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栃木県農村地域再生可能エネルギー利活用推進計画〔概要版〕 (PDF
栃木県農村地域 再生可能エネルギー 利活用推進計画 -概要版- 趣旨 位置付け 本県の農村地域には、太陽光、 小水力、バイオマスなどの再生可 能エネルギーが豊富に存在してい ますが、適地が分散していること や個々のポテンシャルが小規模で あることなどから、十分に活用さ れていない状況にあります。 そこで、農村地域における再生 可能エネルギー導入の可能性や推 進目標、経営別の利活用モデルな どを提示し、利活用の計画的な推 進を図るため、本計画を策定する こととしました。 期間 この計画の期間は、平成42年 (2030年)を展望し、平成26 年度から30年度までの5年間と しています。 -1- 1 計画の背景 ○ 農村地域には、太陽光、風、水力、バイオマスといった再生可能エネルギーとなる地域資源 が豊富に存在しています。 ○ 農業を資源循環型の産業として発展させていくためにも、農村地域においてこのような再生 可能エネルギーの利活用を積極的に推進していく必要があります。 ○ 再生可能エネルギーの利活用については、 地球温暖化への対応や東日本大震災に伴う 福島第一原発事敀から大きな注目を集めて います。 ○ 平成24年7月には、再生可能エネルギー電 力の固定価格買取制度がスタートし、平成 25年11月に農山漁村再生可能エネルギー 法が公布されるなど、取組推進に向けた環 境整備が進んでいます。 ○ 一方、農業面では、電力や燃油高騰により、 営農経費や土地改良施設維持管理費が増大 しています。 2 本県の特性等 ○ 冬季の日照時間は全国4位 ⇒晴れの日が多く、冷涼な気候である 本県は、太陽光発電に適しています。 ○ 約16,000kmの農業用水路 ⇒豊富な水と北部を中心に急峻な地形を 持つ本県は、小水力発電のポテンシャル が高い地域といえます。 ○ 乳牛生産量が全国第2位 再生可能エネルギー固定価格買取制度 (2014年4月~2015年3月) ◆再生可能エネルギーによって発電された電気は、一定の期間・価格で電気事業者 が買い取ることを義務付ける。 ◆買取に要した費用は、電気代の一部として消費者が負担する。 太陽光 10kW未満 34.26 円 10年間 水 力 200kW未満 ⇒家畜ふん尿は、メタン発酵させることで、 発生するガスをエネルギー源として利 用することができます。 ○ 野菜用ハウスが全国5位の面積 ⇒暖房用ボイラー燃料の価格高騰が収益 を圧迫する要因になるため、省エネ設 備の導入が進んでいます。 32 円 20年間 200kW~ 1千kW未満 34 円 20年間 バイオ マス 風力 10kW以上 29円 20年間 メタン発酵 ガス化 1千kW~ 3万kW未満 24 円 20年間 未利用木材 燃焼 地熱 一般木材等 燃焼 20kW未満 20kW以上 55円 22 円 20年間 20年間 1万5千kW 1万5千kW 40 円 15年間 26 円 15年間 未満 廃棄物燃焼 (木質以外) 以上 リサイクル 木材燃焼 39円 32 円 24 円 17円 13円 20年間 20年間 20年間 20年間 20年間 注)2014年4月時点の見込額(税抜き) 3 農業でのエネルギー利用 ※単位はkW当たり 土地改良施設の年間電力構成比 ○ 本県の農林水産業では、重油、軽油、電力が主に用いられて いるエネルギーです。 ○ 農業生産にかかる電気料金は、平均で約130万円となってい ます。(H25農業士アンケート調査結果) ○ 土地改良施設に係る電気料金は、県内の土地改良区の約半数 (62土地改良区)が、年間100万円以上かかっています。 (H24土地改良区アンケート調査結果) ○ 園芸用ハウスでは、燃油高騰への対応の一つとして、ヒートポ ンプ式暖房設備が、平成24年度までに県内のハウス加温面積 の2.5%に普及しています。 -2- 1,000万円~ 2,000万円 9% 500万円~ 1,000万円 9% 2,000万円以上 4% 電気料金なし 18% 0~100万円未満 100万円~ 500万円 27% 33% 出典:H24土地改良区アンケート調査 (回答のあった127土地改良区) 4 農村地域で進む再生可能エネルギーの導入 (平成24年度現在) 太陽光発電 460kW 小水力発電 1000kW バイオマス 25kW (土地改良区、畜産農家など) (土地改良区) (実証プラント) 5 再生可能エネルギーの利用可能量と利用する上での課題 ○ 建物屋根や平地と相性のよい太陽光発電 ・利用可能量:約66,000kW(設備容量)、約75,000千kWh(約23,000世帯分の電力量に相当) ★課題:建物の構造強度を有していること、長期にわたる管理が必要となります。 ○ 1年を通じて水が使える水路と相性がよい小水力発電 ・利用可能量:約5,500kW(設備容量)、約29,000千kWh (約8,800世帯分の電力量に相当) ★課題:採算性を確保するには、年間を通して概ね流量が1.0m3/sあり、落差1m以上が必要です。 ※ バイオマスは、収集、運搬、管理コストが大きく、採算性の確保の検討が必要です。 6 計画の基本方針 目指すべき将来像 農業・農村において太陽光、小水力などの再生 可能エネルギーによる発電が進んでいます。その 電力が、園芸施設や畜産施設で有効活用され、化 石燃料の低減が図られているとともに、売電収益 が農業水利施設の維持管理費の低減や地域振興等 に役立っています。こうした取組を通して、栃木 版スマートビレッジが実現されています。 次の3つの基本方針のもと計画を推進します ①農村地域に豊富に存在する再生可能エネルギー を利活用してエネルギーの地産地消を進めます ②農業生産活動に再生可能エネルギーを積極的 に活用して ”エコ農業とちぎ”の実現を図ります ③再生可能エネルギーを利活用して地域活性化 を図ります ⇒基本方針に基づく、推進目標はp8に示しています。 7 推進方策 施策の展開方向 (1)普及推進 ・推進会議 ・推進手引 ・研修会 等 (2)調査・研究 ・低コスト化研究 ・再エネ利用モデル 等 ※再エネ利用モデルの例は 見開きで!(p4~7) (3)実践支援 ・意欲ある取組支援 ・施設導入支援 等 農村地域の再生可能エネルギー利活用の推進 推進体制 ○ 県市町等や民間企業との連絡体制を構築していきます。 -3- (1)土地改良区利活用モデル 土地改良区が主体となり、農業用水路の落差を活用した小水力発電、水路法面やため池 の水面等の日当たりがよく比較的広い面積を活用した太陽光発電等を行います。 発電電力は、蓄電池付き急速充電器を介し、水路点検用車両(電気)での活用、非常用 電源としての活用が技術的に可能です。また、電気事業者に売電することによって得た収 益を維持管理費に充当することができます。その他、法面への設置では、除草作業の軽減 も期待できます。 農業用水路(法面) 太陽光発電:40kW 効果:維持管理費の節減 (売電収入:130万円/年) ため池(水面上) 太陽光発電:350kW 農業用水路(落差) 小水力発電:3kW×2台 効果:維持管理費の節減 (売電収入:1120万円/年) 効果:維持管理費の節減 (売電収入:110万円/年) 主体・ 経営体 モデル 年間 エネルギー 消費量 再生可能 エネルギー 種類 土地 改良区 電力消費量 80,000kWh ( 100万円) 小水力 概ね落差1m,流量1㎥以上の水路 太陽光 約120㎡以上の南向き法面 採算性確保の条件 支援施策 概略設計、協議手続、施設整備 (国庫補助事業導入) 安価でフロートを構築できること ※蓄充電施設、EVは、採算性の確保や支援施策には含まれていませんが、小水力 発電施設と併せて設置することにより、維持管理に活用することができます。 -4- (2)園芸農家利活用モデル 園芸農家が主体となり、農業用ハウスでの太陽光発電や、暖房設備を導入します。 太陽電池は、軽量型が必要ですが、発電電力は、蓄電池付き急速充電器を介し、集出荷車 両、家屋や事業所、停電時の天窓開閉電源としての活用が技術的には可能です。電気事業者 に売電することもでき、収益の改善にもつながります。 さらに、暖房用のヒートポンプを既存の重油ボイラーとともに使用することで、また、バ イオマスボイラーの導入により省エネに貢献できます。 園芸ハウス(屋根) 太陽光発電:20kW 園芸ハウス(屋内) ヒートポンプ暖房:4台 効果:燃油代の削減 (トマト40a:60万円/年) 園芸ハウス(屋内) 木質バイオマスボイラー 効果:燃油代の削減 (いちご40a:50万円/年) 主 体 経営体 モデル 園 芸 農 家 カーネー ション (50a) 電気 20,000kWh(25万円) 太陽光 建物の構造強度等の条件を満たすもの 燃料 50kL(410万円) 熱供給量88万kcal/h 木質バイオマスボイラー 燃料(ペレット・チップ)の保管場所の確保 トマト (40a) 電気 8,000 kWh(10万円) 太陽光 建物の構造強度等の条件を満たすもの 燃料 25kL(200万円) 熱供給量44万kcal/h ヒートポンプ(暖房) 電力契約が低圧の場合、高圧契約 (50kW以上)とならないこと 木質バイオマスボイラー 燃料(ペレット・チップ)の保管場所の確保 木質バイオマスボイラー 燃料(ペレット・チップ)の保管場所の確保 いちご (40a) 年間 エネルギー消費量 燃料 12kL(97.2万円) 熱供給量21万kcal/h 再生可能 エネルギー種類 効果:営農経費の削減 (売電収入:67万円/年) 採算性確保の条件 支援施策 施設整備 (国庫補助事 業の導入) ※ただし、農 水省の補助 施設に限る ※蓄充電施設、EVは、採算性の確保や支援施策には含まれていませんが、太陽光発電施設と併せて設置することにより、 緊急時の利用等に活用することができます。 -5- (3)畜産農家利活用モデル 畜産農家が主体となり、畜舎屋根等の日当たりがよく比較的広い面積を活用した太陽光発 電を行います。 発電電力は、蓄電池や急速充電器を整備することにより、作業用車両(電気)での活用、 停電等緊急時の電源としての活用も技術的に可能です。他にも、電気事業者に売電すること によって得た収入で収益の改善が期待できます。 その他、屋根に設置した太陽電池は、暑熱対策の効果(屋内の温度2~3℃低下)があり、 空調負荷も低減します。 畜舎(屋根) 太陽光発電:25kW 主 体 経営体 モデル 年間 エネルギー 消費量 再生可能 エネル ギー種類 畜 産 農 家 乳牛 (40頭 規模) 電気消費量 29,800kWh (37万円) 太陽光 採算性確保の条件 建物の構造強度等 の条件を満たすも の 効果:営農経費の削減 (売電収入:80万円/年) 支援施策 施設整備 (国庫補助事業の導入) ※ただし、農水省の補助施設に限る ※蓄充電施設、EVは、採算性の確保や支援施策には含まれていませ んが、太陽光発電施設と併せて設置することにより、緊急時の利用等 に活用することができます。 ○暑熱対策の効果(コラム) 太陽光パネルを牛舎の屋根に設置すると、太陽光で屋 根が暖まるのを防ぐため、夏に牛舎内の体感温度が3℃ 程度下がるという副次的な効果が得られます。このこと は、牛の飼養環境の改善にもつながります。 東日本大震災以降、自然エネルギーを利用して安全な ものを提供していく必要があるという認識のもと、新設 の牛舎に太陽光パネルを設置できるような設計をするな ど、採算性も考えながら、環境に配慮した経営を一層進 めていくことを検討している生産者もいます。 出典:平成23年度 食料・農業・農村白書 p261 -6- (4)集出荷施設、農業集落排水施設利活用モデル JAや直売所が主体となり、集出荷所等 の日当たりがよく比較的広い面積を活用 した太陽光発電を行います。 発電電力は、蓄電池を介し、作業用リフ ト(電気)や運搬車両(電気)での活用、 その他所内電力負荷の削減(ピークカッ ト)等にも貢献できます。他にも、電気事 業者に売電することによって得た収入で収 益の改善が期待できます。 主 体 JA、 直 売 所 経営体 モデル 集出荷場 平均設置 面積 1,400m2 年間 エネルギー 消費量 再生可能 エネル ギー種類 電気消費量 68,000kWh (85万円) 太陽光 農業集落排水施設では、市町村が主体と なり、処理施設の屋根や施設の余地を活用 して太陽光発電を行うことができます。 敷地に大きなスペースを確保できない ため、基礎が小さく済む設置方法を検討 する必要があります。 発電電力量は、蓄電池を介しポンプ用 電力とするなど、所内での自家消費を想 定しています。このことにより、停電時 においても処理の継続が可能となります。 主 体 経営体 モデル 市 町 村 農業集落 排水施設 1,000人 規模 年間 エネルギー 消費量 再生可能 エネル ギー種類 電気消費量 123,000kWh (200万円) 太陽光 集出荷場(屋根) 太陽光発電:25kW 採算性確保の条件 建物の構造強度等の 条件を満たすもの 支援施策 施設整備 (国庫補助事業の導入) ※ただし、農水省の補助施設に限る 敷地内(柵付近) 太陽光発電:16kW 採算性確保の条件 建物の構造強度等の 条件を満たすもの -7- 効果:経費の削減 (売電収入:80万円/年) 効果:経費の削減 (電気料金節減:32万円/年) 支援施策 施設整備 (国庫補助事業の導入) ※ただし、施設へ電力を直接供給するもの に限る 計画の基本目標 本計画においては、基準年を2012年度とし、2030年度までの中長期的な施設整備 の推進目標を定めることとします。 【設備容量の目標】 (kW) 利用可能量 2012年度 2015年度 2018年度 2020年度 2030年度 66,256 460 4,100 6,000 9,500 14,700 5,500 1,000 1,700 2,000 2,500 2,800 71,756 1,460 5,800 8,000 12,000 17,500 太陽光 (施設等) 小水力 計 【年間発電量の目標】 備考 (年間発電量:kWh) 利用可能量 2012年度 2015年度 2018年度 2020年度 2030年度 16,740,360 備考 太陽光 (施設等) 75,452,000 523,848 4,669,080 6,832,800 10,818,600 小水力 28,908,000 5,256,000 8,935,200 10,512,000 13,140,000 2030年度 CO2削減量 14,716,800 約15,000t 104,360,000 5,779,848 13,604,280 17,344,800 23,958,600 31,457,160 計 ・太陽光年間発電量:設備容量(kW)×24(hr/日)×365(日)×13(%) ・小水力年間発電量:設備容量(kW)×24(hr/日)×365(日)×60(%) 【熱エネルギー削減効果の見通し】 農村地域では、再生可能エネルギーの電気利用に加 え、家庭用エアコンにも使われるヒートポンプ技術 など、熱エネルギーの利用も進んでいます。今後、 加温面積10a以上のハウス(960ha)に導入した場 合、ボイラー燃料が約3,300kL(CO2 排出量が約 8,100トン)削減できます。 (kL) 20,000 熱エネルギー 3割削減! A重油 15,000 電気 10,000 5,000 【耕作放棄地の活用について】 本計画においては、農地への再生可能エネルギー発 電施設の導入について、耕作放棄地等における再生利 用が困難な荒廃農地等の適正な活用を基本とし、導入 目標は定めないこととします。 平成26年3月 編集発行 栃 木 県 〒320-8501 栃木県宇都宮市塙田1-1-20 農政部 農村振興課 TEL 028-623-2338 FAX 028-623-2337 -8- 0 現状 見込み ヒートポンプ導入効果の例