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アジア パシフィック プロパティ ダイジェスト(APPD)2011年第4

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アジア パシフィック プロパティ ダイジェスト(APPD)2011年第4
アジア パシフィック プロパティ ダイジェスト
2011年第4四半期
日本版
2011年のネット・アブゾープションは
記録的水準へ
アジア パシフィック プロパティ ダイジェスト • 2011年第4四半期 アジア・パシフィック地域
アジア・パシフィック地域の経済
4
アジア・パシフィック地域の不動産市場
6
ユーロ圏の問題がアジア市場の成長を阻害する
8
注目を集める大震災後の東京ロジスティクスマーケット
10
オフィス
東京
12
大阪
13
ロジスティクス
東京
14
REIT
J-REIT
Cover picture: Petronas Twin Towers, Kuala Lumpur
15
アジア・パシフィック地域の経済
2012年に成長は減速するものの、
アウトパフォームを継続する見通し
Dr. ジェーン・マレー
アジア・パシフィック地域 リサーチ・ヘッド
アジア・パシフィック地域の経済は世界の他の地域をアウトパフ
ォームし続けているものの、直近の指標は経済活動が全般的に
減速している状況を示している。続くユーロ圏の債務危機は、輸
出や企業の景況感に重石となっている。一方のプラス要素は、一
部主要国で製造業の生産が底打ちしていることや地域全体のイ
ンフレ圧力の緩和を背景に、景気支援策を実施する政策当局の
柔軟性が高まっていることである。IHS Global Insight (GI)の経
済見通しによれば、2012年のアジア・パシフィック地域の成長率
は前年比4.9%増と、2011年並みと予想されている。
2012年はほとんどの国で経済成長が若干減速する見通し
中国:2011年第4四半期の中国の実質GDP成長率は前年同
期比8.9%増と、前四半期の同9.1%増から更に減速し、過去
10四半期で最低の伸び率となった。1月の輸出は前年同月比
0.5%減と、2009年10月以来初の減少に転じ、2011年の建設
工事は大きく減速した。他方、12月の小売業販売額は前年同月
比13.8%増と改善しており、1月の製造業購買担当者指数は2カ
月連続で上昇している。GIは、中国の経済成長率は2011年の
9.2%増に続き2012年は8.1%増となり、
内需・外需とも減速する
ものの依然として堅調な水準を維持し、引き続き地域の経済成
長を牽引すると予想している。
インド:2011年第3四半期の実質GDP成長率は、主に製造業
の生産減少を要因として、前年同期比6.9%増となり、2011年第
2四半期の同7.7%増から減速した。
ただし、直近の指標は同セ
クターが安定化している兆しを示しており、1月のHSBC/Markit
PMI指数は過去8カ月間で最高の伸びとなっている。輸出と個人
消費の低迷を背景に、
インドの経済成長率は2011年の7.3%増
図表1: 実質GDP成長率
から今年は6.7%増へ減速する見通しである。
インドネシア:インドネシアは、
アジア・パシフィック地域で最も底
堅い経済成長を続けている国の一つであり、2011年第4四半期
のGDP成長率は前年同期比6.5%増と、前四半期と同じとなっ
た。現時点まで、堅調な消費支出が輸出の減速を相殺している。
GIの経済見通しによれば、2012年の経済成長率は、主に旺盛な
内需を背景に、6.2%増となり、2011年の6.6%増から若干減速
する。
日本:経済成長率は、2011年第3四半期の前年同期比0.5%減
に続いて、第4四半期は同1.0%減のマイナス成長となり、予測
を下回る結果となった。直近の月次データをみると、12月の鉱
工業生産は前年同月比4.1%減、同月の輸出は同8.0%減と、景
気低迷が継続している状況を示している。GIは経済成長見通し
を下方修正し、現在、2011年の0.9%減のマイナス成長に続き、
2012年の成長は1.2%増にとどまると予想している。
このわずか
な伸びは主に昨年の震災による復興関連の支出に牽引されたも
のであり、民間需要と外需は依然として低迷すると予測される。
オーストラリア:2011年第3四半期のオーストラリア経済は
1.0%増、
または前年同期比2.5%増となり、主に鉱業とエネルギ
ー関連業への投資がこれを牽引した。過去12カ月間に労働市場
は悪化し、失業率も上昇傾向にあるものの、直近の1月の失業率
は5.1%と、多くの先進国に比べれば依然として低い水準である。
小売業販売額の伸びは低迷が続いているが、直近の調査によれ
ば、消費者信頼感は高まっている模様である。2012年の経済成
長率は、鉱業・農業セクターに牽引されて3.1%増となり、2011年
の2.0%増から加速する見通しである。
図表2: 消費者物価
20
10
18
8
10
6
前年比 (%)
4
2
6
4
2
0
出所: IHSグローバルインサイト、
2012年2月
出所: IHSグローバルインサイト、2012年2月
日本
台湾
マレーシア
オーストラリア
タイ
韓国
フィリピン
シンガポール
2012年予測
ニュージーランド
2011年予測
香港
インドネシア
中国
–2
インド
日本
タイ
オーストラリア
韓国
フィリピン
台湾
マレーシア
シンガポール
2012年予測
ニュージーランド
2011年予測
香港
ベトナム
インドネシア
インド
0
中国
–2
8
ベトナム
前年比 (%)
アジア・パシフィック地域の経済
アジア パシフィック プロパティ ダイジェスト • 2011年第4四半期
各国の主要経済指標
GDP (%)
短期金利 (%)
CPI (%)
失業率 (%)
2011年
予測
2012年
予測
2011年
予測
2012年
予測
2011年
予測
2012年
予測
2011年
予測
2012年
予測
中国
9.2
8.1
6.4
6.4
5.4
3.3
4.1
香港
5.0
3.8
0.2
0.5
5.3
4.2
台湾
4.0
3.8
0.7
1.0
1.4
日本
–0.9
1.2
0.2
0.2
韓国
3.6
2.7
3.4
フィリピン
3.7
4.1
シンガポール
4.8
マレーシア
実質個人消費 (%)
鉱工業生産 (%)
2011年
予測
2012年
予測
2011年
予測
2012年
予測
4.2
6.5
7.2
13.7
10.8
3.4
3.5
8.4
4.0
NA
NA
1.2
4.4
4.4
3.1
2.3
4.6
2.0
–0.3
–0.8
4.6
5.1
0.0
0.8
–3.4
2.2
3.8
4.0
3.1
3.4
3.6
2.3
2.2
7.0
1.9
1.2
1.5
4.8
3.7
7.0
6.8
3.8
6.4
2.4
4.4
2.0
0.3
0.6
5.2
3.1
2.0
2.2
3.7
15.1
7.6
4.1
4.4
3.3
2.9
3.0
3.2
2.9
3.1
3.2
6.4
5.4
1.1
3.5
タイ
0.8
4.1
2.8
3.0
3.8
3.8
0.7
0.9
2.2
2.9
–9.5
8.8
インドネシア
6.6
6.2
6.9
6.1
5.4
4.5
6.6
6.3
4.8
5.2
5.0
4.7
ベトナム
5.9
5.8
14.6
11.6
18.7
8.7
2.7
2.8
6.6
7.0
11.4
8.6
インド
7.3
6.7
9.6
10.6
8.9
6.7
9.4
9.3
5.8
6.1
4.7
4.5
オーストラリア
2.0
3.1
4.8
4.3
3.4
2.3
5.1
5.3
3.5
2.9
–0.4
3.6
ニュージーランド
1.6
2.8
2.6
2.7
4.0
1.7
6.5
6.1
2.4
2.5
2.0
2.0
世界
3.0
2.7
3.3
3.3
4.0
3.0
8.2
8.2
2.5
2.3
3.7
3.1
出所: IHSグローバルインサイト、2012年2月
シンガポール:2011年第4四半期の経済成長率は、
ボラティリ
ティの高い製造業セクターの減速が主要因となり、前年同期比
3.6%増と、前期の同6.0%増から減速した。GIによると、2012年
暦年では、主に輸出の伸びの鈍化により経済成長率が2%増へと
更に減速すると予想している。
香港:香港でも同様に経済成長が鈍化しており、主に内需と外需
の減速から、2011年第4四半期の成長率は前年同期比3.0%増
(前四半期は同4.3%増)へと減速した。景気に局地的な明るさ
を見せているのはリテール・セクターで、中国本土からの観光客
の急増を背景に、12月の小売業販売額は前年同月比23.4%増
と力強い伸びを示した。GIによれば、2012年の実質GDP成長
率は、主に輸出の減速が理由となって3.8%増となり、2011年の
5.0%増から軟化する見通しである。
韓国:2011年第4四半期の経済成長率は、輸入の減速が国内支
出の減少を相殺し、前年同期比3.4%増と、第3四半期と同水準
となった。経済成長は、主に輸出の減速を要因として、2011年の
3.6%増から2012年は2.7%増へと軟化する見通しである。
今年はさらに緩和政策が実施される見通し
経済成長の減速に伴い、地域内を通じてインフレ圧力が収まりつ
つある。1月には、
中国のインフレ率が前年同月比4.5%上昇(前月
は同4.1%上昇)
と、6カ月間で初の加速に転じた。
ただし、
これは
主に今年の旧正月が早まったことに起因している。
インドの卸売
物価の上昇率は12月の前年同月比7.5%から1月は同6.6%へと
急速に低下した。
経済成長が減速する兆しを受けて、地域内の様々な国が金融・
財政刺激策を実施している。2011年第4四半期にオーストラリ
ア、
インドネシア、
タイが利下げを実施し、2012年第1四半期にフ
ィリピンがこれに続いた。中国は銀行預金準備率を引き下げた
が、現時点まで引き締め政策を維持して住宅市場の過熱を抑制
している。2月に、
日本と香港が経済成長を支えるため景気刺激
策を発表した。
グローバル経済の厳しさを勘案し、今年はアジア・
パシフィック地域を通じて一層の緩和政策の実施が見込まれる。
2012年後半に地域の経済成長は上向く見通し
当社が想定する成長シナリオは、
ヨーロッパの危機が徐々に解消
され、米国経済は緩やかながらも回復を続けるというものである。
ただし、
グローバル経済は依然として大きな課題に直面しており、
短期的には下振れリスクが残っている。
したがって、
アジア・パシ
フィック地域の経済は、2012年初めには相対的に低迷するもの
の、下半期には改善し始めるだろう。2012年のアジア・パシフィッ
ク地域全体の経済成長率は、投資や民間消費支出の改善が輸
出の大幅減速のバッファーとなり、4.9%増と、世界の他の地域の
ほぼ3倍となる見通しである。
アジア・パシフィック地域の経済
アジア パシフィック プロパティ ダイジェスト • 2011年第4四半期 アジア・パシフィック地域の不動産市場
アジア パシフィック プロパティ ダイジェスト • 2011年第4四半期
アジア・パシフィック地域の不動産市場
2012年:比較的安定した年
2011年末の数カ月間、
アジア・パシフィックの不動産市場は経済
の不確実性の高まりにもかかわらず、健全なファンダメンタルズを
反映し続けた。2011年通年では、同地域のオフィス賃貸借契約
面積は記録的な水準を達成したものの、2011年第4四半期には
一部市場で賃貸活動が減退し始めた。2011年の投資総額は前
年から若干増加し、
とりわけ第4四半期が好調であった。賃料と
価格はほとんどの市場で上昇し続けているが、成長モメンタムは
減速し始めている。
賃料は依然上向きだが、多くの市場で減速し始めている
オフィス・セクター:2011年第4四半期にアジア・パシフィック地
域のTier 1都市に所在するAグレードオフィス市場の新規供給量
は130万㎡であった。通年の供給量は約600万㎡とほぼ安定し
ており、
中国とインドの都市で全体の約三分の二が供給された。
2011年の合計ネット・アブゾープションは2010年の水準から約
20%増加して、最高記録を達成している。
しかし、2011年第4四
半期は、企業の景況感と雇用が全般的に抑制され、
とりわけ金融
センターである香港とシンガポールでこれが顕著となったため、
全体的な賃貸活動は減速している。中国は内需が依然として旺
盛であり、
インドでは情報通信/情報通信サービス(IT/ITES)のテ
ナントが拡張を続け、
その他市場では移転や集約が需要を牽引
した。
オーストラリアでは、未だシドニーCBDのスペース需要に金
融市場のボラティリティの影響は大きく現れていない。2012年の
全般的な賃貸需要は、企業の雇用減速と一部市場の供給減速
を背景に、若干減退する見通しである。
2011年第4四半期、賃料上昇率はほとんどの市場で減速した。
香港では正味実効賃料が2四半期連続で下落し
(前四半期比
4.5%下落)、
シンガポールでは2010年第1四半期以来初の下
落となった
(同4.9%下落)。北京とジャカルタのCBDは最大の四
半期比賃料上昇率を記録し続けたものの、上昇率は一桁に収ま
っている
(6~9%の間)。上海の賃料上昇率は2.5%まで減速した
が、
シドニーCBDの賃料は好調な契約面積を背景に5.6%と堅
調な上昇を続けた。東京とソウルの正味実効賃料は、
オーナーの
インセンティブが引き続き拡大し、更に下落(最大3%)
した。
イン
ドの賃料はほぼ横ばいないし若干の上昇となった。
地域のオフィス市場は依然としてオーナー優位の状況だが、
テナ
ントは高額な賃料設定に対して消極的な姿勢をみせている。短
期的にはほとんどの市場で賃料が上昇する見込みであるが、香
港とシンガポールは銀行・金融セクターへのエクスポージャーが
大きいため一層の賃料下落が見込まれる。
ソウルと広州を含むい
くつかの市場では、賃料は全く上昇しないか、若干の下落が継続
すると予想される。北京とジャカルタの賃料はアウトパフォームを
続け、年間上昇率は20~25%となろう。
リテール・セクター:2011年第4四半期のリテール・セクターの
賃貸需要は中華圏と東南アジアの一部新興市場で旺盛となっ
た。特にファスト・ファッション、高級品、飲食料品に関連するセグ
メントの国際的な小売業者からの需要が旺盛であった。2011年
第4四半期は多くの主要市場で賃料が上昇したものの、上昇率
はわずかであった。香港と北京の賃料がそれぞれ前四半期比
2.9%と3.2%上昇し、地域内で最も高い賃料上昇率を記録した。
ほとんどの市場で今後数四半期に渡り、賃料の上昇が続くと予
想される。
住宅セクター:2011年末には、多くの高級住宅市場の賃貸活動
に季節的要因による減速が見られたが、
マニラやジャカルタ等の
市場は現地需要に支えられて堅調に推移した。全般的に賃料上
昇は減速し、3~4%と最高の上昇率を見せたのは企業の拡張が
続くジャカルタと北京であった。2012年の賃料上昇はより控えめ
なものとなり、香港とシンガポールでは、企業の活動が減速する
ためある程度下落する見通しである。
インダストリアル・セクター:依然として小売業販売額の増加
が地域内のインダストリアル市場の成長を牽引しているが、輸
出入に関連するセグメントの成長率はより控えめとなっている。
2011年第4四半期にはほとんどの市場で賃料上昇が減速し、四
半期ベースの賃料上昇率が2~3%と最も高かったのは、空室率
の低い香港と北京であった。貿易依存型の市場である香港とシ
ンガポールを除けば、今後12カ月間、
ほとんどの市場で賃料は緩
やかに上昇する見込みである。
価格は安定した投資総額を背景に一層上昇
2011年第4四半期のアジア・パシフィックにおける商業用不動産
の投資総額は合計220億米ドルと、前四半期並みとなった。前四
半期比で増加率が最高であった国は、
中国とオーストラリアとな
った。2011年通年の投資総額は前年比6%増の910億米ドルと
なり、地域内で発生した大規模な自然災害を勘案すれば堅調な
結果といえよう。2011年も上位3市場は日本、
中国、
オーストラリ
アとなり、合わせて投資総額の55%を占めている。
ほとんどの市
場において、物件取得は主に国内投資家主導で行われたが、
オ
ーストラリアではクロス・ボーダーの投資家が活発に投資を行っ
た。
2012年には、
比較的安定した投資環境が予想され、多くの投資
家が日本やオーストラリア等のコア市場に所在する優良資産に目
標を定める見通しである。
中国も強い成長力が予想されているこ
とから依然として魅力的となろう。潤沢な資金を擁するアジアの
投資家は引き続き活発であることが見込まれ、高リターンを求め
る地域外投資家の注目も高まると予想される。
プロパティ クロック
Aグレードオフィス
プライムリテール
Guangzhou
Shanghai
Singapore
Guangzhou
Hong Kong
Singapore
Hong Kong
Melbourne*
Sydney*
SE Queensland*
Beijing
賃料上昇の減速
賃料下落の加速
賃料上昇の加速
賃料下落の減速
Manila
Perth
Adelaide
Melbourne, Jakarta
Beijing
Manila,
Kuala Lumpur
賃料上昇の減速
賃料下落の加速
賃料上昇の加速
賃料下落の減速
Bangkok
Shanghai
Seoul
Ho Chi Minh City
Bangalore^
Osaka, Canberra
Sydney
Auckland, Delhi^
Kuala Lumpur
Mumbai^
Tokyo, Taipei
Chennai, Wellington Brisbane
Bangkok
^ CBD & SBD
*Regional
高級住宅
インダストリアル
Jakarta, Mumbai
Auckland, Delhi
Chennai
Tokyo, Bangalore
Singapore (Conventional)
Hong Kong
Bangkok, Singapore*
Hong Kong
Singapore (High-Tech)
Shanghai
Shanghai, Beijing
Manila
賃料上昇の減速
賃料下落の加速
賃料上昇の減速
賃料下落の加速
賃料上昇の加速
賃料下落の減速
賃料上昇の加速
賃料下落の減速
Jakarta
Sydney
Beijing
Melbourne
Brisbane
Auckland
Kuala Lumpur
*For High-end Residential Properties
*Business Parks (Singapore)
Logistics Space (Hong Kong, Shanghai, Beijing, Tokyo Bay Area)
2011年第4四半期は東京、
ソウル、香港以外のほとんどの主要市 筆者
場で価格の上昇が続いたものの、前四半期と比較すると減速して
いる。
ジャカルタと北京のオフィス価格は賃料上昇にともない約
6%上昇し、最大の前四半期比上昇率を記録した。
シンガポール
の価格は若干上昇、香港は前四半期比2.9%下落となっている。
2012年については、北京とジャカルタの価格が最も大きく上昇す
ると予想しているが、利回りは地域内を通じてほぼ安定的に推移
する見通しである。
比較的安定した1年となる見通し
要約すると、今年もアジア・パシフィック地域の経済成長が不動
産市場の活動を支え続け、賃貸借契約面積は若干減少するもの
の投資総額は安定的に推移する見通しである。
ほとんどの市場で
賃料と価格は更に上昇するものの、
そのペースは昨年よりも緩や
かとなるであろう。
グローバル経済が景気後退を回避するというベース・ケース・シナリ
オに基づき、
賃料や価格の下落はあっても一時的なものに留まり、
2013年に不動産市場の活動水準は再度上向くと予想している。
Tokyo
Dr.ジェーン・マレーは1998年に
Jones Lang LaSalle に入社し、
2005年4月、
アジア・パシフィッ
ク地域リサーチ・ヘッドに就任。
世界60カ国以上の約300名の専
門家チームのうち、同地域所在の
140名以上の専門家を統括して
いる。
アジア・パシフィック地域のリサーチチームは、地域に所在す
る主要不動産市場の調査・分析・予測、
コンサルティング、特定
のトピックについての論文や定期刊行物の発行等のサービス
を提供して、当社クライアントの投資戦略の策定を支援してい
ます。
アジア・パシフィック地域の不動産市場
アジア パシフィック プロパティ ダイジェスト • 2011年第4四半期 アラステア ヒューズ アジア・パシフィック地域CEO
アジア パシフィック プロパティ ダイジェスト • 2011年第4四半期
ユーロ圏の問題がアジア市場の成長を阻害する
私が20年間のヨーロッパ勤務を経て、
アジアに就任してから4年 2012年は、
「慎重ながらも楽観的」
なムードでの年明けとなった。
目に突入した。一つ学んだことは、
アジアの不動産市場は長期間 「慎重」
であるのは、
ヨーロッパにおける展開がアジアにも影響す
安定していないということだ。2009年は価格が最大60%下落す ることが明らかなためであり、
「楽観的」
であるのは、
アジア・パシ
るという痛烈な崩壊の年だったが、2010年は市場が急速に回復 フィック地域のファンダメンタルズが堅固なためである。短期間で
し、一部市場ではオフィス賃料が40%も上昇した。
もアジア・パシフィックに滞在したならば、
この地域では
「中国がす
べて」
であることが理解いただけるだろう。
インドは比較的閉鎖的
景 況 感 、価 格 、取引総 額の回復という2 0 1 0 年のトレンドは
な経済であるが中国は、
日本が自動車を、
オーストラリアが鉱物
2011年上半期も継続したが、
その後変化が生じた。米国の予算
を、
インドネシアが石炭を、香港がサービスを販売する相手であ
編成の行き詰まり、
ユーロ圏発の恐ろしいニュース、次第に声高
る。
中国が風邪をひけば、
アジアは肺炎を患うであろう。
にささやかれるようになった中国の住宅バブル崩壊を背景に、
テ
ナントや投資家のムードは強気から慎重姿勢へと変化した。
その アジア・パシフィックでは、欧米経済の問題が貿易、
とりわけ対中
結果、取引は減少、香港やシンガポール等、国際的なエクスポー 貿易に与える影響を主として懸念している。西側諸国が中国製品
ジャーが最も大きな市場では高騰していた賃料が鎮静化し始め を購入できなければ、
中国は近隣のアジア・パシフィック諸国から
ている。
商品やサービスを購入できない。
アラステア ヒューズ アジア・パシフィック地域CEO
アジア パシフィック プロパティ ダイジェスト • 2011年第4四半期 他方、
アジア・パシフィックの英国に対する姿勢は一般的に幾分
異なっている。英国、
とりわけロンドンは、様々な歴史的・経済的
理由を背景に、
アジアの投資家に
「安全な逃避先」
とみなされ、商
業用および住宅用不動産に資金を投入するに適していると考え
られている。
当社では、英国の不動産をアジアの買い手に結び付けることを専
門に扱うチームをアジア・パシフィックに配置している。先日もロ
ンドンの優良商業用不動産を売却したが、15社程度の応札があ
り、
うち約半数がアジアの投資家であった。King Sturgeとの事
業統合後、
当社はアジアにおける英国住宅プロジェクト販売の主
導的立場を確立しており、先月はシンガポールで国際販売事業
の専門企業であるDSTを買収してこれをさらに強化している。
2011年のアジア・パシフィック不動産市場は、例えるなら前・後
半で流れが変わったゲームだったと言えるが、不確実性が高まっ
ている現在、2012年の展開を予想することは困難である。
しかし
ながら、注目すべきトレンドがいくつか見られる。
• 中国は成長を続けるであろう。住宅セクターは減速するが、
こ
れは政府の意向に基づく操作が行われたためである。政府が
2012年に回復を求めた場合、
その意向はそのまま反映される
であろう。
• とりわけ金融サービスのハブ的役割を果たしている市場では
局地的な低迷がみられる可能性があるが、
アジア・パシフィッ
クの不動産市場は比較的堅調に推移する見通しである。
ア
ジア企業は依然として成長と雇用拡大を続けており、西側企
業はより多くの商品やサービスをアジアの買い手に売り、対
アジア投資を継続したいと考えている。
さらに西側企業は、
コ
スト削減の手段をインド、
フィリピン、ベトナム等のアジアの低
コスト国へのアウトソーシングに求めている。
これらの要因は
全て、
スペース需要を生む。投資サイドをみると、潤沢な資金
を抱えるアジアの投資家や成長の機会を求める西側投資家
が、銀行セクターの概してスムーズな融資を背景に、価格を下
支えする見通しである。
フィックの不動産市場が相対的に力強く成長する長期的なトレン
ドの中での着実な一歩となる年みなしている。
ジョーンズ ラン
グ ラサールは現在、
中国とインドに10,000名、残るアジア・パシ
フィック地域にさらに10,000名の従業員を配している。私がただ
一つ完全な自信をもって予測できるのは、
当社にとって2012年は
1年を通じてクライアントの支援に奔走する多忙な年となるであろ
うことである。
皆様に実り多い年となることを祈念する。
• アジアの機関投資家や個人投資家は、
ロンドン等の安全な
逃避先への国際的分散投資の機会を求め続けるだろう。
ある
インドネシアの投資家は先日、稼働率の高いロンドンのオフィ
スへの投資は、
「配当のある金」
だと説明した。
当然ながら、
アジアの成長については、経済的・政治的にあらゆる
短・中期的リスクが伴う。
しかし当社では2012年を、
アジア・パシ
アラステア ヒューズ
アジア・パシフィック地域CEO
注目を集める大震災後の東京ロジスティクスマーケット
犬間 由博
アソシエイト ダイレクター、リサーチ&アドバイザリー
震災発生~3ヶ月
4ヵ月~現在
2011年3月に発生した東日本大震災は、
日本の不動産マーケッ
トにも少なからず影響を与えた。直接的な建物の倒壊による被
害は東京においては少なかったものの、外国からのインバウンド
に大きく依存するホテルや、海外旅行者をも含めた消費動向全
般に影響されるリテールセクターは全国的に漂う“自粛ムード”の
中で大きな打撃を被った。
東京ベイエリアでの液状化発生を受けて、物流拠点の湾岸部か
ら内陸部へのシフトが予想されていたが、結果的には大きな変化
はなかった。国内最大の消費地でもある首都圏を背後に持つ物
流拠点である東京港、羽田空港への接近性に優れている東京ベ
イエリアの地位は揺るがなかったことになる。
ロジスティクスセクターも東京においては、物流センターの建物自
体への損傷は限定的であった。
しかし、保管商品の荷崩れが発
生したことで、商品自体の損害に加え、散乱した商品を整理する
まで物流センターの機能が停止し事業継続が不可能となる事例
が多く見られた。
また、埋立地が多い東京ベイエリアの一部では
液状化が発生し、物流センター周辺の駐車場や道路に影響がで
た。
その反面、短期契約の一時避難的な需要もあり、耐震性能の高
い最新型物流施設への特需が発生した。
その結果、需給が引き
締まり稼働率が急速に高まるというマーケットにとってはプラスの
面も観測された。
一方、
マクロ的な観点からみると、製造業のサプライチェーンが寸
断されたことによる物資の流れの停滞が、
海外輸出量の急減とい
う形で現れており(図1)、物流業界へのマイナスの影響が明確に
判る。
図1: 輸出・輸入量の推移(日本)
震災直後の一時避難的な短期契約の終了により、
マーケットが
再び低迷する懸念があったが、結果として通常の賃貸借契約へ
移行するものが多く、
マーケットの需給悪化には繋がらなかった。
むしろ、震災後に起こった、耐震性能の高い最新型物流施設へ
のテナント需要の増加はその後も持続的なトレンドを形成してい
る。
投資市場においても、物流施設に対する投資家の注目は依然と
して高い。GLプロパティーズによるラサール インベストメント マ
ネージメントのポートフォリオ15物件、1,226億円での取得は、
2009年末のパシフィックセンチュリープレイス丸の内(PCPM)以
来の大型取得事例となった。本取引の対象となった物件は、総延
床面積約77万㎡におよび、
その90%が東京・大阪の大都市圏に
立地している。
明るい将来
賃料の推移を東京Aグレードオフィスと比較してみると、物流セク
図2: 賃料トレンド比較
50%
110
40%
100
30%
賃料インデックス (1Q08=100)
増減率 (前年同月比、y-o-y)
20%
10%
0%
90
80
70
60
–10%
輸出
出所 : 財務省貿易統計
輸入
Dec-11
Sep-11
Jun-11
Mar-11
Dec-10
Sep-10
Jun-10
50
–20%
Mar-10
注目を集める大震災後の東京ロジスティクスマーケット
10 アジア パシフィック プロパティ ダイジェスト • 2011年第4四半期
40
4Q06
4Q07
4Q08
ロジスティクス (東京ベイエリア)
出所 : ジョーンズ ラング ラサール
4Q09
4Q10
4Q11
Aグレードオフィス (東京 CBD)
注目を集める大震災後の東京ロジスティクスマーケット
アジア パシフィック プロパティ ダイジェスト • 2011年第4四半期 11
図3: ロジスティクス ストック概観(日本)
物流施設全体
4.8億㎡ (100%)
大型物流施設
1.6億㎡ (33%)
最新型物流施設
1千万㎡ (2%)
出所 :ジョーンズ ラング ラサール
ターの安定性の高さが際立っていることが判る。
これは、
そもそも
物流業界自体がコストに対して非常にセンシティブであることか
ら、好況期においても賃料上げは困難であり、
それに起因して下
落期においてもその幅は小さくなっている(図2)。
これは投資利回
りの推移を見ても同様の傾向が読み取れる。
この傾向は今後も
続くであろう。
これまで物流子会社を持ち、
自社グループ内で物流を行ってい
た国内事業会社も日々激しくなる新興国をはじめとした海外勢と
の競争に打ち勝つために、本業へ回帰する動きは増加傾向にあ
る。
その結果、本業ではない物流事業をアウトソースするトレンド
は今後も続くことは確実である。
安定的なリターンを追求するコア投資家の投資先として適してい
ると考える。
著者
未だ最新型物流施設が日本の全ロジスティクスストックに占める
割合はわずか2%程度である(図3)。
したがって、今後の世界経済
低迷による物流需要の減少を考慮しても、震災後の”Flight to
Quality”による需要や企業のアウトソースニーズに比し、十分な
ストック量であるとはいえない。
ストック規模の小ささは、新規供
給によるインパクトが大きくなるデメリットもあるものの、成熟経済
国であるが故に今後も国全体としての高成長は見込みづらい日
本においても、数少ない成長セクターであるといえる。
よって、成長性が見込めることに加えて、極めて高い市場安定性
を有する東京ロジスティクスセクターは、
中長期視点を持ち、
より
犬間 由博
リサーチ&アドバイザリー
東京: オフィス
•Aグレードオフィスビルの空室率は3%台へと低下
•賃料は横ばい圏内で推移する中、依然として賃貸市場はテナント優位
•価格は小幅下落、下げ止まり感強まる
賃料と価格のインデックス
120
100
需要
80
60
40
20
2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年
第4四半期 第4四半期 第4四半期 第4四半期 第4四半期 第4四半期
供給
空室率
8
450
6
300
4
150
2
2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年
第4四半期にAグレードオフィスビルの新規供給はなかった。2011年通年では、
ストックは前年比1.5%増加している。
%
600
0
今期着工したAグレードオフィスビルは2棟あり、双方が日本橋/京橋エリアに
2014年に竣工予定である。
「室町東地区開発計画2-3街区」
は三井不動産等に
よる複合用途の建物であり、総延床面積63千㎡、
オフィス貸床面積20千㎡の規
模である。
さらに
「京橋トラストタワー」
は森トラストによるホテルを含む複合用途
の建物であり、延床面積52千㎡、
オフィス貸床面積28千㎡の規模である。双方と
も災害時の事業継続をサポートするため、非常用発電の取り入れ等を行ってい
る。
0
出所: ジョーンズ ラング ラサール
2007年から2011年のネット・アブゾープションと供給は通年
の数値であり、
空室率は年末時点の数値である。
供給予定は
2012年通年の数値である。
賃料・価格動向
第4四半期の賃料は27,245円となった。
賃料の変動率は第3四半期の0.4%下落
から当四半期比は0.1%下落となり、
一段と減速して概ね横ばい圏内の動きとなっ
ている。
11月に
「赤坂パークビル」
が608億円、NOI利回り4.7%で取引された。
当該建物
の用途ははオフィス、
リテール、住宅であり、地上30階建て、延床面積97千㎡の規
模である。
取得日の稼働率は99.7%であった。
売主は三菱地所、
買主はジャパンリ
アルエステイト(JRE)である。
JREは三菱地所をメインスポンサーとするJ-REITであ
る。
見通し(12ヶ月)
賃料
月額賃料
27,245 円/坪
クロック フェーズ*
賃料下落の減速
直近の賃料ピーク
以降の経過期間
15 四半期
* 7ページのプロパティ クロックのフェーズを示す
見通し
(12ヶ月)
賃料
第4四半期の日本経済は、
グローバル経済の減速や円高の影響により、
持ち直しの
動きが休止している。
こうした経済状況のもとで、東京のAグレードオフィスビルの
空室率は第3四半期の4.1%から第4四半期に3.6%へと低下している。
第4四半期
のネット・アブゾープションは25千㎡となり、前四半期から減少したものの健全な
水準で推移し、
2011年通年で158千㎡となっている。
主として国内企業による集約
やアップグレードにより吸収され、
賃料削減を伴うケースが多い。
第4四半期の移転事例としては、
「品川グランドセントラルタワー」
から
「オランダヒル
ズ森タワー」
へ移転した三菱UFJリサーチ&コンサルティング、
渋谷から
「JA共済ビ
ル」
へ入居したNTTデータ経営研究所、
「プルデンシャルタワー」
から
「大手町ファ
ーストスクエア」
へ入居したデジタルアーツが挙げられる。
インデックス: 2007年第4四半期 = 100
出所: ジョーンズ ラング ラサール
千m2
東京: オフィス
12 アジア パシフィック プロパティ ダイジェスト • 2011年第4四半期
価格
今後の日本経済は、
グローバル経済の回復や、震災復興関連の需要が徐々に顕
在化していくことなどから、緩やかな回復基調で推移すると考えられる。
こうした
経済状況のもとで、2012年のAグレードオフィスの新規供給は過去10年平均の
130%と比較的大規模となっている一方で、
ネット・アブゾープションは、
半数以上
のビルが竣工時に高い稼働率あることが決定していることや、震災以降「安全・質
への回避」
の傾向が顕著になっていることから、安定的に推移する見込みであり、
空室率は小幅上昇するものの概ね現在の水準を維持する見込みである。
したがっ
て、賃料は緩やかに上昇するものと予測する。賃料上昇にともない、投資利回りは
若干低下、
価格は緩やかに上昇するであろう。
注:本レポートは、都心3区(千代田区、中央区、港区)に立地するAグレードオフィスマーケットについて纏めている
アジア パシフィック プロパティ ダイジェスト • 2011年第4四半期 13
大阪: オフィス
需要
第4四半期の近畿地域の景気は、
グローバル経済減速や円高などの影響や、企
業の景況感に慎重さがみられることから、足踏み状態となっている。
こうした経済
状況のもとで、大阪のAグレードオフィスの空室率は第3四半期の7.0%から第
4四半期は6.7%となり、2四半期連続で低下している。
ネット・アブゾープションは
4.7千㎡となり、前四半期から減少して比較的低い水準で推移したもののプラス
を維持し、2011年では62千㎡となった。賃借面積は主として国内製造業が吸収
しており、移転理由は主として賃料削減、立地改善、一部ではBCPの強化が含ま
れている。個別の建物をみると築年数の浅い建物で稼働率の上昇が顕著なもの
がある。
第4四半期の移転事例としては、
「中之島ダイビル」へ本社移転した旭化成ファイ
ンケム、
「中之島セントラルタワー」へ入居したトクヤマ、
「梅田スカイビルタワーイ
ースト」
から
「大阪富国生命ビル」
へ本社移転した日本合成化学が挙げられる。
賃料と価格のインデックス
120
100
80
60
40
20
2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年
第4四半期 第4四半期 第4四半期 第4四半期 第4四半期 第4四半期
インデックス: 2007年第4四半期 = 100
出所: ジョーンズ ラング ラサール
空室率
第4四半期の賃料は月額坪当り10,920円となった。前期比0.3%下落、前年比
0.5%上昇とほぼ横ばい圏内の動きであるものの、
インセンティブは若干拡大してお
り、
依然として市場がテナント優位である状況を示している。
第4四半期に大阪CBDに立地するAグレードオフィスの売買取引は発表されなか
った。
見通し(12ヶ月)
今後、近畿地域の経済はグローバル経済減速の影響が強まることが懸念される。
また、為替動向、電力の供給制約、
タイでの洪水被害の影響をみきわめる必要が
ある。
こうした経済状況のもとで、2012年の大阪のAグレードオフィスの新規供給
は過去5年平均の75%程度となっており、
比較的標準的な水準となっているもの
の、
当該平均値の2倍以上に相当する新規供給を2013年に控えて、
ネット・アブ
ゾープションが伸び悩む見通しである。
したがって、空室率は上昇傾向で推移す
るものと予測される。一方、賃料は、大量供給を控えて下落圧力が働くものの下
落の余地は小さいことから、下落率の縮小が続く見通しである。
これにともない投
資利回りは上昇し、価格は下落基調で推移するであろう。
160
8
120
6
80
4
40
2
0
2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年
0
出所: ジョーンズ ラング ラサール
2007年から2011年のネット・アブゾープションと供給は通年
の数値であり、空室率は年末時点の数値である。供給予定は
2012年通年の数値である。
賃料
月額賃料
10,920 円/坪
クロック フェーズ
賃料下落の減速
直近の賃料トラフ(底) 2 四半期
以降の経過期間
* 7ページのプロパティ クロックのフェーズを示す
見通し
(12ヶ月)
賃料
注:本レポートは、大阪市の都心2区(中央区、北区)に立地するAグレードオフィスマーケットについて纏めている
%
賃料・価格動向
千m2
供給
第4四半期に大阪のAグレードオフィス市場に新規供給はみられなかった。
2011年通年では2棟のAグレードオフィスビルが供給され、
ストックは前年比
4%増加している。2012年の竣工予定は1棟であり、
ストックは前年比4%増加す
る予定である。
大阪: オフィス
•空室率は若干低下、特に築年数の浅いビルの稼働率が向上
•賃料は小幅下落、インセンティブは若干増加
•価格の下落を背景に、依然として投資市場の動きは限定的
価格
東京: ロジスティクス
14 アジア パシフィック プロパティ ダイジェスト • 2011年第4四半期
東京: ロジスティクス
•賃貸需要は引き続き安定的に推移
•賃料は前期比横ばいで推移
•GLPとCICが東京と大阪などの物流施設15施設を1226億円で取得
コンテナ取扱数 - 東京港
1.2
TEU (百万)
1.1
需要
1.0
0.9
0.8
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
第3四半期 第3四半期 第3四半期 第3四半期 第3四半期 第3四半期
コンテナ取扱数
出所: 東京都港湾局
第4四半期の輸出や生産は、
グローバル経済の減速、
円高、
タイ洪水の影響によ
り、横ばい圏内の動きになっている。設備投資は復興関連需要を受けて緩やか
な増加基調にあり、個人消費も底堅く推移している。
こうした状況のもとで、東京
ベイエリアの先進的物流施設の賃貸市場は、一部で大型のテナント入替がみら
れたものの、総じてみれば、3PL事業者等の運輸サービス業、食料品製造業、通
信販売業等に牽引されて引き続き安定的に推移している。
第4四半期の賃貸事例として、
内陸部の
「プロロジスパーク川島」
で日立物流コラ
ボネクストが7.7千㎡を追加賃借、別の1社が30千㎡を賃借している。
供給
第4四半期の東京ベイエリアに新規供給はみられなかった。一方、内陸部では、
神奈川県海老名市で
「海老名物流センター計画」
が延床面積35千㎡の規模で
竣工している。
当該センターの建築主は三井住友ファイナンス&リースであり、東
部ネットワークがリースにより賃借する。
海上出入貨物 - 東京港
26
第4四半期に東京ベイエリアで着工した案件はみられなかった。一方、
内陸部で
はラサール インベストメント マネージメント(LIM)による
「ロジポート北柏」
が着工
している。127千㎡の規模で2012年に竣工予定である。
トン (百万)
24
22
20
18
16
2006年 2007年 2008年
200年
2010年 2011年
第3四半期 第3四半期 第3四半期 第3四半期 第3四半期 第3四半期
出入貨物
今期明らかになった大型の開発計画には、
いずれも内陸部で2012年に着工、
2013年に竣工予定となっており、
三菱地所とLIMによる
「ロジポート相模原」
(延床
面積:210千㎡)、
GLプロパティーズ(GLP)による
「GLP三郷III」
(延床面積:94千㎡)、
公共シー・アール・イーによる
「KCRE草加物流センター」
(延床面積: 30千㎡)があ
る。
賃料・価格動向
出所: 東京都港湾局
第4四半期の東京ベイエリアの最新型物流施設の賃料は月額坪当り5,792円と
なり、第3四半期の0.2%上昇から第4四半期は横ばいとなっている。
今期の取引事例をみてみると、GLPが、
中国投資有限責任公司(CIC)と折半出資
の合弁事業を立ち上げ、LIMのファンドより、東京と大阪の大都市圏などに立地
する15の物流施設(総延床面積: 770千㎡)を1226億円で取得している。GLPと
CICはLIMから取得した15施設の信託受益権を50%ずつ保有する。
見通し(12ヶ月)
賃料
月額賃料
5,792 円/坪
クロック フェーズ
賃料下落の減速
直近の賃料ピーク
以降の経過期間
2 四半期
今後、輸出や生産はグローバル経済の減速の影響を受けながら当面横ばい圏内
の動きを続け、設備投資と個人投資は一部復興関連需要に牽引されて比較的安
定的に推移するとみられる。
こうした状況のもとで、2012年の東京ベイエリアに立
地する先進型物流施設の賃貸市場は、新規供給は限定的な水準が見込まれて
いる一方で、需要は引き続き3PL事業者等の運輸サービス業、食料品製造業、通
信販売小売業等に牽引されて安定的に推移する見通しである。
したがって、賃料
は横ばいから緩やかな上昇基調で推移するであろう。
ただし、
旧来型の物件には
厳しい状況が続く可能性がある。
* 7ページのプロパティ クロックのフェーズを示す
見通し
(12ヶ月)
賃料
価格
NA
注:本レポートは、主に東京都のベイエリア(品川区、大田区、江東区)に立地する新型物流施設について纏めている
制作協力: 株式会社 一五不動産情報サービス
アジア パシフィック プロパティ ダイジェスト • 2011年第4四半期 15
J-REITマーケット
2011年第4四半期にJ-REITの新規上場はみられなかった。
市場動向
2011年第4四半期末のJ-REITインデックスは834.36となり、第3四半期の
928.56から10.1%下落、2010年末の1,130.70から26.2%下落している。
ユーロ
圏の政府債務危機等を背景に、下落基調で推移した。
11月に「いちご不動産」が誕生した。
レジデンス特化型のFCレジデンシャル
(FCR)とオフィス特化型のいちご不動産(いちごリート)の合併が成立したもので、
FCRを吸収合併存続法人とする吸収合併方式としている。
当該総合型J-REITの
運用資産は1000億円超の規模である。
2012年4月に日本ホテルファンド(NHF)とジャパン・ホテル・アンド・リゾート
(JHR)が合併する。NHFを吸収合併存続法人とする吸収合併方式とし、JHRは
解散する。合併後に当該J-REITの運用資産は1230億円の規模となる予定であ
る。
取引事例
ジャパンリアルエステイト(JRE)は「赤坂パークビル」を608億円、NOI利回り
4.7%で取得した。JREによる取得後、
当該建物は住宅部分を除き、売主であり
JREのメインスポンサーでもある三菱地所が一括賃借してテナントに転貸を行う
予定である。
当該取引は2011年で最大規模の取引となっている。
プレミア投資法人がオリックス等よりオフィスビル6件、
レジデンス1件の合計7物
件を331億円で取得した。取得資産は全て首都圏に立地している。NOI利回りは
オフィスビルで5.0-6.7%、
レジデンスが5.4%となっている。
ケネディクス不動産はAIGエジソン生命保険よりオフィスビル等8物件のポートフ
ォリオを285.5億円で取得した。取得資産は東京、名古屋、仙台等の経済圏に所
在している。
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
REIT指数
TOPIX
J-REIT: 2003年3月31日 = 1000
TOPIX: 1968年1月4日 = 100
出所: 東京証券取引所
図表2: インデックス比較
2011年第4四半期
1,000
900
800
700
600
2011年12月
2011年11月
REIT指数
2011年12月
2012年1月
TOPIX
J-REIT: 2003年3月31日 = 1000
TOPIX: 1968年1月4日 = 100
出所: 東京証券取引所
J-REITマーケット
新規上場
図表1: インデックス比較
2003年4月–2011年12月
2003年4月
2003年10月
2004年4月
2004年10月
2005年4月
2005年10月
2006年4月
2006年10月
2007年4月
2007年10月
2008年4月
2008年10月
2009年4月
2009年10月
2010年4月
2010年10月
2011年4月
2011年10月
•時価総額は2.9兆円、平均分配金利回りは6.2%
•J-REITインデックスは前期比10.1%の下落と下落幅がさらに拡大
•市場を取り巻く環境が厳しさを増す中、公募増資や資産取得が相次ぐ
ジョーンズ ラング ラサール リサーチ
ジョーンズ ラング ラサールのリサーチ部門は、優れたマクロ経済分析、不動産市場分析、投資
戦略を提供するプロフェッショナルチームです。全世界700以上の都市において展開するビジネ
スから得られた、幅広い経験と専門的な知識をもとに、
クライアントの不動産に関するあらゆる意
思決定を支援いたします。
アジアパシフィック地域のリサーチ部門は、需要、供給、空室率、賃料、価格、投資利回り、賃貸及
び売買事例、市場動向、法規制をセクター別(オフィス、
リテール、住宅、物流、
ホテル) に定期的に
モニターしています。
ジョーンズ ラング ラサールのリサーチ部門はグローバル、
リージョン、
ローカルレベルで定期刊
行物やレポートを配信しています。
1. リアル エステート デイリー – アジアパシフィック地域の不動産市場のニュースを日刊で発信
2. エコノミック インサイト – 不動産市場に影響を与えるトピックを検証したレポート
3. ホワイト ペーパー – 不動産市場に関連する様々なテーマについて分析したレポート
4. グローバル マーケット パースペクティブ – 毎月刊行。世界の不動産市況や時事問題に関す
るインサイトを纏めたレポート
www.research.joneslanglasalle.com
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リアル エステート インテリジェンス サービス (REIS)は、定期購読型のリサーチ サービスです。不動産投資家、
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対してアジア パシフィック地域内の不動産市場に関する詳細なデータや分析等の情報を四半期毎に提供しております。
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• アジア パシフィック地域内の市場比較
対象セクター
• オフィス
• リテール
• 高級住宅
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Tier 1 都市
アジア Tier 1都市
クアラルンプール
広州
ジャカルタ
上海
シンガポール
ソウル
台北
チェンナイ
デリー
東京
大阪
ベンガルール
バンコク
北京
香港
ホー・チ・ミン
マニラ
ムンバイ
Tier 2 都市
Tier 3 都市
オーストラリア
- Tier 1都市
アデレード
キャンベラ
シドニー
パース
ブリスベン
メルボルン
ニュージーランド
- Tier 1都市
ウェリントン
オークランド
アジア Tier 2都市
アフマダーバード
ハイデラバード
コルカタ
プネー
REISに関するお問合せ先
リサーチ&アドバイザリー部
犬間 由博
tel 03 5501 9218
[email protected]
中国 Tier 2&3都市
長沙
成都
重慶
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Jones Lang LaSalle Research - Asia Pacific
ASIA PACIFIC
Dr Jane Murray
Head of Research – Asia Pacific
+852 2846 5274
[email protected]
Taipei
Howie Wang
Research Associate
+886 2 8758 9886
[email protected]
GREATER CHINA
Michael Klibaner
Head of Research – China and Shanghai
+86 21 6133 5707
[email protected]
Macau
Alvin Mak
Senior Manager
+853 2871 8822
[email protected]
Marcos Chan
Head of Research – Greater Pearl River Delta
+852 2846 5276
[email protected]
NORTH ASIA
Japan
Takeshi Akagi
Head of Research and Advisory
– Japan
+81 3 5501 9235
[email protected]
Beijing
Meggie Qin
Head of Research – Beijing
+86 10 5922 1379
[email protected]
Guangzhou
Silvia Zeng
Manager
+86 20 3891 1238
[email protected]
Chengdu
Shelly Xie
Head of Research and Consulting
– Chengdu
+86 28 8665 1022
[email protected]
Qingdao
Winnie Ning
Assistant Analyst
+86 532 8579 5800
[email protected]
Tianjin
Alice Chen
Head of Research and Consulting
– Tianjin
+86 22 8319 2233 ext 119
[email protected]
Chongqing
Jason Feng
Head of Research and Consulting
– Chongqing
+86 23 6370 8588
[email protected]
Shenyang
Alex Wang
Manager, Research and Consulting
– Shenyang
+6 24 3109 1300
[email protected]
South Korea
Yongmin Lee
Assistant Manager, Research
– South Korea
+82 2 3704 8888
[email protected]
SOUTH EAST ASIA
Singapore
Dr Chua Yang Liang
Head of Research
– South East Asia and Singapore
+65 6494 3721
[email protected]
Indonesia
Anton Sitorus
Head of Research – Indonesia
+62 21 515 5665
[email protected]
The Philippines
Claro Cordero
Head of Research – Philippines
+63 2 902 0887
[email protected]
Thailand
Dan Tantisunthorn
Head of Research – Thailand
+66 2 624 6420
[email protected]
Vietnam
Trung Thai
Manager, Research and Consultancy
+84 8 3910 3968
[email protected]
Malaysia
(Jones Lang Wootton in association with
Jones Lang LaSalle)
Malathi Thevendran
Executive Director – Research
+60 3 2161 2522
[email protected]
WEST ASIA
India
Ashutosh Limaye
Head – Research & REIS
+91 22 2482 8400
[email protected]
AUSTRALASIA
David Rees
Head of Research – Australasia
+61 2 9220 8514
[email protected]
New Zealand
Chris Dibble
Research and Consulting Manager
+64 9 366 1666
[email protected]
ジョーンズ ラング ラサール株式会社 お問い合わせ先
本社
〒100-0014
東京都千代田区永田町
2-13-10
プルデンシャルタワー3F
tel 03 5501 9200 (代)
不動産運用サービス事業部
〒102-0075
東京都千代田区三番町
5-7
精糖会館5F
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関西支社
〒541-0053
大阪府大阪市中央区本町
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本町オルゴビル6F
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北海道支社
〒060-0061
北海道札幌市中央区南一条西
6-15-1
札幌あおば生命ビル6F
tel 011 218 1919 (代)
代表取締役
濱岡 洋一郎
tel 03 5501 9200
[email protected]
不動産運用サービス事業部
(プロパティマネジメント・リーシング)
中山 幹朗
tel 03 5210 8319
[email protected]
リサーチ&アドバイザリー部
(市場調査・不動産鑑定評価)
赤城 威志
tel 03 5501 9235
[email protected]
不動産運用サービス事業部
(アセットマネジメント)
鈴木 緑
tel 03 5210 8323
[email protected]
コーポレートソリューションズ事業部
マーケッツ
(賃貸借・トランザクションマネジメント)
ニール ヒッチン
tel 03 5501 9203
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キャピタルマーケット事業部
(不動産投資取引支援)
水野 明彦
tel 03 5501 9250
[email protected]
コーポレートソリューションズ事業部
プロジェクトマネジメント (開発・建築管理)
宮本 淳
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キャピタルマーケット事業部
(クロスボーダー取引)
マイケル ボールズ
tel 03 5501 9204
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コーポレートソリューションズ事業部
ファシリティマネジメント (資産・施設管理)
田島 義資
tel 03 5501 9953
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キャピタルマーケット事業部
(コーポレート ファイナンス)
アリ ドルカー
tel 03 5511 3373
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ジョーンズ ラング ラサール ホテルズ
沢柳 知彦
tel 03 5501 9240
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CRE事業部
(企業不動産戦略)
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関西支社
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ジョーンズ ラング ラサール株式会社
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