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「大阪市小売商業振興プラン」
大阪市小売商業振興プラン 平成 19 年 3 月 大阪市経済局 1 はじめに 市民の消費生活を支え、地域の祭りや伝統文化を継承するなど、地域コミュニティの中心的な 役割を果たしてきた商店街や小売市場の衰退が指摘されるようになって久しいですが、大阪市内 では、地域特性を巧みに活かし、あるいは様々なアイデアや創意工夫でその活性化に取り組んで いる商店街や小売市場が数多く存在します。 大阪市では、地域経済の活力の源であるこれら商店街や小売市場の意欲的な活動をより効果的 に支援する方策を検討するため、昨年、市内全域の商店街や小売市場を対象に実態調査を行うと ともに、商業者の代表、学識経験者、専門家、関係機関等からなる「小売商業振興プラン策定委 員会」を設置してまいりました。 同委員会では、実態調査の分析結果や大阪市内の小売商業を取り巻く社会環境等を踏まえ種々 の議論を交わし、商店街や小売市場の現状把握、活性化に向けた課題、取り組むべき方向性、実 現したい将来像とそうした動きを促進する本市の支援方策について検討を重ね、今後の中長期的 な小売商業振興の方向性を示す「小売商業振興プラン」を策定いたしました。 本プランでは「商店+街力」という新しいキーワードを生み出しています。個店の魅力を高め、 その集合体として商店街が持つ本来の魅力を発揮し、さらには地域住民等との連携・協働でさま ざまな社会的役割を果たしていく、これからの商店街の実現したい将来像を示すことができたも のと考えております。 本プラン策定にあたり惜しみないご指導を賜りました石原座長、加藤部会長をはじめ委員各位、 関係機関の皆様、パブリックコメントに意見をお寄せいただきました市民の皆様方に厚くお礼申 し上げます。 大阪市では、今後、本プランの実現に向けて主体的に諸活動に取り組む商店街や小売市場を積 極的に支援し、商業者と地域住民、行政がそれぞれの役割を発揮して共に地域経済の活性化やま ちづくりに取り組む環境づくりを進めてまいりますので、関係各方面の皆様方には、より一層の ご理解、ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。 平成 19 年 3 月 大阪市経済局長 葛本恵英 2 ○大阪市小売商業振興プランのとりまとめにあたって 大阪市内には、現在、約 500 の商店街と約 100 の小売市場があり、全国の市町村単位ではも っとも大きな集積を見せています。地域経済を支えるこうした「地域商業」は地域の住民に対 し買い物の利便性を提供することに加え、防犯への取り組み、各種イベントなど地域の賑わい づくり、地域文化の伝承などを通じて地域コミュニティの中心的な役割を担ってきました。 本市では、こうした地域商業が果たす社会的役割を重視し、ハード・ソフトの両面からその 活動を支援しており、 平成 17 年度は年間延べ約 230 の商店街や小売市場がさまざまな支援制度 を利用し一定の成果を挙げるなど、全国でも屈指の支援策を実施しています。 しかし、昨今の地域商業の状況は、商店経営者の高齢化・後継者難、消費動向の変化への対 応の遅れ、大型店や新業態店舗との競合などによって疲弊しており、経営不振店や空き店舗の 増加が目立つなどその衰退が顕著となっています。 本市の支援策においても利用者の固定化とマンネリ化、事業規模の縮小傾向など徐々に課題 も出てきています。また、本市の市政改革の観点から、一般の市民によりわかりやすく理解の 得やすい支援制度の立案と事業執行が求められており、とりわけ支援制度の目的、また支援制 度の中心となる補助金の効果と事業の透明性についても注目が集まっています。 本市では、現在、大阪経済の再生のため、新産業の育成や企業誘致、創業者支援などさまざ まな施策を進めています。商業面では、ここ数年、キタ、ミナミなど都心部の再開発に伴う新 しい商業施設の開業や既存商業集積のリニューアルなどによって、広域から消費者を集める (超)広域型商業が注目を集めています。 しかし、市民の視線でまちの活性化を実感するには、市内の各地域が活力の維持、再生を図 り、市民にとって魅力的で暮らしやすい場所となることが望まれます。地域の活力と商業の活 性化は表裏一体であり、その意味で地域商業の果たす役割の重要性をあらためて認識する時期 となっています。 以上のような市内の商業を取り巻く環境変化や国等の施策動向を見極めつつ、本市では、平 成 18 年 4 月より市内全域における地域商業の実態把握と市民ニーズなどの深掘り調査を実施し、 市内の地域商業が持つポテンシャル、解決すべき課題、今後の可能性などの徹底した分析を行 うとともに、これら調査結果を元に今後の小売商業振興策の検討を行うため、平成 18 年 5 月に は、専門家、有識者や商業者等による「小売商業振興プラン策定委員会」を設置し検討を重ね、 パブリックコメントを経て、このたび、大阪市の新しい小売商業振興プランをまとめました。 ○大阪市小売商業振興プランの対象とする期間 ・ 小売商業振興プランのコンセプトや方向性については、今後の本市の小売商業、とりわけ 地域商業のあり方についての基本的な考え方を示すもので、中・長期的な視点に立ってその 実現に向けて取り組むこととします。 ・ また、振興プランの支援メニュー等の具体的な取り組み内容については、小売商業を取り 巻く環境の変化が激しいことから、事業の有効性について検証を行ないつつ、3~5年を目 処に適宜見直し等を行ない、時代のニーズにあったものへと改めていくこととします。 3 目 次 1.市内小売商業の現状と課題................................................................................................... 1 1-1.市内小売商業の現状 .................................................................................................. 1 1-2.市内の商店街・小売市場が抱える課題 ................................................................... 3 2.社会経済環境の変化 ...............................................................................................................10 3.市政運営を取り巻く環境変化.................................................................................................14 4.商店街に求められる社会的役割 ...........................................................................................15 5.小売商業振興の方向性...........................................................................................................16 5-1.小売商業振興の視点 ..................................................................................................16 5―2.実現したい将来像........................................................................................................18 6.小売商業振興プラン.................................................................................................................20 6-1.小売商業振興プランのコンセプト ..............................................................................20 6-2.小売商業振興プランの方向 .......................................................................................21 6-3.小売商業振興プランの支援メニュー .........................................................................22 小売商業振興プラン策定委員会・作業部会 名簿...................................................................23 4 1.市内小売商業の現状と課題 1-1.市内小売商業の現状 大阪市の小売商業の現状については、以下のように整理されます。 ① 商店数・従業者数の減少が進み、年間販売額も停滞するが売場面積は一貫して 増加 ② キタ、ミナミの都心部への集中化と、周辺区での衰退傾向が顕著 ③ 大型店の巨大化と、大規模小売店舗立地法の対象外の中型店の立地が進展 ① 商店数・従業者数の減少が進み、年間販売額も停滞するが売場面積は一貫して増加 ○ 大阪市の小売業(平成 16 年「商業統計調査」 )は、事業所数 34,707 事業所、従業者数 204,338 人、年間販売額 4 兆 5420 億円、売場面積 298.6 万㎡となっており、事業所数及び従業者数は 平成 11 年以降、減少を続けています。 ○ 一方、年間販売額は微増するなど下げ止まりの傾向も見られますが、売場面積は一貫して 増加していることから、その要因は、大型店・中型店の出店によるものとも考えられ、中小 小売店は依然として、厳しい状況におかれているといえます。 ◆大阪市小売業 事業所数の推移 ◆大阪市小売業 従業者数の推移 1.20 1.20 1.00 1.00 0.80 (48,483) 0.93 (45,087) 1.00 0.88 0.85 0.75 (42,696) 0.97 1.00 0.72 0.80 (218,459) (212,594) 0.95 (206,976) 1.01 (221,343) 0.99 (215,433) (204,338) (41,135) (36,558) 0.60 0.60 (34,707) 0.40 0.40 0.20 0.20 0.00 0.00 H3 H6 H9 H11 H14 H16 H3 ◆大阪市小売業 年間販売額の推移 H6 H9 H11 H14 H16 1.11 1.14 ◆大阪市小売業 売場面積の推移 1.40 1.20 1.00 1.00 0.80 0.94 0.89 0.91 0.87 (56,053億) (49,703億) 1.20 0.81 0.81 1.00 1.00 (50,946億) (48,729億) (45,243億) 0.60 1.04 (2,726,290) (2,610,875) (45,420億) 1.06 1.09 (2,770,808) (2,845,296) (2,895,529) (2,985,971) 0.80 0.40 0.60 0.20 0.40 0.20 0.00 H3 H6 H9 H11 H14 H3 H16 (資料) 「商業統計調査表」 (注) いずれも平成3年の値を1とした指数値。 1 H6 H9 H11 H14 H16 ② キタ、ミナミの都心部での大きな集積と、周辺区での衰退傾向が顕著 ○ 区別には、商店数・従業者数など、北区、中央区など都心部への集積が大きくなっていま す。近年は、大型量販店の出店等の進む北区での販売額の増加が大きくなるとともに、中心 性も高まるなど、キタへの一極集中が進んでいるといえます。 ○ 一方、周辺区では、店舗数や従業者数の減少が大きくなっており、地域商業の空洞化が進 んでいますが、居住人口の増加している区(城東区、東成区、西淀川区)では、一定の回復 傾向も見られます。 ③ 大型店の巨大化と、大規模小売店舗立地法の対象外の中型店の立地が進展 ○ 大型店の出店状況については、平成 12 年の大規模小売店舗立地法施行以降、店舗の巨大化 が進んでおり、平均売場面積は9千㎡を超えて旧大店法時代の3倍以上の値となっています。 ○ 一方、同法の対象外の 1000 ㎡をわずかに下回る規模の中型店の出店も多く見られ、中小小 売業との競合が深刻化しています。 2 1-2.市内の商店街・小売市場が抱える課題 市内の商店街・小売市場が抱える課題について、以下の4点に整理しています。 ①二極化が進む商店街・小売市場 ②中型店・大型店の影響 ③商店街の活動基盤の弱体化 ④地域コミュニティの安全・安心と住民の生活を支える商店街への脱皮 ① 二極化が進む商店街・小売市場 ○ 近隣・地域型商店街(*1)での衰退傾向が大きくなっていますが、広域・超広域型商店街(*2)で は繁盛しているとの回答も一定数あります。とくに衰退傾向が著しいのは近隣・地域型の住 宅地立地の商店街となっています。(*1) (*2)は9頁を参照ください。 ○ 商店街規模が小さいほど衰退傾向が大きくなっています。また、路面型商店街は、商業ビ ル・地下街内等のテナント会型商店街に比べ、衰退傾向が大きくなっています。 ◆「商店街タイプ」と「景況感」の関係 5.4% 商店街計 商店街計(n=446) 12.8% 30.9% 41.5% 8.1% 1.3% 11.1% 0.5% 2.9% 31.9% 近隣型商店街(n=207) 近隣型商店街 10.6% 地域型商店街(n=160) 地域型商店街 0.6% 広域型商店街(n=49) 広域型商店街 5.0% 12.2% 47.8% 25.0% 5.8% 48.8% 22.4% 10.0% 42.9% 12.2% 10.2% 0% 超広域型商店街(n=22) 超広域型商店街 18.2% 18.2% その他(n=8) その他 0% 18.2% 25.0% 36.4% 37.5% 4.5%4.5% 12.5% 25.0% 0% 小売市場(n=92) 小売市場 23.7% 8.6% 25.8% 25.8% 14.0% 2.2% 0% 10% 20% 30% 40% 繁盛している やや衰退している 50% 60% 70% 80% やや繁盛している 衰退している 90% 100% 変わらない 無回答 ○ 商店街、個店の魅力の低下(変化への未対応、品揃えや専門性の不足)により、新規顧客 (新住民など)の獲得が進んでいない状況にあります。 ◆商店街等で買い物する理由 ◆商店街等を利用しない理由 70.0 40.0 62.2 60.0 近隣型 計 近隣型商店街の来街者(n=933) 広域型 計 広域型商店街の来街者(n=271) 53.5 30.0 50.0 25.0 37.3 40.0 33.1 30.0 24.5 21.4 20.0 15.2 12.2 10.0 5.9 16.6 15.7 15.0 17.4 15.5 15.5 13.4 10.5 9.9 15.1 12.1 10.0 8.9 2.7 3.3 4.4 3.0 3.9 5.0 6.2 5.2 2.2 3.83.0 3.8 1.5 8.2 5.7 2.2 3.3 1.72.2 1.00.00.6 1.7 5.5 3.0 3.83.0 大 型 店 等 の ほ う が買 いた い も の が多 い 買 わ ず に出 に く い 接 客 さ れ る の が嫌 店 員 の商 品 知 識 が少 な い 店 員 の接 客 態 度 が悪 い 閉 店 時 間 が早 い お 店 の雰 囲 気 が よ く な い (入 り に く い ) 個 性 的 ・魅 力 的 な 店 が な い 商 品 の値 段 が高 い 3 6.1 よ い商 品 が 少 な い 無回答 そ の他 街 の雰 囲 気 が よ い か ら イ ベ ン ト ・売 出 し が あ る か ら な じ み の店 が あ る か ら 価 格 が安 い か ら 好 み に 合 った ほ し い商 品 が 見 つかる から 品 揃 え が豊 富 で あ る か ら 0.0 34.8 22.1 20.0 24.7 5.5 5.5 接 客 や店 内 の雰 囲 気 が よ い か ら 商 品 の 品 質 ・味 が よ い か ら 便 利 な立 地 にあ る から 0.0 近隣型 計 近隣型商店街の来街者(n=477) 広域型 計 広域型商店街の来街者(n=134) 大型店 大型店の利用者(n=181) 35.0 ○ 消費者アンケートでは商店街で ◆「生鮮三品+惣菜の揃う商店街」と「商店街タイプ」の関係 の購入品目のトップに挙がる「生鮮 食品(肉、青果、魚、惣菜)」を商 店街内(食品スーパー、小売市場を 含む)だけで買い揃えることのでき る商店街は3割程度にとどまって います。 商店街計 商店街計 (n=446) 8.4% 近隣型商店街 近隣型商店街 (n=207) 71.3% 20.4% 12.0% 64.4% 23.6% 地域型商店街 地域型商店街 6.3% (n=160) 20.8% 72.9% 広域型商店街 広域型商店街 6.7% (n=49) 0% 超広域型商店街 超広域型商店街 (n=22) 93.3% 19.0% 9.5% その他 その他 (n=8) 0% 71.4% 16.7% 0% 83.3% 10% 20% 30% 40% 50% 中小小売だけで揃う ○ 空き店舗・仕舞屋(しもたや:廃 商店街計 商店街計 商店街の新陳代謝を阻害する原因 近隣型商店街 な状況にあります。 近隣型商店街 90% 100% 商店街では揃わない 18.1% 78.8% 地域型商店街 地域型商店街 広域型商店街 広域型商店街 16.9% 53.1% (n=49) 超広域型商店街 その他 その他 0% 10% 25.0% 20% 12.5% 8.2% 45.5% 25.0% (n=8) 10.1% 38.8% 50.0% (n=22) 11.2% 11.1% 70.6% (n=160) 超広域型商店街 30% 4.5% 50.0% 40% 50% いずれかあり ○ 空き店舗率は 6.65%、空き地率は 80% 70.7% (n=446) (n=207) よる家主等への働きかけも不十分 70% ◆空き店舗、空き地、仕舞屋の立地状況 業後住居等として使用)の増加が、 となっています。一方で、商店街に 60% スーパーを加えて揃う 60% 70% いずれもなし 80% 90% 100% 無回答 ◆空き店舗率、空き地率、仕舞屋率、総空き店舗等率 0.69%、空き店舗と空き地をあわせ た値は 7.25%となっています。また、 6.65% 空き店舗率 仕舞屋率は 5.37%で、これらをあわ 0.69% 空き地率 せた総空き店舗等率は 11.88%とな っています。 5.37% 仕舞屋率 総空き店舗率 総空き店舗等率 総空き店舗等率 11.88% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 空き店舗率 ※空き店舗率=空き店舗数÷(会員店舗数+空き店舗数) ※空き地率=空き地数÷(会員店舗数+空き地数) ※仕舞屋率=仕舞屋数÷(会員店舗数+仕舞屋数) ※総空き店舗率=(空き店舗数+空き地数+仕舞屋数)÷ (会員店舗数+空き店舗数+空き地数+仕舞屋数) として算出。 4 ○ 「後継者不足」、 「集客力のある核店舗の不足」 、 「個店の経営能力低下」、 「業種構成の不足」 を問題点として指摘する商店街が多くなっています。また、小売市場では「スーパー、大型 店の影響」 、 「駐車場、駐輪場の不足」を指摘する回答が多くなっています。 10.0% 22.7% 22.7% 無回答 4.3% 5.4% そ の他 小売市場(n=92) 54.8% 来 街 者 の 高 齢 化 への 対 応 が 遅 れ て いる 駐 車 場 ・駐 輪 場 が 不 足 し て い る 家 主 ・不 動 産 関 係 業 者 等 と の 関 係 が薄 い 商 店 街 の事 務 局 機 能 が弱 い 商 店 街 活 動 が消 極 的 で あ る 全 体 的 に見 て経 営 力 の弱 い 店 舗 が多 い 21.5% 21.5% 21.5% 集 客 の核 店 舗 が な い 、 あ る い は弱 い 無 無 回答 回 答 そ の 他 市 場 全 体 が 狭 く て 暗 い空 間 に な っ て い る 建 物 の 老 朽 化 が 進 み 、デ ザ イ ン が 陳 腐 化 し て いる 来 街 者 の 高 齢 化 への 対 応 が 遅 れ て い る 駐 車 場 ・駐 輪 場 が 不 足 し て い る 小 売 市 場 の 事 務 局 機 能 が 弱 い 組 合 活 動 が 消 極 的 で あ る 全 体 的 に 見 て 経 営 力 の 弱 い店 舗 が 多 い 集 客 の 核 店 舗 が な い 、あ る い は 弱 い 小 売 市 場 の 業 種 構 成 に 不 足 が あ る 空 き 店 舗 が 増 加 し て い る ス ー パ ー ・大 型 店 の 影 響 で 集 客 力 が低 下 し て いる 後 継 者 が不 足 し て いる 5 商 店 街 の業 種 構 成 に不 足 が あ る 空 き 店 舗 が増 加 し て いる ス ー パ ー ・大 型 店 の影 響 で 集 客 力 が低 下 し て いる 後 継 者 が不 足 し て いる 商 圏 人 口 が 不 足 し て い る 0.0% 38.7% 40.0% (n=22) (n=49) (n=160) (n=207) 超広域型商店街 超広域型商店街 広域型商店街 広域型商店街 近隣型商店街 地域型商店街 近隣型商店街 地域型商店街 5.0% 4.5% 2.9% 4.5% 4.5% 4.5% 16.1% 17.2% 18.3% 18.3% 20.0% 商 圏 人 口 が不 足 し て いる 0.0% 9.1% 28.6% 28.0% 26.5% 8.2% 12.5% 11.3% 9.1% 8.2% 6.8% 6.3% 6.1% 4.5% 10.2% 20.4% 20.4% 15.9%16.3% 14.3% 13.6% 12.2% 13.6% 14.3% 31.4% 31.9% 34.4% 32.7% 33.8% 32.7% 33.8% 32.5% 45.6% 45.9% 48.3% 50.0% 20.6% 17.9% 18.2% 18.2% 20.0% 40.0% 38.6% 36.7% 37.7% 34.4% 40.0% 27.3% 27.5% 25.6% 30.0% 57.0% 55.0% 60.0% ◆商店街の問題点(MA) ◆小売市場の問題点(MA) 60.0% 50.0% 34.4% 30.0% 10.8% 14.0% 10.0% 1.1% ○ 商店街の将来像の検討状況は全体では1/4にとどまりますが、 景況感の良い商店街組織で は、検討したと回答する構成比が大きくなっています。小売市場では、1/3が検討していま す。 ◆将来像の検討状況 商店街計 商店街計(n=383) 25.3% 39.5% 会員数 0~19(n=63) 会員数 0~19 4.8% 会員数 20~39(n=165) 会員数 20~39 35.2% 54.0% 41.3% 26.1% 46.7% 27.3% 会員数 40~59(n=72) 会員数 40~59 33.3% 34.7% 31.9% 会員数 60~79(n=32) 会員数 60~79 34.4% 34.4% 31.3% 会員数 80~99 会員数 80~99(n=19) 36.8% 会員数 100~ 会員数 100~(n=32) 15.6% 46.9% 32.3% 小売市場 小売市場(n=92) 0% 10% 20% 21.1% 42.1% 37.5% 25.8% 41.9% 30% 40% 50% ある 60% ない 6 70% 80% 無回答 90% 100% ② 中型店・大型店との競合 ○ 中型店・大型店の立地が、近隣・地域型商店街や小売市場で商圏の縮小等、大きな影響を 与えています。 ○ 大型店・中型店の商店街活動への参画やその働きかけを行なっている商店街は少数で、十 分な連携体制が築けていない状況にあります。 ◆影響を与える大型店の有無 店街計 商商店街計 30.9% (n=446) 隣型商店街 近近隣型商店街 (n=207) 域型商店街 地地域型商店街 (n=160) 域型商店街 広広域型商店街 (n=49) 広域型商店街 超超広域型商店街 (n=22) の他 そその他 (n=8) 売市場 小小売市場 (n=92) ◆影響を与える中型店の有無 45.7% 35.7% 44.0% 30.0% 18.2% 31.8% 50.0% 57.0% 10% 20.4% 50.0% 25.0% 0% 26.9% 59.2% 20% 30% 25.0% 14.0% 40% ある 50% 60% ない 29.0% 70% 80% 90% 20.6% 53.1% (n=446) 近隣型商店街 27.5% 近隣型商店街 (n=207) 地域型商店街 地域型商店街 18.8% (n=160) 広域型商店街 8.2% 広域型商店街 (n=49) 超広域型商店街 0% 超広域型商店街 (n=22) その他 その他 12.5% (n=8) 小売市場 小売市場 (n=92) 20.3% 43.1% 20.4% 商店街計 商店街計 23.3% 100% 0% 10% 26.2% 49.3% 23.2% 51.3% 30.0% 71.4% 20.4% 63.6% 36.4% 50.0% 37.5% 52.7% 20% 無回答 16.1% 30% 40% 50% ある 31.2% 60% 70% ない 80% 90% 無回答 ③ 商店街の活動基盤の弱体化 ○ 商店街によって、人材や事務局機能の充実度等、 事業の推進力に大きな差が生じています。 ○ また、商店街会員の減少、チェーン店などの業種構成変化で連帯感の低下が進んでいる状 況にあります。 ◆商店街の会員に占める チェーン店舗構成比 商店街計 商店街計 (n=446) 20.9 19.9 近隣型商店街 近隣型商店街 (n=207) 21.6 22.3 地域型商店街 地域型商店街 (n=160) 18.6 広域型商店街 広域型商店街 (n=49) 超広域型商店街 超広域型商店街 (n=22) 7.1 7.1 0% 10% 6.9 16.1 9.7 25.8 12.9 28.6 28.6 21.4 20% 36.3 5.9 6.9 19.4 7.1 39.2 7.4 4.7 4.7 22.5 16.1 36.0 7.1 6.7 9.4 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 20%未満 20~40%未満 40~60%未満 60~80%未満 80%以上 無回答 100% ○ 隣接する商店街や小売市場間の連携は3割程度にとどまっています。 ◆周辺商店街との連携状況 商店街計 商店街計 (n=446) 近隣型商店街 近隣型商店街 (n=207) 23.7% 地域型商店街 地域型商店街 (n=160) 23.1% 広域型商店街 広域型商店街 (n=49) 23.2% 53.1% 28.1% 48.8% 小売市場 0% 10% 20% 17.5% 52.6% 29.8% 小売市場(商店街近接) (商店街近接) (n=57) 50.0% 12.5% 37.5% 18.2% 22.7% 59.1% その他 その他 (n=8) 14.3% 44.9% 40.8% 超広域型商店街 超広域型商店街 (n=22) 7 24.2% 48.4% 27.4% 30% 取組んでいる 40% 50% 60% 70% 取組んでいない 80% 無回答 90% 100% 100% ④ 地域コミュニティの安全・安心と住民の生活を支える商店街への脱皮 ○ 来街者の評価は、近隣・地域型商店街での「空間・施設」 、「安全・安心」の項目で低くな っています。 ◆商店街の評価 近隣・地域型商店街 利用者 広域型商店街 利用者 総合評価 5.0 3 .4 7 4.0 賑わい、活性化 個店の魅力 3 .4 9 3.0 3 .1 4 2 .9 82.0 1.0 2 .8 6 0.0 安全・安心 総合評価 5.0 3 .7 1 4.0 3 .2 5 2.0 3 .2 2 3 .0 0 2 .9 3 3 .3 1品揃え 0.0 2 .9 3 安全・安心 3 .3 5 2 .8 9 ソフト事業 2 .9 8 利用者 3 .2 2 3 .0 5 空間施設 ソフト事業 非利用者 3 .5 品揃え 3 .0 9 2 .9 8 3 .0 8 3 .1 6 1.0 2 .9 3 個店の魅力 3 .5 1 3.0 2 .8 9 2 .8 5 2 .8 6 賑わい、活性化 3 .3 4 空間施設 利用者 近隣・地域型 利用者 非利用者 (n=933) (n=477) 非利用者 広域型 利用者 非利用者 (n=271) (n=134) 総合評価 3.47 2.89 3.71 3.22 1.個店の魅力 3.49 2.93 3.51 3.16 2.商店街全体の品揃え 3.31 2.85 3.50 3.35 3.空間・施設 2.98 2.89 3.22 3.09 4.ソフト事業 3.08 2.93 2.98 3.05 5.安全・安心 2.86 2.86 2.93 3.00 6.地域の賑わいや活性化に対する貢献 3.14 2.98 3.34 3.25 ○ アーケード撤去を検討する商店街は1割(ヒアリング 83 商店街中)存在しており、店舗・会員 の減少などにより、施設維持管理費用の捻出が困難になっている状況があります。 ○ 地域コミュニティとの連携については、一部に自治会・子供会など地縁組織との連携で地 域貢献に取り組む商店街もありますが、全体としては3割程度にとどまっています。 ◆地域住民や地域団体、NPO等との連携の有無 商店街計 商店街計(n=446) 26.0% 48.9% 25.1% 近隣型商店街 近隣型商店街(n=207) 24.2% 50.7% 25.1% 地域型商店街(n=160) 地域型商店街 広域型商店街(n=49) 広域型商店街 50.0% 37.5% 12.5% 小売市場(n=92) 小売市場 10% 20% 30% 取組んでいる 8 21.5% 63.4% 15.1% 0% 27.3% 31.8% 40.9% その他(n=8) その他 20.4% 59.2% 20.4% 超広域型商店街 超広域型商店街(n=22) 25.0% 46.3% 28.8% 40% 50% 60% 70% 取組んでいない 80% 無回答 90% 100% 「大阪市小売商業実態調査」の実施概要について 1.商店街・小売市場アンケート調査 ①調査期間 平成18 年 5 月~9 月 ②調査方法 郵送配布・訪問回収 ③回答数 商店街 446、小売市場 92、合計 538 団体より回答 2.商店街・小売市場ヒアリング調査 ①調査期間 平成18 年 6 月~8 月 ②実施状況 商店街 146、小売市場 33、合計 179 団体に対して実施 3.消費者アンケート調査 ①調査期間 平成 18 年7月(平日及び休日) ②調査地点 近隣型・地域型商店街 14 集積、広域型・超広域型商店街 2 集積、大型店 2 地点 ③調査方法 調査員による街頭での聞取りインタビュー調査 ④回答者数 全 2,017 名 3頁の注釈(*1) (*2)について: 近隣型商店街:最寄品中心で地元住民が日用品などを徒歩または自転車などにより日常性の買い物をする商店街 地域型商店街:最寄品店及び買回り品店が混在し、近隣型商店街よりもやや広い範囲から、徒歩、自転車、バス等で来街 する商店街 広域型商店街:百貨店、量販店等を含む大型店があり、最寄品店よりも、買回り品店が多い商店街 超広域型商店街:百貨店、量販店等を含む大型店があり、有名専門店、高級専門店を中心に構成され、遠距離からの来街 者が買い物をする商店街 ※なお、「最寄品」とは、一般家庭で日常的に食べたり使ったりするもので、具体的には、飲食料品、荒物、金物、医薬品、 化粧品、下着類、靴下類などをいい、 「買回り品」とは、品質、デザイン、価格などを比較選択して購入しようとするもの で最寄品以外をいいます。 9 2.社会経済環境の変化 地域商業を取り巻く社会経済環境は大きく変化しており、そうした環境変化を踏まえた小売 商業振興のあり方を考えることが必要となります。 ○人口減少・高齢化、安全安心、環境重視、教育など、社会的課題が顕在化 ・ 本格的な人口減少と少子高齢社会の到来を踏まえ、長期的なまちづくりの視点に立った施 策の検討が必要となります。同時に、市民の地域社会に対する関心も、安全安心、環境重視、 教育といった多分野にわたり、地域商業に対する期待も多様化かつ高度化している状況にあ ります。 ・ こうした状況に対して、商店街の経営資源だけでそれらのニーズに応えていくことはもと より限界があり、地域の課題解決に取り組むさまざまな活動団体との連携が重要となってき ます。 ○大型店・中型店の出店増大にともなう、交通・環境問題等への影響と、深刻化する商店街の顧客 の流出 ・ 大型店については、店舗の大型化、商圏の広域化が進展しており、地域の交通・環境への 負荷が大きくなるなど地域社会に影響を及ぼすとともに、1000 ㎡以下の中型店の出店増加に より小売店間の競争が激化しており、特に市内周辺区部において商店街への集客力低下など が顕著となっています。 ○コンパクトシティ化を目指すため「まちづくり三法」が改正されたが、法のスキームが大阪市など大 都市ではなじまない ・ 「都市計画法」 「中心市街地活性化法」 「大規模小売店舗立地法」からなる「まちづくり三法」 のうち、平成 18 年に都市計画法及び中心市街地活性化法が改正され、これまでの商店街振興 策中心の体系が進化し、市街地整備、教育・医療・福祉等都市福利施設の整備、街なか居住 の推進など都市機能の増進と経済活力の向上を総合的かつ一体的に推進するため、国による 選択と集中の仕組みや多様な民間主体が参画する協議会方式の導入、支援措置の大幅な拡充 等が行われました。 ・ 今改正のねらいは、郊外化の進行した地方都市を人口減少社会に対応してコンパクトなま ちに再生することを目指しており、全国的にはその効果が期待されますが、大阪市など大都 市の立地特性になじまない点も多くなっています。むしろ、大阪市内では大型店の出店が増 加し、商店街との競争が激化する恐れがあります。 10 ○消費行動の多様化による商店街機能の相対的低下と、地域のふれあいや安心して暮らせる地域 づくりへのニーズの高まり ・ 近年、女性の社会進出の進展などによるライフスタイルの変化やインターネットの普及に より消費行動の多様化が進んでおり、商店街等での買い物機会も減少傾向にある。 ・ 一方で、地域でのふれいあいや安心して暮らせる地域づくりへのニーズは高まりを見せて おり、かつて買い物や交流の場として、ふれあいや人間関係の醸成に大きな役割を果たして きた地域商業の存在があらためて見直されるとともに、それを実現していくために、住民組 織等の地域活動団体やNPOなどによる活動が活発化しています。 11 【参考】 【全国、大阪市の人口推移と将来見通し】 ○ 全国の人口推移と将来見通し ・ 平成 17 年 10 月における日本の総人口は1億 2,777 万人(総務省「国勢調査」 )で、平成 16 年の推計人口(補間補正人口速報値)より約 22,000 人の減少となり、戦後初めて前年を 下回った。平成 18 年の推計人口は1億 2,775 万人で、さらに約 18,000 人の減少となった。 ・ 平成 18 年 12 月に、国立社会保障・人口問題研究所から発表された「日本の将来推計人口」 によると、日本の人口は、今後、長期の人口減少過程に入り、平成 42 年には1億 1,522 万人、 平成 58 年には1億を割って 9,938 万人、平成 67(2055)年には 8,993 万人になると見込ま れており、本格的な人口減少社会が到来している。 (万人) 14,000 実績値 H18.10月 12,775 推計値 11,522 12,000 9,938 10,000 8,993 H42 (2030) 8,000 H58 (2046) 6,000 H67 (2055) 4,000 2,000 0 T9 14 S5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 H2 7 12 17 22 27 32 37 42 47 52 57 62 67 (注)平成 13~16 年は、平成 12 年及び 17 年国勢調査結果による補間補正後の推計人口(速報)。 平成 18 年は推計人口(概算値) 。 (資料)総務省「国勢調査」 、 「日本統計年鑑」 、「人口推計」 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」 (中位推計) (平成 18 年 12 月) ○ 大阪市の人口推移と将来見通し ・ 大阪市の人口は、昭和 40 年代から 50 年代前半にかけて大きく減少した時期があり、昭和 60 年前後にやや回復した後、バブル期には再び減少傾向を示していたが、近年、都市の利便 性等を背景とする都市居住ニーズの高まりがみられ、マンションを中心とした活発な住宅供 給が続いていることなどから、平成 12 年を境として人口は増加に転じている。 (資料)平成 12 年までは総務省「国勢調査」 、 平成 17 年以降は推計値 (出典) 「大阪市総合計画」 12 ○大阪市の年齢区分別人口 ・ 中位ケースの年齢区分別人口の内訳を見ると、15 歳未満の年少人口が人口に占める割合に ついては、平成 12 年の 12.6%が平成 27 年には 11.6%に減少し、15~64 歳の生産年齢人口 については、70.1%であったものが、63.6%に減少することが見込まれている。65 歳以上の 高齢人口については、計画期間中に団塊世代が高齢期を迎えることなどから、人口に占める 割合が、平成 12 年の 17.1%から平成 27 年に 24.9%と増加し、特に 75 歳以上の後期高齢者 の大幅な増加が見込まれている。 (資料)平成 12 年までは総務省「国勢調査」 、平成 17 年以降は推計値 (出典) 「大阪市総合計画」 【参考】 大阪市の消費動向 ・ 大阪市の全世帯の消費支出は、平成8年以降、減少傾向が続いており、平成 17 年には、平 成8年ピーク時より2割減少している。 ・ また、費目別の構成比をみると、平成元年時点と比較して、食料費、被服及び履物費が減 少しているのに対し、交通通信費での増加が目立っている。 【大阪市の全世帯消費支出(費目別)の推移】 (円) 350,000 313542 315995 300,000 320916 316341315974 311395 301093 302148 300883 293522 279936 278646 96826 100336 90178 94689 94424 105971 250,000 321383317477 318666 96603 98639 95299 85250 84636 84389 261721 255,135 83425 80876 72590 その他 70928 31121 200,000 25350 12387 150,000 22502 19921 100,000 50,000 29960 26236 15553 13893 25114 23952 24056 20947 15567 26309 28277 14998 26053 21800 19358 17319 17152 16897 16180 16776 25480 24882 20634 18929 21021 29493 32124 29877 31207 31297 29050 29554 14117 13216 14327 16270 12082 14000 16322 23984 26396 27749 25891 28374 29333 29155 30344 19375 20102 19545 18237 19208 15633 15768 15697 18758 18658 19250 19910 20944 19752 20947 21169 27526 24719 30235 27066 24947 25962 30422 26750 28703 19233 71411 28601 26613 13636 18574 23964 25560 11865 32639 28409 12898 31065 26577 13617 13163 11191 11004 19993 19219 18198 18944 26388 25996 26135 21020 82086 87569 87078 87655 85285 87427 84905 82104 83530 82080 81784 78170 76658 75223 74082 68375 67721 0 (年平均) H元 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 (資料)総務省「家計調査」 13 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 教養娯楽 教育 交通・通信 被服及び履物 光熱・水道 住居 食料 3.市政運営を取り巻く環境変化 社会経済環境の変化とともに、 大阪市の市政運営も大きな変革期のなかにあります。 特に、 厳しい財政状況のなかで、効果的かつ適正な市政運営の実現を目指しています。 ○市民の期待に応える市政改革 ・ 大阪市では、市政運営の抜本的な改革を図るため、組織と事業の総点検を行い、その課題 を整理して策定された「市政改革基本方針」に基づいて市政改革に取り組んでいます。 ・ 小売商業の振興に関連する課題としては、経費の圧縮、透明性の確保といった施策全般に かかる共通課題とともに、区政改革が挙げられます。現在、商業振興施策は経済局が実施し ていますが、地域商業の振興は、地域活動を支援し、地域ニーズに対応する区役所の基本的 な役割とも合致し、今後、区政改革の進展によりさらに独自性を発揮しやすくなります。 ○厳しい財政状況のなかでの効果的な補助金の執行と適正化 ・ 大阪市では、これまで商店街振興策の有効な手段のひとつとして各種の補助制度を運用し てきました。補助制度自体の効果性は一定評価できるものとして今後も継続しますが、補助 金は「税金」であるということの認識を高めるため、要件や申請手続きの厳格化、審査・検 査の充実を図るとともに、補助事業の効果を高めるために必要な措置をとります。 ○事業成果を検証する評価システムの導入 ・ 大阪市では、市民の立場に立った成果重視の「市民本位の行政」の実現と、行政の透明性 の向上と市民への説明責任の明確化を進めるため、その事業目的に照らして成果及び効果に ついて点検・評価し、事業改善及び市民サービスの向上などに繋げていく事業評価システム を導入しています。 ・ 同様に、大阪市の補助事業の実施主体である商店街においても、事業評価の観点を持ちな がら事業を推進していくことが求められています。 14 4.商店街に求められる社会的役割 商店街は、優れた商品やサービスを提供する商店の集まりである原点に立って、 「消費者」 のニーズに応えることが第一に求められます。そして、地域コミュニティの主要な構成員と して、住民等の生活を支え、賑わいを創出することにより、 「生活者」のニーズに応えながら、 「地域」の魅力を発信し、後世に引き継ぐ際の重要な担い手としての役割が求められていま す。 ○消費者、生活者、地域のニーズと期待に応えること ・ 商品・サービスなどを提供する主体を、商店、商店街、地域に区分し、それぞれの対象に 対する商店街の役割は、以下のように整理することができます。 商 店 ○消費者のニーズに応えるちから 商品やサービスの購入の場、高齢者などには不可欠な生活支援の場 ・ 商店街の構成員である商店は、なによりもまず、品質、価格といった多様化する消 費者のニーズに応える優れた商品やサービスを提供し、市民の消費生活を支える場と なることが求められています。 ・ また、外出等の行動範囲が制約される高齢者等にとっては、近隣での買い物の場の 提供が不可欠であり、生活支援の場としての役割も果たすことになります。 商店街 ○生活者(地域住民・市民)のニーズに応えるちから 安全安心、賑わい、交流、活動の場 ・ 公共的空間の一部を構成する商店街は、地域住民に対して、暮らしの安全安心と利 便性を提供することが求められます。また、地域の賑わいや交流を育む活動の場とし て、子どもたちにとっては、地域コミュニティの人間関係が希薄化するなかで、社会 的な教育機会を提供することも期待されています。 地 域 ○地域の魅力を高め、伝えるちから 文化の創造・継承の場 ・ 過去から地域文化の担い手として大きな役割を果たしてきた商店街は、現代におい ても、地域に受け継がれてきた伝統文化を継承しつつ、新たな文化を創造していくな ど、地域の魅力を高め、それを伝えていく役割を担うことも求められます。 15 5.小売商業振興の方向性 5-1.小売商業振興の視点 商業振興と地域振興は切り離せないものであり、地域コミュニティのなかで、商店街も一 定の社会的な役割を担うことが期待されています。また、環境変化にともなって顕在化する 商業や地域の課題の解決に向けて意欲的に取り組もうとする商店街の「ちから」を伸ばして いくことに重点を置きながら、小売商業の振興を進めていきます。 なお、小売市場については、今後の小売商業振興策において、商店街を構成する核店舗と してとらえ、また、地域活動においても、商店街の一員として、あるいは商店街とともに重 要な役割を担う主体と位置づけ、振興を図っていくものとします。 ① 商業振興と地域振興の一体的な推進 ・ 商業の振興は、市民の豊かな消費生活を支えるとともに、雇用の場の提供や税収源のひと つとして、地域経済の活性化に大きな役割を果たしています。しかし、大きな社会経済環境 の変化のなかで、地域商業の衰退が進んでおり、その影響は、単に商業分野だけの問題にと どまらず、周辺地域の治安の悪化や車依存による環境負荷の増大など、地域コミュニティに 及ぼす影響が顕在化しつつあります。 ・ このように、商業振興が、住民のくらしを支え、地域の賑わいを創出するといった地域振 興とも密接に関係しあうことから、 「地域と一体となった商店街の発展」を目指していくこと が重要となります。 ② 商店街が担う社会的な役割の再評価 ・ とりわけ、まちの賑わい、地域の安全安心、文化の創造・発展といった地域コミュニティ 機能の維持・回復に商店街活動が注目を集めています。地域に住み、地域で活動し、地域に 貢献する商店街は、地域住民にとっても必要不可欠の存在であるとともに、行政の立場から も「住民の福祉の増進」に寄与する地域活動組織として位置づけられ、さまざまな支援、協 力が容易となります。 ③ 商業者、多様な事業者、住民、地権者など、地域関係者の協働 ・ 今後の商店街の活性化にあたっては、中小商業者だけでなく、大型・中型店や卸売業、金 融機関、病院など、地域内の多様な事業者、住民や地権者など、関係する企業・組織・市民 等と連携し、それぞれの役割を確認し協働しながら、実効性のある取り組みを進めていくこ とが求められます。 ・ そのために商店街組織は、商店街活動の目的、事業計画、経費と財源などさまざまな情報 について、関係者に可能な限り提供、公表したうえで、活動の意義や協力の必要性を説き、 不断に理解と協力を求めることが重要です。 16 ④ 意欲ある活動組織への重点的な支援 ・ 消費行動の変化、時代や環境の変化に対応すべく、意欲的に事業に取り組む活動組織への 支援を重視します。一律の商店街振興策から脱却し、厳しい経済環境の中でも自立的に、意 欲的な取り組みを進めようとする組織・事業者を育て、その「ちから」を強化していく方向 への政策転換が求められています。 ⑤ 環境変化に応じて、目指す方向の実現に向けた、自己評価サイクルの実行 ・ 社会経済環境が大きく変化する中で地域の課題も刻々と変化しており、商店街運営におい ても、絶えず、目指す方向の実現にむけた、計画 - 実行 - 自己評価 - 修正という自己評価 のサイクルを実行しながら柔軟に変化に対応し、事業を効果的、効率的に推進していくこと が求められています。 17 5―2.実現したい将来像 「商店街に求められる社会的役割」を自らの責務として自覚する、意欲的な商店街ととも に、行政がその後押しをすることにより、消費者、生活者の目にも「変わった」と写るよう な「商い」 、 「まち」、 「大阪」を実現することを目指します。 ① 商いが変わる ○魅力あふれる個店の商品・サービスが人を呼び込む ・ 多様化する消費者のニーズに応え、商人のこだわりから生まれる魅力に満ちた商品やサー ビスを求めて、 多くの人が買い物に訪れる。 そうした個店の魅力が、商店街には不可欠です。 ○自立的な商店街経営に向けて、組織運営・体制を立直す ・ 円滑な事業の推進や自律的な組織運営を実現するためには、小規模な商店街組織の連合化 や事務局機能の共同化などにより、組織と体制の強化を進めることが必要となります。 ・ 魅力ある事業運営を実現するため、商店街組織が目標の共有と運営の透明化を図ることに より、商店街を形成する商業者はもとより、大型店やチェーン店をはじめ関係する多様な事 業者等の商店街組織への加盟が促進され、効果的・効率的な組織運営が可能となります。 ○地域や面に広がる商業者が参画するグループが、事業推進を加速する ・ 線として向き合う会員向けだけの商店街活動にとどまらず、近隣の商業者や事業者、地権 者・住民組織等も巻き込んだ多様な参画者の力により、地域と一体となった事業を積極的に 推進していくことが求められています。 ② まちが変わる ○商業者とまちの人びとが共にビジョンを描き、その実現に向けて共に取り組む ・ 商業者と地域の住民が参画しながら地域振興のビジョン(将来像)を描き、その目標を共 有しながら、その実現に向けた協働の取り組みを進めることが、事業推進の大前提となりま す。 ○消費者、生活者の期待に応える、効果的な取り組みが持続する ・ 商店街の事業は、単発的な事業としてではなく、長期的なビジョンに基づき、自己評価の サイクル(計画 - 実行 - 評価 - 見直し)を通じて、環境の変化に柔軟に対応しながら、 持続的かつ効果的に推進されることが必要です。 ○新陳代謝を繰り返しながら、時代の変化に対応する ・ 空き店舗等が新規創業や地域活動の拠点として活用されることにより、新たな事業者の商 店街活動への参画が促され、組織の活性化をもたらすことから、 「まち」が新陳代謝を絶え ず繰り返していくことが求められます。 18 ○共同施設を良好に管理しながら、賑わいと安全安心の空間を提供する ・ アーケードや街路灯など商店街環境施設の良好な維持管理を推進し、安全で安心できる買 い物環境(住民にとっては生活環境)を提供することは、商店街の社会的な責務です。 ・ また、大掛かりなアーケードや街路灯を設置することにより将来的にも過度な経費の負担 を強いるハード重視の取り組みから、ソフト面に配慮した取り組みへの転換を進めることに より、消費者、生活者の期待に応える新たな取り組みが可能となります。 ○住民・地域団体・大学・企業など、多様な主体で、地域課題を解決する ・ 地域の住民組織やNPO、大学との商学連携などを通じて、多様な主体が地域に関わり、 それぞれの強みを活かしながら、地域それぞれの課題の解決を図ることが必要です。 ③ 大阪が変わる ○地域の資源と特性を活かし、オンリーワンの個性を発揮する ・ 商店街の存在自体は、 地域独自の重要な地域資源として、 地域の個性を生み出しています。 また、個々の地域の歴史文化などを創造・継承しながら、その個性を強化することで、大阪 が全体としてモザイクのような多面的な魅力を発信することが可能となります。 ○大阪の都市魅力を全国に発信し、都市のブランド力を高める ・ 個々の商店街の個性と大阪全体の多面的な魅力が全国に向けて発信され、大阪ならではの商 店街活動を通じて、大阪らしい都市のブランド力を強化することができます。 19 6.小売商業振興プラン 6-1.小売商業振興プランのコンセプト 以下に示すコンセプトに基づいて、大阪市の小売商業の振興を推進していきます。 『商店+街力』の発揮による、個性輝く 地域への変革 ~ 地域が 「変わる」。その原動力は 「商店+街力」。~ ・ ここでは、今後、商店街が備えるべき「ちから」として「商店+街力」という新しい概念を 提示しています。消費者ニーズに応える個店の力である「商店力」、その個店の力を結集し、商 店街・組織の力としてまとめあげられていく「商店街力」 、そして、それを街の力(「街力」)へ と発展させるとともに、それを商店街自らの力として吸収し活かしていくという、それぞれが 相互作用を生む関係にあると考えられます。 商店力 ●『商店+街力』 とは・・・ 商いの原点である「商店力」を結集し、地域固 商店街力 街 有の 「街力」 と連結することで、相乗効果を生み だす「商店街力」。 力 3つの力から構成される 「商店+街力」 は、 「地域力・都市力」へと展開することで、人びとに 地域力・都市力 へ 誇りを抱かせ、大阪のブランドを牽引する。 20 6-2.小売商業振興プランの方向 小売商業振興プランのコンセプトに基づいて、 「商店力」 、 「商店街力」 、 「街力」が相乗効果 を発揮しながら、それぞれの「ちから」を強化していくことを目指します。 ① パワーの源・「商店力」 の強化を目指す ~ 経営の革新と創業を促進させ、商品・サービス、そして、「商人」本来の魅力を取り戻す ~ ・ 個店のもつ「商店力」の回復と強化が、商店街の組織や魅力の強化という「商店街力」の 向上、「街力」向上の原動力となります。このことから、消費者の多様なニーズへの対応を 可能にする経営革新を支援します。 ・ また、新たな力の参入により商店街組織を再活性化することが期待されることから、空き 店舗等の流動化を促進し、新規創業や事業創出につながる環境整備を推進します。 ② 力の結節点・ 「商店街力」 の強化を目指す ~ 組織としての能力・体力を向上させ、時代の変化に対応できるマネジメントを実現する ~ ・ 商店街組織として、法人化の促進や多様な主体を取り込んだ組織運営を促すなど、事務局 機能の強化のための取り組みを支援します。また、商店街の自主財源となり、自律的な商店 街活動を可能にする経営基盤強化への取り組みを支援します。 ③ 「商い」と「街」との好循環の創出を目指す ~ エリアとテーマによる信頼ネットワークの輪を広げ、多層・多彩な活動を促進する~ ・ 地域特性や地域の抱える課題に応じて、地域や大学等と商業者・商店街とさまざま組み合 わせによる連携を促進します。 ・ 関係者の信頼関係の醸成を促がす連携の場づくりをはじめ、地域のさまざまな課題解決に つなげていくための計画段階から事業実施までをトータルに支援します。 21 6-3.小売商業振興プランの支援メニュー 小売商業振興プランの方向性に沿って、大阪市として、以下の支援メニューに取り組むこ ととします。早期に対応可能な支援(●印)と、今後継続して検討すべき事項(○印)に区 分されます。 ① パワーの源・「商店力」 の強化を目指す 個 店 支 援 ●大阪産業創造館や商い繁盛館との連携とともに、やる気のある経営 者に対し専門家の指導で魅力ある個店づくりを目指す 空 き 店 舗 流動化促進 ●空き店舗の流動化を促進するため、商店街に専門家を派遣し商店街 の空き店舗解消のサポートを行う ○空き店舗の流動化を制度で促進する仕組みの研究 ② 力の結節点・ 「商店街力」 の強化を目指す 組織力の強化 ●事務局機能の充実、強化や組織の法人化を支援 ○商店街の自主財源確保など自立的な活動にむけた検討 商業者グループ の支援 ●既存の商店街組織ではなかなか話がまとまらない、それなら「やる 気のある者だけでもまとまって活性化策を考えよう」という意欲の ある商業者グループも支援 ③ 「商い」と「街」との好循環の創出を目指す 連 携 支 援 ●商店街が近隣の商業者、住民、地域団体、学校など多様な市民と連 携し、地域の身近なステージ、チャレンジの場として商店街と地域 が協働して進める新たな取り組みを支援 ソフト支 援 ●商店街のビジョンづくりから、空き店舗活用をはじめ、さまざまな 企画提案事業、各種イベントまであらゆるソフト事業をその計画の 熟度、有効性などを考慮して継続的に支援するとともに、必要に応 じ専門家を派遣 ○地域ブランド、都市ブランドにつながる事業活動の支援 施設整備支援 ●地域住民の安全安心の確保、環境問題への配慮など社会的課題への 取り組みと良好で経済性にすぐれた施設の整備、管理を支援 22 小売商業振興プラン策定委員会・作業部会 名簿 大阪市内の商店街等小売商業の実態を把握・分析するとともに、これらを踏まえ、小売商業が活力 を保持し繁栄していくために行政が取り組むべき支援のあり方について検討を行い、中長期的な小売 商業振興プランを策定することを目的として、小売商業振興プラン策定委員会、及び作業部会を設置 し検討を行った。 ○ 小売商業振興プラン策定委員会 委員名簿 氏 名 委員長 石原 武政 委 員 加藤 司 公立大学法人大阪市立大学大学院経営学研究科教授 学 識 〃 土井 勉 神戸国際大学経済学部教授 学 識 〃 新田 泰一 大阪商工会議所中小企業振興部部長 機 関 〃 高橋 昭三 大阪市商店会総連盟理事長 業 界 〃 土居 年樹 天神橋三丁目商店街振興組合理事長 商業者 〃 川西 稔 コーセツ千林事業協同組合理事長 商業者 〃 稲岡真理子 ライフマネジメント研究所長 消費者 〃 河上 独立行政法人中小企業基盤整備機構地域・連携企画課長 専門家 高廣 役 職 名 関西学院大学 商学部教授 備 考 学 識 ○ 作業部会 部会員名簿 氏 部会長 加藤 部 員 名 司 役 職 名 備 考 公立大学法人大阪市立大学大学院経営学研究科教授 学 識 石村晃太郎 財団法人大阪市都市型産業振興センター創業・ベンチャー支援リーダー 機 関 〃 辻 大阪観光コンベンション協会魅力開発チーム次長 機 関 〃 松井伊代子 大阪商工会議所流通担当課長 機 関 弘史 23