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構造と取扱 - 長谷川鉄工

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構造と取扱 - 長谷川鉄工
MODEL
VZ / VZL 冷凍機
構造と取扱
Ver. 7
520-0006-01.0.0
序
1910 年の創業以来、長谷川鉄工(株)は冷熱プラント及び冷凍機の専門メーカであります。
我が国で最初に高速多気筒冷凍機を手がけて以来、国内はもとより、広く世界に輸出し優秀な成績をあげ御好評
をいただいております。
産業文化の発展と生活の向上に伴い高速多気筒冷凍機の応用分野は一層拡大されつつあり、使用条件はより過酷
になり、要求される性能も高度になってまいりました。
当社はそれらに対して永年の豊富な経験と技術、最新の加工システム及び高品質な材料を投入して充分な性能を
持った各種の高速多気筒冷凍機シリーズを送り出しております。
本書はこれらの高速多気筒シリーズのうち最新のテクノロジと性能を誇るVZ及びVZL型高速多気筒冷凍機
の構造と取扱いについて説明しております。
なお、VZL62RM機は超低温用として業界最大パワーの冷凍機であり、VZ62RM機で培われた高性能・高品
質を受け継ぐ冷凍機です。皆様のより深い御理解と御研究により、その性能を最高度に発揮し、必ず御満足願え
る冷凍機であると確信致しております。
長谷川鉄工株式会社
部品御注文・御照会についてのお願い
1.冷凍機の機種名、冷媒名、製造番号などなるべく詳細にお知らせ下さるようお願い致します。
2.部品御注文・御照会は、別紙パーツサプライリストの品番コード又は照合番号を御使用下さい。
3.VZ機とVZL機の主要部品は、ほとんど共通で互換性を持たせたものを使用しております。
4.御照会につきましては、運転状況(圧力、温度、電流値、運転時間)などもなるべく詳細にお知らせ
下さるようお願い致します。
5. 高圧力差冷媒とは、HFC系冷媒等で設計圧力が 1.8MPa 以上の冷媒を示します。(例えば R404A)
部品購入時のご確認
HASEGAWA 純 正 部 品 には、高性能・高品質を保証する下記の純 正 部 品 表示を行っていますので、必ず御
確認願います。
VZ型、VZL型冷凍機を最高の状態で御使用戴くには、高度な技術力と徹底した品質管理体制により高性
能・高品質を保証した HASEGAWA 純 正 部 品 を御使用ください。
1、ピストンリング
ピストンリングの合口部に、右図のマークが刻印されています。
2、吸入弁板・吐出弁板
弁板表面に、右図のマークがマーキングされています。
3、その他の部品
製品包装に、HASEGAWA 純 正 部 品 シールが添付されています。
連絡先
長谷川鉄工株式会社
〒552-0001
大阪市港区波除 1-4-39
電話(代表) 06-6583-1381
Fax
06-6583-1389
E-Mail
[email protected]
(この説明書は、2013年 1 月現在の標準型の冷凍機を基準に作成されています。)
はじめに
本書は、ご使用( 据付・運転・保守・点検 等 )いただく場合の取り扱い、留意点について述べてあります。
誤った取り扱いは思わぬ不具合を引き起こしますので、ご使用前に必ず本書を熟読され、お読みになった後は、お使いになる方が
いつでも見られるところに必ず保管し、正しくご使用いただきますようお願いいたします。
[安全に関するご注意]
この[安全に関するご注意]では、安全注意事項のランクを
として区分してあります。
: 取り扱いを誤った場合に、危険な状況が起こり得て、死亡又は重症を受けることが想定される場合。
: 取り扱いを誤った場合に、危険な状況が起こり得て、中程度の傷害や軽傷を受けることが想定される場合
及び物的損害の発生が想定される場合。
なお、
に記載した事項でも、状況によっては重大な結果に結びつく可能性があります。いずれも重要な内
容を記載していますので必ず守って下さい。
《 据付場所 》

直接屋外では使用しないでください。雨水のかかる場所でご使用されますと、漏電・感電の原因になります。

可燃性ガスの漏れる恐れがある場所への据え付けは、行なわないでください。万一ガスが漏れてユニットの周囲に溜まる
と、発火の原因になることがあります。
《 設 置 》

据え付け工事は確実に行なってください。据え付けに不備があると、振動・感電・火災の原因になります。

据え付け場所や機械室には、一般の人が容易に立ち入りしないような処置を講じてください。誤使用が原因でケガをする
ことがあります。

換気をよくしてください。万一冷媒ガスが漏れると、酸素欠乏により死亡事故にいたることがあります。

湿気の多い所や、水のかかり易い場所に据え付けないでください。絶縁低下から漏電・感電の原因になります。

アース工事を行なってください。アースが不完全な場合は、感電の原因になります。

ユニットには取扱者以外の人が触れないような表示をしてください。誤使用が原因でケガをすることがあります。
《 運転上の注意 》

運転・操作、保守、点検の作業は必ず専門知識と技能を持った人が実施して下さい。けが、設備破損のおそれがあります。

運転・操作において、「通常の使用状態で閉鎖することがない」止め弁は必ず専門知識と技能を持った人が確認を実施し
て下さい。けが、設備破損のおそれがあります。

運転中、ベルトや回転体(シャフト等の駆動装置)には絶対に接近又は接触しないで下さい。巻き込まれ、けがのおそれがありま
す。

停止時の点検の場合は、必ず点検作業中であることを他の人に判る様にして、不意の運転のないように行って下さい。ベル
トや回転体(シャフト等の駆動装置)へ巻き込まれ、人身事故のおそれがあります。

点検時に取り外した安全カバー等を外したままで運転しないで下さい。巻き込まれ、けがのおそれがあります。
-1-

通電中及び運転中は、電動機器類及び電気機器類のカバーを開けないで下さい。感電の原因になります。

電源 OFF 時でも配線作業、保守点検以外では器具類のカバーを開けないで下さい。感電の原因になります。

電気配線作業や点検は、必ず専門知識と技能を持った人が実施して下さい。装置破損等や感電の原因になります。

濡れた手でスイッチ操作しないで下さい。感電の原因になります。
≪ 全 般 ≫

据え付け工事完了後、試運転を行ない異常がないことを確認してください。

設計仕様以外で使用しないで下さい。けが、装置破損等のおそれがあります。

お客様による製品の改造は、当社としては責任を負いません。
≪ 運 転 ≫

運転中に異常が発生した場合には、ただちに運転を停止して下さい。けが、装置破損等のおそれがあります。

運転中に異常が発生した場合には、異常の原因を究明し対処を施すまでは運転を再開しないで下さい。

定挌負荷以上での使用をしないで下さい。装置破損等のおそれがあります。

運転中にベルトや回転体(シャフト等の駆動装置)には絶対に接近又は接触しないで下さい。巻き込まれ、けがのおそれがあ
ります。

運転中に安全カバー等を取り外さないで下さい。巻き込まれ、けがのおそれがあります。

運転中に給油栓、パージ栓、継ぎ手類をゆるめ、又は開放しないで下さい。冷媒や油が発散し、けがのおそれがあります。
《 日常点検・保守 》
 機器類の修理、分解、組み立ての作業は必ず専門知識と技能を持った人が実施して下さい。けが、設備破損のおそれがあ
ります。
≪お願い≫
◎ この[安全に関するご注意]は、実際にご使用になるお客様までお届けください。
◎ この[安全に関するご注意]は、お使いになる方がいつでも見られるところに必ず保管してください。
-2-
構 造と取 扱
目
第1編
総
次
論
3-16
アンローダ
1-1
構
造
3-17
オイルフィルタ
1-2
機
種
3-18
吸入ガスストレーナ
1-3
圧縮機使用限界
3-19
安全弁・圧力計・圧力開閉器
1-4
圧縮機仕様
3-20
油落し弁
1-5
圧力と凝縮温度及び蒸発温度
3-21
オイルクーラ
3-22
Vベルト
3-23
カップリング(直結駆動)
3-24
クランクケースヒータ
3-25
モータベアリング(フランジモータ形圧縮機)
3-26
モータロータ(フランジモータ形圧縮機)
3-27
VZ/VZLモータ一体型冷凍機のモー
タロータの分解手順説明
第2編
運
転
2-1
運転準備
2-2
起
2-3
運転中の注意事項及び点検記録事項
2-4
運転停止
2-5
長期運転休止
2-6
圧縮機分解前後の運転
2-7
液バック時の対策
2-8
異常現象とその対策
第3編
動
構 造・分 解・点 検・組 立
3-1
分解点検の前に
3-2
分解点検に際しての注意事項
3-3
定期点検時期
3-4
シリンダカバー
3-5
吸入弁・吐出弁
3-6
ピストン・ピストンリング
3-7
ピストンピン・ピストンピンメタル
3-8
クランクピンメタル・コンロッド
3-9
シリンダライナ
3-10
クランクシャフト
3-11
フロントメタル
3-12
リヤメタル
3-13
メカニカルシール
3-14
オイルポンプ
3-15
油圧調整弁
- 3 -
第1編
総
1-1
構
論
造
本圧縮機はアンモニア冷媒、HFC などのフレオン冷媒を使用する冷凍装置における圧縮機として設計・製作され
たもので、法規に準拠した耐圧・気密試験を行った後、長時間の慣らし運転並びに厳しい規格による性能検査を
行い、これに合格したものを出荷している。
本圧縮機は設計に当り、広くユーザー各位の御意見、御希望を調査し、より大きな能力、より小形で軽く、より
扱いやすくと云う基本方針のもとに設計されている。
以下に本圧縮機の各部概要を説明する。(改良のため仕様を変更することがあります。)
クランクケース・シリンダカバー・その他主要部品
高級強じん鋳鉄を使用し、専用機による精密な加工がなされている。
シリンダライナ
耐摩耗性能の高い特殊なライナ専用鋳鉄製で、良好な仕上加工精度と相まって優れた耐久性能をもってい
る。
ピストン
熱処理をほどこした軽合金製精密鋳造品で、軽くて強く、ライナとの耐摩耗および耐焼付性能が非常に優
れている。
ピストンリング
特殊リング鋳鉄製で、1シリンダに3本装着され、1番上がクロームメッキを施した圧力リング、2番目
が圧力兼オイルコントロールリング、3番目が油かきりングである。これらのリングは慎重にその諸元が
決定されており優秀なオイルコントロール性能を長期にわたって維持し、冷凍機の油消費はきわめてわず
かである。
ピストンピン
高級合金鋼に焼入れ後、超精密仕上げされているため硬度・真円度・面精度共に優れている。
ピストンピンメタル
鋼製裏金に溶着された特殊軸受合金製である。なお二段圧縮機高段側は機能上ニードルベアリング(高圧
力差冷媒には単段及び二段圧縮機高段側に高圧力差用ニードルベアリング)を装着しているが、ピスト
ン・ピストンピンは低段・高段用共に同一品である。
コンロッド
軽合金製精密鍛造品で熱処理され、軽く剛性が高い。軽いピストンと組み合せているのできわめて振動が
少なくまた分解・組立の作業性も非常によい。
クランクシャフト
鍛造直後の熱処理および仕上げ直前の熱処理の後、クランクピン部に対しては当社で開発した特殊な高周
波焼入れを隅部まで深く行い、耐摩耗性に加え耐疲労強度の向上を計っている。
クランクピンメタル
鋼製裏金に軸受合金を連帯鋳造したものを打抜き後、正確に成形し、軸受面を鏡面に精密加工したもので、
荷重負荷能力が大きく精度の高い均一な製品となっている。
メインメタル
剛性の高い鋼製裏金に軸受合金を遠心鋳造後、精密に機械仕上げ加工されている。 フロントメタルはク
ランクシャフト軸端部からはめ込み、ボルトでクランクケースに固定されている。リヤメタルは後部軸受
本体に取り付けられ、クランクケースにボルト締めされている。従ってクランクシャフト・ピストン・コ
ンロッドなどを組んだままでも容易にメインメタルを抜き出し点検が可能である。
オイルポンプ
歯車式で効率の高い設計と精密な仕上げに加え簡素な構造のため高性能で取扱いが簡単であり安定した
運転が維持できる。
オイル潤滑系統
クランクケース下部油溜めからオイルスクリーンを通り濾過された油をオイルポンプに吸入加圧し、オイ
ルクーラを経てオイルフィルタヘ送り、再び濾過しフロントメタルへ直接給油する。これより内部流路を
通ってクランクシャフトにあけられた給油流路から、クランクピンメタル及びコンロッド中央の穴を通っ
てピストンピンメタルを潤滑する。
- 4 -
一方フロントメタル部から別に外部配管を通ってリヤメタルヘ直接給油潤滑し、更にクランクシャフト後
部側のクランクピンメタル及びピストンピンメタルを潤滑する。
油圧調整弁
圧縮機後部にあり操作の容易な構造で所要の油圧を得ることが出来る。
メカニカルシール
柔軟性に富む耐油耐冷媒性合成ゴムベローズを使用し、摺動部は特殊合金製シールリングと、超硬焼入れ
し精密研磨したカバープレートとの組み合せで長時間にわたって確実なシール効果を発揮する。しかも構
造が簡単で取り扱い易い設計になっている。
吸入ガスストレーナ
吸入支管内に収められており、冷媒ガスはここで濾過された後に圧縮機内部へ吸入され.シリンダライナ
周縁の孔を通り吸入弁板を押し上げてシリンダライナ内に吸い込まれ、ピストンで圧縮され、シリンダ頂
部の吐出弁板を押し上げ吐出される。
吸入弁板・吐出弁板
弁板用として特別に真空溶解法で精練されたステンレス鋼を熱処理の上、精密にラッピング仕上げして確
実な作動と耐久カを持たせてある。
安全頭
液状冷媒あるいは多量の油などをシリンダ内に吸い込んだ時にバネに抗して安全頭全体が押し上げられ、
液冷媒などをすみやかに吐出しシリンダ内に異常圧力のかかるのを防ぐためのものである。
外側弁座はシリンダライナ上部にシリンダカバーと共締め固定されており、吐出弁板・内側弁座・弁押え
はボルトで一体に組み立てられ、外側弁座の上にバネを介して押し付けられ安全頭を形成している。
アンローダ
構造が簡単で作動の確実な油圧式である。
圧縮機停止中および、起動直後の油圧が規定値に達するまでは、アンローダの油圧ピストンはバネにより
押し戻されており、これと連動してライナ外周下部より吸入弁板押し上げピンが吸入弁板を押し上げてい
る。従ってシリンダ内に吸入されたガスは再び吸入弁から外に出て、圧縮作用は行われない。このように
して軽負荷起動が行われる。
正常運転中には手動アンローダ操作弁、又は電磁弁を使った自動操作でアンローダピストンにかかる油圧
をクランクケース油溜りに逃すことにより能力制御が行われる。
油圧保護開閉器
油圧(油圧とクランクケース内ガス圧力との差圧)が設定値以下になった時に電流を遮断するスイッチで、
これには約 45 秒(75 秒又は 90 秒のスイッチを使用する場合もある)のタイムラグ(時間遅れ)がつけて
あり、起動後この時間内に油圧が設定値まで上昇しない時および運転中油圧が下りこの時間内に回復しな
い場合に電動機を停止し圧縮機を保護する。
高(低)圧圧力開閉器
吐出ガス圧力が異常高圧になった場合(および吸入ガス圧力が異常低圧になった場合)に電動機を停止し
圧縮機を保護する。
安全弁
圧縮機内のガス圧力が異常に高くなった場合に、ガスを外部(又は低圧部)に噴出し、圧縮機を保護する。
ガスを外部に噴出する場合、アンモニアでは他に害を及ぼさぬように排出管で除害設備に接続する必要が
ある。ガスを低圧部に噴出する場合には、噴出ガスがそのまますぐに圧縮機に吸入され再圧縮を繰り返し、
圧縮機が過熱するおそれがないように圧縮機から離れた位置の低圧部に接続する必要がある。
圧縮機駆動方式
フランジモータ直結式、フレキシブルカップリングを用いた電動機直結式またはⅤベルト駆動である。フ
ランジモータ形は、圧縮機のクランクシャフトに電動機のロータを直接取り付け、電動機のケーシングを
圧縮機のクランクケースにボルトで取り付けて一体形にしたものである。電動機は室内空気によって冷却
されるので半密閉式にくらべ低温用途に適し、コンパクトな省スペース形で取扱容易な圧縮機である。
フランジモータ
特に本圧縮機のために設計・製作されたカゴ形電動機であり、圧縮機に合わせた起動特性を持ち、又省エ
ネルギーを考慮して全負荷時はもちろん、部分負荷時にも効率の高い運転特性を持っている。又電動機本
体をそのままにして、ロータのみ取外せばメカニカルシールのメンテナンスが容易にできるようになって
いる。
- 5 -
1-2
機
種
VZ形、VZL形圧縮機は用途によりそれぞれ次の3種顆に大別される。
●
単段圧縮機
二段圧縮機
●
フランジモータ圧縮機
●
蒸発温度が-30℃以上の比較的高温用途に使用される。
単段圧縮機を基本にして1台で二段圧縮を行なえるようにクランクケース内部で低段側
と高段側とに分離された圧縮機で、-30℃以下の蒸発温度の低い用途に使用される。
前記圧縮機を電動機と一体形とした省スペース、省エネルギーを目的とした
圧縮機で、使用目的に合せた容量の電動機との組合せが出来る。
各機種を区別する呼び方は、例えば次のようになる。
VZ8B
VZ形・単段圧縮機・8気筒・冷媒 R404A 仕様を表わす。
VZ62G
VZ形・二段圧縮機・低段側 6気筒・高段側 2気筒・冷媒 R417A 仕様を表わす。
VZ62AM
VZ62A機でフランジモータ形(電動機一体形)・冷媒 R717 仕様を表わす。
注:B=R404A、G=R417A、A=R717 の各冷媒を示し、M=フランジモータ(電動機一体形)を示す。
なお、これらの3機種の圧縮機主要部品はほとんど共通で互換性がある。
1-3 圧 縮 機 使 用 限 界
VZ形、VZL形圧縮機は下記限界を超えて使用してはならない。
圧縮機回転数
最高 1,250 rpm
SI 単位(国際単位)
最低 600 rpm
最大15(ただし冷媒が R717 の場合には圧縮比が 10 以下、フレオン冷媒の場合には圧縮比が 11
以下が望ましい)
圧縮比
(注) 圧縮比=吐出絶対圧力÷吸入絶対圧力
(注) 単段機と二段機を同じ吸入ラインに接続して、並列運転してはならない。
圧力差
最大 1.6 MPa(二段圧縮機では各段)
吸入圧力
単段圧縮機
最高 0.50 MPa(相当飽和温度 R717≒+10℃, R404A≒± 0℃, R417A≒+ 5℃)
最低 0.05 MPa(相当飽和温度 R717≒-25℃, R404A≒-35℃, R417A≒-30℃)
二段圧縮機
最高 0.10 MPa(相当飽和温度 R717≒-20℃, R404A≒-30℃, R417A≒-20℃)
最低-0.08 MPa(相当飽和温度 R717≒-60℃, R404A≒-70℃, R417A≒-65℃)
フランジモータ形圧縮機
最高 電動機容量によって定まる圧力
最低-0.08 MPa(相当飽和温度 R717≒-60℃ , R404A≒-70℃, R417A≒-65℃)
(注)吸入圧が低い場合には、吐出ガス温度が高くならないように吸入ガスの過熱度を15℃以下
にすること。
1.8 MPa(R717は1.5 MPa)以下が望ましい。
吐出圧力
油
圧
油
温
(注)圧縮比が高く、吸入ガスの過熱度が大きいときは吐出ガスの過熱に注意し、R717≒150℃ ,
フレオン冷媒≒120℃ 以下にすること。
最高 0.8 MPa (油圧計の指示値)
最低 0.2 MPa (油圧計の指示値と吸入圧力指示値の差)
最高
+55℃
最低
+15℃ 以上が望ましい。
(注)寒冷地・低温下で起動するときはハンドターニング後とし、油圧に注意すること。
注記 1
使用限界付近で選定される場合は、運転条件により使用を制限する場合がありますので弊社までお問い合わせ下さい。
2 各圧力はゲージ圧力を表示しております。
3
改良のため使用条件を変更することがあります。
- 6 -
1-4
圧 縮 機 仕 様
単段圧縮機
機
種
VZL4
VZ6
VZ8
VZL8
気筒径 x 行程
(mm)x(mm)
132 x 132
132 x 106
132 x 106
132 x 132
気筒数
4
6
8
8
容量調節
(気筒数)
4→2
6→4
8→6→4(→2)
8→6→4(→2)
標準回転数
(rpm)
1200
1200
1200
1200
冷媒接続管
吸入
吐出
80 A
65 A
100 A
65 A
100 A
80 A
100 A
80 A
概略重量
(KG)
940
1200
1300
1310
容量調節
(気筒数)
3→1
1
4→2
2
6→4→2(→0)
2
6→4→2(→0)
2
標準回転数
(rpm)
冷媒接続管
吸入
吐出
80 A
50 A
50 A
40 A
80 A
50 A
50 A
40 A
100 A
65 A
65 A
50 A
100 A
65 A
65 A
50 A
概略重量
(KG)
二段圧縮機
機
種
VZL31
VZ42
VZ62
VZL62
区分
低段側
高段側
低段側
高段側
低段側
高段側
低段側
高段側
気筒径 x 行程
(mm)x(mm)
132 x 132
132 x 106
132 x 106
132 x 132
● 容量調節の気筒の内(
気筒数
3
1
4
2
6
2
6
2
1200
1200
1200
1200
950
1210
1310
1320
)のものは特別注文による。ただし、VZ62RM 機では起動用として標準装備。
● 重量は、台床・フライホイル(カップリング)・電動機 及びフランジモータの重量を含まない圧縮機重量を示す。
フランジモータ(電動機一体形)AM・BM・GM
形
式
6 極
防滴カゴ型
定格出力
(KW)
45,60
75,90
110, 130
140, 160
回転数(rpm)
50 Hz
60 Hz
1180
980
1170
電圧(Volt)
50 Hz
60 Hz
200/400
220/440
400
440
絶縁
F種
(改良のため仕様を変更することがあります。)
-7-
1-5
圧力と凝縮温度及び蒸発温度
冷媒の圧力と凝縮温度及び蒸発温度は常に対応するもので、冷凍装置を適正運転するためには常にこの関係を把
握しておく必要がある。即ち運転中に高圧が凝縮温度に対応する圧力(飽和圧力)より著しく高い場合、圧縮機
能力低下及び故障の原因となる。
同様に圧縮機吸入ガス温度が吸入圧力に対応する温度(蒸発温度)より 10~20℃〈過熱度)高いのが適当な運
転状態であるが、吸入ガス温度と吸入圧力に対応する温度(蒸発温度)との温度差(過熱度)が少なくなると液
バックを起し易くなり、又温度差(過熱度)が大きすぎると、冷凍能力低下のみならず吐出ガス温度上昇による
圧縮機故障の原因となる。
よって冷凍装置運転中は常に圧力と温度に注意し、異常圧力、異常温度が生じたならば直ちに(2-8項〉を参照
のうえ原因追求及び処置をされたい。
凝縮温度
及び
蒸発温度
-70℃
-60
-50
-40
-35
-30
-25
-20
-15
-10
-5
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
R 717 (NH3)
ゲージ圧力
絶対圧力
67.79 cmHg
0.01 MPa
59.6
0.02
45.4
0.04
22.2
0.07
6.17
0.09
0.02 MPa
0.12
0.05
0.15
0.09
0.19
0.13
0.24
0.19
0.29
0.25
0.36
0.33
0.43
0.41
0.52
0.51
0.61
0.63
0.73
0.76
0.86
0.90
1.00
1.07
1.17
1.25
1.35
1.45
1.55
1.68
1.78
飽 和 圧 力
R 404A (HFC404A)
ゲージ圧力
絶対圧力
55.3 cmHg
0.03 MPa
38.8
0.05
13.1
0.08
0.03 MPa
0.13
0.07
0.17
0.11
0.21
0.15
0.25
0.20
0.31
0.27
0.37
0.34
0.44
0.42
0.52
0.51
0.61
0.61
0.71
0.72
0.82
0.85
0.95
0.99
1.09
1.15
1.25
1.32
1.42
1.51
1.62
1.72
1.83
1.95
2.05
●
- 8 -
R417A
ゲージ圧力
絶対圧力
61.8 cmHg
0.02 MPa
49.9
0.03
30.8
0.06
2.13
0.09
0.02 MPa
0.12
0.05
0.15
0.09
0.19
0.13
0.23
0.18
0.28
0.23
0.33
0.29
0.39
0.37
0.47
0.45
0.55
0.54
0.64
0.64
0.74
0.76
0.86
0.89
0.99
1.03
1.13
1.18
1.28
1.35
1.45
1.54
1.64
ゲージ圧力は圧力計の指示値を示す
第2編
運
転
圧縮機を効率よく運転し、予期せぬトラブルを防止するためには冷凍装置全般の作動原理・各部の構造を充分理
解した上で、適切な運転操作を行うことが非常に大切である。ここではごく基本的な手動運転冷凍装置の圧縮機
運転操作について説明を行うが、その他の全自動運転冷凍装置の圧縮機運転操作については装置各部の構造・作
動原理の違いを充分に理解の上、参考とされたい。各説明に入る前に運転に関する次の重要事項は必ず守ってい
ただきたい。
1 ターニング
2 給 油
3
空気運転
4
Vベルト
5
ゴ
6
油落し弁
ミ
据付後初運転及び長時間停止後の起動前には圧縮機を数回手回しすること。
油の入っていない圧縮機を起動してクランクケースを真空にして給油してはならない。
初期給油はサイドカバーの給油口より行うこと。
圧縮機の分解・組立時に圧縮機内部の空気パージのため数秒間のエアパージ運転を行う
以外に空気運転を行ってはならない。
装置の気密試験等のために本機を使用して空気運転を行ってはならない。
シリンタカバーをはずした状態で、圧縮機のならし運転を行ってはならない。
Vベルトはスリップしない程度でゆるく張ること。張り過ぎてはならない。初期には伸
びることがあるが、こまめに調整すること。
据付直後の運転時には配管中の細かいゴミを吸い込まないように必ず吸入ストレーナ
にフェルトなどを巻くこと。フレオン冷凍装置ではフレオンが溶剤としての性質を持っ
ているため装置内の微細なスケールを圧縮機まで運び吸引することが多く、そのため圧
縮機各部の摩耗や損傷が起り得るので、特に吸入ストレーナにフェルトなどを巻きスケ
ールの除去につとめると共に、油の汚れにも注意して度々新油と交換することが必要で
ある。フェルトなどは汚れが無くなるまで巻き、その後取外すこと。
二段圧縮機の高段側の手動油落し弁は1日に1回から1週間に1回程、運転中に数秒間
開いて油を落す以外は完全に締め切っておくこと。
2-1 運 転 準 備
(1) 凝縮器・圧縮機に冷却水を通水し充分水量があることを確かめる。
(2) 圧縮機の油面計に半分位の高さまで油があることを確かめる。
(3) 圧縮機を数回手回しして軽く回るか確かめる。
(4) 各部配管などを点検する。
フランジモータ形圧縮機の場合は、高段吐出配管に逆止弁が設置されていること。高段吐出・低段吸入
配管の間にバイパス配管(25A以上)が設置されていること。
(5) 電気系統を点検する。
(6) 次のバルブを全開する。
○圧縮機吐出止弁(二段圧縮機では低段・高段とも)
○フランジモータ形では吐出バイパス止弁
○二段圧縮機高段吸入止弁
○中間冷却器入口・出口弁(フレオン冷凍装置でガス冷却器と液冷却器に分かれているときはガス冷却
器入口・出口弁)
○蒸発器と吸入止弁の間の弁〈特にフランジモータ形のとき)
○安全弁元弁
○圧力計元弁(微開)
○凝縮器の入口・出口弁
○受液器の入口・出口弁
○凝縮器と受液器の間の均圧弁
(7) 次のバルブを完全に閉じておく。
○圧縮機吸入止弁(二段圧縮機では低段吸入止弁)
○液冷却器の入口・出口弁(他の圧縮機が並列運転されているときは全開しておく)
○油分離器から圧縮機への返油止弁
(8) 特にフランジモータ形ではクランクケース内圧力が O.5MPa 以下であることを低圧計または油圧計によ
り確認する。
2-2
起
動
前項の各々について確認した後に初めて圧縮機を起動する。
- 9 -
(1) 電動機のスイッチを入れ圧縮機を起動する。
(2) 液冷媒や油が一時に戻って来ないか、圧縮機の音響に注意しながら吸入止弁を徐々に開く。
(3) 油圧を点検し必要により油圧調整弁で油圧を加減する。油圧保護開閉器が作動する場合には運転を中止
し原因を追求すること。リセットボタンによる無造作な再起動を繰返さないこと。
(4) 各バルブを順次正常運転の状態にする。
(5) 電圧・電流を確かめる。
(6) 低圧が正常運転時の値以下に下ってから膨張弁を加減する。
(7) 吸入圧力・中間圧力・吐出圧力・油圧をチェックする。
(8) 異常音響・異常振動の有無を点検する。
(9) 運転開始後少なくとも5分間は油面計をチェックする。
○ フランジモータ形圧縮機の起動もかわりないが、低圧圧力の条件によっては次のようにする。
一般にはスターデルタスイッチが使用されるので、この場合の起動について述べる。
(1) 圧縮機をフルアンロードにしておく。(低段側気筒を全てアンロードする)
(2) 電動機のスイッチを入れスターの状態で圧縮機を起動する。
(3) 電流計の指示が定格電流値の2分の1以下になるまでこの状態を保ち回転数が上昇するのを待つ。
この時間は停止中の蒸発器の圧力即ち圧縮機内圧力が 0.5MPa 程度であれば約30秒、0MPa 程度であれ
ば約8秒で蒸発器の圧力が低い程短かい。
(4) 電流が前記電流値まで下ったら直ちにスターからデルタの状態にスイッチを切りかえると共に吐出バイ
パス弁を全閉する。
(5) 同時に収入止弁を徐々に開く。このとき液冷媒や油が一時に戻って来ないか、圧縮機及び電動機の音響
に良く注意する。 又電動機がオーバーロードしないよう注意する。
(6) アンロードから順次フルロードに切りかえる。
(7) 油圧を点検し必要により油圧調整弁で油圧を加減する。
油圧保護開閉器が作動する場合には運転を中止し原因を追求すること。リセットボタンによる無造作な再
起動を繰返さないこと。
(8) オイルクーラ及びガスクーラヘの膨張弁を加減し冷却する。
(9) 液クーラ入口・出口弁を開き膨張弁を加減する。
(10) 電圧・電流を確かめる。
(11) 低圧が正常運転時の値以下に下ってから膨張弁を加減する。
(12) 吸入圧力、中間圧力、吐出圧力、油圧をチェックする。
(13) 異常音響、異常振動の有無を点検する。
(14) 運転が安定してから油分離器からの返油弁を開く。
(15) 運転開始後少なくても 5分間は油面計をチェックする。
2-3
運転中の注意事項及び点検記録事項
圧縮機を運転中には下記の各項に注意し、主要事項については常に記録を取っておくと最も効率よく且つ事故の
無いように運転でき、又異常を早期に発見することができる。
(1) 運転時間
各圧縮機毎に起動停止時刻を記録する。
(2) 吸入圧力と吐出圧力
吸入圧力と吐出圧力(及び中間圧力)は装置ならびに圧縮機の作動の目安で、後述の各種の原因による異
常を発見できるので特に注意する。
(3) 油圧
油圧は次表の値を基準にとる。従って油圧保護開閉器は 0.15MPa 以上にセットする。
単段圧縮機、二段圧縮機
油圧=(低圧)+ 0.2~0.25 MPa
(4) 油温
油温は 55℃を超えないように注意する。
(5) 吐出温度と吸入温度
吐出温度が異常に高くないこと。
- 10 -
吸入温度は一般に過熱度が 10~20℃が適当である。
(6) 油量及び油の汚れ
油量は油面計の半分程度の位置が適当である。油面が油面計の1/3以下の位置になったら油を規定の位
置まで補給する。
油面が高過ぎると油消費量が増えるので入れすぎないように注意する。
油の補給量、抜取量は圧縮機の油消費量を知るために必要なので日時と量を正確に記録する。油消費量は
液バック時又はピストンリング、吸入弁板、吐出弁板等の異常時に増加するので、圧縮機の状況を知る目
安となる。
(7) 電動機電圧・電流
動力がオーバーロードするときは、アンロード運転するとよい。
(8) 冷却水温度、機械室温度、外気湿球温度
(9) 異常音響、異常振動の有無
何れの部分にしろ異常音響、異常振動が発生したら直ちに運転を中止し、原因を追求すべきである。
(10) ガス漏れ、油漏れの有無
2-4
運転停止
(1) 蒸発器内の冷媒をある程度吸引しておく(膨張弁を閉じてしばらく運転する。極端に真空にしてはなら
ない)。
(2) 圧縮機吸入止弁を閉じる。
(3) 電動機のスイッチを切って圧縮機を停止する。
(4) 回転が停止すれば吐出止弁を閉じる。
(5) 冷却水を止める。
2-5
長期運転休止
圧縮機を長期運転休止させる場合は配管及び機器の冷媒を受液器に集めておく。これには受液器液出口弁を閉じ
凝縮器に冷却水を通して圧縮機を運転する。受液器液面に注意し、過充填のおそれのある時はボンベに抜き取る。
吸入圧力が 0.05MPa 以下になれば圧縮機を停止し、吸入止弁、吐出止弁を閉じておく。各部とも 0.05MPa 以下
にすると空気侵入のおそれがあるので行ってはならない。その後全系統について冷媒漏洩の有無をチェックする。
冷却水ポンプを停止し、凝縮器および圧縮機内の水を完全に排水しておく(寒冷地では確実に実行すること)。
2-6
圧縮機分解前後の運転
1.圧縮機の分解前の圧縮機内冷媒ガス抜きは次のように行う。
(1) 吐出止弁を開く
〈二段圧縮機は低段・高段とも)。
(2) 吸入止弁を閉じる(二段圧縮機は低段・高段とも)。
(3) 圧縮機を 10~20秒運転する。
(4) 圧縮機停止後吐出止弁〈二段圧縮機は低段・高段とも)を閉じる。
(5) パージ弁(二段圧縮機は低段・高段とも)を徐々に開く。
(6) クランクケースにあるプラグなどをはずしエアサクションを行う。
以上の操作の後、圧縮機を分解するが圧縮機の分解の際は必ずパージ弁を完全に開いておき、圧縮機内に
ガス圧力が無いのを確認した後に行うこと。
2.圧縮機分解組立後の圧縮機内空気抜きは次の要領で行う。
(1) 吸入弁、吐出弁は全て完全に閉めきる。
(2) 圧縮機の各プラグ、ドレン弁、オイルチャージ弁は完全に閉めきる。
(3) パージ弁(二段圧縮機は低段・高段とも)は完全に開き、ここに真空ポンプを接続し圧縮機内部の真空
引きを行う。
(4) 真空引き完了後パージ弁(二段圧縮機は低段・高段とも)を完全に閉めきる。真空ポンプをはずす。
(5) 圧縮機の油圧計などにより漏れ個所がないことを確認する。数分後もその指示が -0.08MPa 以下ならば空
気抜きは完了している。もし油圧計などの指示が急激に上昇するようならば各プラグ、各弁が完全に閉まって
いないことなどが考えられるので点検すること。
(圧縮機分解組立後、圧縮機内ガス抜きや空気抜きのために圧縮機を運転することは絶対に行わないこと。又、
何度も発停を繰返し運転すると圧縮機が潤滑不良になりやすいので絶対に避けること。何度、圧縮機で運転を繰
- 11 -
り返しても吐出部分の真空は得られない構造である。)
2-7
液バック時の対策
液バックとは冷媒が完全に蒸発しないで液の状態で圧縮機に吸入されることで、膨張弁の開き過ぎや、負荷の急
激な変動により起る。その結果、圧縮機では潤滑不良による焼付、液ハンマによる部品の破損などの事故を起す
ので、迅速かつ適切な処置が必要である。又液バック時に圧縮機の冷却水の通水を止めると氷結によりクランク
ケースを破損する場合があるので通水は続けること。(場合によってはクランクケース内の冷却水を全て抜き取
り、氷結を防止する必要もある。)
● 液バック時には圧縮機に次の徴候があらわれる。
(1) 吸入支管に設けられた温度計が吸入圧力に対応する飽和温度に近くなる。(2-9項を参照のこと)
(2) クランクケース吸入部又は側面下部等に霜が付く場合がある。
(3) 安全頭が作動して金属音が発生する場合がある。(液ハンマ音)
(4) 潤滑油中に冷媒が溶け込んで、油面計より見ると油が発泡し油圧が低下し油圧の確保が困難になる場合
がある。
● 液バックが軽い場合の処置
前述のような徴候のなかで霜付きが少なく、軽い金属音が間欠的に発生し、油圧が充分確保し得る状態であるな
ら、液バック量は少く比較的軽い症状なので次の如く処置するとよい。
(1) 吸入止弁を絞って液を蒸発させガス化した状態で圧縮機に吸入する。(クランクケースに霜の付かない
状態にする〉
(2) 膨張弁を閉止する。
(3) 油圧を充分確保しながら運転を続け、吸入止弁を満開にしてもクランクケースに霜が付かなくなり、吸
入支管の温度計が 10℃程度の過熱状態(2-9項を参照のこと)を示すようならば膨張弁を徐々に開き、
正常運転に戻す。
● 液バックが激しい場合の処置
クランクケースの霜付きがひどく、安全頭の作動する大きな金属音〈液ハンマ音〉が連続的に発生し、或は油圧
の充分な確保が不可能になった場合には、この状態で運転を続行すると圧縮機の破損等をおこし非常に危険なの
で、直ちに圧縮機を停止し、次の処置を行うこと。
(1) 圧縮機を停止する。
(2) 圧縮機吸入止弁及び膨張弁を閉める。
(3) 圧縮機吐出止弁を閉める。
(4) オイルドレーン弁をゆっくり開き潤滑油を全て廃棄する。
(5) 液バックの原因を調べ機器に原因があれば処置する。
(6) 新しい潤滑油を給油し、圧縮機内の空気抜きを行う。
(7) 吐出止弁を開き、吸入止弁を閉じたまま、圧縮機を起動する.
(8) 吸入止弁(二段圧縮機高段吸入止弁は開く)をわずかに開きクランクケースに霜の付かない状態で油圧
を充分に確保して運転を続ける。
(9) 吸入止弁を満開にしてもクランクケースに霜が付かず、吸入支管の温度計が 10℃位の過熱〈2-9項を参
照)を示すようならば膨張弁を徐々に加減して正常運転に戻す。
液バックが激しい場合には、以上の処置を施し、正常運転に戻るまで数時間もかかる場合があるが根気よく慎重
に手順通りに完全復旧に努力すること。
● 二段圧縮機高段側に液バックした場合の処置
通常二段圧縮機の高段側に液バックする事は殆どないが、中間冷却器の調整不良、機器の故障等で液バックする
場合がある。この場合には次の様に処置をする。
(1) 膨脹弁を全て閉止する。
(2) 中庄が 0.7MPaを超えない様に注意しながら高段吸入止弁を絞る。
(3) 同時に低段側気筒のアンローダ操作弁(又は電磁弁)を全て開放し、アンロード状態とし、油圧が充分
確保されるように注意しながら低段側吸入止弁も絞る。
(4) 中圧( 0.7MPaを超えないこと)と油圧に注意しながら、高段吸入止弁を絞って運転を続ける。
(5) 高段吸入止弁を満開にしても液バックが無く、吸入支管の温度計が 10℃程度の過熱状態(2-9 項を参照)
- 12 -
を示すようならば圧縮機を停止し、液バックの原因を調べ処置する。その後に正常運転に戻す。
クランクケースに霜付きが多い場合、液ハンマ音が大きい場合には直ちに圧縮機を停止し高段側吸入ガス室に溜
った液冷媒を抜き取った後に上述の処置を行うこと。 フレオン冷凍装置では、中間冷却器内の冷媒量が少なく、
高段吸入止弁が設置されてない場合が多い。この場合低段側に液バックが無いならば、高段吸入はそのまま継続
してよい。
2-8
異常現象とその対策
運転中冷凍機特有の異常現象並びに事故につき、その対策処置を列記する
異常現象並びに症状
起
動
不
良
原
因
策
処
油圧保護開閉器、高圧圧力開閉器が作動したまま、 リセットをする
リセット(復帰)をしていない
点検取り替え
ヒューズが溶断している
マグネットスイッチの接点不良
点検取り替え
過電流保護スイッチが作動のまま放置されている 点検及び、復帰
電線切断又は結線不良、間違い
点検修理又は取り替え
マグネットスイッチボタン
を押すと通電するが離すと
切れる
電動機がうなり起動しない
補助接点の不良
点検修理又は取り替え
結線間違い(自動制御関係)
点検修理
ベルトの張りすぎ
電動機、スイッチ、結線等の電気系統の故障
電圧降下
クランクケース内の圧力が高い
シリンダライナ、ピストン、メタル等の不良、
焼付き
油圧保護開閉器が作動する
調整
点検修理
起動後 45 秒位で停止する
起動後間もなく停止する
低圧が下らず高圧が上らない
油圧が上らない
高圧が高すぎる
低圧が低すぎる
置
クランクケース内圧力を下げる
分解点検修理
作動圧・電気系統・油圧配管点検
(「油圧が上らない」の項を参照)
高(低)圧圧力開閉器が作動する
高圧側
吐出止弁の開き忘れ
低圧側
高圧が高すぎる
低圧が低くすぎる
膨張弁の開きすぎ
吐出止弁を全開する
(異常圧力の項を参照)
(異常圧力の項を参照)
調整
安全弁の漏洩
(安全弁排気管を吸入管に接続している場合)
アンローダの作動不良
油落し弁が開いたまま運転している
〈二段圧縮機)
吸入弁板、吐出弁板の破損
ピストンリング、シリンダライナ等の異常
圧
力
の
異
常
対
マグネットスイッチボタン
を押しても電動機に反応が
ない
点検修理
点検修理
確認閉止
点検取り替え
点検取り替え
凝縮器の冷却水量又は風量が不足している
水量又は風量を増す
凝縮器冷却管が水垢で汚れている
点検清掃
凝縮器内に空気が溜っている
空気抜き
冷媒の過充填
冷媒を抜く
膨張弁の閉めすぎ
調整
膨張弁、ドライヤ、フィルタがつまっている
点検清掃
電磁弁〈送液管用)作動不良
点検修理
蒸発圧力(温度)調整弁の調整作動不良
調整又は修理
冷媒不足
冷媒を充填
冷却器の風量、水量の不足
送風機、ポンプ、攪拌器点検除霜
冷却管に霜又は氷が付きすぎている
デフロストを行う
冷却管内に油が溜っている
油を抜く
- 13 -
異常現象並びに症状
吐出温度が高い
クランクケースの温度が高い
温
度
の
異
常 油温が高い
(60℃を超える)
対
策
処
置
水量を増す(清掃)
( 高圧が高すぎる)の項を参照
膨張弁調整
清掃
吐出弁組立及びシリンダライナのすり合せ部から 点検清掃又は取り替え
のガスの漏洩
吐出弁板の損傷
点検取り替え
ピストンリング又はシリンダライナの異常
点検取り替え
調整(2-3 項を参照)
点検取り替え
水冷式オイルクーラ
オイルクーラの冷却水不足
オイルクーラに水垢が多量に付いている
水量を増す
清掃
冷媒式オイルクーラ
オイルクーラヘの冷媒供給量不足
オイルクーラ冷媒側に油がたまっている
膨張弁調整、フィルタ清掃
昇温して油を抜く
油圧が上らない
クランクケース内の油に冷媒が多量溶け込み発泡 潤滑油の取り替え
クランクケースヒータに通電していない
油圧計がくるっている
油圧計が 0.1~0.2MPa 位上下
する
油
消
費
量
因
油圧が高すぎる
各部メタル損傷
油
圧
が
上
ら
な
い
異
常
音
原
冷却水が不足している(管路がつまっている)
高圧が高すぎる
吸入ガス温度が高すぎる(過熱運転)
水ジャケットに水垢が多量に付いている
クランクケースヒータに通電
点検取り替え
油温が高すぎる
(油温が高い)の項を参照
低圧が低すぎる(或は吸入止弁の開き忘れ)
オイルストレーナの目づまり
〈低圧が低すぎる)の項を参照
分解清掃
吸入ストレーナの目づまり
分解清掃
圧縮機各部のメタルの摩耗
分解取り替え
オイルポンプの損傷
オイルポンプリリ-フバルブのゴミ噛み
オイルストレーナの目づまり
分解取り替え
分解清掃
分解清掃
安全頭を持ち上げるための異 油の上がり過ぎで金属音を立てる
(オイルハンマ)
常音
(分解するとピストン上面に多量の油がある〉
安全頭バネのへたり
弁板の破損片、異物がピストン上面にある
液ハンマ音
液冷媒が多量に圧縮機に吸入されている
過熱度が無くなる
クランクケースに霜付き (液バック)
膨張弁の開きすぎ
油が発泡し油圧が低下
蒸発器における熱負荷の急変
冷媒の過充填
液分離器の作用不充分又は液戻し装置の作動不良
クランクケース内の異常音
送液フロート弁の故障
伝導装置よりの異常音
メタル、ピストンリング、オイルポンプの異常
ベルトの張力不足によるスリップ音
直結カップリングの取り付け不良、ゆるみ
油消費量が多い
クランクケース内の油が泡立つ
油分離器からの返油不良又はガスの逆流
ピストンリング、、シリンダライナ等の摩耗損傷
吐出弁板の損傷(急に油上りが多くなった時〉
(二段圧縮機の場合〉
油落し弁が開いたまま運転している
シリンダライナ下部のOリングが損傷している
- 14 -
(油消費量)の項を参照
取り替え(3-5 項を参照)
分解点検
(2-7 項を参照〉
膨張弁の調整
膨張弁の調整
冷媒の抜き取り
点検修理
点検修理
点検修理
調整
調整(3-23 項を参照)
油温又はケース内圧力を上げる
点検修理
点検取り替え
点検取り替え
点検閉止
点検取り替え
第3編
構 造・分 解・点 検・組 立
圧縮機を運転する人がぜひ心得ておかねばならない主要部品の構造及び分解点検調整につき説明する。
3-1
分解点検の前に
圧縮機の吸入・吐出ガス圧力及び温度、潤滑油の圧力及び温度、油消費量、油の汚れ、各部の音などは、日常運
転中にも注意が必要であるが、定期分解点検の前には特に入念にこれらを調ペ、不都合の有無を推定又は確認し
て効果的な分解点検を行う必要がある。
3-2
分解点検に際しての注意事項
(1) 分解点検前には必ず圧縮機パージ弁(二段圧縮機では低段・高段とも)が開いていて、圧縮機内に圧力の
ないことを確認すること。
(2) 分解前に圧縮機表面のゴミ、油、水分等を拭き取り圧縮機内に入らないよう心掛けること。
(3) 使用する道具類は清浄であること。
(4) 分解した部品は清浄な場所に整理して置くこと。
(5) 部品の洗浄には上質の洗い油を使用すること。
(6) 部品に水分が付着することは絶対に避けること。
(7) 組立の際には清浄な冷凍機油を塗布して組み込むこと。
3-3
定期点検時期
圧縮機の運転状況により定期点検時期は異なるが、一般的な目安を下表に示す。
点
検
項
目
運転状態
点
検
内
容
(2-3 運転中の注意事項及び記録点検事項)を参照
運転状態の変化に注意する
点 検 時 期
毎日・毎月・毎年
潤滑油
油を少量抜き取り、変色が甚しければ交換する
毎月・毎年
オイルスクリ-ン、オイルフィルタ、
吸入ガスストレーナ
金属粉の附着があればメタル・ピストン等の点検及び
クランクケース内の洗浄、油の交換を行う
毎月・毎年
カップリング
ゴムの損傷を調べる
ボルトのゆるみを調べる
ベルト
ベルトの損傷を調べる
油圧保護開閉器
設定値及び作動チェック
毎月・毎年
高(低)圧圧力開閉器
設定値及び作動チェック
毎月・毎年
毎月・毎年
(3-23)項参照
毎月・毎年
温度計、圧力計
指示誤差のチェック
毎月・毎年
安全弁
作動圧力のチェック
毎年
定期オーバーホール
・吸入弁・吐出弁
・ピストン、ピストンリング
5,000 時間毎又は毎年
弁板、弁シートのキズ、摩耗のチェック。安全頭バネの (定期分解毎)
高さチェック。弁バネの交換
摩粍、肌荒れ、キズ、カ-ボン付着のチェック
〈定期分解毎)
・ピストンピン、ピストンピンメタル
組立状態でのガタ及び作動チェック
(定期分解毎)
・クランクピンメタル
・シリンダライナ
・クランクシャフト
(ピストンを抜いてニードルベアリングの圧痕、磨耗、
キズをチュック)
摩耗、肌荒れ、キズのチェック
摩耗、肌荒れ、キズのチェック
クランクピン部の摩托、肌荒れのチェック
R717 : 20000 時間毎
フレオン : 10000 時間毎
(定期分解毎)
(定期分解毎)
〈定期分解毎)
・フロントメタル
(ジャーナル部を分解してチェック〉
(15,000 時間毎)
摩粍、肌荒れ、キズのチェック
〈15,000 時間毎)
・リヤメタル
摩耗、肌荒れ、キズのチェック
〈15,000 時間毎)
・メカニカルシ-ル
摩耗、肌荒れ、キズのチェック
(15,000 時間毎〉
・オイルポンプ
摩耗、肌荒れ、キズのチェック
〈15,000 時間毎)
・オイルクーラ
清掃
(定期分解毎)
・モータベアリング(フランジモータ形圧縮機)
新品と交換
(15,000 時間毎)
- 15 -
3-4
シリンダカバー
分解、組み立ては次のように行う。
a
シリンダカバーに冷却水配管がされているものはこれを取りはずす。
注 1. 合マークを付けておく。
b
シリンダカバーにアンローダ用油圧配管がされているものはこれの継手を
はずす。
c
シリンダカバ-の締め付けボルト(M16)を全数ゆるめる。
d
ゆるめたボルトの内、適当な 2 本をガイドボルト(附属工具)と抜き替え
図 1
る。
e
ボルトを全数抜き取り、カバーをはずす。
注 1. パッキンが固着している場合は薄刃物ではがす。
注 2. シリンダカバーは、内部の安全頭バネのカで押し上げられて来るが、
ボルトの長さが充分あるのではねるようなことはない。
注 3. 異物および冷却水がシリンダ内に落ちないように注意する。
f
組み立ては上の逆順に行い、ボルトは中央部から順次対角状に数度にわけ
て均等に締め付ける。( 図 1 )
締め付けトルク
245 ~ 265 N・m
注 1. パッキン表裏に冷凍機油を塗布する。
3-5
吸入弁、吐出弁
シリンダカバーをはずすと吐出弁組立品、吸入弁板は持ち上げるだけで簡単に
取り出せる。すなわち、
a
外側弁座①は、シリンダカバーでクランクケースに共締めされており、こ
れに内側弁座、弁押え②、吐出弁板などが一体に組み立てられてはめ込ま
図 2
れ, 安全頭バネ③で押えられて安全頭が構成されている。( 図 2 )
b
安全頭は、液圧縮或いは油圧縮時に押し上げられてシリンダ内に異常圧力
の発生するのを防ぎ、圧縮機各部を保護するためのものである。
c
安全頭バネは各気筒に 3 本づつあり、点検では取りはずして自由高さを測
定する。 ( 図 3 )
安全頭バネ
自由有さ基準値
使 用 限 度
56.0 mm
53.5 mm
図 3
d
安全頭バネの装着は、支持ボルト座金の下にバネをはさみ込んで行う。
e
吐出弁板は吐出弁組立品(安全頭)中央の支持ボルトのナットをゆるめる
と取り出せる。( 図 4 )
注1. 支持ボルトと弁押えの回り止め平行ピン(Φ5×12)をなくさない
こと。
f
吸入弁板は吐出弁組立品を取り出すと、シリンダライナ上部に装着されて
平行ピン
いる。
g
吸入および吐出弁板は入念に点検し、キズ、割れなどがわずかでもある場
合は交換する。又摩耗によるミゾ探さが 0.2 mm 以上の場合は交換する。
裏面使用をしてはならない。
h
吸入弁、吐出弁のシートを点検し、キズ、カエリ、摩耗のあるものは修正
または交換する。
i
吸入弁バネおよび吐出弁バネはそれぞれ吐出弁外側弁座下面および弁押え
下面に装着されている。弁バネは変形、損傷、脱落がないか良く点検し自
由高さが使用限度以下の場合は交換する。( 図 5 )および下表。
なお、定期分解時には全数入れ替えるようにする。
図 4
- 16 -
吸入、吐出弁バネ
吸入弁バネ
吐出弁バネ
自由高さ基準値
14.0 mm
13.5 mm
L
使用限度
13.0 mm
12.5 mm
A バネ外径
9.4 mm
8.9 mm
B バネ座巻外径
12.2 mm
10.0 mm
d バネ線径
0.9 mm
0.9 mm
使用本数
6
8
・各バネは座巻き 1 巻きが大きくなっている方を穴底側
に装着する.
・吐出弁バネ穴にはバネ座ガネが装着さているのでバネ
交換時に脱落させないよう注意のこと。
j
支持ボルトナットは、特殊なオス、メス 1 組のゆるみ止めダブルナットで
ある。座金をはめ、オスナットをしっかりと規定のトルクで締め付けてか
らメスナットを締め付ける。
支持ボルトナット
締め付けトルク
k
オスナット
110~120 N・m
図 5
メスナット
80~90 N・m
クランクケースとシリンダライナおよび吐出弁組立品の各接触部は、スリ
合わせされて金属接触で気密を保つため圧縮機組み立て時には特に注意し
ゴミ、カーボンその他の異物の附着、はさみ込みがないようにすること。
l
図 4 に示す如く各部品はクランクケースに単にはめ込まれているだけで、
最後に安全頭バネを介してシリンダカバ-で締め付けられているためシリ
ンダカバーをはずした状態で圧縮機を開放運転してはならない。
m
使用冷媒( R717、フレオン )の違いによって吸入弁リフト、バネ強さな
どが異なる。弁バネの本数が同じで区別が付きにくいため、外側弁座上部
の加工形状を変えている。新品部品と入れ変える時には確認すること。
( 図6 )
n
図 6
外側弁座、内側弁座、弁押え、シリンダライナなどにはそれぞれ合マーク
が打ってあるので組み立て時にはよく確認して他と混同しないこと。
合マークはいずれの機種もクランクシャフトの前(フライホイル側)から
後ろへ向かって装着されるコンロッドの順に A、B、C~と打ってある。
3-6
a
ピストン、ピストンリング
コンロッド大端部を分解しピストン頂部中央にアイボルト(附属工具)を
ねじ込み、静かに引き抜く。
注1. クランクシャフトを回して(フランジモータ形ではモータエンドカ
バー中央部のプラグを抜き、エンド軸に六角穴付ボルト(附属工具)
をねじ込みモータTレンチ(附属工具)で回す)、ピストンが下っ
図 7
た位置にしておく。
このとき、ピストンの組み込まれた気筒では、ピストンの上昇に伴
ってシリンタライナが抜け出して来るので注意すること。
注 2. サイドカバー側から片手でコンロット大端部を保持する。
b
ピストン各部のカ-ボンの附着、ピストンおよびシリンダライナのキズ、
摩耗の有無を点検する。
c
ピストンとシリンダライナのスキマは、ピストンのスラスト方向(ピスト
ンピンと直角方向)の第 1 リングランド、スカート部についてすきまゲー
ジで測定する。( 図 7 )および下表
ピストン
スキマ基準値
使用限度
第 1 ランド
0.22~0.28 mm
0.6 mm
スカート
0.17~0.23 mm
0.6 mm
注1. スキマが使用限度以下であってもキズ、肌荒れのあるものは、状態
によって交換または修正する。
d
図 8
ピストンリングは 3 本構成で、上から圧力リング(クロームメッキ)次に
- 17 -
圧力兼オイルコントロール用リング(アンダーカット)、最後に油カキリ
ング(クロームメッキ)の順である。( 図 8 )
e
ピストンリングの合口スキマは、シリンダライナにリングをはめ込みすき
まゲ-ジで測定する。( 図 9 )
ピストンリング
合口スキマ基準値
使用限度
0.3~0.5 mm
1.6 mm
注 1. スキマが使用限度以下であっても摺動面の荒れたものは交換する。
f
ピストンリングは合口附近にあるメーカ名の刻印を上にして、合口がスラ
スト方向に来ないようにして 120 度ずつずらして装着する。
g
ピストンをシリンダライナに組み込むには、ピストンリングホルダ(附属
工具)をシリンダライナ上部に乗せ、上からピストンを静かに押し込む。
( 図 10 )
図 9
注1. 上側クランクピンメタルと大端部リ-マボルトは取り付けておく。
注2. 冷凍機油を充分塗布して作業する。
注3. クランクシャフトを回してクランクピンが下った位置にしておく。
注4. このとき、すでにピストンの組み込まれた気筒では、ピストンの上
昇に伴ってシリンダライナが抜け出して来るので注意すること。
3 -7
a
ピストンピン、ピストンピンメタル
ピストンとピストンピンは、わずかにシマリバメである。分解は 110~120℃
の温油につけるなどの方法で昇温して軽く打ち抜く。組み立てはピストン
のみ昇温して手早く行う。
b
コンロッド小端部は、標準はプレーンメタルが圧入されているが二段圧縮
機高段側には機能上ニードルベアリングが装着されている。これを単段圧
縮機および二段圧縮機低段側などに使用することはさしつかえないが、プ
レーンメタルのものを二段圧縮機高段側に使用すると潤滑が不充分になっ
て摩耗の進行が早くなる場合があるので使用してはならない。また高圧力
差冷媒には単段機及び二段機高段側に機能上高圧力差用ニードルベアリン
グが使用されている。なおピストンピンは低段用、高段用共同一仕様であ
る。
注 1.
図 10
ニードルベアリングは同一メーカ同一呼び番号のものでも細部の設
計が異なるものがあるので必ず当社純正部品を使用すること。
c
プレーンメタルの場合の使用限度は次による。
ピストンピンメタル
スキマ基準値
0.025~ 0.052 mm
使用限度
0.2 mm
注1. 組み立てた状態でガタが少なく動きがなめらかであれば特に分解す
る必要はない。
d
ニードルベアリングの場合は、ピストンピン、ニードルベアリングにわず
かでも圧痕、摩耗、キズなどがあれば使用してはならない。
注1. 組み立てた状態でガタがなく、ピストンを押しつけてなめらかに回
るようであれば特に分解する必要はないが、潤滑油中および圧縮機
各部に微細なゴミやよごれが多い場合(特にフレオンの装置では早め
にし、10000 時間程度)には分解してみることが必要である。
e
ニードルベアリングは、コンロッド小端部にわずかにシマリバメされてい
る。取りはずしは止め輪をはずして 110~120℃の温油につけるなどの方法
で昇温して軽く押し抜く。組み立ては上の逆順に行う。組み立ての際にニ
ードルベアリングの油穴の位置を VZ は水平また VZL は下方 30°になるよ
うにする。( 図 11 )
図 11
- 18 -
注 1.
高圧力差用ニードルベアリング装着手順に付きましては弊社まで
お問い合わせ下さい。装着手順書を提出させて頂きます。
3-8
a
クランクピンメタル、コンロッド
クランクピンメタルは、うすい鋼裏金にホワイトメタルを溶着したもので
上下 2 つ割りである。このメタルは寸法精度、面精度共非常に良く手直し
の必要はない。決して軸受面のキサゲ作業を行ってはならない。
b
クランクピンメタルは、コンロッド大端部に装着しボルトを規定のトルク
で絞め付けた時に始めて真円となる。
c
使用限度は上下方向のスキマを測定し次による。( 図 12 )
クランクピンメタル
スキマ基準値
使用限度
0.03~ 0.10 mm
0.3 mm
注 1. スキマが使用限度内であってもゴミによるキズや肌荒れがある時は
必ず新品と交換すること。特に軸受面に微細なゴミが埋め込まれて
いるものは、クランクシャフトを急速に摩耗させるので絶対に継続
図 12
使用してはいけない。
注2. 組み立て時には清浄な冷凍機油を充分塗布し、メタルの表裏にゴミ
をはさまないように注意すること。
d
コンロッド大端部およびクランクピンメタルなどは刻印を打って組み合わ
せが決められているので他と混用しないように注意が必要である。
( 図 13 )
ナットは特殊なオス、メス 1 組のゆるみ止めダブルナットである。座金を
はめ、オスナッ卜をしっかりと規定のトルクで締付けてから、メスナット
を締付ける。このときレンチが深くはまりすぎてオスナットと同時に締め
ないように注意すること。
ロッドボルトナット
締めつけトルク
3 -9
a
オスナット
60~ 70 N・m
メスナット
35~ 45 N・m
シリンダライナ
シリンダライナは、クランクケースにはめ込まれているだけなので、ライ
ナ上部のガス吸入孔の内 2ケ所に切られたねじにアイボルト(附属工具)
図 13
をねじ込み静かに引き抜けば取りはずせる。( 図14 )
注1. 二段圧縮機高段側のようにシリンダライナ下部にOリングの装着さ
れているものはややかたい。
b
シリンダライナは、上部フランジの上下面で吐出弁外側弁座およびクラン
クケースとそれぞれスリ合わせの上、金属接触して気密を保っている。従
ってこの部分にキズまたはゴミの附着があってはならない。
c
シリンダライナ内面にいちじるしい摩耗、キズ、肌荒れなどがないか入念
に点検する。
注1. ピストンとのスキマの使用限度はピストンの項参照。
d
シリンダライナ上部の吸入弁シートを点検しキズその他異常のあるものは
図 14
修正または新品と交換する。
e
二段圧縮機高段側のシリンダライナ外周下部には、Oリングを装着して吸
入ガス部とクランクケースとの気密を保っている。従って組み立て時には
Oリングを傷付けないように充分注意する必要がある。( 図15 )
注1. Oリングが損傷すると、ガスもれのため効率が低下し同時に油消費
量が増加する。
注2. シリンダライナを分解した時には、Oリングは必ず新品を使用する
こと。
注3. Oリングは、ねじれのないように、また伸ばしすぎないように慎重
に装着すること。もし伸びてたるみがある場合は、しばらくそのま
- 19 -
図 15
まにしておいて、元に戻ってからクランクケースに組み込むこと。
注4. Oリングは、耐冷媒および耐油性の特殊な材料を使用しているので、
必ず当社純正部品を使用すること。
f
シリンダライナシム
この部品は、シリンダライナの下部に装着する。
シリンダライナ交換時には、この部品も同時に交換する。
装着面清掃後、シリンダライナシムを装着し、シリンダライナを軽く押し
当てるように装著する.( 図16 )
3-10
a
クランクシャフト
クランクシャフトは、メカニカルシールおよびリヤカバーを取りはずして
オイルポンプ側へ引き抜く。
注1. フランジモータ形圧縮機のときは、あらかじめ電動機のステータを
図 16
取外しておく。
b
バランスウェイトは、工場で完全にバランス修正をしてあるので、決して
取付けボルトをゆるめてはいけない。
c
クランクシャフトにあけられた油孔を、プラグをはずしてていねいに掃除
する。
d
クランクピンおよびジャーナル部の摩耗、キズ、肌荒れの有無を入念に点
検する。
e
クランクピンおよぴジャーナル部の摩耗が 0.15 mm以上ある場合は使用し
図 17
てはならない。
f
使用限度以上に摩耗したクランクシャフトに対し、特殊金属を溶射肉盛り
して再研磨する方法、およぴクランクピンをアンダサイズに研磨仕上げし
てアンダサイズメタルと組み合わせて再使用する方法があるが、クランク
シャフトは精密な仕上寸法と表面精度、硬度などが非常に重要なので必ず
当社に連絡し協議すること。
3 -11
a
フロントメタル
フロントメタルは、クランクケースにクランクシャフト軸端方向からはめ
込まれ、ボルト4本で固定されている。( 図17 )
b
図 18
従って、メタルのみ点検する場合はクランクシャフトはそのままで、メタ
ルを前方へ抜き出せば良い。
c
このメタルは、軸荷重と同時にクランクシャフト軸方向のスラスト荷重も
受ける構造で、端面がスラストメタルとなっている。
d
メタル内面および端部スラストメタル面にゴミによるキズ、肌荒れ、摩耗
その他の異常がないか点検する。
注1. 液バックによる油の泡立ちなど、短時間の油切れのためメタル表面
がわずかに回転方向に流れ出している場合があるが、流れの進行が
止り停溜している場合は実用上差支えない。
e
メタル面が良好であっても最大スキマが使用限度をこえた場合は新品と交
換する。( 図18 )および下表
スキマ基準値
f
0.07~ 0.12 mm
図 19
使用限度
0.3 mm
組み立ては、メタルの油孔とクランクケースの油ミゾ(左右)が一致する
ように注意して、ボルトは確実に締め付けること。
3-12
リヤメタル
リヤメタルは、リヤカバーにはめ込まれ、メタルフランジ部を軸方向にボ
ルト 2本で固定している。( 図19 )
b メタルの点検は、フロントメタルと同様に行い、使用限度をこえたものは
新品と交換する。( 図20 )および下表
a
図 20
- 20 -
スキマ基準値
c
3 -13
a
0.07~ 0.12 mm
使用限度
0.3 mm
組み立ては、メタルの油孔とリヤカバーの給油孔が一致するように注意し
て行うこと。
メカニカルシール
メカニカルシールは、カバープレート①、シールリング②、ベローズ状ゴ
ムパッキン③、バネ④、バネ受け⑤などからなり、カバープレートの焼き
入れ研磨された摺動面と特殊合金製のシールリングが回転摺動しながら油
とガスのシールを行う。( 図 21 )
b
分解はカバープレートをはずし、先づシールリングを傷付けないようにと
図 21
りはずしておく。次にバネ受けにあけられた 2 ケ所のネジ孔に抜きボルト
(附属工具)をねじ込んで行くと全体が押し出されてくる。
注 1. こじたり無理に抜かないこと。
c
シールリングとカバープレートの摺動面のキズ、肌荒れ、ゴムパッキンの
キズ、破れなどを入念に点検する。
d
メカニカルシールの摺動面は非常にデリケートである。漏洩なく運転して
いるメカニカルシールを分解、再組み立てした場合、わずかな当り面の変
化によって漏洩し出す事がある。従ってメカニカルシールを分解した時に
は予備の新品と一式入れ替えるようにする。
なお、取りはずしたカバープレートとシールリングは、修復可能の範囲内
であれば当社に送品してラッピングの上、予備品として保管するとよい。
シールリングの使用限度は次による。( 図 22 )
シールリング
厚さ基準値
使用限度
e
図 22
11.0 mm
10.0 mm
組み立ては、清浄な冷凍機油を充分に塗布し、静かに押し込み、完全に押
し込む前にカバープレートを取り付けて 8 本のボルトで均等に締め込んで
組み立てを完了する。
注1. 運転中 1 分間に 2~ 3 滴の漏油はシール面潤滑上差支えない。ガス
漏れまたは、はなはだしい油漏れの時以外は分解しない方がよい。
f
フランジモータ形圧縮機ではモータロータのみ取外すことにより、メカニ
カルシールの点検(カバープレートの取外し)ができる。
カバープレートを取外す前に内部の油を抜いて、モータステータに油がか
からないようにする。オイルフィルタからの給油管を外せば、メカニカル
シール部の油を排出することができる。その後シールドレンパイプを外し
てからカバープレートを取外すとよい。
3-14
a
図 23
オイルポンプ
オイルポンプは、リヤカバーにオイルポンプベース①、オイルポンプ本体
②の順に取り付けられ、クランクシャフト後端からオイルポンプギヤ A③
によって駆動される。( 図 23 )
b
油はオイルスクリーンからオイルポンプベースの通路を通ってオイルポン
プに吸入され、加圧された後再びオイルポンプベースの通路を経て送り出
される。このようにオイルポンプベースにすべて油配管されているので、
オイルポンプは 4 本のボルトをゆるめるだけで簡単に取りはずせる。
c
オイルポンプギヤの分解手順は、抜きボルト(M 8)をエンドプレート①
にねじ込むと、テーパピンで位置決めされたエンドプレートとギヤ②が抜
ける。
( 図24 )
再組立のときは、エンドプレートが左右逆にならないように注意する。
エンドプレートにあけられている吸入穴と、オイルポンプ本体の吐出穴(回
- 21 図 24
転方向表示の矢印の先端側)とは、ギヤに対して対称位置にあり合マーク
の刻印が合致する。
d
オイルポンプギヤは、歯面、外周、両端面、軸および軸受などについて入
念に点検し、同時にオイルポンプ本体内面についても同様に点検する。
e
オイルポンプ駆動軸を引き出して、軸部および軸受に異常がないか点検す
る。
f
オイルポンプベース内側には、冷間起動時などの異常油圧上昇を防ぐため
に、オイルポンプリリーフバルブが取り付けてある。これは約 1MPa の油
圧で作動して圧力油をクランクケースヘ逃がし、オイルポンプ各部を保護
する。このシート面にゴミなどを噛むと正常運転時に油圧が低下すること
がある。( 図25 )
g
図 25
オイルポンプリリーフバルブを分解、組み立てした時は、ねじ込み部にポ
ンチを打ってゆるみ止め処置を行うこと。
h
オイルポンプの回転方向は、圧縮機をオイルポンプ側から見たクランクシ
ャフトの回転方向と、オイルポンプ本体後部の上側の矢印の方向とが合う
ように組み付ければよい。回転方向を逆にするには、先ずエンドプレート
を外し、オイルポンプギヤ A(駆動ギヤで軸長が長いもの)とオイルポン
プギヤ B (従動ギヤ)とを上下逆に入れ直す。次ぎにエンドプレートを、
合マークの刻印がオイルポンプ本体の刻印と近接して合致するよう(元の
位置)にして、密着するまで押込む。その後オイルポンプ本体を 180度回
して(全体を上下逆にして)取付ければよい。この時、逆向きの矢印が上
側に現われる。
i
舶用圧縮機の場合、船体のピッチング、ローリングに対処するため、圧縮
オイルタンク
機のクランクケース底部にオイルタンクが装備されており、その内部にオ
イルスクリーンが取り付けられている。( 図26 )
3 -15
a
図 26
油圧調整弁
油圧調整弁は、リヤカバーのオイルポンプの右側にボルトで取り付けられ
ており、潤滑油系統の最終部で油圧調整を行うようになっている。
b
構造は、弁、バネ、スピンドル、ノブなどからなり、ノブを時計方向に回
すとスピンドルが内側へ進み、弁を押しているバネを圧縮して油圧は高く
なる。余分な潤滑油は通路を通ってクランクケースヘ戻る。
c
分解は 4本のボルトをはずすと弁とバネが取り出せる。次にノブとスピン
ドルを止めているスプリング、ピンを軽く打ち抜いてノブをはずし、スピ
ンドルの内側先端のミゾにドライバをかけて反時計方向に回すと抜け出し
て来る。最後に弁蓋をスパナで回して取りはずす。
d
組み立ては上の逆順に行う。
図 27
注1. 分解した時には、Oリング 2本(テフロン製)とパッキン(テフロ
ン製)は必ず新品と変換すること。( 図27 )
3-16
a
アンローダ
アンローダ装置は油圧作動方式で、クランクケース内部に取り付けられた
油圧シリンダと、シリンダライナ外周に取り付けられた吸入弁板押し上げ
機構とからなる。( 図28 )
b
油圧は手動用アンローダ弁または自動用電磁弁からシリンダカバーの接続
ロに配管で導かれ、内部通路を通って油圧シリンダに至る。
c
シリンダに油圧がかかるとピストンが押し出され、ピストン先端の駆動板
がシリンダライナ外周のカムリングを押して回転させ、カムリングの傾斜
面にそってアンロータピンが下降し、押し上げられていた吸入弁板が自由
になり作動し始めアンロードからロードになる。
油圧が断たれるとピストンはバネで押し戻されアンローダピンが上昇し吸
- 22 -
図 28
入弁板を押し上げてアンロードになる。
d
分解はシリンダライナ①を抜き出すと、外周にカムリング②、ストップリ
ング③、アンローダピン④などが付いたまま取リ出せる。
次にカムリングを回して、アンローダピンを傾斜部の最下端に合わせた後
カムリングを上方へ押し上げてシリンダライナのミゾにはめられた左右 2
つ割りのストップリングをはずすとすべて分解出きる。( 図29 )
注1. カムリングは、左右のシリンダライナで傾斜部が逆向きのため、組
み立て時に注意すること。
e
組み立ては分解の逆順に行う。
各部品は厳重な寸法精度で加工されているので組み立て時には順序良く組
み立てるだけで良いが、シリンダライナまたはアンローダ機構の部品を交
換した時は念のために、アンローダピンの上昇時に吸入弁板が外側弁座を
突き上げていないか、また下降時に吸入弁のシート面よりピンが下ってい
るかを確認しておくこと。( 図30 )
f
油圧シリンダは、クランクケース内部に上面から 1本のボルトで固定され
ているだけで、このボルトをゆるめると取りはずせる。
図 29
注1. このボルト(M12)は油圧を導くために中央に孔があけられているの
で他のボルトと混同してはならない。
g
油圧シリンダの分解は、先づ軸端の C形止め輪⑦をはずして駆動板⑥をと
り、シリンダ①の後部のカバー②をはずすとバネ④の力でピストン③が押
し出されて来る。( 図31 )
注1. シリンダの最深部に漏油防止用のテフロンパッキン⑤がはめられて
いるのを取り出して点検する。
h
組み立ては上の逆順に行いカバーの Oリング⑨は新品を使用すること。
i
油圧シリンダをクランクケースに組み付けるには、油圧シリンダの位置決
めと回り止めとして先づオイルポンプ側のシリンダライナを組み込んでお
き、油圧シリンダ軸端の駆動板の円筒部とカムリングのスキマを約 1mmあ
けてしっかりとボルト締めする。実際の作業としては、1 mmの鉄板をはさ
み、シリンダライナを油圧シリンダの回り止めとしてボルトを強く締め付
図 30
けた後、鉄板を抜き取るようにすると良い。( 図28-A )
注1. 油圧シリンダの取リ付け部の Oリング⑧(テフロン製)は新品を
使用すること。
j
シリンダライナの組み込みは、カムリング、を回してアンローダピンが上
昇した位置において( 図 32 )、駆動板のツバとカムリングの切り欠き
が合うように、同時にシリンダライナ上部外周の位置決めのノックピンと
クランクケースのミゾが合うように注意しながら静かに組み込む。
3-17
a
オイルフィルタ
オイルフィルタは金属製で屋形の隙間用と車輪形の濾し板とを交互に積み
重ねて中心軸に固定し、その間に掃除用板をかみ合せたものである。
b
オイルポンプから来た圧力油は周縁から濾し板の間隙を通る際に濾過され
る。
c
異物が濾し板の間隙につまってきたとき、中心軸を回転すれば掃除板によ
図 31
って異物はかき落されてオイルフィルタ本体の底部にたまる。回転は 1 週
間に 2~ 3 回でよい。
d
定期点検時には、オイルフィルタカバーと共に取り出して上質の洗い油を
使用し、ブラシでよくこすってゴミ・スケールを取り除く。
3-18
a
吸入ガスストレーナ
吸入ガスストレーナは、吸入支管内にありカバーをはずせば簡単に引出す
ことが出来る。
- 23 -
図 32
b
冷凍設備据付・改造当初には、この金網の上にさらにフェルトなどを巻い
て細かいゴミが吸い込まれないように心がける必要がある。
3 -19
a
安全弁・圧力計・圧力開閉器
安全弁は、バネ式でテフロン製ディスクを持ち、圧縮機吐出部に取付けて
ある。作動圧力は工場で正確に調整して封印されているが、定期的に点検
し、作動圧力の調整やディスクの交換を行なう。
b
圧力計は、接続配管に無理があると指示が狂う場合がある。又指針が激し
く振れるときは、ゲージバルブを加減して振れを止めないと故障の原因に
なる。
c
圧力開閉器の圧力目盛はまれに狂うことがあるので時々作動テストを行い
作動圧力を点検する必要がある。
3-20
a
油落し弁
二段圧縮機高段側の吸入ガス室とクランクケースの間に油落し弁が連絡配
管されている。( 図 33 )
b
この弁は吸入ガス室に溜った油をクランクケースに落すためのものである。
c
適時運転中に数秒間開く以外は確実に閉めておくこと。
3-21
a
b
油圧調整弁
オイルクーラ
オイルクーラは、水冷式と冷媒冷却式の 2種類がある。
水冷式オイルクーラは外胴の中に蛇管が入っており、蛇管内を油が通る。
( 図34 )
図 33
清掃のための分解は次のように行う。
● ドレーン弁(プラグ)を開いて水を抜く。
● 油出入口の管継手をはずす。(ナットは上下共それぞれにスパナをか
け配管に無理な力がかからないようにする)
● カバーのボルトをはずして手前に引けば内部の蛇管が共に引出されて
くる。
● 防蝕用の亜鉛(海水用)又はマグネシウム(清水用)が付いているの
で点検し交換する。
c
冷媒冷却式オイルクーラは、内外 2重円筒形で、内筒内部で蒸発する冷媒
によって、外筒と内筒の間の油が冷却される構造である。( 図35 )
図 34
取扱いについては次の注意が必要である。
注1. 圧縮機運転中は必ず冷媒を通すこと。(出入ロの弁を開くこと)
注2. 膨張弁を開き過ぎて圧縮機に液戻りさせないこと。(冷媒出口配管
は圧縮機から離れた場所であって圧縮機へ液戻りするおそれの無い
場所に接続すること。運転台数増加により吸入圧力が変った際など
は特に注意が必要である)
注3. 自動膨張弁のストレーナは細かくつまりやすいので、常に油温の上
昇に注意し、ストレーナは度々清掃すること。
注4. 自動膨張弁の場合は起動時に作動遅れがあり開度が大きくなり過ぎ
て圧縮機へ液戻りしやすくなることがあるので注意すること。
注5. オイルクーラ内の冷媒の蒸発温度が、-40℃程度以下になると油の
粘度増加によってかえって冷却効果が悪くなるので調整すること。
(二段圧縮機ではオイルクーラ冷媒出口配管は中間冷却器に接続する
こと)
注6. 圧縮機停止中は冷媒液の供給を確実に閉止すること。電磁弁などに
漏洩があり、他の圧縮機によってオイルクーラ内の冷媒が吸入され
蒸発すると内部の油温がさがり過ぎて粘度が著るしく高くなる。
従って油の通過抵抗が大きくなり起動時に圧縮機への給油が不足し
- 24 -
図 35
圧縮機の焼損の原因になるから油圧に注意すること。〈寒冷期の起動
時も同じ)
注7. 冷媒側に油がたまると冷却効果が悪くなるので、時々排油口から排
油すること。
注8. 冷媒入口(液)弁の漏洩によって停止中の油の過冷却を妨ぐと同時
に冷媒の過充填を防ぐためには、停止中に冷媒ガス出口弁を極く僅
か開いておくのも一つの方法である。運転開始時液戻りに注意しな
がら開くことを忘れてはならない。
3-22
a
Vベルト
Vベルト駆動の場合は、圧縮機フライホイルとモータプーリの側面に糸な
どを張って平行度を点検し調整する。
b
Vベルトはスリップしない程度にゆるく張るのがよい。
3-23
a
カップリング(直結駆動)
直結駆動の場合、標準としてタイヤ形カップリング CG 形カップリング( 図
36 )を使用する。
CG 形カップリングの分解は次のように行う。(組立は逆順に行う)
● ゴムブロック①の外周を附属の鋼製バンド②で締付ける。
● 取付ボルト(M30)をゆるめて、ゴムブロックを取り出す。
注1. ゴムブロックを取り出した状態で、鋼製バンドを絶村にゆるめない
こと。
注2. ゴムブロックを組立てた後、鋼製バンドを取外す。バンドは分解時
図 36
に必要であるから大切に保管すること。
b
カップリングの芯出しは( 図 37 )のように行い、それぞれ規定値以内
になるようにする。
c
新機又は分解組立後、15~ 20 日内にボルトの増締めを行う。以後 6 ケ月
毎に点検と増締めを行うようにする。
外周の振れ
面間の振れ
面間距離
3-24
a
CG5508
0.2 mm
0.1 mm
160±1 mm
クランクケースヒータ
フレオン及び R717 で相溶性のある冷凍機油を使用した圧縮機及び寒冷地
で使用される圧縮機のクランクケースにはクランクケースヒータが装備さ
れている。
b
フレオン及び R717 で相溶性のある冷凍機油を使用した場合、冷媒は油とよ
く溶け合うので、起動時オイルフォーミングを起し易く、油消費量が増加
したり, 圧縮機が損傷することがある。これを防止するために、圧縮機停
止中にはクランクケースヒータに通電して冷媒が油に溶け 込み難くする。
c
圧縮機が寒冷地で使用される場合、停止中に油温が極端に低下すると、起
動時にオイルフォーミングを起こしたり、油の粘度が過大になるため潤滑
不良を起すことがある。このため、圧縮機停止中にはクランクケースヒー
タに通電して、適正な油温で起動する。
d
クランクケースヒータが空だきになり焼損するのを防ぐため、圧縮機分解
前や油の交換時にはクランクケースヒータへの通電を停止すること。
3-25
モータベアリング(フランジモータ形圧縮機)
a
モータベアリングは密封形のためグリース注入の必要はない。
b
モータベアリングの交換時は、まずモータエンドカバーを取外す。即ちモ
- 25 -
図 37
ータエンドカバーの取付ボルトをゆるめ、上部 2本の取付ボルトの代りに
ガイドボルトをねじ込んでから、押しボルトでモータエンドカバーを静か
に抜出せばよい。このときモータベアリングに無理を与えないためモータ
エンドカバーが傾かないように左右がいつも平行に抜け出るようにする。
c
モータベアリングがエンド軸に残るタイプでは、モータ抜き鉄板(附属工
具)を用いてエンド軸から抜出す。( 図38 )又、取付けるときもモータ
抜き鉄板を使用するとよい。( 図39 )
d
図
38
モータベアリングがエンドカバーに残るタイプでは、六角ボルト(附属工
具)を用いて抜出す。( 図40 )又、取付けるときは、外輪を押し圧入す
ること。内輪及びシールド板に力を加えないこと。
3-26
モータロータ(フランジモータ形圧縮機)
a
メカニカルシールのメンテナンスの際はモータロータを取出す必要がある。
b
前項の要領でモータエンドカバーを取外す。
c
エンド軸を取出す。このときモータベアリングが残るタイプではモータベ
アリングを傷つけないように注意する。
d
図 39
クランクシャフトキー押え板を取外し、代りにモータロータガイド(附属
工具)をボルトでクランクシャフトに固定する。これらのモータにおける
作業にはモータTレンチ(附属工具)を利用する。
e
モータロータのスパイダ(ロータ軸)に M12総ねじ 2本(附属工具〉をね
じ込んでからモータ抜き鉄板(附属工具)をモータロータガイドに当てが
って、総ねじにナットをはめ、交互にナットを締めるとモータロータが抜
け出して来る。( 図41 )モータロータのスパイダとクランクシャフトの
はまり込みはテーパなので、モータロータが少し抜ければその後は総ねじ
2本を使って手前に引出す。モータロータを持つとき、アルミフインの先
端を持つとフインが変形するから注意を要する。
組み立てのときはクランクシャフトキーの位置に注意すること。
クランクシャフト端のボルトの締付トルクは次の通り。
締め付けトルク
図 40
100~ 110 N・m
注1.モータロータの分解手順は、事項の3-27を参照のこと。
図 41
- 26 -
3-27
VZ/VZLモータ一体型冷凍機のモータロータの分解手順説明
(モータロータを取り外して、メカニカルシールの点検を行うときなど。)
写真 1
■ 分解手順
<手順-1> モータエンドカバーの取り外し(写真 1)

4本の取付けボルトを外す。

上部2本の取付けボルトの代わりにガイドボルトをねじ込む。

カバー左右のタップ穴に取り外したボルトをねじ込む。

カバーがベアリングより外れる。
<手順-2> モータベアリングの取り外し(写真 2)

ベアリングはモータエンド軸に圧入されている。
(回して異常音が無いか確認する。)

付属のT形レンチでエンド軸のボルト6本を取り外す。

ベアリングを保持しエンド軸のタップ穴に取り外したボルトをねじ込む。
<手順-3> シャフトキー押え板の取り外し(写真 3)

押え板のボルト2本をT形レンチで外す。

押え板を外すとクランクシャフトが見える。
<手順-4> モータロータの取り外し(写真 4)

付属のモータロータガイドをシャフトに固定する。
(付属の長いボルト2本を軸端にねじ込み、ガイドパイプを固定する。)

モータロータに、付属の総ねじボルトを取り付け、モータ抜き鉄板を取
り付けてナットを締め付ける。

ある程度締め付けた後、鉄板の中央をハンマで軽くたたくとロータが外
れる。
写真 2
写真 3
写真 4
<手順-5> モータロータの取り出し(写真 5)

モータロータを奥側のフィンが見えるまで引き出す。
(ロータを軽く回しながら引き出す。)

モータロータに布バンドを掛け、吊り上げる。

モータロータを清浄な場所に静かに下ろす。

組立時には、ガイドにはめてからロータを清掃し押し込む。
<手順-6> モータロータを取り出した状態(写真 6)

ロータを外すとシャフトにガイドが固定されている。

これは、シャフトを延長したことになる。

クランクシャフトの取り外し時にもこのように装着する。

シャフトのキーは手前に丸くなった側を向けて、ロータ装着時にガイド
とする。
<手順-7> シールカバーの取り出し(写真 7)

奥にシールカバーがボルトで固定されているので、T形レンチで外す。
(油がモータステータにかからないように注意する。)
写真 5
写真 6
写真 7
- 27 -
改訂履歴
改定日
1
2
2013年6月
2013年6月
項目
-1-1
改訂内容
高圧力差用冷媒の定義
ピストンピンメタル
Ver
新
HFC系冷媒で設計圧力1.8MPa.G以上
7
旧
なし
6
新
高圧力差冷媒の単段/二段機高段側にニードル
7
3-7(d,e)
ベアリング゙を採用
旧
3
2013年6月
1-3
冷媒変更
2013年6月
--
6
新
R717(NH3),R404A,R417A
7
旧
R717(NH3),R22,R134a
6
ニードルベアリング(TRV)/総コロ
新
別途資料作成(*****)
7
分解・組立手順書作成
旧
なし
6
1-5
4
なし
Fly UP