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運用をアウトソースする 投信ファンドの特徴 - Nomura Research Institute

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運用をアウトソースする 投信ファンドの特徴 - Nomura Research Institute
Financial Information Technology Focus January 2006
4
リテールビジネス
運用をアウトソースする
投信ファンドの特徴
投信ビジネスが拡大するなか、投信会社が外部のアドバイザーに運用を委託する
ケースが目立ってきている。国内の投信免許を持たない運用会社にとって、
投信会社向けの運用アウトソースビジネスは、リテール向け運用ビジネス参入の
有望な選択肢となっている。
今期の投信会社の収入は過去最高へ
である。しかし、インハウスで運用されてい
公募の追加型投資信託の残高は、市況好転
るファンドの平均信託報酬率と、OTSしてい
による時価効果の影響も相俟って、月次でみ
るファンドのそれとの差は約40bpとなってい
ると、昨年11月から13ヶ月連続で増加し、11
る(図表、右)。OTSがある場合の委託者自
月末は約36兆円と過去最高値を更新中であ
身(投信会社)の報酬率は、インハウス運用
る。このような好環境のもと、公募投信によ
のケースより低めになることを考えれば、外
る投信会社の運用収入は、年度換算ベースで
部アドバイザーの報酬率は平均的には40bpよ
1,780億円程度と、これまでのピークだった
り高いと想像される。実際、報酬率が明示さ
2000年度の1,460億円を抜き、過去最高となる
れているものだけみても、40bpから90bpの範
1)
見込みである 。ファンドの本数を見ても、
囲に含まれる場合が多い。仮に外部アドバイ
02年5月以降は逓減傾向にあったが、本年3
ザーの報酬率を低めに40bpと見積もり、現在
月からは再び増加しはじめ、各社が拡大戦略
の投信残高の4割が外部委託されていると仮
に転じたことを窺わせる。
定すると、運用のOTSビジネスによる年間の
投信ビジネスの拡大とともに、運用アドバ
収入は、少なくとも540億円(=34兆円×
イザーの投信会社向け運用アウトソース(以
40%×40bp)程度となる。これは、委託者報
下、OTS)ビジネスが拡大している。05年10
酬額全体の3割にも及ぶ。
Writer's Profile
月末までの2年間に設定された285本の追加
運用のOTSは、投信会社の属する金融グル
型投信のうち、約4割にあたる115本ものフ
ープ内の関連会社に委託する場合と、グルー
ァンドで、ファンドを設定した投信会社が外
プ外に委託する場合に分けられる。独立系の
2)
部のアドバイザーに運用の一部をOTS して
運用会社がOTSビジネスを拡大するためには
いる(図表、左)。
後者のケースでシェアを拡大することがポイ
金子 泰敏
ントとなる。仮に、後者の残高の割合をファ
Yasutoshi Kaneko
金融ITイノベーション研究部
上級研究員
専門は資産運用関連
ビジネスの調査・研究
[email protected]
投信向け運用OTSのビジネス規模
投信の場合、外部のアドバイザーへの報酬
は、通常は、ファンドから委託者報酬として
以上とすれば、そのビジネス規模は540億円
の半分程度、200∼300億円となる。
投信会社に一旦支弁され、その一部が外部ア
ドバイザーに支払われる。アドバイザーに支
8
ンド数と同じ4割程度、報酬率は40bpかそれ
ファンドの特徴
払われる報酬率が目論見書にさえ記載されて
グループ外にOTSする場合、実際どのよう
いない場合があるため、すべてのファンドの
なケースでOTSされているのか。ファンドの
報酬率を正確に把握するのは難しいのが現状
特徴を見ると、二つのニーズが見えてくる。
野村総合研究所 金融 IT イノベーション研究部
当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
Copyright © 2006 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
NOTE
一つは、ファンドの製造主体である投信会社
もう一方の外部アドバイザー側のニーズが
のニーズと、もう一つは、外部アドバイザー
伺えるのは、投資顧問会社に対する、いわゆ
側のニーズである。
る「箱貸し」ファンドの場合である。これは
まず、投信会社側のニーズに関しては、フ
外部のアドバイザーが実質的に運用を行い、
ァンドを資産別に分類することで特徴が掴み
投信会社自身は投資判断等を行わず、単に投
やすくなる。海外株式に分類されるファンド
信という「箱」を投資顧問会社に貸す形態で
では、中国、インド、東欧などのエマージン
ある。現在は、国内の新興の独立系運用会社
グ市場の株式や、高配当の株式に投資するも
が運用する日本株の中小型ファンドなどに見
のなど、最近特に人気が高い商品が多い。海
られる。日本では、コスト等の問題から新規
外債券では、ハイイールド・ボンド(≒信用
に投信会社を設立することは難しいと言われ
リスクの高い債券)に投資するものが多い。
る。それに比べ相対的に参入が容易な投資顧
投資対象としての新しさはないが、リスク管
問会社がリテール向け資産運用ビジネスに参
理等において、比較的高度なリサーチ能力が
入する際のスキームとして、今後このような
求められる傾向があるといえる。海外ハイブ
形態によるファンドはさらに増加する可能性
リッドでは、海外の不動産投資信託(REIT)
がある。
1) 各公募の追加型投信の信
託報酬率と05年度上期の実績
の残高をベースに上期の報酬
額を推計。上期の推計報酬額
を二倍して今年度の報酬額を
推計した。
2) 外部のアドバイザーに運
用を委託する場合、外部のア
ドバイザーからのデータ提供
を含めた投資助言を受け、投
信会社が最終的な銘柄判断を
行う場合や、銘柄選定や売買
の執行業務まで外部に委託す
る場合などがあるが、本稿で
はこれらを総じて「運用のア
ウトソース(OTS)」と呼ぶ
こととする。
に投資するものが全てである。近年、高利回
りへの期待を背景に、ハイイールド・ボンド
複雑化するリテール向け資産運用
やREITを投資対象とする商品に対する投資
OTSしているファンドを見てみると、共通
家のニーズは高い。一方、国内株式では、独
して言えるのは、比較的新しい運用対象資産
自のリサーチ力が必要といわれる社会的責任
に投資したり、他社にはない独自の投資手法
投資(SRI)を行うファンドが見られる。こ
を用いたりしているケースが多いことであ
のように独自の運用経験が求められる資産へ
り、最終投資家である個人の投資ニーズが複
の投資経験が豊富な運用会社は、国内にはあ
雑化していることを示している。独自の運用
まり多くないのが現状である。多様化する投
スタイルを確立した運用会社にとって、OTS
資家ニーズに応えるべく、外部のアドバイザ
によるビジネス機会はより高まるものと思わ
ーにコストを支払ってでも商品の開発を急ぐ
れる。
N
投信会社または販売会社の姿勢が見える。
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
平均信託報酬(%)
ファンド数
図表 投信ファンド分類別の運用のアウトソース状況
全
体
国
内
債
券
国
内
株
式
国
内
ハ
イ
ブ
リ
ッ
ド
OTS(グループ内)
海
外
債
券
海
外
株
式
海
外
ハ
イ
ブ
リ
ッ
ド
そ
の
他
OTS(グループ外)
1.8
1.5
1.2
0.9
0.6
0.3
0.0
総
計
国
内
債
券
国
内
株
式
OTS
国
内
ハ
イ
ブ
リ
ッ
ド
海
外
債
券
海
外
株
式
海
外
ハ
イ
ブ
リ
ッ
ド
そ
の
他
インハウス
インハウス
(時点)2005年10月末現在
野村総合研究所 金融 IT イノベーション研究部
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