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災害時における情報通信の課題について

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災害時における情報通信の課題について
災害時における情報通信の課題について
Several Problems over Disaster Communications
渡辺 尚†
石原 進‡
Takashi Watanabe†
Susumu Ishihara‡
†
‡
静岡大学情報学部
静岡大学工学部
†
Faculty of Information, Shizuoka University ‡Faculty of Engineering, Shizuoka University
1.はじめに
本研究は ReSIA プロジェクト[1]の一環として行っ
た。本稿では、災害時における情報通信技術を概観し、
通信インフラに要求される点を考察する。
2.災害時における情報通信
2.1 商用通信サービス
NTTは、現在までの経験から、複数回線によるバッ
クアップ、建物の耐震化、非常時電源供給用車両、可搬
型衛星地上局、i モード伝言ダイヤル、音声通話とパケ
ット通信の独立した制御、多手段化等の多様な対策を施
している[2]。阪神淡路大震災の際の状況が[3]に詳細に報
告されている。
2.2 無線系通信の利用可能性
携帯電話、衛星携帯電話、無線LANサービスが挙げ
られる。一般ユーザは、携帯電話による通話および電子
メールを用いる。1995 年の阪神淡路大震災の際は有効に
機能したとされているが、現時点では、8000 万台以上の
普及、公衆電話の減少、静止画・動画等大量データ通信
の普及等から、アクセス集中が深刻になると予想される。
また、網への加入後もパケット廃棄によって生じる音質
劣化により同種の内容を繰り返し通話するであろうこと
も状況を悪化させる要因として考えられる。
衛星携帯電話は、価格が高い点、往復遅延が約 300
msec と大きい点、設置が容易ではない点等から一般には
普及していない。そのため、回線容量に比して負荷は低
いものと予想され災害時の有効性が期待されている。現
在は、比較的安価な可搬型衛星携帯電話が自治体を中心
に普及し始めている。従って、その有効性は従来より小
さくなっていると考えられる。
無線LANサービスが人口密集地を中心に普及してい
る。また企業や家庭でも無線LANが普及しつつある。
このような状況では、救助隊等が設置する無線LANと
他の無線装置との干渉が問題となることが予想される。
2.3 インターネットの有効性
阪神淡路大震災時に、インターネットが有効であった
と言われるのは、以下の理由による。(1)パケット交
換ディジタル通信の時間的効率がよいこと。(2)自治
会やボランティア等の多数のオペレータが個々の小規模
な地域に密着した詳細な情報が発信されたこと。
オペレータが多く存在することは、逆に発信源が多い
ことにもつながる。今日のブロードバンド化と定額化に
よる大量トラフィック発生に対する認識の薄れ、VoIP に
よるデータ量増、ベストエフォット型サービスの不確実
性等の問題がある。また多数の情報提供者によるトラフ
ィックの増大と情報の質の保証も問題となる。
3.通信インフラに要求される点
(1)超少ビット多数通信の実現
災害時に交換される情報には、被災民の人数、世帯の
安否、必要な機材の台数等少ビット数で表現可能なもの
がある。IAA[4]でも同様に試みられている。我々はアマ
チュア無線交信記録等を解析し、災害時情報通信に必要
な文を抽出し、定型化することにより、少ビット化でき
る対象を広げる試みを行っている。
(2)コンテンツやトラフィック特性に依存したフィル
タリング
画像等の大量データの通信に対し、輻輳を回避するた
め、コンテンツおよびそれらに付随する制御トラフィッ
クを考慮してフィルタリングを行う必要がある。
(3)位置・ユーザ依存型トラフィック制御
地域情報はその近傍で消費されることが多い。従って
情報発生位置をタグとしたキャッシュ方式は有効である。
また位置情報を元に小地域に必要な情報を配信するには
マルチキャスト技術が重要である。GPS 搭載の携帯電話
が実用化されており実現は比較的容易である。
また例えば携帯電話に MEMSセンサを内蔵し所有者の状
況や情報を利用した制御方法を考えることができる。
(4)一時ネットワークや高階層イベント駆動による動
的制御
アドホックネットワークを利用する通信方式やマルチ
ホップセルラーは一時的なネットワークを構築する方式
である。さらにソフトウエア無線技術を利用して、高階
層イベント駆動型のマルチキャリア制御、複数媒体制御、
電力制御、指向性制御、ビットレート制御、QoS 制御を
動的に行う方式が考えられる。
(5)評価モデルの確立
確率を前提としたマルコフ解析やシミュレーションで
は、非常に生起確率の小さい災害を解析することが困難
である。そのため評価方式を確立する必要がある。
4.まとめ
災害時の通信技術を概観し課題を提示した。今後は、
具体的な実現方法を検討する。
謝辞:通信・放送機構平成12年度地域提案型研究開発
制度の助成を受けて実施した。関係者に深く感謝する。
参考文献
[1]阿部、渡辺:画像処理とアドホックネットワークを利用する
災害復旧支援システム-ReSIA プロジェクトの全体構想-,電子情
報通信学会 2004 年総合大会(2004).
[2] http://www.ntt-east.co.jp/saigai/
[3]小林功郎編集,災害時の情報通信エレクトロニクス, 信学会
誌, Vol. 79, No. 1, Jan. 1996.
[4]N.Tada, Y.Izawa, M.Kimoto, T.Maruyama, H.Ohno, M. Nakayama,
"IAA System ("I Am Alive"): The Experiences of the Internet
Disaster Drills," INET 2000,
http://www.isoc.org/isoc/conferences/inet/00/
cdproceedings/8l/8l_3.htm.
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