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資料11-1
資料11−1 農林水産分野におけるバイオテクノロジー推進の基本的方向 平成14年8月30日 農 林 水 産 省 農林水産分野におけるバイオテクノロジー(BT)推進の基本的方向 ゲノム、環境、食品分野を重点に、生物遺伝資源の整備や知的財産権の取得促進、人材育成等を図りつつ、 実用化・産業化を視野に入れた研究開発を産学官の連携の下に推進 ゲノム研究 産学官連携の促進 ○植物(イネ)ゲノム研究 ・遺伝子の機能解明研究を通じた植物生 命科学や他作物ゲノム研究への応用 ・DNAマーカーを利用した効率的な育 種システムの開発 ・環境ストレス耐性等の遺伝子組換え植 物の開発等 ○動物(昆虫・畜産)ゲノム研究 ○動物(昆虫・畜産)ゲノム研究 ・有用物質生産、ゲノム創薬、医療用生 体被覆材等の新素材開発 ・遺伝情報を活用した優良家畜品種の識 別、品種育成技術等 環境バイオ研究 ○バイオマスエネルギー利用技術 ○バイオマスエネルギー利用技術 ・エネルギー変換効率が高く、低コスト なバイオマスエネルギー変換技術 ○バイオプロダクツ製造技術 ○バイオプロダクツ製造技術 ・コスト問題を踏まえた新たなバイオプ ロダクツ(生物由来の製品)製造技術 ○バイオレメディエーション技術 ○バイオレメディエーション技術 ・微生物や植物を利用した汚染土壌浄化 技術 ・企業・大学の参画促進、バイオベンチャー 創出の促進 ・技術移転の促進(TLO(技術移転機関) の整備、移転活動の推進等) ・競争的資金の一層の充実・活用促進 人材育成 ・産業界、大学、異分野、海外等の研究者 との人材交流(オープンラボを交流拠点 として積極的に活用) 知的財産権の取得促進 食の安全等食品研究 ○リスク分析技術 ・リスク評価(有害微生物等の検出・ 分析等)技術 ・リスク管理(有害微生物等の低減化 等)技術 ・リスクコミュニケーション研究 ○トレーサビリティ技術 ○トレーサビリティ技術 ・食品表示を科学的に裏付けるDNA 等による(品種・産地判別)技術 ○食品の機能性研究 ○食品の機能性研究 ・食品のもつ多様な機能性成分等の解 明と製品化技術 融合領域研究 ・研究機関における知的財産専門部門の整 備、研究者の意識改革 生物遺伝資源等の基盤整備 ・生物遺伝資源の収集点数の拡大、特性評 価の充実、国際的なネットワーク活用 ・ゲノムリソースセンターの整備 ・食の安全性に係る研究情報データベース システムの整備 ○ナノバイオ研究 ○ナノバイオ研究 ・バイオセンサー、マイクロバイオリ アクター等生体模倣技術 ○バイオインフォマティクス研究 ・イネゲノムシミュレーターの開発 国民の理解・合意形成 ○遺伝子組換え技術等の安全性・安心の確保 ・遺伝子組換え農作物等の環境リスク評価・管理 ・体細胞クローン動物の安定生産技術の確立 ○消費者との双方向コミュニケーションの推進 ・消費者への正確な情報の提供や双方向コミュニケーションの推進 1 成長が見込まれるバイオ産業と環境産業 (農林水産・食品分野が相当のシェアを占める) 環境産業の市場規模 バイオ産業の市場規模 [現状] (エコビジネス) [出典:日経バイオ年鑑2000] 農林水産分野 0.2兆円(18%) 1999年 1.2兆円* *いわゆるニューバイオ テクノロジーに限定した 市場規模 食品分野 0.1兆円(8%) [現状] [出典:環境庁試算「わが国のエ 農林水産分野 コビジネスの市場規模の推計結 果について」(2000.5)]に基づ 4.2兆円(15%) き、農林水産省において試算 1997年 24.7兆円 雇用69.5万人 革新的技術による 農畜水産物改良、機能性 食品、DNA鑑定、バイ オセンサー、バイオプロ ダクツ(ゲノム創農薬、 生分解性プラスチック、 昆虫工場等)等 農林水産廃棄物処理、 食品リサイクル、バイ オレメディエーション、 バイオプロダクツ、バ イオマスエネルギー、 都市緑化等 ★2010年には、 ★2010年には、 25兆円程度(約21倍)[関係5省庁基本方針(H11.1)] (うち農林水産・食品分野6.3兆円) 40.1兆円程度(約1.6倍)[環境庁試算] 雇用86.7万人 (うち農林水産分野6.1兆円) ※広義の範囲のバイオ産業との捉え方では、 (2000年)6兆円→(2010年)100兆円(約17倍)、新規 直接雇用60万人との試算もある[バイオ産業人会議] 2 イネゲノム塩基配列の解読状況 ∼日本が世界をリードするイネゲノム研究∼ 国際コンソーシアムにおける 染色体分担と解読状況(2002.8) イネゲノム塩基配列解析累積 (1Mb=百万塩基対) Mb 400 350 Mb 0 染色体サイズ 10 日本 300 国際コンソーシアム 250 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 (日本以外) 200 12 150 20 100 30 40 50 50 PHASE3 PHASE2 PHASE1 未解読分 0 解読成果は、公的データベー スDDBJおよびDNAバンク のウェブサイトで順次公開 8 12 1999年 日本の貢献度 84% 8 12 4 2000年 4 8 12 4 8 2001年 2002年 60% 本年中に、イネゲノム塩基配列の重要部分の解読を終了 3 68% 57% イネゲノム研究の推進戦略 ∼ 日本発、世界最高レベルのゲノム研究 ∼ 食料・農業問題の解決 ・安全・安心な食生活実現 研究の概要 研究の更なる加速化 全塩基配列の解読 を実施 塩基配列の早期解読 ・公開 (参考) ・全塩基数は4億3千万個 ・遺伝子は約3万個 遺伝子単離・機能解 明の促進 産学官の研究勢力の 結集 (8月26日現在) (砂漠化の進行する地域でも稲作が 可能に) 環境問題の解決 ・環境修復作物等の開発 (重金属を吸収 して環境を浄化する 作物の作出) ・新エネルギー資源の開発 (バイオマス生産力の高い作物の作出) 新産業(雇用)の創出 ・のべ3億7,557万塩基対*を解 読(うち日本は6割の貢献) ・遺伝子の特許取得・出願中(36 個) 注:*は重複部分を含むため、解読率は 精査中(重要部分は約3億7,500万 塩基対) (農薬を減らした環境にやさしい農業) ・地球規模の食料問題解決 ・重要部分の解読を、我が国 主導で14年中に解読終了。 ・16年度までに100個以上 のイネ有用遺伝子を特許化。 これまでの成果 ・持続的農業への貢献 社会・ 経済への貢献 有用遺伝子の単離 ・機能解明を推進 (病気の予防に役立つお米、アレルギ ー等の特定疾患でも摂食できるお米) ○植物生命科学への貢献 ○植物生命科学への貢献 ・植物由来の有用物質生産 (画期的な医薬品・食品原料等) ・植物由来の新素材生産 (環境を守る生分解性プラスチック 原料等) 4 DNAマーカー育種技術 我が国の強味 ○イネ全ゲノム塩基配列の解読のための国際コンソーシアムの 中心として世界の穀物ゲノム研究をリード ○作物品種開発において、組換え体開発と併せて、マーカー育 種が今後の世界の潮流であり、日本には世界に誇る生理・栽 培等イネの研究蓄積と植物遺伝資源のバンクが存在 ○独法、都道府県、大学、民間による地域毎の生態特性に対応 した育種体制が確立 ・イネゲノムの重要部分の塩基配列を高精度(99.99%)で14年中に解読予定 ・6,591個のイネ遺伝子を位置づけた植物における最高密度の遺伝子地図作成 技術開発の内容 これまでの主要な成果 解決すべき主要な技術的課題 ・DNAマーカーを用いたイネの 早生系統、いもち病抵抗性系統の 育成 ・目的遺伝子を高い精度で選抜 できるDNAマーカーの開発 個体 1 2 3 4 5 6 7 ・・・・・・ マーカーA × × × 目的遺伝子を持っている個体だけ を圃場で栽培、他の形質を評価。 ・少量サンプルより迅速にマー カー解析するシステムの開発 ・育種期間の短縮、労力及び圃 場面積の大幅な縮減を可能と する新品種育成システムの確 立 5 技術開発の効果 国民生活の視点 ・品種開発年限の大幅な短縮 (従来の半分以下)による消費 ニーズに対応した高品質で多 様な農産物の提供 ・国内の食料自給率の向上 (41%→45%(2010年))と食料 の安定供給の確保 ・DNAマーカーを応用した品 種判別技術の確立を通じた表 示の適正化による、消費者の 信頼回復 産業化の視点 ・国際競争力の高い農業の育成 (我が国固有の農産物の輸出産業化) ・種苗産業の育成 (種苗の世界市場への進出) ・食品検査市場の拡大 (品種鑑定事業の発展) 植物工場・動物(昆虫)工場 我が国の強味 技術開発の効果 ○イネについては、有用遺伝子の機能解明に必要なゲノム情報 と研究リソースが充実 ○100年以上の蚕糸研究の蓄積を活かし、昆虫研究では世界 のトップランナー ・イネゲノムの重要部分の塩基配列を高精度(99.99%)で14年中に解読予定 ・イネの完全長cDNAについて14年度中に3万種をライブラリー化 ・昆虫研究において、我が国独自の生産系開発につながるカイコへの遺伝子 導入技術を確立 ・カイコのゲノム解析により、有用物質生産に直結する有用遺伝子が集中 する重要領域を特定 技術開発の内容 ○病院内感染や伝染病のまん 延を防止し、より安全な暮ら しを実現 ○健康・医療関連製品などの 多様化を通じた生活の質的向 上 産業化の視点 ○我が国独自の技術で独創的 な商品開発 解決すべき主要な技術的課題 ○産業利用(医薬品、燃料物質等)が可能な有用物質の生産に関わ る遺伝子群の単離と相互作用の解明 ○様々な有用物質生産に対応可能な、我が国独自の生産工程を開発 実用化 実用化 これまでの主要な成果 ○組換えバキュロウイルスに感染させた カイコを用いた動物インターフェロン生 産を実現 国民生活の視点 昆虫工場 ・化学合成できなかった、 ウイルス増殖抑制剤 ・ヒト・コラーゲン など ○新たなビジネスチャンスを 創出 ・中小企業でも、安全かつ少な い投資でチャレンジ可能 ○太陽エネルギーを利用した 環境負荷の小さい医薬品等の 生産 ネコ・インター フェロン等 6 機能性食品 我が国の強味 技術開発の効果 ○機能性食品(生体調節機能を持つ食品)という概念は我が国が世界 で最初に提唱 機能性食品として厚生労働省が認めた特定保健用食品は297品目が登録され ている(2002年7月現在) 特定保健用食品のように国が食品機能の根拠を個別評価して表示を認めている のは先進国の中で日本だけである ○食品の機能性評価基準を産学官が一体となって開発することを目的 とした全国的な研究会が発足予定(2002年9月) 技術開発の内容 これまでの主要な成果 解決すべき主要な技術的課題 ・血圧低下作用のあるGABA (γ−アミノ酪酸)を多く蓄積 した食品素材の開発 茶(ギャバロン茶) イネ(発芽玄米) ・調理・加工過程での機能性 成分の消長・変化の解明 (例:加熱調理によるポリフェノール ・がん抑制作用が顕著な成分 (β−クリプトキサンチン等) がカンキツ類に多く含まれ ることを発見 ・機能性成分の組み合わせに よる生体調節効果の解明 (例:水産食品とコメの組み合わせ の消長等) ・新たな機能性成分の検索・ 同定 (例:抗酸化性等) よる生体調節効果等) 7 国民生活の視点 ・機能性成分に着目した健全 な食生活の提言による活力 ある長寿社会の実現 老年(65歳以上)人口の割合 2000年 17% ↓ 2010年 23% 参考 アメリカ 1997年 13% 産業化の視点 ・機能性食品産業の振興 GABA (γ−アミノ酪酸)含量 が高い発芽玄米の市場 1998年 数百万円 ↓ 2002年 約100億円 特定保健用食品市場 1997年 1300億円 ↓ 2001年 4100億円 バイオレメディエーションとバイオマスエネルギー 我が国の強味 技術開発の効果 ・バイオレメディエーションは、世界的に見ても比較的新しい研究分野 ・我が国では、土壌汚染対策法が本年5月に公布され、バイオレメディ エー ションに対する関心、ニーズが増大 ・バイオレメディエーションによる汚染土壌浄化に関する特許出願数 日本:50∼60件/年 米国:20∼30件/年 (1996、1997) ・画期的な技術開発によって、我が国のバイオマス資源(農林業、食 品産 業から約1.7億t/年)の有効利用が図れれば、化石燃料の大 幅な削減 が可能 技術開発の内容 分解・吸収能力の 高い植物や微生物を 活用した汚染土壌の修復 組換えカラシナ等による 重金属の吸収技術 (2kg/haの吸収能力(試算)) バイオマスエネルギープラント ・有害化学物質についての国際安 全 基準策定の動きとリスク低減に 対す る強い要請 ・地域における循環型社会の構築 ・地球温暖化防止対策の一つとし て、化石燃料に代替する新エネ ル ギーが必要 新エネルギーのシェア 現状 1% ↓ 2010年 3% 産業化の視点 収穫・搬出 ・バイオレメディエーションの市場規模 組換え植物、微生物 の環境影響評価 現状 2∼3億円 ↓ 微生物の 分解能力向上技術 2020年 重金属類 有機化学物質 国民生活の視点 メタノール化 電力化 高温気体中の カドミウム等 重金属回収技術 (カドミウム等) (ダイオキシン類等) 注:□はこれまでの主要な成果 □は解決すべき技術的課題 8 1,800億円 ・バイオマスエネルギー生産技術が 実 用化されれば、市場規模2兆2千 億円 の一般廃棄物処理産業へ大き なインパ クトを与える可能性