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ピクテ・マーケット・マンスリー 2015年6月発行
新興国株式市場 注目のトピックス集
Pictet Market Monthly
新興国、注目のトピックス集
5月の新興国株式市場は、リスク回避の動きや、原油価格、商品市況の低迷、ブラジルや中国の経済指標の鈍化な
どを背景に下落しました。
5月の新興国株式市場
注目のトピックス
5月の新興国株式市場は月間で下落しました。
新興国株式市場は、月初、ギリシャの債務返済懸念の高まり
や米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が株式のバ
リュエーション(投資価値評価)が割高な水準にあるとの認識
を示したことなどが影響し世界的に株式市場が低調な動きと
なるなか、リスク回避の動きを背景に軟調に推移しました。そ
の後も米国の利上げ時期を巡る観測に影響を受けながら、原
油価格や商品市況の低迷が純輸出国の足かせとなったこと
に加え、ブラジルや中国の経済指標の鈍化や予想を下回る
企業業績の発表などを受けて下落しました。
地域
米国をはじめ世界的な景気回復は新興国の輸出拡大を促し、
新興国経済および企業にもプラスになると考えられます。中国
では、景気支援に向けて追加利下げや国有企業改革、経済
構造改革を加速するとの期待が、新政権が誕生したインドな
どでも経済改革が期待されています。流動性の面では日銀や
欧州中央銀行(ECB)が量的金融緩和を継続していることに加
え、多くの主要新興国が利下げを実施しており、新興国株式
市場を下支えするものと期待されます。一方、米国では年内
にも利上げが視野に入ってきていますが、米国の金利上昇は
新興国のなかでも米ドルでの資金調達の依存度の高いトルコ、
ブラジル、インドネシア、南アフリカ、マレーシアなどにマイナス
の影響を及ぼすため注意する必要があると見ています。
トピッ クス
ペー ジ
中国の利下げ再考。見逃す
べきでないのは
2
人民元、もう安いとは言えな
い?
3
一瞬冷やりとした中国株式
市場だが
4
フィリ ピン
フィリピン中央銀行、次の一
手は
5
ブラジル
そろそろ終了に近づくブラジ
ルの利上げ局面
6
ギリシャ債務返済問題、ま
ギ リシ ャ ずは6月末までの展開に注
目か
7
ロシ ア
ロシア中銀、外貨準備高復
活の道
8
トルコ
総選挙、トルコリラの動向に
影響か
9
中国
アジ ア
今後の見通し
長期的には新興国の先進国を凌ぐ高い成長見通しには変わ
りありません。中間所得層の持続的な拡大や構造変化が新
興国の成長を後押しすると考えています。
国
南米
欧州
ポーラン ポーランドの大統領選挙が
ド
送るサイン
10
こうした状況下、株式のバリュエーションについては、株価収
益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)は先進国株式に対して
相対的割安感が強まっています。また、配当利回りは先進国
株式と比較しても相対的に高い利回りとなっており、魅力的な
水準です。主要新興国は通貨安傾向にあり新興国通貨の割
安感が増しています。また、足元では、新興国企業は業績が
低迷するなか利益改善に向けてコスト削減や設備投資の圧
縮を進めています。このため、世界景気の回復により需要が
回復した場合には、大きく株価が反発する可能性があると見
ています。
(※将来の市場環境の変動等により、コメントの内容が変更さ
れる場合があります。)
ピクテ投信投資顧問株式会社
巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
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Pictet Market Monthly
新興国株式市場 注目のトピックス集
中国の利下げ再考。
見逃すべきでないのは
中国の今回の利下げは実質金利が依然高水準である
ことの調整や、株式市場、特に不動産市場への配慮が
見られる一方で、中国当局が人民元金利の自由化に
向けた布石も同時期に公表していることに、より注目し
ています。
中国利下げ:2014年11月から3回目の利下げ
-景気減速阻止に向けた支援
中国人民銀行(中央銀行)は2015年5月10日、政策金利で
ある預金基準金利(期間1年)を0.25%引き下げて2.25%、貸
出基準金利(同)も0.25%下げて5.1%にすると発表しました(図
表1参照)。また、金利自由化に向けたステップとして、預金
金利の上限を基準金利の1.3倍から1.5倍に引き上げること
も発表しています。
どこに注目すべきか:
実質金利、小口外貨預金、預金保険、SDR
中国の今回の利下げは実質金利が依然高水準であることの
調整や、株式市場、特に不動産市場への配慮が見られます
(図表2参照)。一方で、中国当局は人民元金利の自由化に向
けた布石も同時期に公表している点に大いに注目すべきと
見ています。
まず中国の金利水準を物価で調整した実質金利では依然高
水準とも見られます(図表1参照)。4月の国際通貨基金(IMF)
総会で中央銀行の周小川総裁が先進国と比べて中国の金
利水準が依然高く、金融緩和の余地がまだ大きいと述べた
こととも整合的と思われます。
次に株式市場への配慮がうかがわれるのは、過去半年の金
融緩和策の公表タイミングが市場の下落開始局面と概ね重
なると見られるためです(図表2参照)。特に過剰債務と住宅
価格の下落に直面する不動産セクターへの流動性供給が金
融緩和の背景と見られます。中国の2015年の社債償還(125
億ドル程度)の規模が巨額なことを受け、対応が遅れた結果
「(負担が)大きすぎて助けられない」といった事態の回避を優
先しているとも見られます。
ただし、今回の利下げも注目はされますが、同時期に中国当
局から発表された人民元金利の自由化政策にも注目すべき
と見ています。例えば、預金金利の上限が基準金利の1.3倍
から1.5倍に引き上げられました(5月10日)。この結果1年物
定期預金の上限金利は3.25%から3.375%へ拡大するなど将来
の完全自由化への布石が打たれています。また、10日に人民
銀行は143号通達で小口外貨預金(3百万ドル未満)の金利上
限を撤廃しました。2014年6月に上海の自由貿易試験区で法
人預金に限り上限を撤廃しましたが、今回は対象を個人預金
へ拡大しました。最後に特筆すべきは金利自由化の下支えと
して預金保険条例が2015年2月に公布、5月1日に施行された
ことで金融システムの安定が期待されます。ここまで中国当
局が人民元金利の自由化を進める背景に2015年はIMFの特
別引出権(SDR)構成通貨(現在ドル、ポンド、ユーロ、円)の5
年ごとの見直しの年にあたることが考えられます。2010年は
自由度が低いとして却下された人民元ですが、2015年10月の
IMF理事会で再びSDR構成通貨への採用を目指す模様です。
長期戦略を併せ持つ中国に注目し続けています。
図表1:中国政策金利と消費者物価指数(CPI)の推移
(日次、期間:2012年5月12日~2015年5月12日、CPIは月次)
貸出金利(左軸)
主要政策金利(預金,左軸)
消費者物価指数(前年同月比、右軸)
%
7
6
5
4
3
2
1
0
12年5月
%
7
6
5
※主要政策金利は2.25%
4
3
2
1
※直近の消費者物価指数
0
(前年同月比)は1.5%
14年5月
15年5月
13年5月
図表2:中国株式市場(上海総合指数)と金融緩和
(日次、期間:2014年11月12日~2015年5月12日)
5,000
4,000
※0.25%利下げ
2014年11月21日
3,000
2,000
14年11月
※0.25%利下げ
2015年2月28日
上海総合指数
※預金準備率引き下げ
※預金準備率引き下げ 2015年4月19日※0.25%利下げ
2015年2月5日
2015年5月10日
15年1月
15年3月
15年5月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※コメントは2015年5月13日時点
ピクテ投信投資顧問株式会社
巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
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Pictet Market Monthly
新興国株式市場 注目のトピックス集
人民元、もう安いとは言えない?
今日のヘッドライン2015年5月13日号で中国は人民元
をSDR構成通貨となることを目指していると述べました
が、今回IMFが人民元の水準に関して評価を変更した
ことは人民元が構成通貨となることに向け一歩前進と見
られます。
IMF:人民元に対する評価を公式に変更
SDR組入れに弾み
どこに注目すべきか:
SDR、人民元、変動相場制、外貨準備高
今日のヘッドライン2015年5月13日号で中国は人民元をSDR
構成通貨となることを目指していると述べましたが、今回IMF
が人民元の水準に関して評価を変更したことは人民元が構
成通貨となることに向けて一歩前進したと見られます。
まず、IMFは人民元の水準についてインフレ率や貿易額で調
整されている実質実効為替レートが過去1年の上昇により人
民元安と呼べる水準でないと述べています(図表1参照)。
次に、米国などが批判してきた中国の対外収支(経常黒字)
の不均衡についてはIMFも改善の必要性を指摘しています。
ただし、中国の経常黒字(対GDP比率)は過去に比べ低下し
ていることもIMFは指摘しています(図表2参照)。またIMFは経
常黒字の今後の削減方法について(人民元高誘導といっ
た)、為替レートの操作でなく過剰な貯蓄を軽減するなど他
の方法にすべきと提言しています。
その他IMFが(SDR組入に向け)中国に求めているのは、経
済ファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映した為替レート、よ
図表1:人民元(対ドル)と実質実効為替レートの推移
(日次、期間:2010年5月26日~2015年5月25日、
実質実効為替レートは月次)
指数 135
人民元の実質実効為
人民元/ドル
6.0
高 人民元 安
国際通貨基金(IMF)は2015年5月26日、中国について「4条
協議」(IMF加盟国の経済政策に関する定期的な協議)の報
告書を公表しました。報告書の中で、IMFがこれまで長期に
わたって維持してきた「中国人民元は過小評価(人民元安で
放置されている)」との見解を公式に撤回しました。これによ
り、中国が望んできたIMFの特別引出権(SDR)の通貨バス
ケットへの人民元組入れに向けたハードルが一段と下がっ
たとの見方が台頭しています。
IMFアジア太平洋局のマーカス・ロドローラー副局長が率い
る中国経済の審査チームは、過去1年の実質的、効果的な
人民元の上昇により、人民元レートはもはや過小評価とは
言えない水準になったと評価した上で、中国は2~3年以内
に変動相場の達成を目指すべきとも述べています。
り具体的には2から3年を目処に変動相場制への移行を目指
すべきと述べています。人民元が変動相場制に移行する過程
で、中国の資本取引の自由化が進むことも期待されます。
SDR構成通貨になったとしても物の売買や取引に使用できる
わけではありませんが、現在ドル、ユーロ、ポンド、円で構成さ
れているSDRに人民元が加われば、人民元が各国の外貨準
備として保有されることや、決済通貨として利用頻度が高まる
ことが期待されます。そして中国のプレゼンスが一層高まるこ
とにつながるため、今後の動向に注目しています。
6.3
6.6
6.9
10年5月
替レートは過去5年間
で約32%上昇
125
115
人民元は対
ドルで約6.2
人民元(逆メモリ、左軸)
実質実効為替レート(右軸)
12年5月
105
95
14年5月
※実質実効為替レート:名目為替レートを貿易額で加重し、インフレ率で調整
したレート、国際決済銀行(BIS)算出のレートを表示。
出所:BIS、ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
図表2:中国経常収支対GDP(国内総生産)比率 の推移
(四半期、期間:2000年1-3月期~2015年1-3月期)
12
経常黒字対GDP比率
約10%まで上昇
%
8
中国経常収支
対GDP比率
経常黒字対GDP
比率1~3%程度
で推移
4
0
00年3月
04年3月
08年3月
12年3月
出所:IMF、ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※コメントは2015年5月27日時点
ピクテ投信投資顧問株式会社
巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
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Pictet Market Monthly
新興国株式市場 注目のトピックス集
一瞬冷やりとした
中国株式市場だが
中国株式市場が下落した主な背景は、信用取引の融
資条件の厳格化、中国人民銀行による資金吸収などに
よりますが、海外株式市場への影響は小幅であり、最近
の中国株式市場のスピード調整の面が大きいと見られ
ます。
中国株式市場:上海総合指数、4ヵ月ぶりの
大幅安、信用取引の条件厳格化など
中国株式市場は2015年5月28日、大幅に下落しました。主
要指標である上海総合指数は、前日比321.45(-6.50%)下
落して4620.27となりました(図表1参照)。指数を構成する上
海A株指数は336.96(-6.51%)安の4838.54でした。外貨建て
のB株市場も下落し、上海B株指数は25.45(-5.00%)下落し
て483.37となりました。
上海総合指数は足元の急ピッチな上昇で、節目の5,000ポ
イントに接近したことで、高値警戒感が意識され利食い売り
に押された形となりました。
どこに注目すべきか:
信用取引融資条件、資金吸収、相互販売
高値が警戒されていた中国株式市場が下落した主な背景
は、証券会社が信用取引の融資条件を厳格化したとの報
道、中国人民銀行(中央銀行)が金融システムから資金を吸
収したとの報道(人民銀は否定せず)などによります。しかし、
中国株式市場の下落率の海外株式市場への影響は小幅で
あったことなどから、最近の中国株式市場の上昇が速かった
ことに対するスピード調整の面が大きいと見られます。
まず、最近、中国株式市場において信用取引の利用は拡大
していました。格付け会社フィッチ・レーティングスによると、
信用取引向け融資残高は2014年末時点から5月前半までで
ほぼ倍増(1兆9,000億元、約3,000億ドル)したと指摘していま
す。信用取引残高は中国株式市場の時価総額の約3%であ
ることから規模はともかく、拡大ペースの速さは気になりま
す。今回の信用取引の融資条件の厳格化は拡大ペースの
抑制を目指した格好です。
次に、中国人民銀行による資金吸収も下落の要因と見られ
ます。逆に言えば、2月ごろからの資金供給により金利が低
下したことに伴い、中国株式市場は上昇のペースを速めて
いました(図表1参照)。 28日に中国人民銀行が予想外に資
金を吸収した意外感が売りのきっかけになった模様です。し
かし、中国当局は4月に預金準備率を引き下げ、5月に利下げ
を実施するなど金融緩和姿勢を当面維持するものと思われま
す。インフレ率も落ち着いていることから、本格的な金融引き
締めに転ずる可能性は低いと見られます。
その他では、中国投資公司(CIC、中国のソブリンウェルスファ
ンド)傘下の投資会社が保有する銀行株の売却が明るみに
なったことが重なったことなども28日の下落要因と思われま
す。当面、市場変動への注視は必要ですが、本格的な弱気相
場に転ずる可能性は現段階では高くないと見られます。
なお、中長期的な観点から、中国は流動性の供給が株式市
場の上昇につながりやすい点に注目しています。中国国内の
投資家は事実上国外への投資が制限されており、流動性供
給が国内とりわけ株式市場に集まる傾向があると言われてき
ました。しかし、この点について改善の兆しが見られます。例
えば、5月22日に調印された中国本土と香港の証券投資ファ
ンドの相互販売解禁(7月1日実施)は中国本土の投資家に海
外の債券などへの投資機会を提供するものと見られます。中
国国内の株式市場への資金の集中は変動性を高めるリスク
を伴うことが懸念されることから、当局の(投資機会の拡大)方
針は中国市場の発展にプラスと見ています。
図表1:中国上海総合指数と短期金利の推移
(日次、期間:2014年5月28日~2015年5月28日)
指数
5,000
上海総合指数(左軸)
上海銀行間金利1週間物(右軸)
%
6.5
5.5
4,000
4.5
3.5
3,000
2.5
2,000
14年5月
14年8月
14年11月
15年2月
1.5
15年5月
※短期金利:上海銀行間金利1週間物
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※コメントは2015年5月29日時点
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新興国株式市場 注目のトピックス集
フィリピン中央銀行、次の一手は
フィリピンの政策金利は当面据え置きが想定されるもの
の、その後の一手は利上げの可能性もあると見られま
す。ただし、米国が利上げをする前の利上げはリスクが
高いことから、米国の出方や市場の反応に注意を払うと
見られます。
フィリピン中銀:政策金利を市場予想通りに
4%で据え置き(5会合連続)
フィリピン中央銀行は2015年5月14日の金融政策会合で主
要政策金利である、翌日物預金金利を4%に維持し、5会合
連続の据え置きを決定しました(図表1参照)。市場でも大方
が据え置きが予想されていました。(市中銀行のペソ資金運
用先である)特別預金口座(SDA)金利も2.5%に据え置かれ
ました。また、預金準備率も20%に据え置かれました。フィリ
ピン中銀は声明で、国内経済の成長が今年加速する見込
みであることから、金融政策を通じた刺激策の必要性が低
下していることを示唆しています。
なお、フィリピン中銀によると、2015年のインフレ見通しを平
均2.3%とこれまでの2.2%から引き上げました。2016年も2.5%
から2.6%へ上方修正しています。
図表1:フィリピンペソ(対ドル)と主要政策金利の推移
(日次、期間:2014年5月19日~2015年5月18日、(日本時間正午))
4.1 %
4.0
3.9
3.8
3.7
3.6
3.5
3.4
14年5月
ペソ/ドル 46
45
安 ペソ 高
どこに注目すべきか:
インフレ目標、ペソ安、エルニーニョ、送金
響も想定されるため今後の動向に注意が必要です。
次にフィリピンの景気動向ですが、声明にあるように国内景気
は堅調です。加えて、フィリピン経済の特色である海外在住の
フィリピン人の国内への送金も足元回復しています。2015年1
~2月は大幅に落ち込みましたが3月は回復し、累積で見ると
通常の水準に戻っています(図表2参照)。1月は15日から19日
までローマ法王の滞在により特別な休日となったことや、ユー
ロ安が一時的に送金額を減少させたと見られます。声明では
国内の流動性は十分であるとも述べており、送金が回復すれ
ば利下げよりは、景気動向(並びに米国の出方)次第ながら、
フィリピンの次の金融政策の一手は利上げの可能性が考えら
れます。
フィリピン中央銀行の声明などからフィリピンの政策金利は
当面据え置きが想定されるものの、以下の点に注目すると
44
主要政策金利(左軸)
将来的に、次の一手は利上げの可能性もあると見られます。
ペソ(対ドル、右軸)
ただし、米国が利上げをする前にフィリピンが利上げを決定
43
することはリスクが高いと見られることから、米国の出方や市
14年8月
14年11月
15年2月
15年5月
場の反応に注意を払いながらの対応が想定されます。
図表2:フィリピン海外在留労働者からの送金の推移
まず、フィリピンのインフレ率は足元前年同月比2.2%とインフ
(月次、期間:2010年1月~2015年3月、前年同月比と累積)
レ目標(3%±1%)の範囲内と良好です。ただフィリピン中銀は
12
%
2015年のインフレ見通しを2.2%から2.3%へ上方修正するなど
懸念も示唆しています。上方修正の理由は通貨ペソ安と異
9
常気象をもたらすエルニーニョによる懸念と述べています。
ペソ安については新興国通貨が全般に売られた2014年後半 6
にペソ安が進行、下落傾向に落ち着きは見られますが、2014
累積(各年累積ベース) ※累積は各月の月次
3
年前半に比べ依然ペソ安水準です(図表1参照)。
データ年初来累積
月次(前年同月比)
5月12日にオーストラリア気象庁が(アジアの一部で干ばつが 0
懸念される)エルニーニョ(初期段階)の発生を公表していま
10年1月
11年1月
12年1月
13年1月
14年1月
15年1月
す。フィリピン金融当局もすでに懸念を共有しており深刻な影
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※コメントは2015年5月18日時点
ピクテ投信投資顧問株式会社
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そろそろ終了に近づく
ブラジルの利上げ局面
2015年4月29日、ブラジル中央銀行は大方の予想通り、
政策金利を13.25%に引き上げました。ブラジルではイン
フレ懸念が残るものの、利上げ局面はそろそろ終了に
近づいているものとみられます。
ブラジル中銀、政策金利を+0.5%引き上げ
13.25%に
2015年4月29日、ブラジル中央銀行は金融政策委員会を開
催し、政策金利を+0.5%引き上げ、13.25%とすることを発表し
ました。2014年10月以降、5会合連続の利上げとなり、利上
げ幅は合計で+2.25%に上ります(図表1参照)。今回の決定
は前回(2015年3月)と同様に、マクロ経済見通しやインフレ
見通しを考慮し、全会一致で決定されており、大方の市場
予想とも一致した結果となりました。
必要なことは一目瞭然で、歳出の削減、歳入の増加が求めら
れる中、議会承認が必要ない項目、たとえば燃料税の引き上
げなどは既に進展を見せています(図表2参照)。今後の注目
は、議会承認が必要な社会保障給付(年金や失業保険)の削
減などが承認されるかが注目されます。
足元、インフレ率が+8.1%とインフレ目標の上限6.5%を超える水
準にあるなど、インフレ圧力には引き続き注意が必要ですが、
利上げ局面はそろそろ終了に近づいていると考えられます
(図表1参照)。
図表1:ブラジルのインフレ率と政策金利の推移
([インフレ率]月次、期間:2010年3月~2015年3月、
[政策金利]日次、2010年3月31日~2015年4月30日)
どこに注目すべきか:
ペトロブラス、格付け、財政問題
ブラジル中央銀行は、インフレへの対応とレアル安抑制のた
めに2013年4月以降、金融引き締めのスタンスを維持してい
ますが、今回の利上げ実施により、市場のコンセンサスを見
ても、ブラジルの利上げ局面はそろそろ終了に近づいている
ものとみられます。
利上げ局面がそろそろ終了に近づいていると見る背景として
次のような点が挙げられます。
1つ目は、通貨レアル安に落ち着きがみられることです。これ
まで懸案事項となっていたペトロブラスの問題は、同社が監
査済みの決算を公表するなど、ひとまず解決に向かってお
り、悪材料出尽くし感がみられます。そのためレアル安防衛
のために通貨スワップを2015年3月末に停止して以降も、レ
アルの動向は落ち着きをみせています。
2つ目は、格下げ懸念が後退したことです。主要な格付け会
社は既にブラジルに対する格付けを変更しており、現状、投
資適格格付けは維持されており、ブラジルの格付けが非投
資適格格付けまで引き下げられる可能性は低下したとみら
れます。
3つ目は、財政改革期待が高まっていることです。ルセフ政権
2期目はレヴィ財務相のもと財政改革が進められています。
ブラジルでは政府の債務残高が積み上がるなど財政改革が
9
%
インフレ率(左軸)
政策金利(右軸)
%
インフレ目標の上限
前年同月比+6.5%
8
7
15
13
11
6
9
5
7
4
10年3月
5
11年9月
13年3月
14年9月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
図表2:ブラジルの一般政府関連総債務(対GDP)の推移
(月次、期間:2010年3月~2015年3月)
65 % GDP
60
55
50
10年3月
11年9月
13年3月
14年9月
出所;ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※コメントは2015年5月1日時点
ピクテ投信投資顧問株式会社
巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
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新興国株式市場 注目のトピックス集
ギリシャ債務返済問題、
まずは6月末までの展開に注目か
今回のユーロ圏財務相会合でギリシャ支援は何ら合意
に至らなかったものの、ユーロの変動は小幅にとどまり
ました。市場はギリシャ債務問題については6月末の金
融支援延長期限に向けた交渉の行方に注目していると
思われます。
ユーロ圏財務相会合:協議進展も溝残る
ギリシャ支援合意は見送り
ギリシャに対する金融支援を協議していた欧州連合(EU)の
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)は2015年5月11日の
会合後に声明を公表、融資の条件であるギリシャの財政改
革の内容に関してEU側とギリシャの間に溝が残ることから、
決定を見送りました。声明は、これまでの協議の進展に一
定の評価を示唆したものの、ギリシャ政府に改革の加速を
求める内容となっています。
5月11日のユーロ圏財務相会合において、ギリシャ支援は何
ら合意に至らなかったものの、ユーロの変動は小幅にとどま
りました(図表1参照)。市場はギリシャ債務問題については6
月末の金融支援延長期限(図表2参照)に向けた交渉の行方
に注目していると思われます。
まず、EUとギリシャの間で金融支援で合意するには何が溝と
なっているかですが、報道によると、ギリシャ政府が年金制
度や労働市場の改革を拒否している模様です。EUは同様の
財政改善効果がある代替案の提示をギリシャに求めている
との報道もあり、これらが溝となっていると見られます。
次に、溝を埋めるための今後のスケジュールで注目されそう
なのは6月18日(予定)のユーロ圏財務相会合です。第2次ギ
リシャ向け金融支援延長期限は6月末であり、遅くともユーロ
圏財務相会合(まで)に合意して、金融支援の実施や財務省
証券発行額上限の引上げなどを確保して、7月と8月の国債
の償還(図表2参照)や、9月の国際通貨基金(IMF)への返済
約15億ユーロへの準備が必要と思われます。今後の交渉も
綱渡りのスケジュールが見込まれます。
最後に総選挙や国民投票の可能性ですが、スケジュール的
に解散総選挙は実現性が乏しいと思われます。一方、国民
投票はドイツのショイブレ財務相が、ギリシャ政府がやると決
めるならやるべきと発言するなど(消極的ながら)実施の可能
図表1:ユーロ(対米ドル)レートの推移
(日次、期間:2014年5月12日~2015年5月11日)
1.5
1.4
ドル/ユーロ
高 ユーロ 安
どこに注目すべきか:
労働市場改革、第2次金融支援、国民投票
性も考えられます。仮に国民投票となった場合何が問われる
かは不明ですが、緊縮財政にあくまで反対とギリシャ国民が
表明すれば、それから先交渉はほぼ不可能と思われます。逆
に賛成であれば、現政権の政策への不信任となる恐れもあり
慎重な対応が求められると見られます。
ギリシャの返済問題、今後も解決に時間がかかりそうです。
1.3
1.2
ユーロ(対ドル)
1.1
1.0
14年5月
14年8月
14年11月
15年2月
15年5月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
図表2:ギリシャの主な返済スケジュールとイベント
(期間:2015年5月~2015年8月)
年月
2015年5月
主な返済スケジ ュ ー ル
(単位はユ ー ロ)
◎12日 IMFへの返済約7.5億
(報道によると返済済み)
主なイベント
5月11日:
ユーロ圏財務相会合
◎IMFへの返済 約16億
6月18日:
ユーロ圏財務相会合
2015年6月 ☆6月末:(凍結中の)ギリシャ向 6月25日:
け金融支援(約72億)延長期限 欧州連合(EU)首脳
会合
◎IMFへの返済 約4.7億
※各イベントの日程
2015年7月 ◎ECBが保有するギリシャ国
は予定です
債の償還 35億
◎IMFへの返済 約1.8億
2015年8月 ◎ECBが保有するギリシャ国
債の償還 約32億
※国際通貨基金(IMF)への返済額は各月合計額の推定額(5月は12日分)
出所:各種報道、資料等を基にピクテ投信投資顧問作成
※コメントは2015年5月12日時点
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新興国株式市場 注目のトピックス集
ロシア中銀、
外貨準備高復活の道
ロシア中央銀行が外貨準備高の回復を目指して外貨
買い・ルーブル売りを開始することは、短期的にはルー
ブルの変動要因と見られるものの外貨準備高を増やせ
る環境が続くならばルーブルの見直しが進む可能性も
考えられます。
ロシア中央銀行:外貨準備高の増加を目指し
外貨購入を再開
ロシア中央銀行は2015年5月14日、ホームページのプレス
サービスで外貨準備高を回復させるため、5月13日より国内
為替市場で外貨購入を開始する方針を公表しました。購入
額は1日に1億から2億ドルと述べられています。ロシア中銀
は今回の外貨購入でルーブルを特定のレートに固定する意
図はないと説明しています。また、為替市場の状況によって
は購入額の変更もあり得るとしています。
ロシアは2014年11月に完全変動相場制に移行、ロシア中銀
はルーブル安の抑制に外貨準備を売却したため、外貨準備
高は1年前の約5,000億ドルを超える水準から足下では約
3,580億ドルと大幅な減少となっています(図表1参照)。
どこに注目すべきか:
外貨準備高、ルーブル、停戦合意、原油価格
図表1:ロシア外貨準備高とルーブル(対ドル)の推移
(週次、期間:2010年5月14日~2015年5月8日)
6,000 億ドル
5,500
5,000
4,500
4,000
ロシア外貨準備高(含金、左軸)
ルーブル(対ドル、右軸)
ルーブル/ドル
原油価格
下落
外貨準備高は5,000
億ドル前後で安定
2014年2月
ロシア、クリミア侵攻
3,500
3,580億ドル
3,000
10年5月 11年5月 12年5月 13年5月 14年5月
75
65
55
45
安 ルーブル 高
ロシア中央銀行がルーブル市場の落ち着き(正常化)を理由
に、外貨準備高の回復を目指して、(ドルなどの)外貨買い・
ルーブル売りを開始することは、短期的にはルーブルの変動
要因となる可能性もあります。しかし外貨準備高を増やせる
市場環境が続くならばルーブルの見直しが進む可能性も考
えられます。
まず、外貨購入開始が公表された5月14日のルーブルの動
きを見るとルーブルは公表後1ドル=約50ルーブル付近での
取引となっており、14日開始直後の1ドル=48ルーブル台か
らルーブル安となっています。外貨準備高を増やすのはルー
ブルを売って外貨を購入するオペレーションであるため当然
といえば当然の市場の反応となっています。
ただし外貨準備高を増やすことによるルーブル安への影響
は小幅にすむ可能性も考えられます。ロシア中央銀行が外
貨準備高をどの水準まで回復させるのか不確かですが、仮
にウクライナ危機以前の5000億ドル程度まで戻すとすると約
1,500億ドル増やす計算で、1日あたり1.5億ドル購入するとす
れば大雑把には約4年も費やすこととなります。時間をかけ
ることで影響を低く抑える運営が想定されます。
一方で現在のルーブルの水準は1ドル=50ルーブル程度と、
危機前の25~30ルーブルに比べルーブル安に放置されてい
ます(図表1参照)。ロシア中銀がルーブル防衛に追われ(外
的ショックの吸収に有効な)外貨準備が大幅減となった際には
信用力低下が懸念されてのルーブル安進行の動きも見られ
ただけに、反対に外貨準備高の漸進的な増加はルーブルの
中長期的な下支え要因となる可能性もあります。
ただし、(ルーブル下落の原因ともなった)次の要因に注意が
必要です。1つ目はウクライナとの和平を進展または、少なくと
も停戦合意が遵守されるかです。2つ目は原油などエネル
ギー価格の落ち着きです。原油価格は指標となるWTI(ウエ
スト・テキサス・インターミディエート)原油先物の2015年6月物
が1バレル60ドル近辺での取引となるなど、40ドル台まで下落
した時期からは回復しています。しかし先進国の景気回復の
足取りは重く、中国の経済成長も減速傾向で、石油需要の回
復は鈍いとみられます。また調整が進んでいたと見られる供
給側も、先日石油開発機構(OPEC)が増産を表明するなど先
行きは不透明です。先日の(緊急的に引き上げられた)政策
金利の引き下げに加え、外貨準備高の増加を開始できるほど
ルーブルを取り巻く環境はひとまず改善したとみられますが、
今後の政策運営に焦りは禁物と思われます。
35
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出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※コメントは2015年5月15日時点
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新興国株式市場 注目のトピックス集
総選挙、トルコリラの動向に
影響か
金融政策に対する政治的圧力が懸念されるトルコで6
月7日に総選挙が予定されています。選挙は与党の公
正発展党(AKP)が優勢ですが、獲得議席数により為替
市場への影響も異なることが予想され、動向が注目され
ています。
トルコ中央銀行:政策金利を全て据え置き、
主要政策金利、1週間物レポ金利7.5%
トルコ中央銀行は2015年5月20日、主要政策金利である1週
間物レポ金利を7.5%で維持すると共に翌日物貸出金利と翌
日物借入金利も10.75%と7.25%でそれぞれ据え置きました。
議会選挙を6月7日に控えるなか、トルコ中銀のバシュチュ
総裁は4月30日に、インフレ見通しは金融政策の引き締めを
正当化しないと発言しています。ただしインフレ率は4月に
7.9%に上昇しており、トルコ中銀のインフレ目標(中心5%で上
下2%)の上限を上回っています(図表1参照)。
どこに注目すべきか:
トルコ格付け、AKP獲得議席数、人民民主党
図表1:リラ(対ドル)と消費者物価指数(CPI)の推移
(日次、期間:2013年5月21日~2015年5月19日、CPIは月次)
安 リラ 高
金融政策に対する政治的圧力が指摘されているトルコで6月
7日に総選挙が予定されています。選挙は与党の公正発展
党(AKP)が優勢ですが、獲得議席数により為替市場への影
響も異なることが予想され、動向が注目されています。
まず、何が懸念されているのか。トルコのエルドアン大統領
(元AKP党首。2014年8月、大統領選出に伴い離党、現AKP
党首はアフメト首相)は総選挙後に憲法改正を行い、現在は
象徴的な位置づけとなっている大統領の権限強化を目指し
ています。権限が強化された場合、トルコ中央銀行の金融政
策への干渉が懸念されています。例えば、格付け会社スタン
ダード&プアーズが5月8日にトルコを格下げしていますが、
発表文で格下げの理由として、トルコ中銀の独立性への懸
念を表明しています。
6月7日の総選挙におけるAKPの獲得議席と為替市場の影
響は以下のように想定されます(①~③は図表2参照)。
①330議席以上:
AKPが330議席以上獲得した場合、国民投票(367議席以上
では国民投票無しに)の結果によっては憲法改正が可能とな
るため為替市場にはマイナスの影響が懸念されます。
②276~329議席:
AKPが単独で過半数を維持するものの、憲法改正には議席
数が足りないケースです。政権維持という点で政局の安定性
が確保できる上、憲法改正は難しくなることが想定されること
から市場にはプラスと思われます。
③276議席を下回る:
このケースが起きる可能性もあります。トルコでは政党の得票
率が10%で議席が配分される仕組みですが、クルド系の人民
民主党(HDP)の支持率が10%前後で推移しており、仮に10%と
れれば60議席程度がHDPに配分され、AKPへの配分が減る
ことになります。この場合、それでもAKPは第1党が想定され
ますが、連立が模索されるものと思われます。野党の共和人
民党(CHP)などとの交渉がスムースにいくかは不透明で、市
場の変動が高まる展開も想定されます。
リラの動向を占う上で、総選挙に注視が必要と見ています。
2.8 リラ/ドル
% 10
2.6
9
通貨リラは下
2.4
落傾向
8
2.2
7
2.0
インフレ率
リラ(対ドル、左軸)
7.9%
CPI(前年同月比、右軸)
1.8
6
13年5月
13年11月
14年5月
14年11月
15年5月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
図表2:トルコ総選挙(2007、11年)AKPの獲得議席数
400 議席数
350
総議席数
550
367議席 絶対過半数(国
民投票無しに憲法改正)
330議席 国民
投票可能
341
①
327
②
300
276議席
単純過半数
③
250
2007年
2011年
出所:各種報道、外務省のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※コメントは2015年5月22日時点
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新興国株式市場 注目のトピックス集
ポーランドの大統領選挙が送る
サイン
5月10日の大統領選挙前までは現職のコモロフスキ氏
有利との見方が大半でしたが、国民の不満が表面化し
たことで、今回の大統領選挙と同じ構図での争いが想
定される10月(予定)の総選挙の行方に注目が集まって
います。
ポーランド大統領選:最大野党の保守強硬派
「法と正義」のドゥダ氏が当選
ポーランド選挙管理委員会は2015年5月24日に行われた大
統領選挙の決選投票で、野党「法と正義」(PiS)のアンジェ
イ・ドゥダ候補が得票率51.55%で勝利したと発表しました。与
党「市民プラ ットフォーム」(PO)の現職ブロニスワフ・コモロ
フスキ大統領は得票率は48.45%でした。 5月10日に実施さ
れたポーランド大統領選の第1回投票で、家族給付増額や
銀行・小売り業者への課税などを公約するドゥダ氏が予想
外に首位になって以降、公約を嫌気して通貨ズロチやポー
ランド国債は下落傾向となっています(図表1参照)。内政の
実務を握るPOのコパチ首相は当面残留します。
(日次、期間:2014年5月26日~2015年5月25日)
ズロチ/ドル
3.9
3.6
3.3
安 ズロチ 高
ポーランドのGDP(国内総生産)成長率が堅調(図表2参照)な
ことから、5月10日の大統領選挙前までは現職のコモロフス
キ氏有利との見方が大半でした。しかし思わぬ形で国民の
不満が表面化したことで、今回の大統領選と同じ構図での争
いが想定される2015年10月(予定)の総選挙の行方に注目が
集まっています。
まず、ポーランドの大統領はフランス型の実権を持った大統
領に近く、例えば法案に対する拒否権の行使(ただし下院が
5分の3の多数決で再可決した場合は署名・公布しなくては
ならない)や、法案提出権などが可能なため、議会とは協力
関係が望ましいものの、今後、議会(PO)と大統領(PiS)はね
じれとなることから、政治的な停滞も懸念されます。
次に、PiSのドゥダ氏を支持したグループの特色を見ると主に
反体制の若者と(保守層の)年金受給者が支持者と見られま
す。別の切り口ではポーランドの西側はPiSのドゥダ氏支持、
ワルシャワなどを含む経済的に裕福な東側はPOのコモロフ
スキ氏を支持しています。ポーランドは国全体の成長率は高
く欧州連合(EU)でも優等生です。ただ成長の配分に問題が
見られます。例えば、失業率は国全体では8%程度ですが若
図表1:通貨ズロチ(対ドル)とポーランド10年国債利回り
3.0
14年5月
ズ ロチ (対ド ル、左 軸)
ポ ーラン ド10年 国債利 回り (右軸 )
% 3.9
3.4
2.9
2.4
14年8月
14年11月
15年2月
下落 国債価格 上昇
どこに注目すべきか:
ねじれ政局、ポーランド失業率、反EU勢力
年層に限ると20%を超えています。これらのグループからの反
発を読みきれなかったことが現職の敗因と見られます。
最後に、PiS党の政策の特色を見ると、自国の利益を重視し、
ドイツやEUとの関係に距離をおく傾向が見られます。またロシ
アに対しても強い態度で対応すると見られています。大統領
選挙でドゥダ氏は家族給付増額などを公約していた点が支持
を集めたと見られますが、市場では反EUや財政改革の遅れ
が懸念されることから通貨ズロチがやや軟調となりました。両
党の対決が見込まれる今秋の総選挙の行方に要注目です。
ポーランドに限らず、5月24日のスペイン地方選挙でもEU(の
緊縮財政)に反対するポデモス党が票を伸ばすなど、欧州の
既存の枠組みへの不満は根強いものがあります。ユーロの
安定にも影響が及ぶ問題であり、注意が必要と見ています。
1.9
15年5月
図表2:ポーランドとユーロ圏のGDP成長率の推移
(四半期、期間:2000年4-6月期~2015年1-3月期)
8
%
6
4
2
0
-2
ポーランドGDP(前年同期比)
-4
ユーロ圏GDP(前年同期比)
-6
00年6月
03年6月
06年6月
09年6月
12年6月
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※コメントは2015年5月26日時点
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