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国際的な集まりによる標準化教育の動向

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国際的な集まりによる標準化教育の動向
国際的な集まりによる標準化教育の動向
Trends in education about standardization by international gathering
岩垂邦秀1
Kunimitsu IWADARE
キーワード:国際標準化、標準化教育方法論
Keywords:International standardization, Methodology of education about standards
1 はじめに
標準は、効率的で品質の高い製品の製造への利用、互換性の確保による利便性の向上な
ど従来の使い方を始め、企業のビジネス戦略に関係することや、貿易の問題への発展、国
内外で規制に用いられ、さらに、安全確保、持続的発展に寄与するための組織管理への利
用など、その役割の多様化と広がりが、近年ますます顕著になり、複雑性を増している。
さらに、これらの標準の開発を支える人材の不足も課題となっている。こうした背景から、
標準化教育の開発が進んでおり、本稿では、国際的な取り組みと、そこで得られた海外で
の状況を報告する。
2 国際的な集まりによる標準化教育の取り組み
標準教育に関する国際的な取り組みの一つとして、ICES(International
for
Education
about
Standardization)があるi。ICES
Cooperation
は、標準化教育を推進、改善し、
すべての利害関係者に魅力的に映るようにすることをミッションとし、2006 年 2 月に、産
業界、アカデミア、政府、標準化機関の集まりによって設立された、標準化教育に関心が
ある個人と組織によるネットワークである。ICES の目的は、学際的なネットワークの発展
と維持、標準化教育に関する政策やインフラの開発の促進、教育訓練を推進する組織との
協力関係の模索、カリキュラムや教材などを蓄積することによる標準化教育の専門化など
である。
ISO(International Organization for Standardization) 、 IEC(The International
Electrotechnical Commission)、ITU(International Telecommunication Union)の3つの国
際標準化機関が協力する WSC(World Standards Cooperation)があるii。WSC では、可能な
限り作業の重複が行われないよう透明性を確保するなど、コンセンサスベースの規格の開
発、採用、実施を促進することを目的としている。
ICES は、2014 年 8 月 14 日に”Developing Standards Professionals Across Borders”、そ
の翌日の 15 日に、WSC は” Encouraging the next generation of standards experts”とそ
れぞれ題して、ワークショップを行った。
1
一般財団法人日本規格協会
3 海外における標準化教育の開発
ICES、WSC ともに、標準化の専門家を育成するために、どのような取り組みを行って
いるかという点について多くの発表と議論がなされた。
近年行われている標準化教育の特徴として、i)教育方法論として標準化を教えるツールの
開発、ii)標準化教育のコンテンツの開発の大きく2つに分けて推進されているようである。
これらの標準化教育の開発の多くは、国、標準化団体などが費用や人材を工面し、大学や
国際機関と共同で行われている。
標準化を教えるツールの開発については、議論や討論ができる SNS の開発がある。コー
スで標準について説明した後で、学生を質問や討論が行われる掲示板へ誘導し、質問に対
し標準の専門家が回答するというものである。次に、標準を分かりやすく楽しく学ぶため
のツールとして、シミュレーションゲームが挙げられる。すでに NIST とともに、ハーバ
ード大学ケネディスクールの Dr. Jorrit de Jong は、”Setting Standards: A Simulation
Exercise in Strategy and Cooperation in Standardization Process”を過去に提供している
が、スティーブン工科大学でもシミュレーションゲームを取り入れたコー
ス”Standardization and Society”を提供しているiii。
標準を体系的に学ぶためのコンテンツ開発は、種々あるが、APEC で行われている
Subcommittee on Standards and Conformance(SCSC)プロジェクトがある。このプロジェ
クトは、2007 年から 2012 年まで標準化教育についての開発が行われ、2013 年から 2020
年の予定で、標準化に関係する HRD(Human Resources Development)の開発が始まって
いる。
4 まとめ
標準化教育の国際的な動向として、ここ 10 年足らずで、国際機関や各国の標準化団体な
どが協力して、標準化の教育に関する議論と開発が進み、徐々に大学等で講義が行われる
ようになった。一方で、多くの大学では、すでに、固有技術に関する講義が目一杯配置さ
れており、標準化の教育を大学の科目として入れ込むことができない現状にあることも事
実である。標準の重要性を訴求するための取り組み方法として、”標準”という言葉をコース
タイトルに入れず、人気のコースの中に標準の内容を一部に組み込む大学もある。
標準化教育に関する材料は、そろいつつあるものの、標準化教育の方法論、また、標準
化に関わりがない者に対して標準化の重要性を訴求する方法の更なる工夫が必要である。
参考文献
http://www.standards-education.org/uploads/files/ICES_Fact_Sheet_rev1.pdf (2014 年 10 月閲覧)
http://www.worldstandardscooperation.org/about.html (2014 年 10 月閲覧)
iii http://www.standards-education.org/uploads/No.%205%20Stevens-ICES-2014%20%282%29.pdf
i
ii
(2014 年 10 月閲覧)
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