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当日配布資料(5.00MB)
GP2タンパクを標的とする新規 経口粘膜ワクチンの開発 独立行政法人理化学研究所 統合生命医科学研究センター 粘膜システム研究グループ グループディレクター 大野 博司 研究の背景〜ワクチンとは〜 あらかじめ接種することで、防御体制を誘 導し、感染症を予防する物質 注射 注射器・針 滅菌装置 医療従事者 IgGのみ誘導 経口 スポイト・スプーン IgG+IgAも誘導 感染前に抗原を排除 粘膜ワクチンの問題点 ・消化酵素、ムチンなどの分泌物の存在 ・絨毛で覆われている 効率良く届きにくい 弱毒生ワクチンが使われている 感染する危険 (例:ポリオ) 不活化ワクチンの可能性? 効率的なデリバリーが必要 ワクチンデリバリーに必要な要素 標的となるもの 届けるためのツール 特異的な分子を発現している 特異的に結合できる タンパク 脂質 微生物 核酸 抗体 低分子化合物 細胞 アプタマー 糖鎖 生体に害のあるもの 抗原性の低いもの 腸管関連リンパ組織 濾胞関連上皮層 (FAE) M細胞 腸管内腔 上皮細胞 パイエル板 微絨毛 Mø B パイエル板 Mowat, Nature Rev. Immunol 2003 M細胞(microfold cell) ワクチンデリバリーのための有効な標的となる細胞 ・短い不規則なひだ状の突起をもった細胞 細胞特異的マーカー分子は分かっていなかった ・基底膜に免疫細胞を抱え込むポケット構造あり ・一方向性の物質輸送能が発達 (トランスサイトーシス) M細胞特異的発現分子の同定 絨毛 (VE) 濾胞関連上皮層 (FAE) FAE,VEにおけるGP2の 発現比較 GP2とUEA‐1 との共染色 FAE GP2 FAE UEA‐1 Mowat, Nature Rev. Immunol 2003 K. Hase, et al. Nature, 2009. UEA‐1 FAE 今まで使用されていた M細胞マーカー M細胞、杯細胞に結合する GP2はM細胞特異的マーカー分子である 抗GP2抗体のM細胞への取り込み 腸ループアッセイ X‐Y GFP‐E. coli (上面) PP 腸ループ X‐Z (側面) GP‐2と細菌との結合 In vitro 結合実験 細菌 25 mGP2‐Fc 洗浄 細菌ゲノムDNAの抽出 定量 PCR (16S rDNA ) hGP2‐Fc hFc 20 相対的結合量 リコンビナントタンパク質 mGP2‐Fc hGP2‐Fc hFc 15 10 5 0 GP2依存的な大腸菌のM細胞への取り込み GP2-/- Num. of bac. transcytosis/PP (cells) GP2+/+ 70 60 50 40 30 20 10 0 GP2+/+ GP2-/Mouse genotype GP2 UEA-1 GFP-E. coli K12 GP2依存的なサルモネラの取り込み 経口感染後のコロニー形成アッセイ Salmonella Typhimurium (FimH +) 経口感染 or Yersinia enterocolitica (FimH ―) 1 day WT or GP2 KO mice Y. enterocolitica S. Typhimurium 20 p = 0.0374 MLN MLN 100 80 80 CFU / mg organ 16 200 PP CFU / mg organ 400 300 100 p = 0.0037 CFU / mg organ CFU / mg organ 500 PP パイエル板(PP)・腸間膜リ ンパ節(MLN)の摘出とコロ ニー形成アッセイ 60 12 60 40 8 40 100 4 20 20 0 0 0 0 WT GP2 KO WT GP2 KO WT GP2 KO WT GP2 KO サルモネラ経口感染後のGP2依存的免疫応答 T細胞増殖 糞便中IgA 血清IgG 全身応答 (サルモネラ腹腔投与) 血清IgG 4 3.5 3 GP2+/+ GP2-/- 2.5 2 1.5 1 0.5 0 Day0 Day9 GP2はサルモネラや大腸菌を特異的に取 り込むM細胞受容体である 菌 GP2 パイエル板上皮 M cell 樹状細胞 抗GP2抗体による抗原デリバリーツール ラット抗マウスGP2 モノクローナル抗体 ストレプトアビジン (SA) VH VH VL VL CH1 CL CH2 CH3 CH1 -S-S-S-S- CL CH2 CH3 Kipriyanov et al. Protein Engineering (1996) 抗GP2抗体による抗原デリバリーツール Anti‐GP2‐SA 抗GP2抗体Fab ビオチン ストレプトアビジン CH1 VH CL VL anti‐GP2‐SAのM細胞への結合 ‐ ループアッセイ ‐ 抗GP2抗体 Nati‐GP2‐SA SA UEA-1: M cell or Goblet cell Phalloidin: F-actin anti‐GP2‐SAによる免疫応答 ‐ OVA ‐ PBS(to 200 l) bOVA(50 g) SA(30 g) antiGP2-SA(30 g) CT(10 g) PBS ○ × × × × OVA ○ ○ × × × SA ○ ○ ○ × × AntiGP2-SA ○ ○ × ○ × PC × × × ○ ○ 糞便中抗OVA IgA抗体 (ELISA) ○ ○ × × ○ ○ ○ × (経口免疫3週後) OC SC VC Reciprocal log 2 titer ○14 12 ○ ** ** × * ○ 10 8 6 4 2 0 * P <0.05 ** P <0.01 Bar = SE ○ ○ ○ anti‐GP2‐SAによる免疫応答 ‐ サルモネラ ‐ サルモネラ 2w 1 3 5 AntiGP2-SA+BP BP:ビオチン化サ ルモネラタンパク 1x107 virulent S. typhimurium Survival rate PBS(to 200 l) bBP⊿FimH SA(30 g) antiGP2-SA(30 g) PBS ○ × × × CT(10 g) × BP ○ ○ × × × SA+BP ○ ○ ○ × × AntiGP2-SA+BP ○ ○ × ○ × PC ○ × × × ○ OC ○ ○ × × ○ SC ○ ○ ○ × ○ anti‐GP2‐SAによる免疫応答 ‐ サルモネラ ‐ 糞便中サルモネラ特異的IgA anti‐GP2‐SAによる免疫応答 ‐ サルモネラ ‐ 生存曲線 100% Survival 80% 60% * 40% 20% 0% 0 5 10 Days after inoculation * : P = 0.0223 Calculated by Log-rank test 新技術の特徴・従来技術との比較 • 従来技術の問題点であった、少量の抗原でも 粘膜免疫応答を惹起する可能性を示した。 • 本技術の適用により、不活化ワクチンでも有 効な粘膜免疫応答を惹起できる可能性があ る。 想定される用途 • インフルエンザ等経粘膜感染する感染症に 対する粘膜ワクチンへの応用 実用化に向けた課題 • 全身免疫系の賦活(血清IgG上昇)ができる か、さらなる検討が必要である。 • 抗ヒトGP2抗体による検証が必要 • ワクチンに抗体医薬を使う経済的メリットがあ るか。(企業への期待) 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 GP2の使用 • 出願番号 • 出願人 • 発明者 :腸管M細胞マーカーとしての :特願2006‐331950 :理化学研究所 :大野博司、河野和也、長谷耕二 お問い合わせ先 独立行政法人理化学研究所 社会知創成事業 創薬・医療技術基盤プログラム 事業開発室 住所:〒230-0045 神奈川県横浜市鶴見区末広町1-7-22 TEL:045-503-9153 Mail:[email protected] http://www.riken.jp/dmp/