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中央防災会議 「大規模水害対策に関する専門調査会」(第14回)
中央防災会議 「大規模水害対策に関する専門調査会」(第14回) 議事録 平成21年3月17日(火) 東京グリーンパレス 地下1階 「ふじ」 開 会 ○池内参事官 それでは、定刻になりましたので、ただいまから中央防災会議「大規模水 害対策に関する専門調査会」の第 14 回会合を開催いたします。 委員の皆様には、本日はご多忙のところご出席いただきまして、まことにありがとうご ざいます。 本日は、本来ならば佐藤防災担当大臣が出席してご挨拶申し上げる予定でございました が、国会の関係で急きょ欠席となりましたことをお詫び申し上げたいと思います。 なお、岸井委員、木津委員、島田委員、杉田委員、辻村委員、飛山委員、森地委員、山 脇委員は、ご都合によりご欠席でございます。 それでは、お手元に配付しております本日の資料を確認させていただきます。議事次第、 座席表、委員名簿、次回開催予定の次に、「これまでの検討内容と今後のスケジュール(案)」 がございます。また、非公開資料といたしまして、資料1、資料2、資料3、資料4、資 料5、資料6、資料7、資料8、資料9、資料10、資料11、資料12がございます。 非公開資料につきましては、委員の皆様方だけにお配りしております。ございますでしょ うか。 それでは、以下の進行は秋草座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたしま す。 ○秋草座長 まず、議事に入る前に、議事の要旨及び議事録及び配付資料の公開について 申し上げます。 まず、議事の要旨については、調査会終了後速やかに作成し、公表することとします。 また、詳細な議事録については、調査会にお諮りした上で、一定期間を経過した後に公表 したいと思いますので、よろしくお願いいたします。 -1- また、審議中にはかなり不確実なところも多く議論されるようでございまして、各委員 に自由にご意見をいただきたいということで、審議内容については、発言者を伏せた形で 作成したいと思います。よろしいでしょうか。 (「異議なし」の声あり) ○秋草座長 異議なしということで、それではそのように取り扱わせていただきます。ま た、本日の資料につきましては、議事次第のみを公開しまして、資料はすべて非公開とさ せていただきます。 なお、本日は3時間という長い時間をいただいております。途中で一度休憩をさせてい ただきたいと思いますので、よろしくお願いします。 それでは早速議事に入りたいと思います。まず、非公開資料と書いたA3横長の1枚も の、「これまでの検討内容と今後のスケジュール」をご覧いただきたいと思います。 今回は14回でございまして、12、13、14と、課題と対策ということで整理を進 めてまいります。今回は、ここに書いてある、黄色い網がかかっているところでございま すが、これ全部説明できるかどうかわかりませんが、多分、次の非公開資料1のところで 出ていますが、この濃い黄色いところを中心に説明させていただきますので、よろしくお 願いいたします。3以下については、多分時間がありませんので、次回にまたやりたいと 思いますので、よろしくお願いします。 前回は、大規模水害時における対応課題ということで、特に災害時の要援護者、地下空 間、オフィスビル・マンション等のビル機能支障等の対策についてご議論いただきました。 それから、地下鉄等の浸水想定を公表し、荒川決壊持における電力の被害想定を紹介して おります。 今回は、対応課題と対策のうち、病院における被害軽減、公的機関等における重要機能 の確保などの課題についてご議論いただきたいと思います。高潮の浸水想定、それから荒 川決壊時における被害想定ということで、ガス、通信、上下水道の各ライフラインの被害 想定をご紹介いただきたく、よろしくお願いします。 また、次回の第15回でございますが、大規模水害対策全体の施策体系等に関するご議 論をいただく予定でございますので、よろしくお願いします。 本日は、黄色に塗った部分のご議論をいただく予定でございます。よろしくお願いしま す。 -2- それでは続きまして、「大規模水害時における対応課題と対策」について、事務局より 説明をお願いいたします。 資料説明 ○池内参事官 それでは、A3横長の非公開資料1と、2、3を用いまして説明いたしま す。 まず初めに、非公開資料1で全体像をご説明したいと思います。 これまでも、委員の方から項目が非常に羅列的で全体像がよくわからないというお話も ございましたので、全体をざっくりと、できるだけ同じような類型で体系化の試みをして おります。このまとめ方についても、またご意見をいただこうと思っております。 それで、まず左上の1、人命を守る対策というものを掲げております。これの中身は、 今もご議論いただいております、いわゆる広域的な避難を確実にするための避難率の向上 ですとか、あるいは避難できなかった場合の逃げ遅れ者の被災回避、それから孤立した方 の救助・救援。それから特に災害時要援護者は非常に厳しい状況になりますので、そうい った方々に対する被害軽減方策、地下空間等における被害軽減方策。それから、今日ご説 明いたします、病院等における被害軽減対策でございます。 それから大きな二つ目の柱が、公的機関等における重要機能の確保と早期復旧というま とめをしておりまして、まず最初の2.1が公的機関等、特に災害時に重要な役割を果たす 行政機関を中心としたものを考えております。それから右のほうにまいりまして、2.2で、 特に大規模水害が他の災害と違いますのは、市区町村役場、あるいは警察署、消防署もそ うなのですが、浸水区域においては、その機能を果たせなくなる可能性が強い。そういっ た場合、非常に広域的な体制づくりですとか、あるいは避難自体についても、単独の地域 ではなくて、非常に広域的な連携体制というのが、他の災害にも増して重要になってまい ります。そういった面の話ですとか、特にいろいろな機関が参加する場合、お互い、情報 を共有化するというのが非常に重要になってまいります。その情報の共有化の話を挙げて おります。それから2.3では、特に災害時の応急対応、それからその後の復旧、復興につ いても、非常に重要な役割を果たしますライフライン・インフラ、こういったものの浸水 被害による影響の軽減と早期復旧対策というのをまとめております。 -3- それから大きな柱の3番目、こちらのほうでは、特に住民、あるいは企業等における大 規模水害対応力の強化というのを挙げております。一般的に地震災害というのは、比較的 よく対応なされているのが現状であります。今の段階で調べますと、中小水害は各々対応 していらっしゃいますが、こういう大規模な水害、とんでもないところから水がやってく るといったものにつきましては、まだまだ十分な対応がされていない。そのために、まず はこの大規模水害に対する正しい認識を形成していく必要があるんじゃないか。その次に、 地域住民の防災力の充実、それから民間企業等の事業継続性確保ということを挙げており ます。 それから4番目の大きな柱でございます。「氾濫の抑制対策と、土地利用誘導による浸 水被害の軽減」と書いてありますが、実は、今までのご議論の中でも、治水対策あるいは 水防活動というのは、アプリオリにも前提条件という取扱いをしておりました。しかし、 ご議論の中で、そういったものも基本ではないかというご趣旨のご発言を何度もいただい ております。ということで、4の中に、まず4.1で治水対策を着実に実施していくことが 基本だということと、もちろん水防活動といったものも的確に実施していくことが重要で あるということを書いております。また、水防活動につきましては、単に河川堤防を守る ということだけではなくて、その他の重要施設を守るような、新たな観点からの水防活動 も検討していく必要があると考えております。4.3では、氾濫拡大抑制と排水対策という ことで、流域における既存の構造物を使った氾濫抑制、あるいは内水排除のポンプを使っ た排水対策の強化というのが出ています。それから4.4で、非常に稠密な土地利用で、で きることには限界があるにしても、それでもまだまだ土地利用、あるいは住まい方のコン トロールから、浸水被害を軽減できる方策というのは考えられます。それについても挙げ ております。 それから5では、その他ということで、これも専門調査会で多々ご指摘がございました、 まず、水害時の特徴であります衛生環境ですね。汚物、有害物、それから感染症の蔓延と いったものがございますので、そういった衛生環境の確保。2点目は治安の維持、それか ら3点目は文化遺産の被害軽減、4点目が水害廃棄物の処理等を挙げております。 ということで、今までいただいておりますご意見等をもとに、再度全体像をくくり直し たということでございまして、本日はこのうち、先ほど座長からもご紹介ございましたよ うに、黄色く濃く塗った部分を中心にご説明いたします。 -4- それでは、お手元の非公開資料2でご説明いたしまして、トピック的に非公開資料3を、 パワーポイントを使って説明いたします。 まず非公開資料2の4ページをお願いしたいと思います。 「はじめに」と書かせていただいております。今回、今まで項目を羅列的に描いておっ て、内容がよくわからないというご指摘もありましたので、今回はメインの部分だけ文章 化を試みております。 「はじめに」のところでは、まずこの検討会の前提条件というのを書いております。一 つは、「近年世界的に大規模な水害が多発して」ということ、それから「豪雨の発生頻度 が増加傾向にある」ということ、さらに、「地球温暖化による大雨の頻度の増加や、海面 上昇など防災面から懸念される予測が出されている」ということがございます。 それで、これまで治水施設の整備というのは着実に進められてきておりまして、相当程 度の洪水までは対応できるようになっておりますが、現段階ではまだまだ整備途上である ということがございまして、利根川・荒川等において、カスリーン台風級の洪水が発生し た場合には、堤防の決壊によって大規模な氾濫が発生するおそれがある。 もう一つは、今は整備途上ということなのですが、そういったものが発生したとしても、 そもそも降雨というのは自然現象でございますので、治水施設等の整備目標を上回る降雨 が発生する可能性もあるということでございます。そして。こういった大規模な水害が発 生した場合、甚大な人的・物的被害が発生いたしますし、また被災した場合の復旧・復興 にも多大な費用と時間を要するということでございます。 そこで、こういった大規模水害に対して被害を最小限にとどめるための応急対策や復 旧・復興対策、予防対策を検討することが重要だということで始めているということを書 いております。 本専門調査会では、被害想定等を行うとともに、既往の大規模水害の状況をもとに、講 ずべき対策について検討を行いました。特に、大規模水害について、特徴というのを5点 ほど羅列しております。一つは、この水害の特徴として、地震災害ですと、地震発生直後 に発災してしまうわけです。一部、東海地震等では予知が可能でございますが、大半は発 災してしまう。ところがこの大規模水害の場合には、時間的な猶予があるというのが大き な特徴です。 二つ目は、地震災害の場合には、同じ地域の中で被災する方、被災しない方といらっし ゃいます。しかし、大規模水害の場合には、ある地域では非常に甚大な被害が発生する。 -5- その一方で、その横の高台ではまったく無被害だという地域が存在するのが大きな特徴で す。 3点目は、これは北川辺町なんかはそうなのですが、浸水深と建物の高さから、もし避 難しなかった場合、死者の発生率が極めて高くなる地域があるということでございます。 4点目は、特に都市機能なのですが、浸水区域においては、ビルの地下の電源設備、あ るいは非常用電源設備が浸水してしまって都市機能が麻痺する。地震災害の場合には、非 常用電源設備というのはある一定程度の効力が期待できますが、大規模水害の場合は、浸 かってしまうともう機能を発揮しない。 それから5点目は、市区町村全体が丸々水に浸かってしまう、そういった市区町村が非 常に多く存在するということで、市区町村丸ごと他の地域で代替機能を確保する必要があ る、こういった特徴がございます。 そして、検討に当たっては、既往の大規模地震対策、あるいは中小河川の浸水対策等も 参考にしつつ、こういった特有な課題に重点を置いて検討を行ったということです。 次のページ以降に全体像をまとめておりますが、今日のポイントに移りたいと思います。 22ページでございます。22ページから、病院等における重要機能の確保と早期復旧 について書いておりますが、特に1.7.1に書いておりますように、病院というのは、大 規模水害によって電力が遮断されますと、人工呼吸器等の生命維持装置をつけていらっし ゃる方が非常に危険な状況になる可能性があるということで、安全な場所に搬送して、適 切な医療行為を継続する必要がございます。しかし、移動ということについても非常に難 しい面が多々ございます。利用中に医療機器を外すことが困難な方、それから23ページ にまいりまして、寝たきりの患者とかもいらっしゃいます。そういった方々は、病院のス タッフによる協力なしには避難することができない。こういった状況にございますので、 安全な場所までの移動につきましても、時間、あるいは患者ごとに体制が異なるなど、非 常に難しい面がございます。従いまして、そういった患者の病状によって避難シナリオを つくって、避難計画を策定していく必要があるということを書いてあります。 パワーポイントの1ページ目をお開きいただきたいと思います。 厚生労働省の防災業務計画でも、すべての病院で、病院防災マニュアルの作成に努める という努力義務が書かれています。この病院防災マニュアルの作成ガイドラインというも のの中には、二つ目の箱でございますが、自病院内の入院患者への対応策に関する事項と して、患者の移送ということが記述されておりまして、重症患者から軽症患者まで様々な -6- パターンがあることから、それぞれの対応を検討し、訓練をしておくことが必要であると いうふうに記されています。実際、実態はどうかといいますと、これも東京都の調査です が、こういった避難計画を定めていらっしゃるのが7割、定めていらっしゃらないのが3 割といった結果になっております。 パワーポイントの2ページでございます。現状での病院の浸水可能性でございます。首 都圏広域氾濫、カスリーン台風と同じ場合、単純に病院の位置と、それから浸水区域を重 ね合わせた図でございますが、そこに示しておりますように、浸水する施設が多いのは、 足立区、葛飾区、越谷市等でございます。越谷市、草加市等では、もちろん市がほぼ全域 つかりますので、全部の施設が水に浸かってしまうということになります。それから入院 患者の数のオーダーでございますが、足立区の場合ですと3,500名、越谷で2,700 名、葛飾で2,200名といった規模の患者がいらっしゃって、こういった方々を、最悪の 場合、どうやって広域に避難させるのかという対応策が必要になってまいります。 それから次に、パワーポイントの3ページでございます。これは実際に、ハリケーン・ カトリーナの際に、入院患者の移送というのは行われております。しかし一方で、この移 送というのは非常に危険です。きちんとしたケアをしていかないと、例えばバトンルージ ュの教会に避難する途中で、脱水症状で亡くなった方もいらっしゃいます。一方で、ルイ ジアナ州の医療機関や福祉施設には、災害時に安全な場所に避難させることですとか、あ るいは移動手段を確保することが、医療保険制度に参加する必要条件として使用されてお りましたが、実際の搬送の足であるバス会社から車を手配できなかったということがあっ て、きちんと避難できなかったという事例が挙がっております。 次に4ページでございます。アメリカでは、このように健康保険制度の参加要件の一部 として、災害時の避難計画作成を求めております。例えば、フロリダ州の州法では、この 病院等の危機管理計画の最低基準を設定することを規定しております。そして、病院向け の危機管理計画の基準の中で特に着目すべきなのが、青い字で書いてありますが、一つが 他の施設へ避難するケースというのと、施設内避難のケース、それぞれについて避難計画 を作成することを要求しております。そして、こういった基準を満たした計画書の作成・ 提出は毎年求められるということになっております。 5ページにまいります。具体的にどういった基準を決めているのかというのはここに書 いておりますが、危機管理計画基準におきましては、例えば三つ目のポツにございます、 輸送に関する協定の確認、それから、もし地域内で輸送手段の確保が困難になるおそれが -7- ある場合に、代替手段をどうするんだという話ですとか、5番目のポツで、移送先を決め ている場合には、その移送先、それから危機管理センター等の上部機関が移送先を調整す ることになっている場合には、その状況説明。6点目に、避難ルート、それからその避難 ルートが通れなかった場合の代替ルート、移動時間、それから患者の移送に付き添う職員 の確保ですとか、あるいは付き添わない場合においても、代替の方策等を決めております。 それから下のほうにまいりまして、この他、この基準におきましては、病院内の指揮命令 系統ですとか、必要物資の備蓄、非常用電源、警報情報の受信と伝達方法及びその際の伝 達手段が機能しなかった場合の代替手段等についても記述することが求められております。 もとの冊子に戻りますが、次に1.7.2の病院等の入院患者の搬送体制の整備でござい ます。このように、地域によっては完全に水没してしまう。電源が確保できないと非常に 危険な状況になってしまいますので、地域外への搬送を確実にする必要がある。一方で、 搬送の手段につきましては、通常考えますと救急車というのが考えられますが、実は、救 急車そのものは、入院患者を他地域に搬送するということにはなっていないということと、 もう一つは、そもそも救急車の車両数自体が不足している。平常時でもなかなか十分に回 ってこないということでございますので、ましてや大規模水害時に病院の入院患者を院外 へ搬送することは難しい実態にございます。 それからもう一つの課題としては、こういう入院患者の搬送には非常に時間を要します。 そのために、非常に早い段階から、大規模水害に関する情報を的確に伝えていく仕組みが 必要ですし、また、院外搬送の決断をできるような情報が必要ですが、そういったものを 今後整備していく必要がございます。 右の24ページのほうにまいりまして、特に救急車を使えない場合でも、現状ですと、 例えば民間の救急車というのがあります。それから、その他の輸送機関ですとか、バス等 の公共機関といったものも使える可能性がございますので、そういった他の代替手段を確 保しておくことが重要だということを書いております。 次にまたパワーポイントの6ページのほうにまいりますが、大規模水害時における入院 患者の搬送手段の確保という紙をつくっております。まず、医療機関の方が一般的にどう なのかというと、入院患者の搬送については、救急車の利用を想定しているという答えを されております。一方で、救急機関の状況を申し上げますと、実際に平成16年度豊岡水 害の時は、そもそもこういった事態になりますと、救急車の出動件数自体が平常時の10 倍になって、とても振り向けられない。あるいは、今、消防機関へのヒアリングもしてお -8- りますが、平常時でも逼迫しておって、非常時は難しいということで、民間の救急サービ スを利用して搬送していただくことになるのではないかというお話もございました。ちな みに米国におきましては、搬送の責任分解点というのが明確に決めておられまして、被災 地の病院から搬送拠点までは各病院の責任、搬送拠点から被災地外の病院は国家災害医療 システムによる対応というように決められているそうでございます。 7ページにまいります。既往水害時における医療機関、在宅患者の状況でございます。 これは先ほど、早めにお伝えすることが重要だというお話をいたしましたが、豊岡水害の 時に、市から病院のほうに早い段階で「危険な状況になりそうだ」という電話連絡がなさ れております。これは避難勧告の発令前でございます。病院長はその電話を受けて、避難 を決断されたわけでございます。ただし、この病院の場合、他地域に同等程度の大規模な 収容能力を要する病院がなかったということもあって、病院内避難になっております。そ れで、17時30分に命令を出されまして、1階から2階への避難というのをなされてお ります。ちなみに、この時、避難に大体3時間かかっている。この避難が終わったのが2 0時26分で、円山川が決壊したのが23時ということで間に合ったということでありま す。 この時のご判断としては、堤防の高さというのを意識しておられまして、堤防の高さよ りも2階が高いということから、浸水しても大丈夫ということでこういう判断をされたと いうことであります。 もとの資料に戻ります。次に1.7.3で、病院内での孤立化にかかわる対策でございま す。基本的には、他地域への搬送も望ましいのですが、地域によっては堤防決壊から浸水 まで時間が短い地域ですとか、あるいは非常に大量の患者を抱えている病院等では、実態 上、搬送を行えない場合も出てまいります。そういった場合に、そこが浸水しない区域で あるならば上層階への避難という可能性もございます。しかし、その場合でも、電力等の 確保が必須条件になると考えております。 25ページにまいりまして、特に、非常用電源設備は通常地下に置かれておりますので、 使えなくなる可能性がございます。 それからもう一つ指摘されたのが、非常用電源自体は浸水しない場合であっても、院内 の配線系統が浸水部分に接しておりますと、そこで漏電してしまって、結局非常用電源が 使えないということもあるそうでございます。その場合には、浸水する区域と、しない区 域を分断するといったことも必要になってまいります。 -9- 具体の対応策でございますが、1点目は、まずはということで、施設対応ができない場 合におきましては、ポータブル型の発電機、あるいは手動式器具ですね。カトリーナの時 にもそうでしたが、手動で何とかなるということでの配備、あるいは訓練をしておく必要 があるということがあります。 それから中長期的な対策としては、浸水する危険性の高い病院においては、非常電源を 上階に配置するとか、先ほど申しましたような浸水区域と非浸水区域の電源系統を、簡単 にブレーカー等で分離できる、そういった仕組みをつくっておく必要があるということで あります。それから、もし可能であるならば、浸水深が浅ければ、止水対策もとり得ると 思います。そういった検討も重要になってまいります。 あと、その場合でも孤立化してしまいますので、水、食料、医療品、燃料の備蓄等の体 制を整備していく必要があるということが書かれております。 それから、パワーポイントの8ページにまいります。現在の病院の備蓄状況でございま すが、それも東京都のアンケートがございます。飲料水・食料につきましては、左のほう のグラフは、備蓄計画を策定していらっしゃるのが85%。このうち備蓄量としては、右 のほうのグラフでございますが、2日分以上というのが7割を占めていたということがあ ります。医療品につきましても、7割の病院が備蓄計画を策定しておられまして、その備 蓄量は2日分以上のところが8割あったということがあります。 9ページにまいります。特に病院の場合、トイレ用水等で、受水槽というものが非常に 重要なものになってまいりますが、受水槽の利用が95%あったということで結構多かっ たのですが、ただ、受水槽の容量、これが1日分というところが3分の1、半日が4分の 1程度あったということがあります。それから、特に重要な非常用発電機の状況でござい ますが、8割の病院で設置をしておられました。備蓄用燃料につきましては、確認されて いるところは4分の3。そのうち、稼働可能時間については、65%が12時間未満とい うことでございました。こういった状況にございます。 10ページでございます。実際にカトリーナの時にどういった対応をされたのかという ことが書かれてございますが、多くの病院が、非常用電源設備が地下にあったために停電 しております。それでどうしたかというと、二つ目の矢印に書いておりますように、手動 ポンプで生命を維持したということであります。だから、万が一電気が来なくても対応で きる体制というのはとっておく必要がある、あるいは訓練を積んでおく必要があるという ことであります。 -10- もとの資料に戻ります。27ページでございます。今度は、公的機関等における重要機 能の確保と早期復旧でございます。公的機関と申しますのは、災害時に重要な役割を果た す役所、消防署、警察署等を考えておりますが、こういった公的機関が、大規模水害時に 自らの庁舎が浸水して、停電等の機能支障が出る可能性がある。一方で、災害対応業務、 それから優先度の高い通常業務を継続していくことが必要になってまいります。 そこでまず2.1.1でございますが、自らの施設の浸水危険性といったものを把握して おく必要があるということと、もしそうなった場合、電源設備、通信設備、そういった重 要設備がどういう状況になるのかということを、影響を事前に評価しておく必要があると いうことであります。 ちなみに、パワーポイントの11ページでございます。この首都圏広域氾濫の浸水エリ アには、17市町村の役場が浸水区域にあります。しかし、その役場自体の高さまでは当 てられておりませんので、機能が麻痺するかどうかはわかりませんが、少なくともこの1 7市区町村というのは、周辺が完全に水没してしまう状況になるということでありまして、 地盤高が低ければ機能麻痺する可能性もございます。 それから、左下のほうに、これは東海水害の時の西枇杷島町の状況でございます。この 時、被害の中心にございましたこの町は、町役場自体も完全に水没しております。その結 果、役場の電話交換機も水没いたしましたし、防災無線もバッテリーが上がってしまって 不通になるということで、防災対策本部としての機能は完全に麻痺してしまいました。そ の結果、的確な情報提供等ができなかったということであります。こういった実例がござ います。 12ページでございます。この他、この区域には14の警察署、19の消防署といった ものも存在しております。もちろん、氾濫区域が変わりますと、対象の施設も変わってま いりますが、こういった状況になります。 もとの資料の28ページでございます。次に公的機関の初動対応力の強化でございます。 特に、大規模水害というのは、事前に雨量とか河川水位の情報からある程度予測ができま す。ですから、そういった予兆情報に基づく参集ルールというものを検討しておく必要が あるということと、もう一つは、自らの施設の浸水危険性をあらかじめ評価しておいて、 その評価結果に基づいて、必要ならば代替施設を確保する。そして、自らが参集する施設 が被災している、あるいは被災する可能性がある場合には、代替施設への移行手順とか、 要員の移動計画も検討しておく必要があるということであります。 -11- もう一方で、逆に、市役所というのは最後の最後まで空にはできませんので、誰かが居 残って、そして陣頭指揮もとっておく必要があります。代替施設で機能を維持するといっ ても、その辺は移行にも非常に時間がかかりますので、最後の最後まで残っておく必要が あるということで、そういう役割において、孤立しても大丈夫なように、水、食料等の生 活必需品等を確保しておく必要があるということも書いております。 次に29ページでございます。2.1.3は、災害対応業務以外の優先度の高い通常業務 等についても継続性を確保していく必要があるということでございます。2.1.4の代替 施設の確保とバックアップ対策でございますが、特に、浸水危険性の高い地域に位置して いる役所等においては、その代替施設を確保しておく必要があるということで、特に関係 機関の連携強化を図っておく必要があるんじゃないかと考えております。実際、地方新聞 なんかは、各社でお互いの機能をバックアップできるようにされておられますが、同じよ うに、場合によっては役場間でそういう連携強化を図っていく必要があるんじゃないかと いうことを考えております。また、その時必要になってまいりますデータ類についても、 平常時において、データとか重要書類のバックアップをしておくということと、もう一つ は、災害発生時において、庁舎内にありますものも浸からない場所に移動させる等の体制 を組んでおく必要があるんじゃないかと考えております。 30ページの2.1.5でございます。その他、当然でございますが、迅速・的確な情報 の収集と対応の体制をとっていく必要がございますし、2.1.6のように水防対策ですね。 浸水深が低くて、水防対策活動で防げるような場所であるならば、そういった対応策も検 討しておく必要があると考えております。 次の31ページでございます。2.1.7に書いておりますように、そもそも、こういっ た公的機関というのは、通常地震についてはつくっておりますが、大規模水害に対しても、 業務継続計画というのを策定しておく必要があるということを書いております。 次に2.2の広域連携体制の強化と情報の共有化でございます。2.2.1の円滑な広域連 携を実現するための仕組みと書いてありますが、特にこの大規模水害の場合、市区町村に よっては丸々広域的避難をする必要があるとか、あるいは役所の代替機能を置く必要が出 てまいります。そういった意味で、広域連携というのは非常に重要になってまいります。 そのため、特に避難者の広域搬送ですとか、広域的に受け入れが可能なような判断パター ンに応じたオペレーションのあり方についても検討しておく必要がございますし、また、 -12- そういった各機関の活動を調整する場を確保しておく、あるいは仕組みを確保しておくと いったことも重要になってまいります。 それから31ページの一番下の部分でございますが、特にその場合、いろいろな機関が 参加して、円滑な活動を行うためには、活用資機材の名称とか規格、あるいは活用要員の 呼称と能力要件、それから取り扱う書式といったものも、ある程度標準化しておくことが 重要になってまいります。 実際、パワーポイントの13ページに載せていますように、アメリカにおきましてはF EMAで人材とか資機材の種類、能力を分類して標準化というのをしておられます。特に 使用する用語、これも災害時、いろいろな機関が集まりますと、それぞれの機関の特徴が ございまして、混乱する場合もございますので、用語の標準化ですとか、役所ごとに求め られる要件についても決めておく必要があります。 あと、各機関が持っている資機材に関する情報の共有化を進めるために、特に、GPS あるいはGISを活用した資源の輸送状況の把握が可能なデータベースといったものもつ くっておく必要があるということでございます。 ちなみに、カトリーナの時には、沿岸警備隊が非常に活躍されました。そのキーは、沿 岸警備隊内部ではあるのですが、人員、資機材や訓練の標準化によって、いろいろな混成 部隊が集まっても円滑に活動できるようにしていたということであります。 14ページは、人員・資機材の能力の分類表の一部です。各タイプごとに、どういった 要件を満たしておく必要があるんだということを、事細かに決めております。15ページ もそうでございます。 またもとの資料に戻りますが、32ページでございます。2.2.2の防災関係機関相互 の情報共有体制の整備ということであります。特に、非常に多くの機関が参加するという ことで、意思決定される方の合意形成、あるいは意思疎通がものすごく重要になってまい ります。ただし、例えば市町村なら市町村が一堂に会するのは困難であります。そこで、 こういった場合に力を発揮するのは、テレビ会議等のシステムでございますが、非常に安 価にできるものもございますので、そういった体制を組んでおくとか、あるいは各機関の 人員配置状況ですとか、防災資機材の状況といったものを、GISを活用して共通で把握 できるようなシステムを構築していく必要がある。しかし、その際においても、機密情報 等の漏洩防止のセキュリティー面については配慮する必要があります。これはご指摘いた だいているとおりでございます。 -13- これにつきましては、パワーポイントの16ページでございます。実際、カトリーナの 時になぜこれがトラブったかと申しますと、調べてまいりまして一番大きかったのは、防 災関係機関相互の情報共有がうまくいかなかったということ。その原因は、まずは通常の 通信基盤が崩壊したということがあります。それから、防災関係機関の無線についても、 鉄塔が倒壊したということですとか、あるいはお互いのシステム自体に相互運用性がなか ったといった結果、お互いの意思疎通がうまくいかなかったということでございます。 パワーポイントの17ページです。これは、アメリカのテレビ会議のシステムです。こ れはホワイトハウス、それから州、あるいはFEMA、あるいは郡役場といったところに こういったものが設置されておりまして、関係者が一堂に会して状況を一緒に把握して、 そして意思疎通を図って決定していく、こういったことがスムーズに行えるようにシステ ムも整備されておりまして、実際、ハリケーン・グスタフ、それからハリケーン・チャー リー、ハリケーン・ディーンといった場において、こういったシステムをもって関係機関 相互の意思疎通が図られております。こういったシステムが重要なのではないかと思って おります。 もとの資料の32ページに戻ります。次にライフライン・インフラの浸水被害に対する 対応策であります。 33ページにまいりまして、まずは2.3.1、これは他と同様でございますが、浸水時 の被害様相を想定しておく必要があるということでございます。これにつきましては、パ ワーポイント18ページにございますカトリーナの時も、電気設備といったものがやられ まして、それに波及して、電話、携帯電話、ラジオ、テレビ、水道、ほとんどが使えなく なってしまったということがあります。また、パワーポイント19ページ、これも同じで ございます。過去、日本においてもそうでした。イギリスでもそうでしたが、発電所がと まることによって波及して、鉄道がとまったり、あるいは浄水・下水ポンプが止まったり ということもございました。あるいは、伊勢湾台風の場合は、復旧段階におきまして、排 水ポンプ場とか水道、新聞、病院といった重要施設を優先して復旧したということが挙げ られております。 またもとの資料に戻ります。33ページの2.3.2でございます。ライフライン施設被 害に伴う被害軽減対策でございますが、特に浸水地域で施設被害が生じた場合、その浸か ってしまった施設は仕方がないにしても、その他を助けるということで、多重化、分散化、 あるいは浸水区域内の施設系統と他地域を切り離して、他地域に影響が及ぶのを防ぐとい -14- った対応策も重要になってまいりますので、事前にそういう検討を進めていくことが重要 でございます。 次に34ページの情報インフラでございます。これにつきましても同様、ネットワーク の多重化、分散化がございますが、特に、携帯電話等におきましては、こういう災害時に おいては移動基地局の配備ですとか、あるいは被災した基地局の提供エリアを補完するた めの、これは以前ご発表がございましたが、チルト救済ですね。携帯電話の基地局が停止 した場合に、他の基地局からの発射電波の角度を変えて、欠けたエリアを補完する方法で ございますが、こういった体制の整備を組んでおく必要があるということであります。 次に35ページにまいります。交通インフラでございます。これにつきましても、大規 模水害の場合ですと、比較的容易に助かる施設と助からない施設、浸水深によって明確に なってまいりますので、あらかじめ浸水しないルートはどういうものなのかというのを見 ておいて、そういったルート間の相互アクセス性を確保していく。例えば、高速道路と堤 防上の道路、こういったものは通常切れておりますが、非常時にはつなげるとか、そうい ったアクセス性の確保を図っていくことが重要なんじゃないか。あるいは、災害時におけ る交通インフラ自身の水防対策ですとか、折り返し運転の設置等、そういった浸水した場 合の影響範囲を最小限にとどめる方策を検討していく必要があるということでございます。 次に2.3.5でございます。浸水被災時の早期復旧対策ということで、特にライフライ ンの復旧優先度、これは首都直下地震も同じでございますが、政治、行政、経済の中枢機 関とか、人命にかかわる重要施設といったものに対しては、早期に、優先的に復旧できる ような体制を組んでおくということと、もう一つは、各ライフライン・インフラ間相互の 関係がございます。そういう相互依存性にも考慮した復旧方策というものも検討しておく 必要があるということでございます。また、そのための人員とか資機材、特に非常時にな りますと人員が足りませんので、OBの活用等含めて、復旧要員の確保を図っていく必要 があるということを書いております。以上でございます。 ○秋草座長 ありがとうございました。非常に盛りだくさんでございますが、ご質問、あ るいはご意見ございませんでしょうか。 審 議 ○よろしいですか。 -15- ○どうぞ。 ○非常に内容の濃い説明をいただきましたので、ちょっとずつ質問していきます。 まず、病院の件ですけれども、標準的な被災シナリオは、今、紹介されたと思うのです ね。具体例を申し上げますと、1999年に台風18号が有明海から瀬戸内海へ縦断した 時に高潮が起こったのですが、宇部市にあります山口大学附属病院、この病院の前の川が 高潮の氾濫で溢れまして、実は地下室に水が来たのです。ここは実は、救急医療部が地下 にあって、救急車でダイレクトに患者を運び込むような状態になっておって、間一髪、救 急車が水没を免れたということなのです。 最近の病院は、地下空間が非常に多用されていますので、そこに水が入るということは、 何も非常電源が浸かるというようなものじゃなくて、いろいろな問題があります。例えば、 2002年のハリケーン・アリソンがテキサスのヒューストンに襲来した時に、テキサス・ メディカルセンターの地下空間が水没しました。ここでは、バイオテロの供試体がある部 屋に貯蔵されていたのですが、そこが水没したために、その部屋の水を浄化して処理する のに600億円かかりました。大学病院とか、特殊な機能を持っている病院というのは、 地下空間に周りから関知できないような機能を持っているところが結構ありますので、そ ういうところの被災シナリオを、きっちりとそれぞれ出していただかないと、標準形のシ ナリオだけではカバーできないでしょう。 例えば、今、地下空間は防火扉というのがありますけれども、そういうところで防水扉 が要る。現に、このテキサス・メディカルセンターのありますヒューストンのダウンタウ ンでは、地下の通路に、その後、自動防水扉が取り付けられておりまして、テキサスは夏 が暑いものですから、そこはダウンタウンの通路に利用されているのですが、頑丈な防水 扉が随所につけられているというふうな形で、新しくこれから病院をつくられる場合でも、 そういう過去の浸水の災害事例だけを考慮するのではまずいだろうと思います。 それから、浸水危険性ですけれども、残念ながら、利根川・荒川流域というのは地盤沈 下が随分進行しておりまして、最近はかなり落ち着いているのですが、ですから、市役所 とか町役場の建物は、多分杭基礎になっていますから沈下はかなり少ないと思うのですが、 周辺がかなり沈下している可能性がある。ご承知だと思いますけれども、昭和10年から 昭和60年の50年間で、我が国で最大沈下したのが練馬区でありまして、4.5メートル 沈下しているということですから、ハザードマップとかで浸水深は出ているのですが、肝 心の備蓄倉庫とか、あるいは役場の周辺が、現状でT.P.プラス何メートルあるのかとい -16- うのはほとんどご存じない自治体が大半だと思うのですね。ですから、浸かった時にどの ぐらいの深さになるのかというのは、そういう値がわかっておりますとすぐにわかります ので、そういう情報は事前に知っておいていただくということですね。 それから、パワーポイントの11ページで、西枇杷島町の話が出てきましたが、実は、 備蓄倉庫も浸水したのですね。ですから、西枇杷島町の避難所には、実は食料とか水が十 分に行かずに、隣の名古屋市西区の避難所に、この西枇杷島町の住民が逃げたということ もわかっています。ですから、この町役場は床上浸水して、災対本部が開設できなかった のですが、それだけにとどまらなかったということですね。 それからその後、この町はハザードマップをつくったのですが、町の防災アドバイザー が指導してつくったものですから、全町が真っ赤になって、要するに、避難勧告が出たら、 町の中で逃げるところが無いということで、名古屋市の避難所に逃げろというような勝手 なことが書いてありまして、大問題になりました。私は当時愛知県の水害対策委員長をし ておりましたので、そういう情報を知っているわけです。ですから、これからいろいろご 指導いただく時に、市町村のこういう能力というのはあまり高くありませんので、きちっ と指導していただかないと、とんでもないハザードマップをつくるところが出てくるとい うこともわかっております。水害での浸水被害のところで、さらに警鐘を鳴らす意味で書 いていただけたらと思います。以上です。 ○はい、ありがとうございました。何か事務局のほうからコメントございますか。よろし いですか。他にございませんか。はい、●●委員。 ○2点教えていただきたいのですが、一つは、一番最初にご説明をいただきました、非公 開資料2の23ページ、1.7.2です。ここで「病院等」となっているのですが、1.7. 3では「病院」になっていて、その「病院等」の「等」は何が想定されているのかを教え ていただきたいということであります。 少々、先ほどの●●委員風に言うと、不知火で災害が起きた時に、高齢者の施設が海岸 付近にあったために避難をしているという事例がございます。要は、そういうことを想定 していらっしゃるのかどうかということ。 それからもう一つは、31ページに2.2.1、あるいは2.2で「広域連携体制の強化」 ということ、あるいは「情報の共有化」ということを記載していただいています。とても 大事な指摘だと思うのですが、2.2.1の主語は市町村なのか都道府県なのか誰なのか、 どういう体制でそれをやるのかというのがよくわからなくて、実は、今の日本の防災対策 -17- の中で、広域連携というのは、いろいろな工夫もありながらそれほど仕組みが明確でない。 それがあったほうが、この委員会というのが内閣府の委員会でありますので、とても必要 な記載事項ではないか。この2点でございます。 ○まず1点目の「等」でございますが、病院、診療所、それから今おっしゃった、特に高 齢者を収容していらっしゃる施設で、病院に準ずるような施設のイメージがございます。 ただ、この部分で書くのか、災害時要援護者のところで書くのか、今ちょっと迷っており ますが、先生ご指摘のとおり、この「等」を入れたらどうかなということも頭にあります が、ただ、全部じゃなくて、特に病院に準ずるような施設も少しありまして「等」にして おります。 それから情報の共有化。これは実は、仕組みに悩んでおります。基本的には、市町村の 連携というのが基本になると思うのですが、ただ、そうは言いつつも、火山災害なんかと 同様でございまして、こういう大規模水害になると、市区町村の連携だけではしんどい。 都道府県とか国とかも入っていって、多分火山と同じように、合同対策本部的なものにな るのかなと思っております。その場合、各々個別、具体の回線等を持っていますので、そ の中で役割分担をして情報共有体制をつくっていくのかなというふうに思っております。 まだちょっと歯切れが悪いのですが、基本はそうなのですが、それだけでは難しいなとい うことで、火山と同様の体制が要るのかなと思っております。 ○はい、どうぞ。 ○この非公開資料3の8ページのところに、病院の備蓄状況と書いてありますが、病院で ちょっとお話を聞きましたら、患者数600人、それとそこにいる医師、看護師とかとい う従業員の方、こういう方は300人いて、900人いる。900人だから、900人分 の食料とか、そういう必要なものを備蓄してあるという数字だと、恐らく思うのですね。 そういう災害の時には、救急車でも来るし、近所の人で家で寝ている人なんかも運ばれて くる。そうすると、待合室なんかに患者とかその家族がたくさん来る。そういう人たちの ための備蓄というのは、恐らくこの中にはほとんど入っていないんだろうと思うのですね。 900人×何日分というようなものであって、実際にはもっともっと要るんだろうという こと。それで、入口を止めて、「入院患者以外は診ません」というわけにもいきませんし、 そこのところをちょっと見なければいけないだろうと思います。 それからもう一つは、病院等の「等」に入るのかもしれませんが、保健所長とお話をし たら、日ごろ血圧を測ったりいろいろやっているので、災害の時には「あそこに行けばい -18- いんじゃないだろうか」と思って、病院と間違えて保健所に人が来てしまう。その時に、 「ここは保健所ですからあっちへ行ってください」というわけにもいかないということも 起こるので、特に保健所の中では人が集まってきちゃうところがあるということですね。 むしろ逆に、保健所の人はそういう時にはどんどん出ていかなければいけないのかもしれ ないけど、逆に人が来ちゃう心配があるというお話がありましたので、この数字を見る時 に、病院の備蓄というのは非常に単純に書いてありますけれども、そういうことも念頭に 置かなければならないということです。 ○ありがとうございました。 ○最初の、非公開資料3の1ページ目の、避難計画を定めている・いないの7割が定めて いるというのですが、これは地震じゃないですか。だから、水害はほとんど考慮されてい ないのが実態だと思うのですよね。 それからもう一つは、水害の時に、本当に病院から出て他へ移動したほうがいいのです か。というのは、水深が2、3メートルなら、2階より上で浸からないわけですよね。だ から地震と違って、少なくともほとんどの場合、鉄骨のビルというのは3階以上は安全な のですよね。そういう時に、地震と同じように外に逃げなきゃいけないというような避難 計画でいいのかどうか。 ですから、外に逃げるとなると、負荷が非常に増えますので、これは相手先もいる話で すから、大変な作業になるわけで、基本的に、例えば「何階建て以上の病院の場合は院内 で避難する」というふうな方針を立てないと、さっきの表を見ると、とんでもない数が足 立区とかそういうところで出てきます。ですから、病院に任せるのではなくて、そういう ガイドラインのようなものを、水害の場合は用意する必要があるのではないでしょうか。 ○おっしゃるとおりで、入院患者の避難というのは非常に困難に場合が多いのですが、た だちょっと心配しているのは、浸水では、中小規模の水害ならば上に行くのは正解だと思 うのですが、大規模水害の場合、非常に長期にわたって、場合によっては1週間以上も孤 立するという実態がございます。2点目としては、電源がきちっと確保されればというか、 非常用電源設備が浸水しない階に置いてあって、燃料が十分に補給してあって、しかも配 線系統が分離できる、その三つの条件がすべて満足されているならば、それが一番いいと 思うのですが、燃料が確保できて、非常電源を上に置いて、しかも配線系統を分離できて、 備蓄をきちっと確保できるということは結構難しいと思うのですね。ですから、アメリカ にもございましたように、2通りで考えておくのかなと。避難するとしたらどうなのか。 -19- それから上に行くとしたらどうなのかということを2つ考えておく必要があるのかなと思 っております。 ただ、実態としてはおっしゃるとおりで、入院患者の避難というのは非常に困難を伴う 場合が多いと思います。 ○他にございませんか。はい、どうぞ。 ○非公開資料2の27ページ以下に、「公的機関等の業務継続性確保」ということがござ いまして、地方公共団体の大規模水害に対応した業務継続計画の話があるのですけれども、 地域防災計画との関係等もございますので、私ども、中で十分協議させていただきたいと 思いますので、一応お話ししておきますのでよろしくお願いいたします。 ○すみません、案自体、各省にも全然照会をかけておりません。全くたたき台でございま すので、いろいろな意見をいただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○はい、どうぞ。 ○相変わらずすごい資料を出してきたなと思って、感心しながら読んでいるのですけれど も、ここに書いてあることを実際どうやって実行していくか。●●委員からお話がありま したように、それぞれの地域によって事情が違うとか、施設によっても事情が違うとか、 それらをきめ細かく的確に判断しながら対応していくということになると、今回、地域と いう言葉を入れていただいておりますけれども、それぞれの地域とか、施設とかに応じた 対応が必要になってくるだろう。しかもそれは、かなり総合的な対応が必要になってくる だろうということになると、地方公共団体とか、市町村とかが、これはもうどうしても逃 げるわけにはいかないというか、主役になるつもりでやらなきゃいけないだろうと思うの です。 そういうふうに考えて、本当にうまく行動していくためには、今日もいろいろお話しい ただいたような基礎的な知識とか、情報とかというものをまず持っておかなきゃならない。 それから、それをこなせるような人をつくっておかなきゃいけない。この中にも研修とい うことをかなり書いていただいていますが、そういう人づくりをしなきゃいけない。それ からもう一つ、現実問題として無視できないのは、財政問題というのがあるのじゃないか と思うのです。非常事態に備えて物資を備蓄するというお話がいろいろありましたけれど も、そういったことを一つとっても、あるいは人づくりということだって、今の市町村だ となかなか大変じゃないかと思うのですが、これは直ちに国が補助しろとか何とかという ことを申し上げるつもりはありませんけれども、地方団体、市町村が中心になって対応し -20- ていかなきゃならない。そのために必要な人づくり、そしてそのために必要な財政的な措 置、そうしたものもあわせて進めていっておかないと、現実の対応は非常に難しいのじゃ ないかということだけ申し上げます。 ○ありがとうございました。どうぞ。 ○今の●●委員のご意見にも関係するのですけれども、今回、施策の体系ということでお 出しいただいているのですが、今のお話のとおり、具体的には、地方公共団体の地域防災 計画とか、あるいは省庁の防災業務計画とか、指定公共機関の計画とかに連動して、実行 レベルで落としていかなきゃいけないものだと思うのですね。そうすると、この施策案の 体系の書き方も、現状の自治体の地域防災計画なんかの書き方にある程度合わせていって あげたほうが、自治体にとっては反映しやすいような気がします。 具体的に言うと、今、いろいろな防災計画は、まず総則というのがありまして、次に災 害予防計画。災害予防というのは、具体的には、事前にやっておく被害抑止対策ですね。 ミティゲーションの対策と被害軽減というプリペアドネス方面の対策。それから、三つ目 が具体的な災害対応。災害対応の中に、今回書いていらっしゃるような人命にかかわる、 いわゆる緊急対応的なこと。それから二つ目が、応急復旧対応のフェーズでのこと。そし て三つ目に災害復興ですね。そういう書き方がされているものが多いと思います。 そういう切り口がいいのかどうかはわからないのですけれども、自治体とか指定公共機 関の防災計画と国で出していかれる施策は、ある程度標準的なパターンですが、これを、 今回の大規模水害だけではなくて、首都直下とか東海地震の大綱が、現場レベルでの計画 と合うように、施策体系の示し方の標準的なモデルを検討することも同時に必要なんじゃ ないかなと少し感じております。 ○ありがとうございます。コメントございますか。 ○おっしゃるとおりと思います。多分、今後こういった報告がまとまったあかつきに、例 えば防災基本計画ですとか、そういったものの中身についてもこういった内容は入り込ん でくると思います。その段階で、今、委員ご指摘のようなことも十分留意してやるととも に、もう一つは、これの実効性を高めるためには、まとまったあかつきにお示ししていく 時に、既存の市町村が対応しやすいような形にしたものも、あわせて出していく必要があ ると思っております。 ○よろしいですか。荒川と利根川流域に大雨が降っている状況を考えた時に、気象庁から 大雨洪水警報が出たとしますよね。そうすると、各市町村が、あるいは区が、避難勧告を -21- 出すべきかどうかというのはそこで判断するわけですよね。ところが、残念ながら、市町 村には、河川の洪水のことをわかっている人は、極端に言うと1人もいないわけですよね。 地震の場合はいきなり災害が起きますのでリードタイムがないのですが、水害の場合は、 今さっきご紹介いただいたように起こるまでにリードタイムがありますよね。その時間を どうやって活用するかと言った時に、今日のこの情報広域連携体制をきちっとつくるとい うようなことを実現しようとすると、情報の共有化が要るじゃないですか。そうすると、 自治体、特に市町村レベルではそういう判断をする能力がないと考えて、例えばここで言 えば、国土交通省の関東地方整備局なり、あるいは内閣府からきちっとした情報が出せる のかどうか。今はそのルートが無いですよね。ですから、例えば荒川の場合だったら、現 実的には荒川下流河川事務所の所長がそれぞれの市町村長に「荒川が危ないから避難勧告 を出してくれ」と、こういうのが実態だと思うのです。ですけれども、氾濫した時の広域 性を考えたら、どこかで情報をコントロールしても、そこだけではだめなのですよね。情 報の二重化三重化が要りますから。だけど、国として、これだけの大規模水害が想定され るのでしたら、きちっとしたメインの情報の流れをつくって、それが外から見えるような 体制にしておく必要があるのじゃないかと思うのです。それだけを頼りにするというのも 問題があるのですが、それが無いというのは、広域な水害対応をする時には大変難しいの じゃないか。だから、実態的にやっていただいている対応では明らかに不十分なので、情 報連携をどうやるかということを、具体的に、国が責任を持ってやらないと、残念ながら 市町村レベルではほとんど判断ができない。事前にハザードマップがあったら、赤く塗っ てあるところの住民に避難勧告を出すのが精いっぱいだと思うのですね。そういうことを 繰り返していると、去年の8月のように、岡崎市の37万人の住民全員に避難勧告が出て、 逃げたのがたった51人という、そういうとんでもない結果になるわけですよ。もちろん これは住民にも行政にも問題があったのですが、ほうっておくと絶対にそうなると思うの ですね。 ですから、メディアを通して、荒川と利根川の場合はどうなるのかということは、事前 にかなり知っておいていただかないと、「お、また避難勧告か」というような感じで足立 区の住民がい続けると、家が6メートル水没するなんていうことが起こるわけです。 ですからこの場合は、国がかなり責任を持って情報を出すルートを明示しておく必要が あるのじゃないか。市町村任せになっていると、とんでもないことになる危険性があるの じゃないかと思いますが。 -22- 資料説明 ○秋草座長 よろしいですか。他にございませんか。 無いようでございますので、またあとでコメントがありましたら、後ほどお願いいたし ます。ありがとうございました。 引き続き、東京湾の高潮浸水想定について、事務局より説明をお願いします。説明者は、 国交省港湾局の海岸・防災課長小野様からお願いします。港湾はあちこちに絡んでいます ので、代表して説明をお願いします。 ○国土交通省(小野) はい、ありがとうございます。港湾局海岸・防災課長の小野と申 します。 それでは、お手元の非公開資料4から7に沿って説明を申し上げたいと存じます。 まず4ですけれども、これは昨年6月11日の第10回の調査会にお示し申し上げまし た、大規模水害の浸水想定シミュレーションを見直したものです。6ケースとケース数は 変わっておりませんが、シナリオを整理し直したということと、それから一番重要な基礎 データである海岸堤防の天端高さですとか、土地の地盤高さですとか、こういったものに つきまして精査をした結果です。また、現地条件もなるべく的確に反映するようにしたも のです。 1ページめくっていただきますと、全体の図が出てまいります。6ケースをシナリオA からFに整理をしてあります。この意味ですけれども、A、Bは、基本的に現時点での東 京湾における高潮防護能力を検証しようというものでして、シナリオAが基本です。東京 湾の高潮防御で使われている伊勢湾台風級の巨大台風が来襲した場合でして、波浪条件・ 潮位条件のところに下がっていただきますと、伊勢湾台風と書いてございます。それから その二つ上ですけれども朔望平均満潮位時に台風がきたというようなケースですが、シナ リオBはそれのバリエーションで、そのような時に大規模な地震が発生したということで、 耐震性を有しない海岸保全施設が破壊され、その復旧が間に合わないケースです。 それからC、D、E、Fでございます。まずCですけれども、これは今後の気候変化も 考えますと、台風の大型化というのがかなりの確度で想定できるだろうということで、少 し大きいですけれども、Aの伊勢湾台風級の台風を室戸台風級の台風に変えてみたという ケースです。それに対してDですけれども、これは地球温暖化の水面上昇だけを勘案して、 -23- これも大きなケースですが、IPCCで言っております最大値59cm、これが60cm 潮位が上がった場合で計算してみたのがDでございます。Eというのは、今、CとDで申 し上げましたような台風の大型化と、それから水面上昇が同時に起こったというような ケースです。Fは、Eの場合に、さらに、後で出てまいりますけれども、東京湾奥の各港 や工業地帯から色々なものが流れ出す可能性があり、そういったものが水門ですとか堤防 の一部を破壊したというようなことを前提条件にして計算したものです。このような6 ケース、以前とケース数は同じですけれども、シナリオを再度整理し直したということで ございます。 計算条件が2ページ以降にありますので、1ページめくっていただきたいと思います。 「計算条件」と書いてございます。今申しました台風コースの設定ですけれども、右側に 日本の衛星写真に赤丸で線が引いてあるようなラインで伊勢湾台風、室戸台風が通ったと いうようなケース設定です。台風コースの設定の予備検討というのは、左側のポンチ絵に ありますけれども、基本的には、伊勢湾台風のコースと、それから台風7920号コース、 それからキティ台風コース、またそれぞれを平行移動したものを、なるべく東京湾に近い 場所で上陸させてみたわけです。結果的には、伊勢湾台風コースのケースのC005とい うラインが首都圏沿岸部に、影響人口による重みづけを考えますと、最も影響があるので はないかということで、このコースを計算条件として設定しました。下に潮位条件があり ますけれども、潮位条件は、今申し上げましたように、東京湾各港の朔望平均満潮位、こ れは右側に少し小さい図がありますけれども、東京港ですと、T.P.+0.966m、港口 に近い横須賀ですと、T.P.+0.859mで、地球温暖化を考慮する場合はこれに60c mを加えたというような設定です。 1ページめくっていただきますと、モデルの概要があります。レイヤーのモデルを使っ て吸い上げだとか吹き寄せというような効果、それに加えて砕波による平均潮位の上昇を 重ね合わせたということで、この3つの効果を高潮として計算しております。 下に境界条件がございます。基本的に東京湾全体をモデル化したものですから、メッシ ュのサイズをそれほど小さくできないという事情もありまして、河川そのものからの越流 ではなかなか計算しにくかったもので、基本的には、この赤の部分は水の出入りがない。 青の部分から越流なり越波、波の打ち込みが生じるというような前提で計算しております。 -24- 一番下にありますように、先ほど申しましたシナリオBの場合の地震というのは、レベ ル1地震動、施設の供用期間中に1回か2回程度発生するような大きさの地震動を考えて みたということでございます。 4ページに、各シナリオの浸水想定結果の概要が総括表となっております。下の2段に、 最大浸水面積と浸水量が載っております。例えばシナリオAとシナリオCを比べてみます と、これは台風が大型化した場合に、伊勢湾級台風と室戸級台風でどれぐらい浸水量が違 うかというように比較ができるわけで、1.9倍程度。それから、シナリオAとDを比較し てみますと、これは潮位が60cm上がった場合の比較ですが、これが1.9で約2倍弱と いうように浸水範囲が広がるということでございます。 ちなみにシナリオBのケースですけれども、今の東京湾各港の海岸保全施設の耐震化が 間に合わないだろうということで、一部の堤防が崩れれば、今回の計算では6割程度浸水 量が増えるというふうにご覧いただきたいと存じます。 5ページ以降は、各シナリオの浸水想定結果を2ケースずつ並べたものです。シナリオ A、Bが5ページです。Aの場合、基本的に東京港周辺は非常に浸水が少ないという結果 になりました。赤で書いてある線が、現在の海岸保全施設の防護ラインの線でして、この 外側で、例えば船橋のあたりに非常に深い浸水域が生じているとか、それから千葉県の千 葉市の前面に浸水域が生じている、これは防護ラインの外ですので、地盤高から決まって くる浸水現象です。防護ラインの内側まで浸水しているところは、シナリオAですと比較 的少なく、幕張メッセのあたりで50cmから1m弱程度の浸水が起こる。一部は越流が 生じて、堤内地に水がたまっているという状況です。 それから6ページがCとDです。Cの想定である台風が大型化しますと、特に船橋のあ たりで、背後にかなり浸水域が生じてくるのがわかると思います。それから千葉駅周辺も 同様です。この辺について千葉県は、現在、海岸防護施設の高さを見直しているところで すので、それが間に合わない場合が、このようなシミュレーション結果にあらわれている わけです。 7ページはシナリオEとシナリオFです。Fというのは、水門が壊れ、堤防が一部壊れ たという非常に極端なケースです。このような場合、東京港の前面の、非常に強固な高潮 防護ラインの一部が壊れたわけですから、都内のゼロメートル地帯にかなりの浸水が生じ るということで、水門等の防護ラインを的確に稼働させることの重要性が、このシミュレー ション結果からうかがわれます。 -25- 非公開資料5ですけれども、冒頭申しましたように、前回の第10回専門調査会と今回 で、計算条件を大きく変えているところが幾つかございますので、それをトピック的にお 示ししたものです。 1ページは一覧表になっておりますので、2ページ目をめくっていただきたいと存じま す。千葉港等のシナリオで、以前は胸壁の高さを精査し、船橋あたりの浸水条件が若干変 わっているのと、それから粗度係数を見直しました。実際は、地盤上にいろいろな建物が 建っているので、これを粗度係数になるべく反映させようとした結果、浸水予想が若干変 わったというところがあります。 3ページですが、これは川崎港側です。川崎港の旧計算結果のところの点線で囲んだ部 分、これはゼロメートル地帯ですが、このやや下側に直線で青のラインがずっと書かれて あります。これは川崎港の防護ラインですけれども、非常に古い施設でして、耐震性がほ とんどないということが判明したものですから、今回のシナリオBの場合は、これがきれ いさっぱり倒壊してなくなったというような想定をしております。その結果、かなりの背 後市街地に浸水域が広がるという計算結果になったわけです。 それから非公開資料6ですが、これはそれぞれの港につきまして、例えば2ページをご 覧いただきますと、これはシナリオA、千葉港等につきまして、先ほど申しました台風が 伊豆半島沖からずっと関東をかすめまして東京湾を北上いたしまして、仙台近くにまで至 る。この18時から23時の6ポイントについて時系列的にそれぞれの時間帯での浸水範 囲を示したものです。左側に、最大浸水深分布だけをまとめて取り出したものが図に示し てあります。あと、図の中に矢印でその時点時点の風向きと風の強さが書き込まれてござ います。 3ページは同様でして、これは千葉港のシナリオB、以降、港ごとにシナリオAからF まで並べてありますのがこの資料です。 それから、非公開資料7というのがございます。「今後の検討予定について」という1 枚紙です。このように浸水想定を昨年6月に出させていただきましたが、今回それを精査 しまして、再度、お諮り申し上げましたけれども、今後の検討の中身としては、大規模な 高潮浸水によってどのような損失が生じるかということを検討したいと考えております。 この場合、我々は防護ラインの内と外というふうに考えておりまして、様々な想定のもと で、防護ラインの内側に高密度に集積する人口、資産、これらの面で東京湾は非常に特異 -26- な場所ですが、それにどのような損失が生じるかということを追ってみたいというのが1 点です。 それから、これは港湾施設ですから、臨海部工業地帯の宿命ですけれども、防護ライン の外側に相当量の物流施設ですとか、生産施設があります。例えば、エネルギー基地なん かもほとんどの場合防護ラインの外側にあります。このようなところは、企業の独自の努 力でかなりの地盤高を確保しているのですけれども、それでもいろいろな問題が生じるの ではないかということで、このような物流・生産機能が一時的に麻痺することによって生 じる広域的な、特に東京湾沿岸域、非常に広域的な経済活動の中心になっているものです から、その影響を評価してみたいと考えているわけでございます。 それから、今日既に一部の検討が始まっているわけですけれども、対応策についての検 討もあわせてやりたいと考えております。特に今、シミュレーションの中で申し上げまし たように、海岸保全施設の耐震化でございますとか、老朽化対策が非常に急がれておりま す。こういったものの推進方策ですとか、それから地球温暖化により少しずつ海面が上が ってくるわけですけれども、こういったものに中長期的にうまく追随していくための計画 的な防護水準の高度化といったもの、それから、防護ラインの外側における物流・生産機 能をいかに維持し継続させていくか、そのようなソフト・ハード両面にわたる対応体制の 整備といったことを引き続き検討したいと思います。 下に、参考までに、東京湾諸港がどのぐらい経済的な意味を持っているかということを、 港湾機能の切り口で書いてありますけれども、東京湾は全国の貨物の約2割、コンテナで 言うと4割を占めておりまして、特にコンテナを中心にする物流機能が東京湾で止まりま すと、全国の物流ネットワーク全体に非常に大きなダメージが起こるだろうと考えられま す。また、ここにはございませんけれども、電力供給機能でありますとかいろいろな機能 が東京湾沿岸域にあり、このような機能にどのような影響が生じるかを調べてみたいとい うのが我々の考えです。以上でございます。 ○秋草座長 ありがとうございました。これは先ほどと違いまして被害想定でございます ので、対応策はこれからでございますけれども、これまでのところでご質問、ご意見、あ りましたらお願いします。 審 議 -27- ○ちょっと補足説明をさせていただきますが、高潮の問題は2005年のハリケーン・カ トリーナによるニューオリンズを中心とした高潮氾濫被害の大きさを見て、政府のほうで 再検討していただいているのですが、誤解していただいては困るのは、海岸護岸とか防潮 堤の高さが、高潮の高さと比べた場合に、防潮堤の高さが高ければ災害が起こらないとい うふうに誤解しないでいただきたい。なぜかと言いますと、東京湾に台風が近づいてまい りますと、大型船舶はすべて東京湾の中心部に避難してまいります。そこでアンカーを落 とす。しかし、暴風雨が長期間継続しますと、船のアンカーというのは、単に船が動かな いようにしているだけでありますから、風速25mなんていうような風を受けますと、必 ず風下側にいかりを引きずったまま移動します。そうしますと、それが海岸護岸等に当た りますと、あっという間にそこで破堤氾濫を起こすわけで、伊勢湾、大阪湾で、かつて高 潮氾濫災害が大規模に起こっていた時というのには、必ず船舶が海岸護岸に衝突するよう な形で大規模氾濫が起こっているのです。 ということは、東京湾に面している外郭施設の背後の場所というのは、そういう危険に さらされているということなのですね。ですから、防潮堤のコンクリートの護岸が高潮の 水面より50cm高いから大丈夫だなんていうふうに考えると、とんでもないことになる ということなのですね。 それからもう一つは、千葉県はこれまで、高潮の氾濫災害を経験したことがないのです。 そして、臨海地帯に埋立地がたくさんある。こういうところが氾濫災害の脅威にさらされ るという新しい現実が出てきている。でも、そこに住んでおられる方は、そんなことは経 験したことが無いということで、これも利根川の左岸側の氾濫という経験が江戸時代以降 無いというようなものとつながっていますので、ぜひ、被災するプロセスというものにつ いての十分なご検討をいただいて、それの対策をつくっていただくということにつなげて いただきたいと思います。以上です。 ○貴重なご意見、ありがとうございました。何かコメントありますか。どなたかございま せんか。はい、どうぞ。 ○質問ですけれども、東京湾の中には公共的なスペースだけではなくて、各企業が持って いる各企業の専用スペースがたくさんあると思うのですが、そういうところのバースの耐 震化とか、これは物流生産機能の広域的な損失をこれから評価したいということですけれ ども、そういう情報というのは、国が一元的に持っていると考えてよろしいのでしょうか。 -28- ○ありがとうございます。非常に貴重なご指摘でして、実はそういうデータは、今、直接 的には国は有しておりません。新しい施設をつくる時には、港湾の施設の場合は、港湾の 技術上の基準に適合するようにするという港湾法上の規定がありますので、一定の縛りは かかっておりまして、それが守られている前提になっておりますけれども、そのような情 報をデータベースの形でしっかりと悉皆的に確認できるというものにはまだなっておりま せん。そういった課題もございますけれども、今委員ご指摘のように、堤外地にあって、 非常に重要な生産機能とかエネルギー供給機能を持つ部分ですので、幾つかの点について 突っ込んだ評価をしてみたいと思っている次第です。 ○ぜひ、よろしくお願いしたいと思います。 例えば、岸壁の耐震化みたいなことを見ていっても、公用岸壁の数は出てくるのですけ れども、企業の取り組みがどのぐらい進んでいるかというのがなかなか私たちにも見えに くいですし、例えば岸壁は大丈夫でもヤードは大丈夫なのかとか、いろいろ気になること がありますので、企業の部分も含めて精査をして、調査をしていただければと思います。 ○はい、他にございませんか。はい、どうぞ。 ○素人なので教えていただきたいのですが、私の直感では雨台風と風台風があると理解を しているのですが、この高潮の被害想定と河川の被害想定と、これは全く別の、単独の、 それぞれの被害想定として今後扱っていって、それぞれの対応策を今のこの中に盛り込ん でいくということになるのでしょうか。例えば、高潮状況の時に梅雨前線が刺激されて河 川が溢れるという被害想定までは多分やらないのだと思うのですけれども、何となく高潮 は高潮、河川は河川と別個に被害想定をやりましたという感じがしてしまうのですが、そ の辺はどう理解をすればよろしいでしょうか。 ○今ご指摘の点も、実は悩みでございまして、それで、今回の計算上は、例えば河川の氾 濫でございますとか、逆に高潮が河川に相乗して河川堤防から越流するという計算ができ なかったのですが、これは技術上の限界でして、できなかった点でございます。今おっし ゃったようなことが重ねて起こるという点についてどのように評価するか、課題だと思っ ておりまして、それも勉強したいと思っております。 ○はい、どうぞ。 ○素朴な質問ですけれども、海岸保全施設のうちに耐震化だとか、老朽化対策が必要なも のがあるというお話ですけど、おおよそどのぐらいあるものなのですか。 -29- ○今、耐震化が必要なものがどのぐらいというのは、実は直接数字を持っていないのでご ざいますけれども、大体、今全国にございます海岸保全施設の6割程度は、既に齢40歳 から50歳という非常に古いものでございます。そういったものが使用に耐えるかどうか というチェックを順次しておりますが、すべてがだめというわけでは決してないというこ とが分かってきています。戦前につくったものでもまだ立派に機能するものがあり、古い から悪いと一義的に言えないのですが、ただ、戦後、高度経済成長の前にちょうどたくさ ん台風が日本を襲った時に急いでつくった施設は、品質も非常に脆弱なものが多いので、 そういったものを中心に相当量の老朽化対策が要ると思っています。そういったことです ので、耐震上も、現在の設計基準からすると大きく劣るものも多いですので、そういった ものをチェックしていく必要があります。 東京湾につきましては、海岸堤防140kmのうちの60%は、既に耐震対策をとって おり、残りの、未調査の部分を含めるとまだ3分の1程度は、耐震性がまだ十分ではない というふうに見極められると感じております。以上です。 ○ありがとうございました。他にご意見ございますか。よろしいですか。 それではありがとうございました。ここでまた10分休憩をとりたいと思います。3時 45分から後半をやりますので、よろしくお願いします。 休 憩 ○秋草座長 それでは皆さんおそろいになりましたので、審議に戻りたいと思います。 最初に、先ほどの高潮の想定で、公開についてコメントがありますので、よろしくお願 いします。 ○国土交通省(小野) ありがとうございます。今日、2回目でございましたが、ご議論 をいただきまして、いろいろな意見をいただきました。それらを踏まえまして、この非公 開資料4と、時系列で計算いたしました6につきまして、公開をさせていただきたいと存 じます。よろしくお願いいたします。3月目途ぐらいで公開させていただきいと思います。 よろしくお願いいたします。 ○秋草座長 よろしくお願いします。 それでは後半に入ります。ガス、通信、上水道・下水道と、それぞれの代表で、まず東 京ガス株式会社の防災供給グループ防災チームからお願いします。 -30- 資料説明 ○東京ガス(細川) それでは東京ガスのほうから説明させていただきます。非公開資料 8の2ページ目をお願いいたします。 被害想定手法についてでございますが、1年前の利根川の時と全く同じ手法を使ってお ります。浸水深が2メートル以上の地区を供給が止まる地区とさせていただいております。 その考え方なのですが、家屋が倒壊するような場合は、保安の確保のためにガスの供給を 止める必要が出てくるだろうというところで、家屋が倒壊するのが、以下の真ん中のほう に書いております資料から、浸水深2メートル以上で家屋が倒壊するというふうに考えら れるというところで、ここら辺の数値を引用して2メートル以上というふうにしておりま す。また、東海豪雨の時に、東邦ガスが供給を止めた地区というのが、後から見てみます と大体水深が2メートル程度であったというところも勘案して、2メートル以上のところ を供給が止まる地区とさせていただいております。 3ページ目をお願いいたします。こちらが東京ガスの供給エリアで、浸水深が2メート ル以上になる地区というのをメッシュで計算いたしまして、そこのお客様の数をカウント したものでございまして、トータルで31万1,000件のお客様という形になります。な お、東京ガス以外にも都市ガス会社はいろいろあるのですが、今回については東京ガスの み該当したというところでございます。 4ページ目をお願いいたします。こちらが、想定の浸水深と東京ガスの供給エリアを重 ねたものでございます。青い太線で囲っておりますところが東京ガスの供給エリアでござ いまして、荒川ですとほとんど東京ガスの供給エリア内で氾濫しているという形になりま す。5ページ目が、2メートル以上のところだけをピックアップしたものでございまして、 このオレンジ色で書いてあるところにいらっしゃるお客様の数が、先ほどの31万1,00 0件というところでございます。 では、6ページをお願いいたします。ちょっと順番が前後してしまったのですが、都市 ガスの供給システムのおさらいというところでございます。こちらの絵で示しております ように、大部分の施設は道路の下に埋まっておりますガス管になっております。このガス 管でガスを送っておりますので、基本的には都市ガスは水害に非常に強いということにな ってございます。 -31- 7ページ目をお願いいたします。水害でどういった影響が想定されるかというところな のですが、まずはお客様サイド、需要家サイドというところで、家屋が倒壊いたしますと、 保安確保のために停止が必要になるだろうということで、今回はこの想定をさせていただ いております。あと、ガス機器の水没だけでは供給停止等は行いませんので、今回は想定 から外しております。 8ページをお願いいたします。供給サイド、我々サイドというところであれば、ガス管 が道路の下に入っております。その関係で、台風などではたまにありますが、ガス管の不 良部から水が入るということもあるのですが、これはなかなか予測が困難というところが ありまして、今回は想定から外させていただいております。 9ページをお願いいたします。こちらが復旧というところでございます。復旧のやり方 は、地震とほぼ同じやり方という形になりますが、基本的に水害ではガス管に被害は発生 いたしませんので、復旧のスピードは非常に速くなるというところでございます。戦力に つきましては、首都直下地震で想定した値と同じ値を使っております。復旧のスピードに ついては、地震の場合のスピードの中で一番被害が軽微な場合というのを準用いたしてお ります。その結果、復旧の作業が開始できてからということになるのですが、大体6日ぐ らいで復旧が可能というところでございます。 それから10ページでございますが、これだけ大規模な供給停止をいたしますと、東京 ガスだけでは対応ができませんので、全国のガス会社から応援をいただきます。その体制 は、すでにガス協会のほうでつくられておりまして、こちらの地震の例なのですが、阪神、 中越、中越沖で実際に救援をやっているということでございまして、これに関しては水害 に対しても適用されるというところでございます。 なお、簡易ガス協会の結果につきましては、13 ページに記載のとおりです。 以上、東京ガスでございました。 ○秋草座長 ありがとうございました。質問もあるかと思いますが、あと3人の方に続け てやっていただいて、それから質問をお受けしたいと思います。 次に、NTTドコモの災害対策室からお願いします。 ○NTTドコモ(伊藤) NTTドコモ災害対策室の伊藤でございます。 NTTグループの大規模水害対策における通信設備の被災の想定ということで、利根川 に引き続きまして発表させていただきます。スライドをお願いします。 -32- 破堤箇所は、荒川右岸21キロポイントということで、被災想定算出対象地域は、こち らの専門調査会のデータをいただきました地域を対象としております。被災の算定方法に つきましては、基本的に利根川の算定の時と同じでございます。 おさらいになりますけれども、水防対策の概要でございます。水防対策のうちの、通信 建物による水防対策ということで、敷地高、建物自体の標高による防御、それから水防板 というものがございますが、水防板による防御、それから、設備を上層階のほうに設置す るという防御、これが通信建物におきます大きな防御になります。これが浸水しますと、 設備に被害が出るという右側の図になっております。次をお願いいたします。 こちらは無線の基地局のほうの水防対策でございます。敷地高、標高による防御、それ から一般ビル等の屋上にアンテナ等無線設備を設置しているところがいっぱいありますの で、それによる防御。それから、地上に設置してあるのですけれども、それを無線設備だ けをかさ上げいたしまして、自ら守るという防御。この右側に書いておりますように、基 地局設備というのが水に浸かると、サービスが停止します。アンテナ自身は高いわけです ので、まず水に浸かることはないのですけれども、無線設備は地上に置いていますので、 サービスが停止してしまいます。 次に、浸水によります通信への影響ということでございます。まず、浸水により電力設 備が機能を停止しますと、これは交換機や伝送装置が停止しまして、通信サービスが不能 となります。丸で囲った部分が浸水しますと、サービスが停止いたします。端末系のほう でございますけれども、モジュラージャックや保安器への浸水によりまして、電話の利用 ができなくなります。状況によって利用できる場合もございますけれども、水に浸かると 基本的にはできなくなります。それから、浸水によりまして、基地局設備の機能停止、先 ほど申し上げました基地局の無線設備が水に浸かった場合には、サービスが停止いたしま す。途中の伝送のところにケーブルを張っているのですけれども、そこにつきましては、 地下とか管路を使って防水対策が施されておりまして、浸水による影響は受けません。 浸水による通信サービスへの影響で、固定電話の場合でございます。加入者交換機停止 の場合ということで、直接お客様を収容しております加入者交換機が水に浸かりますと、 通信の利用ができなくなります。それから中継交換機という上位の交換機がございますが、 こちらにつきましては、別の中継交換機でサービスを継続することができます。この浸水 エリアの赤で示した交換機、並びに遠隔収容装置等が水に浸かると、その配下のお客様が -33- 使えなくなります。また、この浸水エリア外にあっても、この加入者交換機が張り出して いる部分が浸水エリア外にあった場合も、同様にそこのお客様は使えなくなります。 次のページをお願いします。これは携帯電話の場合でございます。携帯電話も交換機を 持っておりまして、携帯電話用の交換機が浸水いたしますと、その配下の無線の基地局が 使えなくなります。同じように、移動用の中継交換機がございまして、こちらのほうは片 方がだめになっても二重化されておりますので、問題ございません。 携帯電話用交換機と基地局間の伝送路の概念図でございますが、メタルでありますと、 ドコモのビルからNTTビルにございます加入者収容装置というものを通しまして、基地 局まで伸びております。光でありますと、基地局用伝送装置というものを通しまして、光 回線で基地局まで伸びております。また、マイクロ回線を使いまして、途中無線で基地局 まで伝送路を張っているという三つの大きなパターンでございます。 次に被災パターンの想定でございます。この中にパターンが幾つか書いてございますけ れども、サービスが停止するものだけご説明いたします。固定電話の場合は、このパター ン3で、想定浸水深が標高とか水防板高の水防対策より高くなる水につかった場合は、電 力設備への浸水がありまして、通信サービスが停止いたします。携帯電話の場合のサービ スが停止するパターンでは、パターン5のところで、基地局設備に浸水がありますと、通 信サービスが停止いたします。これは先ほどから何回も申し上げている一番基本的なパ ターンになります。パターン6としましては、基地局設備自体には浸水はないのですけれ ども、NTTビルとかドコモビルにあります電力設備が浸水いたしまして、その電力の供 給を受けている交換機とか伝送設備がサービス中断しますと、基地局自体は水に浸かって いなくてもサービスが中断いたします。それから、パターン7のように、基地局設備には 浸水がないのですけれども、電力会社設備からの変電設備とか配電設備が浸水いたしまし て、電力の供給が受けられなくなりますと、これも停電のような形になりまして、サービ スが停止いたします。蓄電池によってある程度の時間はもつのですけれども、長期間にな った場合にはサービスが停止いたします。 次に固定電話でございます。この固定電話の被災想定の算出の考え方なのですけれども、 想定浸水深から水防対策を考慮しまして、通信設備への浸水影響とサービスへの影響度を 算出しております。三つ目のポツでございますけれども、サービス影響度の算出に当たり ましては、ISDNまたはメタル系の固定電話のみを対象としまして、お客様宅の電力設 備やモジュラージャック、保安器浸水による影響は対象外としております。算出方法にお -34- きましては、ずばり電力設備への浸水がある場合はサービス停止というような算出をして おります。携帯電話のほうの被災想定の考え方でございます。想定浸水深から水防対策を 考慮しまして、通信設備への浸水影響とサービスへの影響度を算出しております。一般ビ ルの屋上等に設置しております基地局ですけれども、この供給元となります電力設備につ きましては、一般ビル電力設備の水害対策基準に依存するために、ここは被害が発生しな いという前提で算出しております。この一般ビルが浸水しまして、もし電力設備が水没い たしました場合には、サービスへの影響が生じます。今回、調査会のほうからいただきま した水没の浸水深のエリアですが、そこのメッシュの中で、当然基地局が浸水エリアに入 っていれば、そこは浸水するものとします。また、そのメッシュの中の一角でも浸水した 箇所があるようなところの基地局についても、浸水としてみなして計算してございます。 それと、電力会社設備の浸水によりまして、電力供給の停止、またはNTTの専用回線に よる被災によりましての影響のある基地局も考慮しております。算出方法は、基地局の配 下に通常お客様がいらっしゃいます在圏数というものの数で出しております。 次に通信サービスへの影響数ということで、まず固定電話でございます。主なサービス 停止エリアでございますけれども、今回、荒川ということで、都心部の交換機が影響を受 ける関係から、広範囲な影響としまして、東京都の中央区、台東区、北区、荒川区、部分 的な影響としましては、東京都千代田区、文京区に影響があります。その他、埼玉県の一 部、またはごく一部の地域がサービス停止エリアとなります。被害拡大のおそれのある主 なエリアとしまして、東京都千代田区の霞が関、内幸町、丸の内、大手町、埼玉県の川口 市、ここが被害拡大のおそれのある主なエリアということになります。この意味でござい ますけれども、※印に書いてございますように、水防対策等による浸水による直接的なサー ビス影響は回避しますけれども、停電等の影響を受ける可能性のあるエリアでございます。 ビル周囲の浸水状況によりまして、非常用発電設備への燃料補給がもしできなくなります と、サービスが停止するというケースが考えられるという意味でございます。数につきま しては、表の中のピンクのところ、浸水影響によるサービス中断につきましては、15ビ ル52万1,000加入。また、水防対策等によるサービス影響を回避している中におきま しては、7ビルで25万3,000加入ということになります。この黄色の部分が、もし燃 料補給ができなくなると停止するおそれがあるということでございます。 携帯電話の影響数でございますが、一番上の①に書いてございますとおり、ドコモの基 地局設備の被災、またはNTTビル被災によるサービスに影響がある基地局数につきまし -35- ては88局、在圏数で32万7,000在圏になります。また、電力会社の設備被災により ますサービス停止基地局数は153局で、60万5,000在圏になります。ただしこれは、 後でご説明いたしますチルト救済という仮復旧で、エリアのカバーはすべて可能でござい ます。あとは細かくそれぞれのパターン別に表のほうで影響数を書いてございます。 基地局浸水による被災エリアにつきましては、利根川と荒川との比較をしてございます。 荒川のほうが、エリアとしては非常に狭い影響になります。これは電力会社設備浸水によ る被災エリアでございます。これも荒川のほうが非常に小さい。NTTビルの設備の浸水 によります被災エリアは、荒川はポイント的に狭いエリアになっております。 先ほど申し上げましたチルト救済というものでございますけれども、水没した基地局の 持っているエリアが、隣接する基地局のエリアと非常に近接しているような場合、この白 抜きの部分に仮に穴があいたとしても、右側に書いてございますように、周辺の基地局の 電波の発射角を変えて穴を埋めるというような仮復旧でございます。当然、仮復旧ですの で、屋内とかビル影の一部のエリアではつながりづらくなる可能性はございます。 仮復旧の想定の固定電話の場合ですが、電力装置の受電装置のほう、黄色くなったとこ ろ、ここのところを緊急につくりまして、そこに移動電源車で電源の救済を行います。こ の期間は、装置調達期間を含まないで、ケースにもよりますけれども、大体数週間程度を 要します。携帯電話のほうの仮復旧ですが、先ほどのように、エリアにつきましてはチル ト救済で仮復旧を行いますけれども、またこの電力関係についても仮復旧を行います。移 動電源車とか、発電機とかを持っていったり、もしエリアに穴があいた場合には移動基地 局車を持っていったりいたします。また避難所には衛星携帯電話などを貸し出します。こ の移動電源車のつなぎ込み等による仮復旧につきましては、おおむね1日から5日程度で ございます。次、お願いいたします。 仮復旧における前提条件として四つほど挙げさせていただいております。一つ目は、通 信設備や基地局設備、受電関係の設備は除きますけれども、これが浸水していないという ことでございます。それから、仮設用の資機材や発電機・燃料及び作業者などを輸送また はボート等で搬送可能でないといけないということです。それから3番目といたしまして、 仮設となる受電装置などのメーカー在庫の緊急調達が可能だということですね。4番目が、 敷地、建物内からの濁水の排水、泥土の排除・清掃が可能なこと。この四つを前提条件と して、仮復旧の想定をしております。 -36- 次に、本復旧でございます。固定電話につきましては、エンジンがついていないビルに つきましては、おおむね3カ月から4カ月、エンジンがついているところにつきましては 6カ月から12か月。エンジンも直さなくてはいけませんので、こちらのほうが長期間か かります。携帯電話のほうにつきましては、おおむね2カ月です。これは資機材を全国の ドコモ各支社から転用等も行える可能性がありますので、もっと早まる可能性がございま す。 以上でございますが、あとについております伝言板等のサービスにつきましては、参考 資料としてご覧いただければと思います。以上でございます。ありがとうございました。 ○秋草座長 どうもありがとうございました。続いて東京都水道局からお願いします。あ と、埼玉県企業局水道担当からお願いします。 ○東京都水道局(篠原) 東京都水道局朝霞浄水管理事務所長の篠原と申します。非公開 資料の10番をご覧ください。 荒川決壊時における水道施設の被害と、上水供給支障についてご説明いたします。 最初に、被害想定並びに検討条件についてご説明いたします。この図は、当局の主要な 施設の種類と位置関係を示しております。■印は浄水場、○印は給水所、それらを結ぶ青 い線は送配水の管線でございまして、これらは広域的にネットワーク化されております。 このうち浄水場、給水所の浸水及び停電による供給支障を検討対象としております。供給 支障については、板橋区の三園浄水場1カ所が停電の被害によりまして、また給水所では 荒川区の南千住給水所1カ所が、浸水及び停電の被害によりそれぞれ支障が生じるものと 想定しております。 次のページをご覧ください。最初に浄水場の被害想定及び供給支障についてでございま すが、三園浄水場に対して電力会社からの電力供給は停止する想定でございます。当浄水 場は、都市ガスを燃料とする常用発電設備を有しておりますので、次の二つのケースを想 定して検討しております。まず、想定1は、ガス供給が停止しない場合でございますので、 この時は常用発電設備の運転により、電力供給は可能となります。したがいまして、供給 支障は生じません。次に想定2ですが、これは万が一、ガス供給が停止した場合でござい ますが、非常用に備蓄している都市ガスにより、常用発電設備や運転が可能ですので、1 日程度は浄水場の機能を維持することができます。しかしながら、備蓄燃料が切れますと 浄水場機能も停止しますが、その場合でも、送配水ネットワークの活用、他の浄水場から のバックアップ等によりまして、給水支障は生じません。 -37- 次のページをご覧ください。ここでは、三園浄水場が全停止した場合の、当局の施設能 力と、水需要の関係をご説明いたします。この図の中で小さな四角で上段下段がございま すが、上段は当局の浄水場でございまして、その下は浄水処理能力でございます。まず、 水道の需要量でございますけれども、平成19年度の実績で、7月から9月の洪水期でご ざいますが、日平均で約417万立方メートルとなっております。一方、浄水場の施設能 力は、合計で日量686万立方メートルございますが、工事等により能力減を差し引いて も、日量500万立方メートル程度は確保できております。三園浄水場が全停止し、日量 30万立方メートル減量した場合におきましても、470万立方メートル程度は確保でき ますので、供給支障は生じません。 次に、給水所の被害想定及び供給支障でございますが、南千住給水所については、浸水 及び電力供給停止の想定でございます。給水所の影響ですが、配水池及び配水ポンプ所に ついては、浸水及び水没被害が想定されます。また、電気機械設備の機能障害、あるいは 停電に伴う配水ポンプの運転不能も想定されます。復旧に要する期間でございますが、配 水池や配水ポンプ所などに流入した泥土の搬出、あるいはその後の洗浄、消毒等によりま して約1カ月。また、電気機械設備等の復旧については、約6カ月の期間が必要と想定さ れております。なお、給水所停止期間中は、浸水前に給水所をバイパスする直送管の運用 管に切りかえることで、供給支障は生じません。 最後に上水の供給支障には直接的な影響はございませんが、浄水場及び給水所以外の状 況について、参考にご説明させていただきます。当局の送配水施設について、運転に関し て使っておりますテレメータ、あるいは水質計器のデータが、浸水あるいは停電の影響で、 リアルタイムに監視できなくなることが想定されます。この場合におきましても、代替施 設のデータの活用、あるいは現地でのデータ計測等により、対応が可能でございます。ま た、震災時の飲料水を備蓄しております応急給水槽については、浸水により給水槽内への 濁水の流入により飲用不適となることや、ポンプ設備の運転不能などが想定されます。こ の施設は、震災用のため、普段は使用しておりませんので、上水の供給使用には直接影響 はございません。 なお、お客様財産であります給水設備につきましても、受水槽への浸水、あるいは停電 によるポンプ設備の停止が、推定で最大約20万件程度発生することが想定され、建物内 では断水になることも想定されます。このような場合、当局といたしましては、お客様側 -38- の影響を軽減するため、仮設給水栓の設置や、給水車等による応急給水活動の実施が必要 であると想定しております。以上でございます。 ○秋草座長 続けてお願いします。 ○埼玉県企業局(栗原) 埼玉県企業局の水道担当部長の栗原でございます。今、お話の ように、大きな洪水によりまして、首都圏のライフラインに甚大な被害が生じるというこ とになります。このような場合、埼玉県の上水道におきましても、どのぐらいの供給支障 が生じるかということにつきましてご報告させていただきます。 埼玉県の上水道供給システムでございますが、東京都とは供給するシステムが異なって おりますので、最初に供給概要につきましてご説明させていただきます。 左下の、埼玉県の地図がございますけれども、着色していない箇所が秩父地域でござい まして、グレーに黒っぽく着色した場所が県の大部分でございまして、この地域に県営水 道の供給事業を実施しているものでございます。県営水道は、市町村の水道事業体に水の 卸売りをしている事業でございまして、61の水道事業体に日量184万立方メートルの 水道用水を供給してございます。県全体といたしましては65の水道事業体が、約706 万県民に日量約240万立方メートルを供給しております。このように、県営水道と市町 村水道が連携した供給システムとなっております。 次の図は、県営水道の供給区域を水色の太い線で囲んでございます。この赤の四角で囲 っているところが浄水場でございまして、大久保浄水場、それと吉見浄水場が荒川水系で ございます。あと、庄和浄水場と行田浄水場、新三郷浄水場が利根川水系と荒川水系から 取水している浄水場でございまして、細い線で結んでおりますのが、市町村に水を送るた めの送水管路となってございます。また、小さい点で書いてございますのが、県から水を 給水しております市町村の浄水場となっております。このように、浄水場間は、管網でネ ットワークがされております。総合的な水運用が可能となっております。また、市町村の 中の水道事業体におきましても、行政単位ではネットワーク化が図られております。 次の図は、供給模式図でございまして、県営水道では、川から取水した河川水を浄水場 で薬品注入し、沈殿ろ過いたしまして、きれいになった浄水を送水ポンプにおきまして市 町村水道に供給しております。市町村の水道は、地下水と県営水道の水をブレンドいたし まして、県民等の需要者へ給水をしております。また、災害時には、市町村の浄水場が停 止をしたというような場合でございましても、そこに赤の線でございますように、バイパ -39- ス管を設置しておりまして、そこから県民にダイレクトに水を送るようなシステムになっ ております。 次に、荒川右岸21キロ地点で破堤した場合に浸水被害についてご説明いたします。こ の場合、本件の影響は、さいたま市内にございます県営大久保浄水場の堤防から越水する ことによりまして、被害が発生するとしております。浸水は、越水場所が最も近い大久保 浄水場で約2.2メートルの最大水深となります。さいたま市の、市の浄水場で、約1.6 メートルの水深となります。この結果、浄水場内のポンプ設備や変電設備などに被害が発 生いたしまして、県営大久保浄水場と、5市の六つの浄水場が機能を停止することになり ます。さらに、東京電力からの電力供給支障により、新たに2市の3浄水場が機能を停止 し、浸水被害とあわせた複合被害で、県営大久保浄水場と5市の9浄水場が機能停止する 結果となりました。 今回の被害想定では、大久保浄水場の停止による被害は大変大きいものがございます。 図の黄色で示す県南西部地区の16市1町の約366万人に影響を及ぼすようになります。 また、影響の度合いにつきましては、通常の給水量約121万立方メートルに対しまして、 大久保浄水場の給水能力が91万立方メートルでございますので、このままでは、ほぼ断 水に近い状況になるというような状況でございます。そのために、被害軽減策をとる必要 があるということでございます。 大久保浄水場の停止によりまして、日量91万立方メートル、東京ドームの約7割の県 水が供給不能となります。非常事態ということですので、可能な限りの水運用を実施し、 被害軽減策を考慮して、シミュレーションを実施しました。一つ目の軽減策でございます けれども、市町村の自己水源である地下水などを最大限に活用いたしまして、約35万立 方メートルを増量し、対応するということでございます。二つ目は、左下の図に示した県 営水道の総合的な水運用により、四つの浄水場から約36万立方メートルを大久保浄水場 に応援いたします。また、市町村の浄水場が停止したところにつきましては、直送給水に よりまして、市民に水を送るということでございます。三つ目につきましては、東京都と の水の相互融通によりまして、東京都朝霞浄水場から約10万立方メートルの相互融通支 援を受けるような形ができ上がってございます。これらを合計いたしますと、約81万立 方メートルの軽減が図れます。県水の供給支障は、91万立方メートルに対しまして、約 10万立方メートルが不足するというようなことになります。 -40- 被害軽減策を行った結果、供給支障人口は、当初想定いたしました366万人から、1 64万人に減少が図られます。しかし、給水量が約10万立方メートル不足するため、川 越市や所沢などの地盤の高い県西部地域で被害の発生が予想されます。10市1町の給水 制限状況は、通常時の給水量に対しまして、約20%強の給水制限になると試算され、一 部の地域で断水とか、水の出が悪くなるということが発生すると想定しております。 次は復旧計画についてでございますけれども、復旧期間につきましては、電気設備やポ ンプ機器の修繕、交換に要する期間でございまして、おおむね3カ月から6カ月と試算し てございます。復旧に当たりましては、専門メーカーや工事業者等の補修専業者と復旧支 援体制が確立しておりますので、早期に復旧に努めていきたいと考えてございます。 最後に今後の課題についてご説明いたします。今回の浸水の原因は、堤防からの越水で あり、この堤防箇所は国土交通省がさいたま築堤事業を進めているところでございますの で、これらの早期完成に協力していきたいと考えてございます。また、県営浄水場の最適 な再配置や、管路網の強化によりまして、バックアップ体制を充実していきたいと思って おります。さらに施設更新時には、浸水対策ということで、耐水性の向上や、県域を越え た水の連携などを検討してまいりたいと思ってございます。 以上で、埼玉県からの水供給の支障報告を終わらせていただきます。 ○秋草座長 ありがとうございました。最後に、東京都下水道局から、下水道についてお 願いします。 ○東京都下水道局(小原) 東京都下水道局の小原でございます。下水道施設の被害状況、 その復旧について、私のほうからは、東京都と埼玉県の想定、両方を合わせまして報告さ せていただきます。 それでは、決壊時の大規模水害における下水道設備の被害状況とその復旧でございます。 資料の1ページをご覧いただきたいと思います。荒川上流部の越水及び東京都北区岩淵付 近の荒川右岸決壊時の浸水予想区域図によりますと、東京都では、千代田区、中央区、港 区をはじめ、8区に浸水被害が発生することとなります。また、埼玉県の影響範囲といた しましては、さいたま市、川越市、川口市、東松山市など11市2町に被害が発生するこ ととなります。 2ページ目でございますけれども、初めに下水道施設の仕組みを簡単にご説明申し上げ ます。下水道施設は、大きく分類しますと、下水を集めてまいります下水道の管路網、そ れと、これをくみ上げ処理するポンプ所。場合によっては中継ポンプ所という場合もござ -41- います。それから処理場施設、これについては終末処理場とか、水再生センター、水循環 センターというような言葉が出てまいりますが、これらに分けられます。下水道管は、他 の供給施設同様に、道路下に埋設されておりますが、他の供給施設と異なりまして自然流 下方式となっておりますので、一定の勾配をもって流れるという構造になっております。 また、管渠が深くなりますと、ポンプ所、処理場施設については、それをくみ上げるため の多くの機械や電気設備が配置されているところでございます。これらの施設が浸水いた しますと、機能に支障を生じます。これらの施設の浸水対策でございますが、平成12年 9月に発生いたしました東海豪雨、この場合は、時間最大114ミリ、総降雨量で589 ミリの降雨でございましたけれども、こういった降雨の場合にも安全性が確保できるよう にということで、施設の設備のかさ上げや、防潮扉の設置などの対策を図っているところ でございます。しかしながら、今回想定されました荒川や、前回の利根川という河川の堤 防決壊による被害は想定しておりません。 資料の3ページをご覧いただきたいと思います。東京都区部の浸水エリアを拡大したも のでございますが、ここに東京都の下水道施設をプロットしたものでございます。このエ リアには四つの水再生センターと、19カ所のポンプ所がございます。このうち、今回内 閣府からご提示いただきました各地点の浸水標高に基づきまして被害を想定したところ、 ピンク色に塗られた部分、三河島水再生センター他4カ所の水再生センターと17か所の ポンプ所で、浸水によってポンプ設備が停止いたしまして、対象流域の汚水処理並びに雨 水排除機能に支障が生ずることになります。 4ページをご覧いただきたいと思います。汚水処理についてでございますが、浸水いた します三河島水再生センター、みやぎ水再生センター、浮間水再生センターの全流域の他 に、浸水区域外ですけれども、芝浦水再生センター、江東区にあります砂町水再生センター など、一部の流域の汚水処理機能にも障害が発生いたします。芝浦、砂町につきましては、 センター自体は浸水の影響を受けませんけれども、ここへ汚水を送るポンプに被害を受け る流域については支障となります。これらの一部流域を含めまして、合計で約8,100ヘ クタール、最大150万人の住民に、汚水処理機能の影響が発生するおそれがございます。 5ページに、参考資料といたしまして、前回検討資料として添付しております。利根川 決壊時の被害想定で影響面積が7,300ヘクタール、120万人の住民に影響を与えると いう想定でしたので、今回の荒川ケースのほうが、面積、影響人口とも大きくなってきて おります。 -42- 次に6ページでございますが、この図は埼玉県における浸水エリアと、汚水処理関連施 設の位置を示したものでございます。埼玉県の場合は、決壊による浸水はありませんが、 今回の想定には、堤防から水が溢れた場合も含まれておりますので、この場合の被害につ いての話となります。埼玉県の想定浸水エリアは、11市2町の広範囲にまたがりますが、 これらの市町では、約200万人分の汚水を処理しております。この図には、市町が事業 主体である公共下水道の4カ所の処理場と、7カ所の汚水中継ポンプ場、県が管理してい る流域下水道の3カ所の処理場及び11カ所の中継ポンプ場をお示ししてあります。この 他に市や町が管理している汚水中継ポンプ場がありますが、数が多いため、水没するポン プ場のみを記載してあります。想定された浸水が発生いたしますと、処理場については赤 丸でお示しした県管理のポンプ場が1カ所、さいたま市、川口市、戸田市が管理しており ますポンプ場が合わせて7カ所、計8カ所の機能が停止することが見込まれます。 次に7ページでございますが、これらのポンプ場が停止した場合の汚水処理への影響を 示したものです。機能が停止するポンプ場がある市付近を拡大しております。このケース の場合、さいたま市、川口市、戸田市の黄色で示したエリアの約25万人が影響を受ける と想定しております。ただしこの想定は、あくまで浸水によりポンプ機能が支障となった 場合の影響を示したものです。実際には、最初のページに提示した被害想定のとおり、堤 防から溢れるほど荒川の水位が上昇すれば、荒川に放流している荒川水循環センターにつ いては放流ができなくなるということが想定されます。また、荒川に平行する新河岸川に 放流している新河岸川水循環センター、東京都の新河岸水再生センターについても、放流 が困難になると思われます。そうなれば、影響は浸水する区市町だけではなく、東京都で は最大300万人、埼玉県でも最大300万人が影響することとなります。 8ページは、先ほどと同じように、利根川の資料を参考資料として添付してございます。 利根川の想定では、影響範囲は8,700ヘクタール、60万人の住民に影響を与えるとい うことになっております。 9ページをご覧いただきたいと思います。これらの想定に基づいた施設の復旧について でございます。今回の想定は、地震などと違いまして、施設や下水道の管渠には損傷が発 生しませんが、大量の濁流水が流入してくるということが想定されます。このため、施設 の復旧には、まず市街地などを含めた地表面の浸水が解消した後に復旧作業を実施するこ とになります。施設の復旧に際しましては、まず濁流水の排水、土砂の排出、ポンプ場、 水再生センターの機器の洗浄及び乾燥、部品の交換などが必要となってまいります。 -43- 10ページをご覧いただきたいと思います。このうち、ポンプ場、水再生センター等に ついての復旧でございます。浸水状態が解消後、直ちに調査を実施しますと同時に、濁流 水の排水、土砂の排出を行うとともに、機械、電気設備の洗浄、乾燥、部品の交換をいた しまして、1カ月で応急復旧を完了させるということにしております。しかしながら、下 水処理場が持つ水処理機能につきましては、水処理のための砂ろ過とか生物処理など、さ まざまな処理の機能を復旧させる必要がありますから、これらについても2カ月から3か 月を要するものと思われます。したがいまして、機能が完全に復旧するまでの間は、塩素 接触などの簡易処理で対応することとなると考えてございます。 11ページをご覧いただきたいと思います。次に、下水管の復旧でございますけれども、 下水管の復旧に関しましても、調査と同時に清掃作業を行いまして、1カ月で復旧が完了 するものと思っております。 続いて12ページをお願いいたします。下水処理施設に支障が発生している間の期間に おきます被災した住民への支援活動でございます。東京都や埼玉県では、実際には被災し た地域の復旧活動というのは、区や市町が行うということになりますので、東京都あるい は埼玉県の区市が連携をとりまして、復旧活動や避難活動に伴うトイレ機能の確保、生活 排水への対応を図っていくこととなります。避難所などから排水される汚水につきまして は、下水道管内に一時的にためるスペースを確保いたしまして、バキューム車などで収集 いたします。汚水を近隣の水再生センターで処理するというような方法をとることになろ うかと思います。さらに市町と連携いたしまして、下水道が使用できないといった使用制 限とか、あるいは二次災害防止のための広報活動を実施していく必要があると考えられま す。 13ページでございますが、汚水処理機能が復旧されるまでの期間に影響が生じないよ うに連携をとること、また、段階的に下水の使用できる範囲を住民に周知することが必要 となってまいります。また、東京都におきましては、合流式下水道を採用しておりますの で、雨につきましても、雨水処理機能が復旧するまでの間、小規模の降雨でも浸水するお それがありますので、二次災害防止に努める必要がございます。特に最近増えております 地下室、あるいは半地下家屋などでは、復旧作業を行っている間は住民への注意喚起が必 要になってくることと思います。 最後に14ページに、復旧に当たっての留意点を記載してございます。 -44- 以上でございますが、大規模水害における下水施設の復旧について報告を終わらせてい ただきます。 ○秋草座長 どうもありがとうございました。 それでは、今の四つのテーマについての質問、またご意見を受けたいと思います。どう ぞお願いします。どうぞ。 審 議 ○すみません、無知で恐縮なのですが、東京ガスに教えていただきたいのですが、マイコ ンメーター、あれは完全防水なのでしょうか。 ○マイコンメーターは、名のとおり中にICチップが入っているのですが、完全に防水加 工をしておりますので、その点で壊れることはございません。 あと、先ほど2メートル以上でガスを止めるという想定をさせていただきましたが、も し、それ未満でメーターに起因してガスがとまったりしましたら、場合によっては出動し て対応するということは普段からしておりますので、ご心配は要らないかなと思っており ます。 ○大丈夫ということで後の話が続けにくくなったのですが、恐らく、電話なんかも各企業 とかビルに持っていらっしゃるPBXって、対策はかなり違うのだと思うのですね。何を 言いたいかというと、ライフラインの被害想定で、ライフライン会社はかなり対策をとっ ていらっしゃるのだけれども、需要家のサイドの対策というのはかなり落ちるという可能 性が高い。そういう意味で、被害想定を出していただくと同時に、事業継続というような ことに展開をしていくならば、どういうことが需要家サイドで発生してきて、そのために どういう対策が必要なのかということをどこかで記載をしていただいたほうが、多分その 計画を立てる上では役に立つのではないかという気がいたしました。13ページにありま すけれども、水道局の留意点というのを明確に書いていただいていますので、こういうふ うに書いていただくとすごくよいのではないかという印象を持ちました。 ○はい、どうぞ。 ○下水道の話なのですけれども、地震の時には下水管が壊れてトイレが使えないというよ うな話ですけれども、洪水の場合は、水が沢山ありながらトイレが使えないという話にな ります。東京都の場合は合流式だろうと思いますけれども、埼玉県なんかで分流式の下水 -45- 道の場合、ポンプ場が故障していなければ地表面が浸水していても汚水を流下させること は可能なのでしょうか。やはり不可能なのでしょうか。そこを教えてください。 ○どなたか。 ○つまり、わかりやすく申し上げると、浸水していても、トイレの便器が水面より上にあ れば用は足せるかと。こういうことなのですが。 ○分流式と言いましても、実際には浸水している状態ですと、マンホールであるとかそう いったところから水がかなり入ってきてしまいます。ですから、高台の方々がトイレを使 われると、当然浸水しているエリアのほうにそういった水も入っていくというようなこと がどうしても想定されてしまうと考えております。 ○完全に密閉されているわけじゃないのですね。 ○そうですね。 ○わかりました。 ○どうぞ。 ○最近、各地で水害が起こっている時に、ライフラインの中で一番先に水道がだめになる のですよね。みんな電気だと思っているのですけれども、まず水が来なくなるということ なのですね。これは、浄水場とか下水処理場というのは、広い面積が要りますので、市街 地にはできないのです。ところが、市街地になっていないところというのは、危ないとこ ろなのですよね。つまり、水害常襲地帯に浄水場とか下水処理場がつくられているという 現状なのですよ。ですから、溢れると真っ先にそこが水没するという宿命みたいなものが ありまして、ですから、例えば台風14号で宮崎市の下流側の浄水場が水没しまして、過 去に水没した経験があるので、6メートルの浸水でも耐えられるようになっていたのです が、6メートルを超えて、浄水場が水没しまして、送水管に土砂が入って、その除去に6 カ月かかったというようなことが起きたので、特に上水道、下水道の安全性というのは十 分配慮いただきたい。ハザードマップで浸水深が幾らだからというので鵜呑みにされない ように。非常に危険なところにあるということを考えていただきたい。 それから今日、いろいろライフラインのお話をいただいたのですが、そうすると、浸水 地域で避難所になっている小学校、中学校で、水道がだめとか、電気がだめとか、電話が だめとか、そういうランキングができる。下手をすると、行ったところで水道も電気も電 話もガスも全部だめというような避難所が実は出てくるわけで、こういう情報をいただい たら、それぞれの自治体、あるいは区の中で、利根川・荒川が氾濫した時に、どこの避難 -46- 所でどういうふうなライフラインが使えるのかどうかという評価が、実はできるはずなの です。これは、各世帯の数とかが書いてありますが、今度はこの情報を、ぜひ避難所はど うかという情報として使っていただかないと、避難所に行ったけれどもライフラインが何 も使えないということが起こり得るわけで、避難所のランキングというか、新たな指標と いうか、そういうものができるようになったと思いますので、その点、また仕事が増えま したけれども、内閣府、よろしくお願いしたいと思いますが。 ○はい、どうぞ。 ○もしかしたら、これからご説明いただくことなのかもしれませんけれども、情報インフ ラについて、今回はNTTのご説明ということでしたが、もちろん電話や携帯、インター ネットなんかも大事なのですけれども、マスメディアのほうで、例えばテレビですね。放 送とか、そういうものの情報インフラというのは、これから何か調べていくようなご予定 はありますでしょうか。 つまり、こういう大規模災害が起こった時に、一般市民はもちろん避難勧告ですとか、 復旧の状況というのは、恐らく放送を頼りにするということもありますし、自治体の災害 担当者自身も放送というものを頼りにして対策を立てるというのが現実にあると思うので す。テレビ放送あるいはラジオ放送への影響というのは、停電がなければ大丈夫というふ うに想定してよろしいのかどうか。歴史的に言えば、例えば昔の室戸台風の時なんかは、 台風が近づくのさえ放送できなかったということが歴史にもあるわけですけれども、今は そういうことはなくて、電気さえ来れば大丈夫という情報インフラの前提になっているの か、●●委員にぜひ教えていただきたいのですが。お願いいたします。 ○すみません。技術的なことですので私はわかりません。もし必要ならば技術の人間に聞 いて、またご報告させていただきます。 ○調べないとわかりませんが、多分、無停電装置を持っているという感じはしますね。無 停電というか、予備電源。1回調べたほうがいいですね。 ○放送局自体だって、他の避難所と同じように1階に何か重要なものが置いてあるとか、 あるいは取材体制ができていないとか、そんなことはないと思うのですが、ここで全く触 れなくていいぐらいちゃんとしていると思っていいのかどうかです。 ○そういう観点は抜けておりましたので、全部は無理ですけれども、幾つかの方に話をお 伺いしてみようと思います。どうもありがとうございます。 -47- ○放送もさることながら、CATV局って非常に活躍するのですが、そちらのほうが割と 軽装備だという感じがしますので、そちらのほうもちょっと。 ○そうですね。 ○大阪のほうは高潮氾濫の実績があって、メディアがどうなるかというデータが既にあり まして、ちなみに水害が起こった時に生き残れるのは、NHK大阪放送局は高台にありま すので生き残れますが、朝日新聞社、毎日新聞社、読売新聞社は全部だめですね。それか らテレビ局は、朝日放送は、最近スーパー堤防の上につくりましたので、南海地震津波の 氾濫でも大丈夫にできていますから、堂島川が溢れても大丈夫ですが、他のところは、毎 日テレビが50cmぐらいの浸水なら耐えられるのですが、テレビ局はすべて、電源車と か取材車は地下の駐車場に入れておりまして、これは水没することは間違いありませんの で、そういうことで、大阪の実績のあるところでもそうですから、多分東京あたりですと、 武蔵野台地にあるところはいいのですが、臨海部にあるところ、名前は言いませんが、非 常に危ないのではないかと思います。ちょっと調べたらわかると思います。 ○他にございませんか。 私は素人でちょっとわからないのですが、下水処理の機能支障というのは、具体的には どういう現象なんでしょうか。 ○下水道自体は、通常の下水処理しかできないものですから、こういった洪水になった場 合についても、下水処理場の周りも浸水いたします。一定の防水ラインというものも持っ ているのですけれども、その想定を超えた浸水になりますと、例えば先ほど説明しました ポンプ場のポンプ機能だとか、あるいはそれに伴います電気設備、それが水に浸かってし まいますと、他のインフラ、設備と同様に機能を停止してしまうような形になります。 ○処理場はとまるんだけれども、汚水はどんどんどこかに入ってくるわけですよね。オー バーフローして、道路に溢れるとか、そういう状況になるのですか。 ○先ほど分流式の説明があったとおり、地盤の低いところから逆流して溢れる形になりま すので、使えなくなります。 ○ちょっといいですか。地上の氾濫水をどうやって排水するかというのが大変大きな課題 になると思うのですが、要するに、ポンプ場があって、そういうものは利用できるのです が、今のお話を聞くと、下水処理場のポンプは、地上氾濫した水の処理には期待できない というふうに考えてよろしいのでしょうか。 -48- ○今回のような決壊をした時には大量の水が流れ込みます。そうなりますと、今のポンプ 場の能力をはるかに超えたものになりますので、すべてはけるというわけにはいきません。 ただ、機能が、先ほど言った防水ラインを下回っていれば、できる限りの排水はしたいと 考えております。 ○我々、今下水道のポンプ場の高さを調べていたのですが、一部のポンプ場施設は、浸水 深より高い分には使えますが、結構多くのポンプ施設が浸水して、機能麻痺する可能性が 高いです。 閉 会 ○秋草座長 他にございませんか。 大体出尽くしたようでございますので、本日はこれで議事を終了したいと思います。非 常にいろいろなご意見をいただき、ありがとうございました。また、本日十分に発言でき なかった点、後日、事務局のほうにご連絡いただければ非常にありがたいと思いますので、 遠慮なくいろいろ提案をしていただきたいと思います。 それでは、本日の審議はすべて終了したいと思います。事務局のほうから何か連絡事項 はありませんか。 ○池内参事官 次回は、配付しております開催予定に掲載しておりますが、5月29日(金) 14時から、場所は全国町村議員会館を予定しておりますので、よろしくお願いいたしま す。また、資料が非常に多うございますので、送付を希望される委員の方は、封筒にお名 前をご記入いただきまして、資料をお入れになって机の上にお置きいただければ、後日お 送りしたいと思います。 それでは、以上をもちまして、本日の専門調査会を終了させていただきます。本日は長 時間にわたり、どうもありがとうございました。 ── 了 ── -49-