...

第Ⅲ章.世田谷区鳥類目録

by user

on
Category: Documents
12

views

Report

Comments

Transcript

第Ⅲ章.世田谷区鳥類目録
22
第Ⅲ章.世田谷区鳥類目録
1)目的
① 世田谷区の過去から 2007 年までの間に記録された鳥類の把握
② 各鳥類の生息状況(生息場所、繁殖の有無、渡り区分)とその変化の把握
2)観察記録
本目録作成にあたって、個人記録や調査記録及び文献の収集を行い、引用した。
3)本目録記載内容と解説
① この目録は、1910 年以降 2007 年 12 月末までに世田谷区内で記録された在来種 18 目 49 科 235
種、外来種 4 目 8 科 21 種を記載した。
② 分類、配列、和名、学名、英名についての採用は主として「日本鳥類目録改定第 6 版」(2000)
に準じた。
③ 渡り鳥区分は、世田谷区周辺の区、市や県などを考慮し、2007 年を基準として留鳥、夏鳥、冬
鳥、旅鳥、不明の 5 つに分けた。
留鳥:季節毎の移動はせず、1 年を通じて生息する種。外来種は全て留鳥とした。
夏鳥:春季に日本より南の地域から渡来して繁殖、又はその期間長く観察される種
冬鳥:秋季に主に北の地域から渡来して越冬し、春季には渡去する種(漂鳥も含む)
旅鳥:春季と秋季の渡りの途中において世田谷区に立ち寄り通過していく種
不明:上記の区分に該当しない種
④ 目録の記述は、世界、日本、世田谷区の生息状況を解説し、東京都レッドデータブック(RDB)と
環境省レッドデータブック(RDB)、全記録数と記録年。観察記録は年代順とした。繁殖記録を優
先し、記録の少ない種は記録の全てを、記録の多い種は内容と地域的なバランスを配慮して選択
した。
⑤ 繁殖の基準は、新東京都産鳥類目録作成マニュアル(2006)に準じ、繁殖段階の 1:繁殖確認、2:
繁殖可能性大の 2 段階までとした。詳しくは資料を参照(P-211)。
⑥ 観察記録は、年月日、場所、個体数、観察内容の順で記載した。観察内容では原文の一部を削除
したり、わかりやすく修正したものもある。時刻は原則として 24 時表示とした。
⑦ 観察地名は原則として○町○丁目までとし、古い記録は現在の地名に置き換えた。野鳥ボラン
ティアによるセンサス調査記録は、砧公園、多摩川、野川、仙川。河川は便宜上、上流、中流、
下流の 3 つに分け、それぞれを(上)、(中)、(下)とし、観察記録では定例調査とした。
多摩川の区分は、上流は狛江市境から二子橋、中流は二子橋から第三京浜道多摩川橋、下流は
第三京浜道多摩川橋から大田区境。野川の区分は、上流は谷戸橋から雁追橋、中流は雁追橋から
町田橋、下流は町田橋から多摩川合流点。仙川の区分は、上流は大川橋から宮下橋、中流は宮下
橋から打越橋、下流は打越橋から野川合流点。
口承の地名については記録のまま残した。例えば、
「オギの海・バンの池」は多摩川左岸、鎌
田 1~2 地先にあって新二子橋上流 400~1000m。又、
「コジキッタナ、赤岩、渡し場、新田」は
1945~1970 年頃、多摩川の現在の玉堤や野毛地先をこの様に呼んでいた。
⑧ オオタカ、ツミ、ハイタカ、ノスリ、チョウゲンボウ、アオバズクの 6 種については保護の観
点から 2001 年から日、観察地、観察内容を非表示とした。
23
1.アビ Gavia stellata Red-throated Diver
アビ科
北半球北部のタイガからツンドラ地帯、カナダ北部に分布し、内湾や湖沼の岸で繁殖し冬は温帯北
部で広く越冬する。日本では、北海道から九州に冬鳥として沿岸、湾内、河口、海岸近くの湖沼、大
きな河川に渡来する。水に潜って主に魚類を捕らえるが、水生昆虫・カニ・エビ・イカなども採食す
る。
世田谷区では、冬鳥として稀に渡来する。多摩川で見られた下記の 3 例の記録がある。(全記録数 5
件 1950~2004 年)
○観察記録
1950.05.29~31 多摩川(玉堤)
1羽
川ダレやコジキッタナ付近で見る
2003.04.10 多摩川(玉堤 1)
1羽
中間羽 時々潜水
2004.02.07 多摩川(宇奈根)
1羽
川岸に上がる
2.カイツブリ Tachybaptus ruficollis Little Grebe
カイツブリ科
日本では、ほぼ全国的に分布し、各地で繁殖する。北海道、本州北部では夏鳥、本州中部以南では
留鳥である。主に平野部の池、湖沼、堀、河川などに生息し、稀に海に出ることもある。秋や冬は河
川の下流域でも見られる。繁殖期は 2 月から 10 月と長期にわたり、年に 2~3 回繁殖する。秋や冬に
も繁殖活動をしているものもあり、2 月頃幼鳥が見られることもある。ヨシ原の中や水中に繁茂する
水草の上に、たくさんの水草の葉や茎を用いて浮き巣を造る。ヨシが密生する水面にいて、採餌の時
は広々とした水面に現れる。足指につくヒレ状の弁膜で水をかいて潜水し、小さなフナやタナゴなど
の魚類・水生甲殻類・昆虫・軟体動物を採食し、ヒシの実のような植物質も食べる。
世田谷区では、主に冬鳥として 9 月に渡来し、翌年の 4 月頃渡去する。多摩川の全域でよく見られ
るが稀に野川、砧公園、高源院、馬事公苑の池でも見られる。多摩川では昔から繁殖していたと思わ
れるが 1996 年から 2001 年の玉堤 1 丁目地先の記録しかない。(全記録数 1850 件 1949~2007 年)
○繁殖記録
1996.07.06 多摩川(玉堤 1)
雛2羽
1997.08.25 多摩川(玉堤 1)
雛2羽
1998.07.13 多摩川(玉堤 1)
雛1羽
雛が成鳥と一緒に泳ぐ
1999.06.22 多摩川(玉堤 1)
雛1羽
雛が中州の入り江で成鳥から餌をもらう
2000.07.25 多摩川(玉堤 1)
雛1羽
成鳥が雛を背に乗せて川崎側に向かって泳いでいる
2001.07.30 多摩川(玉堤 1)
雛1羽
雛が中州の岸近くで成鳥から小魚をもらう
○主な観察記録
1949.08.31 多摩川
1羽
上空を南西より東北に飛行
1963.01.21 多摩川(野毛)
52 羽
下流から上流に飛ぶ 渡し場
1970.01.24 多摩川(玉堤)
11 羽
コジキッタナ
1990.01.20 馬事公苑
1羽
池で潜水し採餌 1 日だけ
1993.02.22 野川
1羽
定例調査
1996.01.06 多摩川
51 羽
2002.11.20 多摩川
18 羽
定例調査
1羽
定例調査
2004.02.04 野川
24
2006.01.18 多摩川
16 羽
定例調査
2007.01.24 多摩川
10 羽
定例調査
3.ハジロカイツブリ Podiceps nigricollis Black necked Grebe
カイツブリ科
ヨーロッパからロシア北部ウスリーから中国東北部、北アメリカ中部、南アメリカ北部、北アフリ
カ東部で繁殖し、ヨーロッパ、中東、東アジア、中南米、アフリカ南部で越冬する。日本では、北海
道では旅鳥で本州から九州、南西諸島に冬鳥として渡来する。海岸近くの湖沼、河口部、内湾でよく
見られ、内陸の大湖沼や大きな河川にも現れる。潜水が巧みで、小さな魚・甲殻類・昆虫を採食し、
藻類などの植物質の餌も食べる。
世田谷区では、冬鳥として稀に渡来する。多摩川で見られ、頻繁に潜水するのが観察されている。(全
記録数 17 件 1969~2005 年)
○観察記録
1969.12.01~16 多摩川(玉堤~二子橋)
1羽
カイツブリの群れの中 コジキッタナ
1970.11.21 多摩川
1羽
写真 二子橋上流
1985.11.12 多摩川
1羽
1995.12.10 多摩川(玉堤 1)
1羽
1997.12.05~07 多摩川(玉堤 1)
1羽
時々潜水
2000.03.03~10 多摩川(鎌田 1)
1羽
冬羽 時々潜水
2001.01.21 多摩川
1羽
2003.12.18 多摩川
1羽
2005.01.02 多摩川(玉堤 1)
1羽
時々潜水
4.アカエリカイツブリ Podiceps grisegena Red-necked Grebe
カイツブリ科
ヨーロッパ、シベリア、北アメリカ北部などで繁殖し、ヨーロッパ、東アジア、北アメリカの沿岸
部で越冬する。日本では、北海道では夏鳥として道北、道東の湖沼で局地的に繁殖し、本州から九州
では冬鳥として渡来する。繁殖期には湖沼や湿地のマコモ、イなどが密生する水辺に生息する。冬は
内湾や河口部で見られ、内陸の湖沼や河川に入ることは少ない。5 月から 9 月に水草が密生した水辺
の浅瀬に、雌雄共同で水草を積み上げて浮き巣を造る。頻繁に潜水を繰り返し、魚類・水生の甲殻類・
昆虫・軟体動物を食べる。
世田谷区では、冬鳥として渡来した下記 1 例の記録がある。(東京都:Cランク 全記録数 1 件 2007 年)
○観察記録
2007.03.09 多摩川(玉堤 1)
1羽
中間羽 中州入り江で近くで時々潜水
5.カンムリカイツブリ Podiceps cristatus Great-crested Grebe
カイツブリ科
ユーラシア大陸中部、アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドに分布し、冬季は南下するも
のもいる。日本には、冬鳥として渡来する。以前は稀に見られるだけだったが、近年渡来数が増加し
群れで見られるようになる。1972 年に青森県で初めて繁殖、その後滋賀県、大阪府、秋田県で繁殖が
25
確認される。海岸や海岸近くの淡水湖沼や大きな河川に多く、稀に内陸の湖沼や大きな河川に入る。3
月から 8 月に水草が密生した水辺の浅瀬に、雌雄共同で水草を積み上げて浮き巣を造る。潜水を繰り
返し魚類、水生の甲殻類・昆虫・イモリやオタマジャクシなどの両生類を食べる。
世田谷区では、冬鳥として 11 月から 12 月に渡来し、翌年の 3 月から 5 月頃渡去する。多摩川で少
数が見られる。一冬連続して滞在することは少ないが、2001 年は少数が 4 月まで観察された。又、2005
年 5 月には繁殖羽が約 1 ヶ月観察された。(東京都: Cランク 全記録数 93 件 1994~2007 年)
○主な観察記録
1994.11.05~23 多摩川(玉堤)
1羽
1995.12.05 多摩川(玉堤 1)
1羽
1996.10.29~11.28 多摩川(玉堤 1)
1羽
1998.03.02~09 多摩川(玉堤 1)
1羽
2001.01.19~04.06 多摩川
繁殖羽
1~7 羽
2002.09.22 多摩川
1羽
2004.11.02~16 多摩川
1羽
2005.05.04~24 多摩川(玉堤 1)
1羽
繁殖羽
2005.10.30 多摩川(鎌田 1)
2羽
幼鳥と成鳥が時々潜水
2007.11.27 多摩川(玉堤 2)
1羽
上流に向かって頻繁に潜水
6.オオミズナギドリ Calonectris leucomelas Streaked Shearwater
ミズナギドリ科
北海道から八重山諸島までの日本の島々、朝鮮半島、中国、ロシア東南部の島々で繁殖し、非繁殖
期は東南アジアからオーストラリア北部にかけての海域、インド洋東部域まで南下する。日本では、
留鳥で日本沿岸の島嶼(とうしょ)で集団繁殖し、北海道から南西諸島にかけてコロニーのある島があり、
このうち北海道渡島大島、岩手県三貫島、京都府冠島、島根県星神島などが天然記念物に指定されて
いる。繁殖地は海岸や島嶼の海沿いに限られ、地中に巣穴を掘って集団で繁殖するが、営巣環境は繁
殖地によって異なる。波のあおりを利用して洋上を帆翔し、餌を求めて広く海上を飛び回る。飛翔し
つつ波間に浮かぶ餌や海面に降りて泳ぎ回り、頭を水中に入れてオキアミなどの甲殻類・イカの幼体・
稚魚などを食べる。
世田谷区では、迷って飛来した下記 3 例の記録がある。(全記録数 4 件 1981~1999 年)
○観察記録
1981.07.04 船橋
1羽
保護
1998.10.19 多摩川(鎌田 1) 1 羽
下流から飛来し上流へ 前日の台風で迷って飛来したと思われる
1999.09.16 多摩川(玉堤 1)
上流から下流へ飛翔 前日の南風が吹いて迷ってきたと思われる
1羽
7.コシジロウミツバメ Oceanodroma leucorhoa Leach’s Storm-petrel
ウミツバメ科
千島列島、コマンドル諸島から北アメリカ西岸、北アメリカ北東岸、北ヨーロッパで繁殖する。非
繁殖期は太平洋の赤道付近や大西洋の南アフリカ沖付近まで分散する。日本では、北海道大黒島、岩
手県日出島・三貫島で繁殖する。冬は本州、伊豆諸島、小笠原諸島に現れるが日本海にはごく稀に迷
行する。地上に捕食者のいない海洋の小島で繁殖する。繁殖活動は夜間に行い、日中は、島を遠く離
26
れた洋上か、巣穴の中に潜んで過ごす。海上をヒラリヒラリと波から身をかわすように飛び、水面近
くの小魚や浮遊するプランクトン・イカ・エビなどを水面に降りることなくくちばしでくわえ捕る。
世田谷区では、保護された下記 1 例の記録がある。(全記録数 1 件 1979 年)
○観察記録
1979.10.22 代沢
1羽
保護
8.クロコシジロウミツバメ Oceanodroma castro Madeiran Storm-petrel ウミツバメ科
東太平洋、東大西洋の熱帯、亜熱帯海域に広く分布し、繁殖する。日本では、夏鳥として渡来し、
岩手県日出島・三貫島、宮古市の小島に繁殖コロニーがある。地上の捕食者のいない海洋小島で繁殖
する。繁殖活動は夜間に行い、夜 8 時半頃から島に現れ、夜中の 2 時半頃まで繁殖活動をする。海上
の水面近くを飛び、小魚や浮遊するプランクトン・イカ・エビなどを水面に降りることなく捕らえる。
世田谷区では、迷って飛来した思われる下記 1 例の記録がある。(環境省:絶滅危惧ⅠA類 全記録数 1
件 1966 年)
○観察記録
1966.09.26 多摩川(玉堤)
1羽
17 時頃水面すれすれに上流へ行ったり下流へ行ったりして飛翔 コジキッ
タナ
9.オーストンウミツバメ Oceanodroma tristrami Sooty Storm-petrel
ウミツバメ科
ミッドウェー島、レーザン島、日本の伊豆諸島の蛇島・恩馳島・鳥島・硫黄列島の北硫黄島で集団
繁殖する。非繁殖期も繁殖地周辺の海にとどまるが、渡りについての詳細はよくわかっていない。地
上に捕食者のいない海洋の小島で繁殖する。繁殖活動は夜間に行い、夜 7 時頃から島に現れ、夜中の
2 時半頃まで繁殖活動をする。航海中の船の後をつけて飛び、ミズナギドリのように翼を傾けて水面
上を低く飛ぶことが多い。採食時には脚を下げて水面近くを跳びはねるようにして飛び、水面近くの
小魚・浮遊するプランクトン・イカ・エビなどを水面に降りることなくくちばしでくわえ捕る。
世田谷区では、迷って飛来したと思われる下記 1 例の記録がある。(環境省:絶滅危惧Ⅱ類 全記録数 2
件 2003 年)
○観察記録
2003.05.16 多摩川(鎌田 1)
1羽
15 時頃から約 1 時間、流れの急な水面に漂い 100m 位流されると低空で上流
に飛翔し着水を繰り返す
10.カワウ Phalacrocorax carbo Cormorant
ウ科
日本では、北海道、本州、四国、九州で局地的に繁殖し留鳥。北海道、本州北部では夏鳥。南西諸
島では冬鳥。内陸の淡水、河川、湖沼に生息し、その近くの樹上で 11 月から翌年の 7 月の長期にわた
り 2~3 回集団繁殖する。繁殖にさきがけ、頭部と腿部に細くて白い羽毛が生える。水かきのついた足
を使い、尾を舵にして巧みに潜水して魚類や甲殻類を捕る。水中で捕った魚を一旦水面に出てから呑
み込む。近年、関東地方において個体数の増加と分布拡大が見られるようになる。
世田谷区では、1948 年から少数記録されていたが 1967 年で一旦途切れる。1984 年から再び観察さ
27
れるようになり、1990 年代後半から急激に増加する。多摩川、野川で年中多く見られ、仙川や砧公園、
蘆花恒春園、喜多見、桜丘、奥沢、桜上水など区内各地で上空を飛翔している姿が観察されている。
秋から初冬は大群で行動し、9 月から 11 月の早朝から昼頃まで、鍵型や竿型になって餌場に向かうも
のや群れで漁をするところが観察されている。(全記録数 3174 件 1948~2007 年)
○主な観察記録
1948.06.11 野毛
1羽
1959.04.26 野毛
12 羽
1967.06.17 多摩川
1984.02.21 多摩川(野毛)
1991.02.28 野川
1羽
自宅上空 上流に飛行
自宅付近 群れが南から北へ飛翔
下流から飛来し上流へ去る
50 羽
3羽
1996.11.03 多摩川
2400 羽
上流から飛来し二子上空で多摩川と都心方面の二方向に分かれる
2000.11.04 多摩川
577 羽
2005.11.16 多摩川
612 羽
定例調査
2006.10.13 多摩川(上野毛 2)
800 羽
中州で羽を広げるなどして休んでいる
2007.10.29 多摩川(野毛)
630 羽
250、380 羽の群れが中州で休息、採餌
11.サンカノゴイ Botaurus stellaris Bittern
サギ科
ユーラシア中部、北アフリカ、南アフリカで繁殖し、北方のものは冬季にはアフリカ、南アジア、
東南アジアに渡る。日本では、夏鳥又は冬鳥である。北海道、本州中部以北では夏鳥、本州南部、四
国、九州、南西諸島では冬鳥。琵琶湖畔、北海道、茨城県、千葉県で繁殖しているが、個体数は少な
い。平地の湖沼、河川、湿田周辺のヨシ原や背の高い草むらに生息する。早朝と夕暮れに水辺に出て
きてじっと待ち伏せし、魚・カエル・エビ・ネズミなどを採食する。
世田谷区では、冬季に観察された下記 3 例の記録がある。(環境省:絶滅危惧Ⅱ類 全記録数 3 件 1985
~2001 年)
○観察記録
1985.12.15 多摩川(玉堤 1)
1羽
1987.12.21 多摩川
1羽
2001.01.30 多摩川(玉川 3)
1羽
12/18 までいた
野川と混交林の間の岸で休んでいたが、
望遠鏡を向けると首を伸ばして周囲
の竹柵に擬態する
12.ヨシゴイ Ixobrychus sinensis Chinese Little Bittern
サギ科
東アジアから東南アジア、インドにかけてとミクロネシア西部、セーシェル諸島に分布し、日本に
は、夏鳥として 5 月頃渡来し、北海道から九州までの各地で繁殖するが、本州以南で少数だが越冬す
るものもいる。伊豆諸島、南西諸島は冬鳥。池や沼、川岸、休耕田などのヨシ、マコモ、ガマ類など
の背の高い単子葉植物が繁茂する湿地に生息する。5 月から 8 月に水辺にあるヨシやマコモの草原、
竹林、水辺の樹木に営巣する。ヨシの茎を足指でつかんで茎から茎へと巧みに伝って移動するのや、
ヒシやハスの浮き葉の上を歩く。じっと待ち伏せしドジョウ・モツゴ・フナ・カエル・ザリガニなど
を捕らえる。
28
世田谷区では、夏鳥として 5 月頃に渡来し、10 月頃に渡去する。1960 年代に繁殖したが、2000 年
頃から稀に観察されるだけになる。2004 年に消滅したバンの池(鎌田 1)と玉堤 1 のヨシが茂る中州で
観察例が多い。(東京都:Bランク、環境省:準絶滅危惧 全記録数 119 件 1952~2007 年)
○繁殖記録
1964.06.20 多摩川(玉堤)
1巣
6 卵 6/24 抱卵していた 6/28 巣から卵が落ちていて成鳥は付近を飛んでい
た 地上 118cm コジキッタナ島
1964.07.12 多摩川(野毛)
2巣
① 7 卵 7/16 抱卵中 7/22 3 卵が行方不明 7/23 2 卵孵化 7/25 1 卵雛 3 羽
7/30 雛3羽の内2羽が巣立っていた 8/1 雛3羽とも巣立っていた 8/2 雛 人
に捕られる 渡し場
② 5 卵 7/16 抱卵中 7/22 1 卵不明 4 卵 抱卵していた 7/25 2 卵孵化 7/28
雛 2 羽は人に捕られる
1965.07.25 多摩川(玉堤)
1巣
雛 5 羽 宮内多摩川のヨシの中で鳴いていた 7/27 雛が巣の中で全部死んで
いた
○主な観察記録
1952.05.04 多摩川
1羽
1960.05.22 上野毛 2
1羽
1989.05.24 多摩川(玉堤)
2羽
1993.07.19 多摩川
1羽
1997.07.19 多摩川(鎌田 1)
1羽
バンの池の水草の上を歩き水面をつついて小魚を捕る
1999.05.29 多摩川
2羽
雌雄がバンの池の縁にいたが川へ飛び立つ
2000.10.27 多摩川
1羽
2001.08.06 多摩川(鎌田 1)
1羽
幼鳥がバンの池の岸で小ブナを捕り頭から呑み込む
2003.10.16 多摩川(鎌田 1)
1羽
バンの池及びその周辺
2006.09.28 多摩川(玉川 1)
1羽
幼鳥 野川緑草地中州の水際
2007.08.10 多摩川(玉堤 1)
1羽
中州の水際で休んでいる
明神池の埋め立てた跡に降りる
13.オオヨシゴイ Ixobrychus eurhythmus Schrenck’s Bittern
サギ科
シベリア東部、朝鮮半島、中国、サハリンで繁殖し、冬季は東南アジア、フィリピンに渡る。日本
では、北海道、本州中部以北、佐渡島で繁殖するが、繁殖分布は局部的で個体数も減少している。本
州南部で越冬する。池や沼、川岸、休耕田などのヨシ、マコモ、ガマ類など背の高い単子葉植物が繁
茂する湿地に生息する。夜行性で日中は草むらの中に隠れている。早朝と夕暮れに水辺に出てきてじ
っと待ち伏せし、魚・カエル・エビ・バッタなどを採食する。
世田谷区では、1950 年後半から 1960 年代に観察された下記 3 例の記録がある。(東京都:Bランク、
環境省:準絶滅危惧 全記録数 3 件 1957、1968 年)
○観察記録
1957.09.22 多摩川(玉堤)
1羽
宮内多摩川でみる
1968.08.24 多摩川(玉堤)
2羽
コジキッタナ付近で見る
1968.10.27 多摩川(玉堤)
1羽
コジキッタナの草の中にいた
29
14.ゴイサギ Nycticorax nycticorax Night Heron
サギ科
日本では、夏鳥又は留鳥で、本州から九州まで数多く繁殖する。東北地方で繁殖するものは、冬に
南下する。4 月から 7 月にアマサギ、ダイサギ、チュウサギ、コサギなどと混生して集団繁殖するこ
とが多く、マツ林、雑木林、竹林などの樹上に営巣する。夜行性で昼間は水辺の雑木林や竹藪などで
群れをなして塒にする。夕方になってグワーと大きな声で鳴きながら飛び立つ。沼や沢、水田のヨシ
原に出て、昆虫・オタマジャクシ・カエル・ドジョウ・フナ・アメリカザリガニなどを採食する。養
魚場や庭の池などにも夜間に飛来する。
世田谷区では、年中生息している。秋から冬の多摩川、野川の木々や林でよく見られ、仙川、砧公
園、下馬、桜上水などの各地で飛翔しているのや、深夜鳴き声が観察されている。岡本、野毛、玉川
で集団塒も観察されている。(全記録数 2046 件 1948~2007 年)
○集団塒の記録
1962.12.12 岡本
120 羽
1963.03.17 野毛
60 羽
モウソウ竹林に止まっていた
1967.11.04 岡本
30 羽
八幡神社先のスギ林
1996~2001 玉川 3
約 26~65 羽
コサギとともに山林のスギに止まっている 八幡神社先
12 月から 3 月 川岸近くの大イチョウ周辺
○主な観察記録
1948.05.05 等々力渓谷公園
60 羽
18 時頃谷沢川上空を北方に飛行
1964.06.12 多摩川(玉堤)
1羽
夜、ギャーギャーと鳴き次にガァガァと鳴き飛び去った
1986.06.07 野川
1羽
写真
1995.06.26 仙川
1羽
定例調査
1997.05.02 砧公園
2羽
若鳥、成鳥
1997.06.01 下馬 4
1羽
ハシブトガラス 2 羽に追われ南西へ
2000.07.07 多摩川
1羽
川岸でオタマジャクシを 2 匹食べる
2003.06.11 高源院
1羽
若鳥 大きなコイを採食
2005.05.02 桜上水 3
1羽
23 時頃、自宅上空を鳴きながら通過 数不明
2006.10.18 野川(喜多見 7)
1羽
幼鳥が休息中
2007.12.17 玉川 3
7羽
幼鳥 5、成鳥 2 羽が川岸の林で休息
15.ササゴイ Butorides striatus Green-backed Heron
サギ科
アフリカ、アジアの温帯及び熱帯、北アメリカ南部から南アメリカ、ニューギニア、オーストラリ
アに分布する。日本では、主に夏鳥として本州から四国、九州で繁殖する。九州南部から南西諸島で
は越冬するものもいる。北海道でも記録がある。かつては普通に繁殖していたが、現在では著しく減
少している。4 月から 7 月に水辺近くのカワヤナギ、雑木林、マツ、スギなどの樹上に巣を造る。水
田、湖沼、川原、ヨシ原などの開けた水辺や浅瀬の中で獲物を待ち伏せて、魚・カエル・アメリカザ
リガニ・水生昆虫などを食べる。マツの小枝、木の葉、実、アヒルの羽毛などをくちばしでくわえて
水面に落とし、コイ・ウグイなどが餌と間違えて寄ってくるところを、水面に飛び込んで捕らえる行
動が観察されている。
世田谷区では、夏鳥として 5 月頃から 6 月に渡来し、11 月頃渡去するが、2000 年に越冬した例があ
る。多摩川で多く、野川、仙川、等々力渓谷、野毛などでも見られる。1957、1958 年に繁殖。2000
30
年以降は減少し、少数観察されるだけになる。(東京都:Bランク 全記録数 319 件 1938~2007 年)
○繁殖記録
1957.07.07 野毛
1巣
3 卵 7/18 5 卵になる 7/28 3 卵にひびが入る、2 卵行方不明 7/29
雛 1 羽孵る 2 卵孵化出来ず(1 卵は無精卵もう 1 卵は卵の中で雛が死亡)
8/3 雛行方不明 3 卵 谷沢天神山 マツに営巣 地上 8.17m 巣材 ケヤ
キの枝 産座はマツ葉 外径 42cm 内径 17.5cm
1958.07.07 野毛
1巣
3卵
○主な観察記録
1938.08.20 太子堂
1羽
1952.07.29 野毛
1羽
オナガ 1 羽に追われる 宮の森
1968.06.23 多摩川(玉堤)
2羽
コジキッタナ
1988.05.30 多摩川
1羽
1995.07.27 多摩川
2羽
1997.09.12 多摩川(玉堤 1)
2羽
じっと魚を狙っていた
2000.12.11~2001.02.19 多摩川
1羽
川岸のテトラポット付近で採餌
2003.07.29 仙川
2羽
2003.08.19 多摩川(上野毛 2)
5羽
2004.08.26 野川
1羽
2006.08.09 野川(成城 4)
1羽
成鳥
2007.09.07 多摩川(野毛 2)
1羽
河川上空を飛翔
成鳥 4、幼鳥 1 羽が中州の浅瀬にいて成鳥 1 羽が魚を捕る
16.アカガシラサギ Ardeola bacchus Chinese pond Heron
サギ科
中国からベトナム、ミャンマー東部にかけて分布する。北方のものは台湾、マレー半島、ボルネオ
に渡って越冬する。日本では、1960 年頃までの記録は 10 例にも満たず、迷鳥として渡来していた。
近年は観察記録が増え、観察季節も 9 月から翌年 2 月の冬季から 5 月、6 月の夏季に変化し、関東以
西の西日本で多く見られるようになる。熊本県(1981・1996)と秋田県(1986)で繁殖、又、神奈川県や
沖縄県で越冬も観察されている。沿岸や沿岸近くの水田、湿田、湖沼、河川など、水辺や湿った場所
に生息し、ドジョウやフナ・アメリカザリガニ・オタマジャクシ・カエル・トンボなどを採食する。
世田谷区では、夏季に多摩川で見られた下記 2 例の記録がある。(全記録数 4 件 1999、2005 年)
○観察記録
1999.06.03~07.06 多摩川(玉堤 1、野毛、玉川 3)
1羽
夏羽 下流から飛来し中州のヤナギや林に止る
2005.05.16 多摩川(玉堤 1)
1羽
夏羽 中州にいたが飛び立って下流へ
17.アマサギ Bubulcus ibis Cattle Egret
サギ科
アフリカ、スペイン、アジアの温帯及び熱帯、北アメリカ中部から南アメリカ、オーストラリア、
ニュージーランドに分布する。日本では、夏鳥として渡来し、本州から九州までの各地で繁殖する。
分布域を北に広げ 1973 年頃から北海道でも観察例が増えている。冬はフィリピンなど南方に渡るが、
西南日本や南西諸島では少数が越冬する。4 月から 9 月にゴイサギ、ダイサギ、チュウサギ、コサギ
31
などと混生して集団繁殖することが多く、マツ林、雑木林、竹林などの樹上に営巣する。農耕地や草
原、川原、湖沼などに生息するが他のサギ類に比べると乾いた草地を好む。水田やハス田の畦道や草
原で、イナゴ・バッタなどの昆虫やカエルを食べる。上下のくちばしには鋸歯状の細い切れ込みがあ
る。
世田谷区では、夏鳥として 4 月中旬から 5 月に渡来し、9 月下旬から 10 月に渡去する。春に観察例
が多く、繁殖期は少なくなる。全て多摩川で見られ、中州や川岸の草地で昆虫を採食しているのが観
察されている。(全記録数 145 件 1995~2007 年)
○主な観察記録
1995.05.03 多摩川
8羽
1996.05.16 多摩川(玉堤 1)
17 羽
1997.05.21 多摩川(野毛 3、鎌田 1)
1998.10.02 多摩川(玉堤 1)
夏羽が中州の草地で採食
夏羽 群れで川崎側から東京川に移動
2羽
26 羽
2001.06.07 多摩川
4羽
2002.10.24 多摩川(玉堤 1)
1羽
2003.09.25 多摩川
4羽
冬羽 川原の草地にいるがその内の 1 羽がカエルを捕る
中州にコサギ 29 羽と
2004.06.11 多摩川(野毛 2)
31 羽
夏羽の群れが川崎側から飛来し世田谷区街へ
2005.09.04 多摩川(玉堤 1)
1羽
冬羽 中州の草地でトンボを捕る
2007.10.02 多摩川(鎌田 1)
7羽
川岸でサギ群れと休息、しばらくして一斉に飛び立つ
18.ダイサギ Egretta alba Great Egret
サギ科
日本では、留鳥又は夏鳥として本州、四国、九州までの各地で繁殖する。シラサギ類 3 種の中では
分布域が最も狭く、冬は一部では越冬するが大部分が南方に移動する。河川、湖沼、水田、干潟など
に生息し、4 月から 9 月にアマサギ、チュウサギ、コサギなどと混生して集団繁殖することが多く、
マツ林、雑木林、竹林などの樹上に営巣する。魚類・両生類・甲殻類などを採餌する。
世田谷区では、年中観察されるが冬から初夏にかけて少なくなる。多摩川、野川、仙川でよく見ら
れ、砧公園、高源院、豪徳寺などで池や上空を飛翔しているのが観察されている。秋の多摩川で多く、
カワウが大群での漁をする周辺に集まり、カワウから逃れてきた魚を待ち受けてコサギと大きな群れ
で採食する。(東京都:Cランク 全記録数 2674 件 1958~2007 年)
○主な観察記録
1958.10.07 多摩川(野毛)
1羽
赤岩に降りていた
1963.01.03 多摩川(野毛)
3羽
渡し場
1970.01.05 多摩川(玉堤)
7羽
コジキッタナ
1986.06.01 馬事公苑
1羽
上空通過
1996.06.17 野川
20 羽
定例調査
1998.10.02 多摩川
66 羽
2000.10.21 多摩川
31 羽
2002.10.15 多摩川
73 羽
2003.11.19 多摩川
7羽
定例調査
2004.09.08 多摩川
40 羽
定例調査
カワウの群れが追い出した魚を奪い合って捕る
32
2006.09.08 仙川
1羽
定例調査
2007.12.05 野川
6羽
定例調査
19.チュウサギ Egretta intermedia Intermediate Egret
サギ科
朝鮮半島から中国、東南アジア、インド、オーストラリア、アフリカに分布する。日本では、夏鳥とし
て渡来し、本州から九州までの各地で繁殖する。近年、分布域を北に広げつつあり、1981 年頃から北
海道でも観察例が増えているが全国的には減少している。冬は南方に渡去するが、西南日本や南西諸
島では少数越冬する。平地の水田、湿地、大きな河川に生息する。4 月から 9 月にアマサギ、ダイサ
ギ、コサギなどと混生して集団繁殖することが多く、マツ林、雑木林、竹林などの樹上に営巣する。
昼行性で、浅瀬を静かに歩きながら餌を探し、昆虫・クモ類・ドジョウ・フナ・アメリカザリガニ・
カエルなどを食べる。
世田谷区では、夏鳥として 4 月頃に渡来し 10 月から 11 月に渡去する。多摩川でよく見られ、野川
や馬事公苑で見られたこともある。秋に多く、川岸や中州の草地で主に昆虫を捕るのが観察されてい
る。(東京都:Bランク、環境省:準絶滅危惧 全記録数 347 件 1953~2007 年)
○主な観察記録
1957.08.27 多摩川(野毛)
40 羽
群れが赤岩上空を上流より下流に飛行
1978.05.01 馬事公苑
1羽
上空を飛翔
1990.09.12 多摩川(玉堤)
8羽
1996.08.05 多摩川(玉堤 1)
10 羽
川岸に群れていた
1998.08.10 多摩川(野毛 2)
12 羽
中州で休んでいる
2000.04.06 多摩川
2001.08.24 多摩川(野毛 1)
2004.10.08 野川
2005.08.14 多摩川
2006.10.13 多摩川(玉堤 1)
2007.09.19 多摩川
2羽
17 羽
1羽
14 羽
6羽
14 羽
中州
川岸にいてその内の 1 羽がミミズを捕る
大正橋~水道橋
ダイサギ 6、コサギ 15、アオサギ 2 羽と混群
川岸のアレチウリの上でバッタを捕る
定例調査
20.コサギ Egretta garzetta Little Egret
サギ科
日本では、留鳥又は夏鳥として本州、四国、九州までの各地で繁殖する。低地や山地の水田、湖沼、
河川、干潟などの水辺に生息し、4 月から 9 月にアマサギ、ダイサギ、チュウサギなどと混生して集
団繁殖することが多く、マツ林、雑木林、竹林などの樹上に営巣する。川の浅瀬や水田を歩いてドジ
ョウ・フナ・ウグイ・オイカワ・カエル・アメリカザリガニなどを採食。
世田谷区では、年中観察されるが冬から初夏にかけて少なくなる。多摩川、野川、仙川で多く、砧
公園、等々力渓谷、馬事公苑、大蔵、成城、桜丘など区内各地の川や池、上空などで観察されている。
秋の多摩川で特に多く、カワウが大群で漁をする周辺に集まり、カワウから逃れてきた魚を待ち受け
てダイサギと大きな群れで採食する。区内に営巣地はないが 6 月から 8 月に幼鳥が観察される。(全記
録数 3543 件 1951~2007 年)
33
○主な観察記録
1951.09.21 多摩川(玉堤)
1羽
1957.08.15 上北沢
57 羽
1963.01.25 多摩川(玉川)
18 羽
1979.12.09 多摩川
1羽
1995.12.25 砧公園
20 羽
2000.10.13 多摩川
119 羽
2001.02.22 野川
21 羽
八丁堤に降りていた
二子玉川上流
二子橋上流 灰色型
内 77 羽が川岸でカワウの群れが漁をしている傍らに集まり魚を捕る
定例調査
2002.10.25 多摩川
278 羽
2003.07.03 多摩川
16 羽
2004.11.17 多摩川
134 羽
定例調査
2006.09.08 仙川
7羽
定例調査
2007.12.05 野川
47 羽
定例調査
この内 6 羽が幼鳥
21.カラシラサギ Egretta eulophotes Chinese Egret
サギ科
朝鮮半島、中国中南部で繁殖し、東南アジア、フィリピン、ボルネオ、セレベスで越冬する。日本
では、迷鳥又は旅鳥として 4 月から 9 月に渡来し、北海道から九州、南西諸島まで各地で観察されて
いる。単独でいることが多く、入り江、干潟、河川、海岸近くの湿地や水田に生息し、魚類やエビ・
シャコなどの甲殻類を採食する。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(環境省:準絶滅危惧 全記録数 3 件 2002 年)
○観察記録
2002.04.18~26 多摩川
1羽
22.クロサギ Egretta sacra Pacific Reef Egret
サギ科
東アジア、東南アジア、オーストラリア、ミクロネシアに分布。日本では、本州以南の海岸に留鳥
として生息し、局地的に繁殖する。北海道でも記録がある。本種には全身が黒っぽい黒色型のほか全
身が白い白色型もあり、白色型は暖地にいくほど多く沖縄本島では 6 割以上が白色型となる。岩の多
い海岸や岩礁、サンゴ礁に生息し、4 月から 7 月に海岸の岩棚や岩場に生えた樹木の上で営巣する。
水際をゆっくり歩き、魚類・カニ・イソガニ・貝などを採食する。
世田谷区では、多摩川で見られた下記 3 例の記録がある。(全記録数 4 件 1968~2002 年)
○観察記録
1968.11.03~10 多摩川(玉堤)
1羽
中州に降りていたが発見後すぐ上流に向かって飛び去る コジキッタナ
1976.02.19 多摩川
1羽
写真
2002.09.20 多摩川(玉川 1)
1羽
黒色型 中州の岸で休んでいる
34
23.アオサギ Ardea cinerea Grey Heron
サギ科
日本では、北海道、本州、四国、九州で繁殖する。北海道は夏鳥、本州、四国、九州では留鳥、南
西諸島では冬鳥。河川、湖沼、水田、干潟などに生息し、水辺の樹上で休むことが多い。夕方は川の
中州に集まって眠る。4 月から 9 月にゴイサギ、ダイサギなどと混生して集団繁殖することもあるが、
同種だけでコロニーをつくる方が多い。昆虫・魚類・両生類・甲殻類などを採食する。
世田谷区では、年中見られるが冬から初夏は少ない。多摩川、野川、仙川でよく見られ、砧公園、
馬事公苑の池などでも見られる。2004 年頃から個体数が増加し、秋の多摩川では群れが観察されるよ
うになる。(全記録数 1908 件 1963~2007 年)
○主な観察記録
1963.10.31 多摩川(野毛)
1羽
谷沢川流れ出し先島
1986.11.01 馬事公苑
1羽
池の縁のヒマラヤスギに止まっている
1991.10.20 岡本静嘉堂周辺
3羽
1992.01.05 野川
10 羽
1995.02.11 野川
3羽
1998.11.17 仙川
3羽
2001.09.14 多摩川
定例調査
11 羽
2004.04.21 桜上水 3
1羽
17:30 頃、自宅上空を多摩川方面へ
2006.11.15 多摩川
14 羽
定例調査
2007.11.21 多摩川
35 羽
定例調査
24.ナベコウ Ciconia nigra Black Stork
コウノトリ科
ユーラシア大陸の中緯度地方、アフリカ大陸南部で繁殖し、冬はインド、中国南部に渡る。日本で
は、ごく稀に迷鳥及び冬鳥として渡来し、北海道から沖縄まで各地に記録がある。深い林内の湖沼や
河川、水溜り、湿地などで生活し、樹上に枝を堆積した巣を造る。淡水域で主にドジョウ・カワカマ
スなどの魚類や両生類・爬虫類・昆虫・巻貝類などを食べる。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。この記録時は約 2 週間多摩川に留まり、世田谷区のほかに
狛江市、府中市でも観察されている。(全記録数 1 件 1990 年)
○観察記録
1990.10.29 多摩川
1羽
上空を旋回する 調布堰から第三京浜道多摩川橋まで
カモ科 ANATIDAE
世田谷区内において、1910 年から 2008 年まで記録されたカモの種類はマガン、ヒシクイ、サカツ
ラガン、コハクチョウ、オシドリ、マガモ、カルガモ、コガモ、トモエガモ、ヨシガモ、オカヨシガ
モ、ヒドリガモ、アメリカヒドリ、オナガガモ、シマアジ、ハシビロガモ、ホシハジロ、アカハジロ、
キンクロハジロ、スズガモ、ビロードキンクロ、ホオジロガモ、ミコアイサ、ウミアイサ、カワアイ
サの 25 種である。
野鳥ボランティアは 2002 年より年間を通して多摩川、野川、仙川のセンサス調査を行った。2002
~2008 年の 7 年間、カモ類の個体数が安定している 1 月中旬(多摩川調査)、2 月上旬(野川、仙川調査)
35
のセンサス記録をもとに増減の傾向をまとめた。
これまで、区内で 25 種のカモ類が観察されているが、月 1 回のセンサス調査で記録された種類は
14 種であった。1 月・2 月のセンサス調査で観察できなかった残りの 11 種は、ほかの月のセンサス調
査、又は、個人観察により記録されたものである。
1)三河川のカモ種類構成
2002~2008 年センサス調査結果は、コ
オナガガモ
11.0%
ガモが最も多く 3043 羽 33.7%、次はヒ
ドリガモ 2369 羽 26.3%、カルガモ 2282
その他
3.7%
コガモ
33.7%
羽 25.3%、オナガガモ 992 羽 11.0%、そ
の他(マガン、マガモ、トモエガモ、ヨシ
ガモ、オカヨシガモ、ハシビロガモ、キ
ンクロハジロ他) 336 羽 3.7%となった
カルガモ
25.3%
(図Ⅲ-1.カモの種類構成比)。又、上位 4
ヒドリガモ
26.3%
種に次いで優占度の高いマガモ、オカヨ
シガモ、ハシビロガモの 3 種を含め、目
n=9,022
図Ⅲ-1.カモの種類構成比
録№30、31、32、35、36、38、40 にそれ
ぞれの種の経年変化の図を入れた。
羽数
河川合計
1800
1600
1400
1647
1570
多摩川
仙川
1451
野川
1357
1200
1311
909
1000
800
777
600
400
200
0
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008年
図Ⅲ-2.河川別個体数の経年変化
2)カモ科の三河川経年変化
三河川(多摩川、野川、仙川)の経年変化を見ると、2006 年までは平均 1,460 羽台で増加傾向にあっ
たが、2006 年をピークに急に減少した。2006 年は観察個体数と種数も増加した年であったが、2007、
36
2008 年は 1000 羽を割り込んでいる。
河川別にカモの経年変化を見ると、多摩川は 2006 年まで増加傾向にあり、特に 2006 年は増加が目
立った。しかし、その後急激に減少している。野川は 2002 年をピークに、仙川は 2003 年をピークに
減少が続き、2007 年よりやや増加傾向が見られる(図Ⅲ-2.河川別個体数の経年変化)。
3)カモの河川別構成
2002~2008 年の三河川累計は 9,022 羽とな
野川
18.7%
った。河川別に構成を見ると多摩川は 3,856
羽 42.7%、仙川は 3,476 羽 38.5%、野川は
1,690 羽 18.7%となっている(図Ⅲ-3.カモ類
多摩川
42.7%
の河川別構成比)。 世田谷区内の構成では、主
河川である多摩川に次ぎ、仙川、野川の順と
なる。仙川は個体数及び種数とも、多摩川と
並ぶ貴重な越冬河川である。
仙川
38.5%
n=9,022
図Ⅲ-3.カモ類の河川別構成比
25.マガン Anser albifrons White-fronted Goose
カモ科
ユーラシアと北米大陸の一部の寒帯で繁殖し、
日本には冬鳥として本州以南に 10 月上旬頃渡来し、
翌春の 3 月下旬頃に渡去する。北海道では旅鳥、本州で越冬する。主な越冬地は宮城県伊豆沼・蕪栗
沼・石川県片野鴨池などであるが、全国的に渡来記録がある。1971 年に国の天然記念物に指定された。
繁殖地では広大なツンドラ地帯の中州・沼沢地の草むらに、灌木の枝、地衣類、草などを主材に皿形
の巣を造り、産座に自分の胸や腹の綿羽や羽毛を敷く。つがいの結束は強く、越冬地でもつがいと幼
鳥の家族単位で行動する。夜間は安全な池や沼で休息し、早朝に広い水田地帯へ群れで移動、地上で
歩きながら稲の落穂をついばんだり、池や沼でマコモの実など植物質の餌を食べたりする。又、異常
寒波や積雪が多い年には更に南へ分散移動することが知られている。
世田谷区では、稀な冬鳥である。越冬例を含めて下記 3 例の記録がある。(東京都:Cランク、環境省:
準絶滅危惧 全記録数 51 件 1975~2006 年)
○観察記録
1975.02.16 多摩川
1羽
写真
2004.01.16~03.26 多摩川
1羽
若鳥
2006.10.10 多摩川(上野毛 2)
14 羽
成鳥 2、若鳥 2、幼鳥 10 羽が中州で休んでいたが、その後隊列を組んで
上流へ飛び立つ
37
26.ヒシクイ Anser fabalis Bean Goose
カモ科
ユーラシア大陸の亜寒帯から寒帯で広く繁殖し、日本には冬鳥として 9 月下旬から 10 月上旬に渡
来し、翌春の 4 月下旬から 5 月上旬頃渡去する。北海道では旅鳥で本州の限られた地域で越冬する。
主な越冬地は、宮城県伊豆沼、新潟県福島潟、石川県片野鴨池、滋賀県琵琶湖などがある。関東では、
小規模ではあるが、オオヒシクイの越冬地が茨城県江戸崎の水田地帯にある。昼間は見通しのよい広
い農耕地や安全な湖沼、河川で休息し、朝夕に小群、大群で農耕地に移動採餌する。食性はマガンと
ほぼ同じで、水田地帯の落ち穂や水生植物・藻類など植物性のものが主食である。
世田谷区では、多摩川で観察された下記 1 例の記録がある。(東京都:Cランク、環境省:絶滅危惧Ⅱ類
全記録数 1 件 2006 年)
○観察記録
2006.01.12 多摩川(玉川 1)
6羽
亜種オオヒシクイ 上流から飛来し通過する
27.サカツラガン Anser cygnoides Swan Goose
カモ科
中国東北部からウスリー、サハリンにかけて繁殖し、日本には稀な冬鳥として北海道、本州、九州、
南西諸島に渡来する。1950 年までは東京湾に定期的に渡来していた。繁殖地では中州、湖沼中の小島
の草むらの地上に営巣し枯草の茎を主材に皿状の巣を造る。水生植物・陸生植物・藻類など植物性の
ものが主食である。家禽として広く飼育されているシナガチョウは本種を原種とし、中国で改良され
たものである。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(環境省:情報不足 全記録数 1 件 2005 年)
○観察記録
2005.04.09 多摩川(上野毛 2)
1羽
上空を上流方面へ飛ぶ
28.コハクチョウ Cygnus columbianus Tundra Swan
カモ科
ユーラシアと北米大陸の寒帯で広く繁殖し、日本には冬鳥として 10 月頃に渡来し、翌春の 4 月頃
渡去する。北海道では旅鳥で本州の北日本や日本海側の地方で越冬する。主な越冬地には青森県小川
原湖、福島県猪苗代湖、石川県河北潟、島根県中海などがある。湖沼、内湾、農耕地、河川などで越
冬する。群れで生活し、家族の絆が強い。
世田谷区では、冬鳥として稀に渡来する。多摩川で見られ、越冬した例を含め下記 7 例の記録があ
る。(全記録数 136 件 1991~2005 年)
○観察記録
1991.02.20~04.15 多摩川(玉堤)
1羽
若鳥
1991.11.01 多摩川
1羽
若鳥 1992 年 3 月まで
1996.10.28~1997.04.18 多摩川(鎌田 1・2)
1羽
若鳥
1999.11.09 多摩川(野毛 2)
2羽
成鳥、幼鳥が下流より飛来し中州でくちばしを背に入れて休息
2002.10.24 多摩川(玉堤 1)
6羽
成鳥 天候不順のために降りる
2004.10.24 多摩川(玉川 3)
7羽
上空を低空で下流へ通過す
2005.10.23 多摩川(玉堤 1)
6羽
成鳥 4、幼鳥 2 羽が中州の草地で採餌や休息
38
29.オシドリ Aix galericulata Mandarin Duck
カモ科
中国東北部からウスリー、サハリンで繁殖し、日本でも北海道、本州、九州、沖縄で普通に繁殖す
る。北海道では夏鳥で、冬季は暖地に移動する。冬鳥として大陸から渡来する個体もある。山間の渓
流や山地の湖などに生息し、開けた水面に出ることを好まず、木陰に隠れるようにしていることが多
い。身近では井の頭公園で周年観察される。他のカモ類よりよく木に止まり、木の上を塒とする。繁
殖期には水辺の木の樹洞に営巣するが、
巣箱もよく利用し、
市街地の公園でも繁殖するケースがある。
穴の中には枯草で円形皿型の巣を造り、自分の羽毛を敷く。孵化した雛はすぐ歩くことができ、巣穴
から飛び降り、親鳥に連れられ水辺に向かう。主に植物質のものを餌とし、色々な草木の実を食べる
が、特に、カシ類、ナラ類のドングリを好む。水生昆虫など動物質のものを食べることもある。越冬
期には数十羽から数百羽の群れをつくることもあり、公園の池などにも現れる。稀には海に出ること
もある。
世田谷区では、冬鳥として稀に飛来する。1960 年頃までは等々力渓谷、谷沢川、丸子川でしばしば
観察されている。1995 年頃までは砧公園、深沢 8 (無原罪特別保護区)などでも例年観察されたが、以
降、移動途中と思われる個体が稀に多摩川、仙川、砧公園に飛来するだけになっている。又、夏季に
も見られることがあり、仙川では雄 1 羽が繁殖羽で飛来し、エクリプスに換羽するまで留まった例が
ある。(東京都:Cランク、環境省:情報不足 全記録数 86 件 1949~2007 年)
○主な観察記録
1949.01.17 等々力渓谷公園
3羽
夕方、谷沢川上流より下流へ鳴きながら飛来し滝の上流に着水
1953.11.22 等々力渓谷公園
6羽
群が瀧の山谷沢川上空に飛来する
1959.11.01 野毛
12 羽
2、4、6 羽の群れ 南から北へ飛ぶ 新田
1992.01.18 深沢 8
16 羽
無原罪特別保護区
1994.03.18 砧公園
11 羽
雄 8、雌 3 羽
1998.11.02 多摩川(野毛 2)
2羽
雄 2 羽 中州で羽づくろい
1999.07.01~12 多摩川
1羽
雄 銀杏羽なし
2004.05.15~08.13 仙川(給田 2)
1羽
雄 繁殖羽で飛来し、約 3 ヶ月滞在エクリプスに換羽する
2006.03.11 多摩川(上野毛)
1羽
雌
2006.03.29 砧公園
10 羽
雄 5、雌 5 羽 サンクチャリ池
30.マガモ Anas platyrhynchos Mallard
カモ科
広くユーラシア大陸から北米大陸で繁殖し、日本には主に冬鳥として 9 月中旬から 10 月上旬頃多
数渡来し、翌春の 3 月中旬から 4 月下旬頃渡去する。日本には大部分がシベリアから渡来する。北海
道や本州の山地で繁殖するものもある。本州以南、南西諸島まで冬鳥として広く分布し、湖、沼、大
きな川、内湾の海上など開けた水面に群れていることが多い。昼間は安全な水面で休んでいることが
多く、夜間に湿地、水田、湖沼の岸などで地上を歩き、草の実をついばんだり、泳ぎながら首を水中
につっ込み水草を食べたりする。繁殖期には本州では山地の、北海道では平地から山地の湖沼で生活
し、
岸辺の草むらやササ藪の中の地面に枯草やササの葉で皿形の巣を造り自分の胸や腹の綿羽を敷く。
家禽としてよく飼育されるアヒルは古い時代、中国やエジプトで本種を原種としてつくりだされた
ものである。現在家禽として広く飼育されているナキアヒルは欧州で家禽化したものを輸入し、日本
で改良されたもので、アイガモなどと呼ばれている。その他、白色ペキンダックは中国原産のものを
39
イギリスやアメリカで改良されたものといわれる。ナキアヒル(アイガモ)には繁殖するものもあり、
野生のマガモと区別できないことも多い。
世田谷区では、冬鳥として 10 月に渡来し、翌年の 3 月中旬から 4 月中旬頃渡去する。多摩川、野
川、仙川などの浅瀬で水中の水草・藻・苔・岸辺の草や草の実などを食べているのが見られる。過去
に高源院の池や砧公園の池でも観察された。本来、大きな群れで生活するが、当地では数羽の群れで
観察されている。(全記録数 1228 件 1952~2007 年)
○主な観察記録
羽
1952.11.04 多摩川(玉堤)
3羽
下流から上流へ
1962.12.21 高源院
2羽
雌雄
1989.01.17 多摩川(玉堤~玉川)
6羽
カモ類調査
1992.01.18 多摩川
6羽
二子橋下流
1993.03.10 砧公園
2羽
1995.02.11 野川
7羽
1998.12.13 野川
12 羽
2001.02.21 多摩川
33 羽
35
30
19
20
18
15
10
定例調査
14
10
3
0
2002
2002.02.24 仙川
5羽
定例調査
2004.01.21 多摩川
6羽
定例調査
10 羽
定例調査
2007.02.07 野川
40
2003
2004
2005
2006
2007
2008年
図Ⅲ-4.マガモの経年変化
31.カルガモ Anas poecilorhyncha Spot-billed Duck
カモ科
日本では、北海道から南西諸島まで広く分布し、北海道では大半が夏鳥である。それ以外の地方で
は周年見られ、湖沼、河川、水田、海岸などに生息する。草むらや藪の多い水辺、特に水田に多い。
繁殖期は 4 月から 7 月で、水辺近くの草むらや休耕田、竹藪など地上に枯草や枯葉で円形の巣を造り
その上に自分の羽毛を敷く。孵化した雛はすぐ歩くことができ、親鳥に導かれ水辺に向かう。雑食性
で水生昆虫や魚卵など様々な動物質の餌も食べるが、水蘚・水草・草の茎・種子などが主要食である。
世田谷区では、留鳥として多摩川、野川、仙川、丸子川のほか、小さな河川、公園、寺院の池など
で普通に見られ繁殖する。
5 月頃から 8 月の繁殖期には小さな雛を連れた群れの姿がよく観察される。
区内の小河川が雷雨などで水位が急上昇すると、多摩川に一時退避し群れをつくることがある。(全記
録数 4133 件 1949~2007 年)
○主な繁殖記録
羽
1968.05.26 高源院
1組
雛2羽
1997.07.15 多摩川
5組
雛 20 羽
1999.05.29 野川
1組
雛8羽
2000.06.30 多摩川
3組
雛各 4、7、9 羽
2001.06.05 丸子川(岡本)
1組
雛4羽
2002.05.15 成城
1巣
9 卵湧水の流れの傍
2006.06.15 仙川
6組
雛 31 羽
2006.07.16 呑川緑道
雛 11 羽
2006.07.18 駒沢公園
2組
日体大横
雛7羽
500
443
401
400
300
372
283
254
200
269
260
2007
2008年
100
0
2002
2003
2004
2005
図Ⅲ-5.カルガモの経年変化
2006
40
2007.07.09 仙川
4組
雛 21 羽
1羽
18 時頃自宅上空
○主な観察記録
1949.05.29 野毛
1968.01.19 高源院
20 羽
1989.01.17 多摩川(玉堤~玉川)
88 羽
1991.10.20 岡本静嘉堂周辺
22 羽
1995.06.26 仙川
150 羽
1996.03.28 砧公園
10 羽
1997.12.01 多摩川
265 羽
2002.02.24 仙川
199 羽
2002.03.17 八幡山
2羽
カモ類調査
定例調査
定例調査
かまのくち緑地
2004.02.04 野川
126 羽
定例調査
2006.04.19 多摩川
123 羽
定例調査
2007.09.03 仙川
163 羽
32.コガモ Anas crecca Teal
カモ科
ユーラシア大陸北部と北アメリカ北部で繁殖する。日本では、北海道と本州の山地で繁殖するが、
多くは冬鳥として北海道から南西諸島まで渡来する。湖沼、川などで生活し、市街地の公園の池など
でも見られる。広い湖沼にいる場合は奥まった入り江の岸辺にいることが多い。繁殖地では山間の池
に生息し、地上の草むらに枯草などで円形の巣を造り、自分の胸・腹の羽毛を敷く。浅瀬を歩いたり
泳いだりして水蘚や岸辺の草の葉・イネ科植物の実などを食べる。
世田谷区では、冬鳥として 9 月に渡来し、翌年の 5 月の中旬頃渡去する。カモの仲間では一番早く
渡来し、渡去は一番遅い。多摩川、野川、仙川で多く、その他砧公園などで見られる。1990 年頃まで
高源院に多数が渡来していたが、今では見られなくなった。(全記録数 2518 件 1950~2007 年)
○主な観察記録
羽
1950.09.29 多摩川
4羽
1968.01.19 高源院
170 羽
1989.01.17 多摩川(玉堤~玉川)
329 羽
1992.09.18 砧公園
800
カモ類調査
600
500
60 羽
400
1993.02.22 野川
235 羽
定例調査
300
1997.01.22 仙川
424 羽
定例調査
200
1998.01.19 多摩川
1羽
2000.03.10 多摩川
380 羽
2004.02.04 野川
716
700
アメリカコガモ
517
396
362
420
360
272
100
0
2002
82 羽
定例調査
2006.01.18 多摩川
574 羽
定例調査
2007.12.05 仙川
147 羽
定例調査
2003
2004
2005
図Ⅲ-6.コガモの経年変化
2006
2007
2008年
41
33.トモエガモ Anas formosa Baikal Teal
カモ科
シベリア東部で繁殖し、日本では冬鳥として 10 月頃渡来し翌年の 4 月頃渡去する。全国的に記録
されているが、一般に数は少ない。石川県など日本海側に多く渡来し、太平洋側では少ない。湖沼、
川、池などで生活し、少数の時はコガモの群れに混じり行動している。習性もコガモに似て、昼間は
安全な水面におり、夕方、夜間、早朝などに水辺や水田などで採餌する。
世田谷区では、冬鳥として稀に多摩川に渡来する。渡り途中と思われ滞在期間が短く、個体数も少
ない。1996 年 1 月に渡来した雌雄は 3 月まで滞在した。(東京都:Cランク、環境省:絶滅危惧Ⅱ類 全記録
数 51 件 1954~2006 年)
○主な観察記録
1954.04.08 多摩川(玉堤)
1羽
1996.01.06~04.03 多摩川(野毛 2~玉川 1)
1~2 羽
コジキッタナのに降りていて上流に飛び立つ
雌雄
1996.12.08 多摩川
1羽
雌
1998.12.28 多摩川(玉堤 1)
2羽
雄 1、雌 1 羽 ヒドリガモの群れの中で休んでいた
2005.01.07 多摩川(玉堤 1)
7羽
雄 2、雌 5 羽
2005.12.22 多摩川
1羽
雄 中州の水際
2~3 羽
定例調査 雌雄
2006.01.18~19 多摩川
34.ヨシガモ Anas falcata Falcated Duck
カモ科
シベリア東部、サハリン、カムチャッカなど、東アジアの比較的狭い地域で繁殖し、日本には冬鳥
として渡来する。北海道では少数の個体が繁殖している。繁殖地では水辺の草むらや藪の中の地上に
枯草で円形の巣を造り、自らの羽毛を敷く。越冬地では湖沼や川に生息し、内湾で見られることも多
い。昼間は他のカモと一緒に安全な水面で、休息したり、水面や水中で採餌をしたりして過ごし、夜
間から早朝にかけて水田や湿地などで採餌する。餌は水辺の草や水草・イネ科植物の実など植物質の
ものが主体である。
世田谷区では、冬鳥として 10 月から 11 月に渡来し、翌年の 4 月中旬に渡去する。2000 年頃から個
体数が減少し、渡りの時期が不定期になる。多摩川と仙川で少数見られる。(東京都:Cランク 全記録
数 807 件 1992~2007 年)
○主な観察記録
1992.01.18 多摩川
1羽
二子橋上流
1995.03.05 多摩川
1羽
雄
1996.01.25 多摩川
3羽
雄 1、雌 2 羽
1997.01.02 多摩川
5羽
雄 2、雌 3 羽
1998.03.02 仙川
3羽
2000.04.10 多摩川
2羽
2001.01.29 多摩川
3羽
雌
2002.02.20 多摩川
1羽
定例調査
2005.11.06 多摩川
1羽
雌
2006.02.02 多摩川(玉堤 1)
1羽
雄 中州でコガモと休んでいる
2006.11.10~2007.03.24 仙川(祖師谷 3~5)
1羽
雄 エクリプスから繁殖羽に換羽し渡去する
42
35.オカヨシガモ Anas Strepera Gadwall
カモ科
ユーラシアと北米大陸の温帯から亜寒帯で繁殖し、日本には冬鳥として渡来する。北海道で少数が
繁殖している。湖沼や川などに生息し、他のカモ類の群れに混じり昼間は安全な水面で休息したり、
水面や水中の水草などを食べたりして過ごす。夜間は水田や湿地などで採餌する。餌は植物質のもの
が主体で、イネ科の植物の実や水草の茎や葉などである。
世田谷区では、冬鳥として 10 月から 11 月に渡来し、翌年の 4 月中旬に渡去する。例年、少数が多
摩川に渡来するが、野川、仙川など小河川や公園、寺院の池などにはほとんど入らない。2003 年頃か
ら減少する。(全記録数 1091 件 1988~2007 年)
○主な観察記録
1989.01.17 多摩川(玉堤~玉川)
45 羽
1994.12.17 多摩川
5羽
1995.12.22 多摩川
35 羽
1996.03.19 多摩川
40 羽
1997.02.20 多摩川
47 羽
1998.01.21 多摩川
22 羽
2000.03.10 多摩川
80 羽
カモ類調査
雄 3、雌 2 羽
羽
25
25
20
18
15
13
10
10
5
5
0
0
2002.03.07 多摩川
32 羽
2003.03.19 多摩川
8羽
2005.01.27 多摩川
7羽
2007.12.06 多摩川(玉川 1)
7羽
2002
定例調査
2003
2004
2005
2006
2007
0
2008年
図Ⅲ-7.オカヨシガモの経年変化
雄 4、雌 3 羽
36.ヒドリガモ Anas penelope Wigeon
カモ科
ユーラシア大陸の亜寒帯から寒帯で繁殖し、日本には冬鳥として全国に渡来する。越冬地では内湾、
湖沼、川などで生活し、淡水ガモの中では海に出る傾向が強い。日中は湖沼の中央陸に上がって休息
していることが多く、岸辺や中州などの青草をくちばしでむしって食べる。夕方、採食場の水田や河
川などに飛び立ってゆく。海岸で生活している個体は、夜に海上に出て海苔などの海藻類を好んで食
べる。
世田谷区では、冬鳥として 9 月下旬から 10 月上旬に渡来し、翌年の 4 月中旬から 5 月上旬に渡去
する。多摩川、仙川、野川で見られ、多摩川に多い。
中州や河岸、グランドなどで群れで草を採食している
のが観察されている。
多摩川では 2006 年から急激に減
527
500
400
○主な観察記録
369
387
300
1羽
426
398
少する。(全記録数 2358 件 1954~2007 年)
1954.09.09 多摩川
羽
600
捕獲
200
1989.01.17 多摩川(玉堤~玉川)
1991.02.28 野川
299 羽
8羽
1996.02.03 多摩川
570 羽
1997.02.14 多摩川
635 羽
122
カモ類調査
100
140
0
2002
2003
2004
2005
2006
図Ⅲ-8.ヒドリガモの経年変化
2007
2008年
43
1999.01.31 仙川
36 羽
定例調査
2001.02.22 野川
12 羽
定例調査
270 羽
定例調査
2006.02.01 野川
60 羽
定例調査
2007.02.07 仙川
95 羽
定例調査
2004.01.21 多摩川
37.アメリカヒドリ Anas americana American Wigeon
カモ科
北米大陸で繁殖し、日本には、毎年冬鳥として少数が北海道から南西諸島まで渡来する。ヒドリガ
モの群れに混じり少数が見られる。湖沼、河川、内湾に生息する。
世田谷区では、冬鳥として稀に渡来する。多摩川、野川、仙川で、1~2 羽がヒドリガモの群れの中
にいるのが観察されている。(東京都:Cランク 全記録数 217 件 1989~2005 年)
○主な観察記録
1989.12.23 多摩川(玉堤)
1羽
雄
1991.02.28 野川
1羽
1992.02.28 野川
1羽
1996.03.14 多摩川
2羽
1997.04.21 多摩川
1羽
1998.03.07 多摩川
1羽
雄
2002.02.18 多摩川
1羽
雄
2003.01.13 多摩川
1羽
2004.11.16 仙川
1羽
2005.01.19 多摩川
1羽
定例調査
雄 定例調査
38.オナガガモ Anas acuta Pintail
カモ科
ユーラシアと北米大陸の亜寒帯から寒帯で広く繁殖し、日本には冬鳥として北海道から南西諸島ま
で毎年多数が渡来し、湖沼、河川、内湾などに生息する。カモに給餌している市街地の小河川、公園
の池などに多数が集まっている。自然の状態では水草の葉や茎、水際の草の実を食べる。長い首を利
用し、水底の餌を採る逆立ち採餌の姿がよく見られる。
世田谷区では、冬鳥として 10 月中旬頃渡来し、翌年
羽
の 3 月下旬には渡去する。多摩川、野川、仙川などで
250
多数観察されているが、減少傾向にある。
200
(全記録数 1819 件 1968~2007 年)
214
100
40 羽
1989.01.17 多摩川(玉堤~玉川)
594 羽
1991.02.28 野川
176 羽
1995.11.21 多摩川
203 羽
1996.02.06 仙川
170
150
○主な観察記録
1970.02.28 多摩川
170
265 羽
カモ類調査
110
133
125
70
50
0
2002
定例調査
2003
2004
2005
2006
図Ⅲ-9.オナガガモの経年変化
2007
2008年
44
1997.02.11 野川
91 羽
定例調査
2001.02.25 仙川
138 羽
定例調査
2002.02.15 野川
12 羽
定例調査
2004.02.04 仙川
113 羽
定例調査
2006.01.18 多摩川
140 羽
定例調査
62 羽
定例調査
2007.12.05 仙川
39.シマアジ Anas querquedula Garganey
カモ科
ユーラシア大陸の温帯から亜寒帯で広く繁殖する。日本では、主に旅鳥として渡来し、南西諸島で
は越冬するものもいる。4 月頃と 8 月から 10 月頃の記録が多いが、数は少ない。北海道根室と愛知県
鍋田で繁殖した記録がある。コガモの群れに混じり、湖沼、川、内湾などで少数が記録されている。
世田谷区では、旅鳥として春と秋に稀に立ち寄る。多摩川でコガモやカルガモの群れの中にいるの
が観察されている。春より秋に観察例が多い。(東京都:Cランク 全記録数 18 件 1982~2007 年)
○主な観察記録
1982.04.12 多摩川
3羽
雄 2、雌 1 羽
1995.09.05 多摩川(玉川 1)
1羽
雌型
1996.10.05 多摩川
1羽
雌 コガモ 8 羽の群れの中にいた
1998.10.15 多摩川
1羽
雌 新二子橋付近
1999.10.04 多摩川(玉堤 2)
1羽
雌 谷沢川合流付近
2003.09.26~10.13 多摩川
1羽
雌
2005.04.12 多摩川
1羽
2007.04.26 多摩川(玉堤 2)
1羽
雄が川岸で休んでいる
40.ハシビロガモ Anas clypeata Shoveler
カモ科
ユーラシア大陸と北米大陸西半の亜寒帯から寒帯で繁殖し、日本には、北海道では旅鳥であるが、
本州から南西諸島、大東列島まで冬鳥として広く渡来する。繁殖地では水辺近くの草地の乾いた地上
に営巣する。越冬地では湖沼、河川で生活するが、海上で見られることもある。富栄養な比較的浅い
水面で、円を描きながら泳ぎ、くちばしを水に付けすくうように採餌する。幅広いくちばしでプラン
クトンや小さな草の実などを水と一緒に吸い込み、くちばしの上下についているたくさんの薄板でこ
し取って食べる。
世田谷区では、
冬鳥として 10 月中旬から 11 月上旬に渡来し、
翌年の 3 月中旬から 4 月頃渡去する。
多摩川、野川、仙川で少数観察されている。(全記録数 1237 件 1948~2007 年)
○主な観察記録
1948.03.30 多摩川(野毛)
2羽
渡し場
1989.01.17 多摩川(玉堤~玉川)
36 羽
カモ類調査
1992.01.18 多摩川
16 羽
1992.04.03 砧公園
18 羽
雄 11、雌 7 羽
1996.02.06 仙川
32 羽
定例調査
45
羽
1998.03.02 仙川
16 羽
1999.03.08 多摩川
19 羽
2001.02.25 仙川
25 羽
2004.01.21 多摩川
定例調査
30
27
25
定例調査
4羽
定例調査
2005.02.02 仙川
16 羽
定例調査
2007.12.05 仙川
17 羽
定例調査
20
19
17
18
15
17
16
10
11
5
0
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008年
図Ⅲ-10.ハシビロガモの経年変化
41.ホシハジロ Aythya ferina Pochard
カモ科
ユーラシア大陸のバイカル湖以西の亜寒帯で広く繁殖し、日本には冬鳥として渡来する。北海道で
は旅鳥であるが、釧路で繁殖した例がある。本州、佐渡、四国、九州、トカラ列島には冬鳥として渡
来する。湖沼、河川などに群れで生活し、水中に潜り、他の潜水ガモに比べ、水草の葉や茎など植物
質の餌をよく食べる。
世田谷区では、冬鳥として 10 月中旬から 11 月に渡来し、翌年の 3 月下旬から 4 月に渡去する。多
摩川、仙川、野川、駒沢オリンピック公園で観察されているが個体数は少ない。(全記録数 522 件 1985
~2007 年)
○主な観察記録
1995.11.09 多摩川
4羽
雄 3、雌 1 羽
1997.01.22 仙川
1羽
定例調査
1997.02.11 野川
1羽
定例調査
1998.11.18 多摩川
1羽
2000.03.18 多摩川
1羽
2000.12.10 仙川
5羽
2003.12.02 多摩川
1羽
雄
2007.12.05 仙川
4羽
定例調査
雄 第三京浜道多摩川橋下
42.アカハジロ Aythya baeri Bear’s Pochard
カモ科
中国東北部からウスリーにかけての狭い地域で繁殖する東アジア特産の種で、日本には稀な冬鳥と
して渡来し、キンクロハジロなどの群れに混じっていることが多い。北海道、本州、佐渡、四国、九
州、南西諸島で観察されている。不定期に渡来し、湖沼や河川に生息する。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(東京都:Cランク、環境省:情報不足 全記録数 1 件 2000 年)
○観察記録
2000.10.17 多摩川(玉堤 1)
1羽
雄がヒドリガモ 5 羽と中州の岸で休息
46
43.キンクロハジロ Aythya fuligula Tufted Duck
カモ科
ユーラシア大陸の亜寒帯で広く繁殖し、日本には主に冬鳥として多数が渡来する。繁殖地では水辺
近くの草むらの地上に皿型の巣を造り自身の羽毛を敷く。北海道では旅鳥であるが、少数が繁殖して
いる。本州、佐渡、隠岐、四国、九州、南西諸島などに広く冬鳥として渡来する。湖沼、広い河川、
池などで生活し、市街地の公園の池にもよく見られる。海に出ることは少なく、水中に潜り、貝・小
魚など動物質の餌をよく採るが、水草など植物質も食べる。
世田谷区では、冬鳥として 10 月下旬から 11 月上旬に渡来し、翌年の 3 月から 4 月に渡去する。毎
年渡来するが一冬通じて滞在することはない。多摩川、仙川、駒沢オリンピック公園で少数が観察さ
れている。(全記録数 417 件 1960~2007 年)
○主な観察記録
1989.01.17 多摩川(玉堤~玉川)
20 羽
1995.12.28 多摩川
24 羽
1996.01.16 多摩川
35 羽
1997.03.06 多摩川
21 羽
1998.01.20 多摩川
18 羽
1999.01.05 多摩川
12 羽
カモ類調査
2000.12.10 仙川
2羽
2003.01.25 仙川
7羽
2004.02.04 仙川
8羽
定例調査
2006.01.18 多摩川
3羽
定例調査
2007.12.25 駒沢公園
1羽
44.スズガモ Aythya marila Scaup
カモ科
ユーラシアと北米大陸の亜寒帯で広く繁殖し、日本には冬鳥として北海道、本州から南西諸島まで
広く渡来する。海ガモ類の中では最も個体数が多く、越冬地では内湾や入り江など波の静かな海面に
大きな群れをなしていることが多い。東京湾では数万羽の大きな群れが観察される。スズガモは主に
動物質の餌を採り、浅い海底にいる貝類を好んで食べる。
世田谷区では、冬鳥として少数が渡来する。主に多摩川で見られていたが、2002 年になって仙川や
野川でも見られるようになる。(全記録数 31 件 1959~2007 年)
○主な観察記録
1959.01.11 多摩川
2羽
雄雌
1964.10.31 多摩川(玉堤)
9羽
コジキッタナ
1995.11.02 多摩川
3羽
雄 1、雌 2 羽
1997.01.02 多摩川
1羽
雌
1999.01.18 多摩川
2羽
2000.03.24 多摩川
14 羽
2002.12.24 仙川
4羽
2003.12.07 仙川
3羽
2005.11.18 多摩川
1羽
47
2007.10.28 野川(成城 4)
1羽
45.ビロードキンクロ Melanitta fusca Velvet Scoter
カモ科
ユーラシアと北米大陸の亜寒帯から寒帯で広く繁殖し、日本には冬鳥として北海道から九州以北に
渡来する。小群でクロガモの群れに混じり海上生活をし、内湾や波の荒い海岸で見られるが、あまり
岸近くには接近しない。浅い海に潜り貝類などの餌を食べる。繁殖地では水辺の草むらを押し窪めた
所に小枝などを置いて巣とし、自身の羽毛を敷いた上に産卵する。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(東京都:Cランク 全記録数 2 件 2004 年)
○観察記録
2004.11.11~16 多摩川(玉堤 2)
1羽
雄 谷沢川合流地点でカルガモ、コガモ、ヒドリガモ、オナガガモ約
30 羽と休息
46.ホオジロガモ Bucephala clangula Goldeneye
カモ科
ユーラシアと北米大陸の亜寒帯で広く繁殖し、日本には北海道、本州、四国、九州、対馬まで冬鳥
として渡来する。繁殖地では、森林の樹洞に営巣し、巣箱も利用するといわれる。越冬地では広い湖
沼、河川、内湾などで見られる。活発に潜水し貝類・エビやカニ・小魚・水生昆虫など動物質を主に
採食し、水草など植物質も食べる。
世田谷区では、多摩川で見られた下記 6 例の記録がある。(東京都:Cランク 全記録数 11 件 1953~2006 年)
○観察記録
1953.11.03 多摩川(野毛)
5羽
1969.12.10~14 多摩川(玉堤)
1~2 羽
新田 群れが上空を下流より上流へ
雌雄 コジキッタナ
1998.03.23~31 多摩川(玉堤 1~野毛 2)
1羽
盛んに潜水
2003.12.02 多摩川(野毛 2)
2羽
2006.03.12 多摩川(野毛 2)
1羽
雌 頻繁に潜水
2006.12.19 多摩川(鎌田 1)
3羽
雄 2、雌 1 羽がヒドリガモの群れの中で頻繁に潜水
47.ミコアイサ Mergus albellus Smew
カモ科
ユーラシア大陸の亜寒帯で広く繁殖し、北海道では旅鳥であるが、北部で少数が繁殖する。本州か
ら九州以北まで冬鳥として渡来する。繁殖地では、水辺の叢林中又は樹洞に営巣する。潜水して魚を
捕える習性があり、日本に渡来するアイサ類の中では最も小型である。越冬地では湖沼、広い河川で
生活し、時に海に出ることもある。数羽か数十羽の群れで見られることが多い。
世田谷区では、冬鳥として少数が渡来する。多摩川で単発的に見られ、頻繁に潜水するが採食は観
察されていない。(全記録数 69 件 1981~2007 年)
○主な観察記録
1981.01.12 多摩川
2羽
雄、雌
1994.12.13 多摩川
2羽
雌
1995.12.28 多摩川
1羽
雄
48
1996.11.28 多摩川
1羽
雄 エクリプス
1997.03.08 多摩川
3羽
雄 1、雌 2 羽
1998.05.13~06.01 多摩川(玉堤 1) 1 羽
雌 中州で休んでいる
1999.12.04 多摩川
1羽
2000.03.03 多摩川
1羽
2001.12.07 多摩川
1羽
雌
2002.11.18 多摩川
1羽
雌 コガモの群れに混じっていた
2005.02.12 多摩川
2羽
2007.11.09 多摩川(野毛 2)
1羽
雄 エクリプス
48.ウミアイサ Mergus serrator Red-breasted Merganser
カモ科
ユーラシア大陸と北米大陸の亜寒帯で広く繁殖し、日本には北海道から九州まで冬鳥として渡来す
る。越冬地では数羽から数十羽が群れで生活し、内湾や港など波の静かな海に多いが、時には、海に
近い池や川にも姿を見せることがある。潜水が巧みで、水中で魚を捕える。群れで潜水し、魚群を浅
瀬に追い上げ捕食することも報告されている。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(東京都:Cランク 全記録数 1 件 2000 年)
○観察記録
2000.01.02 多摩川
1羽
雌 コガモの群れの中にいた
49.カワアイサ Mergus merganser Goosander
カモ科
ユーラシア大陸と北米大陸の温帯から亜寒帯にかけて広く繁殖し、日本には冬鳥として渡来するが、
西日本で少ない。北海道では、道北、道東部で留鳥として少数繁殖している。繁殖地では、川や湖の
岸辺の岩の隙間や樹洞に営巣し、
自分の羽を敷いた上に産卵する。
アイサ類の中では最も大きな種で、
巧みに潜水し魚を捕食する。越冬地では数羽から数十羽が群れで生活し、広い湖沼や河川で見られ海
に出ることは少ない。
世田谷区では、冬鳥として渡来する。多摩川で見られ、個体数は少ないが 1995 年頃から毎年渡来
し、1996 年は越夏が観察された。又、例年は単発的だが 2001 年は翌年の春まで連続して観察された。
頻繁に潜水し、深場から背中が出るような浅瀬でも採餌する。(全記録数 81 件 1987~2007 年)
○主な観察記録
1987.12.21 多摩川
1羽
雌
1995.10.27 多摩川
1羽
雌 コンクリートブロックの上で休んでいた
1996.07.24~09.11 多摩川
1羽
雌 谷沢川合流付近
1998.03.23 多摩川(玉堤 1)
1羽
雄 上流より飛来し中州に降りる
2000.02.18 多摩川
1羽
2001.12.19~2002.04.08 多摩川
1羽
2003.11.27 多摩川
1羽
2004.03.19 多摩川
1羽
2005.12.29 多摩川
1羽
雌
49
2006.12.25 多摩川(野毛 2)
1羽
雌
2007.02.28 多摩川(玉川 1)
1羽
野川のコンクリートブロックの上で休息
50.ミサゴ pandi0n haliaetus Osprey
タカ科
ユーラシア、北米大陸、アフリカ大陸北部から亜熱帯に広く繁殖している。日本では、北海道から
沖縄で繁殖し、留鳥である。冬期、海が氷に覆われる地域のものは南下する。海岸、大きな川、湖な
どで生活し、人の近付かない岩棚や水辺の巨木に枯れ枝を積んで皿形の巣を造る。餌は魚類である。
獲物の魚を見つけるとホバリングして狙いを定め、脚で獲物を捕捉する。捕らえた魚を岩の上や杭、
木の枝など一定の場所に運んで食べている姿がよく見られる。
世田谷区では、旅鳥として主に春と秋に飛来する。多摩川で見られるが、捕食例は稀である。2000
年頃より観察例が多くなる。(東京都:Bランク、環境省:準絶滅危惧 全記録数 59 件 1988~2007 年)
○主な観察記録
1988.12.02 多摩川
1羽
上空
1997.05.06 多摩川
1羽
低空で飛翔しカラスにモビングされながら下流へ
2001.10.11 多摩川
1羽
上流方向へ飛翔
2002.05.30 多摩川
1羽
2003.09.12 多摩川
1羽
2004.05.09 多摩川
1羽
中州上空を下流方向へ
2004.10.02 多摩川
1羽
盛んにホバリングを繰り返すが捕食は見られなかった
2005.04.28 多摩川
1羽
2006.04.17 多摩川(野毛 3)
1羽
急降下してコイをつかみそこなう
2007.12.19 多摩川(鎌田)
1羽
河口より 19km 地点左岸 上空
51.ハチクマ Pernis apivorus Honey Buzzard
タカ科
ユーラシア大陸の亜寒帯から温帯とインドから東南アジアにかけて広い繁殖地をもっている。日本
では夏鳥として渡来し、通常、北海道、本州、四国で繁殖し、東南アジアで越冬する。低山や丘陵の
林に棲み、ハチの幼虫や蛹を好んで食べる。低山帯の大木に枯れ枝で皿状の巣を造る。渡りの時期に
は市街地や海岸の上空でも観察されることがある。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(環境省:準絶滅危惧 全記録数 1 件 2003 年)
○観察記録
2003.05.16 多摩川(玉堤 2)
1羽
川崎側からカラス 2 羽に追われて飛来し上流へ
52.トビ Milvus migrans Black kite
タカ科
ユーラシア大陸の亜寒帯、アフリカの一部、オーストラリアなどで広く繁殖している。日本では九
州以北に留鳥として生息して繁殖し、寒帯のものの一部は冬期、南の地域に移動する。海岸、水田地
帯、河川、湖沼の近くに生息し、市街地でもよく見られる。平地から低山の大木の樹上に枯れ枝で皿
形の巣を造る。主に死肉を食べるが、ネズミ・ヘビ・カエル・魚・ミミズ・小鳥など生きている獲物
50
も捕食する。餌の豊富なごみ投棄所や海岸、漁港などには大群で見られる。ゆっくりした羽ばたきで
上昇気流をとらえ、
翼を水平に広げ帆翔していることが多い。
獲物を見つけると急降下し脚で捕捉し、
杭、岩、枝上、地上など安全な場所に運んで食べるが、飛びながら食べている姿もよく見られる。
世田谷区では、年中生息しているが、営巣地はなく繁殖期に少なくなる。個体数は少なく主に多摩
川で見られるが、野川や砧公園、蘆花恒春園などでも稀に見られる。(全記録数 762 件 1948~2007 年)
○主な観察記録
1949.10.24 多摩川(野毛)
2羽
渡し場上空
1968.09.18 多摩川(玉川)
1羽
二子橋上空
1975.01.05 馬事公苑
2羽
1995.02.00 砧公園
1羽
上空
1998.09.20 多摩川
3羽
野球場上空 3 羽一緒に
1999.02.05 野川
2羽
定例調査
2003.03.24 多摩川
4羽
定例調査
2004.07.27 多摩川
10 羽
2005.12.22 多摩川
3羽
2007.09.19 多摩川
8羽
定例調査
53.オオタカ Accipiter gentilis Goshawk
タカ科
北アフリカ及びユーラシア大陸の亜寒帯から温帯に広く繁殖する。日本では山陰から近畿以北で繁
殖し、留鳥である。冬期、高地や寒地のものの一部は低地に移動し、秋、冬はほぼ全国で観察される。
亜高山から平地の林に生息し、林内の大木の枝上に枯れ枝を積んで皿形の巣を造る。獲物を探して、
農耕地や水辺など開けた場所にも飛来する。餌は主に、ツグミ・ハト・カモ・キジなどの中・大型の
鳥であるが、ウサギなどの大型の動物も含まれる。
世田谷区では、冬鳥として主に 9 月頃飛来し、翌年の 5 月頃去る。河川や公園などで見られる。2003
年頃から観察頻度が多くなり、稀に夏季にも観察されることがある。(東京都:Bランク、環境省:準絶滅
危惧 全記録数 480 件 1987~2007 年)
○主な観察記録
1987.04.15 馬事公苑
1羽
上空通過
1994.01.19 砧公園
1羽
若鳥 オシドリ 8 羽を追いまわす
1996.04.05 多摩川
1羽
1997.08.08 多摩川
1羽
成鳥 中州の木に止まり羽づくろい
1999.01.23 野川
1羽
上空
2001.02.0
1羽
2003.11.0
1羽
2004.11.0
1羽
2005.03.0
1羽
2006.04.0
3羽
2007.12.0
1羽
51
54.ツミ Accipiter gularis Japanese Sparrowhawk
タカ科
シベリア南部から中国東北部やウスリーにかけて繁殖しているヒヨドリ大の小型のタカである。日
本では、ほぼ全国で繁殖し、暖地では留鳥であるが、寒地のものが冬は南に移動する。亜高山から平
地の林に棲み、大木の枝上に枯れ枝を積み上げて皿形の巣を造る。主に小鳥類を捕食するが、ネズミ・
昆虫なども捕る。
世田谷区では、年中生息しているが夏季に多く、冬季は稀である。河川や公園、緑地などで見られ
る。1988 年に初記録。2000 年頃から観察例が多くなり 2003、2005 年に繁殖する。(東京都:Cランク 全
記録数 78 件 1988~2007 年)
○繁殖記録
2003.05.17
1巣
抱卵イヌシデの樹冠に営巣
2005.04.21~06.21
1巣
4/21巣材を運ぶ 6/16雛4羽 雛に給餌 6/21 カラス類の群れに襲われ雛全滅
1988.04.20 馬事公苑
2羽
4/20 から雌雄が入り 5 月末まで滞在
1990.09.24 砧公園
1羽
上空
1992.01.21 神明の森みつ池
1羽
1995.10.30 砧公園
1羽
1996.08.12 多摩川
1羽
川岸の木に止まっていた
2000.11.09 多摩川
1羽
雌 1 羽オギ原に飛び降り獲物を捕まえて飛び去る
2001.03.0
1羽
2002.10.0
1羽
2004.05.0
1羽
2006.08.0
1羽
2007.05.0
1羽
○主な観察記録
55.ハイタカ Accipiter nisus Sparrowhawk
タカ科
ユーラシア大陸の温帯から亜寒帯の地域に広く分布、繁殖している。日本では、本州以北で繁殖し
留鳥であるが、冬季に一部は暖地へ移動する。亜高山から平地の林にに生息し、主に針葉樹上に枯れ
枝を積んで皿形の巣を造る。林内、林縁の耕地や草地などで獲物を捕る。主にツグミなどの小鳥を捕
食するが、ネズミ・リスなども捕る。飛翔する姿がツミによく似ている小型のタカである。秋、冬に
は海岸近くの農耕地に出てくることもある。
世田谷区では、冬鳥として 10 月頃渡来し、翌年の 3 月頃渡去する。河川や公園などで少数が観察
されている。(東京都:Cランク、環境省:準絶滅危惧 全記録数 40 件 1958~2007 年)
○観察記録
1958.08.23 等々力渓谷公園
1羽
1986.10.04 馬事公苑
1羽
1991.10.20 岡本静嘉堂周辺
1羽
1998.11.20 多摩川
2羽
2001.11.0
1羽
2003.11.0
1羽
上空で 2 羽が求愛行動
52
2004.02.0
1羽
2005.02.0
1羽
2007.11.0
1羽
56.ケアシノスリ Buteo Lagopus Rough-legged Buzzard
タカ科
ユーラシア大陸極北部、カムチャッカ半島、オホーツク沿岸地方、北米大陸北部で繁殖し、日本に
は冬鳥として、少数が北日本、日本海側の地方に渡来する。餌は主にウサギ・ネズミ・小鳥などであ
る。脚が足指の付け根まで羽毛に覆われていることから「毛脚ノスリ」と呼ばれる。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(全記録数 1 件 1977 年)
○観察記録
1977.02.13 多摩川
1羽
57.ノスリ Buteo buteo Buzzard
タカ科
ユーラシア大陸の温帯から亜寒帯まで広く分布繁殖する。日本では、北海道から四国にかけて繁殖
し留鳥であるが、冬期は寒地や高地のものの一部が暖地、低地に移動する。亜高山から平地の林に棲
み、林内の大木の枝上に枯れ枝を積み皿状の巣を造る。近くの荒地、川原、耕地、干拓地などでよく
見られる。主にモグラ・ネズミなど小型哺乳動物、カエル・ヘビ・昆虫などを捕食する。
世田谷区では、冬鳥として 10 月頃飛来し、翌年の 4 月頃去る。河川や公園で少数が観察される。(全
記録数 114 件 1948~2007 年)
○主な観察記録
1948.11.12 野毛
1羽
1958.01.11 多摩川(野毛)
1羽
1968.01.12 多摩川(野毛)
1羽
1996.11.14 多摩川
1羽
カラス類 50 羽に追われて中州の樹林に止まる
1999.04.15 多摩川(玉堤 2)
1羽
上流からカラス類 1 羽に威嚇されながら下流へ
2000.03.07 多摩川
1羽
バンの池付近でカラス類に追われ上流へ飛び去る
2004.01.0
1羽
2005.12.0
1羽
2006.01.0
1羽
2007.01.0
1羽
新田
58.サシバ Butastur indicus Grey-faced Buzzard-eagle
タカ科
中国北部とウスリーの周辺だけで繁殖する。日本では、夏鳥として渡来し、本州から九州までの間
で繁殖する。冬期は東南アジアで過ごし、一部、沖縄で越冬するものもある。低山から丘陵地帯の林
に棲み、
林内の松や杉の枝上に枯れ枝を積み円形の皿状の巣を造る。
水田などの開けた所で採餌する。
主にヘビ・トカゲ・カエル・昆虫を捕食するが、ネズミや小鳥を捕えることもある。木の枝などの高
い所から地上を見張り、獲物を見つけると飛び降りて捕まえる。9 月から 10 月は南に向かって大群で
53
移動する。
世田谷区では、旅鳥として春は 3 月から 4 月、秋は 8 月から 10 月に通過する。多摩川上空を通過
するのが少数が観察されている。(東京都:Cランク、環境省:絶滅危惧Ⅱ類 全記録数 15 件 1983~2007 年)
○主な観察記録
1983.09.16 松原
1羽
明大前駅上空
1995.09.21 多摩川
1羽
上流から飛来
1999.08.12 多摩川(玉堤 2)
1羽
等々力渓谷公園方面からカラス類に威嚇されながら飛来
2000.10.06 多摩川(野毛 2)
4羽
4 羽が東京側から次々と川崎側へ移動する
2002.09.20 多摩川
6羽
2003.09.05 多摩川
1羽
2005.04.21 多摩川
3羽
2006.05.15 多摩川(鎌田 1)
2羽
上空を羽ばたきと滑空を繰り返し南方へ
2006.08.22 多摩川(玉堤 1)
3羽
中州から飛び立つ
2007.03.31 多摩川(玉堤 2)
1羽
川崎側からカラス類に追われて飛来し世田谷区内へ
59.チュウヒ Circus spilonotus Eastern Marsh Harrier
タカ科
ユーラシア大陸の亜寒帯南部で繁殖する。日本では、北海道と本州以北の一部地域で少数が繁殖す
るものもあるが、多くは冬鳥として本州以南に渡来する。草原、ヨシ原、農耕地、牧草地などに生息
し、広いヨシ原のなどの地上に小枝やヨシの茎を積んで皿形の巣を造る。餌を求めてヨシ原や草原の
上を風に向かって羽ばたき、翼をV字型にした滑翔を繰り返して飛翔する。主に小型哺乳類・両生類・
爬虫類・鳥類を捕食し、獲物は地上で食べる。
世田谷区では、多摩川で観察された下記 3 例の記録がある。(東京都:Bランク、環境省:準絶滅危惧 全
記録数 3 例 1998~2005 年)
○観察記録
1998.04.08 多摩川(野毛 2)
1羽
緑地で羽ばたきと滑翔を繰り返し町の中へ
2002.12.30 多摩川(鎌田 1)
1羽
草原上空を川崎側へ
2005.11.25 多摩川
1羽
雌 カラス類 1 羽に追われている
60.ハヤブサ Falco peregrinus Peregrine Falcon
ハヤブサ科
ユーラシア大陸の大部分と北米大陸の寒帯から亜寒帯、オーストラリアなど世界の広い範囲で繁殖
する。日本では、北海道から九州で少数が繁殖し、その大部分が留鳥であるが、冬期は一部暖地に移
動するものもある。又、冬期には国外から渡来する個体も加わり増加する。海岸の岸壁や海岸に近い
山の崖、広い川、野原、農耕地などで見られ、海岸の岸壁の岩棚に直接産卵し巣材は使用しない。崖
の上や見晴らしのよい木や杭の上に止まって見張り、飛んでいる鳥を見つけると上空より急降下し獲
物を脚で蹴落として捕捉する。捕らえた獲物を一定の場所に運んで食べる。獲物のほとんどはハトや
ヒヨドリなど中型の小鳥などだが、稀にネズミやウサギを捕えることもある。
世田谷区では、冬鳥として 9 月下旬に渡来し、翌年の 4 月下旬に渡去するが、稀に夏季に観察され
ることがある。多摩川で見られ、稀に等々力渓谷公園、砧公園で見られたこともある。カモ類やシギ
54
類を捕食するが、オオタカを襲った例もある。中州で水浴や休息している姿がよく観察されている。
(東京都:Bランク、環境省:絶滅危惧Ⅱ類 全記録数 336 件 1948~2007 年)
○主な観察記録
1948.09.29 野毛
1羽
自宅で目撃
1952.11.10 多摩川(玉川)
1羽
二子橋下流にて下流より上流に飛行
1969.12.04 等々力渓谷公園
1羽
上空 岸の山
1992.11.11 砧公園
1羽
1995.10.25 多摩川
1羽
川原に降りていた
1999.12.20 多摩川(野毛 2)
1羽
中州の水辺で顔と胸を水面に浸し水浴びする
2002.10.02 砧公園
1羽
定例調査
2004.12.27 多摩川
1羽
若鳥 中州の木の下で水浴び
2005.03.24 多摩川(玉川 3)
2羽
兵庫島上空
2006.01.23 多摩川(上野毛 2)
1羽
成鳥が中州の流木の陰で休んでいるオオタカの成鳥を襲う
2007.07.21 多摩川(鎌田 2)
1羽
夕方、上流より飛来し下流へ
61.チゴハヤブサ Falco subbuteo Hobby
ハヤブサ科
アフリカ大陸の北岸とユーラシア大陸の亜寒帯から温帯で広く繁殖している。日本では、北海道と
本州北部で繁殖する。冬季はインド北部から中国南部に渡るが、一部は本州中部以南に留まる。平地
の疎林に生息し、カラスや他のタカなどの樹上の古巣を利用する。周辺の耕地や原野などの広い空間
で狩をする。飛翔中の小鳥を上空から急降下して攻撃したり、逃げ惑う小鳥を急旋回して巧みに追跡
したりして捕捉する。小鳥のほかにトンボなどの昆虫も捕らえ飛びながら食べる。小鳥などの大きな
獲物は一定の場所に運んで食べる。
世田谷区では、旅鳥として稀に通過した下記 4 例の記録がある。(東京都:Cランク 全記録数 4 件 1998
~2007 年)
○観察記録
1998.04.21 多摩川(玉川 3)
1羽
新二子橋付近上流より飛来し街方面へ
2002.12.30 多摩川(玉堤 1)
1羽
上流から飛来し、旋回しながら川崎側へ
2005.05.06 多摩川(玉堤 1)
1羽
カラス類 3 羽に追われて逃げ回り上流へ
2007.10.10 多摩川(鎌田 1)
1羽
オギの海調査
62.コチョウゲンボウ Falco columbarius Merlin
ハヤブサ科
北半球の亜寒帯で繁殖し、日本には冬鳥として少数が渡来する。農耕地、野原、干拓地、丘陵地な
どの開けた所に生息する。繁殖地では主に地上に小枝を積み巣を造るが、森林地帯ではカラスなどの
古巣を利用することが多いといわれる。低木や杭、電線、地上の高みなどに止まり、飛んでいる小鳥
を見つけると逃げ回る獲物を自在に急旋回して捕捉する。昆虫やネズミを地上で捕ることもある。捕
らえた獲物は地上の安全な場所に運んで食べる。
世田谷区では、冬鳥として稀に渡来する。多摩川で川原の木に止まっているのが観察されている。
(東京都:Cランク 全記録数 12 件 1995~2002 年)
55
○観察記録
1995.01.11 多摩川
2羽
1995.04.05 多摩川
1羽
1996.01.24 多摩川(玉堤 1)
1羽
1997.11.14 多摩川
1羽
1998.03.09 多摩川(玉堤 1)
1羽
雄が下流から上流へ飛行
1999.09.28 多摩川(玉川 1)
1羽
上流より飛来し林の木に降りる
2000.02.16 多摩川
1羽
2001.11.02 多摩川
1羽
2002.10.08 多摩川
1羽
上流より飛来し林に降りる
63.チョウゲンボウ Falco tinnunculus Kestrel
ハヤブサ科
ユーラシア大陸の亜寒帯から亜熱帯、アフリカ大陸北岸から南部で広く繁殖している。日本では、
本州北部から中部で繁殖するが、北海道で繁殖期に目撃されている。冬は一部が移動するので全国で
見られる。農耕地、野原、川原、干拓地、丘陵地帯に生息し、木や杭、電線など見張り場に止まる。
狩は次々と場所を移動し、ホバリングしながら地上の獲物を探す。獲物はネズミ・昆虫・小鳥が多い。
安全なら捕らえた場所で獲物を食べる。昔は断崖の岩棚や樹洞で営巣したが、近年は橋桁や建物など
で営巣することが多くなる。直接産卵し巣材は用いない。
世田谷区では、昔は稀な冬鳥であったが、2005 年以降は徐々に増加して河川で多く、その他公園や
住宅地で観察されている。特に 10 月頃より若鳥も含めて一時的に増加する。(東京都:Cランク 全記録
数 1447 件 1953~2007 年)
○繁殖記録
2005.05.03
1巣
雛 2、成鳥 2 羽 橋桁
2006.06.27
1巣
雛 3 羽 橋桁
2007.05.21
1巣
雛 4、成鳥 2 羽 橋桁
2007.06.21
1巣
雛 3 羽 橋桁
1953.11.01 多摩川(野毛)
1羽
川原 渡し場
1969.11.13 多摩川(鎌田)
1羽
川原に降りていた
1986.12.01 馬事公苑
1羽
上空通過
1992.01.21 喜多見
1羽
1994.10.11 下馬
1羽
上空を北から南へ
1998.02.06 多摩川(野毛 2)
1羽
雄が川原の藪で右羽を怪我し飛べずにいる
1999.03.15 桜新町 2
2羽
雄、雌がアンテナに止まり鳴き交わす
2002.01.0
1羽
2003.01.0
1羽
2005.11.0
8羽
2006.04.0
4羽
2007.08.0
2羽
○主な観察記録
56
64.ウズラ Coturnix japonica Jpanese Quail
キジ科
モンゴル北部、バイカル湖、アムール、ウスリー、中国北部で繁殖し、朝鮮半島、中国南部、イン
ドシナで越冬する。日本では、北海道、本州中部以北に夏鳥として渡来する。本州南西部、四国、九
州、対馬、伊豆諸島、奄美大島では冬鳥である。全国的にはあまり見かけなくなり、よくさえずりの
聞かれた地方でも聞かれなくなる。北海道では低地の、本州中部では低山帯の草原に生息する。山地
草原や泥炭草原、牧場、海岸草原、河川敷の草原、農耕地やその周辺の藪、草むらなどで見られる。
渡りの時期には平地の河川敷や農耕地にも現れる。草むらの地上を歩きながら落ちている草の種子・
小果実・昆虫やクモ類を採食する。草の種子はイネ科・カヤツリグサ科・タデ科・マメ科など幅広く
食べる。
世田谷区では、冬鳥として稀に渡来するが、春と秋に立ち寄る旅鳥的な傾向になっている。2000 年
頃から多摩川上流の草原で見られることが多い。草の中などに隠れて姿を見せず、人などが近づくと
「ブルルル」という羽音をたて足元から飛び立ち、直線的に低く飛び草の中に降りる。1986 年に 1 羽
放鳥されている。(東京都:Bランク、環境省:準絶滅危惧 全記録数 44 件 1954~2007 年)
○主な観察記録
1954.04.08 多摩川(野毛)
1羽
鳴く 渡し場
1961.03.02 多摩川(玉堤 1)
1羽
小杉
1966.04.18 多摩川(野毛)
1羽
谷沢川先の島に降りていた
1970.03.22 多摩川(玉堤)
1羽
コジキッタナ
1986.06.19 多摩川(玉堤)
1羽
放鳥
1995.11.21 多摩川
2羽
二子橋~丸子橋
1997.06.30 多摩川(玉堤 2)
1羽
川岸の草原から出てきた
1999.10.18 多摩川(鎌田 1)
1羽
草原上面すれすれに飛ぶ
2000.04.18 多摩川(鎌田 1)
1羽
草原の草むらを横切る
2004.03.16 多摩川(鎌田 1)
3羽
枯れた草地の裸地をゆっくり移動
2007.02.28 多摩川(鎌田 1)
1羽
藪の細道を移動
65.キジ Phasianus colchicus Pheasant
キジ科
ヨーロッパ中部から東アジアに広く分布する。日本では、本州から九州までの各地に一年中生息し、
繁殖しているが、北海道には生息しない。日本の国鳥に指定されている。平地や山地の草原、農耕地、
雑木林、低木林、川原の草原に生息する。人間活動の多い場所にも生息する。繁殖期、雄は「ケーン、
ケーン」と大きな声で鳴く。雛は孵化後すぐ歩き、自分で餌を採ることができる。地上にある植物の
芽・葉・種子や、昆虫・クモ類・多足類・軟体動物などを採食する。
世田谷区では、一年中生息し、多摩川の河川敷草原で繁殖している。川岸や中州の草地や草原で、
鳴き声が観察されることが多い。区内では 1968 年以前の生息記録はなく、1968 年から 1977 年まで岡
本、上野毛、成城、大蔵、等々力渓谷公園などでほぼ毎年、その後も数は少なくなったが放鳥が行わ
れた。放鳥後、1969 年から区内で見られるようになってきた。1990 年頃までは等々力渓谷、岡本、野
川でも観察されたが、それ以降は砧公園以外に多摩川でしか観察されなくなり減少が著しい。3 月下
旬から 6 月は活動が活発で姿を見たり鳴き声を頻繁に聞く。営巣例はないが、5 月下旬から 7 月頃の
早朝や雨天など人通りの少ない時は、散策路、草原の縁、川岸で親子連れを見ることがある。(東京都:
57
Bランク 全記録数 1701 件 1968~2007 年)
○主な繁殖記録
1991.07.07 多摩川(玉堤)
雛6羽
ウズラ大
1995.06.27 多摩川(野毛 2)
雛1羽
成鳥と遊歩道に出てきた
1996.06.10 多摩川(鎌田 1)
雛3羽
成鳥 1 羽と川岸にいた
1997.05.30 多摩川(玉堤 2)
雛2羽
成鳥 1 羽と川岸の藪にいた
1998.06.12 多摩川(玉川 1)
雛1羽
成鳥 1 羽と中州にいた
1999.05.21 多摩川(玉堤 2)
雛2羽
成鳥 1 羽と川岸の藪にいた
2000.06.12 多摩川(野毛 2)
雛1羽
成鳥と川岸の草むらを歩いている
2001.06.16 多摩川(野毛 2)
雛2羽
成鳥雌と川原の草地を歩いている
2002.07.06 多摩川(野毛 2)
雛2羽
川原のわだちで砂浴び
2003.06.13 多摩川(玉堤 2)
雛2羽
成鳥雌と川原の草地を歩いている
2004.06.25 多摩川(玉堤 2)
雛3羽
成鳥雌と川原のオギ原に入っていく
2005.07.01 多摩川(玉堤 1)
雛2羽
中州で草や河畔林の生えた岸を移動
○放鳥記録
1968.10.31 岡本、等々力渓谷公園
20 羽
1969.09.19 岡本、喜多見、上野毛、大蔵、等々力渓谷公園
50 羽
1970 年
区内
50 羽
1971 年
区内
50 羽
1972 年
区内
50 羽
1973 年
区内
50 羽
1974 年
区内
80 羽
1975 年
区内
100 羽
1976 年
区内
100 羽
1977.08.02 岡本、上野毛、成城、大蔵、等々力渓谷公園
100 羽
1977.10.18 岡本、深沢、成城
30 羽
1989.10.30 多摩川(鎌田、玉堤)
32 羽
1990.10.26 多摩川(鎌田、玉堤)
54 羽
○主な観察記録
1969.03.27 岡本
1羽
1974.08.15 等々力渓谷公園
1羽
1983.08.10 岡本
1羽
1988.02.15 岡本
2羽
岩崎邸にて鳴く
八幡神社
1996.04.26 多摩川
12 羽
1999.04.22 多摩川
18 羽
2003.06.18 多摩川
5羽
定例調査
2004.04.07 砧公園
1羽
定例調査 鳴き声
2005.04.27 多摩川
7羽
定例調査
2007.05.16 多摩川
2羽
定例調査
58
66.クイナ Rallus aquaticus Water Rail
クイナ科
ユーラシア大陸の温帯域で繁殖し、中国南部、東南アジアで越冬する。日本では、北海道、本州北
部に夏鳥として渡来し、繁殖する。本州南部、佐渡、四国、九州、対馬、伊豆諸島、奄美諸島、南西
諸島では冬鳥である。湖沼、沼沢、河畔などの水辺の草地、ヨシ原、水田などに生息する。特にマコ
モやヨシの密生する湖沼畔、沼沢、河畔などに多い。繁殖期以外は単独で生活する。動物質では魚類・
甲殻類・両生類・軟体動物の腹足類・昆虫類を捕食し、イネ科やタデ科などの種子も食べる。
世田谷区では、冬鳥として 10 月から 12 月に渡来し、翌年の 3 月から 5 月に渡去する。多摩川、野
川、仙川などで見られ、冬枯れのヨシの密生地や水辺の藪などに潜みなかなか姿を見せない。又、人
が近づくとすぐ草むらに隠れてしまうので姿を見るのが難しい鳥である。(東京都:Cランク 全記録数
210 件 1956~2007 年)
○主な観察記録
1956.06.09 多摩川(玉堤)
1羽
1961.10.08 多摩川(野毛)
1羽
1964.11.26 多摩川(玉堤)
1羽
ヨシの中を歩いていた
1995.02.11 野川
2羽
定例調査
1997.12.19 多摩川(鎌田 1)
1羽
ザリガニを食べ、足は呑み込む
1999.03.01 多摩川(鎌田 1)
1羽
尾を水面に浸し、上下に振りながら水浴び
2000.11.22 仙川
1羽
中州の草むらに飛び込むように隠れた
2003.01.20 野川
1羽
流れの中、ゴミの溜まった所に潜む 喜多見大橋付近
2004.03.26 野川
1羽
神明橋下流右岸
2006.11.15 多摩川
1羽
定例調査
2007.12.05 野川(成城 4)
1羽
17 時頃、鳴きながら川岸を移動
67.ヒクイナ Porzana fusca Ruddy Crake
クイナ科
インドから東南アジア、中国、朝鮮半島にかけて分布する。北に分布するものは冬季に南下する。
日本では北海道、本州、佐渡、四国、九州に夏鳥として渡来し繁殖している。対馬、伊豆諸島、南西
諸島では冬鳥である。水田や水辺の草地、河川、湖沼などの草むらに生息する。草むらの間をくぐり
抜けながら採餌する。動物質では昆虫類・カエルなどの両生類・軟体動物などを食物とし、植物質で
はイネ科やタデ科の種子を採食する。
世田谷区では、以前は夏鳥として渡来し、多摩川で繁殖していたが 1964 年以降は確実な繁殖記録は
なく、又、2000 年を最後にそれ以後は観察されていない。生息環境の減少によって、姿を消しつつあ
る種の一つである。(東京都:Bランク、環境省:絶滅危惧Ⅱ類 全記録数 17 件 1957~2000 年)
○繁殖記録
1963.06.16 多摩川(野毛)
1巣
1963.06.29 多摩川
1巣
1963.08.22 多摩川(野毛)
1巣
卵 谷沢川先
1964.06.20 多摩川(玉堤)
1巣
4 卵 6/28 9 卵 7/13 4 羽孵化 7/14 巣立ち
○観察記録
1957.05.30 砧
1羽
6 卵 7/1 2 羽だけ孵化 ヨシの中の地上 30 ㎝に営巣 谷沢川先
59
1958.06.15 多摩川(野毛)
1羽
ヨシの中を歩いていた 赤岩
1963.08.07 多摩川(玉堤)
1羽
深い所を泳いでいた
1965.05.25 多摩川(野毛)
1羽
ヨシの中から飛び立つ
1966.05.26 多摩川
1羽
1968.06.27 多摩川(野毛)
1羽
1969.06.01 多摩川
1羽
2000.06.22 多摩川(玉堤 1)
1羽
早朝、川岸の入江で採餌
68.バン Gallinula chloropus Moorhen
クイナ科
ユーラシア、アフリカ、北アメリカ、南アメリカの温帯から熱帯域にかけて広く分布する。日本で
は、北海道、本州北部に夏鳥として渡来し繁殖する。本州中・南西部、佐渡、四国、九州、対馬、伊
豆諸島、奄美諸島、南西諸島では留鳥で繁殖している。湖沼、河川、沼沢、蓮池、水田、湿地などの
ヨシ原に生息し、岸や浅い水の中を歩いてタデ科やイネ科の種子、昆虫類や軟体動物などを採食する。
危険を感じるとすぐの草の中に逃げ込む。先に生まれた幼鳥が子育てを手伝うヘルパー行動がよく見
られる鳥である。
世田谷区では、以前は年中生息し多摩川のヨシ原や水草の中で繁殖していたが、2004 年の記録を最
後に繁殖記録はない。又、1999 年以降、繁殖期にあまり見られなくなり冬鳥になる。多摩川と野川で
見られ、多摩川(鎌田 1)の通称「バンの池」と呼ばれる小さな池(約 30m×50m)が新二子橋上流約 500
mの多摩川左岸にあって、池の周囲はヨシやオギなどの草地になっており池面の南半分は水生植物が
密生し、池の北側はヨシ原とつながりバンが一年中見られ繁殖していた。2001 年 8 月 22 日の大雨で
池に大量の土砂が堆積する。湧水も止まり池の周囲が乾燥し、人が簡単に入れるようになる。2003 年
10 月からの右岸補強工事仮堤防の影響か、流路が変わり池の縁が崩れるようになった。更に 2004 年
10 月の台風による大雨でバンの池は崩壊した。この池の消滅以後、多摩川でバンが見られることが少
なくなる。(全記録数 1195 件 1957~2007 年)
○主な繁殖記録
1967.09.28 多摩川(玉堤)
巣立ち雛 4 羽
1969.08.20 多摩川(玉堤)
雛7羽
成鳥 1 羽 巣立ち間もない雛 4 羽が小さな中州付近を泳いでいた
成鳥 3 羽
1970.06.27 多摩川
1巣
卵
1993.07.19 多摩川
雛1羽
1996.07.02 多摩川(鎌田 1)
雛7羽
雛に給餌
1997.05.12 多摩川(鎌田 1)
雛3羽
5/15 雛 4 羽になる
1997.08.20 多摩川(玉堤 1)
雛2羽
成鳥 2 羽
1998.06.16 多摩川(鎌田 1)
雛2羽
成鳥と一緒に泳いでいた
2004.07.16 多摩川(玉堤 1)
雛5羽
ヨシや水草に覆われた中州の入江で成鳥と移動
○主な観察記録
1957.05.04 多摩川(玉堤)
1羽
ヨシの中から飛び立つ
1964.05.24 多摩川(玉堤)
1羽
コジキッタナ島に降りていた
1968.09.22 多摩川(玉堤)
2羽
コジキッタナ島で見る
1991.02.28 野川
1羽
60
1994.02.22 野川
1羽
定例調査
1995.08.08 多摩川(鎌田 1)
5羽
バンの池
2001.02.21 多摩川
3羽
2003.01.20 野川
1羽
若鳥 天神森橋上流中州でカルガモやヒドリガモと枯草をついばむ
2006.11.06 野川(成城 4)
2羽
幼鳥
2007.04.26 多摩川(野毛 2)
1羽
下野毛排水樋管につながるワンド
2007.10.11 野川(喜多見 7)
1羽
幼鳥
69.ツルクイナ Gallicrex cinerea Watercock
クイナ科
朝鮮半島から中国、台湾、東南アジア、南アジアに分布する。日本では、南西諸島の南部に留鳥と
して一年中生息している。北海道、本州、四国、九州、伊豆諸島、奄美大島では記録があるが非常に
稀である。湖沼、河畔、湿原のヨシの草むら、水田などに生息する。警戒心が強く、昼間は水辺のヨ
シなどの草むらに潜みなかなか姿を見せないが、朝夕の薄暮時や雨天には水辺に出て盛んに活動する。
驚いた時には体を低くして迅速に草むらに逃げ込む。イネ科や水草の芽・水生植物の種子などのほか、
イナゴ・バッタなどの昆虫類、カタツムリなどの軟体類も捕食する。
世田谷区では、保護された下記 1 例の記録がある。(全記録数 3 件 1966 年)
○観察記録
1966.11.16~17 野毛
1羽
保護される 11/17 写真を撮ろうとしたら逃げられる
70.オオバン Fulica atra Coot
クイナ科
ヨーロッパからシベリア中央部、朝鮮半島にかけてと北アフリカ、イラクからインド、オーストラ
リア、ニューギニアで繁殖し、サハラ地域、スーダン、アラビア、インド、インドネシア、フィリピ
ンで越冬する。日本では、北海道に夏鳥として渡来する。本州では留鳥で一年中生息している。四国、
九州、伊豆諸島、奄美大島、南西諸島には冬鳥として渡来する。平地の湖沼、蓮田、河川に生息する。
バンよりも広々とした湖沼を好む。繁殖期にはつがいでヨシ、マコモなどの草むらで生活し、非繁殖
期には広々とした湖面に群棲する。頻繁に潜水して草の根や藻などの植物・昆虫類・小魚類・軟体動
物などを採食する。又、川岸や中州に上がって草も食べる。オオバンは本来淡水の鳥であるが、近年、
東京湾沿岸の海水域に進出して海草類を採餌している群れが観察されている。飛び立つ時は水をけっ
て助走する。
世田谷区では、冬鳥として 9 月下旬から 12 月に飛来し、翌年 3 月から 4 月上旬に去る。多摩川全域
で見られるが、ほかに野川、仙川で稀に見られることがある。調布取水堰により止水域が広がる玉堤
1 丁目地先周辺での観察例が多い。
頻繁に潜水し草の根や藻などを採食する。
(全記録数 382 件 1988~2007
年)
○主な観察記録
1988.11.16 多摩川(玉堤)
2羽
1990.03.05 多摩川(玉堤)
2羽
1994.12.14 多摩川(玉堤 1)
1羽
1996.04.03 多摩川(玉堤 1)
2羽
61
1999.11.15 多摩川(鎌田 1)
1羽
バンの池及びその周辺
2000.09.12 多摩川(玉堤 1)
1羽
岸辺を歩いている
2002.10.31 仙川
1羽
2003.11.01 多摩川(野毛 2)
1羽
2004.10.23 多摩川(鎌田 1)
1羽
バンの池
2005.01.19 多摩川
5羽
定例調査
2007.12.17 野川(玉川 3)
1羽
水面を移動しながら採餌
71.タマシギ Rostratula benghalensis Painted Snipe
タマシギ科
日本では、留鳥として本州、四国、九州、西南諸島に分布し、本州、四国、九州などで繁殖する。
雌は雄よりも胸が赤いなど鮮やかな色彩をもつ。稲田、湿地の草原、ヨシ原、蓮沼、沼地畔の草地、
沼沢などに生息し、草むらに潜み静かに歩みながら餌をあさる。草むらに潜むとなかなか飛び立たな
い。飛ぶ時は脚をだらりと下げ、翼を重々しく羽ばたいてよちよちと低空を直線的に飛び、20~50m
位ですぐ草むらに飛び降りる。コオロギ・バッタ・カブトムシ等の昆虫類やミミズ、植物質ではイネ
やサナエタデなど草の種子を採食する。蓮沼の小高い丘、小池、河畔の水草中、ヨシ原などの窪みに
皿形の巣を造る。産座には葉、茎、シイの葉の落ち葉などを敷く。巣を造る時にはまず草でトンネル
のような通路を造る。一妻多夫で、産卵後は雄が抱卵育雛を行う。
世田谷区では、旅鳥として 5 月から 7 月、10 月から 12 月に稀に飛来する。多摩川で観察されるこ
とが多い。(東京都:Bランク 全記録数 11 件 1955~2005 年)
○観察記録
1955.10.13 多摩川(野毛)
1羽
落鳥 渡し場
1959.07.31 多摩川(玉堤)
1羽
宮内
1967.08.27 岡本
1羽
水田にて
1968.06.09 多摩川(玉堤)
1羽
鳴き声をコジキッタナで聞く
1997.10.23~27 多摩川
1羽
中州に雄、草の陰であまり動かずに長時間いた
2002.11.20~12.05 多摩川
1~2 羽
定例調査 第三京浜道多摩川橋周辺
2005.05.16 多摩川(玉堤 1)
1羽
雌 中州の草の茂った入り江を移動
72.ハジロコチドリ Charadrius hiaticula Ringed Plover
チドリ科
グリ-ンランド、ユーラシア大陸北部で繁殖し、ヨーロッパ、アフリカ、西アジアで越冬する。日
本では、旅鳥又は冬鳥として少数渡来する。海岸の砂浜や河口の三角州、海湾の干潟に生息する。地
上では両脚を交互にして忙しげに走り歩き、ジグザグ形に歩行することが多い。立ち止まった時に体
を上下に振り動かす。マグソコガネなどの昆虫類、トビムシなどの甲殻類や小貝類などを食べる。草
の根元や砂地に皿型の窪みを造って巣とし、産座には貝殻の破片、小木片、小石を敷く。産卵期は 5
月から 7 月中旬頃までである。
世田谷区では、冬に観察された下記 1 例の記録がある。(全記録数 2 件 1956 年)
○観察記録
1956.12.03~13 多摩川
1羽
兵庫島上流の中州にいた
62
73.コチドリ Charadrius dubius Little Ringed Plover
チドリ科
スウェーデン、フィンランド、白海沿岸地方から地中海沿岸までのヨーロッパの大部分、アフリカ
北西部などで繁殖し、アジア北部・中部、朝鮮、台湾などで越冬する。日本では、北海道、本州、四
国、九州などに夏鳥として渡来し、繁殖する。本州南西部、四国、九州で少数越冬する。夏季、本州
では標高 800~1000m位の湖沼や川原から海岸の砂浜、海岸近く川原まで広い範囲で繁殖し、水田に
も生息し砂泥地や砂礫地を好む。夏季は雌雄で生活し、それ以外では小群でいる。川原の砂礫地や海
岸の波打ち際の砂地で採餌する。他のチドリ類と同様にジグザグ形に歩き、体を上下に振り動かす。
繁殖期にカラスなどの外敵が近くに来ると巣から離れて、自分の方に注目させるため、両翼を左右に
広げ、地面を引きずり歩いて傷ついたような擬傷行動をする。産卵期は 4 月下旬から 7 月上旬で、巣
は砂地の小石の間に皿形の窪みを造り、産座には小石・枯れ草・貝殻の破片などを敷く。
世田谷区では、夏鳥として 3 月頃に渡来し、8 月から 10 月上旬に渡去する。多摩川と野川で見られ、
多摩川に多く 1996 年には 35 羽が観察されている。繁殖は多摩川で行われ、中州で単独もしくはイカ
ルチドリやコアジサシなどと群れで繁殖する。(全記録数 1630 件 1946~2007 年)
○主な繁殖記録
1946.07.20 多摩川(玉堤)
雛1羽
コジキッタナ
1957.05.05 多摩川(野毛)
2巣
4 卵、2 卵 5/9 4 卵は人に捕られ、2 卵は抱卵中止 渡し場
1963.05.12 多摩川(玉川)
1巣
雛 4 羽 孵化 2 日目位、二子橋上流
1970.04.21 多摩川(玉川)
1巣
2 卵 二子橋上流
1997.07.22 多摩川
雛2羽
2000.05.30 多摩川
雛1羽
川岸で虫を採り、イソシギが近づくと親が追払う
2001.05.25 多摩川
雛3羽
幼鳥 1 羽
2004.06.15 多摩川
雛1羽
定例調査
2005.06.24 多摩川
雛5羽
定例調査
2006.07.22 多摩川(玉川 1)
雛6羽
2007.05.05 多摩川(鎌田)
3巣
雛 3 羽 抱卵と雛
1948.03.30 多摩川(野毛)
2羽
赤岩
1953.03.26 多摩川(野毛)
3羽
渡し場
1956.04.04 多摩川(野毛)
2羽
渡し場
1957.09.22 多摩川(玉堤)
2羽
宮内
1966.05.05 岡本
1羽
1993.06.25 野川
3羽
○主な観察記録
1996.04.10 多摩川
46 羽
2003.04.01 多摩川
18 羽
定例調査
2005.10.03 多摩川(上野毛)
2羽
中州
2006.06.07 野川
1羽
定例調査
29 羽
定例調査
2007.06.20 多摩川
63
74.イカルチドリ Charadrius placidus Long-billed Plover
チドリ科
中国北部、朝鮮半島などで繁殖し、北インド、ベトナム、タイなどにも渡来する。日本では、北海
道、本州、四国、九州で繁殖し、一部は留鳥である。川原の砂礫地や草地、湖沼の砂地や田んぼなど
概して河川の中流や上流に生息する。夏季は雌雄で生活し、産卵期は 3 月中旬から 7 月上旬、巣は砂
礫地や砂地に皿形の窪みを造り、産座には小石、枯れ草、貝殻の小破片などを少量敷く。両脚を交互
にして地上を歩くが、コチドリほど忙しげに動き回らず、時おり立ち止まっては体をピョコリと上下
に振り動かす。繁殖期にはコチドリと同様の擬傷行動を行う。主として動物質を採り、水生昆虫類を
採餌する。
世田谷区では、留鳥として多摩川、野川で見られる。多摩川の冬季に多く、川原で数十羽の群れが
観察される。多摩川定例調査で 2005 年 1 月 19 日に 71 羽を記録した。繁殖は 4 月から 6 月にかけて多
摩川中州の砂礫地で、単独又はコチドリ、コアジサシと群れで行われ、2002 年以降はほゞ毎年繁殖し
ている。(東京都:Cランク 全記録数 2787 例 1919~2007 年)
○主な繁殖記録
1951.04.22 多摩川(鎌田)
1巣
1 卵 わかもと工場下川原
1959.04.11 多摩川(野毛)
1巣
4 卵 2 卵にヒビが入っている 4/12 卵が壊されていた 渡し場
1966.04.21 多摩川(野毛)
1巣
4 卵 5/3 2 卵を人に持ち去られた 谷沢川流れ出し
1970.04.20 多摩川(野毛)
1巣
2 卵 新田
1999.06.11 多摩川
雛3羽
2002.05.18 多摩川
雛1羽
2003.04.14 多摩川(上野毛 2)
1巣
2004.06.28 多摩川
雛2羽
2006.04.26 多摩川(野毛 2)
雛2羽
2006.05.08 多摩川(玉川 1)
2巣
2007.05.29 多摩川(鎌田 2)
雛2羽
雛は成鳥の近くを歩き回っていた 8 月に無事に育つ
抱卵
雛各 1 羽
中州を歩き回る
○主な観察記録
1919.04.07 多摩川
1羽
1954.09.09 多摩川
40 羽
赤岸上流の川原
1961.10.08 多摩川(野毛)
13 羽
渡し場下流
1991.02.28 野川
6羽
1995.02.11 野川
4羽
定例調査
2000.11.15 多摩川
28 羽
2001.01.17 多摩川
17 羽
2003.08.19 多摩川
37 羽
21 羽と 16 羽の群れ
2005.01.19 多摩川
71 羽
定例調査(上流 8、中流 1、下流 62 羽)
2006.12.06 野川
2007.09.19 多摩川
3羽
定例調査
21 羽
定例調査
64
75.シロチドリ Charadrius alexandrinus Kentish Plover
チドリ科
日本では、北海道は夏鳥だが、本州以南は留鳥として繁殖する。夏季は雄雌で川原の砂礫地に生息
し、その他の季節では小群や大群又は他のチドリ類と混じって海浜や河口の砂地に生活する。両脚を
交互にして地上を忙しげに走り歩いて餌をあさる。14~15 歩位歩いては立ち止まって方向を変え、ジ
グザグ形に歩行し、立ち止まった時に体をピョコリと上下に振り動かす。主として動物質を採り、ゴ
ミムシやクモ・トビムシなどを食べる。河川の中流以下の川原の砂礫地に営巣し、巣は小石の間に皿
形の窪みを造り、産座には小木片、貝殻の小破片、小石などを敷く。産卵期は 3 月下旬から 6 月頃で
ある。
世田谷区では、留鳥で 1975 年までは繁殖していたが、その後個体数が減少し旅鳥となる。多摩川で
春と秋に稀に見られる。(全記録数 146 件 1949~2005 年)
○主な繁殖記録
1950.04.30 多摩川
1巣
1 卵 二子橋上流
1952.04.18 多摩川(野毛)
1巣
4 卵 卵の中から鳴き声 赤岩
1955.05.28 多摩川(鎌田)
1巣
3 卵 わかもと工場下の川原
1957.06.04 多摩川(鎌田)
1巣
3 卵 6/13 雛 1 羽孵化 わかもと工場下の川原
1958.05.02 多摩川(野毛)
1巣
3 卵 5/15 孵化せず 赤岩
1959.05.18 多摩川(鎌田)
雛2羽
1962.05.16 多摩川(玉川)
1巣
3 卵 5/24 抱卵中 朝日新聞写真掲載 二子橋上流
1966.05.01 多摩川(野毛)
1巣
3 卵 谷沢川先
1975.05.07 多摩川(玉堤)
1巣
抱卵
1949.05.29 多摩川(鎌田)
1羽
わかもと工場下の川原
1959.04.06 多摩川(野毛)
1羽
渡し場
1961.03.02 多摩川(玉堤)
2羽
宮内
1965.12.18 多摩川(野毛)
4羽
多摩川に降りていた 渡し場
1967.08.24 多摩川
8羽
上流から下流へ飛行
1970.03.10 多摩川(野毛)
3羽
第三京浜道多摩川橋
1975.05.01 多摩川
1羽
1991.05.25 多摩川
2羽
1997.09.05 多摩川(玉堤 1)
3羽
わかもと工場下の川原
○主な観察記録
2000.09.12 多摩川(玉川)
2005.09.07 多摩川(玉堤 1)
20 羽
8羽
上流へ低空で飛んでいく
台風で強風の中群れで飛び回る 二子橋付近
中州を移動しながら採餌
76.メダイチドリ Charadrius mongolus Mongolian Plover
チドリ科
シベリア東部、カムチャッカ半島、オホーツク海沿岸などで繁殖し、日本には旅鳥として、北海道、
本州、四国、九州、小笠原諸島、南西諸島に渡来する。干潟、砂質海岸、河口域、海上の岩礁などに
生息する。単独又は 2~3 羽、時には小群(30~40 羽)で忙しげに砂浜で採餌する。両脚を交互にして
走り歩き、立ち止まった時には体を上下にピョコリと振り動かす。翼を力強く羽ばたいて飛翔する。
主として動物質を採り、ゴミムシ・トビケラ・ミミズ・カニなど、植物質ではスズメノヒエの種子を
65
採餌する。巣は地上に皿形の窪みを造り、産座にはシシウド類の葉や茎を敷く。産卵期は 6 月上旬頃
である。
世田谷区では、旅鳥として春は 4 月から 5 月、秋は 8 月から 9 月に稀に立ち寄る。多摩川で見られ
るが、2006 年以降観察されていない。(全記録数 41 件 1952~2005 年)
○主な観察記録
1952.09.30 多摩川(玉堤)
1羽
1959.04.23 多摩川
20 羽
二子橋上流より下流へ飛行
1962.04.20 多摩川(野毛)
13 羽
渡し場
1965.04.30 多摩川
4羽
二子橋付近を飛んでいた
1968.04.29 多摩川
8羽
低空で飛行
1995.04.21 多摩川
3羽
1998.08.06 多摩川
3羽
2002.08.20 多摩川(玉堤 1)
14 羽
2003.08.10 多摩川
3羽
2004.05.11 多摩川
2羽
2005.09.07 多摩川(玉堤 1)
15 羽
水面を数度旋回して下流へ
中州で休んでいる
77.ムナグロ Pluvialis fulva Pacific Golden Plover
チドリ科
シベリア、アラスカ西部で繁殖し、インド、東南アジア、オーストラリアで越冬する。日本では、
旅鳥として渡来し、南西諸島では越冬する個体もいる。主として水田、畑、河川、草原、牧場や芝原
などに生息し、時には海湾の干潟や河口の三角州にも生息する。地上で活発に活動し、時にはすばや
く走るが、時折立ち止まってピョコリと身体を上下に振る習性がある。群飛する時にはV字形に並ぶ
のが常である。主として動物質を採り、コガネムシ・ハサミムシ・カメムシ・イナゴ・エンマコオロ
ギやミミズ・クモなど、植物質ではニワヤナギ・カヤツリグサの種子などを採食する。地上の窪みに
皿形の巣を造り、産座には蘚苔類、地衣類を敷く。産卵期は 6 月中旬から 7 月上旬頃である。
世田谷区では、旅鳥として、春は 4 月から 5 月、秋は 8 月から 11 月に立ち寄る。多摩川で見られ、
中州や河川敷の芝生グランドやヨシを刈り取った跡地などで観察される。(全記録数 348 件 1950~2007 年)
○主な観察記録
1950.09.08 多摩川
6羽
スミカシ
1959.10.19 多摩川(野毛)
200 羽
1970.04.19 多摩川(玉堤)
10 羽
コジキッタナ島
1981.11.03 多摩川(玉川)
15 羽
二子玉川
1995.08.24 多摩川
10 羽
2000.10.16 多摩川
9羽
2001.11.08 多摩川
1羽
2002.04.29 多摩川
11 羽
2003.04.13 多摩川
3羽
芝生グランド
2005.04.14 多摩川
6羽
冬羽 3 羽、夏羽に換羽中 3 羽
2006.04.17 多摩川(鎌田 1)
14 羽
渡し場下の島
冬羽、ヨシを刈り取った跡地でしばらく採餌
野球場芝生上で長時間採餌と休息
66
2007.10.10 多摩川(鎌田 1)
26 羽
オギの海調査 草地上空を飛翔
78.ダイゼン Pluvialis squatarola Grey Plover
チドリ科
ユーラシア北部、北アメリカ北部で繁殖し、ヨーロッパ、アフリカ、インド、東南アジア、オース
トラリアの海岸で越冬する。日本では、旅鳥として、北海道、本州、四国、九州、小笠原諸島、南西
諸島に渡来する。本州の中部以南や九州では少数だが越冬するものもある。海岸の砂浜、干潟、河口
域、干拓地、海岸近くの草原などに生息し、内陸の河川では稀である。干潟に降りて餌をあさったり、
防波堤で休んだりする。休憩時にはくちばしを羽の間に入れ、片脚で立って眠る。干潮の時には砂地
や泥地で活発に活動する。群飛する時には横列やV字形に並ぶことが多い。主として動物質を採り、
小エビ・小ガニ・トビムシ・ミミズや昆虫類、植物の実も採食する。繁殖はツンドラの蘚苔類の地上の
窪みに皿形の巣を造り、小枝や葉、草類、地衣類を敷く。また繁殖期に雌は擬傷行動を行う。
世田谷区では、春と秋に観察された下記 2 例の記録がある。(全記録数 2 件 1948、1997 年)
○観察記録
1948.10.12 多摩川(玉堤)
1羽
等々力
1997.04.28 多摩川
6羽
夏羽 川原に降りていたが犬が近づき飛び立つ
79.ケリ Vanellus cinereus Grey-headed Lapwing
チドリ科
中国東北部の限られた地域で繁殖し、日本、中国、東南アジア、インドで越冬する。日本では、本
州北部では夏鳥として 2 月から 3 月頃に渡来し、秋の 10 月から 12 月頃まで留まる。本州中部では留
鳥である。繁殖地は東海から近畿地方に多く、又、北関東、北陸、東北地方にも局地的に繁殖地があ
る。広々とした芝原、草原、川原の砂地や水田、畑に生息する。繁殖期には雄雌で縄張りをもち、他
の雄雌を近寄せない。非常に警戒心が強く人、犬、カラス、タカ類などが巣に近づくと激しく鳴き、
付近にいるケリが多数集まって飛翔攻撃をする。又、雄は擬傷行動を行うことがある。主として昆虫・
カエル・ミミズなどを食べる。巣は地上に皿形の窪みを造り、産座に苔や枯れ草、細茎などを敷く。
産卵期は 3 月下旬から 6 月上旬までである。
世田谷区では、旅鳥として春は 4 月から 7 月上旬、秋は 9 月から 12 月に稀に立ち寄る。多摩川で見
られ、中州で採餌や羽づくろい休息などが観察されている。(全記録数 19 件 1997~2007 年)
○主な観察記録
1997.10.21 多摩川(鎌田 1)
1羽
若鳥 中州で羽づくろいや採餌、休んだりしている
1998.04.17 多摩川(玉堤 1)
1羽
成鳥 中州で採餌
1999.11.17~19 多摩川
1~2 羽
成鳥 中州で休んでいた
2002.12.15 多摩川(野毛 2)
1羽
成鳥が排水樋管流れ出しで採餌
2003.04.07 多摩川
1羽
下流より飛んできて中州に降りしばらく休息
2004.04.01 多摩川
1羽
成鳥が中州の浅瀬で水浴び 新二子橋
2005.07.03 多摩川(玉堤 2)
1羽
成鳥が中州で水浴び
2006.09.15 多摩川(玉堤)
1羽
幼鳥、中州の岸で時々羽づくろい
2007.04.15 多摩川(野毛)
1羽
下流に向かって飛翔
67
80.タゲリ Vanellus vanellus Northern Lapwing
チドリ科
ユーラシア西部・中部で繁殖し、ヨーロッパ南部、アフリカ北部、中国南部で越冬する。日本では、
冬鳥として北海道、本州、四国、九州などに渡来する。渡来地はほとんど一定していることが多く、
水田、乾田、湿地、川原の砂礫地、草地や畑などに生息する。概して広々した場所に多い。警戒心が
強くなかなか近寄せない。両脚を交互にして地上を静かに歩き、餌を採ることが多い。飛び立つ時に
は翼を緩慢に羽ばたき、特徴のある飛び方で舞い上がる。繁殖期には擬傷することがある。動物質を
採り、オサムシ・ヒメクロバエの幼虫・トビゲラの幼虫やミミズ・ナメクジなども食べる。芝地、草
地などに営巣し、巣は露地に皿形の窪みを造り、産座には蘚類や枯れ草、水草の茎を敷くものが多い。
産卵期は 3 月下旬から 5 月下旬頃までである。
世田谷区では、冬鳥として 10 月から 11 月頃に渡来し、翌年の 3 月から 4 月頃渡去する。多摩川で
見られるが、シーズン通して観察されることはない。河川敷や芝生のグランド、上空などで観察され
ている。(東京都:Cランク 全記録数 42 件 1995~2006 年)
○主な観察記録
1995.11.29 多摩川
1羽
川原の中州に降りていた
1996.02.03 多摩川
1羽
河川敷にいた
1998.01.21~22 多摩川
1羽
残雪の芝生野球場
2000.10.27 多摩川
133 羽
2001.12.19 多摩川
4羽
2003.11.17 多摩川
1羽
2004.11.18 多摩川
1羽
新二子橋下の中州、川崎側に降りていた
2005.02.24 多摩川(上野毛 2)
3羽
中州にいたがしばらくして下流方向へ飛び去る
2006.03.12 多摩川(鎌田 1)
3羽
強風の中上流へ
2006.11.10 多摩川(鎌田 1)
1羽
中州で休んでいる
81.キョウジョシギ Arenaria interpres Turnstone
シギ科
ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の北極圏、環極地方に繁殖分布し、冬は赤道周辺の各地に渡る。
日本では、北海道から九州及び南西諸島に旅鳥として渡来し、小笠原諸島や南西諸島では小数が越冬
するものもいる。岩礁海岸に生息し、稀に内陸の河川にも現れる。海岸では砂浜や河口の砂泥地、岩
石地や砂利地の海岸を最も好む。岩礁ではヨコエビ類・カニ類・フジツボ類などの甲殻類、タマキビ
ガイやイガイなどの貝類を食べ、砂浜ではハマトビムシ・二枚貝なども食べる。
世田谷区では、旅鳥として稀に春と秋に立ち寄る。多摩川で見られているが、2003 年以降観察され
ていない。(全記録数 29 件 1953~20002 年)
○主な観察記録
1954.04.22 多摩川(野毛)
7羽
一群 渡し場上空を上流へ
1957.05.17 多摩川(鎌田)
20 羽
わかもと工場下の川原で見る
1959.05.17 多摩川(野毛)
30 羽
一群 赤岩上流より下流へ
1961.08.01 多摩川(玉堤)
24 羽
コジキッタナに降りていた
1962.05.05 多摩川(野毛)
18 羽
下流より来て止まり、上流へ飛び去る 谷沢川流れ出し付近
1970.05.09 多摩川(玉堤)
6羽
コジキッタナ島
68
1995.05.09 多摩川(野毛 2)
4羽
1996.05.15 多摩川(野毛 2)
3羽
2002.08.20 多摩川(玉堤 1)
2羽
82.トウネン Calidris ruficollis Rufous-necked Stint
シギ科
ユーラシア大陸の北極圏のレナ川、ヤナ川などの河口部などのごく限られた地域に繁殖分布し、冬
は東南アジアからニューギニア島、オーストラリア大陸に渡る。日本では、北海道から九州及び南西
諸島に旅鳥として渡来する。海岸の砂浜の波打ち際や水溜り、内湾や河口部の潮干帯の干潟砂泥地、
湖沼、溜池、河川の岸辺や中州の砂泥地、水を張った水田などで生息する。砂泥地で気忙しく歩き回
り、細かくくちばしを使ってついばむ。5~6 羽位の小群や 100~200 羽以上の大群で、時にはハマシ
ギなどと群れをなして干潟などで採餌する。ミミズ・ゴカイ類・甲殻類(トビムシ・子エビなど)・昆
虫(ガガンボやカの幼虫・トビゲラの幼虫など)・小貝・草の種子などを食べる。
世田谷区では、旅鳥として春は 4 月下旬から 5 月、秋は 8 月から 10 月に立ち寄る。例年、少数が多
摩川で見られるが、1999、2003 年は多く観察された。(全記録数 107 件 1951~2006 年)
○主な観察記録
1951.05.28 多摩川
1羽
1958.04.14 多摩川(野毛)
7羽
1995 09.13 多摩川
4羽
1997.05.12 多摩川(玉川)
10 羽
群れが赤岩を下流より上流に飛行
夏羽 中州で採餌 二子橋上流
1998.05.08 多摩川(鎌田 1)
3羽
1999.05.14 多摩川(玉堤 2)
28 羽
夏羽 中州で採餌
2001.08.06 多摩川(玉堤 2)
4羽
中州の浅瀬で採餌
2003.08.25~09.19 多摩川
1~28 羽
2004.08.19~09.10 多摩川(玉堤 2)
2006.05.12 多摩川(玉川 1)
2~5 羽
3羽
中州を移動しながら採餌
中州の水際
83.ヒバリシギ Calidris subminuta Long-toed Stint
シギ科
ユーラシア大陸の高緯度地方の東半分で繁殖し、インドネシアからボルネオにかけて越冬する。日
本では、旅鳥として北海道から奄美諸島に渡来し、本州や九州では一部越冬し、南西諸島では冬鳥。
海湾の干潟や浅瀬、海岸の砂浜、三角州、湖沼、水田などに生息するが数はあまり多くない。トウネ
ン、ハマシギの群れに混じって 1~2 羽又は 10 羽前後の小群で干潟や水田などで採餌する。甲殻類・
貝類・昆虫の幼虫などを食べる。
世田谷区では、秋に観察された下記 5 例の記録がある。(全記録数 5 件 1999~2003 年)
○観察記録
1999.10.08 多摩川
1羽
幼鳥 中州でトウネン 11 羽と休んでいる 新二子橋付近
2001.08.12 多摩川(上野毛 2)
1羽
中州中央部
2001.09.07 多摩川(玉堤 1)
1羽
中州で採餌
2002.09.29 多摩川(玉川 1)
1羽
中州で休んでいる
69
2003.09.05 多摩川(玉川 1)
1羽
中州の岸でトウネン 5 羽と採餌
84.オジロトウネン Calidris temminckii Temminck’s Stint
シギ科
ユーラシア大陸の北極圏に繁殖分布し、アフリカ大陸中部からインド、東南アジアにかけて越冬す
る。日本では、旅鳥として主に秋に見られ、北海道、本州、九州に渡来するが、本州中部以南では冬
鳥として越冬するものもある。淡水湿地、水田、湖沼、河川などに生息し、干潟など海岸に出ること
は稀である。双翅類の幼虫・成虫などの昆虫・小型の甲殻類・軟体動物・ミミズやゴカイ類などを食
べる。
世田谷区では、冬鳥として 8 月頃渡来し、翌年の 5 月頃渡去する。少数が多摩川で見られ、川岸や
中州で採餌する。(全記録数 56 件 1954~2007 年)
○主な観察記録
1954.03.12 多摩川
2羽
二子玉川
1958.03.04 多摩川(鎌田)
6羽
二子橋上流 読売飛行場西にて見る
1959.01.25 多摩川
10 羽
1996.03.16 多摩川(鎌田 1)
1羽
平瀬川との合流付近の中州で採餌
1998.03.26 多摩川(上野毛 2)
1羽
中州で採餌
1999.01.20 多摩川
2羽
2000.08.28 多摩川(玉川 1)
1羽
2002.01.22 多摩川(野毛 2)
3羽
2004.05.18 多摩川
1羽
2007.11.14 多摩川
1羽
夏羽 中州で採餌
中州を移動しながら採餌
85.ウズラシギ Calidris acuminata Sharp-tailed Sandpiper
シギ科
ユーラシア大陸の北極圏のヤナ川とコリマ川にかけてのごく限られた地域のみで繁殖し、インドネ
シアからニューギニア島、オーストラリア大陸で越冬する。日本では、旅鳥として 4 月から 5 月と 7
月から 11 月に全国に渡来する。海岸の水溜りや河口の干潟、河川の砂泥地、水を張った水田、溜池、
湖沼の砂泥地など、泥底の浅い水域に生息する。小型の甲殻類・軟体動物・双翅類などの昆虫・種子
などをついばんで食べる。
世田谷区では、旅鳥として春は 4 月から 5 月、秋は 10 月から 11 月に稀に立ち寄る。少数が多摩川
で見られ、中州で移動しながら採餌する。(全記録数 22 件 1953~2005 年)
○主な観察記録
1953.11.01 多摩川(野毛)
1羽
捕獲(農林省) 新田
1975.05.07 多摩川(玉堤)
1羽
丸子橋上流 1.5km
1~2 羽
小さな中州で採餌
1997.10.19~30 多摩川
2002.11.23 多摩川(玉川 3)
2003.04.17~19 多摩川(鎌田1)
1羽
3~4 羽
小さな中州の浅瀬で採餌
中州の水際を盛んに歩き回って採餌
2003.09.15~22 多摩川
1羽
新二子橋下流 300m 中州
2004.04.21~25 多摩川(玉川3)
1羽
二子橋~新二子橋
70
2004.05.22 多摩川
1羽
2005.05.01 多摩川
1羽
86.ハマシギ Calidris alpina Dunlin
シギ科
ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の北極圏に繁殖分布し、冬は地中海地域、アフリカ大陸、中国東
部、北アメリカ大陸南部などに渡って過ごす。日本では、冬鳥又は旅鳥として渡来する。北海道から
南西諸島に至る各地の海岸や内陸の河川で少数が越冬する。渡り期や越冬地では、海岸の砂浜、干潟、
溜池、水を張った水田、内陸の湖沼や大きい河川の砂泥地などで採餌する。繁殖地では草原ツンドラ
や泥炭草原ツンドラなどの湿性の草原に棲み、小丘状の乾いた部分で営巣する。水生昆虫の幼虫・ミ
ミズ・ゴカイ・ヨコエビなどの甲殻類を食べる。非繁殖期には群れで生活し、特に、春の渡りは大群
となり、数千、数万羽にも達することがある。
世田谷区では、
冬鳥として 10 月頃に渡来し、
翌年の 2 月から 4 月に渡去する。
毎年多摩川で見られ、
新二子橋周辺や谷沢川合流付近の中州で群れて採餌する。(全記録数 620 件 1979~2007 年)
○主な観察記録
1979.12.02 多摩川
1羽
写真
1995.04.21 多摩川(鎌田 1)
43 羽
1997.12.09 多摩川(鎌田 1)
36 羽
橋脚補強工事の仮堤防内の水溜りで採餌
1998.11.20 多摩川(野毛 2)
53 羽
中州の浅瀬で採餌
2000.11.11 多摩川(野毛 2)
22 羽
中州で休んでいる
2001.11.24 多摩川
21 羽
2003.02.27 多摩川
13 羽
2005.11.15 多摩川(玉堤 2)
17 羽
中州を移動しながら採餌
2006.11.15 多摩川
13 羽
定例調査
2007.12.18 多摩川(鎌田 1)
24 羽
新二子橋下の中州浅瀬で休息と採餌
87.サルハマシギ Calidris ferruginea Curlew Sandpiper
シギ科
ユーラシア大陸の環極地方のエニセイ川からコリマ川の極めて限られた地域で繁殖し、アフリカ大
陸、東南アジア、オ-ストラリア大陸に渡って越冬する。日本では、旅鳥として少数が、春は 4 月か
ら 6 月、秋は 8 月から 10 月に渡来し、海岸砂浜の水溜り、河口や入江の干潟、池沼の砂泥地などで見
られる。水に浸かる砂泥地を気忙しく歩き、くちばしの先でミシンの縫い針運動のような動作をしな
がら採食する。立ち止まって探りを入れゴカイ類・小貝類・甲殻類を食べる。
世田谷区では、下記 2 例の記録がある。(全記録数 6 件 2002 年)
○観察記録
2002.09.26~29 多摩川
1羽
第三京浜道多摩川橋上流の浅瀬
2002.11.26~12.03 多摩川(玉川 3、玉堤 1)
1羽
11/26 浅瀬で水浴びと採餌
71
88.エリマキシギ Philomachus pugnax Ruff
シギ科
ユーラシア大陸の高緯度地方から北極圏に繁殖分布し、冬はアフリカ大陸中東部からインド、オー
ストラリア大陸南部に渡って過ごす。日本では、旅鳥として少数が北海道から九州、奄美諸島、南西
諸島に渡来するが秋に多い。西日本では時々越冬する。湖沼、溜池、水田、干潟など、浅く水に浸か
る泥地に現れる。湿った泥面や浅い水面を歩きながら、昆虫・甲殻類・ミミズ・種子などをついばむ。
採餌中に背や肩羽が逆立っていることが多い。
世田谷区では、
稀な旅鳥として春は 3 月から 4 月、
秋は 9 月から 11 月に立ち寄る。
多摩川で見られ、
岸や中州の浅瀬で採餌する。(全記録数 25 件 2000~2007 年)
○観察記録
2000.03.17~27 多摩川(鎌田1)
2羽
雄 中州の浅瀬で頭部まで水中に入れて採餌
2000.09.19~24 多摩川(玉堤1)
1~2 羽
幼鳥、成鳥雌 コンクリート護岸の岸を歩いていた
2002.04.09 多摩川(玉堤 1)
1羽
雄 岸で採餌していたが釣り人が近づき中州へ飛ぶ
2002.11.14~24 多摩川
1羽
定例調査 二子橋~新二子橋 コンクリート岸辺を歩いていた
2003.04.16 多摩川
2羽
2003.09.19 多摩川
2羽
雌 中州の浅瀬で採餌
2004.04.16 多摩川(玉堤 2)
1羽
雄 中州から飛び立つ
2005.04.15 多摩川(鎌田 1)
1羽
雌 川原で頭部まで水面に入れて採餌
2007.04.06 多摩川(玉堤 1)
1羽
中州の岸を移動しながら採餌
89.オオハシシギ Limnodromus scolopaceus Long-billed Dowitcher
シギ科
ユーラシア大陸東部と北アメリカ大陸西部の北極圏に繁殖分布し、北アメリカ南部からメキシコに
かけて越冬する。日本では、旅鳥として北海道から九州、奄美諸島に渡来するが、九州や南西諸島で
は少数が越冬する。泥深い溜り水、溜池、水田、蓮田などに現れる。泥深い水の中をゆっくり歩きな
がら、長いくちばしを頭が水につくほど深く差し込み、昆虫、特に双翅類の幼虫や蛹を食べる。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(全記録数 1 件 2003 年)
○観察記録
2003.09.15 多摩川(野毛 2)
1羽
水の少ない川岸入り江にいた
90.ツルシギ Tringa erythropus Spotted Redshank
シギ科
ユーラシア大陸の高緯度地方や北極圏に繁殖分布し、アフリカ大陸中部からインド、東南アジアに
かけて越冬する。日本では、旅鳥として北海道から九州、南西諸島に渡来する。3 月から 5 月と 8 月
から 10 月に通過するが、春に多い。繁殖地では、森林限界近くの湿地、沼沢地、樹木の少ない荒れ地、
藪ツンドラなどに生息する。渡り期や越冬地では、海岸や湖沼岸の砂泥地、水田、溜池などに現れる。
浅い水の中の、それも他のシギ類に比べると深い所まで入り、歩いたり、泳いだりしながら水生昆虫
のゲンゴロウ・マツモムシ・貝類・カエル・オタマジャクシ・イモリ・小エビなどを採食する。
世田谷区では、旅鳥として稀に春と秋に立ち寄る。多摩川で見られ、春より秋に観察例が多い。
(全記録数 18 件 1959~2005 年)
72
○主な観察記録
1959.08.23 野毛
22 羽
1 群 自宅上空
1961.08.20 多摩川(野毛)
3羽
赤岩
1964.08.25 多摩川
8羽
下流より上流に飛び去る
1964.09.07~19 多摩川(玉堤)
1羽
コジキッタナ島に降りていた
1965.08.26 多摩川(野毛)
3羽
新田に降りていた
1969.08.23 多摩川(玉堤)
1羽
コジキッタナ
2002.04.02 多摩川(鎌田 1)
1羽
中間羽 川岸で採餌
2002.11.05 多摩川
1羽
2005.04.18 多摩川(玉堤 1)
1羽
雄 夏羽 中州の入り江で採餌
91.アカアシシギ Tringa totanus Redshank
シギ科
ユーラシア大陸の中緯度地方に繁殖分布し、冬は紅海、ペルシャ湾から中国南部、東南アジアにか
けての地域に渡って過ごす。日本では、旅鳥として全国の干潟・水田・湿地・ハス田などに少数が渡
来する。北海道東部(風蓮湖、春国岱ほか)で繁殖例があり、九州以南では越冬する。浅く水に浸かる
砂泥地を歩きながら、ゲンゴロウ・ガガンボの幼虫・トビゲラの幼虫・貝類・小ガニ・ミミズなどを
食べる。
世田谷区では、秋に観察された下記 2 例の記録がある。(環境省:絶滅危惧Ⅱ類 全記録数 3 件 2000、2003
年)
○主な観察記録
2000.09.26 多摩川(玉堤 1)
1羽
冬羽 中州の岸で採餌
2003.09.08 多摩川(上野毛 2)
1羽
幼鳥 中州を移動しながら採餌
92.コアオアシシギ Tringa stagnatilis Marsh Sandpiper
シギ科
ユーラシア大陸中央部のウクライナからバイカル湖にかけて分布し、アフリカ大陸からインド、東
南アジアを経て、オーストラリア大陸にかけて越冬する。日本では、旅鳥として少数が北海道から南
西諸島に渡来する。湖沼の縁、河川の砂泥地、水を張った水田、溜池の浅く水に浸かる泥地などに現
れる。浅い水のある砂泥地に入り、水生昆虫・小さい甲殻類・小貝類・小魚を食べる。
世田谷区では、稀な旅鳥として春と秋に立ち寄る。多摩川で見られ、草の茂った川岸で採餌してい
るのが観察されている。(全記録数 7 件 1995~2004 年)
○観察記録
1995.10.07 多摩川(玉堤 1)
1羽
釣り人に驚き、鳴きながら飛び去る
1996.09.29 多摩川(玉堤 1)
1羽
中州を移動しながら採餌
2000.08.22 多摩川(玉堤 1)
2羽
中州で採餌
2002.04.28~30 多摩川(玉川3)
1羽
小さな中州を移動しながら採餌
2003.09.08 多摩川(野毛 2)
2羽
川原の草が繁った水溜りで採餌
2004.05.14 多摩川(野毛 2)
1羽
川原を移動しながら採餌
73
93.アオアシシギ Tringa nebularia Greenshank
シギ科
ユーラシア大陸の高緯度地方に繁殖分布し、冬はアフリカ大陸中南部からインド、東南アジアを経
て、ニューギニア島、オーストラリア大陸にかけて過ごす。日本では、旅鳥として全国に渡来するが、
沖縄では少数が越冬する。河川、河口、干潟、湖沼、水田などの砂泥地で見られる。浅く水に浸かる
泥地を歩きながら、ついばんだり、くちばしで探りを入れたりして採餌する。水生昆虫・甲殻類・ミ
ミズ・カエル類や小魚も食べる。
世田谷区では、旅鳥として春は 5 月頃、秋は 8 月から 11 月に立ち寄る。例年多摩川で見られ、中州
や岸を移動しながら採餌する。
「ピッピッピッ」又は「ピョー」とよく鳴く。(全記録数 161 件 1951~2007
年)
○主な観察記録
1951.10.19 多摩川(野毛)
1羽
鳴きながら上流より下流へ
1955.09.22 多摩川(野毛)
4羽
赤岩で見る
1960.09.12 多摩川(野毛)
2羽
新田
1968.09.29 多摩川(玉堤)
1羽
コジキッタナ
1996.08.05 多摩川(玉堤 1)
12 羽
1998.07.31 多摩川(上野毛 2)
1羽
中州で採餌
2000.09.20 多摩川
2羽
08:30~12:00 同一場所から動かず
2002.10.03 多摩川(玉川 1)
2羽
鳴きながら下流
2003.04.27 多摩川(玉堤 1)
8羽
小さな中州を移動しながら採餌
2005.08.19 多摩川(野毛 2)
3羽
中州を移動しながら採餌
2007.10.19 多摩川(玉堤 2)
2羽
川原を移動しながら採餌
94.クサシギ Tringa ochropus
Green Sandpiper
シギ科
ユーラシア大陸の中・高緯度地方に繁殖分布し、冬はアフリカ大陸中部からインド、中国南部、東
南アジアなどに渡って過ごす。日本では、北海道から奄美諸島に旅鳥として渡来するが、秋によく見
られる。関東以西では少数が越冬する。河口、海岸の干潟、内陸の河川、溝、湖沼など、草の疎らな
砂泥地で見られる。浅く水に浸かる砂泥地を歩いて、表面にいる甲虫や双翅類などの昆虫・甲殻類・
クモ・軟体動物をついばみ、植物の種子なども食べる。渡り期や越冬期でも単独か数羽でいることが
多い。
世田谷区では、
旅鳥として春は 3 月から 5 月、
秋は 8 月から 11 月に立ち寄る。
多摩川で少数見られ、
中州や川岸の入り江などの草の茂った浅瀬で採餌する。(全記録数 64 件 1953~2007 年)
○主な観察記録
1953.08.28 多摩川(野毛)
1羽
1967.09.13 多摩川(野毛)
11 羽
新田
谷沢川流れ出しに降りていた
1970.04.24 多摩川
1羽
1982.04.19 多摩川
1羽
1995.11.10 多摩川
1羽
1996.03.19 多摩川(玉堤 1)
1羽
中州の岸で採餌
1998.05.13 多摩川(玉堤 2)
1羽
中州で採餌
74
2000.03.21 多摩川(野毛 2)
1羽
対岸で採餌していたが、バイクが近づき上流へ飛ぶ
2002.04.05 多摩川(玉堤 2)
1羽
低空で飛来し対岸に降りる
2004.11.08 多摩川(野毛 3)
1羽
草の茂った川岸を移動しながら採餌
2005.10.04 多摩川(玉堤 2)
1羽
幼鳥 対岸で採餌
2007.04.15 多摩川(玉堤 2)
1羽
中州で水に浸かって採餌
95.タカブシギ Tringa glareola
Wood Sandpiper
シギ科
ユーラシア大陸の高緯度地方に繁殖分布し、冬はアフリカ大陸、インド、東南アジア、ニュ-ギニ
ア島、オーストラリア大陸などに渡る。日本では、北海道から奄美諸島に旅鳥として渡来する。又、
関東以西では冬鳥として少数が越冬するものもいる。干潟、河川や河口の砂泥地、水田、湖沼岸の砂
泥地など、泥の多い水辺で見られる。2~3 羽の小群から 20 羽ぐらいの群れでいる。湿ったり、浅く
水に浸かる砂泥地を歩いて、ミズスマシ・オサムシなどの成虫・甲殻類・クモ・小さな貝類を食べる。
飛び立つ時に鳴くことが多い。
世田谷区では、旅鳥として春は 3 月から 5 月、秋は 8 月から 9 月に立ち寄る。多摩川で見られ、草
の茂った浅瀬で採餌する。(全記録数 39 件 1969~2007 年)
○主な観察記録
1969.09.01~17 多摩川(玉堤)
1~16 羽
20 羽
1972.08.30 多摩川(野毛)
コジキッタナ
第三京浜道多摩川橋
1984.09.03 多摩川
1羽
1996.08.05 多摩川(野毛 2)
1羽
浅瀬で採餌
1997.08.20 多摩川(野毛 2)
1羽
中州に降りていた
2001.08.20 多摩川(玉堤 2)
1羽
中州で採餌
2003.09.08~22 多摩川(野毛2)
1~5 羽
2004.04.13 多摩川(野毛 2)
2羽
川岸から飛び立つ
2005.08.23 多摩川(野毛 2)
2羽
対岸の流れの間を移動しながら採餌
2007.04.15 多摩川(野毛 2)
1羽
第三京浜道多摩川橋下流の中州で休んでいる
96.キアシシギ Heteroscelus brevipes Grey-tailed Tattler
シギ科
シベリア大陸の高緯度地方の東半分のごく限られた地域に点在して繁殖し、インドネシア、フィリ
ピン、ニューギニア島に渡って越冬する。日本では、旅鳥として北海道から南西諸島に渡来し、普通
に見られる。南西諸島では越冬するものもいる。海岸の砂浜、波打ち際や干潟、河川の砂泥地や砂礫
地、河口、岩場、水田に生息する。泥地や砂礫地で水の中に入って歩き、表面や水中から甲殻類や貝
類・ゴカイ・昆虫類などを食べる。
世田谷区では、旅鳥として春は 4 月下旬から 6 月上旬、秋は 7 月下旬から 9 月中旬に立ち寄る。多
摩川で多く、野川、仙川でも見られる。川原の浅瀬を数羽から十数羽が移動しながら採餌する。(全記
録数 681 件 1951~2007 年)
○主な観察記録
1952.08.04 多摩川
200 羽
上流より下流へ飛翔
75
1957.05.09 多摩川(野毛)
19 羽
11 羽と 8 羽の群れが新田上流より下流へ飛行
1963.05.24 多摩川(玉堤)
12 羽
上流から下流に飛ぶ コジキッタナ島
1970.05.09 多摩川(玉堤・玉川)
7羽
1992.05.13 野川
3羽
1998.05.11 多摩川
12 羽
2000.05.06 多摩川
26 羽
2003.05.21 仙川
2羽
二子橋上流、コジキッタナ
中之橋
2005.05.13 多摩川(玉堤 1)
21 羽
2006.05.31 野川(喜多見 7)
2羽
浅い水の中を歩きながら採食
2007.05.16 多摩川
7羽
定例調査
97.イソシギ Actitis hypoleucos Common Sandpiper
シギ科
ユーラシア大陸の中・高緯度地方に広く繁殖分布し、アフリカ大陸中南部からインド、中国南部、
東南アジア及びニューギニア島、オーストラリア大陸に渡って越冬する。日本では、全国に広く分布、
繁殖し、中部地方以南で越冬する。河川、湖沼、水田、畑地などに生息し、河川では河口部から亜高
山帯の上流部まで見られるが、特に川原の発達した中流域に多い。水辺を歩いて、昆虫をついばんだ
りほじくり出したりし、特にユスリカ類・トビケラ類などの水生昆虫の幼虫を採り、甲殻類、貝類、
魚類も食べる。繁殖期は 4 月から 7 月で、巣は川原の砂地に浅い窪みに、枯れ草を敷いて皿形に造る。
世田谷区では、留鳥として一年中生息している。多摩川、野川、仙川で見られ、多摩川で繁殖する。
草木の茂った中州で営巣し、5 月下旬から 6 月に雛が観察される。(全記録数 3075 件 1951~2007 年)
○主な繁殖記録
1963.05.24 多摩川(野毛)
1巣
1 卵、5/29 3 卵で抱卵中(毎日新聞) 6/17 3 雛生れる(NHK ニュース)谷沢
川流れ出し先島
1968.06.01 多摩川(野毛)
1巣
4 卵 抱卵中 6/2、抱卵している巣に約 4m 近づいたら、成鳥巣から出て偽
傷。6/10 10 時頃雛 1 羽孵化、1 卵は卵からくちばしを少し出していた。
6/11 1 卵雛 3 羽 雛 3 羽とも巣から約 1m 遠くの草の中にいたが成鳥が呼
んだら歩き出した。6/15、雛を川原の石のある所へつれていた。谷沢川流
れ出し
1996.05.27 多摩川(野毛 2)
雛3羽
中州で尻を上下に振り時々岸を走る
2002.06.03 多摩川(玉堤 1)
雛2羽
中州の岸を移動。成鳥は少し離れた所で見ている
2003.05.26 多摩川(玉堤 2)
雛3羽
中州の岸で尾を振りながら歩く 成鳥は 2m 位後ろから見ている
2004.06.17 多摩川(玉堤 1)
雛2羽
草木の茂った中州の岸を走る 成鳥は 3m 位後ろから見ている
2005.06.03 多摩川(玉堤 1)
雛3羽
草木の茂った中州の岸で成鳥の後を追う
2006.07.11 多摩川(玉堤 1)
雛2羽
中州の岸を走る
2007.06.21 多摩川(鎌田 2)
雛1羽
○主な観察記録
1954.08.09 多摩川(野毛)
10 羽
渡し場付近
1961.07.25 多摩川(玉堤)
18 羽
コジキッタナに降りていた
1970.04.06 多摩川(玉堤)
1羽
コジキッタナ島
76
1989.07.29 多摩川(玉堤)
1羽
1992.06.29 野川
10 羽
1995.09.13 多摩川
20 羽
1999.07.31 多摩川
31 羽
定例調査
2羽
定例調査
2003.09.10 多摩川
25 羽
定例調査
2004.01.21 多摩川
18 羽
定例調査
2005.02.02 仙川
2羽
定例調査
2006.09.08 野川
9羽
定例調査
16 羽
定例調査
2001.12.05 仙川
2007.09.19 多摩川
98.ソリハシシギ Xenus cinereus Terek Sandpiper
シギ科
ユーラシア大陸の高緯度地方で繁殖し、アフリカ大陸からインド、東南アジア、オーストラリアに
かけて越冬する。日本では、旅鳥として北海道から南西諸島に渡来し、秋に多く見られる。海岸の干
潟、水路、砂浜の溜り水、溜池などの砂泥地で、浅い水の中に入って採餌する。カニを好み、甲殻類
や双翅類も食べる。
世田谷区では、旅鳥として稀に立ち寄る。多摩川で見られ、春の記録はないが、秋は 1997 年から
2005 年まで毎年渡来し、1~2 羽が川原で観察された。(全記録数 21 件 1997~2005 年)
○観察記録
1997.08.18~22 多摩川(玉堤1)
2羽
アオアシシギ、キアシシギなどと一緒に餌を探していた
1998.09.11 多摩川(玉堤 1)
2羽
川原にいたが飛び立つ
1999.10.29 多摩川(玉堤 1)
1羽
川原で休んでいる
2000.08.03~09.01 多摩川
1~2 羽
夏羽 中州で採餌
2001.08.02~10 多摩川
1~2 羽
2002.08.06 多摩川(野毛 2)
1羽
2003.09.05 多摩川
1羽
2004.08.21~24 多摩川
1羽
2005.09.02 多摩川(上野毛 2)
1羽
対岸の浅瀬で採餌
中州の岸で休んでいる
99.オグロシギ Limosa limosa Black tailed Godwit
シギ科
ユーラシア大陸の中緯度地方に繁殖分布し、地中海地域、アフリカ大陸中部、東南アジア、オース
トラリア大陸にかけて越冬する。日本では、旅鳥として北海道から南西諸島にかけて渡来する。海岸
の河口部、干潟、湖沼や河川の砂泥地、水田、溜池など、水に浸かる泥地に現れる。海水域よりも淡
水域を好む傾向がある。長い脚と長いくちばしで、他のシギ類よりもいくらか深い所に入り、頭まで
水中に入れて、昆虫・甲殻類・二枚貝・ミミズ・ゴカイなどを食べる。
世田谷区では、春と秋に観察された下記 3 例の記録がある。(全記録数 3 件 2004、2005 年)
○観察記録
2004.04.28 多摩川(野毛 2)
1羽
川岸の湿地から飛び立つ
77
2004.08.21 多摩川(玉堤 2)
3羽
上流から飛来し川の中程の浅瀬に降り、1 羽はくちばしを背に入れ休む
2005.09.14 多摩川
1羽
定例調査
100.チュウシャクシギ Numenius phaeopus Whimbrel
シギ科
ユーラシア大陸の高緯度地方に点々と繁殖分布し、アフリカ大陸からインド、ニューギニア島、オ
ーストラリア大陸に渡って越冬する。日本では、旅鳥として北海道から南西諸島に渡来する。南西諸
島では少数が越冬する。海岸の干潟、砂浜の水溜り、河川の砂泥地、水田などで見られ、農耕地など
ではカエル・バッタ・昆虫類を食べる。海水域ではカニなどの甲殻類・子巻貝・二枚貝を食べる。
世田谷区では、旅鳥として春と秋に稀に立ち寄る。多摩川で見られ、数羽が川岸や浅瀬などで採餌
や水浴び、休息する。(全記録数 17 件 1938~2007 年)
○主な観察記録
1938.08.23 太子堂
1羽
1989.05.08 多摩川
1羽
1999.04.22~05.21 多摩川(鎌田 1)
1~3 羽
2000.04.28 多摩川(玉堤 2)
1羽
川原でくちばしを水面に入れ採餌
2001.05.01 多摩川(野毛 2)
1羽
川の中程の浅瀬で水浴やくちばしを背に入れて休む
2002.08.27 多摩川(玉堤 1)
1羽
川岸で休んでいたが、犬が近づき飛び去る
2003.09.03 多摩川(野毛 2)
2羽
上流から飛来し低空で下流へ
2004.05.04 多摩川(玉堤 2)
1羽
川岸を歩きながら採餌
2005.06.27 多摩川(鎌田 1)
1羽
元バンの池の近くの浅瀬
2007.04.26 多摩川(野毛)
1羽
下流に向かって飛翔
101.ヤマシギ Scolopax rusticola Woodcock
シギ科
ユーラシア大陸の中緯度地方に広く繁殖分布し、冬は同大陸南部、北アフリカ、中国南部、東南ア
ジアに渡って過ごす。日本では、北海道から本州中部・伊豆諸島で繁殖し、東北南部から四国、九州、
沖縄で越冬する。平低地や低山帯の常緑広葉樹林、落葉広葉樹林、針広混交林、スギ林、マツ林など
いろいろな林に生息するだけでなく、農耕地、河川敷、水湿地、潅木湿地、湿原など幅広い生息域を
もつが、夜行性と極端な隠遁生活のため、生息地での様子はよく分らない。主として動物食で、ミミ
ズや甲虫・双翅類の幼虫・ムカデ類・エビ・軟体動物など、植物食はイネ科やタデ科の種子を食べる。
夕方から夜間にかけて林を出て、河畔、水田、沼沢地などに現れ、薄暗い場所の湧き水、溜り水、細
い流れなどがある水湿地の地上で採餌する。単独でいることが多いが、冬は小群でいることもある。
世田谷区では、稀な冬鳥として 11 月頃渡来し、翌年の 4 月頃渡去する。1970 年頃まで等々力渓谷
公園で見られていたが、その後、成城や多摩川、深沢でも見られている。(全記録数 30 件 1949~2007 年)
○主な観察記録
1950.01.07 等々力渓谷公園
1羽
不動公園
1955.01.18 等々力渓谷公園
1羽
滝の山
1960.12.18 等々力渓谷公園
1羽
滝の山
1967.02.13 成城
1羽
成城学園図書館の林
78
1977.04.02 岡本静嘉堂周辺
2羽
1997.01.25 多摩川(野毛 2)
1羽
水のほとんどない川岸の入り江の草陰で休んでいる
1998.03.23 多摩川
1羽
草地からゆっくり飛び立ち川崎側へ去る
2003.03.21 多摩川(鎌田 1)
1羽
枯れた草原の窪地にいたが人が近づき 50m 位飛んで降りる
2007.11.05 深沢
1羽
上空
102.タシギ Gallinago gallinago Snipe
シギ科
ユーラシア大陸北部、北アメリカ大陸北部で繁殖し、ヨーロッパ、アフリカ、東南アジア、北アメ
リカ南部で越冬する。日本では、冬鳥として本州中部以南に渡来する。干潟、溜池、沼地、水田、河
川などの縁やまた隠れた泥地などで見られる。水田では畦の近くの水に浸かるような所にいる。湿地
を歩き、上下にしごくようにしながら探り当てて採餌する。昆虫の幼虫・ミミズ・小型の甲殻類・小
型の軟体動物などを食べる。非繁殖期は小群で過ごす。
世田谷区では、冬鳥として 8 月から 10 月に渡来し、翌年の 5 月中旬に渡去する。多摩川や野川など
で春と秋によく見られるほかに、等々力、喜多見、千歳台、仙川などでも見られている。草の茂った
川岸や中州の入り江、池、草原などで採餌や休息しているのが観察されている、
。(全記録数 596 件 1950
~2007 年)
○主な観察記録
1953.09.22 等々力
3羽
畑に降りる
1966.03.06 喜多見
50 羽
狛江市境の湿地に降りた
1968.01.19 喜多見
17 羽
小田急線北側 鳥獣保護区
1975.05.07 多摩川(玉堤)
2羽
丸子橋上流 1.5km
1990.04.30 多摩川(玉堤)
1羽
1998.04.14 多摩川(鎌田 1)
9羽
中州で休んでいる
2002.12.04 仙川
1羽
定例調査
2003.09.05 多摩川
4羽
2005.03.02 千歳台 4
1羽
畑で虫を採り公園へ飛ぶ
2006.04.19 多摩川
7羽
定例調査
2007.10.02~12.25 野川(宇奈根~喜多見 7)
1~7 羽
採餌
103.チュウジシギ Gallinago megala Swinhoe’s Snipe
シギ科
ユーラシア大陸中央部のバイカル湖周辺に繁殖分布し、インドからマレーシア、インドネシア、ニ
ューギニア島、オーストラリア大陸に渡って越冬する。日本では、旅鳥として北海道、本州、四国、
九州、南西諸島に少数が渡来する。湿地、水田、農耕地などで見られ、地上に水が浸み出るような所
で採餌する。長いくちばしを土壌に深く差し込んで、ミミズ・昆虫・陸産貝類などを食べる。
世田谷区では、旅鳥として立ち寄っていたが、1970 年以降観察されていない。(全記録数 16 件 1954
~1969 年)
○主な観察記録
1954.09.09 多摩川(野毛)
1羽
捕獲 新田の川原
79
1955.07.21 多摩川(玉堤)
1羽
鳴きながら向畑上空を北東より南方に飛行する
1958.04.30 多摩川(野毛)
2羽
草原にいた 赤岩
1961.03.26 多摩川(玉堤)
1羽
コジキッタナ
1962.04.04 多摩川(玉堤)
1羽
コジキッタナ
1963.08.20 多摩川(玉堤)
1羽
コジキッタナ
1964.10.03 多摩川(玉堤)
5羽
等々力の川原から飛び立ち上流へ
1969.09.15 多摩川(玉堤)
1羽
コジキッタナ
104.オオジシギ Gallinago hardwickii Latham’s Snipe
シギ科
ユーラシア大陸極東部のサハリンと日本列島に限られて繁殖分布し、冬はオーストラリア大陸東南
部に渡る。日本では、夏鳥として北海道から本州中部に渡来し、繁殖する。渡り時期には本州以南の
各地で見られる。低地から標高 1,400m 位の高原まで現れ、比較的広々とした草原や荒れ地上の潅木草
原に棲む。繁殖地では、大小の池が散在する湿地草原、潅木が散在する湿原周辺の草原を好む。渡り
時期には水田、ハス田、池や河川の周辺の砂泥地で見られる。河川や湖沼縁の水に浸かるか湿った泥
地の地上で、昆虫の幼虫・ミミズ・甲殻類などや草の種子・葉・根などを食べる。
世田谷区では、旅鳥として春は 4 月から 5 月、秋は 9 月頃渡来する。多摩川の川岸や草原で観察さ
れる。(東京都:Cランク、環境省:準絶滅危惧 全記録数 20 件 1952~2007 年)
○主な観察記録
1952.04.18 多摩川
1羽
飛び立った時ゲェッと鳴く
1957.05.01 多摩川(玉堤)
2羽
宮内で見る
1970.05.16 多摩川(玉堤)
1羽
コジキッタナ島
1996.04.12 多摩川(鎌田 1)
1羽
枯れたヨシ原にいたが人に驚きゲィと鳴き飛び立つ
2001.09.21 多摩川(玉堤 1)
2羽
上流から飛来し中州の岸に降りる
2002.04.13 多摩川(鎌田 1)
1羽
人に驚きヨシ原から飛び立つ
2003.04.25 多摩川(鎌田 1)
3羽
オギの海より鳴いて飛び立ち、すぐ降りる
2004.04.13 多摩川(鎌田 1)
1羽
人に驚きオギの海からゲィと鳴き飛び立つ
2005.09.14 多摩川
5羽
定例調査
2007.04.11 多摩川(鎌田 1)
2羽
オギの海調査
105.セイタカシギ Himantopus himantopus Black-winged Stilt
セイタカシギ科
アフリカ大陸中南部、ユーラシア大陸南部、インド、東南アジア、オーストラリア大陸南部、北ア
メリカ大陸南部、南アメリカにかけて点々と不連続に繁殖分布する。日本では、主に旅鳥として各地
の干潟、河口、水田、池、湖沼、河川、湿地などに渡来するが、千葉、東京、愛知県では留鳥。愛知
県や東京湾沿いの埋立地や湿地で繁殖している。双翅類・小さな甲殻類・小魚・オタマジャクシなど
を食べる。繁殖期は 5 月から 7 月、一夫一妻で繁殖する。巣は、乾いて開けた場所の草が疎らな砂泥
地の浅い窪みに造る。
世田谷区では、旅鳥として稀に春と秋に多摩川に立ち寄る。(東京都:C ランク、環境省:絶滅危惧Ⅱ類 全
記録数 10 件 1990~2007 年)
80
○観察記録
1990.05.28 多摩川
1羽
雄 川原の浅瀬を移動しながら採餌
1998.04.28 多摩川(玉堤 2)
1羽
1999.09.13 多摩川(鎌田 1)
1羽
雄 川原で休んでいたが人が近づき上流へ飛び立つ
2003.09.28 多摩川(鎌田 1)
2羽
下流から飛来し上流へ
2005.04.17~25 多摩川
1羽
雌
2007.10.06 多摩川(玉川 1)
1羽
幼鳥 護岸散策路下テトラポッドで休息、立ち上がり伸び後近くを鳴きな
がらゆっくり歩く。その後飛び立ち見えなくなるが、また同じ場所に戻る
106.ハイイロヒレアシシギ Phalaropus fulicarius Grey Phalarope
ヒレアシシギ科
ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の北極圏、環極地方と北極海の島々に繁殖分布し、アカエリヒレ
シシギよりさらに北極寄りに繁殖する。冬はアフリカ大陸西部・南部や南アメリカ大陸西南部に渡っ
て過ごす。日本では、旅鳥として北海道から九州、伊豆諸島に渡来する。海洋性の鳥で、あまり海岸
に近づかない。海が荒れた時に内陸へ入ることがあるが、アカエリヒレアシシギほど多くない。双翅
類の成虫・幼虫・甲虫・甲殻類・小魚など食べる。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(全記録数 1 件 1972 年)
○観察記録
1972.05.02 多摩川
1羽
写真
107.アカエリヒレアシシギ Phalaropus lobatus Red-necked Phalarope ヒレアシシギ科
ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の北極海沿岸で繁殖し、インド洋沖、南太平洋沖、ペルー沖など
で越冬する。日本では、旅鳥として北海道から九州、南西諸島にかけて渡来する。東北地方以南の海
上では少数が越冬することもある。主として海上に生息するが、渡り途中に埋立地の水溜り、港、海
岸近くの湖沼、河川、水田に入ることもある。甲虫類・ハエ類・ハチ類などの幼虫や成虫・小さい甲
殻類・クモ類、水草の種子などを食べる。非繁殖期は小群で過ごす。
世田谷区では、旅鳥として春は 5 月頃、秋は 8 月下旬から 9 月中旬に立ち寄る。多摩川で見られ、
流れの少ない浅瀬や中州の入り江などで、浮くように移動したり、クルクル回りながら採餌する。(全
記録数 28 件 1971~2007 年)
○主な観察記録
1971.09.02 多摩川
1羽
1981.08.23 多摩川
50 羽
写真
二子玉川
1996.05.15 多摩川(野毛 2)
1羽
雌 川原の浅瀬を浮くように歩いて採餌
1999.05.14 多摩川(玉堤 1)
1羽
雄 浅瀬でくるくる回りながら採餌
2000.05.23 多摩川(鎌田 1)
2羽
雌雄 浅瀬を浮くように歩いて採餌
2001.05.13 多摩川(野毛 2)
1羽
雄 川原の浅瀬でくるくる回りながら採餌
2002.04.19 多摩川(野毛 2)
1羽
雄の中間羽 浅瀬を浮くように歩いて採餌
2003.09.03 多摩川(野毛 2)
6羽
冬羽 4、幼鳥 2 羽 川原のイヌタデが茂った所を浮きながら採餌
2004.08.27 多摩川(玉堤 1)
1羽
冬羽 中州の浅瀬を歩きながら採餌
81
2005.08.26 多摩川(玉堤 2)
3羽
濁流の水面近くを下流に向かって飛翔
2007.05.15 多摩川(鎌田 2)
1羽
コアジサシ調査 水面に着水するがすぐ飛び立つ
108.ツバメチドリ Glareola maldivarum Indian Pratincole
ツバメチドリ科
ユーラシア大陸極東部の中国北東部から東南アジアのマレー半島を経て、インド北部で繁殖し、冬
はインドから東南アジア、フィリピン、ボルネオ島、ニューギニア島、オーストラリア大陸に渡る。
日本では、旅鳥及び夏鳥として本州から南西諸島に渡来する。関東、東海、近畿、中国、九州、沖縄
など各地方で局地的に繁殖する。農耕地や荒地で単独及びコロニーをつくり、地上で営巣する。シロ
チドリやコアジサシのコロニーに混じって営巣することもある。干潟や海岸の湿地草原や荒れ地状草
原、干拓地、河口の三角州、砂浜、湖畔、河川敷、河畔や農耕地などで見られ、開けて植生の疎らな
露出地面の多い所を好む。昆虫食が中心で、トンボ類や直翅類を食べる。
世田谷区では、旅鳥として稀に立ち寄るが、繁殖期にも見られ、多摩川で休息やハチを捕るなどが
観察されている。(環境省:絶滅危惧Ⅱ類 全記録数 16 件 1954~2007 年)
○観察記録
1954.07.11~16 多摩川(鎌田2)
1~3 羽
わかもと工場下の川原
1954.08.14 多摩川(鎌田 2)
1羽
わかもと工場下の川原
1997.10.17 多摩川(玉堤 1)
3羽
中州で休んでいたが何かに驚き飛び立つ
2001.06.16~07.03 多摩川
1羽
大きなハチを中州から飛び立って捕る。中州で休んでいると近くで営
巣しているコチドリ、コアジサシから威嚇される。飛翔しているとき
はクリリと鳴く
2005.09.13 多摩川(野毛 3)
1羽
飛翔しながらクリリと鳴き、時々中州に降りる
2006.05.15 多摩川(鎌田 1)
1羽
上空通過し、上流へ
2007.06.05~06 多摩川(鎌田2)
1羽
コアジサシ調査 上流からコアジサシ営巣地の上空に飛来、コアジサ
シにモビングされるが中州に降りる。
109.シロハラトウゾクカモメ Stercorarius longicaudus Long-tailed Skua
トウゾクカモメ科
ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の寒帯・亜寒帯で繁殖し、冬は熱帯地域から南半球まで渡るもの
もいる。日本では、旅鳥として春から夏にかけて主に太平洋の沖合を渡りの途中で通過するが、数は
少ない。外洋性の海鳥で、繁殖期以外は沖合で生息することが多く、海岸や内陸で記録されることは
稀である。小型のカモメ類、ウミスズメ類、アジサシ類などを、空中でホバリングしたり急降下して
追い回し、食べ物を奪う。小型の哺乳類・小鳥や卵・昆虫を食べる。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(全記録数 1 件 2000 年)
○観察記録
2000.05.11 多摩川(玉堤 1)
1羽
上流から高さ 50m 位で飛来し下流へ
82
110.ユリカモメ Larus ridibundus Black-headed Gull
カモメ科
ユーラシア大陸の中緯度地方に広く繁殖分布し、冬は地中海地域やアフリカ大陸北部からインド、
中国東部、東南アジアにかけて南下する。日本では、冬鳥として本州、四国、九州などに渡来する。
北海道では旅鳥。海岸の漁港、河口、干潟、内陸の湖沼、大きい河川、耕作されて水を張った水田な
どで見られ、小魚・ゴカイ・昆虫類・死肉、果実などを食べる。早朝に内陸に入り、そこで 1 日を過
ごすものも夕方には海に戻る。塒(ねぐら)は海上が普通だが、広い川や湖沼で眠るものもいる。
世田谷区では、冬鳥として 8 月下旬から 10 月に渡来し、翌年の 4 月中旬から 5 月中旬に渡去する。
多摩川、野川、仙川で見られ、多摩川の平瀬川や谷沢川との合流点付近で多い。朝方、河口から飛来
し、夕方には河口へ戻る。2000 年頃まで多く渡来していたが、2003 年頃から急激に減少する。川面、
川原、緑地で採餌や休息し、夕方に河口に向かう際、大きな渦巻き状の柱をつくることがある。(全記
録数 2013 件 1946~2007 年)
○主な観察記録
1948.10.28 多摩川(野毛)
1羽
正午頃 赤岩にて目撃す
1957.02.09 多摩川(野毛)
8羽
群れが渡し場上空を下流から上流に飛行
1968.01.14 多摩川(玉堤)
3000 羽
1979.08.09 多摩川
15 羽
1991.02.28 野川
12 羽
1995.12.28 多摩川
2000.11.21 多摩川(玉川 1)
2002.12.04 仙川
840 羽
14 羽
880 羽
2005.12.09 多摩川
268 羽
2007.01.24 多摩川
丸子橋~二子橋 幼鳥、夏羽多い
5500 羽
2003.03.02 多摩川(野毛 2)
2006.12.13 野川(喜多見 7)
コジキッタナに降りていた
57 羽
110 羽
内、300~400 羽ユリカモメの柱ができる
定例調査
グランドの芝生で休んでいる
投げた餌に群がる
定例調査
111.セグロカモメ Larus argentatus Herring Gull
カモメ科
ユーラシア大陸の高緯度地方、地中海地域から中央アジアの湖沼地帯、北アメリカ大陸の高緯度地
方の湖沼地帯に繁殖分布し、冬は地中海から太平洋をとり巻く沿岸に南下して広範囲に広がる。日本
では、冬鳥として北海道から南西諸島にかけて渡来する。沿岸部、沖合い、港、河口、河川、湖沼な
どに生息し、大群で洋上に浮いて塒をとることもある。水産加工の廃棄物や魚などの屍肉・貝類・ヒ
トデなどを食べる。繁殖期は 4 月から 7 月、コロニーに集合して繁殖し、狭い縄張りをもって分散す
る。
世田谷区では、冬鳥として 9 月下旬から 10 月上旬に渡来し、翌年の 4 月に渡去する。多摩川の新二
子橋周辺や谷沢川合流付近で多く、中州の水際や橋の照明灯で休む。野川でも少数が見られる。春は
産卵後のコイやマルタを食べているのが観察される。(全記録数 1444 件 1963~2007 年)
○主な観察記録
1963.03.15 多摩川
1羽
1989.02.26 多摩川(玉堤)
7羽
1995.02.11 野川
1羽
定例調査
83
1999.03.26 多摩川
24 羽
2001.03.15 多摩川
41 羽
2002.01.08 多摩川
67 羽
内、6 羽が 4 カ所の川原でコイやマルタを食べている
2002.01.19 野川
1羽
ユリカモメの群れにいた
2004.10.08 多摩川(野毛 3)
1羽
成鳥上空からダイビングして小魚を捕る
2005.04.07 多摩川
23 羽
2006.01.18 多摩川
22 羽
定例調査
2007.03.14 多摩川
19 羽
定例調査
112.オオセグロカモメ Larus schistisagus Slaty-backed Gull
カモメ科
日本海、オホ-ツク海、ベーリング海のアジア側に分布する。これらの沿岸で繁殖し、冬は周辺の
海域に広がり、東シナ海北部まで南下する。日本では、留鳥として北海道と東北地方北部で繁殖し、
それ以南では冬鳥だが、西日本には少ない。繁殖期はコロニーに集まり、一夫一妻で繁殖する。ヒナ
は約 40 日で巣立ち、巣立ち後の 10 日位は親からの給餌を受ける。非繁殖期には比較的沿岸にいて、
岩石海岸、河口部、砂浜海岸、漁港などで見られ、北海道では海岸地域の市街地や牧場にも入ってく
る。しばしば海岸の防波堤に止まって休息する。動物の死体や生体を食べるほか、市街地や農地・牧
場などのゴミ捨て場に集まり、ゴミをあさることも多い。ウミネコやウミスズメ類の卵や雛、小型の
成鳥なども食べる。
世田谷区では、冬鳥として 10 月から 11 月に渡来し、翌年の 3 月から 4 月に渡去する。1996 年に初
記録。2000 年頃から観察例が増え始めたが、個体数は少ない。カモメ類の群れと一緒にいることは少
なく、単独で川原で休む。(全記録数 251 件 1996~2007 年)
○主な観察記録
1996.03.09 多摩川
1羽
1998.11.13 多摩川
1羽
川原で死んでいるコイの目をつっつく
1999.12.20 多摩川(鎌田 1)
2羽
中州で休んでいる
2000.01.05 多摩川
1羽
水に浸りながら羽づくろい
2001.12.19 多摩川
1羽
2002.04.04 多摩川
3羽
2003.04.19~06.03 多摩川
1羽
成鳥夏羽 早朝下流から飛来し中州で休む
2005.02.22 多摩川(野毛 2)
1羽
川面で約 20cm のコイを捕らえ中州まで運んで食べる
2006.03.09 多摩川(鎌田 1)
3羽
中州水際で休息
2007.12.17 多摩川(玉堤 2)
1羽
中州の岸で休息
113.シロカモメ Larus hyperboreus Glaucous Gull
カモメ科
ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の北極圏、
グリ-ンランドに繁殖分布し、
冬もこの一帯にいるが、
いくらか南下し、両大陸の中緯度地方の沿岸に現れる。日本では、冬鳥として九州以北に渡来する。
個体数は多くないが、北海道と本州北部で多い。河口、漁港、崖地、岩礁地、砂浜などで見られ、海
上にも出ていくが、
遠く外洋に出ることはない。
海岸部に沿って往復して飛び続けながら下方を探し、
84
餌が見つかると舞い降りて、飛びながらくちばしでくわえ捕ったり、地上や水面に降りてついばんだ
りする。又、海鳥・魚類・カニ類・ウニ類などの死骸を拾い食いしたり、漁港や人家、漁船などから
廃棄されるゴミに集まったりもする。
世田谷区では、下記 2 例の記録がある。(全記録数 2 件 1952、2000 年)
○観察記録
1952.10.10 多摩川
1羽
2000.11.27 多摩川
1羽
114.カモメ Larus canus Common Gull
カモメ科
ユーラシア大陸の高緯度地方、北アフリカ大陸のアラスカのい繁殖分布し、冬はヨーロッパ、地中
海地域、中国東部、日本海周辺、北アメリカ西部などの沿岸まで南下する。日本では、北海道から沖
縄島にかけて冬鳥として渡来する。主として海岸で見られ、港湾や河口、沿岸からあまり離れない洋
上でも見られる。捨てられた死肉をあさったり、他の海鳥を襲って食物を奪い取ったりする。淡水で
は魚・軟体動物・昆虫・カエルなど、又、海岸ではヒトデ・ウニ・甲殻類を食べる。
世田谷区では、冬鳥として毎年渡来するが個体数が少なく、初認日や終認日が一定しない。多摩川
で見られるが、仙川では稀である。2001 年は数羽が長く滞在した。(全記録数 109 件 1952~2007 年)
○主な観察記録
1952.10.06 多摩川(玉堤)
1羽
1976.09.13 上馬
1羽
1995.02.07 多摩川
1羽
1996.01.21 多摩川
2羽
1997.12.26 多摩川
1羽
1998.02.02 多摩川
2羽
2000.03.24 多摩川
5羽
2001.01.12 多摩川
3羽
2003.11.24 多摩川
1羽
2005.11.21 多摩川
1羽
2007.01.18 多摩川(玉堤 2)
1羽
保護
ユリカモメ約 80 羽と中州の岸で休んでいる
115.ウミネコ Larus crassirostris Black-tailed Gull
カモメ科
オホーツク海、日本海、黄海北部、日本列島の太平洋沿岸に分布する。これらの沿岸で繁殖し、冬
は中国南部の海域まで南下する。日本では、北海道、本州、九州の沿岸各地で繁殖し、冬はほぼ全国
の海域に広がる。繁殖コロニーは、北海道の天売島・知床半島、青森県蕪島、岩手県椿島、宮城県江
島、東京都八丈小島などで、蕪島はウミネコ繁殖地として天然記念物に指定されている。岩礁や漁港、
港の防波堤、河口部の中州、砂浜などに降りて休息する。大きい河川の上流に遡ったり、海が荒れる
と市街地の川や池に現れる。イワシの群れを狙うウミスズメにつきまとい、上空に群がって旋回し、
浮き上がる魚を捕ったり、小型の魚・甲殻類・ゴカイ・漁船や漁港で捨てられた魚の破片などを食べ
たりする。繁殖期は 4 月から 7 月、一夫一妻で繁殖する。巣は、地上に枯れ草を集めて浅い皿形に造
85
る。
世田谷区では、秋に渡来する旅鳥だが、東京湾で周遊する若鳥は 6 月中旬頃に定期的に飛来し、成
鳥や幼鳥は 9 月中旬に渡来する。11 月下旬から 12 月上旬に渡去し、1 月から 5 月は稀である。多摩川
で多く、野川で見られた例もある。浅瀬や川岸で魚を捕り、中州や橋の照明灯などで休息する。(全記
録数 855 件 1952~2007 年)
○主な観察記録
1952.10.06 多摩川(玉堤)
45 羽
1969.09.15 多摩川(玉堤)
14 羽
コジキッタナ
1979.08.09 多摩川
73 羽
丸子橋~二子橋
1995.10.13 多摩川
13 羽
1997.08.08 多摩川
5羽
1999.10.21 多摩川(野毛 3)
2羽
内、成鳥 1 羽が川原で死んでいるアユをつっつく
2000.10.13 多摩川
10 羽
内、成鳥 2、若鳥 4 羽 新二子橋の照明灯で休む
2001.09.29 多摩川
33 羽
2003.07.12 多摩川(野毛 2)
1羽
若鳥 川原にいて、飛んでいるハチを首を伸ばして捕る
2004.09.24 多摩川
6羽
内、若鳥 3 羽 橋の照明灯で休んでいる
2005.09.27 多摩川
6羽
2007.09.25 多摩川
56 羽
定例調査
116.ミツユビカモメ Rissa tridactyla Kittiwake
カモメ科
北極海の島々や沿岸、ベーリング海の沿岸、アリューシャン列島などに繁殖分布する。日本では、
冬鳥として九州以北に渡来し、11 月から翌年の 4 月頃まで見られる。北海道の知床半島では 7 月にも
観察されており、繁殖が推測されている。非繁殖期は、群れで海上を飛び交い水面近くに降りて飛び
ながらついばんだり、泳ぎながら首を水中に入れたりして、魚や甲殻類などを食べる。
世田谷区では、下記 2 例の記録がある。(全記録数 2 件 2001、2002 年)
○観察記録
2001.02.19 多摩川(玉堤 2)
1羽
成鳥 ユリカモメ、セグロカモメ、カモメと川原で休んでいる
2002.01.22 多摩川(鎌田 1)
1羽
第 1 回冬羽 中州でユリカモメ、セグロカモメ約 400 羽と休んでいる
117.ハジロクロハラアジサシ Chlidonias leucopterus White-winged Black Tern
カモメ科
ヨーロッパ南東部から中央アフリカ、中国東北部で繁殖し、アフリカ、東南アジア、インド、オー
ストラリアで越冬する。日本では、北海道から九州及び南西諸島に数少ない旅鳥として渡来し、海岸
近くの干潟、河川、湖沼に現れる。水上をひらひらと飛び回り、主に昆虫・小魚・カエルなどを食べ
る。
世田谷区では、旅鳥として稀に立ち寄る。1996 年に初記録。2000 年以降見られるようになる。多摩
川の中州で休んでいるのが観察されている。(全記録数 17 件 1996~2007 年)
○観察記録
86
1996.09.13 多摩川(玉堤 1)
1羽
幼鳥 朝から夕方まで川岸に降りていた
2002.10.06~20 多摩川
1~2 羽
幼鳥、成鳥 川原で時々休む
2005.06.03~05 多摩川
1羽
2005.07.01~05 多摩川(玉川1)
2羽
第 1 回夏羽 中州の岸でコアジサシ 6 羽と休んでいる
2007.09.07 多摩川(鎌田 1)
2羽
河川が増水し、グランドで休んでいる
118.クロハラアジサシ Chlidonias hybridus Whiskered Tern
カモメ科
中央アジアから地中海地域に繁殖地が多く、アフリカ大陸中部からインド、オーストラリア大陸に
かけて越冬する。日本では、旅鳥として渡来し、海岸から内陸までの湿地、湖沼、干潟、河口、河川
などの水域に現れる。水田や湿地、あるいは湖沼などの水面で採餌する。他のアジサシ類のようにダ
イビングすることは少なく、ホバリングして、水面からすくいとったり、つまみあげることが多い。
草地で採餌することもある。昆虫の成虫や幼虫・小魚などを食べる。
世田谷区では、旅鳥として稀に多摩川に立ち寄る。2001 年に初記録。その後隔年に観察されるよう
になる。下記 4 例の記録がある。(全記録数 11 件 2001~2007 年)
○観察記録
2001.06.08 多摩川(玉堤 1)
2羽
夏羽 中州でコアジサシの群れと休んでいる
2002.10.06~18 多摩川(玉川 1)
1羽
幼鳥 中州で時々休む
2004.05.27~06.02 多摩川(玉堤 1)
1羽
夏羽 川岸に沿うように低く飛びゆっくり川面に降り小魚を捕る
2007.07.16 多摩川(玉堤 1)
1羽
夏羽 水面近くを飛翔
119.アジサシ Sterna hirundo Common Tern
カモメ科
ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の中緯度地方に繁殖し、冬はアフリカ大陸、東南アジア、ニュー
ギニア島、中央アメリカ、南アメリカ大陸などの赤道付近に渡って過ごす。日本では、各地に旅鳥と
して渡来する。海岸の河口、干潟、大きい湖沼、大きい川などに飛来する。水面上 1~6m 位の高さか
ら水面に向けてダイビングするが、水面に近づいて捕ることもある。魚や甲殻類を捕えるが、他のア
ジサシから奪いとることもある。年中群れで過ごすが、2~10 羽ぐらいの小群でいることも多い。
世田谷区では、旅鳥として春は 5 月から 6 月、秋は 8 月から 10 月に立ち寄る。多摩川で見られ、休
息や飛翔していることが多く、採餌例はない。(全記録数 70 件 1959~2007 年)
○主な観察記録
1959.09.20 多摩川(野毛)
9羽
飛翔中 渡し場
1963.08.26 多摩川(野毛)
5羽
谷沢川流れ出し先島
1969.05.17 多摩川(玉堤)
250 羽
1997.08.22 多摩川
1羽
1999.08.20 多摩川
2羽
2001.09.11 多摩川
30 羽
2003.05.06 多摩川
1羽
2004.09.26 多摩川
1羽
2005.09.07 多摩川
24 羽
河川上空を飛翔 コジキッタナ
鳴きながら上流へ
台風通過直後、濁流の上空を群れで行き来していた
87
2007.09.19 多摩川
1羽
定例調査
120.ベニアジサシ Sterna dougallii Roseate Tern
カモメ科
インド洋、太平洋、大西洋の熱帯・亜熱帯に局地的に繁殖分布し、海岸や岩礁にコロニーをつくっ
て繁殖する。日本では、奄美列島以南の南西諸島及び福岡県有明海の人工島に夏鳥として渡来し、繁
殖する。本州、四国、九州でも稀に観察される。沿岸の草の疎らな砂浜に窪みを巣とし、岩礁の上に
直接産卵するが、植物の茎や葉をいくらか用いる。海岸や海洋上空を羽ばたいて飛び回り、海の表層
にいる魚やイカを食べる。又、水面に降りて小魚をついばむことも多い。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(環境省:絶滅危惧Ⅱ類 全記録数 1 件 2007 年)
○観察記録
2007.09.07 多摩川(鎌田 1)
1羽
台風通過後、河川が増水しアジサシ、ハジロクロハラアジサシ、コアジサ
シの群れとグランドで休息
121.セグロアジサアシ Sterna fuscata Sooty Tern
カモメ科
世界各地の熱帯・亜熱帯の島や沿岸で繁殖する。日本では、南西諸島、小笠原諸島、南鳥島などに
夏鳥として渡来し、繁殖する。繁殖地以外では、北海道、本州、四国などに台風などで迷行の記録が
ある。海岸や洋上で生活するアジサシ類で、沿岸や島嶼の海岸や岩礁で集団繁殖する。繁殖地として、
砂浜や背の低い草が生育する開けた平坦地を好み、島の周辺の比較的波の静かなところに多い。アジ
サシ類の中でも特に外洋で採餌する性質が著しく、長距離を飛び続けることができる。繁殖期には地
上に降り、もっぱら砂や岩の上で休息する。羽毛に防水機能がなく、長時間水面に浮くことはできな
い。海岸や海洋の上空をヒラヒラと羽ばたいて飛び回り、獲物を見つけると上空から直角に急降下し
て海の表面にいる魚類やイカなどの軟体動物を食べる。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(全記録数 1 件 1966 年)
○観察記録
1966.09.25 多摩川(野毛)
2羽
10:00 頃 谷沢川流れ出し先に飛来
122.コアジサシ Sterna albifrons Little Tern
カモメ科
繁殖地はユーラシア大陸の西部と東部、北アメリカ大陸の東南部に集中し、冬は各大陸の赤道近く
やオーストラリア、ニュージーランド方面へ渡る。日本では、夏鳥として 4 月ごろ本州以南に渡来し、
9 月下旬頃渡去する。本州以南の海岸、埋立地や大きな河川の川原、中州、近年になってビルの屋上
などで繁殖する。砂地や砂礫地に浅い窪みを掘って巣を造る。繁殖期は 5 月から 8 月で、年中集合性
があり、繁殖期にもコロニーをつくる。上空から水中に飛び込んでイカナゴ・イワシ・ハゼ・アユ・
コイ・フナなどを捕る。
世田谷区では、夏鳥として 4 月中旬から下旬に渡来し、7 月下旬から 8 月上旬に渡去する。多摩川
で 1960 年頃まで繁殖していたが、河川環境の悪化で一時途切れる。その後、毎年渡来していたが、2001
年から毎年 100~200 羽が渡来し、再び繁殖するようになる。2001 年から営巣地の保護や繁殖調査を
行ってきたが、増水による営巣地冠水やカラス類、チョウゲンボウなどの捕食によって巣立ち例は少
88
ない。(東京都:Cランク、環境省:絶滅危惧Ⅱ類 全記録数 1278 件 1948~2007 年)
○主な繁殖記録
1949.06.30 多摩川(鎌田)
4巣
3 巣各 1 卵、1 巣 2 卵 わかもと工場下の川原
1950.06.19 多摩川(鎌田)
2巣
1 巣 1 卵、1 巣 3 卵 わかもと工場下の川原
1951.06.21 多摩川(鎌田)
6巣
3 巣各 1 卵、2 巣各 2 卵、1 巣 3 卵 わかもと工場下の川原
1952.05.27 多摩川
3巣
1 巣 1 卵、1 巣 2 卵、1 巣 3 卵
1953.05.31~6/21 多摩川
7巣
①5/31 1 巣 2 卵、二子橋上流の川原
②6/4 2 巣各 3 卵を見る、雛もいる
③6/21 4 巣 10 卵
喜多見
1954.07.16 多摩川
2巣
1 巣 1 卵、1 巣 2 卵
1955.06.04 多摩川(鎌田)
1巣
3 卵 わかもと工場下の川原
1957.05.29~7/14 多摩川(鎌田)
5巣
1 巣 1 卵、2 巣各 2 卵、2 巣各 3 卵 わかもと工場下の川原
1958.06.08~09 多摩川(喜多見)
2巣
1 巣 3 卵、1 巣 2 卵
1959.05.18 多摩川(鎌田)
3巣
各 2 卵 わかもと工場下の川原
1960.06.19 多摩川
1巣
3卵
1962.05.16~24 多摩川(玉川)
2巣
①5/16 2 卵 1 卵盗られ石が入る
②5/24 3 卵 5/24 も抱卵中 二子橋上流
2001 多摩川(玉堤 1、上野毛 2)
37 巣
雛 6、幼鳥 3 羽
2002 多摩川(玉堤 1、上野毛 2)
94 巣
雛 207、幼鳥 71 羽 コアジサシ調査
2003 多摩川(玉堤 1、玉川 1)
18 巣
雛 2、幼鳥 0 羽 コアジサシ調査
2004 多摩川(玉堤 1、上野毛 2)
37 巣
雛 15、幼鳥 13 羽 コアジサシ調査
2005 多摩川(上野毛 2、鎌田 2)
75 巣
雛 19、幼鳥 14 羽 コアジサシ調査
2006 多摩川(野毛 3、鎌田 2)
38 巣
雛 10、幼鳥 1 羽 コアジサシ調査
2007 多摩川(野毛 3、鎌田 1、鎌田 2)
84 巣
雛 31、幼鳥 0 羽 コアジサシ調査
123.コウミスズメ Aethia pusilla Least Auklet
ウミスズメ科
ベーリング海の島々やアリューシャン列島で繁殖し、冬はベーリング海一帯、千島列島から日本列
島の沿岸に南下する。日本には冬鳥として北海道と本州中部沿岸の海域に渡来し、太平洋側では瀬戸
内海の広島県辺りまで、日本海側では富山県や北九州辺りまで南下してくる。11 月頃から翌年の 3 月
頃まで見られる。流氷の周辺に多く、氷とともに南下し、又、氷とともに北上する。非繁殖期には海
上生活し、泳いだり潜ったりして餌をあさる。エビ類の幼生など、小型プランクトン性の甲殻類を食
べる。ウミスズメ類では最小。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(全記録数 1 件 1924 年)
○観察記録
1924.02.17 世田谷
1羽
89
124.キジバト Streptopelia orientalis 0riental turtle dove
ハト科
日本では、留鳥として北海道、本州、四国、九州、南西諸島に分布し、北海道では冬季、暖地へ移
動するものもいる。低地から亜高山帯までの広い範囲に生息し、雑木林、山林、畑地、集落、市街地
などで見られ、つがいで行動することが多い。林床、草地、農耕地などで採餌を行い、地上を歩きな
がら草木の種・実・作物の種子をついばむ。樹木の枝に枯れ枝を集めて皿型の巣を造る。ほかの鳥類
とは異なり食物をそのうという器官にためて徐々に消化する。そのうから出る栄養価の高いピジョン
ミルクを雛に与えるので、種子や昆虫類の少ない冬季の繁殖も可能である。
世田谷区では、一年中生息し、河川敷、公園、畑地 住宅地など至る所で見られる。
「デデッポーポ
ー」と鳴く声や巣材集めも観察され、民家の庭木で繁殖した例もある。区内各地で多数繁殖している
(全記録数 4418 件 1946~2007 年)
と思われるが、記録は少ない。
○主な繁殖記録
1953.09.20 岡本
1巣
雛
1958.03.28 野毛
1巣
営巣 4/4 2 卵 自宅裏カシに営巣
1962.02.18 上野毛
1巣
抱卵中 3/4 2 卵 3/11 2 卵孵化 シイに営巣
1963.09.04 上野毛
1巣
2 卵 9/12 孵化 9/24 巣立ち スギに営巣
1967.10.19 尾山台
1巣
雛 2 羽 夕方巣立ち シイに営巣
1968.03.24 等々力
1巣
2 雛。孵化約 2 日目。個人宅のシュロに営巣 3/28 大きくなり、人が手を
出すと口を開いて人に向かう 4/1 雛大きくなった 4/3 雛は成鳥と同色の
羽になっ 4/5 雛巣の中で立っていた 4/8 5:30 巣立ちした
1969.05.05 瀬田
1巣
雛2羽
1970.03.03 瀬田
1巣
抱卵中 3/13 孵化雛 2 羽 人家のヒノキ
2000.07.09 成城
1巣
1 卵 庭のハクモクレンに営巣
2003.08.17 多摩川(玉堤 1)
巣立ち雛 1 羽 オニグルミの横枝で成鳥から給餌される
2004.11.26 多摩川(玉堤 1)
1巣
雛 1 羽 エノキに営巣
2007.06.26 大蔵 3
1巣
巣に虫を運ぶ
1953.06.13 野毛
1羽
小麦畑に降りて落ちている小麦を食べる
1957.02.01 祖師谷
2羽
1969.07.07 等々力 2
9羽
人家の庭
1980.03.06 赤堤
1羽
営巣するも 3 月末に放棄
○主な観察記録
1996.05.27 多摩川
43 羽
2000.09.06 仙川
6羽
定例調査
2002.04.03 砧公園
7羽
定例調査
2003.06.04 野川
17 羽
定例調査
2004.01.21 多摩川
70 羽
定例調査
2005.03.13 豪徳寺
13 羽
2006.12.27 蘆花恒春園
16 羽
2007.04.05 馬事公苑
24 羽
90
125.アオバト sphenurus sieboldii Japanese green pigeon
ハト科
日本では、本州、四国、九州で留鳥であるが、北海道では夏鳥で冬季、暖地へ移動する。丘陵地か
ら山地の森林に生息し、非繁殖期には数羽から数十羽の群れで行動することが多い。
「オーアオー オ
ーアオー」と大きな声で鳴く。シラカシ・アカガシ・コナラ・ミズナラ・ナナカマド・ヤマザクラな
どの実や新芽を樹上で食べる。初夏から秋にかけて海水や温泉水で塩分を補給するといわれるが生理
的な意味は十分解明されていない。産卵期は 6 月頃だが巣の発見例が少なく、繁殖生態については不
明な点が多い。
世田谷区では、旅鳥として 2 月から 5 月、8 月から 11 月に少数が立ち寄る。成城、瀬田、砧公園な
どの樹林の多い場所で観察されている。(全記録数 9 件 1938~2007 年)
○観察記録
1938.08.10 太子堂
1羽
1973.11.01 深沢 6
1羽
写真 幼鳥
1976.03.13 上野毛
1羽
保護
1988.05.18 成城 7
1羽
声
1990.02.12 等々力渓谷公園
1羽
2003.04.20 瀬田4
2羽
2006.10.00 砧公園
1羽
2007.10.05 砧公園
1羽
2007.10.06 駒沢公園
2羽
鳴いている姿を目撃 国分寺崖線内
【托卵する鳥 カッコウ科 CUCULIDAE】
カッコウ科の鳥は極地を除く全世界に分布し、大部分の種は熱帯・亜熱帯に生息する。カッコウ科
の中で托卵という方法で繁殖するのはカッコウ科の中の種数にして約 40%で、
残りの約 60%を占める
非托卵性のカッコウ類は地上や樹上に巣を造り、抱卵や育雛は雄雌が分担して行う。日本で繁殖して
いるジュウイチ、カッコウ、ツツドリ、ホトトギスはいずれも托卵性である。
托卵性の鳥は自分で巣を造らず他の種類の鳥の巣に卵を産み込み、その後の抱卵や育雛は仮親(他
種の親鳥)にいっさい任せてしまう習性を持っている。仮親の卵を 1 個、又は 2 個抜き取ってから、自
分の卵を巣の中に産み込む。雛は仮親の卵より早く孵化し、巣の中の卵や雛を背中にある窪みにのせ
巣の外に放り出し、その後は育雛といった仮親の世話のすべてを独占するようになる。産み込む卵も
仮親の卵の色や斑に似ていることが多い。
托卵される種はカッコウ科の鳥毎におおむね決まっている。
126.ジュウイチ Cuculus fugax Horsfield’s Hawk Cuckoo
カッコウ科
ウスリー、中国東北部及び南部、朝鮮半島、ネパール、東南アジアで繁殖し、東南アジアで越冬す
る。日本では、北海道、本州、四国に夏鳥として渡来し繁殖する。日本のカッコウ類では最も標高の
高い山地まで生息し、主にオオルリ、コルリ、ルリビタキ、コマドリ、キビタキ、クロツグミなどの
巣に托卵する。単独又はつがいで行動し、樹上で昆虫類を捕らえる。渡りの時は平地でも見られ、夜
間鳴きながら上空を通過することもある。繁殖期には「ジュウイチ、ジュウイチ」と鳴く。
世田谷区では、旅鳥であるが非常に稀である。下記 2 例の記録がある。(全記録数 2 件 1974、1985 年)
91
○観察記録
1974.10.00 岡本静嘉堂周辺
3羽
1985.10.01 岡本 6
2羽
八幡神社裏のニセアカシアに幼鳥が止まっていた
127.カッコウ Cuculus canorus Cuckoo
カッコウ科
ユーラシアの亜寒帯・温帯で繁殖し、アフリカ東南部、バングラデシュ、ミャンマーで越冬する。
日本では、夏鳥として北海道、本州、佐渡、四国、九州、対馬に渡来し繁殖する。日本のカッコウ類
の中では最も開けた環境に生息し、高原や高地の明るい林で生息する。北海道では川原、低木の生え
た草原、農耕地の周辺でも見られる。カッコウは日本で繁殖する托卵鳥の中で最も托卵相手の幅が広
くホオジロやアオジなどのホオジロ類、モズやアカモズなどのモズ類、キセキレイやセグロセキレイ
などのセキレイ類やオオヨシキリやコヨシキリに托卵するが、1970 年頃からオナガに托卵する個体も
観察されている。1 羽で生活することが多く、繁殖期には「カッコウ、カッコウ」と鳴く。主として
樹上で毛虫、甲虫などを食べる。
世田谷区では、旅鳥として春は 4 月下旬から 6 月頃鳴き声が聞かれ、秋は 10 月から 11 月に立ち寄
る。等々力渓谷公園や岡本、祖師谷、多摩川などで、鳴いているのが観察されている。(全記録数 36 件
1954~2005 年)
○主な観察記録
1954.05.17 野毛
1羽
早朝から正午まで鳴く
1957.04.26 等々力渓谷公園
1羽
声を聞く 滝の山
1960.05.19 経堂
1羽
1969.07.01 砧
1羽
1975.05.25 北烏山
1羽
1980.07.25 成城
1羽
1987.06.09 岡本 4
1羽
1996.10.12 多摩川(玉川)
1羽
2000.06.27 多摩川(玉堤 1)
1羽
川岸のヤナギで鳴く
2001.05.28 祖師谷 4
1羽
午前 5 時過ぎ声を聞く
2005.06.09 多摩川(玉堤 1)
1羽
中州の河畔林で鳴く
声を確認
八幡神社の電線に止まって鳴く
128.ツツドリ Cuculus saturatus Oriental Cuckoo
カッコウ科
西シベリアからカムチャッカ、サハリン、オホーツク海沿岸から中国東部及び南部、台湾、マレー
半島、ジャワ、ボルネオ北部で繁殖し、東南アジア、ニューギニア、オーストラリア北部で越冬する。
日本では、夏鳥として北海道、本州、佐渡、四国、九州に渡来し繁殖する。日本のカッコウ類の中
では最も早く渡来する。本州では主にセンダイムシクイ、メボソムシクイなどのムシクイ類、アオジ、
ビンズイ、メジロ、キクイタダキ、オオルリ、コルリに托卵するため低山帯の落葉広葉樹林や亜高山
帯の針葉樹林に生息する。樹上で毛虫、甲虫などを食べる。本州のツツドリは主な托卵相手であるム
シクイ類が非常に小さな白い卵を産むため、それに合わせ白っぽい小さな卵を産む。一方、北海道の
ツツドリはウグイスに托卵するために、チョコレート色の卵を産む。秋の渡りの時は市街地の公園な
92
どでもよく観察される。繁殖期には「ポポッ、ポポッ、ポポッ…」と鳴く。稀に雌に赤色型の個体が
いる。
世田谷区では、旅鳥で春は 5 月、秋は 9 月から 10 月に立ち寄る。等々力渓谷公園、砧公園、馬事
公苑、多摩川などで見られることが多い。(全記録数 35 件 1949~2007 年)
○主な観察記録
1949.05.12 野毛
1羽
鳴き声を聞く 川向野毛(南の森)にて
1953.05.12 野毛
1羽
六所神社で鳴く
1955.05.10 等々力渓谷公園
1羽
谷沢山で鳴く
1965.10.08 砧
1羽
赤色型
2001.10.06 馬事公苑
1羽
馬道の木から出て自然林へ飛んで行く
2002.06.02 馬事公苑
1羽
夜に鳴き声
2004.10.14 多摩川(玉川 1)
1羽
世田谷側から飛来し川崎側へ
2006.10.03 多摩川(玉堤 1)
1羽
川岸のエノキに止まっていたが人が近づき川崎側へ飛ぶ
2007.10.03~15 砧公園
1羽
毛虫を捕る ハシブトガラスに追われ谷戸川を越して樹林帯の枝に止まる
2007.10.07 多摩川
4羽
129.ホトトギス Cuculus poliocephalus
Little Cuckoo
カッコウ科
中国東部及び南西部、朝鮮半島、マレー半島で繁殖し、インド、バングラデシュ、マレー半島で越
冬する。日本では、夏鳥として北海道南部、本州、佐渡、四国、九州、対馬、伊豆諸島、南西諸島に
渡来し繁殖する。主な托卵相手がウグイスなので生息環境もウグイスと一致し,低地から山地の藪の
ある林に生息する。ウグイス以外の托卵相手としてはミソサザイ、クロツグミ、センダイムシクイ、
アオジ、ベニマシコなどの記録がある。繁殖期には「東京特許許可局」と聞きなしできる鳴き方をす
る。夜中じゅう鳴きながら飛び回る習性もある。雌には稀に赤色型の個体がいる。樹上で昆虫類を捕
らえ、毛虫を多く食べる。
世田谷区では、旅鳥として春は 5 月から 6 月、秋は 8 月から 10 月に立ち寄る。鳴きながら飛ぶこ
とが多く、住宅地上空や砧公園、盧花恒春園、等々力渓谷公園、豪徳寺、神明の森みつ池、多摩川な
どで見られている。(全記録数 50 件 1949~2007 年)
○主な観察記録
1949.06.02 野毛
1羽
22:00 頃 自宅上空南方より東北に鳴きながら飛行
1953.05.09 等々力渓谷公園
1羽
雌の赤色型
1984.05.29 岡本静嘉堂緑地
1羽
木に止まっていた
1997.05.22 神明の森みつ池
1羽
14 時頃場所を変えて 2 回鳴く
2000.08.11 多摩川(玉堤 1)
1羽
中州のヤナギに止まっている
2002.05.22 桜上水 3
1羽
4:15 頃鳴きながら上空を通過する
2004.10.12 砧公園
1羽
鳴きながら飛んで行った
2005.05.22 豪徳寺
1羽
21 時頃鳴きながら上空を通過する
2007.05.23 喜多見 6
1羽
自宅上空を鳴きながら飛び去る
2007.10.16 盧花恒春園
1羽
少しさえずる
93
130.トラフズク Asio otus Long-eared Owl
フクロウ科
ユーラシア及び北アメリカの温帯・アフリカ北部及び東部で繁殖し、北方のものは冬季に南下する。
日本では、北海道、本州北部では夏鳥で繁殖しているが局地的である。本州中・南西部、四国、九州
では冬鳥である。積雪が多くなると本州中・南西部、四国、九州へ移動し数羽から十数羽の群れで常
緑樹などをねぐらにして越冬する。平地から山地の林、農耕地、河畔林などに生息する。針葉樹林や
雑木林の中の大木の樹洞や、カラス類、タカ類の古巣などに営巣する。夜間に活動しネズミなどの小
哺乳類や小鳥を捕らえる。
世田谷区では、冬鳥として渡来するが稀である。1995 年から多摩川の川岸の木々で観察されたが、
2000 年以降は観察されていない。(全記録数 26 件 1995~1999 年)
○観察記録
1995.02.13 多摩川
5羽
中州のヤナギに止まっていた
1995.12.26 多摩川(玉堤 1)
2羽
中州のヤナギに止まっていた
1996.12.27 多摩川(玉堤 1)
1羽
中州のヤナギに止まっていた
1997.03.17 多摩川(玉堤 1)
1羽
東京側から木の上にいるのを観察する
1998.01.23~04.11 多摩川(玉堤 1)
1999.02.08 多摩川(玉堤 1)
1~4 羽
1羽
アズマネザサの薮のエノキで休息
対岸のヤナギに止まっている
131.コミミズク Asio flammeus Short-eared Owl
フクロウ科
ヨーロッパからユーラシア大陸北部、北アメリカ北部で繁殖し、ヨーロッパ、アフリカ東部、イン
ドから中国、北アメリカ中南部で越冬する。日本では、冬鳥として北海道、本州、佐渡、四国、九州
に渡来し、平地から山地の農耕地、川原、水田、干潟の埋立地など広々と開けた荒れ地状の環境に生
息する。塒は通常、丈の低い草が茂った中にあり、昼間はその中で身を伏せるようにして休んでいる。
コミミズクの生息数の多い場所では 10 羽ぐらいが集まって塒をとり、
各々の個体は数メートルの距離
を置いて休息する。この集団塒は人為的な影響や周辺環境が変わらない限り数年間は継続する。夕暮
れから活動しヨシ原や草原の上を低く飛び主としてネズミや小鳥を捕らえる。夜行性だが日中も活動
することが多く人目につきやすい。
世田谷区では、冬鳥として多摩川の河川敷で見られることが多い。10 月中旬から 11 月に渡来し、
翌年の 3 月から 5 月上旬に渡去する。塒(川原の草地)に入るのは 12 月頃からである。2000 年までは
塒のある草地にカメラマンや犬連れの人が頻繁に入ったため、毎年塒の場所を変えていたが、2001 年
冬からは玉堤 1 の中州をずっと塒として利用していた。しかし、安定していた塒も 2004 年春からゴル
ファーが入り毎日練習したためにコミミズクは寄り付かなくなった。塒の草地人や犬が入ってくると
日中も飛翔するため、多数のカラスに追われる。2005 年頃から多摩川の川原で越冬する個体は少なく
なり、立ち寄る個体を見られるだけになってきた。(全記録数 291 件 1961~2007 年)
○塒(ねぐら)地 多摩川(玉堤 1)
2001.12.23~2002.03.22
1羽
中州の上流側の草地
2002.12.13~2003.03.02
1羽
前年と同じ場所
2003.12.08~2004.03.09
1羽
前年と同じ場所 オギの陰になり、姿勢を変えた時に見られた
1羽
下流の川原に降りていた 川ダレ
○主な観察記録
1961.11.26 多摩川(玉堤)
94
1968.02.20 多摩川(鎌田)
2羽
二子橋上流
1970.01.17 多摩川(玉堤)
1羽
変死体 コジキッタナ
1988.12.18~1989.05.05 多摩川
1~5 羽
玉堤周辺
1991.10.20 岡本静嘉堂緑地
1羽
1995.10.30 多摩川
2羽
川原に降りていた
1999.02.13 多摩川
1羽
ハシブトガラス 15 羽に威嚇され飛び去る
2001.11.12 多摩川(鎌田 1)
1羽
草原から飛び立つ
2004.11.12 多摩川
1羽
下流から飛来し上流へ
2006.11.22 多摩川(野毛 2)
2羽
上空でカラス 3 羽に追われながら下流へ飛び去る
2007.11.19 多摩川(鎌田 1)
1羽
草原でカラス 6 羽に追われて低空で飛翔
132.コノハズク Otus scops Scops Owl
フクロウ科
パキスタン、インド、インドネシア、マレー半島、中国南部及び東部、朝鮮半島、ロシア沿海地方、
サハリンで繁殖し、マレー半島、スマトラで越冬する。日本では、北海道、本州、四国、九州に夏鳥
として渡来し繁殖する。スギ、ヒノキなどの針葉樹林、ブナなどの落葉広葉樹林、亜高山針葉樹林な
ど色々な樹林に生息するが個体数は少ない。人里離れた深山の急傾斜の多い谷間の中腹にいることが
多い。東北北部、北海道では平地の林にもいる。夜行性で、飛んでいる甲虫・直翅類・双翅類などの
昆虫を足でつかみとり採食する。その他、アリやクモ・ミミズ・トカゲ・カエル・小鳥・小哺乳類な
ども採食する。
世田谷区では、極めて稀で下記 2 例の記録がある。(全記録数 2 件 1910、1997 年)
○観察記録
1910.10.23 多摩川
1羽
1997.08.06 桜 1
1羽
23:05 頃 勝光院にて鳴き声
133.オオコノハズク Otus lempiji Collared Scops owl
フクロウ科
ネパール、中国東北部、朝鮮半島、台湾、マレー半島、インドネシアに分布する。日本では、北海
道、本州、四国、九州、伊豆諸島に留鳥として生息し繁殖している。平地や低山帯の色々なタイプの
樹林に棲み、常緑広葉樹林、落葉広葉樹林、針葉樹林、大きい樹木のある公園や社寺林にも生息する。
夜行性で日中は茂った樹木の枝や樹洞で休息する。樹洞に営巣し、昆虫・小哺乳類・小鳥・トカゲ類・
カエル類などを捕食する。
世田谷区では、冬鳥として稀に渡来する。1950 年代までは数年おきに等々力渓谷公園や野毛で見ら
れた。その後、豪徳寺、砧公園などで見られたが、2003 年以降観察されていない。(東京都:Cランク 全
記録数 15 件 1948~2002 年)
○主な観察記録
1948.10.24 野毛
1羽
谷沢松山
1951.03.03 等々力渓谷公園
1羽
不動公園崖下
1954.11.20 等々力渓谷公園
1羽
不動公園
1957.01.11 野毛
1羽
谷沢倉裏
95
1963.03.30 等々力渓谷公園
1羽
谷沢山
1966.11.05 野毛
1羽
18:30 頃 鳴き声
2000.12.08 桜 1
1羽
早朝カラスに襲われ弱っている個体を住職が保護
2001.02.28 豪徳寺
1羽
ケヤキの洞から上半身を見せていた
2002.01.11 経堂
1羽
落鳥 天祖神社
2002.12.01 砧公園
1羽
シュロの上から飛び出す
134.アオバズク Ninox scutulata Brown Hawk Owl
フクロウ科
インド、ヒマラヤ、東南アジア、中国東部、朝鮮半島、ウスリーに分布し、北方のものは冬季に南
下する。日本では、夏鳥として北海道、本州、佐渡、四国、九州、対馬、伊豆諸島に渡来し繁殖する。
奄美大島、南西諸島では越冬例もある。平地や低山帯の大きい樹木のある樹林に棲み、巨木があれば
公園や社寺林にも生息する。落葉広葉樹林、針葉樹林、針広混交林など色々な林に棲むが、特に常緑
広葉樹林に多く、西日本に多く生息する。本種は深い森に棲む鳥ではなく、都市近郊の住宅地でも営
巣に必要な大木と昆虫や小動物のいる畑などがある所では 1980 年代までは比較的よく見られたが、
次
第に姿や声を聞くことが難しい鳥になってきた。夜行性で主として昆虫食のフクロウである。夕方や
明け方に、セミ・タガメ・カミキリムシ・トンボ類などの大型昆虫を空中で飛びながら捕らえ食べる。
その他、小鳥・カエル・コウモリなども捕食する。繁殖期に「ホッホゥ ホッホゥ…」と鳴く。
世田谷区では、夏鳥として 4 月下旬から 5 月に渡来し、8 月から 10 月に渡去する。1944 年に池尻、
1946 年に太子堂、1948・1949 年に奥沢で繁殖した。1950 年から 1971 年までは、岡本、瀬田、上野毛、
中町、砧、等々力渓谷公園など()で毎年繁殖していた。1972 年以降はこれらの場所でも見られなくな
る。1980 年代以降は見られる場所も限られ、2000 年代に入ると 1 カ所だけとなった。2005 年同じ箇
所で繁殖に失敗し、それ以後は世田谷区内では生息の記録はない。世田谷区に隣接した場所では現在
でも繁殖している所があるので、営巣できる環境と餌の捕れる環境があれば生息する可能性はある。
(東京都:Bランク 全記録数 320 件 1938~2005 年)
○繁殖記録
1944,06.01 池尻
繁殖の詳細不明
1946.06.01 太子堂
繁殖の詳細不明
1948~1949 奥沢
繁殖の詳細不明
毎年繁殖
1950~1951 岡本、瀬田、上野毛、中町、等々力渓谷公園
繁殖の詳細不明
毎年繁殖
1952.06.01 岡本、瀬田、上野毛、中町、等々力渓谷公園、奥沢
繁殖の詳細不明
1953~1956 岡本、瀬田、上野毛、中町、等々力渓谷公園
繁殖の詳細不明
1957.06.01 岡本、瀬田、上野毛、中町、等々力渓谷公園
繁殖の詳細不明
1958.06.01 岡本、瀬田、上野毛、中町、等々力渓谷公園、尾山台
繁殖の詳細不明
1959.06.01 岡本、瀬田、上野毛、中町、等々力渓谷公園、尾山台、砧、経堂
繁殖の詳細不明
1960~1963 岡本、瀬田、上野毛、中町、等々力渓谷公園、尾山台、砧
繁殖の詳細不明
毎年繁殖
1964~1969 岡本、瀬田、上野毛、中町、尾山台、砧
繁殖の詳細不明
毎年繁殖
1970.06.01 岡本、瀬田、上野毛、中町、尾山台
繁殖の詳細不明
1971.06.01 岡本、瀬田、上野毛、中町
繁殖の詳細不明
1980.08.04 喜多見 3
1巣
雛 1 羽氷川神社
毎年繁殖
96
1981.08.10 喜多見 4
1巣
1998.08.04 豪徳寺
2001.07.26
須賀神社 ムクノキで繁殖 写真
成鳥 1、幼鳥 3 羽
1巣
巣立ち雛 1 羽 7/28 巣立ち雛 3、成鳥 2 羽 8/2 アオバズクとカラス類の羽が大量
に散乱
2004.07.24
1巣
巣立ち雛 4 羽成鳥 2 羽
○主な観察記録
1938.08.10 太子堂
1羽
1948.07.07 野毛
1羽
1952.04.20 浄真寺
1羽
1959.05.20 経堂
1羽
1963.05.17 野毛
1羽
1969.09.14 多摩川
1羽
1970.05.14 野毛
1羽
1997.07.04 岡本
1羽
八幡神社の森で 0:37 に鳴き声
1999.07.07 豪徳寺
1羽
8:10 頃 10 秒位続けて鳴く
2002.05.28
2羽
日暮れ時交尾
2003.06.13
2羽
雄、雌 つがい
2005.05.30
2羽
19:00 頃 2 羽で鳴き交わす
鳴き声
川原
135.フクロウ Strix uralensis Ural owl
フクロウ科
スカンジナビア半島から日本にかけてのユーラシア大陸北部に帯状に広く分布しており、温帯から
亜寒帯の針葉樹林や混交林、湿地、牧草地や畑作地などの人里近くにも留鳥として生息する定住性の
強い鳥である。日本では、留鳥として北海道、本州、四国、九州に一年中生息し繁殖しているが個体
数は少ない。平地、低山帯から亜高山帯にかけて色々なタイプの樹林に生息するが、特に大きい樹木
のある落葉広葉樹林や針広混交林に多い。林縁や下枝の少ない樹林などで採餌する。夜行性で夕暮れ
から活動し、ネズミ・小鳥・両生類・爬虫類・昆虫などを捕食する。
世田谷区では、放鳥された例を含め下記 2 例の記録がある。2004 年に観察された同一個体が約 2 週
間滞在したと思われる。(東京都:Aランク 全記録数 3 件 1989、2004 年)
○観察記録
1989.12.17 等々力渓谷公園
1羽
ペットショップより引き取って放鳥
2004.12.23~2005.01.08 神明の森みつ池
1羽
カラスに追われた後、枝に止まる
136.ヨタカ Caprimulgus indicus Jungle Nightjar
ヨタカ科
インド、ネパール、東南アジア、ロシア極東南部、朝鮮半島、中国東部、マレー半島に分布し、北
方のものは冬季に南下する。日本では、北海道、本州、佐渡、四国、九州に夏鳥として渡来し繁殖す
る。本州中部では標高 500~1500m位に多いが、東北地方では低山帯、北海道では平地から山麓部に
多い。生息環境は草原や灌木が散在する落葉広葉樹林や針葉樹林で明るい林に生息し、大きな口を開
き羽音をたてずに飛びながら飛翔性のガ・ゴミムシ・ゲンゴロウ・カワトビゲラ・カメムシなどの昆
97
虫を空中捕食する。日没前後から数時間、最も活発に採餌行動をする。日中は木の枝に平行に腹を密
着させるようにして止まって休息する。繁殖期以外は 1 羽で生活する個体が多い。
世田谷区では、繁殖記録はないが以前は夏鳥として生息していたと思われる。1956 年以降記録はな
く 1975、1976、2007 年に旅鳥として立ち寄ったと思われる個体が記録されている。(環境省:絶滅危惧
Ⅱ類 全記録数 11 件 1944~2007 年)
○観察記録
1944.05.00 奥沢
1羽
日にちは不明
1948.10.16 野毛
1羽
1949.09.28 野毛
2羽
夕方、自宅上空を通過
1950.06.06 等々力
1羽
樫村にて目撃
1953.09.02 野毛
1羽
自宅上空を飛ぶ
1955.07.00 野毛 2
1羽
日にちは不明 鳴きながら上空を飛んでいた
1975.09.25 馬事公苑
1羽
林の中で休んでいたのにヒヨドリに追われ逃げ出す
1976.05.05 船橋 4
1羽
1990.11.12 区内
1羽
放鳥
2007.11.08 神明の森みつ池
1羽
落鳥(羽毛が散乱していた) 11/22 初列風切 2 枚発見
137.ハリオアマツバメ Hirundapus caudacutus White-throated Needle-tailed Swift
アマツバメ科
アジア北東部のヒマラヤ周辺に分布し、ニューギニア、オーストラリアで越冬する。日本では、夏
鳥として北海道及び本州中部以北の低山帯から高山帯の山地や森林に生息し繁殖する。本州中部以北
では、山岳の岸壁付近や亜高山の針葉樹林とブナ、ダケカンバなどの落葉広葉樹の上空、標高 1,500
~3,000m を飛翔する。渡りの時は、平地、山間の稲田や湖面などを細い鎌のような翼で低く飛ぶこと
もある。本州ではアマツバメよりも見られる機会は少ない。北海道では全域に普通に見られ、森林や
草原の上空を飛翔する。全鳥類の中で最高速度の飛翔をするといわれ、滑空と羽ばたきで広範囲を飛
行しほとんどの時間を空中で過ごし、巣材運び、水飲み、水浴びまでも行う。又、採食も、上昇気流
に吹き上げられたスズメバチ・甲虫・ガガンボなどの昆虫や羽化した水生昆虫を、飛びながら捕食す
る。
世田谷区では、秋の渡り途中と思われる下記 4 例の記録がある。(全記録数 4 件 1961~2004 年)
○観察記録
1961.10.06 多摩川(野毛)
35 羽
赤岩の上空を飛翔
1975.09.18 船橋 4
10 羽
上空通過
1978.09.21 岡本
1羽
2004.10.02 多摩川(鎌田 1)
2羽
ヒメアマツバメ約 80 羽、アマツバメ約 25 羽とグランドの低空から高空を飛翔
138.ヒメアマツバメ Apus affinis House Swift
アマツバメ科
アフリカ、インド、ヒマラヤ、東南アジア、中国中部、台湾に分布する。日本では、1964 年頃から
太平洋岸の種子島、鎌倉、高知で観察されるようになり、1967 年 8 月に静岡市で初めて繁殖が確認さ
98
れた。その後、生息域を広げ、関東以南の太平洋岸に生息するようになる。市街地の建物や橋の下部
などに集団営巣する。空中生活に適応し、採食、巣材運び、水飲み、水浴びも地上に降りることなく
行い、又、交尾や睡眠さえ空中で行うといわれている。採食は、上空を飛び回りながら上昇気流に吹
き上げられたカ・ハエ・ハネアリなどの昆虫を捕る。
世田谷区では、1981 年に初めて観察され、その後は一年を通して観察されている。冬季に多く、多
摩川や野川その他区内全域で見られる。繁殖記録は 2001、2007 年の 2 例しかないが、他にも可能性が
ある。
又、
多摩川の川崎側の工場で多数の繁殖が確認されている。
(東京都:Cランク 全記録数 1900 件 1981
~2007 年)
○繁殖記録
2001.09.05 野川(大蔵 6)
集合巣
定例調査 東名高速道橋桁下面
2007.05.11 野川(大蔵 6)
集合巣
東名高速道橋桁下面
○主な観察記録
1981.09.23 等々力渓谷公園
20 羽
1992.04.22 岡本 7
5羽
1994.12.24 池尻 3
10 羽
2000.02.10 多摩川
510 羽
八幡神社付近
2000.06.17 野川
39 羽
定例調査
2001.01.16 岡本民家園
30 羽
民家園の上空を旋回
2003.07.02 砧公園
2羽
定例調査
2003.12.08 成城 2
6 羽
8 時頃上空を飛び回る
2006.01.09 多摩川
100 羽
上流と中流
2007.06.12 蘆花恒春園
10 羽
上空を飛行
139.アマツバメ Apus pacificus Northern White-rumped Swift
アマツバメ科
中国、ベトナム南部、タイ北部、カムチャッカ半島と台湾で繁殖し、インド南部、中国中部、東南
アジアからオーストラリアで越冬する。日本では、夏鳥として九州から北海道にかけて局地的に繁殖
する。種子島、奄美大島、南西諸島では旅鳥。春と秋の渡りの頃は高空を群れて飛ぶ姿を各地で見る
ことができる。本州中部では 2,300~3,100m位の高山や崖、又、周辺の島や海岸の壁の割れ目の隙間
に集団営巣する。採食時は標高 500m位の山麓にも現れる。飛行速度が速く、洋鎌形の翼を伸ばし身
近を飛ぶと風を切る羽音がする。多くは群れをつくって飛行し、飛びながら採餌、睡眠、交尾、巣材
集めも行う。アブ・ガガンボ・ハエ・カなど空中に漂う昆虫やアリ類を捕食する。
世田谷区では、旅鳥として春は 3 月から 5 月中旬、秋は 8 月から 11 月頃に立ち寄る。多摩川で多
く、野川や砧公園、駒沢オリンピック公園、池尻などでも見られている。特に秋に多く、ヒメアマツ
バメ、ツバメなどと混群で飛翔しているのが観察されている。(全記録数 189 件 1948~2007 年)
○主な観察記録
1948.07.02 多摩川(野毛)
5羽
1952.10.05 多摩川(野毛)
200 羽
渡し場
1959.04.17 多摩川(野毛)
100 羽
新田上空を飛行
1961.10.06 用賀
20 羽
おなけ畑にて北東に飛行
99
1962.10.16 桜 3
70 羽
1976.10.04 馬事公苑
30 羽
上空
1997.09.30 多摩川
120 羽
2001.08.07 下馬 4
1羽
2004.11.14 野川
2羽
2006.10.04 砧公園
2羽
定例調査
2007.10.19 桜上水 1
1羽
上空高く飛び去る
東方へ飛び去る
140.アカショウビン Halcyon coromanda Ruddy Kingfisher
カワセミ科
インド北東部、ネパール、バングラデシュ、東南アジアに分布し、冬季に北部のものは南下する。
日本では、夏鳥として北海道から南西諸島まで繁殖するが、特に本州中部から西南部や八重山諸島に
多い。数は少なく一夫一妻で、繁殖期には「キョロロロロー」と鳴く。低地や低山地の渓流や湖沼の
ある落葉広葉樹林、常緑広葉樹林で生活する。葉が茂り薄暗い谷間の樹林を好み、西表島では、マン
グロープ林に棲む。餌は、小魚・サワガニ・カエル・オタマジャクシなどで、畑ではバッタを狙い、
ゴミムシ・コオロギ・カタツムリ・トカゲなども捕らえる。
世田谷区では、渡り途中に立ち寄ったと思われる下記 1 例の記録がある。(全記録数 1 件 2006 年)
○観察記録
2006.05.30 多摩川(野毛 2)
1羽
数度鳴いて下流へ飛び立つ
141.カワセミ Alcedo atthis Kingfisher
カワセミ科
日本では、北海道から南西諸島で留鳥として一年中見られるが、北海道では夏鳥である。平地から
標高 900m以下の河川、湖沼、池、水路、水田、小川にある土手や崖に営巣する。崖に穴を掘って巣
を造り、巣は毎年替える。水面上空でホバリングしながら水面に飛び込み、小魚やザリガニ・カエルな
どを捕らえ枝や杭にたたきつけて、一気に呑み込む。又、魚の骨の塊をペリットとして吐き出す習性
もある。
世田谷区では、留鳥として一年中観察される。1960 年頃から河川環境が
悪化し一時減少したが、1980 年代後半から再び増加する。多摩川や野川、
仙川、砧公園でよく見られ、ほかに高源院や小川などの水辺で見られる
ことがある。(全記録数 2844 件 1946~2007 年)
○主な繁殖記録
1953.05.05 野毛
1巣
7 卵 巣の中に手を入れたらくわえた 新田
1997.05.28 多摩川(玉堤 1)
1巣
崖の巣穴に小魚をくわえて入る
2000.06.08 野川
巣立ち雛 1 羽
2004.10.07 砧公園
巣立ち雛 1 羽
谷戸川
2005.07.14 多摩川(玉堤 1)
巣立ち雛 3 羽
成鳥 1 羽と川岸で休んでいる
2007.05.26 野川(成城 4)
巣立ち雛 3 羽
成鳥 2 羽と採食
2007.07.30 野川(成城 4)
巣立ち雛 5 羽
給餌
100
○主な観察記録
1946.08.24 野毛
1羽
1948.05.04 等々力渓谷公園
1羽
谷沢川
1986.11.29 馬事公苑
1羽
池
1991.05.19 高源院
1羽
1994.02.22 野川
8羽
定例調査
1998.01.06 仙川
2羽
祖師谷橋
13 羽
定例調査
2003.12.03 野川
6羽
定例調査
2005.02.03 砧公園
1羽
サンクチュアリ内
2006.06.28 多摩川
13 羽
定例調査
2007.12.05 野川
11 羽
定例調査
2002.02.20 多摩川
142.アリスイ Jynx torquilla Wryneck
キツツキ科
オホーツク沿海岸、ロシア沿海地方、ヒマラヤなどで繁殖し、アフリカ中部、インド、東南アジア
で越冬する。日本では、北海道、東北の一部で夏鳥として繁殖し、冬は本州以南に移動する。平地か
ら低山の開けた森林、草原、ヨシ原、農耕地に生息する。村落や田畑の木の枝や幹に止まり、あちこ
ちと移りながら樹木の中のトビイロケアリやクロアリを捕食する。その他コガネムシ・クモ類なども
食べるが、アリを最も好んで食べる。
世田谷区では、冬鳥として少数渡来するが、渡来直後や渡去する春に見られ、旅鳥的な傾向を示す。
多摩川の河川敷の草地や木々で観察される。(全記録数 14 件 1997~2007 年)
○観察記録
1997.10.06 多摩川(玉川 1)
1羽
草地の中州の小さなヤナギに止まる
1998.10.22 多摩川(玉川 1)
1羽
中州のヤナギにいて時々地面に降りる
2000.11.16 多摩川(玉川 1
1羽
中州のヤナギ
2001.02.05 多摩川玉川 1)
1羽
中州のヤナギから地面に降りる
2001.11.08 多摩川(鎌田 1)
1羽
水道局用地のやや上流の枯れ木に止まる
2002.12.05 多摩川(鎌田 1)
1 羽
ハリエンジュ横枝
2004.11.16~19 多摩川(鎌田1)
1羽
刈草集積場のニセアカシアに止まる
2006.03.15~17 多摩川
1羽
定例調査
2007.11.27 多摩川(玉堤 2)
1羽
草地の大きなヤナギの枝に止まる
143.アオゲラ Picus awokera Japanese Green Woodpecker
キツツキ科
日本固有種で、留鳥として本州、四国、九州に分布する。森林に生息するが、住宅地などにも出現
する。主として落葉広葉樹や針葉樹の密林や雑木林などに生息し、繁殖期以外は単独でいることが多
い。繁殖の頃は一夫一妻で生活し、
「ピョー、ピョー」又は「ケレ、ケレ」という鳴き声や枯れ木をつ
つき音をたてるドラミングが聞かれる。巣はサクラ、マツ、クリ、ナラなどの生木の幹に穴を掘って
造る。硬い尾羽を利用して幹に縦に止まり、幹の周囲を回りながら梢に登って餌を採る。甲虫・クモ・
101
ムカデなどを食べるが、地上に降りて跳ね歩きながらアリを採食することもある。
世田谷区では、2000 年頃までは主に冬鳥として渡来していたが、その後繁殖期にも生息するように
なる。数は少ないが砧公園、国分寺外線沿いの岡本、瀬田、神明の森みつ池、野毛や成城などで、ド
ラミングや鳴き声が観察されている。(東京都:Cランク 全記録数 75 件 1962~2007 年)
○主な観察記録
1962.11.25 等々力渓谷公園
1羽
雄 岸のヤクルト寮
1986.08.13 岡本 2
1羽
雄が電柱の頂に止まって鳴く
1991.04.01 馬事公苑
1羽
1995.04.13 神明の森みつ池
2羽
雌雄
1995.06.21 成城 3
1羽
小学校校庭脇の電柱で鳴いたりドラミングする
1997.02.14 多摩川
1羽
雄がヤナギに止まって鳴く
2004.02.25 豪徳寺
1羽
高木の頂で鳴き、ドラミング
2005.04.25 瀬田 4
1羽
鳴く 崖線内
2006.03.22 みつ池
1羽
鳴き声
2007.06.15 砧公園
1羽
144.アカゲラ Dendrocopos major Great Spotted Woodpecker
キツツキ科
日本では、留鳥で北海道から本州までの低地、低山帯、亜高山帯の色々なタイプの樹林に生息する。
落葉広葉樹林、アカマツ林などの比較的明るい林を好むが、農耕地の雑木林、樹木の多い公園や集落
でも繁殖する。常に森林で単独で生活し、警戒時には「キョッ、キョッ」と頭を振りながら鳴いてい
る。枯れ木や枝に穴を掘って巣を造り、春先は盛んにドラミングする。秋から冬には、稀に市街地の
公園、林などにも飛来し、カラ類と混群をつくるつくることもある。木の幹から大枝によじ登りなが
ら、
樹皮の表面や割れ目で採餌する。
地上に降りて枯れ枝をつついて中にいる甲虫の幼虫を採ったり、
アリ・クモ・ハチ類も食べる。又、ヌルデ・ウルシの実やノイバラ・ヤマブドウ・カキなどの果実、
アカマツの種皮なども食べる。
世田谷区では、冬鳥として 10 月頃に渡来し、翌年の 4 月頃渡去する。古木や大きな木の多い砧公園
で多く、馬事公苑、上野毛、岡本、神明の森みつ池、仙川などでも見られているが、観察例は少ない。
(全記録数 25 件 1964~2007 年)
○主な観察記録
1964.10.30~11.20 野毛
1羽
1966.11.27 岡本
1羽
1973.04.01 馬事公苑
1羽
1997.10.01 砧公園
1羽
2002.02.10 砧公園
1羽
2004.01.10 仙川
1羽
2005.02.22 仙川
1羽
2006.10.00~12.25 砧公園
1羽
2007.02.02~04.08 砧公園
1羽
2007.04.10 馬事公苑
1羽
雄 自宅前の谷沢の松に止って鳴く
雌
102
145.コゲラ Dendrocopos kizuki Japanese Pygmy Woodpecker
キツツキ科
日本では、北海道、本州、四国、九州から沖縄まで留鳥として普通に見られ、繁殖する。低地や低
山帯、亜寒帯の針広葉樹の混じった林やナラ・サクラなどの落葉広葉樹林、雑木林、マツ林などに生息
し、都市の緑地や自然林、公園、住宅地でも繁殖し、民家の庭木にも営巣する。巣は枯れ木や生木に
直径 3 ㎝ぐらいの穴を掘る。
「ギィーッ」又は「キッキッキッ」と鳴き、木をつついてドラミングを行
う。樹木の幹から枝に向かって登りながら樹皮の内側にいる昆虫類を採る。アリ・シャクトリムシ・
カミキリの幼虫・クモ類などや節足動物を好み、ヤマウルシ・ヌルデ・ミズキなどの植物の種子も食
べる。
世田谷区では、1970 年代までは生息していなかったが、1984 年砧公園で初記録、1987 年に馬事公
苑で初めて繁殖が観察された。その後留鳥となり区内全域に広がり、公園や緑地、住宅地で普通に見
聞きできるようになる。(全記録数 1258 件 1984~2007 年)
○主な繁殖記録
1987.04.03 馬事公苑
1巣
1987.07.01 馬事公苑
巣立ち雛 1 羽
1988.05.01 馬事公苑
1巣
抱卵 4/20 雛に給餌するが後日死ぬ
雛4羽
1990.05.11 梅丘 1
巣立ち雛 1 羽
1990.05.13 馬事公苑
巣立ち雛 4 羽
1990.05.14 羽根木公園
巣立ち雛 1 羽
成鳥 1 羽
1994.05.26 世田谷公園
巣立ち雛 4 羽
成鳥が給餌
2003.05.20 砧公園
巣立ち雛 1 羽
2005.04.16 砧公園
巣立ち雛 1 羽
成鳥と一緒にいる
2006.05.25 千歳台 5
巣立ち雛 1 羽
巣から出て成鳥と一緒に虫を採る
2007.06.24 駒沢公園
巣立ち雛 2 羽
○主な観察記録
1984.02.18 砧公園
1羽
1987.12.07 船橋 5
1羽
1991.05.20 深沢 8
1羽
1997.03.02 下馬 4
2羽
1999.06.02 桜丘 4
2羽
すみれば自然庭園
2001.02.24 桜上水 3
3羽
自宅の植込みと遊歩道を移動
2003.06.14 高源院
1羽
弁天池
2004.01.12 奥沢 6
2羽
2006.07,06 砧公園
7羽
2007.05.14 蘆花恒春園
2羽
無原罪保護区
定例調査
146.ヒメコウテンシ Calandrella cinerea Short-toed Lark
ヒバリ科
ヨーロッパ南部・トルコから中央アジア、アフリカで繁殖し、地中海沿岸、アフリカ、アラビア半
島、インドで越冬する。日本では、稀な旅鳥として春は 3 月中旬から 5 月、秋は 10 月から 11 月頃、
長崎県の対馬や石川県の舳倉島に少数が渡来する。又、北海道や新潟、千葉、神奈川、長崎県等でも
103
少数の記録がある。低地や平地の農耕地、海岸の砂地の少し草のあるような所で見られる。空中高く
飛び上がりながら静止したり輪を描いてさえずったりする。餌は交互に歩きながら、つまむように昆
虫や植物の種子を食べる。
世田谷区では、下記の 1 例記録がある。(全記録数 1 件 2001 年)
○観察記録
2001.11.15 多摩川
1羽
147.ヒバリ Alauda arvensis Skylark
ヒバリ科
日本では、留鳥で九州以北から北海道までの全国で繁殖する。積雪の多い地方では南に南下して越
冬する。農耕地、草原、牧場、川原、海岸の埋立地に生息し、低い草が生え見通しのよい所で、土が
露出している地面を好む。4 月初旬頃から、雌の巣造りにさきがけて、雄は激しい闘争やさえずりで
縄張りを持つ。さえずりは、地上から飛び立って強く羽ばたきながら上空に上り、
「ピーチュクピーチ
ュク」などと長時間鳴きながら空中でホバリングする。又、大きな石や土盛の上に止まってさえずる
こともある。繁殖の頃は縄張りを持ち、巣材採集、営巣、採食を行う。地上を歩きながら草の実や昆
虫を食べるが、近年では環境の変化に伴い営巣する場所が全国的に減少している。
世田谷区では、留鳥として年中生息し繁殖している。多摩川の河川敷で多く、稀に野川で見られる
ことがあり、
砧公園で繁殖した例もある。
1 月下旬頃からさえずりが始まり、
4 月頃から営巣を始める。
冬季は個体数が多いが、繁殖期は減少している。(全記録数 3069 件 1948~2007 年)
○主な繁殖記録
1948.04.26 多摩川(野毛)
1巣
5 卵 新田畑にて
1957.05.29 多摩川(玉堤)
1巣
4 卵 抱卵中 コジキタッナ中島 6/1 雛 4 羽 人に卵だけ盗られて
無くなっていた 外径 9.8 ㎝ 内径 7.6 ㎝ 深さ 4.5 ㎝
1966.06.15 砧公園
1巣
4 卵 芝の中で抱卵中
1969.04.13 多摩川(玉堤)
1巣
1 卵 4/15 3 卵 コジキッタナ
1970.04.12 多摩川
1巣
3 卵 4/13 卵は人にとられてない
1995.06.30 多摩川
巣立ち雛 1 羽
2002.04.13 多摩川(玉堤 1)
2002.06.13 多摩川(上野毛 2)
1巣
雛1羽
成鳥から給餌
4 卵 中州の草の間 その後放棄
コアジサシの親子に近づき激しくつっつかれる
2004.06.23 多摩川(鎌田 1)
巣立ち雛 1 羽
成鳥が給餌
2005.04.18 多摩川(玉堤 1)
1巣
抱卵 中州の草の間
1952.02.27 多摩川(野毛)
1羽
初さえずり
1975.11.02 多摩川
1羽
1998.01.20 多摩川
253 羽
2001.01.08 多摩川
110 羽
2002.02.20 多摩川
53 羽
定例調査
1羽
定例調査
2003.03.19 多摩川
76 羽
定例調査
2004.03.17 多摩川
50 羽
定例調査
○主な観察記録
2003.06.04 野川
前夜降雪でほとんどが芝生グランドに集まる
104
2005.03.16 多摩川
45 羽
定例調査
2006.03.15 多摩川
27 羽
定例調査
2007.03.14 多摩川
27 羽
定例調査
148.ハマヒバリ Eremophila alpestris Shore Lark
ヒバリ科
モロッコ、トルコから中国北部、北アメリカの極地地方からメキシコ、コロンビアで繁殖し、北方
のものは冬季に南下する。日本では、迷鳥又は冬鳥として稀に渡来する。北海道、本州、対馬、トカ
ラ列島の海岸の埋立地、干拓地の荒れ地、砂丘地帯、草がまばらな砂浜などに記録がある。雄が先に
営巣地に渡来し、繁殖の頃はヒバリと同様に高空で高く低く上り下りし、舞い降りる前までさえずり
続ける。採食は地上を歩きながら、メヒシバなどの草の種子をついばむ。繁殖期には昆虫、非繁殖期
には植物の種子を食べる。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(全記録数 2 件 2003 年)
○観察記録
2003.11.05~06 多摩川(鎌田)1
1羽
グラウンドの芝生でタヒバリ、ハクセキレイの群れと採餌
149.ショウドウツバメ Riparia riparia Sand Martin
ツバメ科
極地地方を除く、ユーラシア及び北アメリカで繁殖し、アフリカ、ヒマラヤ、東南アジア、南アメ
リカで越冬する。日本では、夏鳥として北海道と本州北部に渡来する。湖沼、河川などの崖に穴を掘
って集団で営巣し、付近の湖や川の上を飛翔し空を飛ぶ昆虫などを捕食する。本州以南では旅鳥とし
て春と秋に渡来するが、個体数は秋に多い。秋は水辺のヨシ原や草原などに群れて、ツバメの集団塒
に混じることもある。
世田谷区では、旅鳥として春は 4 月から 5 月頃、秋は 8 月から 10 月に立ち寄る。多摩川で見られ、
春は稀だが秋によく観察される。冬季に観察されることもある。ツバメやコシアカツバメ、ヒメアマ
ツバメの中に混じって飛翔していることが多い。(全記録数 176 件 1968~2007 年)
○主な観察記録
1968.05.15 多摩川(野毛)
2羽
1996.10.10 多摩川
13 羽
1998.10.19 多摩川
70 羽
ツバメ 30 羽の中にまじって渡し場下流に遊飛中
2000.01.18~27 多摩川
2羽
2001.10.12 多摩川
5羽
2003.09.22 多摩川
5羽
2004.04.28 多摩川
34 羽
2005.09.08 多摩川
1羽
2006.09.20 多摩川
4羽
定例調査
2007.09.19 多摩川
10 羽
定例調査
コシアカツバメの群れに混じって飛ぶ
105
150.ツバメ Hirundo rustica House Swallow
ツバメ科
北部を除くユーラシア、アフリカ北部、北部を除く北アメリカで繁殖し、冬季はアフリカ南部、イ
ンド、東南アジア、ニューギニア、南アメリカに渡る。日本では、夏鳥として北海道南部以南に渡来
し、8 月から 11 月に渡去するが、関東、東海の太平洋沿岸や九州で少数が越冬する。山間の村落、町
や市街地に多く、田畑、草原、公園、河川などの営巣地付近を飛翔する。飛んでいるユスリカ・ハチ・
ハエ・アブ・トンボなどの昆虫を捕食する。人家に巣を造り、1~3 回繁殖する。雛が独立する夏から
秋にかけて、河川や河口のヨシ原に集合して塒を形成する。
世田谷区では、夏鳥として 3 月中旬頃に渡来し、10 月頃渡去するが、稀に冬季に観察されることも
ある。河川、住宅地、商業地、公園などで普通に見られ、野川、仙川、多摩川沿いの町に多い。営巣
は商店、ガレージ、人家などで行われる。巣立ちしてから渡去するまで河川のヨシ原で集団塒をとり、
6 月下旬から 8 月上旬のピーク時は 1,000~2,500 羽になる。水面を飛びながら水を飲んだり、緑地、
河川上空での採餌や、グランド、川岸、畑などに降りて巣材を集めている姿も観察されている。区内
繁殖分布調査(1997~2001)や集団塒調査(2001~2007)も行った。(全記録数 3470 件 1946~2007 年)
図Ⅲ-11.2001 年世田谷区営巣分布
(2002 年世田谷のツバメ 5 年間の記録より)
106
○主な繁殖記録
1962.08.21 経堂
1巣
1975.05.01 祖師谷
2巣
1987.07.09 馬事公苑
1巣
雛 4 羽巣立つ
雛4羽
1997 年 区内
246 巣
61 町の内 44 町で繁殖 繁殖分布調査
1998 年 区内
410 巣
61 町の内 56 町で繁殖 繁殖分布調査
1999 年 区内
291 巣
61 町の内 52 町で繁殖 繁殖分布調査
2000 年 区内
283 巣
61 町の内 50 町で繁殖 繁殖分布調査
2001 年 区内
284 巣
61 町の内 50 町で繁殖 繁殖分布調査
2005.04.14 南烏山 5
1巣
3 階の高さの巣で抱卵中
2005.05.16 粕谷 1
1巣
雛 2 羽 片親がいなくなり残った親が雛 2 羽を落下させ死亡
2005.05.24 瀬田 2
1巣
抱卵 マンションガレージ入口
2005.08.02 奥沢 6
1巣
雛 4 羽巣立ち
2006.07.31 粕谷 1
6巣
5 巣 各雛 4 羽 1 巣 3 羽
○集団塒記録(各地、各年の最多数)
1964.07.04 多摩川(玉堤 1)
500 羽
1967.07.01 多摩川(玉堤 1)
200 羽
2001.06.25 多摩川(鎌田 2)
1000 羽
塒調査
2002.07.06 多摩川(鎌田 2)
1500 羽
塒調査
2003.08.06 多摩川(鎌田 2)
2000 羽
塒調査
2003.08.06 多摩川(玉堤 1)
1200 羽
塒調査
2004.07.17 多摩川(鎌田 2)
1500 羽
塒調査
2004.07.17 多摩川(玉堤 1)
250 羽
塒調査
2005.07.23 多摩川(鎌田 2)
1000 羽
塒調査
2005.07.23 多摩川(玉堤 1)
170 羽
塒調査
2006.07.08 多摩川(鎌田 2)
1800 羽
塒調査
2006.06.28 多摩川(玉堤 1)
120 羽
塒調査
2007.07.24 多摩川(鎌田 2)
2500 羽
塒調査
151.コシアカツバメ Hirundo daurica Red-rumped Swallow
ツバメ科
ユーラシア大陸の温帯地帯で繁殖分布し、インド、東南アジア、アフリカ大陸中部で越冬する。日
本では、夏鳥として渡来し本州、四国、九州で繁殖する。10 月頃に渡去するが、関西では 11 月から
12 月頃まで留まる例もある。太平洋沿岸、四国、九州の一部では少数が越冬する。昔は西南日本に多
かったが、その後繁殖地域を広げ、1972 年に、北海道でも確認された。繁殖は、太平洋側や日本海側
の海岸線沿岸の平地の市町村に多く、内陸部にも進出している。市街地や村落のコンクリートの建造
物を好み、軒下にとっくり形の巣を造る。ほとんどが昆虫食で、ハムシ・カ・ハエなどを、空中を飛
びながら捕食する。
世田谷区では、旅鳥として春は 4 月から 5 月、秋は 7 月下旬から 10 月に立ち寄るが、2000 年に巣
立ち雛が観察された。冬に観察された例もある。多摩川で多く見られ、春は少ないが秋は毎年観察さ
れる。(全記録数 368 件 1953~2007 年)
○繁殖記録
2000.09.21 玉川 4
巣立ち雛 3 羽
巣立ちした雛を連れ、電線で給餌
107
○主な観察記録
1953.10.05 多摩川
3羽
1968.04.23 多摩川(鎌田)
2羽
1991.10.15 区内
1羽
1994.09.26 多摩川
1000 羽
1999.09.24 多摩川
200 羽
2001.10.12 多摩川(鎌田 1)
100 羽
氷川神社
ツバメとの混群、かなり低空を飛翔
ユスリカが異常発生して、それを捕食 オギの海
2003.10.02 多摩川
70 羽
2004.01.23 多摩川
1羽
低空で川原を旋回 玉堤 2
2006.08.30 多摩川(鎌田)
1羽
グランドの上空をツバメの群れと飛翔
2007.09.19 多摩川
7羽
定例調査
152.イワツバメ Delichon urbica House Martin
ツバメ科
北部及び南部を除くユーラシア・アフリカ北部で繁殖し、冬季は、インド、東南アジアに渡る。日
本では、夏鳥として九州以北に渡来し繁殖する。ツバメと同じように泥と枯れ草と唾液を混ぜて巣を
造るが、巣の形も造る場所も異なる。ツバメはひとつひとつ単独で巣を造るのに対し、イワツバメは
山麓の温泉街、山地の断崖、高山や海岸の岸壁に、数巣から数十巣をつなげて集団営巣をする。1970
年代には市街地の橋桁、ダム、高速道路の下やトンネル内、コンクリートのマンションのような建造
物にも多数が営巣するようになる。ツバメと同じようにカ・ガ・ハネアリ・トンボといった空中を飛
んでいる虫を捕る。
世田谷区では、夏鳥として 3 月に渡来し 8 月頃に渡去するが、9 月から 10 月に観察されることもあ
る。1948 年から記録があるが、繁殖は 1990 年代に入ってからである。多摩川、仙川、野川などで見
られ、繁殖している。川崎市の東久地橋で 1996 年から毎年繁殖していて、新二子橋上流周辺で多い。
(全記録数 1129 件 1948~2007 年)
○繁殖記録
1990.06.17 多摩川(野毛 2)
1998.08.02 玉川台 2
10 巣
巣立ち雛 5 羽
1999.06.03 多摩川
6~7 巣
第三京浜道多摩川橋桁
9 階建ての屋上で親 2 羽と巣立ち雛 5 羽が飛び交う 東名高速道下面に巣
盛んに巣を出入りするが、巣に入っている時間が長い 第三京浜道多摩
川橋桁
2003.05.28 仙川(大蔵)
4巣
雛 2 羽 3 巣 子育て中
2004.05.26 仙川(大蔵)
2巣
巣立ち雛 1 羽、巣の中に雛 5 羽
2005.05.25 仙川(大蔵)
4~5 巣
雛3羽
○主な観察記録
1948.04.16 多摩川
2羽
1961.03.27 多摩川
4羽
1961.11.15 深沢
1羽
1977.05.31 多摩川
1羽
第三京浜道多摩川橋下流
1981.05.02 多摩川(玉川 3)
1羽
新二子橋上流 巣材取り
1982.10.00 岡本静嘉堂周辺
10 羽
108
1990.09.29 馬事公苑
1羽
1993.06.25 野川
42 羽
1997.04.28 多摩川
49 羽
2004.07.07 砧公園
5羽
2006.04.19 多摩川
472 羽
今年は玉堤 1 でも数羽見られた
定例調査
153.ツメナガセキレイ Motacilla flava Yellow Wagtail
セキレイ科
ユーラシア大陸の中・高緯度地方、アラスカの西海岸で繁殖し、冬はアフリカからインド、東南アジ
アに渡る。日本では、夏鳥として北海道北部に春の 5 月頃渡来し、9 月頃に渡去する。渡り途中に、
本州の関東地方以南、四国、九州、沖縄県は旅鳥及び南西諸島では越冬する個体もいる。夏のツンド
ラ、草原、農耕地、水辺などの荒れ地状の草原に生息する。木の上では、尾を絶えず上下に振り動か
し、飛ぶ時は、
「チ チ」と鳴きながら波のように波形を描いて飛ぶ。主に蝶類・バッタ・トンボやク
モ類を食べる。
世田谷区では、渡りの途中と思われる下記の 2 例の記録がある。(全記録数 2 件 1999、2005 年)
○観察記録
1999.10.26 多摩川(鎌田 1)
1羽
人が近づき驚いてクルミの木の樹枝に止まる
2005.09.27 多摩川(玉川 1)
1羽
草原の小さなヤナギにいたが飛び立ち川岸に降りる
154.キセキレイ Motacilla cinerea Grey Wagtail
セキレイ科
日本では、北海道、本州、四国、九州のほぼ全国で留鳥として生息し繁殖する。南西諸島では冬鳥。
低地や低山帯に多く、亜高山帯から高山にも現れる。小さな川から大きな川までの水辺に生息し、山
麓や山間の渓流や清流を好む。常に尾羽を上下に振りながら主に水辺を歩き、トビゲラなどの水生昆
虫やトンボ・バッタ・ユスリカ・クモ類などの昆虫類とミミズなども採食し、フライキャッチもする。
世田谷区では、1970 年頃までは留鳥としては繁殖していたが、1990 年以降は冬鳥的な傾向となる。
8 月から 10 月に飛来し、翌年の 3 月から 4 月に去る。主に多摩川、野川、仙川で見られ、その他等々
力渓谷公園、砧公園、岡本の水辺や豪徳寺、駒沢オリンピック公園などで見られている。2007 年は夏
季も散発的に見られた。2007 年秋に砧 2 丁目の環状八号線沿いの街路樹で一時的な塒が観察された。
(全記録数 1810 件 1946~2007 年)
○繁殖記録
1948.04.27 等々力渓谷公園
1巣
3 卵 水面より 70cm の所に巣があった
1950.06.09 多摩川
1巣
4 卵 抱卵中
1952.05.04 等々力渓谷公園
1巣
営巣中
1966.05.03 野毛
1巣
雛 5 羽 5/9 全部巣立ち 谷沢川
○塒観察記録
2007.11.19~26 砧 2
43~85 羽
○主な観察記録
1946.08.24 野毛
1羽
1961.03.22 用賀
1羽
環状八号線街路樹クスノキに塒入り キセキレイだけの塒
109
1987.11.21 馬事公苑
1羽
1998.11.30 多摩川
9羽
2001.09.24 丸子川(岡本 2)
1羽
2003.02.09 仙川
12 羽
2005.09.26 砧公園
2羽
2006.01.18 多摩川
17 羽
定例調査
2006.01.30 仙川
24 羽
定例調査
2006.12.06 野川
11 羽
定例調査
2007.02.07 仙川
13 羽
定例調査
155.ハクセキレイ Motacilla alba White Wagtail
セキレイ科
日本では留鳥で、北海道、本州各地で多く繁殖する。特に冬季によく見られる。1950 年代は北海道
や東北の海岸地方で繁殖していたが、近年は繁殖地が南下し関東から関西さらに九州でも繁殖するよ
うになる。低地の海岸や河川・湖沼などの水辺を中心に水田、集落や市街地にも生息。都市では建物
の隙間も利用して営巣し、セグロセキレイより砂泥地の水辺や人工的なコンクリートの岸辺を好む。
冬季に数百から千数百羽もの大群で、駅前の街路樹、工場の屋根や銀行、デパートなどの看板や外壁
で集団塒をつくる。
「チチンチチン」と鳴きながら波型に飛び、フライングキャッチで空中に飛んでい
るトビゲラ・ハエ・トンボなどの昆虫を捕食する。又、地面に降りて歩きながらや昆虫やクモ類も食
べる。
世田谷区では、昔は冬鳥であったが、1980 年代後半になって年中見られる様になってきた。10 月頃
多数飛来し、冬季は多くなる。多摩川、野川、仙川の川原やグラウンドの芝生で多く、緑地、公園や
緑道、学校、畑などで見られる。繁殖は 1990 年代後半で、河川や市街地の倉庫、民家などで営巣する。
1989 年の冬季は砧清掃工場の工場廃熱を利用して約 1 万羽の塒が観察された。(全記録数 4024 件 1948
~2007 年)
○主な繁殖記録
1996.06.28 多摩川
巣立つ雛 1 羽
1999.07.06 多摩川
巣立つ雛 1 羽
2001.05.29 用賀 3
巣立ち雛 2 羽
倉庫の屋根の隙間に営巣 成鳥 1 羽と屋根の上を飛行
2001.07.17 仙川
巣立ち雛 5 羽
成鳥 1 羽と一緒にいる
2002.06.19 用賀 3
1巣
2004.08.09 多摩川
巣立つ雛 2 羽
2005.05.20 粕谷 1
2巣
成鳥が倉庫屋根の隙間の巣を出入り、1 ヶ月後巣立ち雛 1 羽
雛が川原で餌を探していたが、成鳥がガを捕らえると走り寄る
①雛の声 成鳥 2 羽がトタン屋根の隙間を盛んに出入り
②雛 2 羽 成鳥が警戒しながら巣を出る、雛 2 羽の顔が見える
2005.06.18 仙川
巣立ち雛 1 羽
成鳥から餌をもらっていた 上谷戸橋上
2007.05.23 野川(喜多見 6)
巣立ち雛 2 羽
成鳥 3 羽と採餌
2007.07.07 野川(喜多見 6)
巣立ち雛 3 羽
成鳥が雛に給餌
○主な観察記録
1948.10.22 多摩川
1羽
1971.10.01 馬事公苑
1羽
110
1981.05.23 大蔵 6
1羽
1992.01.16 等々力渓谷
3羽
2001.01.10 砧公園
4羽
2004.03.17 多摩川
159 羽
定例調査
2004.12.01 仙川
59 羽
定例調査
2004.12.01 野川
50 羽
定例調査
2005.04.23 多摩川
1 羽 亜種ホオジロハクセキレイ オギの海脇の中洲
2006.04.08 多摩川(野毛 3)
3羽
チョウゲンボウをモビング
2007.07.01 桜上水 3
1羽
幼鳥 日大陸上グランドの水溜りに飛来採餌
156.セグロセキレイ Motacilla grandis Japanese Wagtail
セキレイ科
日本固有種だが一部朝鮮半島で繁殖する。北海道から九州まで留鳥として繁殖。奄美大島、対馬、
伊豆諸島では冬鳥として渡来する。他のセキレイ類に比べると、特に低地、山地の河川の中流域や扇
状地の河川を好む。ハクセキレイよりも水辺を好み、平地、湖沼、市街地や村落でも河川があれば生
息する。水辺の岸を歩きながら地上で餌を探したり、波形を描いて飛び、たまにフライングキャッチ
で飛んでくる虫を採る。カワゲラ・トビゲラなど水生昆虫を好むが、ガガンボ・トンボなどの昆虫や
クモ・甲殻類のエビなども食べる。
世田谷区では、留鳥で昔から年中観察され繁殖している。繁殖期は少ないが、10 月頃から多数飛来
し冬季は多くなる。多摩川で多く、野川、仙川、等々力渓谷、馬事公苑、桜上水などでも見られてい
る。(全記録数 2864 件 1948~2007 年)
○主な繁殖記録
1950.04.30 多摩川
1巣
雛6羽
1952.05.27 多摩川
1巣
2 卵、雛 3 羽
1957.05.01 多摩川(野毛)
1巣
6卵
1958.06.08 多摩川(喜多見)
1巣
5 卵 6/23 雛 3 羽
1963.05.05 多摩川(野毛)
巣立ち雛 1 羽
谷沢川先
1966.04.27 多摩川(野毛)
巣立ち雛 4 羽
谷沢川先
1996.05.11 祖師谷公園
巣立ち雛 3 羽
1998.05.11 多摩川
巣立ち雛 1 羽
2000.05.11 多摩川
巣立ち雛 1 羽
2006.05.30 多摩川(野毛 3)
巣立ち雛 1 羽
○主な観察記録
1948.09.02 多摩川
2羽
1991.02.28 野川
6羽
1991.07.20 等々力渓谷公園
2羽
1992.01.19 大蔵
2羽
1994.02.22 野川
13 羽
定例調査
2002.03.17 桜上水 3
5 羽
樹林
2002.11.20 多摩川
45 羽
定例調査
111
2003.05.08 砧公園
1羽
吊橋の近く 負傷しているらしい
2007.11.21 多摩川
23 羽
定例調査
2007.12.05 野川
3羽
定例調査
2007.12.05 仙川
1羽
定例調査
157.ビンズイ Anthus hodgsoni Olive-backed Pipit
セキレイ科
日本では、留鳥として本州中部の山地から北海道かけて繁殖し、四国の山地でも一部繁殖する。北
海道や東北北部では、海岸近くから山地まで普通に見られるが、その他の地方では山地で繁殖する。
低地から亜高山の明るい林を好み、特に木が疎らに生える草原やお花畑、スキー場などに生息する。
冬は本州中部以南に移動して平地や海岸、マツ林のある公園などで見られる。地上で小群をつくって、
足速に歩行しながら蝶類の幼虫や甲虫・ムカデ・クモなどを捕食し、冬は主に植物の種子を食べる。
世田谷区では、冬鳥として 10 月に渡来し、翌年の 4 月頃渡去する。砧公園や国分寺崖線沿いの野毛、
等々力渓谷公園、多摩川で見られ、地面でマツの種子を採食しているのが観察されている。(全記録数
99 件 1946~2007 年)
○主な観察記録
1946.04.13 野毛
1 羽
1954.10.25 多摩川(野毛)
5羽
1960.12.28 等々力渓谷公園
1羽
1985.05.08 馬事公苑
1羽
1999.11.10 砧公園
1羽
2004.01.30 砧公園
4羽
2005.01.25 砧公園
5羽
2005.04.12 多摩川(玉堤)
2羽
2006.01.11 砧公園
7羽
定例調査
2007.12.20 多摩川(鎌田 1)
2羽
散策路脇草地の潅木に止まり、すぐ飛び立つ
松林の下で餌を探している
158.ムネアカタヒバリ Anthus cervinus Red-throated Pipit
セキレイ科
ユーラシアの北極圏やカムチャッカ、アラスカ北西端で繁殖し、アフリカ中部や東南アジアで越冬
する。日本では、東北から本州中部は稀な旅鳥として渡来し、本州西部から九州・沖縄までは冬鳥と
して渡来する。水田、畑、草地、川原、海岸などで見られ、タヒバリより乾いた場所を好む。両足を
交互に動かして歩き、地上で採餌することが多い。カメムシなどの昆虫を好むが、冬季は草の種子も
食べる。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(全記録数 9 件 2003 年)
○観察記録
2003.11.18~12.05 多摩川(鎌田 1)
1羽
グランドの芝生でヒバリ、ハクセキレイ、タヒバリの群れと採餌
112
159.タヒバリ Anthus spinoletta Water Pipit
セキレイ科
ヨーロッパ北部から西シベリア北部、グリーンランドで繁殖し、冬季はアフリカ北部やイラン、イ
ラク、トランスカスピアに渡る。日本では、旅鳥又は冬鳥として北海道から本州、四国、九州など全
国に渡来する。冬は河川、湖沼などの水辺や海岸の波打ち際などに多く、水田や雪解けの水溜まりに
も現れる。渡りの頃は山地の草原に立ち寄り、露出した地面のある所などで見られる。冬は単独か小
群でいることが多いが、春は大群になることがある。地上を歩いて採餌し、川原の浅い水辺で、オサ
ムシ・アブ・バッタなどを捕食する。冬はイネ科・マメ科・キク科などの地上に落ちた種子も食べる。
世田谷区では、冬鳥として 10 月から 11 月に渡来し、翌年の 4 月下旬から 5 月上旬に渡去する。多
摩川で多く、野川や仙川、桜上水でも観察されている。河川の水際や芝生などで尾羽を上下に振りな
がら採餌する。(全記録数 1677 件 1948~2007 年)
○主な観察記録
1948.11.09 野毛
1羽
1955.04.19 多摩川(野毛)
4羽
1991.02.28 野川
5羽
1996.02.06 仙川
2羽
定例調査
1999.12.27 多摩川(上野毛 2)
8羽
川岸から飛び立って、ハヤブサを威嚇する
2002.04.10 桜上水 3
1羽
北沢川緑道 この付近では大変珍しい
2002.12.04 野川
2羽
定例調査
2003.11.19 多摩川
198 羽
定例調査
2006.11.15 多摩川
195 羽
定例調査
2007.11.05 多摩川(鎌田 1)
16 羽
芝生グランドで採餌
160.サンショウクイ Pericrocotus divaricatus Ashy Minivet
サンショウクイ科
ウスリー、朝鮮半島で繁殖し、冬季はフィリピン、マレー半島、ボルネオに渡る。日本では、夏鳥
として本州、四国、佐渡に渡来し、繁殖する。九州、伊豆諸島、対馬には渡りの途中に通過する。山
地の雑木林や農耕地の高い木のある広葉落葉樹林を好み生息し、営巣する。昔は市街地の社寺林など
でも生息し繁殖していたが、
都市化の進行とともに平地から姿を消した鳥のひとつである。
山地では、
地上にはほとんど降りることはなく「ヒリリーヒリリー」と鳴きながら集団で飛ぶ。
、木の葉や枝が茂
る下側でホバリングしながら昆虫やクモ類を採る。又、フライングキャッチしてヒラヒラ舞うように
飛び、採食する。
世田谷区では、1970 年代頃までは夏鳥又は旅鳥として渡来し繁殖した例がある。その後減少し、旅
鳥として、春と秋に稀に立ち寄る。(全記録数 113 件 1938~2002 年)
○繁殖記録
1949.06.23 野毛
1巣
営巣 6/26 1 卵 民家のケヤキに営巣
○主な観察記録
1938.08.16 太子堂
1羽
1949.04.26 等々力
1羽
1951.04.30 岡本
2羽
1953.06.14 野毛
1羽
さえずり
113
1962.08.30 野毛
5羽
1968.06.20 等々力渓谷公園
2羽
1969.04.23 等々力渓谷公園
1羽
1971.04.30 馬事公苑
1羽
2002.10.16 弦巻 5
1羽
6 時半頃、公園のスギの高木でヒヨドリとヒリヒリと鳴き交わす
2002.10.25 多摩川(鎌田 1)
1羽
草原のハリエンジュに止まっている
さえずり
161.ヒヨドリ Hypsipetes amaurotis Brown-eared Bulbul
ヒヨドリ科
日本列島からフィリピンや台湾、朝鮮半島南部に分布する。日本では、留鳥として北海道、本州、
四国、九州、南西諸島その周辺の島々の各地で繁殖する。北海道や東北北部の個体は、秋に南下する。
本州以南では留鳥であるが、秋は 10 月から 11 月、春は 4 月から 5 月に数十から数百羽位の群れで渡
りをする。低地の雑木林、マツや落葉広葉樹林など色々なタイプの林に棲み、庭木の多い民家の庭、
公園、学校、マンションの植え込みでも繁殖する。夏は主としてアブ・バッタ・セミなどの昆虫を、
冬はノイバラ・ナナカマド・カナメモチ・センダン・イイギリなどたくさんの種類の種子を食べる。
特に花蜜を好み、サクラ・ツバキなどの開花期は、花冠の中にくちばしを差し込み顔に花粉をつけな
がら蜜をなめる。又、果物や野菜なども食べる。
世田谷区では、昔は冬鳥であったが 1960 年代後半から繁殖期も生息するようになり、1969 年に繁
殖が観察された(表Ⅲ-1.ヒヨドリの月別出現状況)。夏季は個体数が少なく、10 月頃多数飛来する。砧公
園、多摩川、駒沢オリンピック公園、蘆花恒春園、仙川、野川、国分寺崖線や樹木の多い住宅地で多
い。春は 4 月頃、秋は 10 月から 11 月に数十から百羽以上の群れが移動するのが観察される。(全記録
数 4522 件 1946~2007 年)
表Ⅲ-1.ヒヨドリの月別出現状況
1951
1952
1953
1954
1955
1956
1957
1958
1959
1960
1961
1962
1963
1964
1965
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10 月
11 月
12 月
○繁殖記録
1969.06.16 野毛
巣立ち雛 1 羽
成鳥と巣立ち雛を自宅付近にて見る
1966
1967
1968
1969
1970
1971
114
1970.06.07 多摩川
1巣
1971.06.12 馬事公苑
巣立ち雛 4 羽
1971.07.01 野毛
巣立ち雛 3 羽
1971.07.13 上野毛
巣立ち雛 2 羽
1997.07.20 喜多見 6
1巣
1998.06.01 玉川台 2
巣立ち雛 3 羽
2003.05.29 弦巻 5
2007.08.22 桜上水 3
1巣
巣立ち雛 3 羽
雛 1 羽 写真
抱卵 8/6 孵化 8/15 巣立ち
巣の外に出た時 1 羽が車にひかれる
雛 3 羽 巣立ち直前雛 1 羽が 27 日ハシブトガラスに食べられる
オオシマザクラの梢で休息
○主な観察記録
1946.09.30 野毛
1羽
1951.10.02 野毛
3羽
1967.05.21 岡本
1羽
1991.02.28 野川
14 羽
1997.01.22 仙川
69 羽
定例調査
1998.10.19 多摩川
607 羽
南へ飛翔
2002.04.03 砧公園
300 羽
2002.07.23 高源院
5羽
2006.03.12 千歳台 5
1羽
2007.12.18 岡本静嘉堂
カラス類にモビング
70 羽
162.チゴモズ Lanius tigrinus Thick-billed Shrike
モズ科
ウスリーや中国北東部、朝鮮半島で繁殖し、冬季は中国南部からマレー半島やインドネシアに渡る。
日本では、夏鳥として本州中部から東北地方に渡来し、繁殖する。冬は南下して東南アジアで越冬す
る。分布地域は局地的で、数も少ない。昔は、各地の公園や庭園にも繁殖していた。山地のアカマツ
林や雑木林・落葉広葉樹の林に生息する。巣材集めや交尾、採食、繁殖は縄張り内で行う。とがった小
枝や針金に食べ物を突き刺す‘はやにえ’や、不消化物をペリットとして吐き出すという習性がある。
フライングキャッチや襲撃により、バッタ・トンボなどの昆虫やカエル・ヘビ、小鳥やモグラ・ネズ
ミなどの小哺乳類も食べる。
世田谷区では、夏鳥として 5 月頃渡来し、9 月頃渡去していた。国分寺崖線沿いの野毛、等々力渓
谷公園で繁殖し、岡本、上野毛、馬事公苑で観察されたが 1974 年が最後になる。(東京都:Bランク、
環境省:絶滅危惧ⅠA類 全記録数 102 件 1949~1974 年)
○繁殖記録
1952.06.27 野毛
1巣
雛 5 羽巣立ち スギの枝に営巣 谷沢川
1953.07.12 等々力渓谷公園
1雛
巣立つ
1953.07.12 野毛
巣立ち雛 5 羽
1955.05.30 野毛
1巣
1 卵 谷沢天神山のクロマツに営巣
1960.07.19 等々力渓谷公園
1巣
雛5羽
○観察記録
1949.05.18 野毛
1羽
成鳥 2 羽が給餌
115
1953.05.27 等々力渓谷公園
1羽
1955.08.20 野毛
1羽
1959.05.20 野毛
1羽
1961.07.23 野毛
4羽
1962.08.16 野毛
2羽
1964.05.23 野沢
1羽
1966.05.24 等々力渓谷公園
2羽
1968.06.17 岡本
1羽
1974.05.01 馬事公苑
1羽
岸の山にて鳴く
163.モズ Lanius bucephalus Bull-headed Shrike
モズ科
日本では、全国各地で留鳥として繁殖している。北海道や雪の多い地域でのものは、冬季、温暖な
地域に移動する。奄美、南西諸島では冬鳥。平地から山地の林、公園や農耕地の周辺、川原・高原など
で、低木のある開けた環境を好む。9 月から 10 月頃に雄雌ともに高い所に止まり、
「キィーキィー」
又は「チキチキチキ」と高鳴きをして単独の採食縄張りをつくる。2 月頃から雌は雄のなわばりに入
りつがいになる。その後巣材集めや交尾、営巣を行う。とがった小枝や針金に捕らえた獲物を刺して
おく‘はやにえ’や不消化物をペリットとして吐き出すの習性がある。コガネムシ・ガの幼虫・バッ
タなどの昆虫、ヘビ・カエル・トカゲやモグラ・ネズミなどの小哺乳類や爬虫類、両生類、小鳥まで
も餌とする。
世田谷区では、留鳥で昔から生息し繁殖していた。その後一時期に繁殖が途切れたが、2003 年から
再び繁殖するようになる。9 月から翌年の 5 月頃まで多く、夏季は少なくなる。多摩川で多く、砧公
園、祖師谷公園、馬事公苑や人家の庭などでも見られる。秋から初冬にかけて草地や農地の木々や杭
に止まって高鳴きをし、他の鳥の鳴き真似やはやにえ、昆虫・ネズミ・スズメを食べるのも観察され
ている。(全記録数 2575 件 1946~2007 年)
○主な繁殖記録
1946.03.21 等々力渓谷公園
1957.04.17 野毛
1巣
4卵
巣立ち雛 4 羽
1968.03.17 上野毛
1巣
5 卵 3/29 雛 3 羽 4/3 雛 4 羽
1970.04.22 等々力渓谷公園
1巣
雛5羽
1978.05.01 馬事公苑
1巣
雛3羽
1982.04.22 多摩川
巣立ち雛 1 羽
2004.04.13 多摩川(玉堤 1)
巣立ち雛 3 羽
雛が成鳥と一緒に行動するが、飛べなくてすぐ地面に降りる
2006.05.12 多摩川(玉堤 1)
巣立ち雛 6 羽
雛は草原にいるが成鳥雌 1 羽は近くのヤナギで警戒の声
2007.04.06 多摩川(野毛 2)
巣立ち雛 2 羽
2007.04.21 神明の森みつ池
巣立ち雛 2 羽
雛 2 羽と成鳥の雌雄が住宅地の木々を移動
2007.06.07 上用賀 4
巣立ち雛 1 羽
成鳥 1 羽と鳴き合っていた
○主な観察記録
1948.09.06 多摩川
2羽
1969.12.23 駒沢公園
1羽
116
1991.10.20 奥沢
3羽
1994.02.22 野川
4羽
定例調査
1999.01.22 多摩川(野毛 2)
1羽
首のないスズメが枝に刺さっている
1999.02.26 多摩川
1羽
ヒバリのさえずりの真似をする
2001.09.30 岡本 3
1羽
雄 高鳴きをして縄張りを主張、ムクドリ数羽を追い出す
2001.11.12 多摩川
1羽
雄 魚をくわえていた。どうやってとったのかは不明
2002.05.06 豪徳寺
1羽
一週間ほど同場所に
2005.03.18 蘆花恒春公園
1羽
2007.04.11 多摩川(鎌田 2)
1羽
ヨシの茎に挟んだカヤネズミを食べる 近くの巣へ十数回運んだ
2007.11.17 祖師谷公園
1羽
雌 バラ科の棘にスズメガの大きな幼虫を刺し食べていた
164.アカモズ Lanius cristatus Brown Shrike
モズ科
ロシア北東部やモンゴル、朝鮮半島で繁殖し、インド東南アジアで越冬する。日本では、夏鳥とし
て北海道、本州、佐渡などへ渡来し、繁殖する。九州、対馬は旅鳥。平地から山地のアカマツなどの
明るい林や低木のある草原で見られ、一夫一妻で繁殖し、モズと同じように縄張りを持ち、巣材集め、
交尾、営巣を行う。採餌はモズに似ているが、モズより飛行中の昆虫や木の葉に止まっている昆虫を
捕える割合が多い。又、不消化物をペリットとして吐き出すことや‘はやにえ’という習性もある。
モズは冬にはやにえをするが、アカモズは夏にも行う。コガネムシ・カミキリムシ・カマキリ・バッ
タなどいろいろな昆虫を好み、カエルやヘビ、スズメなども捕る。
世田谷区では、夏鳥として 5 月頃渡来し、代田、深沢、瀬田、用賀などで繁殖していた。生息は 1974
年が最後となりその後観察されていない。(東京都:Cランク、環境省:絶滅危惧ⅠB類 全記録数 14 件 1962
~1974 年)
○繁殖記録
1964.06.30 代田
1巣
繁殖の詳細不明
1968.07.01 深沢 4
1巣
雛5羽
1968.07.05 岡本
1巣
雛 5 羽 7/6 巣立ちして巣の近くにいた
1968.07.11 用賀
1巣
雛6羽
1968.07.22 砧公園
巣立ち雛 4 羽
1969.06.23 駒沢公園
1巣
雛6羽
○観察記録
1962.05.19 野毛
1羽
1962.09.23 馬事公苑
1羽
1966.05.01 岡本
1羽
1968.07.02 深沢 4
1羽
1968.07.15 等々力渓谷公園
1羽
1969.08.04 駒沢公園
1羽
1974.06.01 馬事公苑
1羽
自宅付近に飛来した
117
165.キレンジャク Bombycilla garrulus Waxwing
レンジャク科
スカンジナビア半島、シベリア、中国北部で繁殖し、冬は繁殖地より南下し、ヨーロッパやサハリ
ン、イラン、中国で越冬する。日本では、冬鳥として 11 月頃に北海道、東北、北陸、山陰地方に渡来
し、平地から山地の林や市街地の公園、村落の民家の庭などのヤドリギが寄生する林で見られる。関
東の山地や東京近郊の林などでは、3 月から 5 月頃渡去する。渡来数は年によって異なり、西日本で
はヒレンジャクが、東日本ではキレンジャクが比較的多く観察される。冬は 10~30 羽の群れで「チリ
チリチリ」や「チーチー」と鳴き、餌を求めて広く移動する。ヤドリキなどの実や昆虫を好むが、ナナ
カマドやズミを食べることもある。
世田谷区では、稀な旅鳥として 2 月から 4 月に立ち寄る。1997 年は区内各地で大きな群れが観察さ
れた。(全記録数 10 件 1986~2003 年)
○観察記録
1986.04.02 岡本 2
15 羽
1989.02.12 太子堂
40 羽
1997.02.23~26 北烏山 6
1997.02.25 北沢 5
1997.02.27~03.10 太子堂 1
1997.03.04 多摩川(玉堤)
1997.03.21~26 弦巻 4
2003.02.15 岡本静嘉堂周辺
目青不動
150 羽
12 羽
221 羽
6羽
15 羽
川岸のシダレヤナギの新芽を食べていた
弦巻電話局付近のヤナギに休んでいた
1羽
166.ヒレンジャク Bombycilla japonica Japanese Waxwing
レンジャク科
シベリア、中国北部、ウスリーで繁殖したものが南下し、中国南部、台湾、サハリンで越冬する。
日本では、冬鳥として沖縄北部より北海道、本州、四国、九州などに 11 月頃に渡来し、5 月頃に渡去
する。個体数は年によって異なり、全く観察されない年もある。冬は群れでいて、100 羽以上になる
こともある。春は平地の農耕地、山村の集落、市街地、公園の木にも現れる。
「ヒーヒー」や「チリチ
リチリ」と鳴いて移動する。昆虫なども食べるが、植物質が主でネズミモチ・イボタノキ・ニシキギ・
ヤドリギの実をよく食べる。水を飲む時以外は、地面に降りることはない。
世田谷区では、稀な旅鳥として 2 月から 5 月頃に渡来する。数羽から 20 羽位がヤナギの芽やヤド
リギの実を移動しながら食べているのが観察されている。(全記録数 15 件 1942~2007 年)
○観察記録
1942.03.19 駒沢
1羽
1967.03.25 岡本
1羽
1972.05.05~12 祖師谷
12 羽
1986.04.02 岡本静嘉堂周辺
15 羽
1991.04.09 馬事公苑
20 羽
1997.03.15 多摩川
1羽
1999.03.19 多摩川(玉堤 2)
3羽
2000.02.15~19 奥沢 7
2003.02.28 玉川 1
12 羽
8羽
八幡神社裏ニセアカシアの木に止まっていた
川岸の大きなヤナギで新芽を食べている
118
2003.03.24 多摩川(玉堤 2)
18 羽
緑地の大きなヤナギの新芽を食べる
2006.03.15 多摩川
3 羽
定例調査
2007.03.06~11 砧公園
1~5 羽
167.ミソサザイ Troglodytes troglodytes Wren
ミソサザイ科
日本では、北海道、本州、四国、九州、屋久島、種子島で留鳥として繁殖する。山地から亜高山の
薄暗い樹林や渓流沿いでコケ類が多い岩石地や倒木の多い林に生息する。冬は本州の低地に移動する
ものもあり、都市の公園内の川近くの藪などでも見られることがある。樹木の根元や岩に生えた樹木
の根の中にもぐり込んでいき、コメツキムシ・ハエの卵・クモ・ブヨなどの昆虫を食べる。
世田谷区では、冬鳥として稀に飛来する。翌年の 4 月頃去る。野毛、等々力渓谷、岡本、砧公園の
国分寺崖線沿いで記録が多く、その他多摩川や仙川などで見られている。水辺に近い藪の中などで鳴
きながら移動しているのが観察されている。(東京都:Cランク 全記録数 54 件 1938~2007 年)
○主な観察記録
1938.11.18 駒沢
1羽
1948.12.13 等々力
1羽
1952.04.11 野毛
1羽
1955.01.18 等々力渓谷公園
1羽
1964.11.24 岡本静嘉堂周辺
1羽
1989.02.19 太子堂
1羽
2000.01.24 多摩川
1羽
川岸の竹林で鳴きながら移動する姿が見られた
2005.02.28 仙川
1羽
スイセンの株を出入りしながら地鳴き
2007.04.04 砧公園
1羽
定例調査 さえずり
2007.12.17 多摩川(玉堤 1)
1羽
地鳴きしながら細い流れの岸を移動
鳴く
168.コマドリ Erithacus akahige Japanese Robin
ツグミ科
サハリンや南千島で繁殖し、11 月上旬頃までに中国南部へ渡去する。日本では、北海道や本州、四
国、九州、屋久島に夏鳥として渡来し繁殖するが、南西諸島では、越冬するものもある。亜高山のサ
サのある針葉樹林や山地の落葉針葉樹混交林で繁殖し、渡りの時期には低山や低地の公園などにも現
れる。山地の奥の急斜面やコケむした巨木がある沢の樹林に多い。見通しのよい所で止まって「ヒン、
カラララララー」と鈴のような音でさえずる。コケが生えた地上を両足をそろえて跳ね歩いて虫を探
し、地面からすばやく飛び上がって、ガの幼虫・クロアリ・トンボ・クモ類・ミミズなどを採食し、
ミヤマシグレなどの小さい果実も食べる。
世田谷区では、渡り途中と思われる下記 3 例の記録がある。(全記録数 5 件 1995~2005 年)
○観察記録
1995.04.29~05.06 砧公園
1羽
2004.04.30 砧公園
1羽
2005.05.01 砧公園
1羽
119
169.ノゴマ Luscinia calliope Siberian Rubythroat
ツグミ科
シベリアから千島やサハリン中国北部で繁殖し、冬季はインド東部、東南アジアに渡る。日本では、
夏鳥として北海道や東北北部に渡来し繁殖する。岩手県でも繁殖記録がある。本州以南は旅鳥として
通過する。北海道の低地から高山の草原やハイマツ帯に生息し、草原や荒れ地で繁殖する。渡りの時
期は、平地から亜高山の林や竹藪、川原にも現れて、春の渡り途中にしばしばさえずる。地上で餌を
探すことが多く、草地を跳ねながら餌を探して、昆虫やミミズなどを地上でついばむ。秋は、小果実
も食べる。
世田谷区では、旅鳥として稀に渡来した下記 5 例の記録がある。記録は全て 10 月で、民家の庭で
見られたこともある。(全記録数 5 件 1957~2007 年)
○観察記録
1957.10.05 上北沢
1羽
雌
1977.10.17 桜
1羽
雄
1990.10.14 奥沢 7
1羽
雄 植え込みの中、1 時間ほどで姿を消す
2001.10.19 多摩川(玉堤 1)
1羽
雄
2007.10.00 砧公園
1羽
170.コルリ Luscicia cyane Siberian Blue Robin
ツグミ科
シベリア南部からサハリン朝鮮半島で繁殖し、インドのアッサムから東南アジアで越冬する。日本
では、夏鳥として渡来し、北海道から本州中部の落葉広葉樹林で生息し繁殖する。4 月から 5 月に繁
殖地に渡り、8 月下旬から 9 月の中・下旬に渡去する。森林の暗い密林やササ藪を好み、下部を移動
していることが多いので、姿を見ることは少ない。さえずりは「ツツツ・・・」という前奏のあと、コ
マドリに似た「ヒンカララララ」と鳴く。採餌は藪の中を移動しながら、下枝に止まって蝶類の幼虫・
アリ・ハチの幼虫・クモ・ムカデ・ミミズなどを食べる。
世田谷区では、旅鳥として春と秋に稀に立ち寄る。下記 7 例の記録があるが、春に多く観察されて
いる。(全記録数 7 件 1949~2006 年)
○観察記録
1949.04.26 等々力渓谷公園
1羽
1963.05.00 烏山
1羽
1975.04.19 砧
1羽
1995.05.06 砧公園
1羽
2000.08.04 深沢
1羽
2003.04.27 砧公園
1羽
2006.04.23 千歳台 5
1羽
墓地
成鳥雄
竹藪でさえずる(4/26 まで)
171.ルリビタキ Tarsiger cyanurus Red-flanked Bushrobin
ツグミ科
日本では、留鳥として北海道、本州中部や四国の亜高山の針葉樹林で生息し繁殖する。北海道の大
雪山のハイマツ帯や海岸に近い林では普通に見られる。冬は暖地に移動し、平地から山地の林で過ご
す。普通 1 羽でいるが、渡りの時期は小群を見ることができる。薄暗い林を好み、樹木の下枝を移り
120
ながら、樹木の下部や地面にいるガの幼虫・カ・ハエ・クモなどの昆虫を採食する。又、ノイバラ・
ナナカマド・ウルシなどの実も食べる。
世田谷区では、冬鳥として 12 月頃に飛来し、翌年の 3 月頃に去る。少数が砧公園と岡本、野毛、
尾山台、瀬田、等々力渓谷公園など国分寺崖線沿いでよく見られ、その他豪徳寺、駒沢オリンピック
公園などで見られている。(全記録数 39 件 1955~2007 年)
○主な観察記録
1955.01.03 等々力渓谷公園
1羽
雌
1959.12.05 岡本
1羽
雄
1960.03.05 野毛
1羽
雄 自宅付近
1961.01.01 等々力渓谷公園
1羽
滝の山
1989.12.23 馬事公苑
1羽
雌
1999.12.30 砧公園
1羽
木の上で鳴いていた
2003.01.11 尾山台 2
1羽
自宅の餌台に来る
2003.12.06 瀬田 4
1羽
雄
2005.01.04 豪徳寺
2羽
2007.02.08 駒沢公園
1羽
2007.12.14 駒沢公園
1羽
雌型
172.ジョウビタキ Phoenicurus auroreus Daurian Redstart
ツグミ科
シベリア南部やモンゴル東部、チベット南西部、中国北部で繁殖し、冬季はインド北東部からイン
ドシナ、中国南部、台湾に渡る。日本では、冬鳥として 10 月頃に全国に渡来し、翌年の 4 月頃に渡去
する。1983 年に北海道大雪山で 5 羽の雛が巣立ちして、日本で初めての繁殖例となる。平地や低山の
草原や雑木林、農耕地、海岸や河川の林、住宅地や公園でも生息する。1 羽で生活することが多く、
潅木の上や木の頂付近、見晴らしのいい高所に止まって鳴く。ヤマウルシ・ヌルデ・ヘクソカズラな
どの実を好み、ハチ・ガの幼虫・ハエなどの昆虫も食べる。
世田谷区では、冬鳥として 10 月下旬頃渡来し、翌年の 3 月頃渡去する。多摩川、野川、仙川の周
辺で多く、その他公園や住宅地でも見られる。渡来時は「ヒッヒッ」「カッカッカッ」とよく鳴き、テ
レビアンテナ、畑の木枝の先などで鳴く姿が観察される。渡来時と渡去時に数が多くなる。(全記録数
1234 件 1948~2007 年)
○主な観察記録
1948.03.29 多摩川
1羽
1960.11.06 野毛
4羽
1973.10.01 馬事公苑
1羽
1992.01.12 烏山
1羽
1995.03.21 岡本静嘉堂
1羽
1997.01.17 多摩川
6羽
1999.11.18 中町 1
1羽
雌 自宅のアンテナ上に
2001.11.01 桜上水 3
1羽
自宅で声を聞く
2003.12.03 仙川
3羽
定例調査
雄 3、雌 1 羽
121
2005.01.02 千歳台 5
1羽
雌
2007.01.13 すみれば自然庭園
1羽
採餌
173.ノビタキ Saxicola torquata Stonechat
ツグミ科
ユーラシアの中・南部、アフリカ東・南部、マダガスカルで繁殖し、冬季はアフリカ北東部からアラ
ビア、インド、東南アジアへ渡る。日本では、夏鳥として本州中部以北に渡来する。高原の草原や北
海道の平地の草地、牧場、農耕地、灌木林に生息し繁殖する。渡りの時期には、全国の水田、河川敷、
湖沼の湿地などに現れる。越冬例もあり、先島諸島ではよく越冬している。草の穂先や枯れたススキ
などの茎の上、灌木の頂などのよく目立つ所に止まり、空中で飛び上がったり飛び降りたりしてコガ
ネムシ・カメムシ・ガの幼虫・ミツバチなどを採る。
世田谷区では、旅鳥として春は 4 月から 5 月上旬、秋は 9 月中旬から 11 月に立ち寄る。多摩川の
河川敷で見られ、春はセイヨウカラシナ、秋はセイタカアワダチソウやオギなどの花や穂先に止まっ
ているのが観察されている。(全記録数 159 件 1951~2007 年)
○主な観察記録
1951.10.25 野毛
1羽
1953.04.11 多摩川(野毛)
1羽
1968.10.12 多摩川(野毛)
6羽
夏羽 渡し場
1969.09.29 多摩川
20 羽
写真
1995.09.19 多摩川
1羽
1999.04.08 多摩川
1羽
中洲の草地 夏羽に換羽中
2001.10.12 多摩川
2羽
雌雄が低木に止まる
2005.10.06 多摩川(鎌田 1)
5羽
オギの海
2006.10.03 多摩川(鎌田 1)
2羽
草原のセイタカアワダチソウに止まっている
2007.10.10 多摩川(鎌田 1)
2羽
オギの海調査
174.イソヒヨドリ Monticola solitarius Blue Rock Thrush
イソヒヨドリ科
日本では、留鳥として北海道東部を除く全国各地の海岸で生息し繁殖する。北海道のものは冬に暖
地に移動する。崖や岩場がある海岸に生息し、コンクリートブロック、海岸沿いの民家の屋根によく
止まり、アンテナなどの見晴らしのよい所でさえずる。海岸沿いの岩場や崖、人家の屋根の隙間に営
巣するが、市街地ではビルや工場などの建造物でも営巣する。多様な餌種をもち、海岸に生息するト
ンボなどの昆虫類やフナムシやムカデ・ヤモリ・トカゲなどの両生類も食べる。又、林でミミズや稀
に小鳥の雛を襲うこともある。
世田谷区では、秋から冬に観察された下記の 4 例の記録がある。(全記録数 5 件 1973~2007 年)
○観察記録
1973.10.15 多摩川(野毛)
1羽
写真 第三京浜道多摩川橋
2002.10.15 多摩川(玉川 1)
1羽
雄 対岸の川岸の流木にいる
2007.01.03 野川(玉川 3)
1羽
雌 工事現場の斜面を移動、ムクドリの群れに飛び立つ
2007.01.21~24 多摩川(鎌田1)
1羽
定例調査 オギ原刈り取り跡の低い杭の上に止まり犬に驚いて飛び去る
122
175.トラツグミ Zoothera dauma White’s Thrush
ツグミ科
日本では、留鳥で九州から北海道に生息し、冬は北方や高地のものは暖地へ移動する。丘陵から低
山の薄暗い環境を好み、アカマツ林やダケカンバなどの暗い林で繁殖する。冬は市街地の林や公園に
飛来することもあり、曇天の日や夜間に、又、薄暗い林で口笛を吹くように「ヒョーヒョー」と鳴く
ことがある。林内に生息するゴミムシ・ガの幼虫・カメムシ・ケラ・ムカデ・クモ類などを採り、ノ
ブドウ・アオツヅラフジ・ヒサカキの実なども食べる。
世田谷区では、冬鳥として 11 月頃に飛来し、翌年の 4 月頃に去る。砧公園や国分寺崖線沿いの野
毛、瀬田、大蔵、砧公園などで見られ、姿や鳴き声が観察されている。(東京都:Cランク 全記録数 35
件 1947~2007 年)
○主な観察記録
1947.02.28 野毛
1羽
畑に来る
1955.01.04 等々力渓谷公園
1羽
鉄橋下流の崖が崩れ落葉が多く溜まっている所 滝の山
1961.02.21 北烏山
1羽
1971.02.22 砧
1羽
1973.10.01 馬事公苑
1羽
1988.03.08 馬事公苑
1羽
1996.02.25 瀬田 4
1羽
1998.12.17 砧公園
1羽
2001.03.28 大蔵 3
1羽
2004.11.09 豪徳寺
1羽
2007.02.21 大原 2
1羽
鳴き声
午前 6 時頃にさえずりが 3~4 日続く 国分寺崖線
古い死骸(大蔵 3 丁目崖線の中の車道横の方面)
和田堀給水場の代田橋駐輪場隣の緑地で採餌
176.マミジロ Turdus sibiricus Siberian Thrush
ツグミ科
中国北東部からロシア極東南部、サハリンにかけて繁殖し、冬季は中国南部や東南アジアに渡る。
日本では、夏鳥として渡来し、北海道や本州中部以北の山地で繁殖する。平地から山地のよく茂った
広葉樹林、混交林、亜高山帯のシラビソ、トウヒ、コメツガの針葉樹林に生息する。渡りの時期は市
街地の林や公園で観察されることがある。雄は営巣地で早朝からよく「キョロツリィーッ」とさえず
る。雌は雄に遅れて渡来し、縄張りをもつ雄とつがいになる。足で落葉をかき分けて餌を探し、ミミ
ズや昆虫、ミヤマザクラの実も食べる。
世田谷区では、旅鳥として立ち寄った下記 1 例の記録がある。(東京都:Cランク 全記録数 1 件 1976 年)
○観察記録
1976.05.24 馬事公苑
1羽
鳴き声
177.クロツグミ Turdus cardi Grey Thrush
ツグミ科
日本、中国中部で繁殖し、中国南部からインドシナ北部で越冬する。日本では、夏鳥として北海道、
本州、四国、佐渡、対馬に渡来し繁殖する。本州南西部以南では、一部で越冬することがある。夏は
本州の北アルプス地方や標高 900m以下の丘陵部や山地の林などで繁殖し、民家や神社の森にも生息
する。渡りの時は平地にも現れ、公園や市街地でも見られることがある。コガネ類・クワガタ・ゴミ
123
ムシ・アブ・ハエ・アブラムシなどを好み、ミミズやヤマザクラ・ノブドウ・ヒサカキなどの実など
も食べる。
世田谷区では、旅鳥として春と秋に立ち寄った下記 5 例の記録がある。(東京都:Cランク 全記録数 5
件 1955~2007 年)
○観察記録
1955.10.01 代田 1
1羽
1972.10.01 馬事公苑
1羽
1975.04.24 馬事公苑
1羽
2006.05.01 蘆花恒春園
1羽
2007.04.24 等々力渓谷公園
1羽
雌 カラスに追いかけられ逃げ回る
178.アカハラ Turdus chrysolaus Brown Thrush
ツグミ科
サハリン、南千島で繁殖し、台湾、中国南部、フィリピンで越冬する。日本では、本州中部以北で
は夏鳥として渡来して繁殖し、本州中部以南では、旅鳥及び冬鳥として越冬する。夏季は、北海道や
本州の山地に生息し、特にカラマツ、ブナ、シラカバなどの林やオオシラビソ、コメツガの針葉樹林
を好む。冬は山地や北地のものは南下し、関東以南の平地や丘陵で越冬する。明るい林を好み、家の
庭や竹藪、公園の林にも生息する。地上で木の葉を探って昆虫などの餌を採ることが多いが、木の上
で実を食べることもある。コガネ類・アブの幼虫・毛虫などの昆虫類やミミズ、ツルマサキ・ナナカ
マドなどの実も食べる。
世田谷区では、冬鳥として 10 月頃渡来し、翌年の 4 月から 5 月に渡去する。砧公園、馬事公苑、
岡本静嘉堂、瀬田、等々力渓谷公園のほかに羽根木、桜上水、深沢でも見られる。渡来時や春は「キ
ョロン キョロン ツリー」とさえずる。(全記録数 539 件 1945~2007 年)
○主な観察記録
1945.10.13 野毛
1羽
1952.04.01 野毛
8羽
自宅付近に来る
1970.05.06 等々力渓谷公園
1羽
滝の山
1992.01.18 深沢 8
3羽
1996.05.07 豪徳寺
1羽
雄
1999.01.22 千歳台 1
1羽
低木に止まったり、少し地面も歩く
2002.04.29 砧公園
5羽
夕方群れで採餌
2004.01.18 羽根木 2
1羽
2006.11.26 桜上水 2
1羽
2007.04.02 砧公園
1羽
亜種:オオアカハラ
179.シロハラ Turdus pallidus Pala Thrush
ツグミ科
ウスリー、アムール川下流域で繁殖し、朝鮮半島、台湾、中国南部で越冬する。日本では、冬鳥と
して全国に渡来し、
春の 3 月から 4 月頃渡去するが 1991、
1993、
1994 年に広島県で繁殖した例がある。
本州中部以南で多く、冬は高山から平地の林や市街地、木の多い暗めの公園で観察される。地上で餌
124
をついばむことが多く、落ち葉を探って餌を採ることが多い。ゴミムシ・ガの幼虫・ミミズ・ムカデ
などを採食し、又、ノイバラ・ナナカマド・エノキの実やモミジ・クロマツの種子も食べる。
世田谷区では、冬鳥として 10 月から 11 月頃渡来し、翌年の 4 月から 5 月頃に渡去する。砧公園で
多く、馬事公苑、蘆花恒春園、野毛、岡本などで見られている。竹藪や公園の薄暗い地面で、落ち葉
をひっくり返して虫やミミズを探す姿が観察されている。(全記録数 274 件 1952~2007 年)
○主な観察記録
1952.10.24 野毛
3羽
1967.01.14 中町
1羽
1971.10.01 馬事公苑
1羽
1995.04.25 岡本静嘉堂
1羽
1999.01.15 砧公園
6羽
2001.01.25 成城 2
1羽
2003.01.24 桜新町 2
1羽
2005.02.07 砧公園
25 羽
2006.12.19 蘆花恒春園
1羽
2007.04.17 瀬田四丁目広場
1羽
鳴きながら庭木の下を動き回っていた
集団で採餌
トウカエデに止まっていた
180.マミチャジナイ Turdus obscurus Eye-browed Thrush
ツグミ科
東シベリア、ロシア極東北部、アムール川流域で繁殖し、台湾、東南アジア、インドで越冬する。
日本では、旅鳥として北海道から九州までの全国に渡来するが、沖縄や西南日本では一部越冬する。
春は少ないが、秋はシロハラやツグミより早く 9 月下旬から 10 月上旬頃通過する。下草の少ない地上
や林縁を歩き昆虫を採る。ヤマザクラ・ノイバラ・ミズキなどの実も食べる。
世田谷区では、旅鳥として春は 3 月から 5 月、秋は 10 月から 11 月に立ち寄る。少数が砧公園、馬
事公苑、等々力渓谷公園、駒沢オリンピック公園などで見られている。(全記録数 34 件 1953~2007 年)
○主な観察記録
1953.10.15 野毛
2羽
自宅で見る
1962.10.20 等々力渓谷公園
8羽
滝の山
1964.10.04 野毛
4羽
自宅付近に飛来
1971.10.16 馬事公苑
10 羽
1990.11.16 馬事公苑
1羽
1991.10.09 駒沢公園
2羽
1998.03.16 砧公園
1羽
2003.04.20 砧公園
1羽
2006.04.26 等々力渓谷公園
3羽
2007.11.16 砧公園
1羽
雌 木に止まる
雄 木に止まる
125
181.ツグミ Turdus naumanni Dusky Thrush
ツグミ科
東シベリア及びロシア極東地域で繁殖し、中国南部や台湾、ビルマ北部で越冬する。日本では、冬
鳥として北海道、本州、四国、九州などに渡来する。平地から山地の林、農耕地、芝生、河川敷、干
潟など色々な環境に生息し、明るく見通しのいい林や川原など開けた場所を好む。地上や樹上で餌を
探し、地上では数歩進んで立ち止まることを繰り返しながら、ミミズやゴミムシ・アリやクモ・ムカ
デなどを採食し、ニシキギ・ノイバラ・ヌルデなどの植物の実も食べる。
世田谷区では、冬鳥として 10 月から 11 月頃渡来し、翌年の 4 月から 5 月上旬に渡去する。多摩川、
砧公園、野川、仙川で多く、その他公園や人家周辺で見られている。渡去の頃は、多摩川の河川敷に
大群が観察されている。(全記録数 2704 件 1947~2007 年)
○主な観察記録
1947.03.14 野毛
1羽
自宅で目撃する
1959.03.01 等々力渓谷公園
26 羽
南方より飛来し、谷沢山大ケヤキに止まる
1970.04.12 多摩川(玉堤)
80 羽
コジキッタナ
1991.02.28 野川
40 羽
1999.03.02 弦巻 4
1羽
2003.01.28 多摩川
129 羽
2004.02.04 仙川
22 羽
2005.02.08 奥沢 6
1羽
2006.04.19 多摩川
284 羽
2007.04.28 豪徳寺
3羽
定例調査
定例調査
182.ヤブサメ Urosphena squameiceps Short-tailed Bush Warbler
ウグイス科
ウスリー、中国東北部、朝鮮半島、サハリンで繁殖し、冬季は台湾、インドシナやビルマへ渡る。
日本では、夏鳥として北海道、本州、伊豆諸島、四国に渡来し繁殖する。低山や丘陵近くの雑木林や
スギ林、落葉広葉樹林の藪やササが生えた暗い環境を好む。春と秋の渡りの頃には、市街地や公園の
藪や雑木林にも渡来する。西日本に多く、潅木林の茂みや広葉樹の下草の中で「シーシー」と鳴くが
姿を見かけることは少ない。主にコガネムシ・ゴミムシ・ハエ・ハチ・ヤスデなどの多足類を捕食する。
世田谷区では、旅鳥として春の 4 月から 5 月に立ち寄るが秋は観察されてない。岡本静嘉堂、砧公
園、駒沢オリンピック公園で見られ、小川で水飲みや「シーシー」と虫のように鳴いているのが観察
されている。(東京都:Cランク 全記録数 8 件 1992~2007 年)
○観察記録
1992.04.21 岡本静嘉堂
1羽
ブッシュの中で鳴いていた
1995.04.25 岡本静嘉堂
1羽
2003.04.20 砧公園
2羽
1 羽はサツキ内、もう 1 羽は低木でシーシーとさえずる
2007.04.15 砧公園
1羽
水飲み
2007.04.28 駒沢公園
1羽
2007.05.03 岡本静嘉堂
1羽
2007.05.04 砧公園
1羽
126
183.ウグイス Cettia diphone Bush Warbler
ウグイス科
日本では、留鳥又は夏鳥として北海道から九州まで広く分布し、周年見られる。北海道では夏鳥。
夏は、亜高山のササ藪や林などに生息し繁殖するが、秋から冬は平地に降りて市街地の公園や住宅地
の庭などに生息する。秋から冬の 2 月頃までは、俗にササ鳴きといわれる「チャッチャッ」と鳴き、
春から夏は「ホーホケキョ」とさえずる。藪の中を枝渡りしながら移動し、葉の裏面に付くガの幼虫・
カイガラムシ・カ・ハエなどやクモ類を捕食する。熟したリンゴ・カキなどの果実やノイバラの実も
食べる。
世田谷区では、冬鳥として 10 月中旬から 11 月に飛来し、翌年の 4 月頃去るが、稀に 8 月頃まで生
息することがある。砧公園、祖師谷公園、馬事公苑、浄真寺、世田谷公園などのほか、多摩川、野川、
仙川、寺社、民家の庭先、川原の藪などで見聞きされている。さえずりは 2 月頃から始まり、稀に 8
月頃まで聞かれることがある。(東京都:Cランク 全記録数 1587 件 1945~2007 年)
○主な観察記録
1945.10.31 野毛
1羽
1971.07.01 馬事公苑
1羽
1994.03.11 宮坂 1
1羽
1999.01.15 砧公園
8羽
2001.07.02~05 桜上水 3
1羽
2003.03.29 高源院
1羽
2004.02.12 豪徳寺
2羽
2005.08.15 多摩川(玉川 1)
3羽
2006.01.04 蘆花恒春園
6羽
2007.11.20 すみれば庭園
自宅垣根に来て鳴く
さえずり 世田谷八幡境内
散策路脇の草地で地鳴き
10 羽
184.シマセンニュウ Locustella ochotensis Middendorff’s Grasshopper Warbler
ウグイス科
カムチャッカ、オホーツク海沿岸、サハリン、千島で繁殖し、フィリピン、ボルネオで越冬する。
日本では、夏鳥として北海道に渡来し繁殖する。本州以南では、旅鳥として春と秋に通過する。北海
道では海岸の草原に生息し、内陸では少ない。雄は 6 月初旬に渡来するが雌は少し遅れて雄の縄張り
に入る。雌雄とも毎年同じ地域に戻り、雄は同じ場所で縄張りをもつが、雌は同じ場所に定着しない
ため、年ごとにつがいの更新が行われる。ムカデ・ヤスデ・カメムシ・キリギリス・バッタなどを餌
にする。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(全記録数 1 件 2003 年)
○観察記録
2003.09.12 多摩川(野毛 2)
1羽
川原のヨモギに止まって時々「チッチッ」と鳴く
185.コヨシキリ Acrocephalus bistrigiceps Black-browed Reed Warbler
ウグイス科
中国東北・東部、ウスリー、サハリン、朝鮮半島で繁殖し、冬季は中国南部、タイ、ミャンマーに渡
る。日本では、夏鳥として、4 月から 5 月頃に北海道から九州に渡来し、本州から九州の主に標高の
127
高い山地の草原で繁殖するが、平地の河川敷や湿地、ヨシ原などで繁殖するものもいる。地上に降り
ることは少なく、草の茂みの中や潅木の枝の間をくぐりながらコオロギ・バッタ・ガの成虫・クモな
どを採食する。
世田谷区では、旅鳥として春と秋に立ち寄るが、繁殖期に観察されたこともある。多摩川と野川で
見られ、川岸でオギやヨシなどでさえずるのが観察されている。(全記録数 43 件 1949~2007 年)
○観察記録
1949.05.06 多摩川
1羽
さえずり
1966.06.11~12 多摩川(玉堤)
1羽
さえずり
1969.04.20 等々力
1羽
1997.07.07 多摩川(玉堤 2)
1羽
川原の草地でオギに止まってさえずる
1998.05.17 多摩川(玉堤 2)
1羽
オギの中間位の所でさえずる
1999.05.17 多摩川(玉堤 2)
1羽
川岸のヤナギに止まりさえずる
2002.07.13~15 多摩川(玉堤 1)
1羽
川岸の倒れたオギでさえずる
2004.09.10 多摩川(鎌田 1)
1羽
ハリエンジュの横枝で羽づくろい
2005.05.16 多摩川(玉堤 1)
1羽
中州のヤナギでさえずる
2007.07.29~08.01 野川(成城 4)
2羽
186.オオヨシキリ Acrocephalus arundinaceus Great Reed Warbler
ウグイス科
イギリスとスカンジナビア及びアイスランドを除くヨーロッパ、アフリカ北部、中央アジアや、朝
鮮半島で繁殖し、冬季はアフリカ、インド、東南アジア、ニューギニアへ渡る。日本では、夏鳥とし
て北海道北部・東部と沖縄を除くほぼ全国に渡来し繁殖する。奄美大島、南西諸島では旅鳥。全国各
地の平地から山地の河川敷、湿地、湖沼、海辺のヨシ原で繁殖する。5 月から 8 月頃までは、雄が縄
張りをもってヨシやヤナギに止まって「ギョギョシ」とさえずる。茎から茎へと移動しながら昆虫を捕
えるが、空中でフライングキャッチして捕ることもある。主としてコガネムシ・ハエ・ガの幼虫など
の昆虫やクモ類を食べ、カエルやカタツムリなども食べる。
世田谷区では、夏鳥として 4 月下旬に渡来し、9 月から 10 月に渡去する。多摩川で繁殖するが、渡
り途中は河川以外の住宅地や公園で見られることがある。(全記録数 1107 件 1940~2007 年)
○繁殖記録
1940.06.00 上北沢
繁殖詳細不明
1958.06.16 多摩川
1巣
5 卵 6/30 孵化せず ヨシの地上 84 ㎝ 外径 9.5 ㎝ 深さ 6.9 ㎝
1969.06.12 多摩川(玉堤)
3巣
1 巣 4 卵、1 巣雛 4 羽、1 巣雛 3 羽 コジキッタナ
1998.06.23 多摩川(野毛 2)
巣立ち雛 3 羽
対岸のヨシの中ほどに止まっている
2001.07.27 多摩川(鎌田 1)
巣立ち雛 1 羽
ヨシ原を移動しながら成鳥から給餌
2002.06.24 多摩川(玉堤 1)
巣立ち雛 1 羽
中州のヨシに止まり成鳥から餌をもらう
2003.07.10 多摩川(玉堤 1)
巣立ち雛 3 羽
中州のヨシに止まっている
2004.07.01 多摩川(玉堤 1)
巣立ち雛 3 羽
まばらに中州のヨシにいる
2005.06.19 多摩川(玉堤 1)
巣立ち雛 2 羽
中州のヨシ原で成鳥の後を追う
2007.08.22 多摩川(鎌田 1)
1巣
巣内に雛死骸 1 羽
128
○主な観察記録
1948.05.05 多摩川
1羽
小杉にてさえずりを聞く
1953.05.05 等々力
5羽
鳴く
1960.06.06 烏山
1羽
1994.06.03 多摩川
1996.05.06 祖師谷公園
1997.06.24 多摩川
10 羽
1羽
29 羽
2000.05.21 桜新町 2
1羽
7:30 に空地でさえずり、5 分で飛び去る
2001.08.25 砧公園
1羽
サンクチュアリのヨシの上を飛び回っていた
2004.05.08 桜上水 3
1羽
北沢川緑道の茂みで鳴きながら移動
2007.06.20 多摩川
6羽
定例調査
187.メボソムシクイ Phylloscopus borealis Arctic Warbler
ウグイス科
スカンジナビアからモンゴル、ウスリーから朝鮮半島、サハリン、アラスカ西端で繁殖し、東南ア
ジアで越冬する。日本では、夏鳥として北海道、本州、四国の山地に渡来して繁殖し、オオシラビソ
などの亜高山の針葉樹林やカラマツなどの潅木林、
ダケカンバの林や海岸近くのブナ帯にも生息する。
又、旅鳥として日本各地の低山や低地の公園を通過する。下枝から下枝に飛び移り葉や枝の下側に飛
びついて、周辺に静止しているものや飛んでいるアブ・ハエ・ガの幼虫などの昆虫を採食し、植物の
種子も食べる。
世田谷区では、旅鳥として春は 4 月から 5 月、秋は 9 月から 10 月に立ち寄る。砧公園、馬事公苑、
千歳台、駒沢オリンピック公園などで見られる。(全記録数 40 件 1948~2007 年)
○主な観察記録
1948.10.03 野毛
1羽
自宅で見る
1955.09.16 野毛
1羽
自宅で見る
1962.10.08 桜 3
1羽
1972.10.01 馬事公苑
1羽
1983.10.06 上野毛
1羽
2001.05.17 神明の森みつ池
1羽
10 時 30 分から 12 時までさえずっていた
2003.05.15 馬事公苑
2羽
2 羽で追いかけまわる
2004.10.09 砧公園
5羽
二の橋付近の木に集団で採餌しながら飛ぶ
2005.04.16 千歳台 5
1羽
アンテナの上でさえずり
2007.05.20 駒沢公園
1羽
188.エゾムシクイ Phylloscopus borealoides Eastern Pale-legged Leaf Warbler
ウグイス科
サハリン、南千島で繁殖し、ミャンマーからマレー半島、ラオス、ベトナム南部で越冬。日本では、
夏鳥として北海道、本州中部以北、四国に渡来し繁殖する。亜高山の針葉樹林で生息し、谷間に近い
薄暗い針葉樹林を好む。渡りの頃は、スギ林や広葉樹林の林や市街地の公園で見られることがある。
129
樹林内の下枝や藪の小枝を渡り歩き、葉の裏の鱗翅類の幼虫などを捕る。秋は植物の実も食べる。
世田谷区では、旅鳥として春は 4 月から 5 月、秋は 9 月から 10 月に立ち寄る。砧公園、瀬田、馬
事公苑など公園や緑地で見られ、春は落葉広葉樹林で、
「ヒーツーキー ヒーツーキー」と金属的な声
でさえずるのが観察されている。(全記録数 34 件 1937~2007 年)
○主な観察記録
1937.10.20 太子堂
1羽
1955.04.30 野毛
1羽
六所神社森にて見る
1963.05.13 等々力渓谷公園
1羽
さえずる 滝の山
1965.04.28 野毛
1羽
自宅付近で鳴く
1971.10.25 馬事公苑
1羽
1995.05.06 砧公園
1羽
2001.10.15 砧公園
1羽
サンクチュアリ裏側
2004.04.22 瀬田 4
1羽
さえずり 崖線内
2005.05.01 砧公園
1羽
2007.04.28 駒沢公園
1羽
さえずり
189.センダイムシクイ Phylloscopus coronatus Eastern Crowned Leaf Warbler
ウグイス科
ロシアアムール地方、中国北東部から朝鮮半島で繁殖し、インド、マレー半島、ジャワで越冬する。
日本では、夏鳥として北海道から九州までの各地に渡来し、繁殖する。奄美大島、南西諸島では旅鳥。
主に低山から山地の林や藪を好み、北海道の平地ではミズナラ林に普通に生息し、繁殖する。渡りの
頃は、平地の林や公園でも見られることがある。さえずりは「チィョチィョ ビー」と鳴く。樹上で餌
を探し、枝から枝へと移動して葉の裏側の虫に飛びついたりする。昆虫が主食で、鱗翅類などの幼虫
や成虫・クモなどを採食する。
世田谷区では、旅鳥として春は 4 月から 5 月、秋は 9 月から 10 月に立ち寄る。砧公園、蘆花恒春
園、馬事公苑など、区内の公園や緑地で見聞きされている。ムシクイ類では一番多く、春はさえずり
がよく観察されている。(全記録数 135 件 1949~2007 年)
○主な観察記録
1949.04.22 等々力渓谷公園
1羽
谷沢山にて目撃
1952.05.02 野毛
3羽
自宅付近で鳴く
1995.04.26 岡本静嘉堂
1羽
2000.05.03 弦巻 4
1羽
民家の大きな木のある庭で 6 日間さえずっていた
2002.06.07 八幡山 2
1羽
6:40 道路沿いの庭、高い樹木頂上で鳴いていた
2002.09.13 馬事公苑
5羽
集団で木に止まりすぐ移動
2003.04.20 瀬田 4
1羽
崖線内
2004.04.23 桜上水 3
1羽
自宅前の大島桜でさえずり
2006.05.01 蘆花恒春園
12 羽
2006.05.04 豪徳寺
1羽
2007.04.28 駒沢公園
2羽
さえずりなど
さえずり
130
190.キクイタダキ Regulus regulus Goldcrest
ウグイス科
日本最小の鳥である。日本では、北海道、本州中部と北部亜寒帯の森林や林で留鳥として、繁殖す
る。冬季には四国以南にも移動する。各地の山麓や平地のアカマツ、スギ、ヒノキのある林や市街地
の公園でも見られる。平地では、カラ類と混群を組んでいることが多い。他の鳥が入って行けないよ
うな枝や隙間に出入りして、ホバリングして餌を探し、ハムシ・アリマキなどの昆虫やクモなどを採
る。又、アカマツやスギの種子も食べる。
世田谷区では、冬鳥として稀に飛来し、砧公園、深沢、岡本静嘉堂、野毛などで見られている。(全
記録数 17 件 1948~2007 年)
○観察記録
1948.11.26 等々力渓谷公園
6羽
不動
1954.11.30 野毛
6羽
自宅付近に来る
1979.03.01 若林
1羽
1995.03.21 岡本静嘉堂
2羽
1995.04.00 深沢 8
1羽
無原罪保護区
1998.12.16 多摩川
1羽
道路沿いのマツで採餌
2002.02.10 砧公園
1羽
強風で雪混じりの日にスギの木で採餌
2004.10.09 砧公園
2羽
木の上から下に飛び回る
2007.05.04 砧公園
1羽
2007.12.27 砧公園
2羽
エナガと一緒につり橋付近の針葉樹にいた
191.セッカ Cisticola juncidis Fan-tailed Warbler
ウグイス科
日本では、本州、四国、九州、沖縄で留鳥として繁殖する。本州の多雪地や北部のものは冬に南下
する。本州中南部に集中し、北陸、東北は局地的に分布する。平地から山地の草原、川原、農耕地に
生息し、チガヤやカルカヤのような草丈の低いイネ科植物の草原を好む。海岸や河口のやや湿った草
原やヨシ原にも多い。草の茎にクモの糸で楕円形の巣を造る。縄張り意識が強く繁殖期の 4 月から 9
月位までは「ヒッヒッヒッ、チャチャチャ」と上空で鳴き、草の中に飛び込む。メイガ・シャクトリ
ガなどの幼虫やゴミムシ・イナゴ・カメムシなどを食べる。
世田谷区では、留鳥として年中生息している。多摩川の川原草地で繁殖し、さえずりが盛んな 4 月
から 9 月に多く、野川でも稀に見られることがある。(全記録数 2425 件 1948~2007 年)
○主な繁殖記録
1949.05.31 多摩川(野毛)
1巣
雛 5 羽 地上 48.5 ㎝ 赤岩
1960.07.19 多摩川(玉堤)
1巣
5 卵 コジキッタナ下流の島
1963.08.24 多摩川
1巣
3 卵(18 日発見)8/25.4 卵
1965.06.25 多摩川(鎌田)
1巣
雛 7 羽 久地にて
1968.06.02 多摩川(野毛)
1巣
6 卵 谷沢川先にて発見 6/3 成鳥雛に虫を食べさせていた 6/4
18:00 巣立ちした後
1970.05.16 多摩川
1巣
1 卵 松山下
1995.06.30 多摩川
1巣
成鳥が餌をくわえて草地の同じ所へ出入り
1999.06.11 多摩川(鎌田 1)
巣立ち雛 2 羽
雛 2 羽が草原を移動し高い草に止まって鳴きながら成鳥から餌をも
131
らう
2006.06.13 多摩川(野毛 2)
1巣
虫をくわえて川原の草地に入る
○主な観察記録
1948.04.04 多摩川(野毛)
1羽
1953.03.17 多摩川(野毛)
1羽
1958.06.23 多摩川(喜多見)
1羽
1993.06.25 野川
1羽
さえずり
定例調査
1995.01.16 多摩川
10 羽
1996.07.04 多摩川
16 羽
2001.07.18 多摩川
27 羽
2003.06.18 多摩川
33 羽
定例調査
1羽
定例調査
2006.06.28 多摩川
23 羽
定例調査
2007.05.05 鎌田 2
1羽
2005.09.07 野川
群れ
多摩川近くの草むらでさえずる
192.キビタキ Ficedula narcissina Narcissus Flycatcher
ヒタキ科
中国北東部・サハリン・南千島で繁殖し、冬季は中国南部、インドネシアや東南アジアで越冬する。
日本では、夏鳥として北海道、本州、四国、九州のほぼ全国に渡来し繁殖する。山地や丘陵地の落葉
広葉樹林に多く、葉のよく茂った薄暗い林を好む。北海道では平地の林にも普通に生息する。渡りの
時期には、市街地の公園や林でも見かける。春は大きな木に止まり「ピッコロロ ピョイチィーツクツ
ク」とさえずる。枝から飛び出し飛んでいる昆虫をフライングキャッチして餌を採ったり、木の葉の
裏面にいる虫やガ・アブ・ハエなどを食べるが、秋の渡りの頃はミズキ・ツルマサキなどの木の実も
食べる。
世田谷区では、旅鳥として春は 4 月から 5 月、秋は 9 月から 10 月に立ち寄る。砧公園、馬事公苑、
蘆花恒春園のほか、公園や緑地、社寺林、人家の庭などでも見られている。(全記録数 268 件 1946~2007
年)
○主な観察記録
1946.10.18 野毛
1羽
雌 目撃する
1950.10.09 野毛
2羽
雌雄 自宅のウメに来て夕方までいた
1971.05.06 馬事公苑
1羽
5/10 まで
1983.05.04 砧公園
1羽
写真
1989.10.21 太子堂 4
1羽
1996.05.07 若林 4
1羽
雄 松陰神社
2001.05.01 弦巻 5
1羽
雄 目の縁が黒くなっていた
2002.05.02 豪徳寺
1羽
雄
2003.05.03 瀬田 4
1羽
雄 さえずり
2004.06.24 神明の森みつ池
1羽
樹間でさえずり、湧水に水を飲みにきた
2005.04.30 砧公園
2羽
雌雄 雄は盛んにさえずり
2006.10.25 大蔵 2
7羽
雄 4、雌 3 羽
132
2007.10.11 蘆花恒春園
1羽
雄 メジロ、シジュウカラと一緒にミズキの実を採食していた
193.ムギマキ Ficedula mugimaki Mugimaki Flycatcher
ヒタキ科
ユーラシア大陸のバイカルからウスリー、樺太の針葉樹林で繁殖し、冬季は中国南部や東南アジア
で越冬する。日本では、旅鳥として北海道、本州、四国、九州などに少数が渡来する。低地のマツ林
や雑木林に渡来し、枝葉の間であちこちと移動して餌を探すことが多い。時々樹上から飛び上がり飛
んでいる昆虫をフライングキャッチして捕らえる。ハエ・アブ・ガガンボなどの昆虫を採食する。
世田谷区では、旅鳥として立ち寄った下記 2 例の記録がある。(全記録数 2 件 1967、1973 年)
○観察記録
1967.10.06 羽根木公園
1羽
1973.10.01 馬事公苑
1羽
雌
194.オジロビタキ Ficedula Parv Red-breasted Flycatcher
ヒタキ科
ヨーロッパ西部からカムチャッカにかけてのユーラシア大陸中部・北部で夏鳥として繁殖し、パキ
スタン、インドや東南アジアで越冬する。日本では、数少ない冬鳥又は旅鳥として渡来する。関東以
南で越冬することがある。平地から山地の明るい落葉広葉樹林の明るい林を好み、渡りの頃は森林や
農耕地、村落、市街地の公園などに渡来する。梢近くの枝葉の周りをあちこち飛んで餌を採るが、時
折フライングキャッチして虫を捕える。オサムシ・ハエ・カなどを好み、ノイバラの実なども食べる。
世田谷区では、旅鳥として立ち寄った下記 2 例の記録がある。(全記録数 2 件 1996、2007 年)
○観察記録
1996.11.11 砧公園
1羽
2007.09.10 砧公園
1羽
雌
195.オオルリ Cyanoptila cyanomelana Blue-and-white Flycatcher
ヒタキ科
アムール、ウスリー、中国東北部、朝鮮半島で繁殖し、冬季はインドシナ、スマトラ、ジャワ、フ
ィリピンに渡る。日本では、夏鳥として南西諸島を除く北海道からから九州までの全国各地に渡来し
繁殖する。亜高山、山地、丘陵地に広がる混交林の主に渓流沿いに生息し、アカマツ、カラマツ林に
も現れる。繁殖期の 4 月から 8 月は雄が「ヒーリーリーチチン」と美しい声でさえずる。渡りの頃は
市街地や公園の林にも渡来し、春にはさえずることもある。枝から飛び出してガ・チョウの幼虫をフ
ライングキャッチして採る。
世田谷区では、旅鳥として春は 4 月から 5 月、秋は 9 月から 10 月に立ち寄る。砧公園、等々力渓
谷公園、松陰神社など公園や緑地、社寺林などでも見られ、枝に止まってさえずる姿が観察されてい
る。(全記録数 57 件 1955~2007 年)
○主な観察記録
1955.10.01 代田 1
1羽
1969.04.26 等々力渓谷公園
1羽
雄 さえずり 滝の山
1971.04.30 馬事公苑
1羽
さえずり
133
1987.05.05 馬事公苑
2羽
雌雄
1995.04.26 砧公園
1羽
2000.04.18 若林 4
1羽
松陰神社
2001.09.23 砧公園
1羽
雌
2003.04.26 瀬田 4
1羽
2006.05.01 砧公園
3羽
2007.05.04 駒沢公園
1羽
2007.10.16 蘆花恒春園
1羽
196.サメビタキ Muscicapa sibirica Sooty Flycatcher
ヒタキ科
アフガニスタン、ヒマラヤ、バイカル湖周辺からウスリー、朝鮮半島、マレー半島で繁殖し、冬季
はインド北部・東南アジアに渡る。日本では、夏鳥として北海道と本州中部以北に渡来し繁殖する。渡
りの時期には旅鳥として渡来する。夏は亜高山帯の針広針葉樹林に棲み、大木の多い林で見られ、立
ち枯れの林を好む。渡りの時期は、低地や低山のマツ林や広葉樹林、その他の樹林に立ち寄る。見晴
らしのよい場所に止まって、フライングキャッチして、しばしば逃げ回る虫を追い回したり、空間に
飛び出す昆虫を狙い、飛び立ってくわえ採る。
世田谷区では、旅鳥として立ち寄った下記 5 例の記録があるが、全て 2006 年以降に観察されてい
る。(全記録数 8 件 20006、2007 年)
○観察記録
2006.10.02 神明の森みつ池
1羽
2006.10.11 多摩川(玉川 1)
1羽
通路脇の潅木に、止まったり飛んだりを繰り返す
2007.10.01~03 砧公園
1羽
定例調査
2007.10.02 岡本静嘉堂
1羽
2007.10.16 蘆花恒春園
2羽
197.エゾビタキ Muscicapa griseisticta Grey-spotted Flycatcher
ヒタキ科
カムチャッカ、ウスリー、サハリン、中国東北部で繁殖し、台湾、パラオ諸島、ニューギニアで越
冬する。日本では、旅鳥として全国に渡来する。渡りの途中で、低山や平地の林、市街地の公園、明
るい林に現れる。秋は、コサメビタキと混群で移動していることもある。枝から飛び出しフライング
キャッチしてチョウ・ガ・アブなどの昆虫を採り、木についている青虫も食べる。秋はミズキの実を
食べることもある。
世田谷区では、旅鳥として春は稀だが、秋は 9 月から 11 月に渡来する。秋に多く、砧公園、馬事
公苑、蘆花恒春園、多摩川、公園や緑地、住宅地などで見られ、コサメビタキとの混群やフライング
キャッチなどが観察されている。(全記録数 35 件 1971~2007 年)
○主な観察記録
1971.10.02 馬事公苑
6羽
1982.10.04 桜丘 3
1羽
1998.10.02 多摩川
1羽
10/23 まで
エンジュの樹上でフライングキャッチを繰り返す
134
2001.05.19 砧公園
2羽
木を飛び回りを移動していた
2001.10.05 馬事公苑
8羽
幼鳥含みコサメビタキとの混群
2003.05.15 弦巻 5
2羽
2004.10.06 砧公園
1羽
2005.04.26 蘆花恒春園
1羽
2006.10.03 多摩川(玉川 3)
1羽
2007.11.05 駒沢公園
1羽
2007.11.13 蘆花恒春園
1羽
定例調査
野川の林を移動
幼鳥
198.コサメビタキ Muscicapa dauurica Brown Flycatcher
ヒタキ科
インド、ヒマラヤ、バイカル湖周辺からウスリー、中国東北部、朝鮮半島で繁殖し、冬季はインド
から中国南部、東南アジアで越冬する。日本では、夏鳥として北海道から九州の各地に渡来し、繁殖
する。奄美大島、南西諸島では旅鳥。平地から高山の落葉広葉樹林や雑木林、カラマツ林に生息し、
村落の林にも普通に棲む。密林よりも明るい林を好み、樹木の枝上に営巣する。渡りの頃は市街地の
公園などにも現れ、エゾビタキやサメビタキと群れることがある。枝から飛び出してチョウ・ガ・ア
ブなどをフライングキャッチする。又、葉についている青虫も食べる。
世田谷区では、夏鳥又は旅鳥として渡来し、1948 年に繁殖した例がある。その後旅鳥となり、春は
稀だが、秋は 9 月から 10 月頃に立ち寄る。砧公園、馬事公苑、蘆花恒春園でよく見られ、そのほか公
園や河川などで見られている。砧公園では、2007 年に秋から翌年の 1 月まで観察された。(東京都:A
ランク 全記録数 49 件 1948~2007 年)
○繁殖記録
1948.04.26 奥沢
繁殖の詳細不明
7/11 まで
○主な観察記録
1962.09.22 馬事公苑
3羽
1993.10.10 下馬 4
1羽
1994.10.14 砧公園
1羽
1996.09.07 多摩川(鎌田 1)
1羽
1999.10.18 瀬田
1羽
2001.10.05 馬事公苑
4羽
エゾビタキと混群
2002.09.18 桜丘 4
5羽
笹原小学校の屋上の金網の柵に次々と飛来し飛び去った
2004.10.07 砧公園
6羽
群れで三の橋の上通過
2005.04.28 豪徳寺
1羽
2005.09.26 砧公園
6羽
2006.09.29 蘆花恒春園
4羽
2007.11.09~12.27 砧公園
1羽
下馬中央公園や学芸大学附属高校の樹林に 2~3 日滞在
オギの海
2008.01.09 まで滞在
135
199.サンコウチョウ Terpsiphone atrocaudata Black Paradise Flycatcher
カササギヒタキ科
台湾、フィリピンで繁殖し、冬季は中国南部、マレー半島、スマトラ島へ渡る。日本では、夏鳥と
して本州から九州までの各地に渡来し繁殖する。夏季は標高 1000m以下のスギ・ヒノキなどの人工林
や落葉広葉樹の密林、雑木林に生息し、薄暗い林の樹上に営巣する。昔は都心の公園や平地の林でも
普通に繁殖していた。雌雄で生活し、領域を占有する習性があり、繁殖期は雌もさえずる。翼を緩や
かに動かし、長い尾をヒラヒラさせて飛行し、低い潅木の間や立ち木の下枝を飛ぶ。樹上生活が主で
飛翔中にセミ・コガネ類・コオロギやアリなど捕食する。
世田谷区では、昔は夏鳥又は旅鳥として渡来し、蘆花恒春園(1940、1941)、等々力渓谷公園(1965)
で繁殖したが、その後、旅鳥となり 2001 年以降稀になる。(東京都:Aランク 全記録数 70 件 1940~2007
年)
○繁殖記録
1940.00.00 蘆花恒春園
月日及び繁殖の詳細不明
1941.00.00 蘆花恒春園
月日及び繁殖の詳細不明
1965.07.11 等々力渓谷公園
1巣
抱卵 7/14 餌運び 7/15 雛 4 羽 滝の山
1949.05.03 等々力渓谷公園
1羽
10 時頃、さえずりを 5~6 回聞く 岩の山
1952.05.13 野毛
1羽
5:50 自宅付近でさえずる
1958.05.18 等々力渓谷公園
1羽
谷沢山に来て鳴く
1961.07.23 等々力渓谷公園
2羽
雄
1963.09.13 北烏山
1羽
雌
1968.08.15 等々力渓谷公園
1羽
雄 滝の山
1978.06.05 池尻
1羽
教育大学付近
1988.05.09 馬事公苑
2羽
雌雄
1992.05.05 馬事公苑
1羽
雌
2003.06.10 神明の森みつ池
1羽
雌 さえずり
2007.05.22 豪徳寺
1羽
雄 墓地北側のヒノキ林
○主な観察記録
200.エナガ Aegithalos caudatus Long-tailed Tit
エナガ科
ヒマラヤと中央の高地を除くユーラシアの中緯度地方に広く分布する。日本では、北海道、本州、
四国、九州、対馬、佐渡に留鳥として生息する。平地や低山帯の色々な樹林帯に生息するが、二次林
に多くカラマツの植林地でもよく見かける。アカマツ林、亜高山針葉樹林帯の針広混交林、ブナの原
生林にも生息する。樹木の上、中層部や薮の小枝など葉が茂る所で鱗翅類・アブラムシ類・クモ類な
どを食べるが、柔らかく熟した果実や樹液なども採食する。群れ生活を中心とし、繁殖の時だけつが
いを形成、繁殖が終了すると、群れ生活に戻る。
世田谷区では、稀に観察される冬鳥であったが、1987 年に繁殖が記録され、その後時々観察される
ようになる。2003 年頃から一年中生息し、2006、2007 年に繁殖した。夏は少ないが、春や秋、冬は砧
公園、盧花恒春園、仙川沿い、国分寺崖線の緑地などでよく見られる。非繁殖期には一日中群れで過
ごし群れで塒入りする。又、シジュウカラ、メジロなどと混群をつくり林の中の枝から枝へ移動しな
136
がら餌を探しているのが観察されている。東京でも生息域を広げている鳥の一つである。(東京都:C
ランク 全記録数 169 件 1986~2007 年)
○繁殖記録
1987.07.01 馬事公苑
巣立ち雛 1 羽
2006.04.30 砧公園
巣立ち雛 10 羽
2007.04.20 瀬田 4
巣立ち雛 9 羽
2007.05.04 砧公園
巣立ち雛 1 羽
エノキの樹冠部小枝に雛がメジロ押し、親が給餌する
ケヤキの枝に並び親が給餌する 国分寺崖線
○主な観察記録
1986.01.24 馬事公苑
2羽
1992.01.16 等々力渓谷公園
2羽
1994.11.15 砧公園
7羽
バードサンクチュアリー東側林
2001.03.18 砧公園
2羽
小さな木の枝や木の皮を集め巣材運び
2002.10.04 神明の森みつ池
2羽
2003.05.23 桜新町 2
8羽
2004.11.17 北烏山 5
6羽
2005.11.21 仙川
3羽
朝 6 時前に群れが西から東方に飛翔
シジュウカラと移動している
2006.12.10 瀬田 4
13 羽
シジュウカラ、メジロと混群 国分寺崖線
2007.09.23 成城 4
18 羽
シジュウカラと混群 国分寺崖線
2007.10.14 次大夫堀公園
21 羽
2007.12.10 盧花恒春園
10 羽
201.ツリスガラ Remiz pendulinus Penduline Tit
ツリスガラ科
ヨーロッパ、トルコ、イラン、アフガニスタンからロシア極東中部、中国北東部で繁殖し、イラク
からインド北西部、中国南部、朝鮮半島で越冬する。日本では、冬鳥として本州、四国、九州の主と
して海岸地方に渡来する。約 30 年前までは、冬季に九州の一部で稀にしか見られなかったが、個体数
が増加するとともに北進し、関東地方や北陸の海岸部に毎年渡来するようになる。繁殖地では河川、
湖沼のヤナギなどの樹木の多いヨシ原にいる。冬は川辺や湖沼のヨシやガマの草原で見られ、ヨシの
茎から茎を伝い歩き、
葉の付け根をほじくって隠れているワタムシなどを取り出して食べる。
その他、
昆虫やクモ類を主に、冬は種子も採食する。冬季には群棲することが多い。
世田谷区では、冬鳥として 11 月頃に渡来し、翌年の 5 月頃に渡去する。全て多摩川で観察され、
川岸や草原のヨシやオギ、オオブタクサなどが密集している所で見かける。1992 年 4 月に初めて記録
され、
それ以降ほぼ毎年観察されているが 2000 年頃から個体数が減少する。
(全記録数 253 件 1992~2007
年)
○主な観察記録
1992.04.03 多摩川
1羽
1995.12.28 多摩川
2羽
1996.12.30 多摩川
15 羽
1999.04.17 多摩川
16 羽
2000.04.19 多摩川
10 羽
オオブタクサに止まり茎をつついている
137
2001.01.11 多摩川(鎌田 1)
4羽
薮の中を鳴き交わしながら移動 バンの池
2002.03.31 多摩川(鎌田 1)
3羽
雄 1、雌 2 羽 オギの海
2005.04.18 多摩川(鎌田 1)
6羽
オギの海
2006.12.05 多摩川(鎌田 1)
5羽
川岸に近いヨシ原でオオブタクサの茎をつついている
2007.04.26 多摩川(鎌田 1)
2羽
ヨシの茎に止まり採餌 オギの海
202.コガラ Parus montanus Willow Tit
シジュウカラ科
ヨーロッパから東アジアまでのユーラシアに広く分布する。日本では、北海道、本州、四国、九州
に留鳥として生息している。低山帯上部から亜高山帯の落葉広葉樹林、針葉樹林、針広混交林に生息
し、北海道では針葉樹林に多い。特に枯れ木が多い原生林や湿地の周辺の林に多い。巣は朽ちた木に
自分で穴を掘る。冬季には低地へ移動する個体もいる。樹林内の中・下層部で採餌する。樹木の内部
で幹や枝、あるいは低木や藪の枯れた小枝にぶら下がりカブトムシの幼虫などを取り出して食べる。
秋には草や樹木の種子・小果実を食べ、種子を樹木の中や下層部の幹の割れ目などに貯える習性があ
る。
世田谷区では、稀な冬鳥で 10 月頃から翌年 5 月頃にかけて観察されている。仙川や砧公園、若林
で見られているが、区内ではなかなか見ることが難しい鳥である。(全記録数 8 件 1957~2007 年)
○観察記録
1957.11.20 野毛
2羽
1992.01.16 等々力渓谷公園
1羽
2000.05.04 馬事公苑
1羽
2001.01.10 砧公園
1羽
2002.05.03 仙川
1羽
2003.10.16 仙川
4羽
2007.10.11 若林 4
1羽
2007.12.11 仙川
1羽
シジュウカラの群れと一緒に行動
203.ヒガラ Parus ater Coal Tit
シジュウカラ科
ヨーロッパから東アジアまでのユーラシアに広く分布する。日本では、北海道、本州、佐渡、四国、
九州、対馬に留鳥として生息している。低山帯の上部から亜高山帯の樹林で繁殖し、冬は低地のマツ
やスギなどの針葉樹林に下りてくる。亜高山針葉樹林に、特にコメツガ林に多い。低山帯の針広混交
林やブナ林の上部でも繁殖する。樹木の小枝や葉の多い樹冠部で採餌し、針葉や小枝に止まり、しば
しば逆さになって針葉の隙間や小枝のまたなどに隠れている虫を見つけ出して食べる。木の冬芽や未
熟なマツカサの中にくちばしを突き刺して虫を取り出すこともできる。主に昆虫やクモ類などを食べ
るが、針葉樹の種子やブナの種子なども食べる。小枝のまたなどに種子を隠す貯蔵の習性も持ってい
る。
世田谷区では、冬鳥として 10 月頃渡来し、翌年の 5 月頃に渡去する。砧公園、盧花恒春園、仙川、
国分寺崖線沿い、その他、公園や緑地で数羽がメジロ、シジュウカラ、エナガ等と混群をつくり移動
しているのが観察されている。(全記録数 38 件 1987~2007 年)
138
○主な観察記録
1987.04.27 松原 2
1羽
1991.10.20 奥沢
2羽
1994.12.13 馬事公苑
1羽
1995.03.21 静嘉堂緑地
1羽
1997.03.17 等々力渓谷公園
2羽
2001.05.07 砧公園
2羽
シジュウカラと混群 さえずる
2005.03.16 盧花恒春園
1羽
さえずっていた
2006.12.05 仙川
3羽
2006.12.10 瀬田 4
1羽
2007.04.12 神明の森みつ池
2羽
2007.12.14 駒沢公園
3羽
武蔵野自然林内
メジロ、シジュウカラ、エナガと混群
204.ヤマガラ Parus varius Varied Tit
シジュウカラ科
南千島、朝鮮半島南部、台湾に分布する。日本では、北海道南西部、本州、佐渡、四国、九州に留
鳥として生息する。平地から低山帯の雑木林、マツ林など色々な樹林に生息するが、特にシイ、カシ
の常緑広葉樹林を好み、西南日本に多い。大きい木が茂る公園や人家周辺でも見られる。樹木の上・
中層の外側や、樹冠部の小枝で採食することが多いが、地上でも落ちている木の実を採食する。ガ類
の幼虫・カブトムシ・クモ等の虫も食べるが、特に樹木の種子を好む。シイ・カシ・ナラ類のドング
リや、ハシバミ等の堅い実を、木の枝の上で足指を使い押さえつけ叩き割る。秋にドングリや針葉樹
の種子などを、樹木の幹や樹皮の割れ目、倒木の朽ちた部分等に貯蔵する習性がある。貯蔵した種子
は翌年の雛の食物を補うのに役立つ。
世田谷区では、昔から冬鳥として観察されてきたが、2001 年に繁殖が観察され、2005 年頃から留
鳥となる。砧公園、盧花恒春園、駒沢オリンピック公園、静嘉堂緑地など公園や緑地などで見られ、
冬季はメジロ、シジュウカラ、エナガなどと混群をつくり移動しているのが観察されている。(東京都:
Cランク 全記録数 209 件 1949~2007 年)
○繁殖記録
2001.08.29
砧公園
2007.06.24 駒沢公園
1巣
巣立ち雛 2 羽
雛 4 羽 エゴノキの樹洞 2 週間後巣立ち
成鳥 2 羽と一緒にいた
○主な観察記録
1949.10.11 玉川田園調布
2羽
10:35 頃玉川浄水場正門で見る
1952.03.30 野毛
1羽
鳴きながら自宅付近に来て西へ行く
1994.10.14 馬事公苑
2羽
武蔵野自然林
1997.02.27 馬事公苑
4羽
2003.03.03 仙川
4羽
2004.11.16 豪徳寺
1羽
2006.09.18 瀬田 4
2羽
エゴの実を採食 国分寺崖線
2006.09.19 仙川
1羽
エゴの実を採食
2006.11.06 盧花恒春園
1羽
定例調査
139
2006.11.26 砧公園
6羽
カラ類、メジロと移動
2007.01.13 すみれば庭園
1羽
餌台
2007.05.03 岡本静嘉堂
2羽
205.シジュウカラ Parus major Great Tit
シジュウカラ科
日本では、北海道、本州、佐渡、四国、九州、対馬、伊豆諸島で留鳥である。平地や低山帯の落葉
広葉樹林、常緑広葉樹林、針葉樹林、針広混交林に棲み、山地帯上部に生息するものは冬には平地へ
移動する。ブナ原生林から山地の二次林、樹木の多い公園や人家にまで幅広く生息している。樹林内
の下層部、樹木の幹や大枝、根元、林床、低木や薮の中などで採餌していることが多い。地上では落
ち葉等をくちばしでひっくり返し隠れている虫などを探し出す。昆虫・クモ類・植物の種子・果実を
採食する。
世田谷区では、1950 年頃までは冬鳥であったが 1960 年代に入って繁殖するようになり、その後一
年中生息するようになる。公園、緑地、河川や樹木の多い人家周辺などで見ることができ、樹洞やブ
ロック塀の隙間などに営巣するが、巣箱もよく利用する。冬季にはヤマガラ、メジロ、コゲラなどと
一緒に行動し、
林の中の枝から枝へ渡り歩いて餌を探しているのを公園や人家周辺でもよく見かける。
(全記録数 3920 件 1945~2007 年)
○主な繁殖記録
1959.05.02 等々力渓谷公園
1巣
クリに営巣 谷沢山
1962.05.03 代田
1巣
雛の声が巣箱から聞こえる
10 卵
1965.04.12 等々力
巣造り終了 4/25 10 卵 5/17 雛の声 5/28 8 羽巣立ち
1980.05.22 世田谷 1
巣立ち雛 4 羽
1996.06.20 多摩川
巣立ち雛 4 羽
家族群の移動
1997.05.13 下馬 4
巣立ち雛 5 羽
自宅庭の巣箱
2002.07.07 千歳台 1
巣立ち雛 4 羽
2003.05.31 成城 2
巣立ち雛 3 羽
成鳥 1 羽と一緒にいた
2005.05.24 瀬田 4
巣立ち雛 3 羽
成鳥 2 羽と一緒にいた 国分寺崖線
2007.05.14 砧公園
巣立ち雛 7 羽
2 組 成鳥 4 羽が給餌
2007.05.28 桜上水 5
巣立ち雛 11 羽
巣立ち雛 6 羽と 5 羽の 2 組 家族群が畑地の植え込みを移動
○主な観察記録
1945.10.13 野毛
1羽
1951.09.07 野毛
1羽
1986.10.01 馬事公苑
20 羽
1991.10.15 神明の森みつ池
6羽
1992.01.16 等々力渓谷公園
37 羽
1994.06.22 野川
自宅前電線に来て鳴く
9羽
1995.01.03 多摩川
31 羽
2002.04.03 砧公園
50 羽
2003.01.17 次大夫堀公園
10 羽
2004.12.13 豪徳寺
21 羽
定例調査
定例調査
140
2005.01.03 盧花恒春園
12 羽
2007.01.05 仙川
15 羽
206.メジロ Zosterops japonicus Japanese White-eye
メジロ科
朝鮮半島南部、台湾、中国南部、インドシナ北東部、フィリピン北部に分布する。日本では、北海
道、本州、佐渡、四国、九州、対馬で一年中生息している。伊豆諸島、奄美諸島、沖縄諸島では冬鳥
である。平地から山地までの色々な林に生息するが、よく茂った常緑広葉樹林に多い。灌木に営巣し、
クモの糸を使いお椀状の巣を造るが、巣材もシュロなどの自然素材のほかにビニールのひもなどもよ
く使うようになってきた。本州中部以北で繁殖するものは、冬季には暖地に移動し、市街地の公園や
庭にも姿を見せる。樹上生活が主で、枝から枝へ渡り歩き、柔らかい木の実、昆虫、クモなどを食べ
るが、甘いものが好きで熟したカキの実やウメ・サクラ・ツバキなどの花の蜜を好んで食べる。
世田谷区では、留鳥であるが、1950 年代頃までは冬に多く観察されていた。1960 年代後半以後都
市環境の中で増えていく傾向が見られ、1980 年代後半から一年中見られるようになる。2000 年に繁殖
が記録された。公園、緑地、河川や樹木の多い人家周辺などで普通に見ることができる。冬季にはヤ
マガラ、シジュウカラ、コゲラなどと一緒に行動し、林の中の枝から枝へ渡り歩いて餌を探している
のが公園や人家周辺でもよく見られる。(全記録数 2015 件 1945~2007 年)
○主な繁殖記録
2000.06.06 奥沢 7
巣立ち雛 1 羽
雛が路上に落下
2001.06.10 次大夫堀公園
巣立ち雛 1 羽
2002.06.28 千歳台 1
巣立ち雛 2 羽
2003.07.10 弦巻 2
巣立ち雛 3 羽
2006.06.22 粕谷 1
1巣
雛の声
2007.05.04 祖師谷 1
1巣
民家の木に巣があり成鳥が出入り 雛の声
街路樹の中に巣
2007.05.26 弦巻 2
巣立ち雛 4 羽
成鳥が給餌
2007.06.14 砧公園
2巣
巣立ち雛 6 羽
2007.06.27 祖師谷 4
1巣
雛の声 民家の木に巣があり成鳥が餌を運ぶ
2007.07.01 駒沢公園
巣立ち雛 3 羽
○主な観察記録
1945.10.19 野毛
1羽
鳴きながら自宅付近を通過
1950.10.08 野毛
2羽
自宅上空東方より西方に飛行
1953.10.18 等々力渓谷公園
6羽
ゴルフ橋上空を北西へ飛ぶ
1970.03.13 瀬田
6羽
1987.10.04 馬事公苑
10 羽
1999.03.16 多摩川
14 羽
松林付近に群れ
2002.04.03 砧公園
60 羽
定例調査
2004.12.13 豪徳寺
19 羽
2005.12.01 盧花恒春園
15 羽
2006.12.06 野川
21 羽
2007.11.13 次大夫堀公園
6羽
定例調査
141
207.シラガホオジロ Emberiza leucocephalos Pine Bunting
ホオジロ科
ウラル山脈西部から東はサハリン、南はアルタイ山脈、モンゴル、中国北西部で繁殖し、イラン南
西部から中央アジア南部、アフガニスタン、インド北西部、中国北部、モンゴルで越冬する。
日本では、シラガホオジロの越冬地のはずれにあたり、ごく少数が冬鳥又は旅鳥として渡来し、北
海道、本州、九州、日本海側の島嶼で 10 月頃から翌年 5 月頃にかけて観察されている。開けた藪地、
林縁、林内の空地や草原状の所で見られる。繁殖地では草原、灌木草原、疎林に生息し、地上でイネ
科などの種子を採食する。
世田谷区では、下記 1 例の観察記録がある。(全記録数 1 件 2002 年)
○観察記録
2002.12.20 多摩川
3羽
雄 1、雌 2 羽が草原の裸地でホオジロ 5 羽と採餌 オギの海
208.ホオジロ Emberiza cioides Siberian Meadow bunting
ホオジロ科
天山山脈、アルタイ山脈からモンゴル、ウスリー、サハリン南部、中国北部及び東部、朝鮮半島に
分布する。日本では、本州、佐渡、四国、九州、対馬、伊豆諸島に一年中生息している。小笠原諸島
や奄美大島以南、沖縄には生息していない。北海道では夏鳥である。平地や低山帯の、特に山麓の斜
面のような所に多い。集落、農耕地、牧草地などの周辺の藪地、又、疎林、植林、色々なタイプの樹
林の林縁で見られる。広大な草原や森林、原生林などの内部にはいない。繁殖地では、冬でもつがい
でいる個体が多い。地上で採餌することが多く、イネ科・カヤツリグサ科・タデ科・キク科・マメ科
などの種子を採食し昆虫も食べる。
世田谷区では、昔から一年中見られ繁殖していたが、その後冬鳥となる。稀に砧公園や多摩川など
で繁殖期にさえずりが観察されたことがある。多摩川、野川などに多く、冬季普通に見ることができ
る。(全記録数 1739 件 1946~2007 年)
○繁殖記録
1946.06.10 等々力渓谷公園
1巣
谷沢山
1947.04.25 等々力渓谷公園
1巣
1 卵 ツゲに営巣 滝の山
1959.05.13 深沢 5
1巣
雛 3 羽 孵化後 2 目ぐらい 園芸高校茶畑
1962.05.19 等々力渓谷公園
1巣
巣立ち雛 4 羽
1946.04.01 等々力渓谷公園
2羽
雌雄 谷沢山にて見る
1953.10.11 等々力渓谷公園
10 羽
○主な観察記録
1968.07.18 岡本
1羽
さえずり
1996.07.13 多摩川
1羽
幼鳥を 7 月末まで
2000.06.12 成城 2
1羽
テレビアンテナの上でさえずり
2002.01.01 豪徳寺
1羽
2003.05.01 砧公園
2羽
内、1 羽さえずり
2004.02.04 野川
7羽
定例調査
2005.04.17 千歳台 4
1羽
さえずり
45 羽
定例調査
2007.01.24 多摩川
2007.12.20 盧花恒春園
2羽
142
209.コジュリン Emberiza yessoensis Japanese Reed Bunting
ホオジロ科
中国北東部、ウスリー、南千島で繁殖し、朝鮮半島南部、中国南東部で越冬する。日本では、本州
と九州のごく限られた地域で繁殖し、これまで青森、秋田、山形、宮城、茨城、千葉、長野、群馬、
新潟、富山、山梨、静岡、熊本などで繁殖が確認されている。冬は関東南西部以南で過ごし、特に東
海地方、近畿地方、中国地方、四国の沿岸地帯に多い。スゲ類などが茂る草原、干拓地の湿った草原、
休耕地として放置された水田、牧牛に踏まれた丈の低い草原などで繁殖する。草原環境の変化に敏感
で、
休耕田や牧草地ではヨシや草が茂りすぎるといなくなる。
草原の中の地上を歩きながら採餌する。
繁殖期には鱗翅類の幼虫・直翅類・クモ類などの動物質を雛に与え、成鳥も昆虫を食べる。冬はタデ
科・イネ科などの草の種子をついばむ。
世田谷区では、冬鳥として稀に渡来し多摩川で 9 月頃から翌年の 3 月頃に観察されている。1995 年
から記録があるが観察される個体数は少なく、
観察されない年もある。
川岸のヨシやオギ原で見られ、
オオジュリンとヨシの茎をつつくのが観察されている。2005 年以降は観察されていない。(東京都:C
ランク 全記録数 25 件 1995~2004 年)
○主な観察記録
1995.10.30 多摩川
1羽
1998.01.10 多摩川(玉堤 1)
1羽
川岸のヨシに止まっていた
1999.03.19 多摩川
1羽
夏羽 川岸のヨシに止まっていた
2000.12.24 多摩川(鎌田 1)
1羽
オオジュリン 3 羽と一緒にヨシの茎をつつく オギの海
2001.04.29 多摩川(野毛 2)
1羽
雄 対岸の川岸で水浴び
2002.02.27 多摩川(野毛 2)
2羽
対岸のヨシにいたが川岸に降り水浴び
2003.03.21 多摩川(鎌田 1)
1羽
池の岸でヨシの茎をつつく
2004.11.16 多摩川
1羽
210.ホオアカ Emberiza fucata Chestnut-eared Bunting
ホオジロ科
ヒマラヤ西部、中国北東部及び南部、シベリア南東部、モンゴルで繁殖し、朝鮮半島南部からイン
ドシナ北部で越冬する。日本では、夏鳥として北海道、本州中北部、佐渡に渡来し繁殖する。本州の
西南部、隠岐、四国、九州、奄美大島、南西諸島では冬鳥である。平地、低山帯・亜高山帯の草原に
生息する。山地草原、牧草地、河川敷の草原、海岸草原、干拓地など薮のまばらな草原など、あらゆ
る草原で見られ比較的草丈の低い乾いた所に多い。草が茂る地上や低木、藪の茂みで採餌する。冬は
水田の土手や土手際に出てきて、イネ科・タデ科などの種子を食べる。雛への給餌はほとんど昆虫で、
鱗翅類や直翅類が多い。
世田谷区では、冬鳥として 10 月頃飛来し、翌年の 4 月から 5 月頃に去る。主に多摩川で観察され、
1996 年以降はほぼ毎年 1~2 羽が散策路脇の草地や草原などで観察されている。(全記録数 136 件 1952
~2007 年)
○主な観察記録
1952.11.18 多摩川(玉堤)
1羽
1957.10.25 多摩川(野毛)
1羽
1966.11.04 岡本
1羽
1993.04.12 多摩川
1羽
新田にて見る
雄
143
1997.10.24 多摩川(玉堤 2)
1羽
散策路で採餌
1998.10.26 多摩川
2羽
雄雌 散策路脇の草地
2000.02.07 多摩川(鎌田 1)
2羽
オギの茎に縦に止まっていた オギの海
2001.04.09 多摩川
2羽
散策路脇の草地にいた
2002.11.18 多摩川(鎌田 1)
1羽
オギの海
2005.04.21 多摩川(鎌田 1)
1羽
オギの海
2006.04.28 多摩川(鎌田 1)
1羽
盛んにさえずる オギの海
2007.12.20 多摩川
2羽
散策路脇の草地でしばらく灌木の先端に止まる
211.コホオアカ Emberiza pusilla Little Bunting
ホオジロ科
ユーラシア大陸北部で繁殖し、ネパール東部、インド北東部からインドシナ北部、中国南部、台湾
で越冬する。日本では、数少ない旅鳥又は冬鳥として北海道、本州、四国、九州で記録されている。
日本海の離島や南西諸島では春と秋に毎年記録されている。春の渡りの時期には群れで渡ることが多
いが、秋の渡りの時期や越冬期は 1 羽か数羽の小群で行動することが多い。水田、干拓地、川原、造
成地等の荒れ地状の草原に生息し、地上で採餌する。エノコログサなどのイネ科の種子や、灌木の枝
上で昆虫類を食べる。
世田谷区では、下記 1 例の観察記録がある。(全記録数 5 件 2005 年)
○観察記録
2005.03.02~24 多摩川(野毛 1)
1羽
散策路脇の草地で採餌
212.カシラダカ Emberiza rustica Rustic Bunting
ホオジロ科
スカンジナビア半島からカムチャッカ半島までのユーラシア高緯度地方で繁殖し、中国東部で越冬
する。日本では、冬鳥として本州中・南西部、佐渡、四国、九州、対馬、奄美大島、南西諸島に渡来
する。北海道と本州北部では旅鳥である。冬は平地や低山帯の農耕地、雑木林、疎林、湖畔や川辺の
ヨシ原や藪地で見られる。繁殖地では針葉樹林帯の湿地周辺の雑木林や藪地に生息する。冬は主とし
て地上で群れて採食することが多く、水田に大群で降りてイネの落ち穂やイネ科の種子を採食する。
その他カヤツリグサ科・タデ科・マメ科などの種子や昆虫も食べる。
世田谷区では、冬鳥で 11 月頃渡来し翌年の 4 月頃渡去する。多摩川の河川敷、野川、砧公園で見
られる。古くは等々力渓谷でも観察例がある。多摩川ではグランドの芝生、草地で見られ、積雪の後
などは大きな群れで見られることがある。(全記録数 294 件 1948~2007 年)
○主な観察記録
1948.03.28 等々力渓谷公園
1羽
1952.12.28 多摩川(野毛)
10 羽
1963.11.09 祖師谷
1羽
1964.04.13 烏山
1羽
谷沢山ケヤキでさえずる
1968.02.20 多摩川(鎌田)
50 羽
二子橋上流
1998.01.19 多摩川
41 羽
積雪の後、土の現れている所に多い
2001.01.08 多摩川
143 羽
前夜降雪があり芝生のグランドに集まる
144
2001.01.10 砧公園
2羽
定例調査
2005.02.02 野川
2羽
定例調査
2005.02.13 仙川
1羽
2007.12.20 多摩川(鎌田 1)
1羽
ホオジロの群れと一緒に採餌し、飛ぶ時は単独
213.ミヤマホオジロ Emberiza elegans Yellow-throated Bunting
ホオジロ科
ウスリー、中国北東部及び中部、朝鮮半島で繁殖し、中国南東部、台湾で越冬する。日本では、冬
鳥として本州中南部、佐渡、四国、九州、対馬、奄美大島、南西諸島に渡来するが、1993 年、1996
年に広島県で繁殖した例がある。北海道、本州北部では春と秋に通過する旅鳥である。繁殖期以外は
小群で生息する。平地や低山帯の樹林で、林縁、水辺や湿地縁などの藪の多い所で見られる。薮の下
などの地上で草の種子、昆虫類、クモ類などを採食する。
世田谷区では、下記 3 例の記録がある。(全記録数 4 件 1998~2004 年)
○観察記録
1998.01.17 多摩川(鎌田 1)
1羽
バンの池近くの薮にいた
2002.12.10 多摩川(玉川 3)
1羽
雌 前日 2.5 ㎝の降雪
2004.02.13~16 多摩川(鎌田 1)
1羽
雄 草原の縁を移動しながら採餌
214.アオジ Emberiza spodocephala Black-faced Bunting
ホオジロ科
アルタイ山脈西部からオホーツク海沿岸南部、南千島、アムール、サハリン、中国北東部及び南西
部、モンゴル、朝鮮半島北部で繁殖し、台湾、中国南部、インドシナ北部で越冬する。日本では、本
州の中部以北、北海道で繁殖し、本州西南部、四国、九州で越冬する。山地帯上部から亜高山帯下部
にかけての乾いた明るい林に生息し、疎林で藪の多い所、林縁などに多い。北海道では針広混交林、
針葉樹林の林道脇、二次林、林縁などの藪地に多く、原生林の内部にはいない。越冬地では平地の常
緑樹林の林縁、人家の生垣、溝や河川の堤防沿いの藪、ヨシ原などで見られる。ほとんど地上で採餌
する。タデ科、イネ科などの種子、ズミ、イボタノキなどの実を採食し、夏には昆虫の成虫・幼虫も
食べる。
世田谷区では、冬鳥として 10 月下旬に渡来し、翌年の 4 月下旬から 5 月中旬に渡去する。公園な
どの緑地帯の常緑樹林の林縁、人家の生垣、河川の堤防沿いの藪、ヨシ原などに生息している。砧公
園、盧花恒春園、駒沢公園、高源院、多摩川などのほか桜上水や成城などの住宅地でも観察され、4
月頃に樹木の梢でさえずりが聞かれることがある。(全記録数 2347 件 1946~2007 年)
○主な観察記録
1946.03.18 等々力渓谷公園
2羽
雌雄 滝の山
1950.10.17 野毛
1羽
自宅付近に来る
1955.05.05 等々力渓谷公園
1羽
滝の山にて見る
1998.02.11 野川
5羽
定例調査
2000.01.23 成城 3
2羽
住宅の生垣の中を飛び回っていた
2001.01.10 砧公園
30 羽
2003.04.20 瀬田 4
1羽
さえずり 国分寺崖線
145
2004.12.01 仙川
4羽
2005.02.05 豪徳寺
5羽
2006.11.15 多摩川
46 羽
2007.04.15 次大夫堀公園
定例調査
定例調査
3羽
215.クロジ Emberiza variabilis Grey Bunting
ホオジロ科
カムチャッカ南部・千島・サハリンで繁殖し、中国東部で越冬する。日本では、本州中部以北と北
海道で繁殖する。本州では日本海側の山地に片寄って生息し、特に新潟、長野、群馬の県境地方に多
い。冬は本州南西部、佐渡、四国、九州、対馬、伊豆諸島、奄美大島、南西諸島で越冬する。繁殖地
では低山帯上部から亜高山帯下部にかけての落葉広葉樹林、針広混交林、針葉樹林に生息し、樹林に
覆われたササ藪が密生している所に多い。茂った暗い林の林床を移動しながら、タデ科・イネ科など
の草の種子をついばむ。雛には鱗翅類などの幼虫を与える。越冬地では常緑樹林やスギ林に潜み、藪、
特にササ藪の下の地上で採餌する。
世田谷区では、冬鳥として 11 月頃渡来し、翌年 5 月頃渡去するが、渡来時と渡去時に観察例が多
い。砧公園、馬事公苑、多摩川などの暗い林の林床の藪の中で見られる。1~3 羽でいることが多く、
ササや草の茂みの中を動き回り草の種子や昆虫類・クモ類などを採食する。危険を感じると藪の中を
移動して遠ざかる。(全記録数 56 件 1946~2007 年)
○主な観察記録
1946.11.09 野毛
1羽
1978.05.01 馬事公苑
3羽
雄 1、雌 2 羽
1995.05.04 砧公園
1羽
雄が鳴きながらササ藪内を移動
2000.02.02 すみれば自然庭園
1羽
2001.04.22 馬事公苑
3羽
2004.04.06 多摩川(鎌田 1)
1羽
雄 草原のクコの茂みの中で青虫を食べる オギの海
2004.04.24 瀬田 4
1羽
芽吹いたばかりのクヌギでさえずっていた 国分寺崖線
2004.11.02 多摩川(玉川 3)
1羽
雄 兵庫島公園の斜面でアオキなど常緑樹の林床を移動
2007.05.02 砧公園
3羽
2007.11.05 駒沢公園
1羽
216.オオジュリン Emberiza schoeniclus Reed Bunting
ホオジロ科
ヨーロッパから東はレナ川上流域、アムール、カムチャッカ、サハリン、千島で繁殖し、アフリカ
北部、西南アジア、中国南部で越冬する。日本では、夏鳥として本州北部と北海道に渡来し繁殖する。
本州中部、佐渡、四国、九州、伊豆諸島、南西諸島では冬鳥である。特に関東地方以南に多い。繁殖
期以外は小群で行動する。繁殖地では草や灌木で主に昆虫類を、越冬地では枯れたヨシの茎の中から
越冬中のワタムシ類を取り出して採食する。稲刈り後の二次出穂の種子をついばむためヨシ原近くの
水田にもよく出てくる。
世田谷区では、冬鳥として 10 月中旬から下旬に渡来し、翌年の 4 月中旬から下旬に渡去する。多
摩川のヨシやオギが繁った川岸、池、草原などで見られ、ヨシ原の地上や茎で採餌する。高い草の茎
146
に斜めに止まったり、2 本の茎の間にまたがって止まったり、垂直の茎を上下にずれるように移動し
たりすることができる。(全記録数 910 件 1953~2007 年)
○主な観察記録
1953.11.01 多摩川(野毛)
2羽
1959.01.07 多摩川(野毛)
1羽
1963.02.17 多摩川
2羽
1964.04.04 多摩川(野毛)
1羽
渡し場にて見る
渡し場下流の島
1996.03.26 多摩川
14 羽
1997.03.06 多摩川
21 羽
2001.03.23 多摩川
21 羽
2003.03.19 多摩川
36 羽
定例調査
2005.01.19 多摩川
23 羽
定例調査
2007.03.22 多摩川(鎌田 1)
7羽
217.ツメナガホオジロ Calcarius lapponicus Lapland Bunting
ホオジロ科
ユーラシア大陸北部から北アメリカ大陸北部、グリーランドにかけて繁殖し、冬はユーラシア大陸
と北アメリカ大陸の中緯度地方に渡って越冬する。日本では、北海道、本州、四国に渡来する稀な冬
鳥である。比較的本州中部以北に観察記録が多い。農耕地、水田、干拓地など露出土の多い草付きの
荒れ地状の所や海岸部の草地等に飛来する。地上で草本の種子をついばむ。ユキホオジロやハギマシ
コの群れに混じって採餌することが多い。
世田谷区では、下記 2 例の記録がある。(全記録数 6 件 1943、1998 年)
○観察記録
1943.04.06 多摩川
1羽
雄
1998.01.10~21 多摩川(上野毛 2、玉川 1、鎌田 1)
1羽
雄 降雪後の散策路や草地
218.サバンナシトド Passerculus sandwichensis Savanna Sparrow
ホオジロ科
北アメリカ北部・中部、メキシコ北西部・中部からグアテマラ南西部で繁殖し、北方のものは冬季
には南下する。日本では、稀な冬鳥として宮城、茨城、千葉、埼玉、新潟、香川、鹿児島、沖縄県で
記録がある。草地、農耕地、裸地に生息し、耕起した農地、農耕地の水のない水路や溝などを好んで
歩き地上に落ちた主にイネ科植物の種子を採食する。
世田谷区では、下記の 1 例の記録がある。(全記録数 1 件 2006 年)
○観察記録
2006.12.05 多摩川(鎌田 1)
1羽
グランドの芝生でタヒバリ、カワラヒワ、スズメの群れと採餌
219.アトリ Fringilla montifringilla Brambling
アトリ科
スカンジナビアからカムチャッカ、サハリンにかけての亜寒帯で繁殖し、北アフリカ、ヨーロッパ
から小アジア、中央アジア、ロシア沿海地方、朝鮮半島、中国で越冬する。日本では、冬鳥として本
147
州、佐渡、四国、九州、対馬、伊豆諸島、奄美大島、南西諸島に渡来する。北海道では旅鳥である。
渡来初期には山地の森林で過ごし、その後春先にかけて山麓の雑木林や農耕地に現れ、群れで採餌す
る。時には数千、数万の大きな群れになることがある。ナナカマド・ズミなどの果実を食べるが、カ
エデ類の翼果やモミなどの針葉樹の種子も集団で食べる。群れでいることが多く、水田や川原では密
集して草本類の種子を採食する。
世田谷区では、冬鳥として 12 月頃渡来し、翌年の 4 月頃に渡去する。砧公園、等々力渓谷公園、
豪徳寺、多摩川、仙川などで見られている。群れでいることが多く、渡来数は年によって変動が大き
く観察されない年もある。(全記録数 63 件 1951~2007 年)
○主な観察記録
1951.03.18 等々力渓谷公園
8羽
1999.01.13 砧公園
1羽
2001.01.30 多摩川(玉堤 1)
8羽
谷沢山
カワラヒワ約 60 羽の群れと川原の草地を移動
2002.12.20 砧公園
60 羽
広場で採餌
2002.12.23 多摩川(玉堤 2)
16 羽
川原のオギやヤナギに止まっている
2002.12.26 豪徳寺
50 羽
2003.01.04 喜多見 5
2003.01.06 砧公園
2羽
採餌
180 羽
2003.03.03 仙川
10 羽
2004.01.07 砧公園
30 羽
2007.10.00 砧公園
1羽
定例調査
220.カワラヒワ Carduelis sinica Oriental Greenfinch
アトリ科
カムチャッカ、サハリン、朝鮮半島、アムール川流域、ウスリー、中国東部で繁殖し、北のものは
冬季には南へ渡る。日本では、本州、佐渡、四国、九州、対馬、伊豆諸島で一年中生息しているが、
北海道や雪の多い地方では夏鳥で、冬は温暖な地方に移動する。人家周辺、農耕地、雑木林、川原に
生息する。繁殖期には、平地から低山帯のいろいろな林で見られるが、非繁殖期には群れで主として
川原にいることが多い。街路樹にも普通に営巣し、動物の毛や草などの他にビニール、毛糸といった
人工物も巣材として使う。キク科・イネ科・タデ科・マメ科などの植物の種子を採食し、雛にも種子
だけを与える。
世田谷区では、一年中生息し繁殖している。幼鳥の記録はあるが、繁殖記録は少ない。個体数は冬
季に多く、夏季に少なくなるが 5 月下旬から 6 月中旬に巣立ち雛が見られ一時増加する。砧公園、馬
事公苑、駒沢オリンピック公園、盧花恒春園、等々力渓谷公園、静嘉堂緑地や樹木の多い住宅地、多
摩川、野川、仙川などで見ることができる。多摩川ではグランドの芝生、川原、草原などで見られ、
春はグランドの芝生でスズメのカタビラ、夏は川原のセイヨウカラシナ、秋は川原に群生するイヌタ
デの種子などを採食する。(全記録数 3751 件 1948~2007 年)
○主な繁殖記録
1990.04.01 馬事公苑
1997.06.06 多摩川
1999.06.21 玉川台 2
巣立ち雛 2 羽
巣立ち雛
1巣
巣立ち雛 3 羽 樹上で雛の鳴き声
148
2001.06.16 多摩川
巣立ち雛
2003.05.23 多摩川
巣立ち雛
2005.05.20 多摩川
巣立ち雛
2007.06.07 駒沢公園
巣立ち雛 4 羽
2007.06.07 奥沢 1
1巣
庭の低木より雛の声 成鳥 2 羽が給餌
○主な観察記録
1948.08.30 野毛
1羽
1950.10.23 野毛
40 羽
1968.09.14 野毛
35 羽
1991.05.21 神明の森みつ池
等々力ゴルフ場付近のケヤキに飛来
5羽
1992.06.29 野川
49 羽
定例調査
1997.06.15 仙川
17 羽
定例調査
2001.01.10 砧公園
250 羽
2003.11.06 多摩川
1072 羽
2004.01.21 多摩川
343 羽
定例調査
2006.11.10 多摩川(鎌田 1)
100 羽
オオブタクサの先に止まり種子を採餌 オギの海
2007.06.25 盧花恒春園
イヌタデの種子をついばむ
18 羽
221.マヒワ Carduelis spinus Siskin
アトリ科
ヨーロッパ北部及びアルプス、黒海東部の山地、ウスリー、サハリンで繁殖し、北アフリカ、ヨー
ロッパ、西南アジア、朝鮮半島、中国南東部で越冬する。日本では、冬鳥として本州、佐渡、四国、
九州、対馬、伊豆諸島、奄美大島に渡来する。北海道では大雪山、十勝地方、根室で少数が繁殖する
のが知られている。渡来初期には、亜高山帯のシラビソ、コメツガなどの針葉樹林で大群が見られる。
冬は次第に山を下って山麓のカラマツ林や落葉広葉樹林、雑木林などに群れで生息する。越冬期には
ハンノキ類・ダケカンバ・ヤシャブシ・アカマツ・モミなどの植物の実をついばみ、農作物ではイネ・
ムギ・キビ・ソバなどの地上に落ちた種子を採食する。数十羽の群れで採餌することが多い。
世田谷区では、冬鳥として 11 月頃渡来し、翌年の 3 月から 4 月に渡去する。渡来数は年によって
変動が大きく、渡来しない年もある。多摩川では河川の草地や草原で見られる。冬は十数羽から 100
羽位の群れで動き回っている。大きな群れは春先の移動時期に見られることが多い。(全記録数 70 件
1953~2007 年)
○主な観察記録
1953.04.14 野毛
12 羽
1968.04.09 馬事公苑
2羽
1976.03.01 馬事公苑
20 羽
1995.03.14 多摩川(鎌田 1)
1996.11.25 多摩川
150 羽
約 150 羽の群れが草原を移動
10 羽
1998.04.08 多摩川(玉堤 1)
2羽
川岸の芝生で採餌
2002.04.13 多摩川(鎌田 1)
2羽
草原で枯れたヨモギの茎に止まっている
2003.12.05 多摩川(鎌田 1)
6羽
草原でカワラヒワの群れと一緒に飛び回る
149
2004.04.03 仙川
22 羽
2007.03.17 多摩川(鎌田 1)
4羽
草原をカワラヒワと飛び交う
222.ベニヒワ Carduelis flammea Redpoll
アトリ科
北半球の亜寒帯から寒帯にかけて広く繁殖し、北半球の中緯度地方で越冬する。日本には冬鳥とし
て渡来する。主に北海道と東北地方北部にかけて渡来し、本州中部では稀である。渡来する個体数は
年による変動が大きくほとんど渡来しない年もある。明るい林や草原、農耕地に渡来し十数羽から数
十羽の群れで行動する。群れでハンノキ・シラカシなどのカバノキ科の堅果をつついて中の種子を食
べる。又、雪の積もった草原でシソ科・アカザ科・タデ科・キク科などの植物の穂をついばんで実を
食べたり、地上に落ちている実を採食する。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(全記録数 1 件 2004 年)
○観察記録
2004.04.03 仙川
1羽
マヒワの群れの中にいた
223.ベニマシコ Uragus sibiricus Long-tailed Rosefinch
アトリ科
中央シベリア南部、モンゴル北部、中国東北部及び中部、ウスリー、サハリンで繁殖し、北のもの
は冬季南に渡る。日本では、北海道と下北半島で夏鳥として繁殖する。本州以南、佐渡、四国、九州
では冬鳥である。繁殖地では平地や低山帯の河川沿い、湿原周辺の灌木林、広葉樹の疎林内の藪地、
林縁のササ藪、農耕地や牧草地周辺の藪地に生息している。越冬地では低山帯の林縁、疎林、農耕地
や川辺などの藪の多い所で数羽の小群で行動している。昆虫・果実・種子・木の芽などを採食する。
世田谷区では、稀な冬鳥である。上野毛で 1984 年、多摩川で 1992、1996、2002、2004、2007 年に
観察された。(全記録数 11 件 1984~2007 年)
○観察記録
1984.11.03 上野毛
1羽
雌
1992.11.09 多摩川(玉堤 1)
2羽
雌
1996.11.22~12.8 多摩川(鎌田 1)
1羽
雌
2002.11.09 多摩川(鎌田 1)
1羽
雌 オギの海
2004.03.29 多摩川(玉川 1)
2羽
雌雄 中州の草地を移動
2007.01.18 多摩川(玉川 1)
1羽
雄が中州の草地を移動
2007.02.10 多摩川(鎌田 1)
2羽
雌雄 オギの海
224.ウソ Pyrrhula pyrrhula Bullfinch
アトリ科
ユーラシア大陸の中緯度地方に広く生息する。北方のものは冬季南に渡る。日本では、北海道、本
州北、中部で留鳥である。本州中部以北の亜高山針葉樹林帯から北海道にかけて繁殖する。本州南西
部、四国、九州、伊豆諸島、沖縄では冬鳥である。針葉樹林や針広混交林に生息し冬は標高の低い山
地や丘陵地、市街地の公園などに移動する。春先は数羽から十数羽の群れになりサクラの名所やアン
ズ、ウメなどの果樹園にやってきてつぼみを採食する。雛には昆虫、植物の種子、つぼみを与える。
150
世田谷区では、冬鳥として渡来するが 2005 年以前の観察記録はない。2006 年、2007 年と続けて砧
公園や桜丘すみれば自然庭園などで観察されている。ウソの渡来時期や個体数は年によって大きく変
動するが、その理由はよく解っていない。2007 年は渡来数が多く関東地方の色々な所で群れが見られ
た。(全記録数 22 件 2006~2007 年)
○主な観察記録
2006.11.26~2007.01.10 砧公園
1~8 羽
サンクチュアリ内の垂れ下がる枯れたクズ付近で飛び回る
2007.01.13 すみれば庭園
1羽
2007.01.26 多摩川(玉川 3)
4羽
雄 3、雌 1 羽が兵庫島公園の木々を鳴きながら移動
2007.02.02 砧公園
2羽
亜種アカウソ
2007.02.08 駒沢公園
2羽
2007.02.13 すみれば庭園
1羽
2007.03.19 等々力渓谷公園
1羽
2007.03.31 砧公園
2羽
2007.11.00 砧公園
1羽
225.コイカル Eophona migratoria Yellow-billed Grosbeak
アトリ科
ロシアのアムール、モンゴル、朝鮮半島、中国北東部及び中部で繁殖し、中国南部で越冬する。日
本では、冬鳥として本州、四国、九州、南西諸島に渡来するが、局地的に出現し、数は少ない。平地
の疎林や農耕地に生息する。習性はイカルに似ていて 10~20 羽の群れで生活するが、イカルの群れの
中に少数のコイカルが混じることもある。冬季は大きなくちばしで樹上あるいは地上に落ちたヌル
デ・ハゼ・サクラ・カエデなどの実や種子を食べる。
世田谷区では、冬鳥として稀に渡来する。砧公園、大蔵、多摩川で観察された下記 3 例の記録があ
る。(東京都:Cランク 全記録数 3 件 1995~1999 年)
○観察記録
1995.12.25 砧公園
1羽
1995.12.25 大蔵 4
1羽
総合グランド西側の雑木林の木の実を食べていた
1999.05.13 多摩川(玉川 1)
1羽
雄 細い声でさえずる 2~3 分で飛び去る
226.イカル Eophona personata Masked Grosbeak
アトリ科
ロシアのアムール、中国東北部で繁殖し、大陸のものは中国南部で越冬する。日本では、本州、四
国、九州に一年中生息している。北海道では夏鳥で冬季は南へ移動する。対馬、南西諸島では冬鳥で
ある。落葉広葉樹林、針広混交林で繁殖し冬は疎林、低木林、農耕地等に生息する。非繁殖期には大
きなくちばしで樹上あるいは地上に落ちたヌルデ・ハゼ・サクラ・カエデなどの木の実や種子を食べ
る。マメ科のさや、ヒマワリの種子などをくちばしにはさんで巧妙に割ることができる。繁殖期には
昆虫も食べる。
世田谷区では、冬鳥として 10 月から 11 月に飛来し、翌年の 4 月から 5 月頃去る。岡本や馬事公苑、
砧公園、盧花恒春園などで観察されている。(東京都:Cランク 全記録数 16 件 1966~2006 年)
151
○主な観察記録
1966.12.28 岡本 1
1羽
1973.11.01 馬事公苑
1羽
1978.03.06 駒沢公園
1羽
1988.04.01 馬事公苑
1羽
1992.02.08 馬事公苑
1羽
2001.11.08 砧公園
2羽
暖かい日に鳴き合っていた
2003.03.05 成城 2
1羽
庭木の樹冠、カワラヒワの中にいた
2005.04.26 盧花恒春園
水田上空を飛翔
13 羽
さえずっている個体もいた
2006.10.04 大蔵 3
1羽
ケヤキの樹冠で鳴いていた
2006.10.14 野毛 2
9羽
227.シメ Coccothraustes coccothraustes Hawfinch
アトリ科
ヨーロッパ中部及び南部、カスピ海西岸からロシア南部を経てカムチャッカ南部、アムール、中国
東北部、サハリン、千島で繁殖し、北方のものは冬季南へ渡る。日本では、本州では旅鳥又は冬鳥で、
佐渡、四国、九州、対馬、伊豆諸島、奄美大島、南西諸島では冬鳥である。北海道では夏鳥で少数が
森林で繁殖する。主に落葉広葉樹林や雑木林などの明るい林や農耕地で越冬するが、市街地の公園や
庭にも訪れる。ムクノキ・エノキ・ヤマハゼ・カエデなどの植物の種子を樹上や地上で採餌し、太い
くちばしで相当堅い種子でも割って食べる。繁殖期には鞘翅類の昆虫もついばむ。渡来初期や渡去前
には数十羽の群れをつくることがあるが、冬の間は単独で行動することが多い。
世田谷区では、冬鳥として 11 月頃渡来し、翌年の 4 月頃渡去する。年によって渡来する個体数の
変動が大きい。厳寒期には一定の区域内で単独生活をする個体が多いが、春の渡りの時期が近づくと
徐々に数が増え小群になり群れで北上する。砧公園、盧花恒春園、馬事公苑、静嘉堂緑地など区内の
公園や緑地、河川などで観察され、樹上や地上で草木の種子を採食しているのが観察される。(全記録
数 1046 件 1948~2007 年)
○主な観察記録
1948.03.29 多摩川
1羽
1954.05.04 野毛
2羽
1966.11.27 岡本
1羽
1996.02.27 野川
1羽
1999.01.15 砧公園
1 羽は自宅付近、もう 1 羽は 10 時頃滝の山にて見る
定例調査
20 羽
2000.03.23 神明の森みつ池
2羽
2001.11.20 瀬田 4
3羽
2002.03.19 豪徳寺
1羽
2004.04.19 仙川
2羽
2005.03.16 盧花恒春園
1羽
2007.04.20 祖師谷公園
3羽
水が浸み出ている所で水飲みしていた 国分寺崖線
雌
152
228.ニュウナイスズメ Passer rutilans Russet Sparrow
ハタオリドリ科
アフガニスタン北東部、ヒマラヤ、ビルマ北部、中国中部及び南部、台湾、朝鮮半島南部、サハリ
ン南部で繁殖し、北方のものは冬季南へ渡る。日本では、北海道と本州中部以北の日本海側に夏鳥と
して渡来し繁殖する。冬は中部以南に渡る。低山帯の落葉広葉樹林から亜高山帯の針広混交林に生息
する。比較的明るい樹林で、大きい樹木のある所を好む。本州の多雪地帯では山間の集落の人家や電
柱でも繁殖することがある。主にイネ科などの雑草の種子を地上で採餌するが、繁殖期には樹上で昆
虫などを盛んに捕る。非繁殖期には平地や山間の水田で見られ、地面が露出しているような雑草地の
地上で落ちている種子をついばむ。夏の終わりから秋にかけてはイネの実り直前の種子を食べるので
農家に嫌われる。
世田谷区では、稀な冬鳥で下記 2 例の記録がある。(全記録数 2 例 1941、2001 年)
○観察記録
1941.11.00 砧 6
1羽
2001.01.19 多摩川(鎌田 1)
3羽
雄 2、雌 1 羽 池の岸でヨシの穂をついばむ オギの海
229.スズメ Passer montanus Tree Sparrow
ハタオリドリ科
日本では、留鳥でほぼ全土に生息しているが小笠原諸島にはいない。人の生活に密着して生息して
いる野鳥で、人家とその周辺の樹林、農耕地、草地、川原に生息する。深い森林の中にはいない。山
奥の農耕地のない人家や人が住んでいない廃村にもいない。主にイネ科・タデ科・キク科などの種子
を採食する。種子食であるが小型の昆虫やクモ類なども食べる。特に雛には大量の鱗翅類の幼虫を与
え、雛が成長するにつれて種子食に変えていく。巣立ちした幼鳥は大群で水田を訪れイネの未熟な種
子を食べるので農家に嫌われる。
世田谷区では、留鳥で、繁殖は年に 1~3 回行われ、人家の屋根、壁などの隙間、樹洞、巣箱など
に巣を造る。人家やその周辺、大小の公園、緑地、河川敷で普通に見ることができる。繁殖期は通常
3 月から 7 月で、巣立ちした幼鳥は集合し巣の周辺の樹木に塒をつくる。8 月頃からは特定の夏塒に集
合する。スズメの成鳥の大部分はつがいになって人家に分散し、それぞれ一年中テリトリーを持って
いる。一方、幼鳥は日中も夜間も集団でいることが多く、晩秋には市街地や住宅地からいなくなり、
大きな群れになり川原などで飛び回る。(全記録数 4500 件 1950~2007 年)
○主な繁殖記録
1950.06.15 野毛
1巣
1968.08.26 野毛
巣立ち雛 1 羽
巣立ち雛 6 羽 クロマツに営巣 谷沢松山
電柱で雛が孵化
1975.05.07 馬事公苑
1巣
巣立ち雛 1 羽
1992.05.01 馬事公苑
1巣
雛に給餌
2006.05.16 千歳台 5
1巣
雛 1 羽 家の換気扇の巣で雛が鳴く
2007.05.04 祖師谷 1
1巣
民家の雨受けに成鳥が入る 巣があり雛の声
2007.06.07 用賀 4
1巣
雛 3 羽 電柱トランスの下の巣に成鳥が餌を運ぶ 雛の声
2007.06.21 北沢 2
1巣
下北沢駅前の電柱 成鳥が雛に給餌 雛の声
2007.07.16 千歳台 6
1巣
電柱の巣で雛の声
2007.07.27 砧 4
1巣
雛の声あり 電柱トランスの隙間の巣に成鳥が交替で出入り
153
○主な観察記録
1952.07.21 野毛
3羽
1955.01.15 鎌田
1羽
1992.10.11 上用賀
1994.06.22 野川
3360 羽
90 羽
白化個体を玉電吉沢付近で見る
塒
定例調査
1996.10.24 多摩川
2530 羽
1997.11.19 多摩川
1200 羽
1999.01.15 砧公園
159 羽
1999.11.22 多摩川(玉川 1)
200 羽
川原の水ぎわで水浴び
2002.12.04 仙川
299 羽
定例調査
2005.08.29 千歳台 5
450 羽
2007.01.24 多摩川
2007.12.30 次大夫堀公園
1106 羽
定例調査
38 羽
230.コムクドリ Sturnus philippensis Chestnut-cheeked Starling
ムクドリ科
サハリン南部、南千島で繁殖し、フィリピン、ボルネオ北部で越冬する。日本では、夏鳥として渡
来し本州中部以北で繁殖する。本州中部では主に山地の村落及び市街地に、東北地方や北海道では平
地の落葉広葉樹の明るい林や村落近くに生息する。本州南西部、佐渡、四国、九州、奄美大島、南西
諸島では旅鳥でムクドリの群れの中に混じっているのが見られる。サクラ・ヤマザクラ・カキ・ブド
ウ・エノキ・ムクノキなどの果実を採食し、又、クモ類や昆虫も食べる。秋の渡りの時期には群れで
見られることが多く、ミズキやアカメガシワなどの木の実をよく食べる。主な採食場所は樹上の樹冠
部で、枝から枝へと採餌しながら移動する。
世田谷区では、旅鳥として春は 4 月頃から 5 月頃、秋は 9 月頃から 12 月頃に立ち寄る。多摩川や
仙川の川沿いの林、成城、野毛町などの樹木の多い所で観察されている。2000 年以降多摩川で毎年観
察され、2006 年 12 月に仙川下流で 28 羽の群れが見られた。(全記録数 55 件 1949~2007 年)
○主な観察記録
1949.04.22 野毛
1986.09.11 岡本静嘉堂緑地
1994.08.25 多摩川
20 羽
1羽
ムクドリに混じって裏の電線に止まっていた
200 羽
1996.09.17 多摩川(野毛 1)
1羽
雌 緑地でムクドリ 7 羽と採餌
2000.02.02 成城 4
1羽
庭木の枝に止まっていた
2002.09.10 多摩川
4羽
野川の林でムクドリの群れの中にいた
2004.04.20 多摩川(玉堤 1)
3羽
雄 2、雌 1 羽 ムクドリ 8 羽と川原のエノキにいる
2005.09.13 多摩川(玉川 3)
5羽
雄 2、雌 3 羽 ムクドリ約 60 羽と兵庫島公園の木々から中州へ移動し水浴び
2006.12.08 仙川
2007.04.28 駒沢公園
29 羽
3羽
定例調査
154
231.ムクドリ Sturnus cineraceus Grey Starling
ムクドリ科
モンゴル東部、ロシア極東東部、中国北部及び北東部、サハリン、千島南部で繁殖し、中国南部、
台湾で越冬する。日本では本州、佐渡、四国、九州に留鳥として一年中生息する。対馬、伊豆諸島、
小笠原諸島、奄美大島、南西諸島で冬鳥又は旅鳥である。北海道では夏鳥であるが留鳥化しつつある。
積雪の多い地方や標高の高い山地に生息する個体は、冬は暖地に移動する。農耕地、公園、庭園、山
麓の林、牧場、村落付近の林、果樹園、ゴルフ場などに生息し、樹木の洞や建造物の屋根や隙間、石
垣の間、巣箱、キツツキ類の古巣穴などで繁殖する。農耕地、公園、庭園、果樹園、ゴルフ場など人
の手が入った環境に多く、ミミズや両生類・昆虫を食べ、植物質では農作物のコムギ・エンドウや果
樹のモモ・リンゴ、カキなど多岐にわたる。秋冬には大群で農耕地に降り畑や草地の昆虫や種子を採
食する。繁殖後は夏塒を形成し、秋から冬には大群で冬塒をつくる。
世田谷区では、一年中生息し、3 月下旬から 7 月に 1~2 回繁殖する。住宅地や樹木の多い緑地等で
繁殖するが、樹洞だけでなく人家の屋根の隙間、戸袋などの人工物でも営巣する。繁殖後は夏塒を形
成し、秋から冬には突発的に出現し短期間に消失する大きな冬塒をつくる。多摩川、仙川、野川、砧
公園などで多く見られ、秋と冬は住宅街にある寺院などの大きな樹木に冬塒をつくり大きな群れにな
ることがある。(全記録数 4551 件 1948~2007 年)
○主な繁殖記録
1957.05.21 中町
1巣
巣立ち雛 1 羽
1963.05.19 野毛
1巣
雛が孵化していた 六所神社
1963.07.13 中町
1巣
巣立ち雛 3 羽 戸袋に営巣
1966.04.18 野毛
1巣
6 卵 シイに営巣
1968.05.21 中町
1巣
戸袋の中に営巣中
2002.09.13 砧公園
1巣
雛 2 羽 樹洞で営巣
2005.06.20 奥沢 7
巣立ち雛 3 羽
雛 3 羽巣立ち、内 1 羽地上へ落下しまもなく成鳥が救出
2005.06.20 千歳台 4
巣立ち雛 2 羽
巣のある木が伐採され雛が落下、拾って畑に置くと群れのいる竹林へ飛
んで行った
2006.06.20 千歳台 6
巣立ち雛 3 羽
雛 2 羽は前日巣立つが残りの 1 羽は巣が崩れ落下、その後成鳥と消える
2007.04.20 砧 8
1巣
マンションの換気口に餌を運ぶ 雛の声
2007.06.04 鎌田 1
1巣
多摩川堤防沿いの民家の空気口で営巣
○主な集団塒記録
1966.11.19 尾山台
1,000 羽
モウソウ竹山
2004.10.09 上用賀 5
1,200 羽
電線に止まった後、近くの農家の庭の木
2004.11.15 桜 1
800 羽
2005.11.07 桜 1
1,500 羽
2006.08.01 千歳台 5
2,385 羽
2006.11.18 桜 1
4,500 羽
勝光院 16:00 頃から近くの電線に集結、16:30 一気に竹林に塒入り
2007.10.02 桜上水 1
1,200 羽
17:15 民家の竹林に塒入り
2007.10.23 上用賀 6
1,500 羽
11/6 には移動していなくなる
2007.10.25 桜丘 4
3,000 羽
稲荷神社周辺 500m 位、ぐるっと電線に止まる
2007.10.31 千歳台 5
1,000 羽
2007.11.06 桜 1
500 羽
勝光院 16 時すぎ電線に 500~600 羽止まり、その後 200~300 羽飛来
勝光院 16:20 頃 200~300 羽飛行、10 分後竹薮に塒入り
155
○主な観察記録
1948.03.29 多摩川
2羽
1952.10.14 野毛
2,000 羽
1959.07.01 野毛
163 羽
1991.07.14 馬事公苑
一団が上空を南西より東方に飛行
14 羽
1997.06.11 野川
112 羽
定例調査
1999.08.16 多摩川
900 羽
洪水後の河川敷のゴミに群がる
2002.10.12 桜上水 3
100 羽
八幡神社裏の電線に止まる
2003.05.07 砧公園
36 羽
定例調査
2004.04.07 砧公園
20 羽
定例調査
2005.09.01 成城 4
45 羽
草原で採餌
2006.12.27 盧花恒春園
10 羽
2007.01.05 仙川
131 羽
232.カケス Garrulus glandarius Jay
カラス科
日本では、本州、四国、九州、対馬、伊豆諸島で留鳥である。冬は暖地へ移動する個体もいる。低
山帯の雑木林、マツ林、落葉広葉樹林、常緑広葉樹林、亜高山帯の針広混交林など色々なタイプの樹
林に生息する。特に、シイ、カシ、ナラ類の林を好む。林縁の農耕地、果樹園、樹木の多い公園や集
落にも現れる。樹林内の樹上や地上で採食する。雑食性で昆虫・クモ類・小型の脊椎動物・果実・種
子・木の実などを食べる。繁殖期以外は小群で生活する個体が多い。初冬の頃にドングリ類を木の隙
間や土の中に隠す習性があり、隠したドングリ類は冬から春にかけて食物として利用する。
「ジェー、
ジェー」としわがれ声で鳴くほか、他の鳥の声や物音の真似もする。
世田谷区では、冬鳥で 9 月頃に飛来し翌年の 3 月頃に去る。砧公園、馬事公苑、盧花恒春園、等々
力渓谷公園、野毛などで見ることができる。年によって飛来する個体数に変動があり 2006 年秋から
2007 年の春にかけては個体数が多く色々な公園で観察された。(全記録数 290 件 1948~2007 年)
○主な観察記録
1948.09.15 野毛
1953.10.07 多摩川(野毛)
3羽
24 羽
上空を通過
1966.02.07 等々力渓谷公園
6羽
オナガの群れと行動を共にしていた
1972.09.30 北烏山
1羽
1989.11.12 岡本静嘉堂緑地
2羽
1995.10.21 馬事公苑
1羽
2003.10.01 砧公園
2羽
定例調査
2006.12.24 上祖師谷 4
2羽
セキレイ橋上空を通過 祖師谷公園に入る
2007.03.06 盧花恒春園
1羽
2007.04.07 神明の森みつ池
2羽
林内を移動
156
233.オナガ Cyanopica cyana Azure-winged Magpie
カラス科
ユーラシア大陸の極東部とユーラシア大陸西端部のイベリア半島のみに生息する。日本では、本州
中部以北で留鳥として一年中生息している。北海道には生息していない。以前には本州南西部と九州
でも繁殖していたが見られなくなってきた。平地や低山帯の果樹園、農耕地のある集落、村落周辺の
雑木林、樹木の多い市街地や公園などに生息する。雑食性で樹上や地上で昆虫や果実を採食する。又、
鳥の雛や卵も食べる。一年中群れで生活する個体が多く、1 羽が鳴いて移動すると、次から次へと他
の個体も移動する。朝夕は庭先や公園などの目立つ場所での採餌が多いが、日中は林内での行動が多
い。
世田谷区では、区の鳥に指定されており、一年中生息し繁殖している。8~30 羽位の群れをつくり
繁殖期も群れの中でつがいを形成する。一定の行動圏を持っていて群れで動き回る。冬の塒ではいく
つかの群れが集まり複合群を形成する。砧公園、馬事公苑、盧花恒春園、静嘉堂緑地、等々力渓谷公
園、豪徳寺、多摩川、仙川、野川、大きい樹木のある住宅地などで見ることができる。(全記録数 1479
件 1946~2007 年)
○主な繁殖記録
1946.08.13 等々力渓谷公園
1巣
雛 5 羽 巣材(土、コケ、細い木の枝、杉皮、カヤの根、シュロ皮、綿)
1951.06.20 岡本
1巣
雛 5 羽 地上から 8m イチョウに営巣
1962.05.18 等々力
1巣
5 卵 イチョウに営巣
1963.05.23 中町 3
1巣
5 卵 玉川消防署裏のサクラに営巣
1966.06.19 野毛
1巣
2卵 雛4羽
1969.07.02 砧公園
1巣
7卵
2001.05.18 砧公園
巣立ち雛 1 羽
成鳥と移動
2001.08.05 上用賀 3
1巣
巣立ち雛 5 羽 農家の出荷用の低木に営巣
2005.05.17 豪徳寺
1巣
ツバキに営巣
2006.08.18 千歳台 5
2巣
雛 9 羽 街路樹に営巣
2007.05.29 千歳台 5
1巣
雛 ハシボソガラスが巣を襲い成鳥 2 羽が威嚇
1946.10.01 等々力渓谷公園
1羽
谷沢山で鳴く
1957.02.01 祖師谷
6羽
○主な観察記録
1961.03.22 用賀
30 羽
1968.01.01 等々力渓谷公園
60 羽
1991.07.28 岡本静嘉堂周辺
2羽
1992.01.21 神明の森みつ池
5羽
1993.02.22 野川
1999.10.28 多摩川
12 羽
滝の山
定例調査
1羽
2001.02.03 馬事公苑
37 羽
群れで上空通過
2003.10.01 砧公園
20 羽
定例調査
2006.03.21 祖師谷 6
12 羽
ホンセイインコをモビング
2007.12.28 盧花恒春園
4羽
157
234.ハシボソガラス Corvus corone Carrion Crow
カラス科
熱帯と寒帯を除くユーラシア大陸のほぼ全域に広く分布する。日本では、北海道、本州、佐渡、四
国、九州、対馬に留鳥として一年中生息する。平地や低山帯の集落、農耕地、河川敷、市街地、雑木
林などに生息する。地上で採餌することが多く、雑食性だがハシブトガラスほどではなく草木の実や
種子・昆虫類を主として採食する。又、ゴミ捨て場に集まり人の残飯を漁ったり、動物の死骸や鳥の
卵や雛も食べる。繁殖期以外は群れで生活することが多く集団塒をつくる。
世田谷区では、留鳥で砧公園、馬事公苑、盧花恒春園、静嘉堂緑地、等々力渓谷公園、多摩川、仙
川、野川、大小の寺院、住宅地等に普通に生息しているが、やや田園的な所に多く、小規模な公園な
どではあまり見かけない。個体数はハシブトガラスより少ない。多摩川の川原ではクルミを上空から
落として割る行動や砂利の中に食物を隠す貯食行動も観察されている。又、集団塒を形成するが世田
谷区内でははっきりとした集団塒は確認されていない。(全記録数 3625 件 1949~2007 年)
○繁殖記録
1949.04.08 玉堤
1巣
雛 1 羽 巣立ち 2~3 日前の雛 川向畑
2001.04.14 祖師谷 2
1巣
抱卵中 巣材は自然材のみ 5/20 2 羽巣立ち
2004.03.26 宇奈根 1
1巣
ネット柱の上で営巣中 巣は木の枝のみ 駒沢大学グランド
2005.03.27 多摩川
1巣
ヤナギの上部で抱卵中
2005.04.07 多摩川(玉川 1)
1巣
抱卵中 5/1 巣を放棄 5/3 巣が樹下に落下
2007.06.02 千歳台 5
巣立ち雛 5 羽
○主な観察記録
1949.09.26 多摩川(玉堤)
1963.01.27 等々力渓谷公園
1973.01.17 岡本
1羽
16 羽
岸の山
1羽
1998.11.18 多摩川
60 羽
2001.12.18 馬事公苑
10 羽
群れで東側走路の砂をほじくって食べていた
2003.05.28 仙川
1羽
2006.02.05 盧花恒春園
2羽
2006.06.10 多摩川(鎌田 1)
1羽
野球場でシロツメグサの花を採食する
2006.10.13 多摩川(玉堤 1)
1羽
川原の上空からクルミを 3 度落として割って食べた
2006.10.25 砧公園
2006.12.05 多摩川(鎌田 1)
2007.03.14 多摩川
26 羽
2羽
37 羽
アオダイショウを襲うが逆襲に遭い退散 打越橋下
3 羽がハシブトガラスに襲撃される
倒れたオオブタクサに乗り茎をつついて中の黄色い幼虫を採食
定例調査
235.ハシブトガラス Corvus macrorhynchos Jungle Crow
カラス科
アフガニスタン、インド、ロシア極東南部、千島、サハリン、東南アジアに分布する。日本では、
北海道、本州、佐渡、四国、九州、伊豆諸島に一年中生息し繁殖している。繁殖期以外は群れで生活
し、一定の塒に集まり、早朝に各採食場へ分散する。普通は羽ばたき飛行をするが、風を利用して帆
翔もする。フクロウ類やタカ類を見つけると威嚇する習性がある。平地や低山帯の集落、農耕地、漁
村、市街地等の樹林、亜高山帯の樹林で繁殖している。最近は観光開発に伴い高山帯まで姿を見せる
ようになってきた。地上で採餌することが多く、漁港、魚市場、ゴミ集積場、家畜飼育場などの人の
158
ゴミが出る所に集まり採餌する。雑食性で動物の死体や鳥の卵・雛なども食べる。
世田谷区では、留鳥で大小の公園、河川敷、寺院の境内、緑地、住宅街などほとんどの環境に生息
する。繁殖が終わると縄張りは解消し群れで生活し集団塒を形成する。都内では明治神宮に大きな集
団塒があるが、砧公園でも 100~500 羽の集団塒が観察されている。公園や河畔林、寺社林などの樹木
で繁殖する以外に橋桁や鉄塔などの人工の構築物でも営巣する。又巣材に針金でできたハンガーやビ
ニール紐などを数多く使用した巣を見かけることが多くなってきた。早朝、家庭ゴミや飲食店の生ゴ
ミの集積場に集まって採餌しているのをよく見かける。(全記録数 4367 件 1950~2007 年)
○主な繁殖記録
1977.05.01 馬事公苑
1巣
巣立ち雛 4 羽
1987.04.01 馬事公苑
2巣
抱卵中
2000.05.21 野川
巣立ち雛 1 羽
2004.05.11 多摩川
1巣
雛 5 羽 第三京浜道橋脚 巣材(ハンガー、ビニール紐、枯枝、ヨシ、オギ)
2005.05.20 多摩川
1巣
雛 5 羽 第三京浜道橋桁内部 巣材は枯れ枝、ヨシ、オギなど
2006.06.12 次大夫堀公園
2007.04.21 祖師谷 5
2007.05.14 砧公園
巣立ち雛 2 羽
1巣
巣立ち雛 2 羽
成鳥と鳴き交わす
抱卵中 ハンガー入りの巣 釣鐘池
成鳥にヒキガエルをもらう
2007.06.24 駒沢公園
2巣
巣立ち雛 5 羽
2007.07.27 千歳台 5
1巣
巣立ち雛 3 羽
○集団塒記録
1987.11.01 馬事公苑
100 羽
1989.06.01 馬事公苑
239 羽
1990.07.24 馬事公苑
183 羽
2002.04.28 砧公園
350 羽
夕方集団で帰ってきた サンクチュアリの真ん中の樹
2002.05.01 馬事公苑
120 羽
用賀側の外側の樹木に集合 17:00 塒入りする
2003.04.29 砧公園
448 羽
塒入り
2007.02.02 砧公園
461 羽
16:20 頃
○主な観察記録
1950.01.07 等々力渓谷公園
1羽
1961.03.22 用賀
1羽
1996.12.15 多摩川
1羽
1998.11.30 多摩川
10 羽
キジ(成鳥雄)を襲い内蔵を食べる
中州で弱っているユリカモメを襲い引っ張り合っていた
1999.12.04 多摩川(鎌田 2)
6羽
リモコン飛行機を 6 羽で威嚇する
2001.05.28 桜丘 2
1羽
ツバメの巣で親につつかれながら雛を食べた
2002.11.06 砧公園
150 羽
2003.05.27 弦巻 5
1羽
ヒヨドリの巣立ち前の雛 2 羽を襲い 1 羽を食べる
2005.06.13 上用賀 6
1羽
ムクドリの幼鳥を襲った
2006.02.05 盧花恒春園
2007.12.31 成城三丁目緑地
21 羽
2羽
定例調査
159
外来種(移植種・逸出種)
外来種とは、本来の分布地から人間の媒介によって本来生息しない他の地域に移入されたものをい
う。外来種は移植種と逸出種の二つに分けられ、移植種とは、増殖を目的に輸入されたものが放され
た種で世田谷区ではコジュケイが該当する。逸出種(かご抜け鳥)とは、愛玩用や鑑賞用として輸入さ
れたものが飼育中に逃げたのや、野外に放してしまったことで起きる。移植種や逸出種が人間の助け
を借りずに野外で個体群を持続させたものが帰化種という。
その性格上渡り区分では全て留鳥とした。
236.コジュケイ Bambusicola thoracica Chinese Bamboo Partridge
キジ科
中国東南部に分布し、
日本では 1919 年から数年の間に東京都港区青山と横浜市保土ヶ谷でそれぞれ
放鳥したものが自然に繁殖し数を増やし、その後各地で狩猟用の放鳥と相まって急速に全国へ広まっ
たとされている。河川敷や標高のあまり高くない山地、下草が茂る雑木林や竹藪に好んで生息する。
タデ・アワ・エンドウマメ・アズキ・スギ・マツ・コガネムシ・バッタなどを採食する。
世田谷区では、年中見られる。等々力渓谷公園、岡本、野毛、砧公園、成城など国分寺崖線沿いや
馬事公苑で見られ、繁殖していた。1968~1976 年に増殖目的に放鳥された。1990 年以降は個体数が著
しく減少し、稀になる。(全記録数 322 件 1948~2007 年)
○主な繁殖記録
1948.08.02 等々力渓谷公園
幼鳥 1 羽
1952.07.04 野毛
幼鳥 8 羽 成鳥 2 羽 自宅前
1953.05.07 等々力渓谷公園
1巣
3 卵 5/8 4 卵 5/9 5 卵 5/11 6 卵 5/14 7 卵 抱卵中 5/15 7 卵の内、
2 卵壊されている 成鳥が巣を放棄 谷沢 竹山
1956.08.15 野毛
1巣
5卵 8/16 抱卵中 8/29 孵化して3羽落鳥1羽は巣から4m位遠くにいた。
親鳥 2 羽が近くにいた。1 卵は穴があいていて中で死んでいた。生きてい
た雛 1 羽も 17:00 頃落鳥。谷沢木小屋うら畠
1958.08.15 野毛
1巣
5卵
1967.05.29 等々力渓谷公園
雛 1 羽 滝の山
1968.07.03 岡本
成鳥が幼鳥を連れている
1971.05.01 馬事公苑
1巣
1975.07.08 砧公園
雛2羽
1988.08.20 岡本静嘉堂
雛 5、成鳥 1 羽
1989.06.13 成城 4
雛連れ
○放鳥記録
1968 年 区内
10 羽
1969 年 区内
10 羽
1970 年 区内
10 羽
1971 年 区内
10 羽
1972 年 区内
10 羽
1974 年 区内
20 羽
1975 年 区内
30 羽
1976 年 区内
30 羽
160
○主な観察記録
1949.11.15 等々力渓谷公園
11 羽
滝の山
1960.11.06 野毛
3羽
1967.04.18 上野毛
1羽
雄が山林内にてテングスのワナにかかって死亡
1975.07.02 多摩川
1羽
東名高速道
1980.09.15 深沢
1羽
写真
1989.05.01 馬事公苑
1羽
1991.10.20 深沢 8
1羽
無原罪保護区
1995.06.30 砧公園
2羽
砧公園最終確認
1996.02.06 仙川
4羽
定例調査
2003.06.10 神明の森みつ池
1羽
鳴き声
2006.11.21 仙川
3羽
2007.11.22 仙川
1羽
237.コウライキジ Phasianus colchicus Pheasant
キジ科
朝鮮、中国、台湾、ロシア、ヨーロッパに分布し、繁殖する。日本では、留鳥として対馬に生息し、
その後北海道、本州、九州、対馬などに狩猟鳥として移植放鳥したものも多い。対馬のものは 1750
年頃朝鮮から輸入して放鳥したものといわれている。キジと同様の環境に生息し、産卵期は 5 月から
6 月頃で一腹の卵数は 8~15 個、雌が抱卵する。餌はキジの食性に酷似する。本種はキジと同種とし
て扱うことも多い。
世田谷区では、多摩川で見られた下記 1 例の記録がある。(全記録数 2 件 1990 年)
○観察記録
1990.06.22~25 喜多見
1羽
雄
238.カワラバト Columba livia Rock Dove
ハト科
地中海から中近東に分布し、低山又は海崖に生息する。主に植物食で草の種子や木の実などを地上
で採食することが多く岩棚に営巣する。日本では通信、愛玩、レース、食用など様々な目的のために
輸入された。家禽化されたものが野生化し、全国で繁殖している。植物を主に食べるが、人からもら
う物として豆類・パン屑・菓子・トウモロコシなど。ミズキ・ムクノキ・エノキ・ソメイヨシノ・ハ
コベなどの種子を採食する。ハト類特有の水を飲む時はくちばしを水に浸けたまま飲む。繁殖は年中
行われ、建物の隙間、道路や鉄道の高架、窓などに直接又は小枝などを置いて産卵し、雛を育てる。
市街地の鳥としては多く、オオタカ、ハヤブサなどの猛禽類やカラスの餌になることもあり都市生態
系の中で重要な位置を占めている。
世田谷区では、年中見られ公園や河川、社寺、住宅地などで普通に見られる。昔からよく見られて
いる鳥であるが、記録は 1966 年以降にしかなく、繁殖記録も少ない。(全記録数 3811 件 1966~2007 年)
○繁殖記録
2007.09.02 船橋
巣立ち雛 2 羽
2007.10.24 宮坂
雛2羽
成鳥から餌をもらう
雛に餌を与える 経堂図書館前
161
○主な観察記録
1966.03.29 多摩川(野毛)
1羽
1971.05.01 馬事公苑
1羽
1986.06.01 馬事公苑
1羽
1991.05.25 奥沢
1999.01.15 砧公園
2000.03.17 多摩川(玉川 1)
60 羽
431 羽
1組
中州の草地で交尾
2003.09.03 仙川
141 羽
定例調査
2004.02.04 野川
88 羽
定例調査
2005.01.03 蘆花恒春園
120 羽
2006.03.15 多摩川
309 羽
2007.06.23 祖師谷公園
5羽
定例調査
仙川の壁面の土管に巣材を搬入
239.セキセイインコ Melopsittacus undulatus Budgerigar
インコ科
オーストラリアのほぼ全域に自然分布、草原、潅木林に生息する。日中は林や藪の中で休み、早朝
と夕方に活発に活動し、草の種子を好んで食べる。樹洞に営巣し、年 2 回繁殖する。雨の少ない年に
は、食物と水不足のため繁殖に失敗することがある。日本では愛玩用に飼育されているが逸出した鳥
が野外で見られることがあり、繁殖した例もある。
世田谷区では、稀に多摩川、馬事公苑、砧公園で観察される。いずれもかご抜けと思われ、短期間
で 1 羽であった。最も長く観察されたのは 2004 年 9 月から 11 月の約 3 ヶ月で、スズメの群れと川原
の草原や林を行き来していた。(全記録数 70 件 1963~2005 年)
○観察記録
1963.09.01 多摩川
1羽
1972.10.01 馬事公苑
1羽
1975.09.13 砧公園
2羽
1996.01.14~21 多摩川
1羽
1998.10.21~12.10 多摩川
1羽
1999.09.13 多摩川
1羽
2002.10.06~20 多摩川
1羽
2003.07.10 多摩川
1羽
2004.09.01~11.22 多摩川
1羽
2005.10.04 多摩川
1羽
スズメの群れとともに行動
240.ホンセイインコ Psittacula krameri Ring-necked Parakeet
インコ科
ホンセイインコは世界に 4 亜種いるが、日本に輸入されている亜種ワカケホンセイインコ
(Psittacula krameri manillensis)はインド中部・南部、スリランカに分布する。日本では、古くから
愛玩用として輸入されたが1960年代末東京都西南部で約100羽がペットショップから逃げ出したのが
始まりといわれている。その後野生化、繁殖し、樹木の多い住宅地や農耕地に生息するようになり、
162
大田区に約 1,000 羽を越える集団塒がある。神奈川、愛知、京都、広島、愛媛県などでも見られ繁殖
している。ムクノキ・ヤマモモ・ナツツバキ・サクラなどの実を採食し、樹洞で営巣する。
世田谷区では、1971 年から記録があり社寺林や公園、屋敷林、住宅地、川原などで年中多く見られ
ているが繁殖例はない。群れで街中や公園、河川の上空を行き来し、電線に止まっているのや木々の
実や果実を食べるのが観察され、又、夕方は大きな群れになり鳴きながら塒地に戻るなどが観察され
ている。(全記録数 1002 件 1971~2007 年)
○主な観察記録
1971.06.01 馬事公苑
1羽
1986.08.01 馬事公苑
16 羽
夕方、群れで北から南へ
1991.05.20 深沢 8
12 羽
無原罪保護区
2000.07.30 奥沢 3
11 羽
奥沢小学校前の電線に止まっていた
2001.05.22 経堂 5
7羽
2002.01.01 豪徳寺
5羽
2003.09.07 喜多見
40 羽
2004.07.28 多摩川(玉堤 1)
125 羽
一斉に木から飛び立つ
電線に止まり 5~6 分で神社ムクノキへ飛び、ばらけて民家の屋根や電線へ
夕方、川崎側から 20 羽位の群れが次々に飛来し北東へ
2005.09.21 祖師谷 6
32 羽
畑のカキの実をオナガと争いながら食べる
2006.11.24 桜上水 1
40 羽
この近辺屋敷林に常時棲み着いている
2007.10.25 桜丘
234 羽
38、24、18、9、120、25 羽の群れが南東へ飛ぶ
241.ダルマインコ Psittacula alexandri Red-breasted Parakeet
インコ科
東南アジアに分布し、山麓・低地の林縁や草原に生息し、群れでいることが多い。草の種子・果実・
花などを食べ、時にイネに被害を与えることがある。日本では愛玩用に飼育され寒さに強いために放
し飼いにされることもある。逸出した鳥は樹木の多い住宅地や農耕地に生息し、繁殖した例もある。
世田谷区では、下記 3 例の記録がある。(全記録数 3 件 1991~2002 年)
○観察記録
1991.05.20 深沢 8
4羽
無原罪保護区
1992.01.18 深沢 8
7羽
無原罪保護区
2002.05.27 弦巻 4
2羽
ホンセイインコと一緒に移動
242.ガビチョウ Garrulax canorus Hwamei
チメドリ科
台湾、中国南部、インドシナに分布し、庭、植え込みや森などに生息する。クロツグミのような鳴
き声で賑やかにさえずる。日本では、愛玩用として輸入していたが、逸出した鳥は 1980 年代から東京
都、神奈川、山梨、福島、福岡県などで野生化し繁殖するようになり生息域を急速に広げつつある。
低山の林や河畔林に生息する。
世田谷区では、下記 2 例の記録がある。(全記録数 2 件 2002、2007 年)
○観察記録
2002.07.04 多摩川
1羽
2007.03.00 多摩川
1羽
定例調査
163
243.カオグロガビチョウ Garrulax perspicillatus Masked Laughing Thrush チメドリ科
中国東南部、ベトナム北部に分布。藪や竹林に生息し、常に数羽から十数羽の群れで行動。雛は群
れ全体の鳥から給餌される。日本では、愛玩用として輸入していたが、逸出した鳥は 1980 年代から埼
玉県、東京都、神奈川県などで野生化し、繁殖する。平地から低山の林、竹林に生息する。
世田谷区では、1996 年に初記録。その後年中見られるが数は少ない。全て多摩川で見られ、
「ピョ
ッピョッ」と鳴くのや採餌や巣材運びが観察されている。(全記録数 152 件 1996~2006 年)
○主な観察記録
1996.08.27 多摩川(玉堤 1)
1羽
アズマネザサの藪でさえずる
1998.03.13 多摩川(玉堤 1)
1羽
川岸のムクノキにいた
2001.06.25 多摩川(玉堤 1)
2羽
オニグルミの横枝にいて 1 羽が鳴く
2002.07.19 多摩川(玉堤 1)
1羽
枯れ草をくわえてアズマネザサの藪に入る
2003.07.29 多摩川(玉堤 1)
1羽
堤のサクラで鳴く
2004.04.09 多摩川(玉堤 1)
1羽
アズマネザサの藪近くの地面で枯れ葉を返し虫を捕る
2004.05.22 多摩川(玉堤 1)
1羽
オニグルミから降りて散策路の水溜りで水を飲む
2005.06.03 多摩川(玉堤 1)
1羽
緑地でホッピングしながら移動して採餌
2006.08.14 多摩川(玉堤 1)
1羽
アズマネザサの藪で鳴き声
244.ソウシチョウ Leiothrix lutea Red-billed Leiothrix
チメドリ科
中国中南部、ミャンマー、ベトナム北部に分布し、日本では昔から愛玩用として知られている。1980
年代から 1990 年にかけて、逸出した鳥は茨城、東京、神奈川、静岡、兵庫県や九州で野生化し繁殖す
る。低山から山地の林床をササが覆う落葉広葉樹林、混交林に生息する。
世田谷区では、1972 年にかご抜けの 1 例があるが、2004 年から帰化種として多摩川、瀬田、砧公園、
蘆花恒春公園、仙川で頻繁に見聞きできるようになる。(全記録数 17 件 1972~2007 年)
○観察記録
1972.05.01 馬事公苑
2羽
かご抜け
2004.04.06~09 多摩川
1羽
兵庫島近くの林で声のみ
2006.11.23 瀬田 4
5羽
時々鳴いていた
2006.11.26 砧公園
1羽
谷戸川吊り橋付近の地面
2006.12.19 蘆花恒春園
1羽
雄 初列風切基部が暗紅色になっている
2006.12.27 瀬田 4
3羽
メジロと同行
2007.01.04 蘆花恒春園
1羽
カラ類やメジロと行動を共にしていた
2007.01.27 瀬田 4
1羽
本格的ではないがさえずっていた
2007.02.01~03.12 仙川
2~5 羽
河川沿いの樹林帯
245.チャキンチョウ Emberiza bruniceps Red-headed Bunting
ホオジロ科
中央アジアに生息するホオジロの仲間で、日本には野生個体が稀に迷行するとされ、日本海の離島
や南西諸島で記録されている。飼い鳥としても輸入されており飼育個体の一時的な逸出の可能性も考
えられる。
164
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(全記録数 1 件 1995 年)
○観察記録
1995.05.19 多摩川
1羽
246.カエデチョウ Estrilda troglodytes Black-rumped Waxbill
カエデチョウ科
アフリカ東部中央に分布し、林縁、湿地、農耕地に生息する。草の茎に止まり、又は地上で草の種
子を採食、昆虫も捕る。草の根元の地上に巣を造る。日本では愛玩用として輸入している。逸出した
鳥は湿地や河川敷に生息し、繁殖した例もある。
世田谷区では、多摩川で観察された下記 2 例の記録がある。(全記録数 4 件 2003、2005 年)
○観察記録
2003.12.05~29 多摩川(鎌田1)
1~2 羽
2005.06.19 多摩川(玉堤 2)
2羽
雌雄が川原や川岸の草地で採餌
雄が川岸のヤナギに止まり時々鳴く
247.ベニスズメ Amandava amandava Red Avadavat
カエデチョウ科
パキスタン西部、インド、ネパール南部、バングラデッシュなどに分布。主にヨシなどの高茎草が
茂る川原や湿地に生息する。草の種子を採食し、雛には半熟の種子を与えることが多い。草の茎に側
面に入り口のある球形の巣を造る。日本でも江戸時代から愛玩用として輸入している。逸出した鳥は
本州以南で野生化し、川原、湿地、農耕地、ヨシ原などに生息し、繁殖している。雄は繁殖後、赤い
体羽の部分換羽により、雌に似てより暗灰色のエクリプスの羽になる。
世田谷区では、多摩川で見られ、1969 年に繁殖例ある。2000 年以降 1 年中見られるようになり、草
地が広がる鎌田 1~2 丁目地先で多く、巣材運びが観察されている。(全記録数 985 件 1961~2006 年)
○繁殖記録
1969.10.00 多摩川
1969.11.12 多摩川(鎌田)
11 巣
10/18 付新聞
2巣
①5 卵、②雛 5 羽 川原のカヤ
1961.10.06 多摩川(玉堤)
4羽
巣材運び 宮内
1970.02.24 多摩川(鎌田)
50 羽
1994.12.01 多摩川
20 羽
○主な観察記録
1999.09.16 多摩川(鎌田 1)
1羽
雄が白い羽毛をくわえている
2000.10.15 多摩川
2羽
1 羽が枯れ草をくわえて飛んでいる
2001.06.16 多摩川(鎌田 1)
10 羽
2003.04.17 多摩川(鎌田 1)
20 羽
2004.04.25 多摩川(鎌田 1)
28 羽
草原を移動
2005.04.19 多摩川(鎌田 1)
16 羽
鳴き交わし 移動していた
2006.11.15 多摩川
4羽
群れを観察 オギの海
定例調査
165
248.ギンパラ Lonchura malacca Tricolored Mannikin
カエデチョウ科
インドから東南アジア、台湾、フィリピンに分布。ヨシ原、湿地、サトウキビ畑などに生息し、地
上で草の種子を採食。高茎草の茎に球形の巣を造る。日本では、古くから愛玩用として輸入している。
逸出した鳥は農耕地、草地、ヨシ原、低木林に生息し、繁殖例もある。
世田谷区では、下記 4 例の記録がある。(全記録数 10 件 1963~1998 年)
○観察記録
1963.08.17 多摩川
1羽
1968.11.01~29 多摩川(玉川)
1~15 羽
小杉
幼鳥、成鳥の群れ 二子橋上流
1969.07.19 多摩川
2羽
二子橋上流
1998.05.23 多摩川(鎌田 1)
1羽
スズメ数羽と オギの海
249.キンパラ Lonchura atricapilla Chestnut Mannikin
カエデチョウ科
インドから東南アジア、台湾・フィリピンに分布。ヨシ原、湿地、サトウキビ畑などに生息し、地
上で草の種子を採食。高茎草の茎に球形の巣を造る。日本でも古くから愛玩用として輸入している。
逸出した鳥は農耕地、草地、ヨシ原、低木林に生息し、繁殖例もある。
世田谷区では、繁殖含め下記 4 例の記録がある。(全記録数 7 件 1967~1969 年)
○繁殖記録
1969.10.00 多摩川
5巣
繁殖の詳細や日は不明
1羽
谷沢川流れ出し
○観察記録
1967.08.02 多摩川(野毛)
1968.11.01~11.29 多摩川
1~15 羽
1969.11.08 多摩川(鎌田)
20 羽
幼鳥 12 羽が成鳥と行動 二子橋上流
二子橋上流の草原
250.ヘキチョウ Lonchura maja White-headed Mannikin
カエデチョウ科
マレー半島、大スンダ列島に分布。草原、農耕地、公園などに生息し、草の種子を採食。日本では
愛玩用として輸入している。逸出した鳥は休耕田やヨシ原に生息し、繁殖例もある。
世田谷区では、下記 3 例の記録がある。1998、2000 年は約 1 ヶ月間観察された。(全記録数 15 件 1969
~2001 年)
○観察記録
1969.11.08 多摩川
3羽
二子橋上流の川原草地
1998.11.30~12.28 多摩川
1羽
二子橋下流約 100m で草のみ種子を採食
2000.12.14~2001.01.06 多摩川
1羽
スズメの群れと
251.ブンチョウ Padda oryzivora Java Sparrow
カエデチョウ科
ジャワ島とバリ島に自然分布。疎林、薮のある草原、住宅地などに生息し、地上で種子を採食する。
大群でイネを食害することもある。樹洞や建物の穴などに営巣する。日本では、江戸時代初期に中国
から持ち込まれたといわれている。
166
世田谷区では、瀬田と喜多見で見られた下記 2 例の記録がある。(全記録数 2 件 1969 年)
○観察記録
1969.11.04 瀬田
2羽
1969.11.08 喜多見
8羽
東名高速道下の田
252.テンニンチョウ Vidua macroura Pin-tailed Whydah
ハタオリドリ科
アフリカ中南部に分布し、サバンナに生息。カエデチョウ属の 4 種に托卵。雄は宿主の囀りを模倣
する。雛も宿主の雛に姿、鳴き声や食物をねだる姿勢が似て、宿主の雛とともに育てられる。
日本では、愛玩用として輸入している。逸出した鳥は川原や埋立地、農耕地などに生息し、繁殖例
もある。カエデチョウ科の鳥に托卵する習性が知られている。
世田谷区では、多摩川で観察された下記の 4 例の記録がある。(全記録数 4 件 1997~2004 年)
○観察記録
1997.10.17 多摩川(鎌田 1)
1羽
雄が草原を低空で飛ぶ
2001.08.03 多摩川(玉堤 1)
1羽
雌が中州の草地にいた
2002.09.29 多摩川(玉川 1)
1羽
雄が川崎側から飛来し世田谷側のマツ林に入る
2004.11.12 多摩川
1羽
253.オウゴンチョウ Euplectes afer Yellow crowned Bishop
ハタオリドリ科
アフリカ中南部に分布し、沼地や川辺の草地に生息。一夫多妻で雄はさえずりながら腰の羽をふく
らませてディスプレイをする。ヨシなどに卵形の巣を造る。日本では愛玩用として輸入している。逸
出した鳥は草地や農耕地などで見られることがある。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(全記録数 1 件 2004 年)
○観察記録
2004.08.03 多摩川(野毛 2)
1羽
雄が川原の草地でスズメの群れと移動
254.ベニビタイキンランチョウ Euplectes hordeaceus Red-crowned Bishop
ハタオリドリ科
アフリカ中部に分布し、草原に生息。一夫多妻で縄張りをもち、上空で体羽をふくらませたまま羽
ばたき、ゆっくり飛ぶディスプレイが知られている。丈夫な草の茎に球形の巣を造り、入り口は脇に
ある。日本では愛玩用として輸入している。逸出した鳥は川原、埋立地、農耕地などで見られること
がある。
世田谷区では、下記 1 例の記録がある。(全記録数 1 件 2000 年)
○観察記録
2000.09.01 多摩川(野毛 2)
1羽
雄が川原で草の種子をついばむ
167
255.キンランチョウ Euplectes orix Red Bishop
ハタオリドリ科
アフリカ中南部に分布し、穀物の畑、背の高い草地や水辺の植生などに生息する。一夫多妻で丈夫
な草の茎に巣を造り、入り口は脇にある。日本では愛玩用として輸入している。逸出した鳥は草地、
農耕地などで見られることがある。
世田谷区では、下記 2 例の記録がある。(全記録数 2 件 2003、2004 年)
○観察記録
2003.09.05 多摩川(上野毛 2)
1羽
2004.09.30 多摩川
1羽
雄が散策路脇の高い草に止まり鳴く
256.ハッカチョウ Acridotheres cristatellus Crested Myna
ムクドリ科
中国中部・南東部、台湾、ラオス北部に分布。平坦な低地を好み、牧場などでウシの足元にいて、
追い出される昆虫を捕食し果実や種子も食べる。樹洞や建物の隙間に巣を造る。
日本では愛玩用として江戸時代より輸入している。野生化したものは各地で観察され、牧草地、草
地、農耕地、ゴミ捨て場などに生息し、繁殖例もある。
世田谷区では、多摩川で見られた下記 2 例の記録がある。(全記録数 6 件 2001、2002 年)
○観察記録
2001.06.29~07.18 多摩川
1羽
2002.04.30~05.30 多摩川
1羽
Fly UP