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社会科授業の理論と実際 ーデューイの社会認識論ー

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社会科授業の理論と実際 ーデューイの社会認識論ー
社会科授業の理論と実際
授
ーデューイの社会認識論ー
発表日:2011年1月14日(金)
発表者 M104105 河村哲太
発表者:M104105
○発表構成
1、本発表の目的と方法
2 デ
2、デューイの社会認識論
イの社会認識論
3、デューイの社会認識論の実際
-水害と市政-
4 デューイの社会認識論の可能性
4、デュ
イの社会認識論の可能性
1、本発表の目的と方法
(目的)
社会科授業の根底にあるデュ イの社会認識
社会科授業の根底にあるデューイの社会認識
論を明らかにし、それが授業の中でどのように
実際として表れているかを明らかにする。
実際として表れているかを明らかにする
(方法)
①デューイの社会認識論を明らかにする
②授業 実際
②授業の実際にどのように表出しているかを
よう 表出
る を
示す
2、デューイの社会認識論(1)
、
社 認識論
取り上げた解説書
(取り上げた解説書)
山田英世 『人と思想 JJ.デューイ』
デ
イ』
1967年 清水書院
(選考理由)
様々な分野の研究を行っているデュ イの解
様々な分野の研究を行っているデューイの解
説書は多く、その中で、一通りの分野を扱って
いる本書を取り上げた。
る本書を り上げた
2、デューイの社会認識論(2)
、
社 認識論
経験
・人間が生きていくこととは?
→自分を取り巻く環境にはたらきかける行動
自分を取り巻く環境にはたらきかける行動
によって自分を常に作り変えていくこと
→そのために、人間はさまざまな社会的な経
験を更新し 経験を持続していく
験を更新し、経験を持続していく
・では、どのように経験を更新していくのか?
2、デューイの社会認識論(3)
、
社 認識論
創造的知性(1)不安定状態
・私たちは普通、習慣に埋もれ、日常生活は習
慣の連続である。
慣の連続である
→しかし、一度習慣に反することが生じれば不
安定状態に陥る
(例)
自分のノートパソコンで授業の発表準備をしよ
うとしたら電源がつかない
→授業準備ができない不安定状態へ
2、デューイの社会認識論(4)
、
社 認識論
創造的知性(2)衝動
・人は不安定状態に陥ると、そこから回復しよ
うとし 安定状態に戻ろうとする衝動を生ずる
うとし、安定状態に戻ろうとする衝動を生ずる
(例)
なんとかいつものように発表準備のできる状
況をつくろうとする
2、デューイの社会認識論(5)
、
社 認識論
創造的知性(3)知性
・生じた問題を解決するために、反省的に吟味
し・知性を駆使し(=創造的知性) 安定状態
し・知性を駆使し(=創造的知性)、安定状態
へと戻ろうとする
(例)
ノートパソコンの故障の原因が、外的な衝撃か
らではないかという吟味とパ
らではないかという吟味とパソコン自体の不具
ン自体の不具
合かを考え、その推測に即した解決を試み、
解決を図る
2、デューイの社会認識論(6)
、
社 認識論
探究の論理
・習慣→衝動→知性という意識の動きは、心
理過程の 般的な形である
理過程の一般的な形である
↓(形式的に分析すると)
・①不安定状態→②問題設定→③仮説→④
推論 ⑤実験 ⑥保証された命題
推論→⑤実験→⑥保証された命題
=探究の論理
2、デューイの社会認識論(7)
、
社 認識論
探究の論理と問題解決学習
・不安定状態から、問題を設定し、創造的知性
不安定状態から 問題を設定し 創造的知性
によって解決を図り、答えを出す
→これを学習場面に取り入れたのが、問題
解決学習である
2、デューイの社会認識論(8)
、
社 認識論
問題解決学習
①実際的な
経験的事態
学習は興味ある具体的活動に従事するこ
とから始まる
②問題の感得
①の段階でおきる問題が思考の刺激とな
る
③事実の観察と
資料の収集
問題を見定め解決するに必要な資料を集
める
④仮説の構成
解決の暗示を、事実や資料によって秩序
解決の暗示を
事実や資料によって秩序
づけ仮説を立てる
⑤仮説の吟味
観念や仮説を実際的行動に適用にして、
その真偽を吟味する
2、デューイの社会認識論(9)
、
社 認識論
問題解決学習における教師
・問題解決学習は、子どもたちの生活上の不
安定状態から出発し その解決によ て構成
安定状態から出発し、その解決によって構成
される
→このとき教師は、ただ子どもたちに好き勝手
に問題 アプ
に問題へアプローチさせるのではなく、問題
チさせるのではなく、問題
解決の要求を整理し、系統づけ、その解決
のための方法 手段を探究させる
のための方法・手段を探究させる
2、デューイの社会認識論(10)
、
社 認識論
問題解決学習における子ども
・問題解決学習において子どもたちは、5つの
問題解決学習において子どもたちは 5つの
段階において問題解決を図る。
→その過程において、知識と目的に即した
合理的な解決策を導く方法を身に付ける
2、デューイの社会認識論(11)
、
社 認識論
知識
・デューイによれば、知識は、問題解決の手段
であり 問題解決の探究過程において自然
であり、問題解決の探究過程において自然
と身に付けるものである
→知識は、問題解決の中に存在するものであ
り、子 もたちの中で組織 けられて く
り、子どもたちの中で組織づけられていく
=主体的知識
2、デューイの社会認識論(12)
、
社 認識論
デューイの社会認識論
・デューイの社会認識論
記憶しているだけの知識ではなく 問題解決
記憶しているだけの知識ではなく、問題解決
学習の探究過程における主体的知識の形
成によ て社会がわかる
成によって社会がわかる
・では、実際の授業ではどのようにこの社会認
識論が表出しているか?
3、デューイの社会認識論の実際(1)
、
社 認識論 実際
分析授業の基本情報
○分析対象授業
「水害と市政」
○実践者
吉田定俊
○実施学級 実施年
○実施学級、実施年
熊本大学附属中学校第3学年
1953年
年
3、デューイの社会認識論の実際(2)
、
社 認識論 実際
授業の目標
・日本各地の水害が、政治的、経済的困窮による治山治
水の欠如を主因とした人災である事を、はっきりと意識さ
せる。
せる
・いわゆる水害ブームに躍り上がった階級があり、いっぽう
水害によって瀕死の大打撃をうけた階級があり、その懸
隔はあまりにも大きい。そういった社会的不合理を追及し
よりよき社会体制への道を考えさせる。
・社会の諸事情を科学的な調査や考察の裏づけによって
社会の諸事情を科学的な調査や考察の裏づけによって
客観的に把握し、正しく批判する態度を育てる。
・われわれは何をまずなすべきか、政治の上からも、経済
の上からも あるいは自分たちの身近なところにも考えて
の上からも、あるいは自分たちの身近なところにも考えて
みれば実に多いものである。
3、デューイの社会認識論の実際(3)
、
社 認識論 実際
授業の構成
導入
水害の体験を話し合う
展開
1
水害について、もっとくわしく調べる
展開
2
昔の水防計画についてしらべよう
展開
3
終結
外国の河川の(治山治水)改修はどうか調べ
る
「此後の水防計画」という題でレポートを書く
3、デューイの社会認識論の実際(4)
、
社 認識論 実際
導入(1)
○水害の体験を話し合う
・水害の体験について発表する
水害の体験について発表する
→「早く排土してもらいたい、すべての不公平
をなくして欲しい」など、子どもたちの復興へ
の願いが表面化
→これからの水防政策をどうすればよいか?
3、デューイの社会認識論の実際(5)
、
社 認識論 実際
導入(2)
→その問題を解決するための学習計画
(1)他県と比較しながら 熊本の水害を調べる
(1)他県と比較しながら、熊本の水害を調べる。
(2)過去の水害と水防計画
(3)外国の治山治水はどうか調べる
(4)水害復興対策について考えてみよう
3、デューイの社会認識論の実際(6)
、
社 認識論 実際
展開1 水害についてもっと詳しく調べる
・熊本市における水害の危険性について、4つ
の資料から検討
→上流付近の地盤が阿蘇の火山灰(ヨナ)が
原因で弱く 下流に流れることで 下流の川
原因で弱く、下流に流れることで、下流の川
底が隆起し洪水のリスクを高め、また洪水
の際にも土砂を運んでくるために被害が増
大した
⇔しかし 旧来の護岸では非常に危険であっ
⇔しかし、旧来の護岸では非常に危険であっ
た
3、デューイの社会認識論の実際(7)
、
社 認識論 実際
展開2 昔の水害計画を調べよう
○圭室論文による熊本市における水防計画の歴史に
ついて考察する
・封建時代の水防計画は、武士の住む城下町を守る
ために作られていた
・水防計画は武士の都合で行われ、民衆たちは、要
都
衆
望を叶えてもらえるなどの恩恵には預かれなかっ
た
・現代においても、一部の階級の人達の都合で政治
が動かされて ると ろがあり、意識として封建時
が動かされているところがあり、意識として封建時
代のなごりが残っている
3、デューイの社会認識論の実際(8)
展開3 外国の河川の(治山治水)改修は
どうか調べる
○海外の河川(治山治水)改修について、TVAと黄
河の改修に いて考える
河の改修について考える
・TVAの例
→資源豊かな国だからこそできるために
資源豊かな国だからこそできるために、参
参
考にならないという生徒の意見
・黄河の改修
→より多くの人の上に立った政治を実現する
ことで 不可能と言われた改修も可能である
ことで、不可能と言われた改修も可能である
3、デューイの社会認識論の実際(9)
3
デューイの社会認識論の実際(9)
終結 「此後の水防計画」という題でレポートを書く
○生徒たちが、此後の水防計画について、自
分なりに意見を書く。
分なりに意見を書く
→全体としては、政治においてより多くにの人
が望む政策をすべきであり 国防等にお金
が望む政策をすべきであり、国防等にお金
をかえるより、水防計画や水害の復興にお
金をかけるべき と う論調
金をかけるべき、という論調で、政治の欠陥
政治 欠陥
を指摘しているものが多い
3、デューイの社会認識論の実際(10)
、
社 認識論 実際
分析対象授業と問題解決学習
授業展
開
授業内容
探究過程
導入
水害の体験を話し合う
展開1
水害について、もっとくわしく
調べる
展開2
昔の水防計画についてしら
べよう
①実際的な経験的事態
②問題の感得
③事実の観察と
資料の収集
④仮説の構成
展開3
外国の河川の(治山治水)改
修はどうか調べる
終結
「此後の水防計画」という題
でレポートを書く
3、デューイの社会認識論の実際(11)
、
社 認識論 実際
①実際的な経験的事態の実際
①実際的な経験的事態
学習は興味ある具体的活動 従事する
学習は興味ある具体的活動に従事する
ことから始まる
・・・「水害と市政」においては、授業前の
6・26水害という体験
(水害という不安定状態に陥っている)
3、デューイの社会認識論の実際(12)
、
社 認識論 実際
②問題の感得の実際
②問題の感得
① 段階 おきる問題が思考 刺激と
①の段階でおきる問題が思考の刺激と
なる
・・・「水害と市政」においては、導入部に
おける水害の体験を発表し合い 水害
おける水害の体験を発表し合い、水害
からの復興を望む
(水害という不安定状態からの回復を試
みる衝動)
3、デューイの社会認識論の実際(13)
、
社 認識論 実際
③事実の観察と資料の収集の実際
③事実の観察と資料の収集
問題を見定め解決する 必要な資料を
問題を見定め解決するに必要な資料を
集める
・・・「水害と市政」では、導入部の、「水防
をどうすればよいか」という問題を見定
め、そのための計画を示し、展開1で4
つの資料を示す
3、デューイの社会認識論の実際(14)
、
社 認識論 実際
④仮説の構成の実際
④仮説の構成
解決の暗示を、事実や資料によって秩序づけ仮説を
立てる
・・・「水害と市政」においては
「水害と市政」においては、展開1における熊本市の
展開1における熊本市の
水害の特徴と地理的条件について、展開2における
熊本市の水防の歴史について、展開3において他国
の改修例を考察し、終結で此後の水防計画というレ
ポートを書かせる
(レポートが仮説であり、各展開で事実や資料による解
ポ
決の暗示を秩序づけしている)
3、デューイの社会認識論の実際(15)
、
社 認識論 実際
④仮説の吟味の実際
④仮説の吟味
観念や仮説を実際的行動に適用にして、その真偽を
吟味する
・・「水害と市政」では
「水害と市政」では、該当する箇所はない。
該当する箇所はない
(考えられる理由)
考えられる仮設は 「一部の階級の利益ではなく
考えられる仮設は、「
部の階級の利益ではなく、より
より
多くの人のための政治によって水防の計画は完成する」
というようなもので 実際的な行動による真偽の吟味が
というようなもので、実際的な行動による真偽の吟味が
不可能であるため
3、デューイの社会認識論の実際(16)
、
社 認識論 実際
主体的知識の実際
○「水害と市政」における主な主体的知識
・熊本市の洪水被害は、阿蘇山の火山灰の影
熊本市の洪水被害は 阿蘇山の火山灰の影
響を大きく受けていること
・封建体制下の水防の政策が武士のためのも
ので 民衆にとっては恩恵がなかったこと
ので、民衆にとっては恩恵がなかったこと
・・・これらは、「水害と市政」において、問題解
決のための手段として使われていた。
決のための手段として使われていた
3、デューイの社会認識論の実際(17)
、
社 認識論 実際
社会認識の実際
「熊本市の水防をどうすればよいか」という問
題解決の過程で 熊本市の洪水の特徴や
題解決の過程で、熊本市の洪水の特徴や
熊本市の水防の歴史、そして今も残る封建
的な体制といった主観的知識の形成によっ
て、社会認識がなされている。
4、デューイの社会認識論の可能性
Q、デューイの社会認識論は社会科教育の成
立基盤として成立するか?
A、成立しうる
伊東(1971)によれば 問題解決という学習
伊東(1971)によれば、問題解決という学習
方法によって社会的実践活動と知的認識活
動とが同時的 連続的に形成される これは
動とが同時的・連続的に形成される。これは
社会科教育の目標である「社会認識を通じ
て市民的資質の育成」にも合致するため、
て市民的資質の育成」にも合致するため
成立しうると考える。
5、おわりに
本発表の課題
・「水害と市政」が、デューイの社会認識論に
「水害と市政」が デ
イの社会認識論に
適していたのかが、分析すればするほど疑
問に感じた 社会科において ⑤仮説の吟
問に感じた。社会科において、⑤仮説の吟
味にまで至っている授業を探すべきであっ
たと考える。
たと考える
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