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リース契約の基本構造

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リース契約の基本構造
リース契約の基本構造
は じ め に
白
石
裕
子
我国のリースの歴史は、昭和三八年、﹁日本リース﹂の設立にはじまる。以来、わずか一〇年間に飛躍的発展をとげ、
現在は大手と目されるものだけでも一〇数社に及ぶ。
リース導入の画期的な意義は、何といっても“所有から使用へ”という新しい概念の登場であろう。すなわち、企
業の設備に対する従来の所有権絶対視の風潮を崩壊させ、設備調達の手段に、一大変革をもたらすものであった。外
観上は、賃貸借の形式をとるものの、真の目的は、設備調達のための金融であり、売買により所有するのと同様の効
果をあげさせることにある。このような賃貸借との根本的な相違点が、リース契約につき、民法上の賃貸借とは相容
れない様ざまの特殊性を生み出さしめているのである。
また、リースを利用することにより、自己資金を減少することなく、設備資材の使用収益が可能となり、資本の固
定化を防ぎ、激しい変動と競争を乗りこえて、企業の最大目的たる最大利益の追求に必要な、迅速性、弾力性を確保
リース契約の基本構造 二五七
リース契約の基本構造 二五八
することができる。
の
他方、大手機械メ:カーや電算機メーカーが販路拡大のため、進んでリース部門を設立している。すなわち、これ
ら高額な機器に関しては、どうしても購買力に限界があるが、リースにょれば中小企業でも導入することができ、メ
ーカーとしても著しく売上げを伸ばすことができるわけである。これによって、メーカーもさらに大きな利益をあ
げ、企業本来の目的を達成することができる。
以上のごとく、リースは各種の企業のそれぞれの事情に適合し、企業の目的たる利益最大化にはきわめて有利な制
度であったため、今日のめざましい発展をとげることができたのであろう。
ところが、リース契約に関しては、それが誕生して間もないせいもあって、いまだに確立した法律構成が与えられ
ておらず、多くの間題点をかかえているのが現状である。本稿はリース契約の法律関係の解明を試みようとするもの
である。なお、リ:スの発生地はアメリカではあるが、いちはやくその理論的追求と法律構成を達成したフランスの
学説と立法および判例を主に参考にしながら研究を進めたいと思う。
ω 庄政志 リースの実務知識︵昭四五︶七五頁 宮内義彦 リースの知識︵昭四五︶一七九頁第一六表参照。
た。重電機や工作機械等日立グループの製品を重点的にリースしている。サン・リース 石井鉄工所を中心に一九六九年に設
② 実例として次のものがあげられる。日立リース 日立製作所系列の商社である日製産業を主体として一九六八年に設立され
立された。その他、日本IBMや日本電子計算機等が挙げられる︵宮内 同書一四〇頁︶。
ー リースの意義
ニ リース契約の特殊性
元来、リース︵一魯器︶とは、その語源をたどれば賃貸借︵する︶を意味し、その概念は古代・ーマにまで遡ること
ができる。当時においては、その対象が土地や建物等の不動産に限られており、特に封建領主の下での土地の小作契
約がこれにあたるものであった。近世にはいってからは、その対象が動産にまで拡大され、最近ではリースの中心は
まったく動産に移ってしまった感がある。
現在、リースとは、﹁企業が、機械、設備等の動産、不動産を必要とする場合に、購入資金の貸付の代わりにリー
ス会社が直接必要な固定資産を購入して企業に賃貸するものであって、ある物の所有者がその経済的利用をはかり、
賃貸料をとる対価として物の使用および占有を認めるところの通常の賃貸借契約とは異なる。﹂と定義され、金融的
色彩が強いのでファイナンス・リースとも称される。
の
近代的なリースが、初めは機械製造業者により、販路拡大のために行なわれたのに対し、最近のリースは専業のリ
ース会社により、企業に自己資金や借入金に頼ることなく設備資材を調達せしめるという、いわば”物融”の性格を
有している。そのために外見上は一応賃貸借契約の形をとりながらも、民法に規定される賃貸借契約の条項に大幅な
修正を加えているわけである。
2 リース契約締結の方式
リース契約の基本構造 二五九
リース契約の基本構造 二六〇
リース契約が締結される手順を簡単に述べてみると、まずリースを利用しようと思うユーザーは入手したい資材を
メーカーと折衝し、機種・仕様・価格・納期・保守等の売買条件を決定する。リース会社は資材の選定に参加せず、
ユーザーにまかせるのが原則である。次に、ユーザーはリース会社とリース条件について折衝し、リース期間・りー
む
ス料等の契約内容を決める。リース会社はユーザーの信用調査をし、適当と判断した場合はユーザーとリース契約を
結ぶ。リース会社は、ユーザーがメーカーとの間で決定した条件をそのまま受け継いで資材の売買契約を結び発注・
購入する。この資材は直接ユーザーに納入され、代金請求がリース会社にあててなされる。資材が引き渡されると、
ユーザーは直ちに検収をする義務を負い、この検収完了の時点からリース期間が開始する。
リース会社、ユーザー、メーカーという三者の立場の分析として、委任の問題に簡単にふれておきたいと思う。そ
こでは、委任の目的を何ととらえるかによって学説がわかれている。第一に、ユ!ザ:がリース会社に必要な資材を
入手させることを委任の目的とする説で委任者はユ﹁ーザーで受任者はリース会社である。第二に、資材の選択や売買
の
条件の交渉を委任の目的とする説で、当然に委任者はリース会社で、受任者はユーザーである。第二の立場の方が正
当であると考える。なぜなら、資材の買主はあくまでもリース会社であり、従って所有権もリース会社に属するから
である。ところが、第一の立場をとるとユーザーが自己のために受任者たるリース会社をして資材を購入せしめると
いうことになり、ユーザーが買主であり所有者となるはずである。そうすると、リ:ス契約の実態はかくれたる信用
売買となり、契約期間終了時における資材返還義務は根拠を失う。ぞれゆえに、リース契約における委任関係は第二
の立場を採る方が正しいと思われる。
契約期間中、ユーザーは契約にもとづきリース会社にリース料を支払う、ン、の上、資材の維持補修の義務を負い、
一切の危険負担を負う。リース期間の終了時には、ユーザーは、二つの選択事項、すなわち、@更新︵再リース︶、
⑥返還のいずれかを自由に選ぶことができる。
3 リ塵スのメリットとデメリット
サ
ハーバード大学の勾●コ<β畠教授は、リースのメリットとデメリットをユーザーの立場から詳しく説明してい
るが、要約すると次のようになる。
メリットとしては、まず第一に、入手した資材は、あくまでも借りたものであるため貸借対照表に資産として表記
されることなく、リース料は一般経費として落とすことができ、そのため資金の固定化を防ぎ、より有効な資金の運
用が可能である。第二に、銀行融資による購入と異なり、通常の銀行貸し出し枠に影響を及ぼさないので、企業の資
金調達力を増大させる。それにも拘らず、実質的に百%の融資効果をあげることができる。第三に、資材の陳腐化に
対する安全弁となる。技術革新がめざましく、機種の陳腐化も激しい資材に関しては、いつでも新しい機種を利用す
ることができる。そして、法定耐用年数基準による償却に束縛されることなく、資材の実質的耐用年数にリース期間
をあわせることにより、早期償却を可能とすることができる。第四に、定期的なリース料の支払だけですべての金銭
関係が清算される。リース料には購入価格の他に税金や金利、手数料等のすべてがパックされているために、毎月の
リース料さえリース会社に支払っておけばよいので各企業の経理事務負担を軽くする。その他、不要となった設備資
材の処分に関する労が省けるということもメリットといえるであろう。
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リース契約の基本構造 二六ニ
デメリットとしては、第一に、通常の賃貸借より金利が高くつくうえに、リース期間の終了時には資材の残存価値
はリース会社に帰属する。第二は、リース期間の終了前に設備が陳腐化しても、期間中の解約は許されないので弾力
性に欠ける結果となってしまう。第三に、月月の支払いという固定的な負担ができ、一度でもリース料の支払を怠る
と資材を引き揚げられるおそれがある。その他、所有による満足感が得られないということを挙げることができるだ
ろうQ
以上のように、リースの本来の目的がκ物融”にあるところから、民法に定める賃貸借に様ざまな点で修正を加え
る結果となっている。前述のごとく、歴史の浅いリースに関しては、特別の法律もなく、実務にあたっては契約書の
みがこの契約を律する根拠となっている。そうした契約書としてリース会社の作成した普通約款が用いられている。
この約款によれば、通常の賃貸借契約とリース契約を別異の契約であると判断せざるを得ないような条項が定められ
ている。たとえば、リ!ス会社は資材に蝦疵があった場合も責任を負わないばかりか、リース契約そのものにも変更
をきたさない。かくれたる暇疵の場合もまた同様である。また、当事者の責に帰因せざる事由によりて生じた資材の
滅失穀損は、何らリース契約に影響を与えず、リース会社も責任を負わない。このような堰疵担保責任および危険負
担の免除という大きな特徴に加えて、リース会社は民法に定められた物件の修繕義務を負わず、かえって、ユーザー
に善良な管理者の注意義務をもって物件の維持、保守、保全にあたるべきこと、ならびに、物件に関する保険契約を
結ぶことを義務づけている。
次に大きな特徴として指摘できることは、リ!ス契約違反に関する厳しい措置が講じられていることである。すな
わち、リース会社は通知、催告をすることなく、直ちにリ:ス債権全額の即時弁済請求、およびリース資材の返還請
求と契約解除にともなう損害賠償請求等の全部または一部をなすことができる。また契約期間中の解約は禁止され、
やむを得ず解約をしても契約違反として、右の措置をうけることになる。更に、ユーザ!が破産した場合でも、単に
資材の返還をうけることのできる賃貸借契約と異なり、先に述べた違約条項が準用される。これはリース契約が賃貸
借以外の双務契約であると判断しなければ、破産法との関係で説明がつかないことになろう。その他、リース会社の
所有権を保全するために、物件が賃貸借契約の対象物であることを示す標識をその資材に取りつけるよう、ユーザー
に義務づけている。
最後に、リース契約の本質を最もよく表わしているリ!スバックという制度があり、この独特の制度こそがリース
契約の金融的本質を明確にし、単なる賃貸借契約とは全く別の新たな契約範ちゅうに属するものとの確信をもたらす
ものである。
以上、簡単に述べたリース契約の特殊性につき、賃貸借契約との比較対照により、順を追ってくわしく研究してゆ
きたいと思う。
ω 庄政志 前掲五頁。なお宮内同趣旨、前掲三二頁。フランスでは、いちはやく制定された﹁リース企業に関する一九六六年
七月二日法律第六六ー四五五号﹂︵ピo一昌。零ム緕αロN冒崖9這8︸国o一讐マoき図o馨器胃凶8ω冥彗δ奏韓一〇R象苓げ巴一.︶
︵一九六七年九月二八日命令第六七ー八三七号により一部改正︶の第一条に定義規定がある。すなわち、﹁爾後所有者となる企業
によって賃貸借の目的をもって購入された設備財産もしくは装置資材の賃貸借契約である。この場合、当該契約の名称のいか
んを問わず、賃借人は、少なくとも納める賃料にもとづいて決定される価格を支払えば、賃貸財産の全部または一部を取得す
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ることができる。﹂︵一号︶、ならびに﹁企業が購入しまたはその計算で建設した不動産を営業上の使用に供する賃貸借契約
である。この場合、当該契約の名称のいかんを間わず、賃借人は、売買の一方的予約の行使にもとづく譲渡、または賃貸不
動産が建てられている土地の所有権の直接もしくは間接的な取得、あるいは賃借人の所有する土地に建てられた建築物に関す
る所有権の法律上当然の移転のいずれかの方法により、遅くとも賃貸借の終了時には、賃貸財産の全部または一部の所有者と
② アメリカで、南北戦争︵一八六一年∼一八六五年︶当時、ユナイテッド・シュー・マシナリーという製靴機械メーカーが不
なることができる。﹂︵二号︶。賃借人の買取請求権を認めている点が顕著な特徴であるといえよう。
況下で販路を拡大するために自社製品の賃貸をしたのが最初で、次に一八七七年にはベル電話会社が同様に電話機を賃貸した
といわれる︵宮内 同書二一頁︶。
③ 日本では企業の信用調査を行う機関が整っていないので、結局はリース会社自身が行う。ユーザーに最近の貸借対照表、営
業報告書や損益計算書等の書類を提出させ、これを検討して結論を出しているようである。
三 リース契約の構成
㈲ ピ$ωoo﹃ωo講oぎ=碧く貰Oω島3①器菊oξo詣一8一℃ωo冥oヨσ①さ℃。旨ω∼一Noo。
ωρO訂ヨ窟仁9ピoピ㊦器冒磯一。O●勺一8q目一〇沢NO。
1 売買の法律構成
リース契約および賃貸借契約を考察する前提として、企業および個人が設備資材の調達手段として講じてきた様ざ
まな方法について簡単にふれておきたい。
これらの手段は、最終的に所有権の取得を目標とするものと、ただ使用収益権のみを目標とするものに大別するこ
とができるであろう。前者に属するものとしては、売買があげられ、後者に属するものとしては伝統的な賃貸借があ
げられるが、これについては後述するので、ここでは売買について考察する。
売買とは、所有権の獲得を目標とした設備資材の調達手段で、民法第五五五条以下に規定される。すなわち、売買
契約成立と同時に所有権が買主たるユ:ザーに移り、対象となった資材は貸借対照表に資産として記載される。そし
て、法定耐用年数基準による償却が行なわれるが、これが実際の経済的耐用年数より長期であるため、設備の陳腐化
の危険にさらされる可能性にも甘んじなければならない。
目的物に隠れたる堰疵がある場合、買主は契約をなした目的を達することができない場合にのみ契約を解除するこ
とができ、それ以外は売主たるメーカーに対し損害賠償を請求することができる︵同五七〇条、五六六条︶。両当事者
が商人である場合には買主は直ちにその環疵につき通知を発し、売主に対し契約の解除、代金減額、損害賠償等の請
求をすることができる︵商法五二六条︶。
売買契約が成立すると同時に、買主たるユーザーはすべての危険負担を負わなければならないし、維持保守もすべ
て自らの費用で行い、固定資産税等の支払い義務を負う。また当該資材に保険をかけて保険料を支払わなければなら
ない。
ユーザーは所有権にもとづいて資材を自由に使用収益および処分をすることができる︵民法二〇六条︶。ゆえに第三
者に転売することも賃貸することも自由であり、担保に供することもできる。その反面、破産の場合は当該資材は当
然破産財団に加えられるし、強制執行の際は差押えの対象となる。
売買は以上のような法律構成を有するが、その支払の形態により、割賦販売、・ーン、動産信託というものも含ま
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れる。これらの契約も本質はもちろん売買であるので、法律関係は右に述べたものと大差ない。だが、それぞれの支
払い形態にまつわる特徴もあるので、簡単な説明を加えてみる。
割賦販売とは、信用売買の一種で割賦販売法により規制され、売買代金を分割して支払う契約である。支払い代金
は購入資材の価格に、アドオン方式による金利や手数料が加わるために割高となる。割賦販売契約の大きな特徴は、
全部の支払いがなされるまで所有権が売主に留保されたものと推定されることである︵同七条︶。ゆえに、買主は期間
中は当該資材の転売、転貸は不可能であり、買主が破産しても当該資材は破産財団の中には含まれず、強制執行の対
象とならない。賦払金の支払を一度でも怠たると、売主は支払催告の後に支払遅滞を理由に契約を解除することがで
きる︵同五条︶。その結果は、それまでの支払金は無効となり、資材を返還する場合はそれまでの使用料を、返還しな
の
い場合は割賦販売価格の全額を支払わなければならない。
・ーンとは、メーカーないし販売店が買主に対し商品を販売するにあたり、売買代金の支払いにつき銀行信用を利
用させる制度である。まずメーカ1とユーザーの間で売買契約が締結され、メ!カーはユーザーが銀行から借入れす
る際の連帯保証人となることを約束する。次にユーザーが銀行と金銭消費貸借契約を締結し、実際に金は直接銀行か
らメーカーに支払われる。その後返済金は毎月ユーザーの預金口座から自動的に引き落とされてゆく。メーヵ1は連
帯保証に際しては資材の所有権を・ーンの返済が終るまで留保するか、その資材に担保を設定する。契約違反の場
合、ユーザーは期限の利益を喪失し、残金の全額即時支払い義務を負う。ユーザーが破産により支払不能となれば、
メーカーが代位弁済しなければならないが、メーカーは所有権を留保しておいた場合は破産財団に対し所有権を主張
できるし、担保権を設定していた場合はユーザーの債権者として配当に参加することになる。
動産信託とは、メーカーがユ!ザーの注丈に応じて製造した資材を信託銀行に委託し受益権証書を受けとり、同時
に信託銀行は当該資材を信託財産として引きうけ自己の名においてユーザーに賃貸する制度である。信託銀行はユ!
ザーから賃貸料を受けとり、メーヵ1に与えた受益権証書の元本償還と収益の支払いに充当してゆく。賃貸料の支払
いが完了すれば信託も終了し、所有権がユーザーに移転する。実際の内容を見れば、動産信託といっても長期の割賦
販売と同じである。ただ当事者として信託銀行が参加して三当事者となるにすぎない。また、契約の終了時にはじめ
て所有権がユーザ!に帰属するにもかかわらず、財務上は最初から所有していると同様の扱いをうけ、賃料の支払い
は損金と認められず、法定耐用年数を基準とした減価償却相当分と金利のみが損金として扱われる。この点も割賦販
売契約と非常に類似している。
以上、いくつかの設備資材調達手段をみてきたが、それぞれの特徴があるとはいうものの、本来が所有権の取得を
目的としているために、環疵担保責任、危険負担、資材の維持保全、納税の義務等の法律関係については、売買の場
合と同様である。
息総額を算出し、融資額の上に︵オン︶、この利息総額を加えた︵アド︶もの溝返済総額となり、 これを分割返済する方式で
ω 米国で消費者金融が盛んになるにつれて発達した利息計算法である。融資する金額に単純に利率と期間を掛けて全期間の利
ある。この方法によると、表面金利は割安であるようにみえるが、分割返済により融資残高が減少しても利息の方は減らない
ために、実質金利は高くなりがちである。たとえば、アドオン方式で年六%の場合、実質金利は年一〇・二%程度になる。
② こうした規定は買主にとって非常に過酷なものであるとして多くの学者の非難を浴びている。というのも、割賦販売の買主
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リース契約の基本構造 二六八
が大部分の場合、経済的に弱い立場の個人であるからであろう。
これに反して、フランスでは割賦販売であっても所有権の移転が明記されている︵フランス民法典一五八三条︶。すると、
逆に売主は破産や善意の第三者に対する転売の場合に、はなはだ不利な立揚に置かれることになる。そこで、そうした不測の
損害を回避するためになされた所有権留保の特約条項をもってしても売主は破産財団に当該資材の所有権を主張することはで
鱒一逞●漣鶏一ω9一︶。けだし、売主は買主より多くの揚合、経済的に強者であり、その利益保護は買主のそれより比較的に
きないという判例がある︵Ω∼oo︸︸三一一魯這鵠・ρ閑首o旨9閑・閑oびo“↓β詳鰹国厭ヨo具巴3留U3答OoBヨR9巴・β
軽視されてしかるべきだからである。
受けることになった。施行は一年九ヶ月以内とされている。
③ 本契約に関しては法律もなく利用者にとって不利な点もあるため、昭和四七年六月割賦販売法の改正により、同法の適用を
2 リース契約と賃貸借契約
賃貸借は民法第六〇一条以下に規定される伝統的な設備資材の調達手段であるが、最近ではレンタルという表現が
広く用いられるようになった。賃貸借とは当事者の一方が相手方にある物の使用および収益をなさしむることを約
し、相手方がこれに賃料を払うことを約する契約である︵同六〇一条︶。これに対しリース契約は、前述のごとく特別
の法律がないために、リ!ス会社の作成した普通約款がその根拠となっているのである。普通約款は、大量の顧客と
定型的な取引を行なうために、 一九世紀末から各種の分野で使用されるようになり、長年の商慣習にょり是認される
ものである。一般に普通約款は強大な大企業が作成するものであるために顧客の利益を不当に侵害するおそれがある
が、著しい不公正が生じた場合は信義則違反あるいは公序良俗違反として裁判所がその項目を無効とするという救済
の途を開いておけば、この問題は解決するであろう。
リース契約の場合は当事者たるリース会社とユーザーの間でリ!ス条件を交渉する段階で、ユーザーはリース会社
の普通約款の内容を充分に知悉することができるので、不測の損害を被むるおそれは全くない。それに、日本のリー
ス会社はアメリカのリース会社の指導のもとに設立されたものであるからその約款もアメリカのリース会社のものを
模範に作成されている。ゆえに、どの会社のものも似かよっていて大差なく、リースを利用しようとする者は容易に
その内容を知りうるのである。
以上の理由により、大量に取引を行っており、将来ますます発展の予想されるリース会社が普通約款を使用するこ
とは是認さるべきであろうが、問題はその内容である。リース契約では、民法によって賃貸人側に課せられている義
務の多くが賃借人側に転嫁されており、一見するかぎりでは著しく不公正のようである。しかし、リースの目的が本
来金融にあるという性格や多くのメリットを考えあわせれば、こうした短所を補って余りあるものがあるのではなか
ろうか。本稿においては、日本の代表的リース会社であるオリエントリースの約款を参考として採りあげることにす
る。
法律間題にはいる前に、それ以外の点に関するリースと賃貸借の差異につき簡単に述べておきたいと思う。すなわ
ち、まず第一に、契約の対象であるが、原則としてあらゆる物件がリースの対象となる。賃貸借の場合は、貸主が
自ら選択した物件を相当数保有しており、不特定多数の借主の要求に応じて賃貸するのであるから、その資材も当然
汎用性のあるものに限られる。 これに対し、 リ!スの場合はユーザーの希望にもとづき、 その都度資材を調達する
のであるから、リース会社に在庫はほとんどない。だから、ユーザーは必要に応じた特殊な注文製品をメーカーに作
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らせることもできるわけである。我国での利用状況は次のようになっている。まず第一位が事務機器、次いで耐久機
の
械、産業機械、サ!ビス機械の順になっている。
第二に、契約期間は、賃貸借は比較的短期のものが多く、短いものではレンタカーなどのように数時間の契約のも
のがあり、長くても動産の場合は一年ないし二年というのが一番多い。リース期間は三年ないし五年という中期のも
のがほとんどであるが、資材の使用予定期間、実質的な経済的耐用年数や収益性等を考慮したユーザーと資金繰りを
考慮するリース会社が合意により決定する。
第三に、賃料の支払い方法はリース、賃貸借ともに定額月払方式が一般的である。契約総額については、各リース
の
会社は最低限の制限を設け、小規模な取引を避けている。
第四に、賃貸借の場合、契約期間中であっても一定の期間前に通知をすることによって解約することができる旨約
定されるのが常であるが、リースの場合は、逆に期間中の解約は禁止する旨約定される。けだし、リ:スとは特定の
ユーザーのために特定の資材を購入して占有使用させ、その対価をリース料として受けとるという金融的性格の強い
ものであることと、その資材が汎用性に乏しくすぐに次の借主が現われる可能性が少ないためにリース会社の負う危
険が大きいという理由から、これは当然の措置といわなければならない。
以上の実務的な差異を前提として、賃貸借とリースの法律問題につき研究を進めてゆく。
ω 堰疵担保責任および危険負担 リ!ス会社は約款中に堰疵担保責任や危険負担を負わない旨を明記する。
まず、資材のかくれたる堰疵によリユーザーがその使用収益をなし得ない場合でも、ユーザーはリース会社に対し
契約の解除や損害賠償請求ができないばかりでなく、月づきのリース料支払い義務には何らの影響も及ぼさない︵オ
リエンタルリース約款︵以下単に約款と称す︶六条一項、四項︶。 賃貸借の場合は、その暇疵により契約をなした目的を達
することができない場合には解約することができ、それ以外の場合でも損害賠償を請求することができる ︵民法五五
九条、五七〇条︶。前述のごとく、売買の場合も同様である。 この点につき、約款には、リース会社はメーカ1に対し
買主として有するさまざまの請求権を代理人として行使する権限をユーザーに与える旨が記載されている︵約款六条
二項、三項︶。そこで、ユーザ!はリース会社の代理人として、メ:カーに対し損害賠償請求をすることにより救済さ
れうる。
次に、リース期間中、当事者の責に帰因せざる事由によりて資材が滅失、殿損した場合でも、リース契約には影響
を及ぼさず、リース料支払義務は相変わらずユーザーに課せられる︵約款一三条︶◎これらのことも民法の債権者主義
による危険負担の条項︵同五三四条︶、ならびに賃借物の一部滅失による借賃減額請求権および解約告知権︵同六二条
一項、二項︶を退けるものである。特に資材が滅失した場合、リース契約の継続が現実には不可能であるとしてユー
ザーが解約すれば、契約違反として期限の利益を喪失し、残リース料の即時弁済義務が生じる。
以上のように、一見借主に対し過酷であるようなこれらの特徴も、リース契約の本質がリ1ス会社による売買代金
の金融行為であることを考えれば是認できるのである。すなわち、銀行からの借入金により資材を購入した場合、当
該資材の事故を理由に銀行に対する返済金支払義務を免れ得ないのと同様の結論なのである。
② 資材の保守・保全 約款によれば、ユーザ:は資材の受渡完了から返還までの間、善良な管理者の注意義務
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リース契約の基本構造 二七二
をもって資材の維持管理にあたるべき旨が定められている︵同七条三項、八条一項、二項︶。これが遵守されているか否
かを検査するため、りース会社は何時でもユーザーの事務所や工場に立入ることができる︵同一二条︶。民法の賃貸借
の場合は、賃貸人が資材の維持保守をする義務があり︵民法六〇六条︶、 ユーザ!がこれを自らの費用で行ったときに
は賃貸人に対し償還請求権を有する︵同六〇八条︶。そこで、リース契約のユーザーは、メーカーと保守サービス契約
を自らの計算で締結している。
納税義務は、賃貸借の場合は所有者たる賃貸人が当然負うものであり、リースの場合も所有者はあくまでもリ1ス
会社であるので法律上の納税者はリース会社である。現にリ:ス会社はさまざまな税金を納付しているが、リースの
実質的性格からみれば、ユーザーこそが所有者同様の立場にあり税金を負担するのが妥当である。そこで、これらの
税金もリース料の中に含まれている︵約款八条三項︶が、ユーザーにとっても自分で資材を所有する場合の税務計算か
ら解放されるというメリヅトは充分にあるであろう。
さらに、 ユーザーはリース資材に関する損害を避けるために保険契約を結ぶことを義務づけられる︵約款一四条︶。
賃貸借では所有者たる賃貸人が保険をかける。リース契約の場合でもリース会社が保険契約を結びその費用をリース
料に含めて回収する場合もある。
⑥ 契約違反に対する措置 ユーザーが契約条項に違反した場合、リース会社は直ちにリース債権の即時弁済請
求およびリース資材の返還請求と契約解除にともなう損害賠償請求等の全部または一部をなすことができることは既
に述べたとおりである。これはリース契約の本質が金融であるため、こうした場合における金融機関のとる措置と同
様、期限の利益喪失の効果であって妥当なものといえよう。しかし、これについては二つの問題点が存すると指摘す
ぶ
る説がある。つまり、第一に、リース料の支払いにつきユーザ:に付与される期限の利益は単純に恩恵的なものでは
なく、利息を課せられることによって享受することができるのである。そこで、即時弁済については中間利息の合理
的な縮減がなされてしかるべきであるというものである。
次に、資材の返還をうけたリース会社がこれを売却した場合、その売却代金が予定残存価額を超えるときは、その
超過分をリース料即時弁済に充当するか、その部分をユーザーに返還するのが適切でなかろうかというものである。
の
私も公平の原則という立場からみて、こうした主張は正しいと思う。リース業界に課せられた今後の問題点であろう。
ω 権利の譲渡 賃借人たるユーザーはリース契約上の権利を第三者に譲渡することができない︵約款一一条一
項︶。これは債務の確実な履行を期待するためであって、賃貸借の場合も同様である。すなわち、賃借人は賃貸人の承諾
がなければ賃借権を譲渡したり資材を転貸したりできない。これに違反すれば賃貸人は契約を解除することができる
︵民法六二秦一項、二項︶。特にリース契約ではユ!ザーの保守保全義務が重要であるために強調される。
一方、賃貸人側の場合はどうかというと、賃貸人の権利とは所有権と賃料の支払いをうける権利であるが、賃貸人
が契約の対象たる資材を第三者に売却したとする。不動産に関しては多くの特別立法により﹁賃貸借の物権化﹂とい
われるほどに保護されているが動産に関してはこうした規定がない。このことから判断すれば賃貸人は賃貸資材を第
三者に売却することができ、賃借人は新たな所有者に対し賃借権を主張できない場合は前の所有者たる賃貸人に損害
賠償を請求できるのみであると判断しなければならない。リース会社は、借主に承諾を得ないで契約上の権利を第三
リース契約の基本構造 二七三
リース契約の基本構造 二七四
者に譲渡し質スし、または資材を担保に供し、あるいは他の方法で他人に移転することができる︵約款二〇条︶。リー
ス会社が金融機関から融資をうける場合に担保供与の方法としてこうした譲渡権を行使するのであって、このこと自
体は別にさしつかえないが、問題はリース会社がユーザ:に当該資材が譲渡された旨の通知をしなかった場合であ
る。リース料はそれまでどおり、リース会社に支払われてゆくが、善意の場合はユーザーは免責されるであろう。と
もあれ、リース期間中の解約禁止は、リ!ス会社をも拘束するのであるから、り;ス会社が所有権そのものを譲渡し
てもリース契約が継続されるべき措置を講じるであろうから、賃貸借の場合にくらべればユーザーの地位は安定して
いるといえよう。
⑤ 契約の終了 賃貸借期間が終了すると、賃借人は資材を返還するが、通常は一定期間前に申し出れば契約を
更新することができる旨約定されている。リースの場合も、 一定の予告期間内にユーザーが一方的に通知するだけで
更新︵再リース︶が成立する︵約款四条︶。再リース期間は定められず、解約権はユーザーが有する。また、資材が陳
腐化して必要なくなれば、ユーザーは資材を返還する。この返還に伴うすべての費用をユーザーは負担しなければな
らない︵同二三条︶Q
の め
こ な
アメリカにおいては、この二つの選択事項に加えて買取請求権が認められている。すなわち、契約締結時に定めら
ぶ
れた予定残存価格で資材を買い取ることができるというものである。我国では税法上の問題があるので採用されてい
ない。フランスでも買取請求権は積極的に認められており、むしろ返還の条項がない約款が多くみられる。もともと
リース資材が特定のユーザーのために購入されたものであることを考えれば、ユーザーが望む場合は買取請求権を認
めるのが合理的であり、リースのメリットを伸ばしてやる意味からも今後の大きな課題であろう。
⑤ 当事者の破産 賃借人が破産した場合は、賃貸人および管財人は解約を申し入れることができるが、解約
によって生じた損害賠償を請求することはできず︵民法六一=条、六一七条︶、資材の返遷のみをうけることになる︵破
産法八七条︶。リース契約の場合は、違約条項の準用により︵約款二一条︶、リース会社は資材の引揚げとともに残リー
ス料の弁済請求および損害賠償請求の全部または一部をなすことができる。これは破産法にいう賃貸借以外の双務契
約の規定にあたる︵破産法六〇条①︶。
一方、賃貸人が破産した場合、管財人の判断で賃貸借契約を解除するか否か選択することができる︵破産法五九条に
規定される双務契約の解除︶という説と、賃借人を保護する立場から、賃借人が管財人に賃料を支払うことにょり賃貸
借は継続されるという説がある。後者が妥当である。賃貸借契約は破産手続が完了するとき終了すると考えるべきで
ある。リース会社の破産の場合、契約の性質上、管財人は解約権を有しないとみるべきであろう。ただリース契約の
権利を他へ譲渡してその対価を破産財団に組み入れることになるだろう。リース期間中は原則として解約できないこ
圏
とになっているので、新しい賃貸人との間で、リース契約は今までどおり継続される。
差押や強制執行の場合はどうであろうか。所有権を有しないユーザーが強制執行をうけたとしても、リ!ス資材は
㈲
その対象とはならない。万一誤って差押えられてもリース会社は第三者異議の訴を提起することができる︵民訴五四
九条︶。つぎに、リース会社が強制執行をうけた場合、民訴第五六七条によれば第三者が執行の目的物を占有している
ときには第三者が任意にこれを執行官に提出し、その引渡を拒否しないときにかぎりこれを差押えることができると
リ!ス契約の基本構造 二七五
リース契約の基本構造 二七六
なっている。けだし、債務名義の効力は第三者には及ばないからである。その第三者が引渡を拒むときは、賃貸借契
約の場合であれば、債権者は債務者がその第三者に対して有している引渡請求権をさらに差押え、これを取り立てる
ことになる︵同六一四条、六一五条︶。しかし、リース解約の場合は、期間中は解約することができないのであるから、
債務者たるリース会社は第三者たるユ!ザ!に対し引渡請求権を有しない。したがって、ユーザーに対してリース会
社が有している金銭債権を債権者は差押えることにょり、あたかもその債権を譲受けたのと同様にユーザ!に対し、
リース料についての金銭債権を行使する︵同六〇〇条、六〇一条︶か、代位の手続を要せずしてリース会社にかわり差押
えた金銭債権を取立てる権限を与えられる︵同六〇〇条、六〇二条︶。
の リースバック リース契約の本質が金融であることをよりいっそう明確にするのが、このリースバックであ
る。リースバック契約とは、メーカーが自社で生産した資材を、あるいは商社が自ら取りあつかっている資材をリー
ス会社に売却し、こんどはリース契約にもとづいてリース会社がメ!カーや商社に貸付けるものである。 一見、異様
な感じがするであろうが、自らが必要とする資材を元手に、さらに必要な資金を入手することができるわけである。
アメリカでは頻繁に行われるこのリースバックを評して、シャンポi教授は、財務上固定資産を流動資産に変化させ
岡
る結果となり、まさに﹁不動産の動産化﹂をなしとげるものであると指摘されている。この制度によれば、銀行信用
を得られない企業も流動資金を手に入れることができ、中小企業の金融手段として今後大きく発展することが予想さ
れる。このようにリース契約も、リースバックに至ってその金融的性格を明確にするとともに、リースのもつメリヅ
トを最大限に表現し、かつリースが他の契約のどの範疇にも属さない非常に独創性豊かな契約であることを浮き彫り
にするのである。
以上のように、外観上は同じ賃貸借であっても、通常の賃貸借はその目的とするところが資材の一時的使用である
のに対し、リースは新しい機種の資材の導入を目的とするところに多くの顕著な差異が生じてくるのである。
フランスでは、すでに法律が制定されている︵前掲法律第六六−四五五号︶。
0ゆ
② 庄 前掲七三頁。宮内 前掲一四五頁、 一四八頁。
割って決定される。
⑥ リース料は、資材の代金から予定残存価格を差引ぎ、それに金利やさまざまの手数料を加えたものをリース期問︵月数︶で
④ 日本の場合二〇万円ないし三〇万円、フランスの場合は一八○万円ないし三〇〇万円程度と定められている。しかし、い潤
O鎧臣R一ピo霧日のによれば、フランスではこれ以下の取引を望む中小企業のために全国中小企業連合︵Oo昌欲融壁ユo昌O魯恥
し、この会社も九〇万円以下の取引は歓迎しない。︵いρOOヨB震9巴・︾昌ロO図窃<83嵩。︶
轟ざユ窃型蜜。国︶の援助をうけて︽いOO>も。寓.国︾が設立され、原則として取引の最低額を強制しないといわれる。しか
⑤ 資材の種類によってはリース会社自らが保守サービスを行うメンテナンスリースもあり、自動車リースは大部分がこれに属
⑥ 松田安正 ﹁リース契約の内容とその法律的構成﹂ ︵Zo毒切5ぎo器■帥∼昌oboN︶三四頁。
する。もちろん、この保守に関する費用はユーザーの負担でリース料の中に含まれている。
ω この問題に関しては、フランスではすでに判例により解決をみている。すなわち、損害賠償金額は、解約までの未払い賃料
ている。たとえば、 一九七〇年二月一九日パリ控訴院判決︵いρコ国色ユo昌OoヨヨR89冒畠島賃一〇鼻。霞貰ω’一〇刈一︶一800①
の合計と、資材がメーカーにより買戻されぬかぎりは解約後の賃料の総額から利息を差し引いたものとの総和として計算され
ω叡凶eヨoダOげ津臼q号寓震﹃帥三酔9帥暮希のρω菰︽いoo”げ巴一︾︶、同年五月八目トゥルーズ控訴院判決︵いρア国島二3
国象ユo口Ooヨ導R89冒ユ島#8一Qo一≦巴のお置り一90僧鱒。20弩qgm暮3ρωaい08自寅ロ8︶等がある。
08震箪一♪88酵O一零O目一鰹OO一〇蝉旨蒔仁8魯”β什おω9ω鼠い08向醤昌8し、同年一月一二日パリ控訴院判決︵いρ型
リース契約の基本構造 二七七
リース契約の基本構造 二七八
⑧ 建物保護二関スル法律︵明治四二年法律第四〇号︶、借地法および借家法︵大正一〇年法律第四九号および第五〇号︶、借地
の 出櫛箋”﹃山閃偉の冒oのω菊oξo︵︸一〇㎝OBー”マ旨O。
借家臨時処理法︵大正二二年法律第一六号︶、借地法の一部を改正する法律︵昭和四一年法律第九三号︶等があげられる。
⑩ 前掲法律第六六ー四五五号第一条。
この点に関しては、井上治行﹁リースの法律構成﹂︵創価大学開学記念論文集︶三〇六頁以下に詳しい。
⑳ 一●国O”三謡Ro唱●o凶“一〇。
α⇒
⑬ フランスでは、所有者を示す標識だけでは足りず、裁判所の登録係に登記するのでなければ善意の第三者に対抗できない
︵前掲法律第六六ー四五五号一−三条、令第七二−六六五号一条、二条︶。なお、井上﹁リース契約の法的性格﹂︵早稲田大学
企業法研究会誌第一七号︶八頁参照。
⑭ρ9”目冨且8●鼻﹂o 。。
3 売買の予約付賃貸借と一〇β菖o亭ぎ暑o
これらはフランスにおける独特の契約であるが、リース契約と類似しているので説明を加えておきたいと思う。
フランスでは割賦販売の場合、所有権が即座に移転するので買主たるユーザーの破産や善意の第三者への転売の場
合に、確実な賦払金の支払いが危険にさらされる。これを避けるものとして考え出されたのが一〇8ぎ亭奉暮oであ
る。この制度は、将来の買手となる者が賃借人の資格で目的物の直接的使用権を有し、賃貸借終了時に実現される売
買の予約の債権者となるものである。しかし判例は、賃借人が賃貸借契約の終了時に資材を買取る義務を負うことか
ら、仮装した割賦販売にすぎないと一貫して判示しており、学説も割賦販売もしくは売買の一方的予約付賃貸借にす
の
ぎないとして、リース契約とは別のものであると判断している。
一方、売買の予約付賃貸借契約︵鼠δ8ぎ昌巽8震。ヨ。ω器号希具。︶においては、賃借人たるユーザーは資材を買
うか否かにつき完全な自由を有している。賃貸人だけが売買の予約に拘束され、ユーザ!は契約の終了時に気が向け
ば資材を買取ればよいし、賃貸人もその時までは所有権を留保することができる。こうした点に注目して、リース契
む
約はまさに当該契約範疇に属するものであるとする学説もあるが、契約期間中の権利義務関係が賃貸借のそれと全く
同じである点に留意すれば、この学説に賛同することはできない。
ωO。謬。§艶勇。び一。什℃。℃.鼻謹密.
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②ρ一W凄⋮貰島gqピ碧o畠o”り鳳島ω号身o律8ヨB震o芭矯O①詮‘8一。・中r宰&R凶09ギ塗のユo昏o濤8ヨヨRo芭い
③O●騨色訂三gU●鍾﹃8ぎ﹂玄鮮
四 リース契約の法的性格
以上のようにさまざまな観点からリ!ス契約を研究してきたが、 一体、リ!ス契約とは如何なる契約なのであろう
か。
1 判例の態度
我国においては、歴史がいまだに浅いせいか、私の知る限り判例は一件も存在しない。フランスでは、一九六四年
六月二六目のラ・・シェル商事裁判所の判決から始まりいくつかの判例が出ているが、私の調べた限りでは、リース
リ!ス契約の基本構造 二七九
りース契約の基本構造 二八○
契約の法的性格に言及したものは少なく、ほとんどが過酷ともいうべき内容を有する過怠約款に関して、その妥当性
を争っているものであった。
法的性格に触れた判例を二つ紹介する。まず、第一に先に述べたラ・・シェルの判決であるが、更生整理︵賊琶。馨暮
一&凶欝富︶のためリース料の支払いが不能となったユーザーが、以下四つの理由を挙げて、当該契約はリース契約を
仮装した割賦販売契約であると主張した。すなわち、ω賃料の総額が資材の価額を超えること、②契約終了時に買取
権が認められていたこと、⑥賃貸料が高く、一九四五年六月三〇日の価格令︵O&。昌窪8琶豊お窪図勺憂︶に抵触
すること、㈲資材がリース会社所有のものであることを示す標識が貼ってなかったことを挙げていた。これに対し裁
判所は、ω高い賃料も、当該契約の経済的財務的利益の大きさと、リース会社の負う危険を考慮すれば、むしろ合理
的であると解することができ、②本件の場合、ユーザー自ら買取選択権を放棄していたので、ユーザーの主張は理由
がない。しかし、もしこのような選択的条項が存在したとしても、事例ごとに具体的事情を細かく分析して仮装の割
賦販売か賃貸借かを区別すべきである、③価格令に抵触しない、ω所有者を示す標識を貼ることは契約によりユーザ
ーに義務づけられていたのに、ユーザー自らがそれを怠ったのであるから、この事実をもってリース会社の取戻権に
対抗することはできない、として、結局、裁判所は、当該契約を単純な賃貸借であると判示した。これに対し、リー
ス契約に関し契約条項やその他の具体的事情を考慮にいれて判断すべきであるという裁判所の態度は評価できるが、
本件の場合のように、単純な賃貸借と解するのは誤りで、やはり、賃貸借契約とリ!ス契約は別個のものであること
の
を明確にすべきであったとの批判がなされている。
は
次に、一九七〇年二月一九日のパリ控訴院判決においても、破産により、リ!ス料が支払えなくなったユーザーに
対し、当該契約が単なる賃貸借契約であることを明言したうえで、過怠約款に基づくリース会社の提起した損害賠償
請求を認めたものである。
の
イギリスでは一九六六年二月一七日の=蒔﹃02旨O富昌8曼9︿ζ9判決において、動産のリース契約は単純
な賃貸借︵耳。︶に他ならないと明確に判示して、リ!ス会社の資材の取戻権と遅滞した賃料の支払請求権を認めた。
これらの例でみる限り、判例の態度としては、リース契約とはさまざまな特約を伴う賃貸借であるとみているよう
であるQ
2 学説の状況
まず、最初に挙げられるのが、無名契約説である。リース契約は一見したところ賃貸借契約のようであるが、実際
上の経済的機能は売買と非常に類似している。それゆえ、賃貸借契約の修正形式と考えるよりも、無名契約の一種と
考えるべきであるという説であり、有力説であると言えよう。売買契約的要素と賃貸借契約的要素の二面性に着眼し
む
て、経済上は売買賃貸借契約に近い一種特別の契約であるとする説も、この立場の延長線上にあると考えてよいだろ
うo
ところで、フランスでは一部の学者達が、リ:ス契約を特定の取引に関して、ある金融グループとある企業との間
の一時的な協力形態であると定義づけている。これに対し、O窪臣Rは、将来はこうした考え方から解決が導き出
の
されるであろうと高く評価しながらも、当事者の意思を重視するあまり現実の法律解釈を誤ったものであると批判
リース契約の基本構造 二八一
リ:ス契約の基本構造 二八二
し、現在の段階では、賃貸借と信用売買の融合した独特の新しい契約形態であるといわねばならない、と述べてい
嶺Q
契約期間中、資材がユーザーによってなにごともなく使用収益されている状態にあっては、瑠疵担保責任の追及、
危険負担、維持補修義務や月月の決められた料金を支払う義務等、ユーザーが果さねばならない義務をみると、きわ
めて売買契約、特に割賦販売契約に類似している。支払いが完了するまでは所有権が留保されることも、割賦販売契
約とリース契約の近似する理由の一つであろう。ところが、割賦販売契約との根本的な違いは、リースが所有権の取
得を最終的な目標としてはいないという点である・リース会社もユーザーも、その目的とするところは資材を調達し
使用、収益するための金融なのである。特にユーザーが資材をメーカーに注文しさまざまの売買契約の条件を交渉す
るときに、リース会社がまったくタッチしないという事実は、銀行の借入金でユ!ザーが資材を調達する場合と同じ
である。したがって、ユーザーが資材を運用するにあたり、第三者に損害を及ぼした場合、リース会社は一切の責任
を負う必要はないと考えてよいだろう。けだし、銀行借入金による資材の購入の場合に、その資材の運用にあたり、
の
第三者に与えた損害につき銀行が一切の責任を負わないのと同じである。
ところが、リース期間が終了すれぼ、再リースをする以外は資材を返還しなければならないし、リース料不払いな
どの契約違反が起きた場合は資材を取り戻される。また、ユーザーに対する強制執行の場合もリース資材は差押えの
対象とならないことや、賃借権の無断譲渡が禁じられていることなどのように、資材の所有権にかかわる問題が生じ
るときには、賃貸借契約的性格が強く現われてくる。
このようにリース契約は、当事者の目的は金融的機能にあり、通常の運営がなされている場合には、経済的な実質
は売買︵割賦販売︶契約のごとき様相を呈し、ひとたび所有権に関する問題が生ずるや、賃貸借契約的な面が強く現
われるというように、三面的な要素の融合されたものではないであろうか。すなわち、やや大胆な表現をするなら
ば、実際には売買的経済機能を有する金融的賃貸借と定義づけることができるのではないだろうか。
②閑●=〇三p一〇。毘8αoB勢叡冨一●ピo器凶躍勾oく・鼠ヨ●身8B●一邊Poo㎝刈●
ω一ρ即国象寓800ヨ日R89一且仁ω鼠9曽8890一8μミホ箇ω。国●竃。︾ρoD叡ピ8甲男β89
︽一〇8ぴ豊一︾
③一ρ国国α慾88目ヨR89冒身ω鼠o↑寓帥﹃ρ這目﹂8零。ωaぎBoダO冨富窪留蜜”旨き詳9窪霞窃ρω叡
⑤ 松田安正 前掲二一号九頁。
ω↓ぎ≦8ざ國雷毒閑80誹ω一巨隠﹂89中29曽㎝P崔鐸ω”旨8↓ぎヨ陽g暫鼠09一庄●‘ω貫嘗凝竃8岳器ωOo。
⑥中村武﹁リース契約の理論と実際﹂東洋大学比較法八号七四頁。
⑧O窪⋮震ob’o登認。
①O窪罠Rは、この学説を“将来の使者μ︵倉o旨窪器︾α.巽窪5と表現している。
⑨ この問題について、リース契約ではないがレンタルに関する判例があるので、参考になるだろう。
レンタカ1を運転していた者が事故を起こした場合、レンタカ!業者についても責任を肯定した判決である︵昭和四六年一
一月九日最高裁第三小法廷判決︶。判決理由によれば、レンタカー業者は自動車の貸付に際し、借主の運転歴、運転状況等の
肯定している。
審査をするうえに運行方法につき各種の指示を与えているゆえに、運行支配および運行利益の双方があったとして賠償責任を
リース契約の場合は、運行利益も運行支配も存在しないので賠償責任は生じないであろう。また、リース契約はユ!ザーの
ほとんどが企業であるから資力も豊かなので被害者保護の見地からもリース会社を巻き添えにする必要はないだろう︵判例時
リース契約の基本構造 二八三
リース契約の基本構造
報六四八号二四頁︶。
五 リース契約の課題と展望
二八四
以上述べてきたごとく、リース契約を行うことにより、金融機関でない企業が、賃貸借の形式を借りて、金融機関
と同様の機能を果す結果となっている。銀行の設立に際しては、銀行法による厳しい統制をうけなければならないの
に、リース会社の場合は、準則主義を採っているわが国ではただ会社法に従って設立するだけでよい。また大手メー
カーや商社等では、販売部門にリース係を置くだけでその業務を行うことができる。
他方、ユーザーの側からみると、銀行に信用のない中小企業でもリースを利用することにより、実質的に金融をう
けたと同様の資金調達の効果をあげることができるし、非常に高額な資材でも導入することができるのである。
このように、リースは、その金融的性格のゆえに企業財務に与えた影響は計り知れず、現代の企業がめざましい技
術革新に遅れることなく激しい競争にうち勝ってゆくために大きな役割を果していることは否めない事実である。今
日のように、リース産業がめざましい発展を遂げている状況を考えれば、前述のごとき不明確な定義やあいまいな制
度に甘んじることは望ましくない。それゆえに、いずれは、リース契約という独自の契約類型に即した法律構成を確
立することが、立法論として要請されてくるのではあるまいか。
ω フランスでは、リース会社は﹁一九四一年六月二二ー一四日の金融機関に関する法律﹂によって規制される︵前掲法律第六
六−四五五号二条二項︶。
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