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1,2,5,6,9,10-ヘキサブロモシクロドデカン

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1,2,5,6,9,10-ヘキサブロモシクロドデカン
名古屋市環境科学研究所
1,2,5,6,9,10-ヘキサブロモシクロドデカン
1,2,5,6,9,10-Hexabromocyclododecane
略称:HBCD
【対象物質の構造】
Br
Br
Br
Br
Br
Br
CAS 番号:3194-55-6
分子式:C12H18Br6
【物理化学的性状】
分子量
沸点 (℃)
蒸気圧 (kPa)
水溶解度 (mg/L)
log Pow
641.70
> 250℃ (分解)
6.3 × 10-9
8.6 × 10-3 (25℃)
7.74
SRC PhysProp Database による
【毒性、用途等】
・毒性情報:(単位:mg/kg bw)
>10000:ラット、14d-LD50 異性体混合物(組成不明)
U.S.EPA/OPTS Public Files, (1990)
>6400:マウス、14d-LD50 異性体混合物(組成不明)
U.S.EPA/OPTS Public Files, (1990)
0.9:マウス、3 ヶ月、NOEL 過敏行動増加
Eriksson ら (2006)
・用途:難燃剤
699
§1分析法
(1)分析法の概要
固相ディスクを用いて水試料 200 mL を抽出し、脱水後、アセトン 4 mL および
ジクロロメタン 4 mL で溶出する。窒素吹き付けで乾固直前まで濃縮し、80%ア
セトニトリル水溶液で 1 mL とし、試験液とする。試験液 10 μL を LC/MS/MS
に注入し、ESI-Negative で測定する。
(2)試薬・器具
【試薬】
α-HBCD (50 μg/mL) 99%:Cambridge Isotope Laboratory 社製
β-HBCD (50 μg/mL) 99%:Cambridge Isotope Laboratory 社製
γ-HBCD (50 μg/mL) 99%:Cambridge Isotope Laboratory 社製
δ-HBCD (50 μg/mL) 99%:Wellington Laboratory 社製
ε-HBCD (50 μg/mL) 99%:Wellington Laboratory 社製
13
C12-α-HBCD (50 μg/mL) 99%:Cambridge Isotope Laboratory 社製
13
C12-β-HBCD (50 μg/mL) 99%:Cambridge Isotope Laboratory 社製
13
C12-γ-HBCD (50 μg/mL) 99%:Cambridge Isotope Laboratory 社製
メタノール (LC/MS 用):関東化学社製
アセトニトリル (LC/MS 用):関東化学社製
アセトン(残留農薬用):和光純薬工業社製
ヘキサン(残留農薬用)):和光純薬工業社製
ジクロロメタン(残留農薬用):和光純薬工業社製
【器具】
フロリジール PR(残留農薬用):和光純薬工業社製
Empore Disk SDB-XD (47 mm):3M 社製
ビーカー、目盛付き試験管、メスフラスコ、標線ビン、
吸引ろ過器装置、窒素吹き付け装置
700
(3)分析法
【試料の採取及び保存】
環境省「化学物質環境実態調査実施の手引き」(平成 21 年 3 月)に従う。
【試料の前処理及び試験液の調製】
水試料 200 mL にサロゲートとして 13C12-α, β, γ-HBCD を 50.0 ng(1.00 mg/L,
50.0 μL)添加する。固相ディスク(Empore Disk SDB-XD)はメタノール 10 mL、
精製水 10 mL でコンディショニングした後、試料を負荷する。試料の入ってい
たガラス容器は、2 mL のメタノールで洗浄し、固相ディスク上に合わせる。更
にそのガラス容器は 10 mL の精製水で洗浄し、同じく固相ディスク上に合わせ
(注 1)、約 20 mL/min の速度で通水する。通水後は 10 mL の精製水で固相ディス
クを洗浄し、1~2 分間吸引脱水した後、固相ディスクを吸引装置から取り外し、
40℃の乾燥機中で 1 時間乾燥させる(注 2)。
吸引ろ過装置を再度組み立て、ろ液留出部に受器をセットした後、4 mL のア
セトン、続いて 4 mL のジクロロメタンで溶出した後、ガラス製ファンネル等は
2 mL のアセトンで洗浄し溶出液に合わせる。その後、溶出液は 40℃の水浴を備
えた窒素吹き付け装置で乾固直前まで濃縮し(注 3)、80%アセトニトリル水溶
液で 1 mL にメスアップした後、超音波装置に 2 分間程度かけて試験液とする(注
4)。
【空試験液の調製】
試料と同じ量の精製水を用い【試料の前処理及び試験液の調製】の項に従っ
て操作し、得られた試験液を空試験液とする。
【標準液の調製】
α, β, γ, δ, ε-HBCD 50.0 μg/ml の標準原液を正確に 500 μL 量り取り、アセトニト
リル 25 mL で希釈して 1.00 mg/L の標準液を作製する。13C12-α, β, γ-HBCD も同様
にして 50.0 μg/ml の標準原液をアセトニトリルで希釈して 1.00 mg/L のサロゲー
ト内標準液を作製する。
【検量線用標準液の調製】
1.00 mg/L の標準液を 80%アセトニトリル水溶液で順次希釈して、2.00 ng/mL
から 100 ng/mL の検量線用標準液を作製する。
各検量線用標準液および試験液のサロゲート内標準物質濃度を 50.0 ng/mL に
なるように 1.00 mg/L のサロゲート内標準液を添加する。
701
【測定】
〔LC 条件〕
LC 機種 : Waters 2695
カラム :
Ascentis express C18 (2.1 mm×100 mm×2.7 μm) supelco
移動相 :
A : water B : CH3OH
C : CH3CN
0→16 min
A:25→21, B: 67.5→71.1, C: 7.5→7.9 linear gradient
16→18 min A:21→0, B:71.1→90, C:7.9→10 linear gradient
18→20 min A:B:C=0:90:10
20→25 min A:B:C=25:67.5:7.5
(移動相が 2 液までしか設定できない場合)
A : water B : CH3OH : CH3CN = 9 : 1
0→16 min
A:25→21, B: 75→79 linear gradient
16→18 min A:21→0, B:79→100 linear gradient
18→20 min A:B=0:100
20→25 min A:B=25:75
流量
: 0.2 mL/min
カラム温度 : 40℃
注入量 : 10 μL
〔MS 条件〕
機種 : Waters QuattroMicro API
コーン電圧 : 30 V
コリジョン電圧 : 15 eV
キャピラリー電圧 : 1.20 kV
コーンガス流量 : 50 L/hr
デソルベーションガス流量 : N2 (700 L/hr)
ソース温度 : 110℃
デソルベーション温度 : 350℃
イオン化法 : ESI(-)SRM
モニターイオン: 641 > 79 (確認イオン 677 > 79)
モニターイオン(内標準) : 653 > 79
〔検量線〕
検量線用標準液 10 μL を LC/MS に注入する。得られた標準物質のピーク面積
とサロゲート内標準物質のピーク面積の比及び濃度比から検量線を作成する。
702
〔定量〕
試験液 10 μL を LC/MS に注入し、得られた対象物質とサロゲート内標準物質
のピーク面積比から、検量線より定量する(注 5)。
〔濃度の算出〕
試料水中濃度 C (ng/L)は次式により算出する。
C =R・Q/V
R : 検量線から求めた対象物質をサロゲート物質濃度で割った比
Q : 試料中に添加したサロゲートの量 (ng)
(=添加するサロゲートの濃度 (ng/μL) × 添加するサロゲートの容量 (μL))
V : 試料水量 (L)
本分析法においては、Q : 50.0 (ng)、V : 0.2 (L)である。
703
〔装置検出下限 (IDL)〕
本分析に用いた LC/MS/MS の IDL を下表に示す(注 6)。
表1
IDL の算出結果
物質名
IDL
(ng/mL)
試料量
(L)
最終液量
(mL)
IDL 試料換算値
(ng/L)
α−HBCD
0.34
0.2
1
1.7
δ−HBCD
0.25
0.2
1
1.3
β−HBCD
0.24
0.2
1
1.2
ε−HBCD
0.19
0.2
1
0.94
γ−HBCD
0.20
0.2
1
1.0
* 物質名の標記の順はカラムからの溶出順を示す
〔測定方法の検出下限 (MDL)及び定量下限 (MQL) 〕
本測定方法における MDL 及び MQL を下表に示す(注 7)。
表2
MDL 及び MQL の算出結果
MDL
(ng/L)
海水
河川水
MQL
(ng/L)
海水
河川水
物質名
試料量
(L)
最終液量
(mL)
α−HBCD
0.2
1
3.8
2.3
δ−HBCD
0.2
1
2.7
3.2
7.0
8.3
β−HBCD
0.2
1
1.7
1.6
4.4
4.1
ε−HBCD
0.2
1
1.5
2.1
4.0
5.4
γ−HBCD
0.2
1
3.0
2.4
7.8
6.2
注
10
6.0
解
(注 1)HBCD は logPow が大きいので、ガラス容器の壁面等に吸着し易いと考え
られるため、メタノールを用いて洗浄する。通水は、メタノールによる
洗浄及び水洗を行い、全ての洗液を合わせた後、吸引通水により通水を
開始する。吸着の影響を軽減するためには、試料採取容器も 200 mL サ
イズとして試料採取を行い、試料採取容器にサロゲートを添加して全量
分析することが望ましい。
(注 2)通液終了後、固相ディスクを吸引装置に装着した状態で吸引乾燥を 1 時
704
間程度おこない、乾燥機中での固相ディスクの乾燥を省略しても差し支
えない。操作上の利便性を考えると、固相ディスクは十分に乾燥させて
おくことが望ましい。
(注 3)完全に乾固すると回収率が低下するので注意する。
(注 4)200 倍濃縮であるためクリーンアップが必要な場合は少ないが、試料中
のマトリックスが多く、クリーンアップが必要な場合は以下の方法で行
う。
溶出後、窒素吹き付け装置で乾固直前まで濃縮した後、1 mL のヘキサ
ンで再溶解する。1 cm 径オープンカラムにフロリジル(130℃で 16 時間
活性化させたものを使用)を 5 g 詰め、ヘキサン 10 mL で洗浄した後、
試料を負荷する。10%ジクロロメタン/ヘキサン 40 mL で洗浄し、25%ジ
クロロメタン/ヘキサン 100 mL で溶出させる。溶出液は、ロータリーエ
バポレーターを用いて乾固直前まで濃縮し、80%アセトニトリル水溶液
で 1 mL にメスアップした後、超音波装置に 2 分間程度かけて試験液と
する
(注 5)δ、 ε 体はラベル化試薬が入手できなかったので、δ 体は 13C12-α-HBCD、
ε 体は 13C12-β-HBCD を内標準物質として計算する。
(注 6)IDL は、「化学物質環境実態調査実施の手引き」
(平成 21 年 3 月)に従
って、表 3 のとおり算出した。測定時の代表的なクロマトグラムを図 1
に示す。
(注 7)MDL 及び MQL は、「化学物質環境実態調査実施の手引き」
(平成 21 年
3 月)に従って、表 4、5 のとおり算出した。測定時の代表的なクロマト
グラムを図 2、3 に示す。
705
表3
IDL の算出結果
α
物質名
δ
β
ε
γ
試料量 (L)
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
最終液量 (mL)
1
1
1
1
1
注入濃度 (ng/mL)
2
2
2
2
2
装置注入量 (μL)
10.0
10.0
10.0
10.0
10.0
結果 1 (ng/mL)
2.00
1.99
2.04
1.88
2.15
結果 2 (ng/mL)
2.21
2.01
2.07
1.91
2.13
結果 3 (ng/mL)
2.16
2.02
1.97
1.89
2.16
結果 4 (ng/mL)
1.99
2.09
2.05
1.92
2.21
結果 5 (ng/mL)
2.20
2.03
2.04
1.85
2.18
結果 6 (ng/mL)
2.08
2.10
2.06
1.97
2.12
結果 7 (ng/mL)
2.08
2.01
1.91
1.97
2.23
結果 8 (ng/mL)
2.00
2.19
1.93
1.84
2.27
平均値 (ng/mL)
2.090
2.055
2.007
1.904
2.179
標準偏差 (ng/mL)
0.090
0.067
0.063
0.050
0.052
IDL (ng/mL)*
0.34
0.25
0.24
0.19
0.20
IDL 試料換算値 (ng/L)
1.7
1.3
1.2
0.94
1.0
11
S/N 比
CV (%)
9
4.3
16
3.3
19
3.2
2.6
*IDL = t (n-1, 0.05) × 2 × σn-1
β
α
ε
γ
δ
γ
α
β
内標準物質
図1
IDL 算出時のクロマトグラム
706
10
2.4
表4
MDL 及び MQL の算出結果(海水試料)
α
δ
β
ε
γ
海水
海水
海水
海水
海水
試料量 (L)
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
標準添加量 (ng)
2
2
2
2
2
10
10
10
10
10
最終液量 (mL)
1
1
1
1
1
注入濃度 (ng/mL)
2
2
2
2
2
10.0
10.0
10.0
10.0
10.0
ND
ND
ND
ND
ND
ND
ND
ND
ND
ND
物質名
試料
試料換算濃度 (ng/L)
装置注入量 (μL)
操作ブランク平均 (ng/L)
無添加平均 (ng/L)
*1
*2
結果 1 (ng/L)
9.86
11.3
9.80
9.45
10.9
結果 2 (ng/L)
9.59
10.6
9.71
8.74
10.9
結果 3 (ng/L)
9.65
10.7
9.12
9.27
10.4
9.37
9.62
結果 4 (ng/L)
10.7
10.9
結果 5 (ng/L)
11.4
10.9
結果 6 (ng/L)
9.32
10.8
結果 7 (ng/L)
11.8
結果 8 (ng/L)
11.7
9.05
平均値 (ng/L)
10.50
10.67
標準偏差 (ng/L)
MDL (ng/L)
*3
MQL (ng/L)
*4
CV(%)
*1
9.84
9.37
10.1
11.1
11.6
10.0
9.54
9.20
10.0
9.22
11.0
9.807
9.419
10.58
1.01
0.702
0.444
0.399
0.781
3.8
2.7
1.7
1.5
3.0
7.0
4.4
4.0
7.8
10
15
S/N 比
11.2
10.6
9.69
12
9.6
6.6
20
4.5
22
16
4.2
7.4
操作ブランク平均:試料マトリクスのみがない状態で他は
同様の操作を行い測定した値の平均 (n = 3)
*2
無添加平均:MDL 算出用試料に標準を添加していない状態
で含まれる濃度の平均値 (n = 3)
*3
MDL = t (n-1, 0.05) ×σn-1×2
*4
MQL = σn-1×10
*5
サロゲート回収率:α;68.9%、CV% 8.8%
β;64.5%、CV% 8.7%
γ;64.8%、CV% 8.1%
707
α
β
ε
γ
δ
γ
α
β
内標準物質
図2
MDL 試験試料(海水)のクロマトグラム
708
表5
MDL 及び MQL の算出結果(河川水試料)
α
物質名
試料
δ
河川水
河川水
β
河川水
ε
河川水
Γ
河川水
試料量 (L)
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
標準添加量 (ng)
2
2
2
2
2
10
10
10
10
10
最終液量 (mL)
1
1
1
1
1
注入濃度 (ng/mL)
2
2
2
2
2
10.0
10.0
10.0
10.0
10.0
ND
ND
ND
ND
ND
ND
ND
ND
ND
ND
10.4
10.4
試料換算濃度 (ng/L)
装置注入量 (μL)
操作ブランク平均 (ng/L)
無添加平均 (ng/L)
*2
*1
9.98
結果 1 (ng/L)
結果 2 (ng/L)
10.2
8.95
結果 3 (ng/L)
結果 4 (ng/L)
10.8
結果 5 (ng/L)
10.2
9.32
10.2
10.9
9.67
10.6
11.0
10.8
9.57
10.2
11.7
10.5
9.67
10.0
11.8
10.8
10.9
9.05
結果 6 (ng/L)
9.51
11.4
結果 7 (ng/L)
9.51
9.43
平均値 (ng/L)
9.878
10.35
標準偏差 (ng/L)
10.6
10.1
9.48
10.4
9.94
9.89
10.5
10.00
10.04
10.92
0.60
0.832
0.409
0.536
0.617
MDL (ng/L)
*3
2.3
3.2
1.6
2.1
2.4
MQL (ng/L)
*4
6.0
8.3
4.1
5.4
6.2
S/N 比
20
CV (%)
*1
6.1
14
8.0
21
4.1
16
5.3
12
5.7
操作ブランク平均:試料マトリクスのみがない状態で他は
同様の操作を行い測定した値の平均 (n = 3)
*2
無添加平均:MDL 算出用試料に標準を添加していない状態
で含まれる濃度の平均値 (n = 3)
*3
MDL = t (n-1, 0.05) ×σn-1×2
*4
MQL = σn-1×10
*5
サロゲート回収率:α;86.6%、CV% 3.8%
β;84.8%、CV% 4.6%
γ;82.8%、CV% 3.2%
709
β
α
ε
δ
γ
γ
α
β
内標準物質
図3
MDL 試験試料(河川水)のクロマトグラム
710
§2
解
説
【分析法】
〔フローチャート〕
分析法のフローチャートを図 4 に示す。
サロゲート
(13C12-α, β, γ-HBCD 50.0 ng)
水試料
200 mL
固相抽出
固相洗浄
脱水
乾燥
Empore Disk SDB-XD
精製水 10mL
吸引脱水
1~2 min
40 ℃乾燥器
60 min
メタノール 2 mL 及び
精製水 10 mL で洗い込み
通水(20 mL/min)
溶出
濃縮
アセトン 4 mL
ジクロロメタン
4 mL
40 ℃
窒素吹き付け
乾固直前
図4
定容
80%アセトニ
トリル水溶液
to 1 mL
溶解
超音波 2 min
分析法のフローチャート
711
LC/MS/MS-SRM
ESI-Negative
〔検量線〕
検量線を図 5 に、クロマトグラムを図 6 に示す。また表 6 に検量線作成用デ
ータを示す。
3.5
y = 1.5342x - 0.0093
3
2
R = 0.9996
応答比(As/Ais)
2.5
y = 1.1303x - 0.005
2
R =1
2
α
δ
β
ε
γ
y = 1.0826x + 0.0032
2
R = 0.9997
1.5
y = 0.7199x + 0.0002
1
2
R = 0.9993
0.5
y = 0.4938x - 0.0024
2
R = 0.9995
0
0(0)
0.5(25)
1(50)
1.5(75)
2(100)
(ng/mL)
2.5
濃度比(Cis/Cs)
図5
検量線(括弧内の数値は標準溶液濃度。内標準物質濃度は 50 ng/mL)
712
表6
標準試料濃度
δ
β
ε
γ
応答値
相対感度係数
相対感度
(Cis/Cs) × (As/Ais)
*Cis = 50 (ng/mL)
係数の CV
内標準物質
(Ais)
m/z = 653
応答比
(As/Ais)
(ng/mL)
調査物質
(As)
m/z = 641
100
2279
1055
2.1591
1.0796
50
1215
1107
1.0981
1.0981
20
487
1065
0.4571
1.1427
10
237
1078
0.2200
1.0998
5
98
1063
0.0917
0.9175
2
45
1068
0.0420
1.0511
100
1529
1055
1.4482
0.7241
50
771
1107
0.6961
0.6961
20
326
1065
0.3058
0.7645
10
160
1078
0.1485
0.7423
5
73
1063
0.0684
0.6842
2
28
1068
0.0265
0.6630
100
3984
1767
2.2546
1.1273
50
2032
1798
1.1303
1.1303
20
799
1808
0.4420
1.1049
10
409
1873
0.2185
1.0924
5
186
1788
0.1043
1.0428
2
87
1816
0.0480
1.1995
100
4703
1528
3.0782
1.5391
50
2312
1562
1.4797
1.4797
20
966
1567
0.6167
1.5419
10
486
1606
0.3026
1.5130
5
231
1518
0.1522
1.5221
2
79
1514
0.0524
1.3098
100
1501
1528
0.9824
0.4912
50
785
1562
0.5023
0.5023
20
285
1567
0.1820
0.4551
10
148
1606
0.0919
0.4595
5
78
1518
0.0516
0.5156
2
33
1514
0.0220
0.5493
(Cs)
α
検量線作成用データ
713
(%)
7.3
5.3
4.6
6.0
7.2
β
α
ε
δ
γ
HBCD 10 ng/mL
γ
β
α
13
C12-HBCD 50 ng/mL
図6
標準物質のクロマトグラム
〔標準物質のマススペクトル〕
標準物質のマススペクトルを図 7 に示す。
図7
HBCD のプレカーサーイオン(上段)と
m/z: 641 のプロダトイオン(下段)のマススペクトル
714
〔操作ブランクのクロマトグラム〕
操作ブランクのクロマトグラムを図 8 に示す。
β
α
γ
内標準物質
図 8 操作ブランクのクロマトグラム
715
〔添加回収試験〕
精製水、河川水(庄内川)、海水(名古屋港)への標準物質添加回収結果を表
7 に示す。河川水、海水の添加回収試験試料のクロマトグラムを図 9 に示す。
表7
精製水、河川水(庄内川)、海水(名古屋港)への標準物質添加回収結果
精製水(添加)
物質名
α
δ
β
ε
試料量 (L)
0.2
0.2
0.2
標準添加量 (ng)
2
2
2
測定回数
3
3
3
検出濃度 (ng/mL)
2
2
2
回収率 (%)
98.8
-
サロゲート回収率 (%)
97.2
-
96.4
-
90.1
9.6
-
4.5
-
7.4
CV (%)
104
γ
-
100
精製水(無添加)
物質名
α
試料量 (L)
0.2
0.2
0.2
無添加
無添加
無添加
標準添加量 (ng)
測定回数
2
検出濃度 (ng/mL)
ND
β
ε
γ
2
ND
2
ND
ND
-
-
-
-
93.8
-
97.2
-
回収率 (%)
サロゲート回収率 (%)
δ
ND
96.4
河川水試料(添加)
物質名
α
δ
β
ε
γ
試料量 (L)
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
標準添加量 (ng)
2
2
2
2
2
測定回数
7
7
7
7
7
検出濃度 (ng/mL)
2
2
2
2
2
回収率 (%)
99
103
100
100
109
サロゲート回収率 (%)
68.9
CV (%)
-
6.1
8.0
716
64.5
4.1
5.3
64.8
5.7
河川水試料(無添加)
物質名
α
δ
β
ε
γ
試料量 (L)
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
標準添加量 (ng)
無添加
無添加
無添加
無添加
無添加
測定回数
2
2
2
2
2
検出濃度 (ng/mL)
ND
ND
ND
ND
ND
回収率 (%)
-
-
-
-
-
90.0
-
85.3
-
80.8
サロゲート回収率 (%)
海水試料(添加)
物質名
α
δ
β
ε
γ
試料量 (L)
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
標準添加量 (ng)
2
2
2
2
2
測定回数
8
8
8
8
8
検出濃度 (ng/mL)
2
2
2
2
2
105
107
98
94
106
回収率 (%)
サロゲート回収率 (%)
68.9
CV (%)
-
9.6
64.5
6.6
-
4.5
64.8
4.2
7.4
海水試料(無添加)
物質名
α
δ
β
ε
γ
試料量 (L)
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
標準添加量 (ng)
無添加
無添加
無添加
無添加
無添加
測定回数
2
2
2
2
2
検出濃度 (ng/mL)
ND
ND
ND
ND
ND
回収率 (%)
-
-
-
-
-
85.3
-
81.2
-
79.1
サロゲート回収率 (%)
717
河川水
β
α
ε
δ
γ
HBCD 2 ng 添加
γ
β
α
内標準物質
海水
α
β
ε
γ
δ
HBCD 2 ng 添加
γ
α
β
内標準物質
図9
河川水、海水の添加回収試験試料のクロマトグラム
718
〔分解性スクリーニング試験〕
分解性スクリーニング試験の結果を表 8 に示す。
表8
pH
分解性スクリーニング試験の結果
初期濃度
(ng/mL)
残存率 (%)
残存率 (%)
1 時間後
7 日後
α
δ
β
ε
γ
96
100
98
100
101
α
δ
β
ε
γ
99
96
96
81
95
99
98
100
91
94
5(暗所)
2
7(明所)
2
7(暗所)
2
95
97
92
96
100
92
99
89
90
95
9(暗所)
2
97
93
96
99
102
95
102
103
92
93
〔保存性試験〕
保存性試験の結果を表 9 に示す。
表9
保存性試験の結果
残存率 (%)
初期濃度
(ng/mL)
河川水
海水
7 日間
α
δ
β
ε
γ
95
87
93
92
試料
2
87
試料
20
91
97
96
試料
2
85
85
85
残存率(%)
初期濃度
(ng/mL)
標準溶液
1 ヶ月
α
δ
β
ε
γ
検量線最低濃度
2
103
94
107
96
100
検量線最高濃度
100
96
103
102
95
97
719
〔固相の選択〕
ディスク型固相4種、カートリッジ型固相4種、液々抽出2種で精製水から
の抽出方法を検討した。結果は以下に示す。
精製水 200 mL に HBCD を 50 ng 添加したものを試料として用いた。
固相抽出は、どの固相もアセトン、ジクロロメタンで洗浄した後、メタノール、
精製水各 10 mL でコンディショニングしてから使用した。通液後は 30 分ほど乾
燥させ、アセトン 3 mL、ジクロロメタン 3 mL で溶出し、窒素パージ後、1 mL
に定容。液々抽出は、各溶媒(ヘキサン、ジクロロメタン)とも 50 mL で 3 回
抽出。塩析効果を期待して、試料に 6 g の NaCl を添加したものも抽出した。
120
100
recovery(%)
80
α
β
60
γ
40
20
図 10
he
xa
he
ne
xa
ne
+N
aC
l
D
C
D
CM M
+N
aC
l
RP
S
D
X
C8
C1
8
se
ppa
k
C1
se
8
ppa
k
C8
oa
sis
H
LB
se
ppa
k
PS
2
0
抽出方法による回収率の違い
水試料を前処理するときの利便性を考慮して、液々抽出ではなく、ディスク
型固相を使用することとした。精製水を用いた前処理の検討結果から、C18 もし
くは XD を使用するのが良いと考え、この2つのディスク型固相を用いて海水
及び河川水で検討を行った。その結果、河川水試料においては回収率に大差は
なかったが、海水サンプルにおいては、XD を使用した方が良好な結果が得られ
たので、水試料の前処理には XD を使用することとした。
720
〔LC カラムの選択〕
HBCD は α、β、γ、δ、ε の 5 つの異性体が存在する。α、β、γ の 3 異性体のみ
であれば、多くのカラムで問題なく分離することが出来るが、5 異性体をすべて
分離することは困難だったので、分離条件を検討した。
その結果、母体がシリカゲルの 10 cm、3 μm のカラムでは、化学結合基が C8、
C18、C30 の 3 種類について検討したが、どの場合も 5 異性体分離は不可能であ
った。移動相条件によっては 4 異性体まで分離可能であるが、ベースライン分
離は難しく、特に α と δ、δ と ε の分離が悪かった(図 11 中 3, 4 参照)。またカ
ラムの長さを 15 cm のものに変え、長時間かけて分析を行うことにより、5 異性
体分離は可能となったが、ベースライン分離は難しいことに加えて、保持時間
が長いためにピーク形状が悪くなってしまった(図 11 中 2 参照)
。今回、使用
することにした Ascentis express カラムは、Fused-Core™ 粒子構造を持っており、
粒子内拡散が他のカラムに比べて小さい。そのため、通常の 3 μm のカラムの 2
倍の理論段数を持ち、sub-2 μm 充填剤粒子と同等の高速分析と高分離を達成す
るため、短時間で 5 異性体の分離が可能になった(図 11 中 1 参照)。
1
2
3
4
図 11 分析カラムによる分離の違い
(分析条件は以下の通り)
721
1. カラム :
移動相 :
0→16 min
16→18 min
18→20 min
20→25 min
Ascentis express C18 (2.1 mm×100 mm×2.7 μm) supelco
A : water B : CH3OH
C : CH3CN
A:25→21, B: 67.5→71.1, C: 7.5→7.9 linear gradient
A:21→0, B:71.1→90, C:7.9→10 linear gradient
A:B:C=0:90:10
A:B:C=25:67.5:7.5
2. カラム :
移動相 :
0→18 min
18→22 min
22→25 min
L-column C-18 (2.1 mm×150 mm×3 μm) 化評研
A : water B : CH3OH
C : CH3CN
A:25→20, B: 60, C: 15→20 linear gradient
A:20→0, B:60, C:20→40 linear gradient
A:B:C=25:60:15
3. カラム :
移動相 :
0→18 min
18→22 min
22→25 min
Develosil C-30 (2.1 mm×100 mm×3 μm) 野村化学
A : water B : CH3OH
C : CH3CN
A:25→20, B: 60, C: 15→20 linear gradient
A:20→0, B:60, C:20→40 linear gradient
A:B:C=25:60:15
4. カラム :
移動相 :
0→18 min
18→22 min
22→25 min
Capcell pak C-8 (2.1 mm×100 mm×3 μm) 資生堂
A : water B : CH3OH
C : CH3CN
A:30→20, B: 30, C: 40→50 linear gradient
A:20→0, B:30, C:50→70 linear gradient
A:B:C=30:30:40
722
〔環境試料の分析〕
図 12 に河川水、図 13 に海水のクロマトグラムを示す。
内標準物質
図 12
河川水のクロマトグラム
内標準物質
図 13
海水のクロマトグラム
723
〔環境中から検出された一例〕
今回、要求感度は 0.02 μg/L で、前処理時に 200 倍濃縮することで十分要求感
度を満たすことができ、高濃縮する必要はなかった。しかし、さらに高濃縮す
ることにより、環境中から HBCD が検出された。
水試料 1 L を 200 μL まで高濃縮することにより、名古屋市内河川の多くの地
点において 1~300 ng/L の HBCD が検出された(16 地点中 15 地点で検出)。ま
た、検出された HBCD は、多くの地点において、ほとんどが γ 体であった。
内標準物質
図 14
高濃縮時の河川水のクロマトグラム
724
【評価】
本法により水試料中 HBCD の 2 ng/L 程度の検出が可能であり、10 ng/L 程度の
定量が可能である。
【試料採取及び試料の輸送】
HBCD は水中で分解する可能性は低いため、特に細心の注意を払う必要性は
なく、一般的な化学物質分析を行うときと同様に扱えば良い。
【参考文献】
・ 平成 14 年度化学物質分析法開発調査報告書
・ 棚田京子、門上希和夫、環境化学 15(3), 561-568, (2005).
・ S.Suzuki, A.Hasegawa, Anal. Sci. 22, 469-474, (2006).
【担当者連絡先】
所属先名称
:名古屋市環境科学研究所
所属先住所
:〒457-0841 名古屋市南区豊田 5-16-8
TEL:052-692-8481
FAX:052-692-8483
担当者名
:長谷川 瞳、渡辺正敏
E-mail
:[email protected][email protected]
725
1,2,5,6,9,10- hexabromocyclododecane (HBCD)
An analytical method has been developed for the determination of 1,2,5,6,9,10hexabromocyclododecane (HBCD) in water sample by liquid chromatography
tandem-mass spectrometory (LC/MS/MS). Negative electrospray ionization (ESInegative) is used to ionize α, β, γ, δ, ε-HBCD and 13C12-α, β, γ-HBCD as an internal
standard. The determination is performed by the selected–reaction-monitoring (SRM)
method using precursor/product ionsets of m/z: 641/79 for α, β, γ, δ, ε-HBCD and
m/z :653/79 for 13C12-α, β, γ-HBCD.
A 200 mL water sample is spiked with 50 ng 13C12-α, β, γ-HBCD as surrogate substance.
The sample is passed through a preconditioned solid phase extraction disk (Empore
Disk SDB-XD) at a flow rate 20 mL/min. The disk is eluted with 4 mL of acetone and 4
mL of dichrolomethane.
The eluate is dried up by using a gentle flow nitrogen on a heated water bath at 40℃,
and then made the volume to 1 mL with 80% acetonitorile/water. The solution is
analyzed by negative ion mode-ESI-LC/MS/MS-SRM.
The method detection limit (MDL) is 3.8 ng/L (α-HBCD), 2.7 ng/L (δ-HBCD), 1.7 ng/L
(β-HBCD), 1.5 ng/L (ε-HBCD), 3.0 ng/L (γ-HBCD), respectively. The method
quantification limit (MQL) is 19 ng/L (α-HBCD), 13 ng/L (δ-HBCD), 8.4 ng/L
(β-HBCD), 7.6 ng/L (ε-HBCD), 14 ng/L (γ-HBCD), respectively. The average
recoveries (n = 7) from 2 ng of α, δ, β, ε, γ-HBCD added water sample of river water
were 99, 103, 100, 100, 109% respectively, and sea water were 105, 107, 98, 94, 106%
respectively.
Using this method, the target compound in river water and sea water were not detected.
surrogate
(13C12-α, β, γ-HBCD 50 ng)
Water sample
200 mL
Elution
acetone 4 mL
dichrolomethane 4 mL
Solid-phase
extraction
Wash
Dehydration
pure water 10 mL
Empore Disk SDB-XD
Rinse bottle with 2 mL
of methanol and 10 mL of water
Extraction (20 mL/min)
Concentration
Making up
volume
40℃
N2 gas
80% acetonitorile/water
to 1 mL
726
Drying
suction
40℃ oven
1-2 min
60 min
Dissolution
sonication 2 min
LC/MS/MS-SRM
ESI-Negative
物質名
分析法フローチャート
備考
【水質】
ヘキサブロ
分析原理:
13
C12-α, β, γ-HBCD 50 ng
LC/MS/MS-SRM
モシクロド
デカン
固相抽出
水試料
Empore
200 mL
Disk
SDB-XD
メタノール 2 mL 及び
精製水 10mL で洗い込み
通水(20 mL/min)
ESI-Negative
検出下限値:
【水質(海水)】
α:3.8 ng/L
δ:2.7 ng/L
β:1.7 ng/L
洗浄
精製水 10 mL
脱水
乾燥
吸引脱水
40℃乾燥器
1~2 min
60 min
ε:1.5 ng/L
γ:3.0 ng/L
分析条件:
LC:Waters
溶出
アセトン 4 mL
ジクロロメタン 4 mL
濃縮
定容
窒素吹き付け
80%アセトニ
乾固直前
トリル水溶液
1 mL まで
Alliance 2695
MS:Waters Quattro
micro API
カラム
Ascentis express C18
溶解
超音波 2 min
LC/MS/MS-SRM
ESI-Negative
727
2.1 mm×100 mm、
2.7 μm
Fly UP