Comments
Description
Transcript
みなとみらいセンタービルの建築設備
── 実 施 例 ── みなとみらいセンタービルの建築設備 大成建設㈱ 設計本部 設備グループ 小 林 徹 也 ・ 上 田 泰 史 ・ 小 林 光 ■キーワード/事務所・設備計画・省エネルギー 1.はじめに 2.建物概要 みなとみらいセンタービルは,横浜みなとみらい地区 の中心に位置する33街区(横浜市西区)に計画された大型 テナント事務所ビルである。建物は地下2階・地上21階 建 物 名 称 みなとみらいセンタービル 所 神奈川県横浜市西区 在 地 オーディーケー特定目的会社 で,敷地面積は約10,131㎡,高さは約100m。1階から3 階を商業フロアとし,4階から21階がテナント事務所フ 注 者 設 計 者 大成建設 ㈱ 一級建築士事務所 施 工 大成建設 ㈱ 横浜支店 監 修 ㈱日本設計 用 途 商業施設, 事務所, 駐車場, 駅 工 期 2007 年8月∼2010 年5月 ロアとなっている。地下部分は駐車場などで,地下1階 部分でみなとみらい線・みなとみらい駅と直結している。 また,本建物は建物の環境性能を評価する「CASBEE 横浜認証制度」で,最高位となるSランクの認証を取得 した。Sランクの取得に際しては,さまざまな環境負荷 低減技術を採用している。そのひとつが,エコボイド内 に設置された,太陽光採光システム「T-Soleil(ティー・ ソレイユ)100」である。トップライトに太陽自動追尾装 置を備え,3段階のミラーで自然光を下層まで届け,事 務所フロアの廊下やオフィスエレベータホールの照明の 省エネルギー化をはかった。また,ヒートアイランド対 策として屋上や敷地内を緑化,植物への散水には雨水利 用なども採用した。 2010年5月末の完成を機に,建物概要と設備計画およ び採用した環境負荷低減技術について報告する。 オリックス不動産 ㈱ 発 大和ハウス工業 ㈱ ㈱ケン・コーポレーション 敷 地 面 積 10,131.57m2 建 築 面 積 5,197.87m2 延 床 面 積 95,220.30m2 最 高 高 さ 98.20m 軒 高 98.01m 構 造 階 数 鉄筋コンクリート造 , 鉄骨造 , 鉄骨鉄筋コンクリート造 地下:2階/地上:21階/塔屋:1階 写真-1 建物外観 ─9─ ヒートポンプとその応用 2011. 3. No.81 ── 実 施 例 ── 2-1 建築概要 コア形式とした。事務所は新しい免震+制震構造シス 計画敷地「33街区南」は,みなとみらい21地区のほぼ テム「TASMO-HD」(図-2参照)により安全・安 中央に位置し,けやき通りをはさんでクイーンズスクエ 心な建物性能を確保するとともに,整形でまったく柱 アをはじめとする大型オフィスが集積されている地区で のない奥行き約23m×幅約80mの大スパン空間とし ある。また,近くでは高層集合住宅の建設も進められて た。(図-3・写真-2参照) おり,多様な都市空間として発展,成熟していくことが 22,800 9,200 22,800 想定された。 ⑴ 最大限の床面積確保 敷地には「みなとみらい駅」を含んだ都市的なアク ティビティの高い場所であり,こうした立地特性や周 環境向上に寄与する良好な空地と,にぎわい施設を配 置する計画とした。 無柱大空間オフィス (22.8m×80.4m ×1,674㎡) その空地整備と配置計画により横浜市環境設計制度 無柱大空間オフィス (22.8m×80.4m ×1,674㎡) 80,400 「エコボイド」 光を取り込み吸収 する空間 「T-Soleil 100」 センターコアの 快適性を髙める 辺先行開発に配慮し,都市的な魅力を創出し,地区の の適用を受け, 250%の容積率の割増を受けた。その容積 率割増により最大限の床面積を確保した。(図-1参照) みなとみらいセンタービル 「環境ファサード」 縦ルーバー効果による PAL 向上 図-3 基準階計画図 けやき通り MMパークビル 道 路 境 界 線 ビジネス スクエア みなとみらい駅 N 図-1 配置計画 ⑵ 効率の高い計画 基準階は自然光の入るエコボイドを中心にエレベー タシャフトや階段,設備シャフトを配置したセンター 壁柱 境界梁(LOYAL鋼材ダンパ) 17∼R階 鉄骨梁は弾性 3∼16階鉄骨梁のウェブパネル :極低降伏点鋼(制震梁) 制 震 写真-2 基準階事務所 2-2 電気設備概要 ⑴ 特高受変電設備 電力の引込みは,みなとみらい地区の共同溝より信 頼性の高い特別高圧22kV,3回線スポットネット 鉄骨梁 (制震梁) ↓ 主体架構の損傷を軽減する (損傷制御設計) ワーク(SNW)受電方式とした。 特高電気室は地下2階に計画し,3,000kVA×3台 鉄骨鉄筋コンクリート梁 (SRC梁) GL ▽ 免 震 のSNW変圧器を配置した。特高変圧器二次側の6.6kV 高圧幹線はメンテナンス,更新,事故を考慮し,A 1階床下 免震層 ハイブリッドTASS構法 系・B系の二重化とした。 基礎: 現場打コンクリート杭 TASMOのしくみ 壁柱,境界梁(LOYAL鋼材ダンパ)およびオイルダンパを 組み合わせることにより,地震時のエネルギーを集中的に制 震装置に吸収させ地震時の揺れを小さくする構造。 境界梁 (LOYAL鋼材ダンパ) 壁柱 将来の機器更新は,地上部に設けたマシンハッチよ LOYAL変形イメージ 免震ハイブリッドTASS 強度が低く粘り強い鋼材が せん断変形を受けることに より地震エネルギーを吸収 する。 ハイブリッドTASS構法 ハイブリッドTASS構法は, 積層ゴム支承と弾性すべ り支承を適切に組み合わせることにより,従来の免震 構法よりもさらなる長周期化が可能となり, 高い免震 効果が期待できる。 り直接搬入が可能な計画とした。 ⑵ 高圧変電設備 地下2階特高電気室内と21階に高圧電気室を配置した。 高圧変圧器容量 せん断変形 1Φ 200/100V:合計5,700kVA <平常時> <地震時> 3Φ 400・200V:合計6,200kVA 図-2 TASMO-HD概念図 ヒートポンプとその応用 2011.3. No.81 ─ 10 ─ ── 実 施 例 ── さらに,各階の共用廊下の照明はセキュリティ連動 ⑶ 非常用発電機設備 建物全体の防災負荷および停電時の保安負荷への電 でON/OFF制御を行い,省エネルギー化をはかっ 源供給として,屋上にガスタービン発電機1,000kVA× た。また,テナント事務室内の照明および空調の消し 1台を設置した。さらに,テナント用発電機の対応とし 忘れ制御も行った。建物の出入口,オフィスロビー, て,屋上に500kVA×2台の設置スペースを確保した。 エレベータカゴ内,外構周りに監視カメラを設置し, ⑷ 幹線・動力設備 防災センターで24時間監視を行った。 地下2階特高電気室内と21階に高圧電気室から,地 下2階から13階までの低層部と14階から屋上までの高 2-3 衛生設備概要 ⑴ 給水設備 層部に各々配電する計画とした。 みなとみらい地区の共同溝より,市水を150Φにて ⑸ 電灯・コンセント設備 引込み,受水タンクに貯留後高置タンク方式にて給水 事務室の照明は640グリッドのシステム天井用器具 を行った。地階系統・高層階系統・屋外散水系統は加 (FHP45W×2灯)を採用し,3.2m×3.2mのモジュールに 2灯を配置する計画とした。平均照度は700Lxを確保した。 圧給水方式にて給水を行った。 ⑵ 給湯設備 トイレ,階段などの常時人のいない場所は人感セン サによる照明制御を採用し,省エネルギー化をはかっ 給湯は貯湯式電気温水器による局所給湯方式とした。 ⑶ 排水設備 た。また,廊下やエントランスホール,外構周りの照 屋内は汚水・雑排水合流方式,屋外は汚水・雨水分 明はスケジュール制御やセキュリティ連動制御によ 流方式にて排水を行った。汚水はみなとみらい地区共 り,省エネルギー化がはかれる計画とした。 同溝内下水道本管,雨水は同共同溝内雨水本管に接続 事務室のOAコンセントは70VA/㎡と十分な容量を 確保した。 をした。 ⑷ 衛生器具設備 ⑹ 電話設備 主たる衛生器具には節水型器具を採用した。大便器 通信引込みはみなとみらい地区共同溝より行った。 には自動洗浄バルブおよび洗浄便座を設置し,小便器 MDFから各テナントのIDFまでのメタルケーブル,お には自動洗浄バルブ,洗面器には混合自動水栓を設置 よび各階のEPSまで光ケーブルを先行配線し,テナント した。 の要望に迅速な対応ができるよう配慮した。また,建物 ⑸ ガス設備 内は各通信キャリアの携帯電話不感知防止対策を行って みなとみらい地区の共同溝より低圧にて引込み,1 おり,ほぼ全域で携帯電話の利用が可能となった。 〜3階の店舗に供給した。 ⑺ 弱電設備 ⑹ 消火設備 弱電設備は,建物の管理の効率化やテナントサービ 全館に屋内消火栓設備(1号),スプリンクラー設備 スとして,以下の設備を設けた。 を設置し,エントランスホール吹抜部は放水型スプリ ・テレビ共同受信設備(CATV) ンクラー設備とした。 ・インターホン設備 3階以上と地階には連結送水管設備,駐車場には泡 ・駐車場管制設備 消火設備,電気室などには窒素ガス消火設備を設置した。 ・非常呼び出し設備など 屋外には防火用水40㎥を2箇所設置した。 ⑻ 防災設備 ⑺ 雨水利用設備 1階防災センターに,複合GR型受信機,非常放送 屋上階に雨水利用設備を設置し,雨水利用を行って 設備,エレベータ監視盤を中心とした総合操作盤を設 置した。 防災設備:自動火災報知設備・防排煙設備・非常放 送設備・非常用コンセント設備・非常電 話・誘導灯・非常照明 ⑼ セキュリティ設備 オフィスのセキュリティを確保するため,建物出入 口や各テナント事務室の入口に非接触式ICカードリー ダーと電気錠を設け,入退室管理を行った。また,事 務室に人員が在室していない時はエレベータの不停止 階制御を行うことで,よりセキュリティ性を高める計 画とした。 写真-3 雨水利用設備 ─ 11 ─ ヒートポンプとその応用 2011. 3. No.81 ── 実 施 例 ── いる。屋上階の降雨を集水し,タンクに貯留後加圧方 ⑸ 中央監視設備 1階 防 災 セ ン タ ー に 中 央 監 視 装 置 を 設 置 し , 式にて屋上緑化への散水を行った。 2-4 空調設備概要 BACnet方式にてビルマネジメントシステムとも接続 ⑴ 熱源設備 している。最大管理点数は10,000点とした。 みなとみらい地区地域冷暖房から共同溝を介して冷 ⑹ 自動制御設備 熱源廻りについては,主に冷水・温水の流量制御 水および蒸気を引込み,冷房は地域冷暖房からの冷水 (ポンプ台数制御),ヘッダ間差圧制御を行った。 をそのまま直送する方式,温水は蒸気-水熱交換器 (2,350kW×2台,21,210kW×2台)にて温水をつくり 空調機廻りについては,主に給気温度制御,VAV 空調熱源とした。地域冷暖房の受け入れ設備は地下2 による給気風量制御,外気量制御,湿度制御を行った。 階に設置した。想定最大熱量は,冷房:40,000MJ/h, 暖房:23,000MJ/hである。 3.環境負荷低減技術 「CASBEE横浜認証制度」で,Sランクの取得をめ ざし,各種の環境負荷低減技術を採用した(図-4)。 屋上緑化による断熱効果と 蒸散効果 鏡を利用した自然採光利用システム (T-Soleil 100) TASMO-HD(免震・制震) による信頼性の向上 事務室の空調は,各階を8ゾーンに分け,各ゾーン 地下鉄出口 ▽GL.壁面位置 ごとに設置した空調機にて空調を行った。また,冬期 駐車場 駐車場 のコールドドラフト対策として,窓際には電気ヒータ ゙ 免震蓋 ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ ゙ オフィスロビー 予熱時外気遮断,最小外気量 を制御することで,外気の処理 エネルギーを低減 ゙ A HU ゙ ゙ 共通ELVホール 高効率型照明器具による電力 消費量の削減 ゙ 駐車場の換気風量制御 による消費電力の削減 店舗施設 ロビー ピロティ モール 免震ピット 機械駐車 駐車場 免震蓋 ピロティ 駐車場 MR P P を設置した。空調機はコンパクト型の4管(冷水・温水) 式空調機を採用し,インテリア系統はVAVによる変風 ゙ 道路境界線 VWV(熱源ポンプ変流量制御) による熱源水搬送動力(電気消 費量)の削減 ⑵ 空調設備 ゙ ゙ 節水型器具による使用量 の削減 写真-4 地域冷暖房受け入れ施設 ゙ ゙ VAV(可変風量装置) による (電気消費量) 空調搬送動力 の削減 Low-eガラスによる日射量の低減 事務室 事務室 駐車場 機械室 機械駐車ピット 図-4 環境負荷低減技術 量方式,ペリメータ系統は定風量方式とした。VAVは 1個あたり60㎡程度のゾーニングとし,還気は天井チャ 3-1 概要 ンバ方式にて行った。加湿は気化式加湿器により行っ ⑴ 省エネルギー性能の向上 省エネルギー性能の向上のため,下記の技術を採用 た。また,テナントによる空調機増設が可能なように した。 予備の冷水配管および室外機スペースを設置した。 ・屋上緑化による熱負荷の削減 共用部はファンコイルユニットにて空調を行った。 発熱の大きい電気室などについては,パッケージ型空 ・VAVによる空調搬送動力の削減 調機にて空調を行った。 ・VWVによる熱源水搬送動力の削減 ⑶ 換気設備 ・Low-eガラスによる日射量の低減 事務室の換気は,空調機を介し新鮮外気を取り入れ, ・外気量の制御による外気処理エネルギーの削減 事務室には標準で5㎥/h・㎡の外気を供給している。 ・高効率型照明器具の採用および初期照度補正によ 建設地が海に近いので,外気に対しては除塩フィルタ る電力消費量の削減 を設置した。 ・駐車場の換気風量制御による搬送動力の削減 ⑷ 排煙設備 ⑵ 省資源性能の向上 全館機械排煙方式にて排煙を行っているが,事務室 省資源性能の向上のため,下記の技術を導入した。 については避難安全検証法にて排煙風量の低減をは かった。 ・節水型衛生器具の採用による水使用量の削減 ⑶ 室内環境品質・性能の向上 また,事務室内排煙は防災性能評価により空調換気 排煙切替ダンパ方式を採用した。 ヒートポンプとその応用 2011.3. No.81 室内環境品質の向上のため,下記の技術を採用した。 ・免震・制震による信頼性の向上 ─ 12 ─ ── 実 施 例 ── ・ 鏡 を 利 用 し た 太 陽 光 採 光 シ ス テ ム ( T -Soleil トップライト 2次ミラー ・固定ミラー ・Φ1,200mm円形 ・16基 (ティー・ソレイユ))の導入 3-2 太陽光採光システム「T-Soleil 100」 1次ミラー ・太陽追尾装置 ・Φ1,200mm円形 ・16基 ⑴ 概要 トップライト部分 本建物のコア部分に設けた換気兼用ボイド(エコボイ ド)を介して積極的に自然光を採光し,超高層建築の吹 3次ミラー 抜空間でありながら,ボイド周辺の低層階廊下や,ボ 80m イド床面にあたるオフィスロビーにまで太陽光を導入 するシステムを採用した(T-Soleil 100/ティー・ソレ イユ100:当社開発技術名称)。この設備はCASBEE上の ボイド壁面部分 高度な機能を有する昼光利用設備に該当する。 ⑵ 昼光採光・利用 図-6 採光装置の構成 エコボイドの頂部に設置した,①太陽追尾型採光装 置(1次ミラー),②導光ミラー(2次ミラー),ボイド空 間の壁面に設置した③放光ミラー(3次ミラー)の組み 2次ミラー 合わせで,共用部に昼光を導入し,周辺廊下やボイド 床であるロビー空間を昼光にて照明している(図-5)。 ボイド周辺の昼光照明エリアは,ボイドから射し込む 光を感知して晴天時には消灯する制御を行っている。 空間のアスペクト比が大きく,照射距離の長い高層 ボイドへの採光では,光を所望の位置に届けるために 1次ミラー は,追尾装置やそこに用いるミラーに求められる精度 写真-5 1次ミラー(下),2次ミラー(上) が著しく高くなる。また,下層階において空間を均質 に明るくするためには,壁面と平行に近い角度で射し 本のシャフトで連結され,その端部にある2台の 込む光を適切に拡散させる工夫が必要となるなど,さ モータによって制御される。鏡面は1次,2次ミ まざまな難しさをともなう。 ラーともに1,200Φの円形で,ハニカムコアを内部構 ⑶ 採光装置の構成 造とするオールアルミ製ミラーとなっている。 ① 太陽追尾型採光装置(1次ミラー) 太陽追尾は,GPSによって取得する正確な現地時 エコボイド頂部のトップライト内に,太陽追尾型 刻を用いた計算制御を行っている。 採光装置(1次ミラー)16基を設置(図-6,写真-5)。 ② 導光ミラー(2次ミラー) 1次ミラーと2次ミラーは1対1で設置され,1次 同じくトップライト内に導光ミラー(2次ミラー) ミラーが太陽を追尾しながら,受けた太陽光を常に 16基を設置。1次ミラーが採光した光をボイド奥に 2次ミラーへ定点照射する。複数の1次ミラーは2 導く。2次ミラーは自在な角度に調整・固定できる機 太陽軌道 構を備え,ボイド内の自由な16箇所を太陽光で照射で 1次ミラー 太陽を追尾し,2次ミラー を定点照射 2次ミラー きる。後述の放光ミラー(3次ミラー)12箇所および ボイド床面4箇所を照射するように調整されている。 ③ 放光ミラー(3次ミラー) 放光ミラーは空間を均質に明るくする機能を備え る拡散性のミラーで,建築壁面と一体としている 空間内を ほぼ垂直に照射 (写真-6)。遠方から照射される2次ミラーからの 光は,3次ミラー面に対して鋭角で入射してくる。 約80m これを拡散させつつ適切に下方へ反射させる微小な 3次ミラー ボイド周辺の廊下 などへ光を拡散す る エコボイド ⒜ 採光装置なし 凹凸を持った金属反射材を採用することで,ボイド 全体に光を分配し,周辺廊下には昼光による明るさ エコボイド を形成する(写真-7)。 ボイド床面には, 直射日光のような 日光を照射 ⑷ エコボイドにおける照度測定 採光装置によりエコボイド床面に採光を行った場合 ⒝ T-Soleil100を採用 と,採光しない場合の照度測定を実施した(2010年5 図-5 太陽光採光システム概要図 ─ 13 ─ ヒートポンプとその応用 2011. 3. No.81 ── 実 施 例 ── 上部ガラスフレーム(影部) 表−1 3階照度計測値 単位:Lx 測定点 採光 あり 採光 なし 測定点 採光 あり 採光 なし A A’ 2, 710 84 イ B B’ 3, 940 11, 410 11, 950 − ロ 82 ハ C − ニ C’ 3, 630 669 87 ホ D − へ D’ 4, 465 477 88 ト − チ 採光 あり 採光 なし 平均※ 2, 462 69 354 307 218 384 326 227 320 268 205 63 59 61 59 62 59 65 67 64 ニ イ リ A A′ ロ ホ B ※全測定点を平均した値 B′ ハ 月18日,晴天)。採光の効果を確認するため,太陽高 ト C′ C ( D ) D′ ヘ チ リ 影部計測点 照射点計測 明部計測点 採光範囲 度が若干下がり,ボイドに直射光が多く差し込まない 時間帯を選び,15時前後に測定を実施。採光しない状 (採光ありの場合のみ) ×4点 : 照射点 : 照射を避けた部分×4点 況の測定は,採光装置を待機モード(1次ミラーを水 : ガラスフレームの影の部分×9点 図-7 3階照度測定点 平に制御)とすることで,1次ミラーによる光がボイ 90Lx程度となり,人工照明が必要な状況となった。 ドに入らない状態を作り出した。 採光ありの場合(写真-8,⒜),エコボイド床面が 3次ミラーから受ける拡散光と,2次ミラーから直接 4.おわりに 本建物は2010年5月に完成し,オフィステナントや店 照射される光により広く明るくなる様子が確認され, 広範囲に400〜800Lxの照度が確認された。また,直 舗の入居も進んでいる。 今回, 「CASBEE横浜認証制度」で,Sランクの認証 接照射された光の部分では数1,000〜最大12,000Lx程度 の照度となった(測定時屋外水平面照度:78,000Lx, を目的とし,さまざまな設備システムや技術を採用した 直射(水平):64,000Lx程度)。照射した光は,屋外か が,これらが有効に活用され,オフィス入居者や来館者 ら床に達するまでにトップライトガラスおよびロビー の方々に安全で快適な執務空間が提供されることを期待 天井ガラス,鏡面反射率などで減衰される。また,1 したい。 次・2次ミラーの鏡面材固有の拡散反射,太陽の視野 最後に,本建物の計画・設計・施工にあたり多大なる 角などによりピーク値は低下するものの,空間全体に ご指導,ご協力をいただいた建築主をはじめ,建設に携 快適で十分な明るさとなった。 わった関係者の皆さまに,誌面をお借りしてお礼申しあ 採光なしの場合(写真-8,⒝)には,全体に80〜 げます。 3次ミラー ⒜ T-Soleilあり(晴天15時前後) 写真-6 エコボイド見上げ センサ ボイドから射し込む光をセンサにて感知し,設定値を上回れば廊 下の照明を消灯する。 ⒝ T-Soleilなし(晴天15時20分ごろ) 写真-8 ボイド床面への採光 写真-7 ボイド周辺廊下 ヒートポンプとその応用 2011.3. No.81 ─ 14 ─