法律事情等に合わせて「ポーティング」を行う活動である。 2.2 ライセンスプロジェクト 著作物をクリエイティブ・コモンズのライセンスの下で提供するというのは、自分の著作権 を放棄することを意味するわけではなく、権利のうちいくつかを、或る条件の下でのみ、 作 品を受け取る人に対して与えるという意味である。 ライセンスプロジェクトでは「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCL)」と呼ばれる 一連ライセンス(利用許諾条項)を公開している。著作権者は、以下に示す 4 つの「ライセン ス・オプション」の組み合わせによって権利範囲を設定できるようになっている。 以下に、各ライセンスオプション、それを表示するアイコン、内容を記す。 2.2.1 帰属(Attribution, by): ライセンスの許諾者は、他の人々がこの著作物を複製、頒布、展示、実演することを許諾 する。ライセンスの受諾者は、原著作者のクレジットを表示せねばならない。 2.2.2 非営利(Noncommercial, nc) : 64 ライセンスの許諾者は、他の人々がこの著作物を複製、頒布、展示、実演することを許諾 する。ライセンスの受諾者は、ライセンスの許諾者から別途承諾を受けない限り、この著 作物を営利目的で利用してはならない。 2.2.3 派生禁止(No Derivative Works, nd) : ライセンスの許諾者は、他の人々に、この作品の全く変更を加えていないコピーのみ、複 製、頒布、展示、実演することを許諾する。この作品に基づく二次的著作物は複製、頒布、 展示、実演でない。 2.2.4 同一条件許諾(Share Alike, sa): ライセンスの許諾者は、この作品がライセンスされているのと同じライセンス条件の下で のみ、二次的著作物を頒布することを他の人々に許諾する。 2.3 ライセンス・オプションの組み合わせ 以下の 6 種類の組み合わせが可能である。 帰属(Attribution, by) 帰属 -- 派生禁止(Attribution-NoDerivs, by-nd) 帰属 -- 非営利 -- 派生禁止(Attribution-NonCommercial-NoDerivs, by-nd-nc) 帰属 -- 非営利(Attribution-NonCommercial, by-nc) 帰属 -- 非営利 -- 同一条件許諾(Attribution-NonCommercial-ShareAlike, by-nc-sa) 帰属 -- 同一条件許諾(Attribution-ShareAlike, by-sa) 「派生禁止」と「同一条件許諾」は同時に選択できず、「帰属」は全てのオプションの 組み合わせで必須となっている。 2.4 ライセンスコード ライセンスプロジェクトでは以上の権利の組み合わせを分かりやすく選択できるように するための Web アプリケーションを公開している。 このアプリケーションで条件を選択し得られた文言(コード)を著作物に添付すれば完了 する。CCL が提供する「コード」は以下に示す 3 つの部分で構成されている。 (1)コモンズ証(Commons Deed): 関連するアイコンを備え、ライセンスの内容を簡潔に、分かりやすく要約したもの。 (2)法的条項(Legal Code): 法的に有効な形で示されるライセンス条項であり。通常はコモンズ証からリンクを張 ることで両者を関連付けている。 (3)ディジタル・コード(Digital Code): コンピュータで処理しやすい形で表現されたメタデータであり、メタデータの表現と 65 しては RDF(Resource Description Framework)が用いられる。サーチエンジンや 他のアプリケーションが作品を利用方法によって識別できるようにした、 機械可読に なったライセンス表示。 2.5 権利のフルセット CCL で提供されるライセンス・オプションの組み合わせは全部で 6 通りだが、全てのオプシ ョンで共通な条件がある。 まず大前提として以下の権利は CCL が定める全てのライセンス・オプションによっても侵害 されない。 著作(権)者による著作権の保持 利用者によるフェアユース(公正な使用)、ファーストセル(最初の頒布で消尽する権 利)、表現の自由の権利 また利用者は著作(権)者に対して以下の条件を要求される。 著作(権)者が定めた制限を超える利用(営利目的利用,二次的著作物など)をす る場合には著作(権)者による許可が必要 著作物の全てのコピーについてどんな著作(権)者表示も損なわず保持する 著作物のコピーから著作(権)者のライセンスにリンクする ライセンスの条件を変更しない 利用者の正当な利用を制限する技術を使わない 逆に利用者は上記の条件に従って利用する限り以下の許可が与えられる。 著作物を複製すること 著作物およびその複製を頒布すること 公の場で展示・実演すること 公の場での展示・実演をデジタル公演(例えばインターネット上で放送)すること 逐語的コピーとして著作物を別のフォーマットに移すこと 以上述べた権利のフルセットは 世界中で適用される。 著作物の著作権の存続期間の間,持続する。 取り消すことはできない。 66 2.6 クリエイティブ・コモンズ・ジャパン 「国際的なコモンズ」に真っ先に参加した国のひとつが日本である。 この取り組みは「クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」を中心に行われ、2004 年 3 月に日 本法準拠版クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(日本版 CCL)の公開が行われた。 日本版 CCL はできるだけオリジナルの CCL に沿う形で実装が進められてきたが、日米の 法事情の違いもあって完全に同じというわけではない。 2.7 人格権 日本の著作権法には「著作者人格権」および「実演家人格権」というものがある(これらを引 っくるめて「人格権」と呼ぶ)。人格権は譲渡不可能な権利で著作物に対し公表権、氏名表示 権、同一性保持権(実演家人格権は氏名表示権、同一性保持権)を有する。 日本版 CCL では、人格権の不行使が明言されることになっている。ただし著作者の名誉・声 望を害するような利用については二次的著作物に含めないとしているので、このような利用で あれば差し止められる可能性がある。 著作隣接権者への配慮 フェアユースを権利制限へ変更 準拠法を日本法と明示 「集合著作物」を廃止し「編集著作物」および「データベースの著作物」に変更 受領者へのライセンス条文を整理 前文に弁護士法に反しないことを明記 3.まとめ ・開発者として OSS を利用する場合の注意点 ・今後、ライセンスの新しい形態として理解が必要なクリエイティブコモンズについてその 考え方の入門部分を説明 67 本講義参考書籍: 1. 濱野 賢一朗、鈴木 友峰 :オープンソースソフトウェアの本当の使い方 技術評論社、ISBN 978-4-7741-3086-6 2. 吉田 智子:オープンソースの逆襲 株式会社出版文化社、ISBN 978-4-88338-368-9 3. 秋本 芳伸 、岡田 泰子:オープンソースを理解する ディーアート、ISBN 978-4-8864-8719-3 4. 恒川 裕康:オープンソースでメシが食えるか!?―成功するシステム構築のための OSS 活 用術 秀和システム、ISBN 978-4-7980-2136-2 5. Steven Weber (著)、 山形 浩生 (訳)、守岡 桜 (訳):オープンソースの成功―政治学者が 分析するコミュニティの可能性 毎日コミュニケーションズ、ISBN 978-4-8399-1658-9 6. 可知 豊、鎌滝 雅久:オープンソースでビジネスが変わる 加速するオープンソースのビ ジネス利用 毎日コミュニケーションズ、ISBN 978-4-8399-2345-7 7. Eric Steven Raymond (著)、山形 浩生 (訳):伽藍とバザール―オープンソース・ソフト Linux マニフェスト 光芒社、ISBN 978-4-89542-168-6 8. Bernard Golden (著)、武藤 健志 (訳)、トップスタジオ (訳): オープンソース成熟モデル―オープンソースソフトウェアとプロジェクトの実践的評価 毎日コミュニケーションズ、ISBN 978-4-8399-1713-5 9. Neil Randall (著)、村井 純 (訳)、村井 佳世子 (訳)、田中 りゅう (訳): インターネットヒストリー―オープンソース革命の起源 オーム社、ISBN 978-4-9009-0092-3 10. Richard M. Stallman (著)、長尾 高弘 (訳): フリーソフトウェアと自由な社会 ―Richard M. Stallman エッセイ集 アスキー、ISBN 978-4-7561-4281-8 11. Chris DiBona (著)、Mark Stone (著)、Sam Ockman (著)、倉骨 彰 (訳): オープンソースソフトウェア―彼らはいかにしてビジネススタンダードになったのか オライリー・ジャパン、ISBN 978-4-9009-0095-0 12. 可知 豊 :ソフトウェアライセンスの基礎知識 ソフトバンククリエイティブ、ISBN 978-4-7973-4736-4 13. Karl Fogel (著)、高木 正弘 (訳)、高岡 芳成 (訳): オープンソースソフトウェアの育て方 オライリー・ジャパン、ISBN 978-4-8731-1412-5 68 本資料は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA) 「2008 年度オープンソフトウェア利用促進事 業」の一環で、株式会社サイバー創研と学校法人津田塾大学が受託し、実施した「OSS モデルカ リキュラム導入実証」の講義に基づき、株式会社サイバー創研が作成したものです。 この著作物は「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス 表示 2.1 日本」により、株式会社サイ バー創研から利用許諾されています。 詳しい利用許諾条項は、http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/legalcode をご覧下さい。