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動物用医薬品について 堺市衛生研究所

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動物用医薬品について 堺市衛生研究所
堺市衛生研究所
Sakai City Institute of Public Health
平成 23 年 6 月
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第 41 号
動物用医薬品について
東日本大震災に係る支援派遣協力について
新規採用職員の紹介
感染症発生動向調査について
動物用医薬品について
牛 、豚 、鶏 な ど の 家 畜 や 、養 殖 魚
などもさまざまな病気になります。
そ の よ う な と き に は 、人 間 と 同 じ よ
う に 環 境 を 変 え た り 、治 療 薬 を 投 与
し た り し ま す 。ま た 、病 気 の 予 防 や
体調を整えるなどの目的で使われ
る 医 薬 品 が あ り ま す 。こ の よ う に 動
物の疾病の治療および予防の目的
で使用される医薬品のことを動物
用 医 薬 品 と い い ま す 。動 物 用 医 薬 品
と し て は 抗 生 物 質 、合 成 抗 菌 剤 、内
寄 生 虫 駆 除 剤 、感 染 予 防 ワ ク チ ン 等
の他に家畜の肥育や繁殖などの成
長促進を目的として使われるホル
モン剤なども動物用医薬品に含ま
れ ま す 。動 物 用 医 薬 品 を 使 用 す る こ
と に よ っ て 食 品 の 生 産 性 の 向 上 、安
定供給に大きな貢献がなされ、
国内外で広く畜水産物に使用され
図 1.動 物 用 医 薬 品 の 安 全 確 保 体 制
(農林水産省ホームページ
http://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/yakuzi/p
df/anzen_kakuho.pdf
より)
ています。
このため、動物用医薬品は、農林水産省によって製造承認がなされ、各医薬品の適正な
使 用 方 法 が 定 め ら れ て い ま す ( 図 1) 。 例 え ば 動 物 の 体 重 あ た り 何 ミ リ グ ラ ム 以 上 投 与 し
てはならない、何日以上投与を続けてはいけない、投薬後何日以内には商用にと畜しては
ならないなど、使用対象の動物の種類、用法・用量、休薬期間が定められ、食肉に医薬品
が残留することを防いでいます。また投与された医薬品の種類、使用目的、使用量、使用
日などを詳細に記録・保存することが義務付けられています。
しかし、食品への残留事例が報告され、残留医薬品による人への毒性や薬理作用、また
耐性菌の出現が強く懸念されています。さらには動物から排泄されることによる環境汚染
等も話題になっています。そのため、流通している食品を検査し、残留医薬品をモニター
する必要があります。
食 品 中 へ の 残 留 医 薬 品 に 関 し て は 、2006 年 5 月 29 日 に 施 行 さ れ た 農 薬 ・動 物 用 医 薬 品
等のポジティブリスト制度によって、一定以上の動物用医薬品等が残留した食品の流通が
禁止されました。この規制によって、生産者による動物用医薬品の不適切な使用を指摘す
ることが可能となり、畜水産食品の安全性を確保することが出来るようになりました。
当研究所では厚生労働省より通知された試験法に準じて、動物用医薬品の分析を行って
います。検査対象は市内で流通している牛肉、豚肉、鶏肉、
うなぎ等です。検査の結果、残留が認められればさらにその
医 薬 品 の 食 品 中 の 濃 度 を 測 定 し ま す 。 以 前 は HPLC( 高 速 液
体クロマトグラフィー)を用いて項目ごとに個別分析で検査
を行っていました。現在はポジティブリスト制度により残留
動物用医薬品の分析対象項目が大幅に増加し、それに伴う多
成分の一斉検査の必要性から、高感度で優れた選択性を持ち、
図 2.LC-MS/MS
ま た 一 斉 分 析 に も 対 応 で き る LC-MS/MS( 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ
タ ン デ ム 質 量 分 析 計 ) を 用 い て い ま す ( 図 2) 。 し か し 、 動 物 用 医 薬 品 検 査 に は 問 題 点 が
あります。一番の問題点は検体中にはタンパク質や油脂成分などの物質が多く含まれ、測
定機器に悪影響をおよぼすことです。それらの妨害物質を除去するために前処理操作を行
い、測定の精度向上が求められています。今後はさらに前処理操作の簡易化を検討し、迅
速かつ正確な検査ができることで、市民の食の安心安全に一層の貢献をしていきたいと考
えています。
(理化学検査担当
佐藤)
東日本大震災に係る支援派遣協力について
岩 手 県 南 部 の 沿 岸 部 に あ る 釜 石 市 は 、3 月 11 日
の 東 日 本 大 震 災 に よ り 死 者 は 800 人 以 上 、 行 方 不
明 者 は 500 人 以 上 に の ぼ り 、 特 に 沿 岸 部 で は 甚 大
な 被 害 を 受 け ま し た 。釜 石 市 内 で は 、54 箇 所 の 避
難 所 で 2,000 人 以 上 が 避 難 所 生 活 を お く っ て い ま
す(5 月 5 日現在)。震災の被害にあわれた人た
ちを支援するために、様々な自治体から職員が派
遣されています。
堺市では、震災発生直後から、国等からの要請
に応え、職員の派遣を行っています。これまでに
現地での支援活動の様子
派 遣 し た 職 員 は 6 月 2 日 現 在 、計 360 人 で す 。当
研 究 所 の 所 属 す る 健 康 部 で は 、 厚 生 労 働 省 の 要 請 に 基 づ き 3 月 14 日 か ら 東 日 本 大 地 震 の
被 災 地 、 岩 手 県 釜 石 市 に 保 健 師 を 支 援 派 遣 し て い ま す ( 5 月 31 日 現 在 、 58 名 派 遣 ) 。 私
は 4 月 29 日 か ら 5 月 3 日 ま で 、保 健 師 業 務 の 補 助 要 員 と し て 派 遣 さ れ ま し た 。堺 市 で は 2
つ の 避 難 所 を 担 当 し 、避 難 所 に は そ れ ぞ れ 約 100 人 が 避 難 さ れ て い ま し た 。保 健 師 は 、避
難所内を巡回し、血圧測定などの健康相談を行い、ラジオ体操を呼びかけるなどして避難
者の健康指導をしていました。また、それぞれの避難所を巡回している医療チームや精神
的なケアを行うこころのケアチームと連携して、避難者のケアにあたっていました。
震災後、1 ヶ月以上経過していたこともあり、堺市の担当の避難所ではそれほど大きな
物資不足もなく落ち着いているように思えました。しかし、避難所では栄養のバランスの
取れた食事をすることが難しく、健康管理に注意が必要だと感じました。
今後、夏に向けて気温、湿度が上昇し、熱中症や食中毒などの感染症の対策も必要とな
ってきます。今回の震災による被害は非常に大きく、復興に向けて、長期にわたる被災地
への支援が必要だと思いました。被災地の一日も早い復興をお祈りいたします。
(ウイルス検査担当
三好)
新規採用職員の紹介
昨 年 度 に 続 き 23 年 度 も 2 名 の 新 規 採 用 職 員 が 衛 生 研 究 所 に 配 属 さ れ ま し た 。 団 塊 世 代
の所員の退職後の衛生研究所の若返りが徐々に行われています。しかし、数的にはまだ十
分ではありませんが、再任用、非常勤職員の優れたスキルによって衛生研究所の機能はカ
バーされています。新しい2名の所員は大学で分子生物学的手法を十分に習得しているも
のと思われ、今後の活用が大いに期待されます。しかし、衛生研究所の試験検査業務は、
最 新 の 分 子 生 物 学 的 手 法 だ け で 遂 行 で き る も の で は あ り ま せ ん 。 Golden standard methods
をしっかり理解し、それを基盤に新しい手法を駆使し
て効果的に、今後の試験検査結果に反映しなければな
りません。これらの努力が市民生活の安全・安心に繋
がるものと考えます。
ウイルス検査担当に配属された岡山さんの抱負と強
い決意です。「大学時代は毒性学研究室に所属してい
ました。そこでは、遺伝子の違いによる薬の効力や副
作用の個人差について研究していました。大学院に進
学後は、高等生物であるシロイヌナズナを用いて光合
シロイヌナズナ
成電子伝達の調節について遺伝学、生化学、生理学の
手法を用いた研究を行いました。大学院卒業後は大学
で助手を務め、ストレスに対する生体防御システムに
ついて生化学の手法を用いて研究していました。今後
は、感染症や病原微生物についての理解を深めつつ、
これまで得た知識を活かし、正確な検査を通して市民
のみなさんの健康や安全で快適な生活環境を守るため
に努力していきたいと思っています。」
冬虫夏草の一種
理化学検査担当に配属された山本さんの抱負と強い
決意です。「私は、本年三月まで、農学系の大学院に在籍していました。研究室では、昆
虫やクモに寄生するキノコである冬虫夏草を題材として冬虫夏草の生産するタンパク質分
解酵素の研究を行っていました。
今 後 は 、残 留 農 薬 等 の 試 験・検 査 を 主 に
行います。ヒトの口に直接入る食品の試
験・検 査 を 行 う こ と で 、身 の 引 き 締 ま る 思
い で す 。大 学 で の 研 究 で 得 ら れ た 知 識 を フ
ル に 活 用 し 、市 民 の 皆 様 の 安 全・安 心 に 寄
与 す る こ と の 思 い を 常 に 心 に 留 め て 、着 実
に日々の仕事を遂行していこうと考えて
います。」
二人の衛生研究所に対する抱負と決意
が大きく飛躍されることを願っています。
(所長
田中)
(山 本 ,
岡山)
感染症発生動向調査について
夏型の感染症が流行する季節になりました。手足口病はコクサッキーウイルス A 群 16 型やエン
テロウイルス 71 型が主な病原体です。口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状
とした急性ウイルス感染症で、保育園や幼稚園等を中心に流行が広がるものと思われます。今年は
第 22 週(5/30∼6/5)に入って患者数の増加が見られています。例年とは異なった症状を示してい
ると報告されています。流行のピークである夏季に向かって注意が必要です。
咽頭結膜熱は、プールを介した発生が多いため「プール熱」とも呼ばれています。病原体はアデ
ノウイルス 3 型が主です。6 月頃から徐々に増加しはじめ、7∼8 月にピークが見られます。発熱、
咽頭炎、結膜炎を主な症状とし、3∼5 日間持続します。プールからあがったときは、シャワーや洗
眼、うがいの励行が大切です。
ヘルパンギーナは、突然に 39℃前後の発熱に続いて口腔内が斑状に発赤し、小さな水疱ができる
ため、疼痛により食欲不振などを伴います。発熱は 2∼4 日間程度で解熱し、それにやや遅れて粘
膜疹も消失します。病原体は、主としてコクサッキーウイルス A 群で、回復後も 2∼4 週間の長期
にわたり便からウイルスが検出されます。咽頭から排泄されるウイルスによる飛沫感染や手指を介
した接触感染で起こるため、うがいや手あらいの励行が大切です。
伝染性紅斑は、顔面の両頬に現れる紅斑が特徴的な疾患です。全国的に過去 5 年間の同時期と比
較してやや多く、今後の発生動向に注意が必要です。
(企画調整担当 沼田)
全国データ : 平成22年は折れ線グラフ、平成23年は棒グラフ(22週)
堺市データ : 平成22年は折れ線グラフ、平成23年は棒グラフ(24週)
7.0
手足口病
6.0
定
点
あ
た
り
の
患
者
数
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
1
3
5
7
9
(1月)
11
13
15
17
(3月)
19
21
23
25
27
週
(5月)
1.6
定
点
あ
た
り
の
患
者
数
31
33
定
点
あ
た
り
の
患
者
数
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
41
43
45
47
49
51
53
(11月)
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
4
7 10 13 16 19 22 25 28 31 34 37 40 43 46 49 52
2.00
1.80
1.60
1.40
1.20
1.00
0.80
0.60
0.40
0.20
0.00
1
4
7 10 13 16 19 22 25 28 31 34 37 40 43 46 49 52
週
伝染性紅斑
1
行
39
ヘルパンギーナ
週
発
37
(9月)
6.0
1.2
1
定
点
あ
た
り
の
患
者
数
35
7.0
咽頭結膜熱
1.4
29
(7月)
者
編集委員長
3
5
7
9
11
13
堺市衛生研究所長
伊原
裕
15
17
19
田中智之
21
23
25
27
週
29
〒590−0953
31
33
37
39
41
43
45
47
49
51
53
大阪府堺市堺区甲斐町東 3−2−8
TEL 072(238)1848
E−mail
35
FAX 072(227)9991
[email protected]
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堺市行政資料番号
1 −H2 −11 − 0076
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