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固形バイオマス・バロメータ 2009 年(EU)

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固形バイオマス・バロメータ 2009 年(EU)
NEDO海外レポート
NO.1059,
2010.2.10
【バイオマス特集】固形バイオマス
固形バイオマス・バロメータ 2009 年(EU)
−2008 年の固形バイオマス由来一次エネルギー生産量が 68.7Mtoe 注1に−
−2007∼2008 年の固形バイオマス由来一次エネルギー生産量の成長率が 2.3%に−
−2008 年の固形バイオマス由来発電量が 57.8TWh 注2に−
経済金融危機の影響でも固形バイオマスエネルギーの成長が停滞することはなかった。
欧州連合(European Union: EU)加盟国における固形バイオマス由来の一次エネルギー
生産量は 2.3%増加した。これは、2007 年対比で 150 万トン(石油換算)の増加に匹敵す
る。この成長は特に発電に現れており、2007 年対比で 10.8%(5.6TWh)の増加であった。
はじめに
1.
堅調に伸びるエネルギー
1.1
木質ペレットは活況
1.2
EU の発電量は 57.8TWh に増加
1.3
熱の販売量は 5.2Mtoe に
1.4
主要生産国の動向
1.4.1
10Mtoe 以上を生産したドイツ
1.4.2
野心を見せるフランス
1.4.3
木材エネルギー大国のフィンランド
1.4.4
目標を達成できなかったスウェーデン
2.
バイオマス熱産業:ストーブから高容量コジェネ工場へ
3.
2010 年に消費は 75 Mtoe を超える見通し
はじめに
2008 年に固形バイオマス(植物性、動物性の廃棄物や排泄物に加え、木材、木質廃棄物
から成る)は、確実に再生可能エネルギーを生産できる方法の一つであった。第一回目の
推定値によれば、固形バイオマス由来一次エネルギーは、2007 年∼2008 年の間に約 2.3%
の成長を維持し、2007 年対比で 1.5Mtoe 増加して 68.7Mtoe に達した(表 1)。
注1
注2
toe=石油換算トン、Mtoe=石油換算百万トン
1TWh(テラワットアワー)=1,000GWh=100 万 MWh=10 億 kWh
28
NEDO海外レポート
表 1-1
2010.2.10
EU における固形バイオマス由来一次エネルギー生産量* (Mtoe):2007 年
国名
ドイツ
フランス
NO.1059,
**
2007 年
合計
木材
廃棄物
木材
有機物質お
よび廃棄物
黒液
9.759
9.454
0.000
0.306
8.545
7.462
0.267
0.816
スウェーデン
8.441
0.957
4.028
0.000
3.456
フィンランド
7.238
1.706
1.858
0.019
3.656
ポーランド
4.709
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
スペイン
4.232
2.898
0.299
0.933
0.102
オーストリア
3.743
1.402
1.133
0.609
0.599
ルーマニア
3.304
0.270
0.000
ポルトガル
2.808
2.562
0.108
0.000
0.137
チェコ共和国
1.948
1.127
0.503
0.028
0.289
イタリア
1.707
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
ラトビア
1.532
0.871
0.661
0.000
0.000
デンマーク
1.464
0.598
0.175
0.692
0.000
ハンガリー
1.146
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
英国
1.006
0.279
0.145
0.583
0.000
オランダ
0.779
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
ギリシャ
1.005
0.217
0.000
リトアニア
0.732
0.337
0.395
0.000
0.000
ブルガリア
0.709
0.689
0.019
0.000
0.000
エストニア
0.731
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
ベルギー
0.540
0.200
0.245
0.055
0.040
スロバキア
0.484
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
スロベニア
0.429
0.006
0.000
アイルランド
0.171
0.015
0.099
0.057
0.000
ルクセンブル
0.015
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
キプロス
0.011
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
マルタ
0.000
0.000
0.000
0.000
0.000
3.033
0.787
0.418
ク
EU 合計
*
輸出入は含まない
67.188
**
フランス海外県を含む(119 ktoe)
29
出典:EurObserv’ER 2009
NEDO海外レポート
表 1-2
NO.1059,
2010.2.10
EU における固形バイオマス由来の一次エネルギー生産量* (Mtoe):2008 年**
国名
2008 年
合計
木材
廃棄物
木材
有機物質お
よび廃棄物
黒液
10.311
9.981
0.000
0.330
フランス***
8.959
7.887
0.267
0.805
スウェーデン
8.303
0.944
4.113
0.000
3.246
フィンランド
7.146
1.838
1.855
0.019
3.433
ポーランド
4.739
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
スペイン
4.339
2.636
0.295
1.202
0.205
オーストリア
3.934
1.448
1.114
0.755
0.616
ルーマニア
3.400
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
ポルトガル
2.785
2.552
0.102
0.000
0.131
チェコ共和国
1.961
1.029
0.635
0.034
0.263
イタリア
1.911
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
ラトビア
1.468
0.866
0.601
0.000
0.000
デンマーク
1.389
0.598
0.142
0.650
0.000
ハンガリー
1.194
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
英国
0.998
0.301
0.171
0.526
0.000
オランダ
0.893
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
ギリシャ
0.873
0.246
0.000
リトアニア
0.765
0.352
0.413
0.000
0.000
ブルガリア
0.750
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
エストニア
0.750
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
ベルギー
0.654
0.273
0.278
0.069
0.034
スロバキア
0.525
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
スロベニア
0.469
0.009
0.000
アイルランド
0.165
0.015
0.101
0.050
0.000
ルクセンブルク
0.016
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
キプロス
0.011
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
マルタ
0.002
0.000
0.000
0.002
0.000
ドイツ
EU 合計
*
輸出入は含まない
0.627
0.460
68.709
**
推計
フランス海外県を含む(122 ktoe)
出典:EurObserv’ER 2009
***
30
NEDO海外レポート
1.
NO.1059,
2010.2.10
堅調に伸びるエネルギー
固形バイオマス部門の成長は、他の再生可能エネルギー部門の成長に比べると緩やかに
見えるが、2008 年には一次エネルギー生産という点で主要なエネルギー貢献部門の一つで
あった。固形バイオマス部門の投入量は、1995 年以来 EU27 加盟国で 22Mtoe 以上増加
した。1995 年は、再生可能エネルギーに関する 1997 年欧州白書で採用された基準年であ
る(図 1)。この増加は、2008 年の EU におけるバイオ燃料消費量の 2 倍以上に匹敵する
もので、デンマーク一国の一次エネルギー総消費量より大きい。
66.0
67.1 68.6
62.2 63.3
59.0
51.1
46.3
52.0 51.7 52.8
51.9
53.1
48.7
1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
図1
*
EU27 ヵ国の 1995 年以降の固形バイオマス由来一次エネルギーの推移*(Mtoe)
Eurostat の デ ー タ ( 1995~2006 年 ) に は フ ラ ン ス 海 外 県 の 数 字 が 含 ま れ て い な い た め 、
EurObserv’ER は自己が算出した 2007 年および 2008 年の生産量の数字からフランス海外県の数
字を差し引いた。
出典: Eurostat 1995-2006、EurObserv’ER 2007-2008
生産量の多い 2 国(ドイツとフランス)は、未だに木材(薪)と木質廃棄物を区別して
いないが、EU における固形バイオマス生産の各種内訳に関する統計の正確性は向上して
いる。木質廃棄物には、枝チップ、木材の削りくず、おがくず、ペレット、製材時の廃棄
物、産業廃棄物および家具業界の廃棄物などがある。黒液とは、液体状の木質燃料のこと
で(囲み記事 1 参照)
、製紙業界からの副産物である。また、固形バイオマスの統計に含
まれるが、独立して分類されている。
31
NEDO海外レポート
NO.1059,
2010.2.10
囲み記事 1:黒液―環境に優しいエネルギーか?
黒液は、製紙業の廃棄副産物である。木材から製紙用パルプをつくるためには、
木質繊維(セルロース)を分解する必要がある。繊維を結合しているリグニンを
分解する化学処理には、白液として知られる苛性ソーダおよび亜硫酸ナトリウム
が使用される。使用済みの液体(リグニン残渣、水および抽出処理で使用された
化学物質が混ざったもの)を黒液と呼ぶ。
黒液は、製紙工場の大型バイオマスボイラーで焼却され、そのときに生産され
たエネルギーは、製紙プロセスで使用する蒸気を生産するために回収されるか、
コジェネを通じて電気を生み出す。廃棄物とバイオマスの境界線上にあるこの生
産物は、欧州の再生可能エネルギーとして計算される。
毎年 10 月後半から 11 月初旬にかけて行われる EurObserv’ER の調査中に、EU での生
産量の 79.3%(54.5Mtoe)を占める 17 ヵ国が、固形バイオマス燃料の種類別の内訳を提
供した。2008 年の一次エネルギー生産の分野では、木材および木質廃棄物が 76.4%(2007
年は 76%)
、黒液が 16.6%(2007 年は 17.5%)、その他の植物性および動物性廃棄物のカ
テゴリー(わら、穀物残渣、食品処理産業からの固形廃棄物など)は 7%(2007 年は 6.5%)
を占めた。
14 の加盟国は我々(EurObserv’ER)に対してより正確な内訳を提示した。これにより、
薪と木質廃棄物とを区別することができるようになった。この詳細な情報によれば、一次
エネルギー総生産量 34.4Mtoe のうち、木質廃棄物は約 10Mtoe(2008 年は 9.8Mtoe)を
占めていた。この数値は、固形バイオマス一次エネルギーの 28.6%に相当する。因みに、
薪は 38.7%、黒液は 23.1%、動植物の廃棄物は 9.6%である。しかし、総生産量に占める
北欧諸国(スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ラトビア、リトアニア)の比率が
高いことから、この数字が欧州全体の傾向を完全に反映しているわけではないことに注意
されたい。これら 5 ヵ国の森林産業は、自己の活動から生み出される森林副産物(特に木
質廃棄物および黒液)を回収する主要な物流拠点を開発した。
1.1
木質ペレットは活況
2∼3 年前から、薪燃焼型暖房[の普及]が木質ペレットのブームに火をつけた。スウェー
デン、デンマーク、オランダ、ベルギー、ドイツ、オーストリア、イタリアなど多数の欧
州諸国は、すでに多くの木質ペレットを生産しており、また、フランスなど他の EU の国々
でも人気を博している。
AEBIOM(欧州バイオマス協会)は、欧州における木質ペレット製造工場の数を 440、
2008 年の全工場からの生産量を約 750 万トンと見積もっている。ペレットは数多くのバ
32
NEDO海外レポート
NO.1059,
2010.2.10
イオマス原料から製造することができるため(木質廃棄物、枝チップ、短期生育木など)、
この数字は 2020 年までに 10 倍の 7,500 万トンになるとみられる。
欧州の木質ペレットメーカーは、現在 3 つの分野で発展している。ベルギーとオランダ
では、ペレットは主に発電所で使用されている。たとえば、Electrabel(ベルギーの電力
会社)は Awirs 発電所(80MWe
注3
)を転換し、現在では木質ペレットのみで運転してい
る。その使用量は、年間 40 万トンである。スウェーデンとデンマークでは、ペレットは
主として大容量、中容量のコジェネ工場で使用されている。他の国では、住宅および商業
用ビルの暖房に利用されている。
イタリアの消費
の成長は特に興味
丸太(固形バイオマス
燃料の主役)
深い数値を示して
いる。 AIEL(イ
タリア農業森林エ
ネルギー協会)に
よれば、同国には
およそ 80 万のペ
レット燃焼型屋内
用暖房機器が設置
されており、木質
ペレットの消費も
2001 年の 15 万ト
ンから 2008 年の
80 万トンに増加
した(15 万トンの
輸入を含む)
。イタ
リアでは暖房を使
用する期間が短い
ため(年間平均
120 日未満)
、セン
トラルヒーティン
グシステムが普及
しなかったことが、
消費が拡大した理
由である。
注3
MWe: megawatt electrical(メガワットエレクトリカル)。ワットエレクトリカルは電力の出力単位。
33
NEDO海外レポート
NO.1059,
2010.2.10
ドイツでは、ペレット燃焼型暖房も急増し始めている。BEE(ドイツ再生可能エネルギ
ー協会)によれば、同国には 40 の製造工場があり、2008 年の生産能力は全工場あわせて
230 万トンであった。ペレットの生産量は 2007 年の 1,126,196 トンから 2008 年の
1,468,335 トンに増加し、2009 年には 160 万トンを超えるとみられる。同協会は、2008
年のペレット燃焼型暖房機器の設置数を 2007 年より 2 万台多い 105,000 台とみている。
フランスの市場規模も同様である。我々の調査によれば、ペレット燃焼型暖房機器の販売
は、2007 年の 15,820 台(ストーブ:13,787、自動ボイラー:2,033)から 2008 年の 21,270
台(ストーブ:17,100、自動ボイラー:4,170)へと増加し、フランスのペレット燃焼型
暖房機器総設置数は 64,570 台となった。
残存木は、木粉や木質チップ
として転換のために再利用で
きる。
34
NEDO海外レポート
1.2
NO.1059,
2010.2.10
EU の発電量は 57.8TWh に増加
EU の固形バイオマスからの発電の成長は 2008 年も維持され(10.8%)、EU 全域の発
電量は 2007 年から 5.6TWh 増加し 57.8TWh になった(表 2)。多数の EU 加盟国に活動
的な固形バイオマス電力部門があるが、発電量の半分以上がドイツ、スウェーデン、フィ
ンランドに集中している(2008 年は 51.2%)
。
表2
EU における固形バイオマス由来の総発電量(TWh)
2007
国名
発電所
CHP 施設
2008*
総発電量
発電所
CHP 施設
総発電量
ドイツ
6.973
2.893
9.866
7.331
3.116
10.447
フィンランド
1.049
8.612
9.661
1.630
8.606
10.236
スウェーデン
0.000
8.496
8.496
0.000
8.899
8.899
オーストリア
1.285
1.777
3.062
1.326
1.933
3.259
ポーランド
0.000
2.360
2.360
0.000
3.200
3.200
英国
2.920
0.000
2.920
2.768
0.000
2.768
イタリア
1.666
0.815
2.482
1.929
0.817
2.746
オランダ
0.735
1.235
1.970
1.228
1.335
2.563
ベルギー
1.287
0.513
1.799
1.773
0.711
2.484
スペイン
0.272
1.281
1.553
0.676
1.212
1.888
デンマーク
0.000
1.828
1.828
0.000
1.803
1.803
ハンガリー
1.331
0.043
1.374
1.715
0.043
1.758
0.470
1.163
1.633
0.488
1.224
1.712
ポルトガル
0.166
1.366
1.532
0.163
1.338
1.501
チェコ共和国
0.372
0.596
0.968
0.514
0.656
1.171
ラトビア
0.000
0.005
0.005
0.000
0.516
0.516
スロバキア
0.000
0.441
0.441
0.000
0.450
0.450
スロベニア
0.000
0.063
0.063
0.057
0.175
0.232
リトアニア
0.000
0.048
0.048
0.000
0.060
0.060
ルーマニア
0.000
0.034
0.034
0.000
0.034
0.034
エストニア
0.000
0.024
0.024
0.000
0.025
0.025
0.001
0.013
0.014
0.002
0.016
0.018
フランス
**
アイルランド
EU 全体
*推計
18.528
33.606
52.134
21.600
36.170
57.769
**海外県を含む (2007 年は 345 GWh、2008 年は 355GWh)。
出典:EurObserv’ER 2009
固形バイオマスエネルギーを熱と電気の双方に転換するコジェネ工場は、欧州の生産の
62.6%を占めており、近年の固形バイオマスからの発電増加に寄与したのは主にコジェネ
工場の開発であった。その結果、EU の発電量はわずか 20.3TWh だった 2001 年以降、約
3 倍になった(図 2)。
35
NEDO海外レポート
NO.1059,
2010.2.10
57.4
51.8
46.2
41.5
37.2
29.5
24.4
20.3
2001
図2
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
EU27 ヵ国の 2001 年以降の固形バイオマス由来電力総生産量* の
推移(TWh)
Eurostat のデータ(1995~2006 年)にはフランス海外県の数字が含まれ
ていないため、EurObserv’ER は自己が算出した 2007 年および 2008 年の
生産量の数字からフランス海外県の数字を差し引いた。
*
出典:Eurostat 2001-2006、EurObserv’ER 2007-2008
1.3
熱の販売量は 5.2Mtoe に
表 3 に示した熱の生産量は、地域暖房ネットワークを通じて販売された熱のみが記載さ
れている。地域暖房ネットワークの熱生産工場は、余剰の熱を売却する企業、あるいはエ
ネルギーサービス事業体のいずれかにより運営されている。統計は、産業による熱生産(工
場施設の加熱のために敷地内で使用されるもの)
、屋内用暖房機器で生産された熱、ネット
ワークと接続していない集合住宅向けや工場運転用の熱を含んでいない。欧州では固形バ
イオマスで生産された熱の大部分は屋内暖房用であるため、統計を読むときにはこの点に
留意することが必要である。
大部分の国は未だに熱の販売に関する統計を発表していないため、表 3 はすべての EU
加盟国を網羅しているわけではない。とはいえ、主要なバイオマス生産国(特に、暖房ネ
ットワークを集中的に発達させたスカンジナビア諸国)が含まれているため、[EU におけ
る熱販売の傾向を]示しているといえる。実際、スウェーデン、フィンランド、デンマーク
の 3 ヵ国で、2008 年の EU 加盟国の熱の販売量の 2/3 以上(67.4%)を占めている。
36
NEDO海外レポート
表3
NO.1059,
2010.2.10
EU における加工産業の固形バイオマス由来の熱の総生産量*(Mtoe)
2007
国名
熱生産施設
2008**
CHP 施設
総生産量
熱生産施設
CHP 施設
総生産量
スウェーデン
0.762
0.758
1.520
0.430
1.413
1.843
フィンランド
0.192
0.993
1.185
0.212
0.986
1.198
デンマーク
0.258
0.224
0.482
0.275
0.223
0.498
オーストリア
0.208
0.145
0.353
0.102
0.149
0.251
ドイツ
0.210
0.237
0.447
0.263
0.330
0.593
フランス
0.096
0.112
0.209
0.102
0.149
0.251
リトアニア
0.112
0.023
0.135
0.134
0.030
0.164
ラトビア
0.094
0.008
0.102
0.091
0.009
0.101
ポーランド
0.031
0.063
0.095
0.039
0.094
0.134
イタリア
0.000
0.081
0.081
0.000
0.081
0.081
スロバキア
0.020
0.018
0.038
0.021
0.019
0.041
オランダ
0.000
0.035
0.035
0.000
0.035
0.035
ブルガリア
0.031
0.000
0.031
0.031
0.000
0.031
ハンガリー
0.007
0.011
0.017
0.007
0.011
0.017
スロベニア
0.004
0.004
0.008
0.005
0.005
0.010
EU 全体
*熱生産施設または
2.025
2.712
4.737
1.713
3.535
5.248
CHP 施設において商業目的で生産されたもの。**推計
出典:EurObserv’ER 2009
暖冬の影響で暖房需要が減少した結果、2007 年の生産量は落ち込んだが、2008 年には
熱の販売量の増加は発電と歩調を合わせ、2007 年対比で 10.8%(0.5Mtoe)の増加となっ
た(Système Solaire, Le Journal des Énergies Renouvelables、No.188 を参照)
。販売さ
れた熱の全量の 2/3 以上が、コジェネ工場から供給された(2008 年に 67.4%)
。
1.4
1.4.1
主要生産国の動向
10Mtoe 以上を生産したドイツ
バロメータの 2009 年発行版(本稿)に使用するドイツとフランスの統計に整理統合が
あったため、固形バイオマス由来エネルギーの主要生産国について再分類を行った。その
結果、2007 年時点で、ドイツは固形バイオマスエネルギー生産国としてトップの地位
(EU27 ヵ国中)に移動した注4。ドイツの再生可能エネルギーの統計の準備に携わった
注4
固形バイオマスバロメータの 2008 年版では EU 内の固形バイオマス由来一次エネルギー生産量のトップは
フランスとされていた。
(NEDO 海外レポート No.1038「固形バイオマス・バロメータ 2008 年(EU)」
参照。http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/1038/1038-11.pdf)
37
NEDO海外レポート
NO.1059,
2010.2.10
ZSW(ソーラーエネルギー、水素研究センター)によれば、固形バイオマス由来一次エネ
ルギー生産量は 2008 年に 10.3Mtoe に増加した(2007 年対比で 552ktoe の増加)
。ドイ
ツは、固形バイオマス由来一次エネルギー生産量で、節目の数字である 10Mtoe を超えた
初めての EU 加盟国である。ドイツの実績には目を見張るものがある。というのも、2002
年の 4.7Mtoe から 2008 年にはその 2 倍以上の 10.3Mtoe に生産量が増加したからである。
同国は、2002 年以降に大幅かつ持続的に固形バイオマス由来一次エネルギーの生産増加を
続けてきたのである。
固形バイオマス発電所に対して集中的に投資したことが、このような結果をもたらした
一因となっている。ドイツの(固形バイオマス由来の)電力生産量は、2002 年の 543GWh
から 2008 年の 10,447 GWh へと 19 倍に増加した。この成長により、同国は 2007 年に固
形バイオマス由来の発電量で首位になったのである注5。DBFZ(ドイツバイオマス研究セ
ンター)
によれば、
ドイツにはバイオマス発電所が 2008 年には 220 ヵ所あり、
約 1,200MWe
の発電能力がある。現在、52 の発電所が計画中もしくは建設段階にあり、2020 年までに
能力を 3,200 MWe に引き上げる予定である。この容量の 95%が EEG(再生可能エネルギ
ー源法)の対象になる。同法は 2008 年に再度修正され、固定価格買取制度注6が 2009 年 1
月 1 日から改訂された。150kW 未満の容量のバイオマス発電所は 11.67€c(セントユーロ
)/kWh、150∼500kW の場合は 9.18€c/kWh、500kW∼5MW の場合は 8.25€c/kWh を
注7
取得する。5∼20MW の容量のバイオマス発電所からの買取価格は 7.79€c/kWh である。
革新的な生産過程を用いた発電所(燃料電池生産、スターリングモーター、ガスタービン、
Rankine Cycle 注8使用など)は、2€c/kWh が追加される可能性がある。また、使用する燃
料の種類(たとえば、森林木質廃棄物、樹皮、短期生育木、エネルギー穀物)に応じて買
取価格も引き上げられる(500kW 未満の場合は最大 6€c/kWh、5MW 未満の場合は 4€
c/kWh)。もしこれらの発電設備が熱生産も行う場合には、最大 3€c/kWh 増額される(コ
ジェネボーナス)
。この新たな買取価格は、毎年 1%ずつ減額される。
再生可能エネルギーからの熱生産を推進するための改正法(修正 EEG(EEWärmeG))
は、2009 年 1 月 1 日に発効した。同法は、新築建物の所有者に対して熱需要の一部を再
生可能エネルギーで賄うよう義務づけている。たとえば、バイオマス燃料(薪、ペレット、
木質チップなど)を使用する暖房機器の場合は 50%である。こうした燃料は、ドイツの大
気質法の基準を満たす高性能ボイラーでのみ使用することができる。
注5
注6
注7
注8
固形バイオマスバロメータの 2008 年版では、2007 年時点でドイツは固形バイオマス由来の発電量でフィ
ンランド、スウェーデンに次いで第 3 位とされていた。
(NEDO 海外レポート No.1038「固形バイオマス・
バロメータ 2008 年(EU)」参照。http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/1038/1038-11.pdf)
再生可能エネルギー源によって生産された電力を一定の価格で全量買い取ることを送電事業者に義務付け
た制度。feed-in tariff(FIT)システムとも呼ばれる。
100€c=1€
ランキンサイクル:蒸気エンジンの標準循環過程の1つ。断熱変化二つと等圧変化二つからなる。Clausius
Cycle ともいう。
38
NEDO海外レポート
NO.1059,
2010.2.10
2009 年 4 月 29 日に、ドイツ政府はバイオマスのための国家行動計画(Nationaler
Biomassaktionsplan für Deutschland)を発表した。これは、さまざまなバイオエネルギ
ーを効率的かつ持続的に開発するための戦略と、この目的を達するのに必要な行動を緻密
に計画したものである。この計画は、ドイツの一次エネルギー需要におけるバイオエネル
ギーの比率を大幅に高めること(全ての機器、熱、電気、およびバイオ燃料)を目的にし
ており、2020 年の消費を 1,309PJ 注9(31.3Mtoe)にするという目標を設定した。
1.4.2
野心を見せるフランス
フランスは、CEREN(Centre d’ études et de recherches economiques sur l’ énerugie:
エネルギーに関する経済研究調査センター)による国内部門における木質エネルギー消費
に関する新調査の結果、固形バイオマス由来一次エネルギー生産量の数字を下方修正した。
最新のDGEC(direction générale de l’ énergie et du climat:エネルギーおよび気候総局)
の最新の公式統計によれば、2008年の一次エネルギー消費は約9Mtoeであった(フランス
海外県の122ktoeを含む)。これは、2007年対比で4.9%の増加で、この生産のほとんどは
住宅暖房部門の増加によるものである(2008年は6.4Mtoe)
。
他の主要な固形バイオマス生産国と比べると、フランスの発電は十分に開発されている
とはいえない(2008年は1.7TWhで、EUで13番目)
。これは、2002年に設定された固定価
格買取制度が比較的魅力に欠けることが主な原因である(4.9€c/kWhプラス0∼1.2€c/kWh
のエネルギー効率プレミアム)
。これまでに、政府は提案募集により複数年の投資プログラ
ムの目標を達成することを選択した。2003年に初めて行われた提案募集の結果、設置容量
216MWeにのぼる14のバイオマスプロジェクト(および16MWeのバイオガス工場)が選
ばれた。2006年末に行われた第2回目の提案募集の結果、設置容量314.4MWeにのぼる22
のバイオマスプロジェクトが選ばれた(平均固定買取価格は12.8€c/kWh)。第3回目の提
案募集は、現在進行中である。対象となるのは、総電力容量が250MWe になる2つのプロ
ジェクトである。応札締切日(2009年7月15日)の時点で、総電力容量が936MWe になる
106の応札があった。
2009年5月にサルコジ大統領がより魅力的な固定買取価格制度の導入を発表したため
(現行の価格の2∼3倍)、間もなく提案募集システムは必要なくなるとみられる。政府は、
環境グルネル注10の討議結果を踏まえ、集合住宅、サービス部門および産業における木材や
他の再生可能エネルギー分野を開発するため、再生可能エネルギー熱基金を創設し、バイ
オマス熱問題にも取り組んでいる。2020年までに熱消費量を2006年対比で6.2Mtoe増加さ
注9
注10
PJ:ペタジュール(1015 ジュール)
。
環境グルネル(環境グルネル懇談会)は、フランスにおける多くの関係者が参加する公開討論で、中央政
府、地方政府および組織(産業、労働者、専門家協会、およびNGO)の代表が集結し、特定のテーマにつ
いて立場を統一することを目的とする。2007 年の夏、ニコラ・サルコジ大統領によって提案された環境グ
ルネル円卓会議の目的は、今後5 年の、環境に優しく、かつ持続可能な開発問題についての公共政策の重
点を明示することである。
39
NEDO海外レポート
NO.1059,
2010.2.10
せることを目標にしている(集合
住宅/サービス部門:1.8Mtoe、産
業部門:2Mtoe、コジェネ:2.4Mtoe
で 、 こ の結果 合 計 熱消費 量 は 15
Besançon(フランス)
の薪型ボイラー工場(容
量 6MWth)
Mtoeとなる)。熱基金には、2009
∼2011年期の予算として10億ユー
ロが拠出された。2011年末までに
工業施設、農業施設用にバイオマ
スから10万toeを生産する施設の
運転を始めるという目標を達成す
るために、Ademe(環境・エネル
ギー管理庁)は2008年末に第1回目
の提案募集を行った。10月19日に
公表された提案募集結果によれば、
目標を上回る31プロジェクト(総
生産量145,000toe)が選ばれた。
同庁は、この提案募集を支援する
目的で6,060万ユーロを助成する
予定である。これは、計画されて
いる投資費用1億4,820万ユーロの
41%に相当する。こうした助成は、
少なくとも3年間は毎年行われる
計画である。
フランス市場の薪燃焼型屋内暖房機器部門は、2008年に493,100ユニットを販売し(バ
ーナー、ボイラー、密閉燃焼、インサート注11、調理器具)、税還付方式が非常に有効であ
ったことが証明された。434,856ユニットを販売した2007年に比べて13%の増加である。
2008年に50%であった税還付は、2009年に40%に引き下げられた。再生可能な熱の開発
を推進するとみられるフランス政府の別の政策は、炭素税の導入である。炭素税は2010年
1月1日に発効し、化石エネルギーごとにCO2の含有量に応じて適用される。当初は、CO2
の量1トンにつき17ユーロが設定される予定である。
1.4.3
木質エネルギー大国のフィンランド
スカンジナビアにおける問題は、その他の地域の問題とは異なる。なぜなら、スカンジ
ナビア諸国は、固形バイオマスの潜在能力をエネルギーに転換するための多数の政策をす
でに実施しているからである。
注11
コンクリート打設時に埋め込んで天井吊りボルトなどを後から取り付けられるようにする金物のこと。
(出
典:建築用語.net(http://www.architectjiten.net/ag04/ag04_049.html))
40
NEDO海外レポート
NO.1059,
2010.2.10
フィンランドの 1 人当たりの生産量は 1.348toe で、フランスの 0.140toe/人、ドイツの
0.125toe/人と比べて、固形バイオマスの使用という点で他の国をはるかに凌駕している
(表 4)。バイオマスは、同国のエネルギー消費の約 30%、発電量の 20%を占めている。
フィンランドは、すでに最先端のバイオマス変換技術を持っている(森林資源の管理のた
めの技術および大規模コジェネ工場建設技術の双方)
。
同国では、使用される各種バイオマス燃料に対する非常に正確な分類システムを適用し
ている。黒液は、固形バイオマス由来一次エネルギー生産のほぼ半分を占めている(2008
年の総生産 7.1Mtoe のうち 3.4Mtoe が黒液)
。木材および類似の廃棄物は 1.9Mtoe と見積
もられており、1.8Mtoe の薪より若干多い。他の動植物からの排泄物は、フィンランドで
はごくわずかで、0.02Mtoe(正確には 18,773toe)となっている。一次エネルギー生産に
おける若干の減少(1.3%)は、パルプ製造活動の停滞によるもので、2007 年∼2008 年に
かけて黒液の生産量が 222,000toe 減少した。しかしこの縮小は発電量には影響せず、2008
年の発電量は 10.2TWh(2007 年対比で 5.9%増)であった。コジェネ工場が、このうちの
84.1%を生み出した。
表4
EU の 1 人当たりの固形バイオマス由来一次エネルギー生産量(toe):2008 年*
toe/人
国名
toe/人
フィンランド
1.348
ハンガリー
0.119
スウェーデン
0.904
ブルガリア
0.098
ラトビア
0.646
スロバキア
0.097
エストニア
0.559
スペイン
0.096
オーストリア
0.473
ギリシャ
0.078
ポルトガル
0.262
ベルギー
0.061
デンマーク
0.254
オランダ
0.054
スロベニア
0.233
アイルランド
0.037
リトアニア
0.227
ルクセンブルク
0.033
チェコ共和国
0.189
イタリア
0.032
ルーマニア
0.158
英国
0.016
フランス**
0.140
キプロス
0.014
ドイツ
0.125
マルタ
0.006
国名
ポーランド
推計
*
0.124
EU27
フランスの海外県を含む
**
41
0.138
出典:EurObserv’ER 2009
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2010.2.10
Alholmens Kraft(フィンランド)は、
世界最大のバイオマス発電所である。
こ こ で は 電 気 ( 265MWe )、 蒸 気
(100MWth)、熱(60 MWth)が都
市地域の暖房用に生産されている。
フィンランドは、化石燃料税を導入することにより、1990 年以来バイオマスエネルギー
の開発を推進してきた。この税は 2008 年に大幅に引き上げられ(13%)
、CO2 の量 1 トン
につき 20.41 ユーロが課された(炭素 1 トンにつき 75 ユーロに匹敵)
。2009 年もこの水
準で維持された。1996 年以降、発電のために使用される化石燃料はこの税の対象外である。
ただし、全ての電力生産源(再生可能エネルギー源を含む)に課される電力特定税に衣替
えになった。この課税は、電力供給者に課せられ最終消費者に転嫁される。産業に対する
課税額(0.25€c/kWh)は、最終消費者に対する課税額より少ない(0.87€c/kWh)。再生
可能エネルギー源からの電力供給者は、使用したエネルギー源(風力、水力、リサイクル
された燃料、バイオガス、木質チップ)に応じて税金の払い戻しを受ける。2007 年以降、
木材と黒液は税金の払い戻しの対象外であるが、木質チップ由来の電力だけが 2009 年も
払い戻しの対象になっている(払い戻しの額は 0.69€c/kWh と不変)
。この額は、風力と
同じである。フィンランド政府は、2008 年 11 月に「気候およびエネルギーに関する長期
戦略」を承認した。これは、EU の再生可能エネルギー指令で設定された目標(最終総エ
ネルギー消費に対する再生可能エネルギーの比率を 38%にする)の実現を可能にする一連
の政策を計画している。この計画によれば、木製チップの生産量を現行の 2 倍または 3 倍
にすることにより、バイオマスエネルギーの使用が大幅に増加するとみられる。
1.4.4
目標を達成できなかったスウェーデン
スウェーデン政府の統計機関であるスウェーデン統計局によれば、2008 年の固形バイオ
42
NEDO海外レポート
NO.1059,
2010.2.10
マス由来一次エネルギーの生産量は若干減少し(1.6%)
、8.3Mtoe であった。この生産量
の半分は木材および類似の廃棄物からのものであり(4.1Mtoe)、黒液(3.2Mtoe)、薪
(0.9Mtoe)と続く。隣国のフィンランドと同様に、この減少の理由は、2007 年∼2008
年にかけてのパルプ製造活動の縮小に伴う黒液の生産量の減少(209,635toe 減少)に求め
られる。スウェーデンはまた、二酸化炭素税を課すことにより再生可能な熱の生産を間接
的に支援している。二酸化炭素税が 1991 年に導入された時には CO2 の量 1 トンにつき 27
ユーロであったが、現在では 108 ユーロである。
スウェーデンでは、再生可能電力を開発するためにグリーン証書注12システムを実施して
おり、2016 年の目標発電量を 2002 年の数値より 17TWh 多く設定した。しかし、発電事
業者は 2007 年以前には証書割り当て数量を達成することができなかった。そこで 2008
年に、[グリーン証書を導入した]法律を改正して 2002 年対比でプラス 10.3TWh に目標を
設定し直したが、実績はプラス 8.54TWh であった。この未達の原因は、一つには木材産
業が一時的に停滞に陥ったため、社内のコジェネ工場で燃料として使用する廃棄物の生産
量が減少したためであり、もう一つは新生産工場の建設着工が遅れたことである。発電量
が 2007 年の割り当てより低いレベルにあるため、この状況は懸念材料となっている。未
達の発電事業者に対する罰金は、未達分 1 証書につき、2007 年の SEK 注13318(31.13 ユ
ーロ)から 2008 年には SEK431(42.19 ユーロ)に設定された。この罰金は、4 月 1 日∼
翌年 3 月 31 日の証書の平均コストの 150%になっている。300∼350 SEK(29.34∼34.26
ユーロ)という年初以来の証書のコスト高は、新規生産工場の建設着手を促進する効果が
あるとみられる。
2.
バイオマス熱産業:ストーブから高容量コジェネ工場へ
欧州のバイオ熱産業は、住宅サービス市場、商業用建物市場、および産業向け市場など
高度に多様化している。従って、ボイラーメーカーは数 kW から数十 MW まで非常に広範
な容量のサービスを提供している。木材産業あるいは製紙産業むけのコジェネ工場を建設
する際には、それ以上の容量になることもある。
欧州には多数の屋内用暖房機器メーカー(木材バーナー注14、密閉燃焼、インサート、ボ
イラーなど)が存在する。市場はかなり成熟しており、極めて構造化が進んでいる。また、
ほとんどの EU 加盟国で個人住宅での木材燃焼型暖房が普及している。過去数年、同部門
は中央政府や地方政府が導入した多数の奨励制度から恩恵を受けている。これらの政府部
注12
再生可能エネルギー源によって発電を行う業者に与えられる証書。
SEK はスウェーデンの通貨、スウェーデン・クローナのこと。
注14
木質ペレットを燃料とするストーブのこと。木質ペレットは丸太、樹皮、枝葉など木質バイオマスを原料
につくられ、特に、木材工場から排出する樹皮、おが粉、端材などの残・廃材が有効活用される。これら
の原料を細かい顆粒状まで砕き、それを圧縮して棒状に固めて成形したものがペレットで、大きさは長さ
1∼2センチ、直径6∼12ミリのものが主流。(出典:日本木質ペレット協会ホームページ
(http://www.mokushin.com/jpa/pellet_01.html))
注13
43
NEDO海外レポート
NO.1059,
2010.2.10
門は、家庭が木材燃焼型暖房に切り替えるだけでなく、消費者を誘導して既存の暖房機器
をエネルギー効率のより高い暖房機器に買い換えさせることを目的としている。奨励制度
により、より革新的なメーカー(木材バーナーやペレット燃焼型ボイラーのメーカーを含
む)は事業を拡大できるようになり、こうしたメーカー(主にオーストリアやドイツのメ
ーカー)の成功によって、この種の暖房機器を販売する他国(イタリア、スウェーデン、
フランス、チェコ共和国)のブランドも広がった。
ペ レ ッ ト 暖 房 機 器 に 特 化 し た 企 業 に は 、 オ ー ス ト リ ア の メ ー カ ー Ökofen
Pelletsheizungen 社(表 5)が含まれる。同社は、2∼224kW までの製品を 13 ヵ国で販
売しており、1997 年以来 27,000 ユニットの販売実績がある。また、フランス、イタリア、
ドイツに子会社を持ち、製品の約 80%を輸出している。Ökofen 社にとって 2008 年は非
常に良い年で、7,000 ユニット以上(3,900 万ユーロに相当)以上を売上げた。同社は、
海外での事業拡大のため暖房機器設置業者のトレーニングに力を入れている。これは、木
質ペレットについて説明し、設置業者を激励し、高品質設備部門を開発し、マスコミから
の悪評を回避するための投資なのである。他の多くの企業も、家庭向けあるいは中小企業
向けのボイラー製造(数 kW から数百 kW)に特化しつつあり、2008 年に売上げを増加さ
せた。一例として、ETA Heiztechnik 社が挙げられる。同社の 2008 年の売上げは、2007
年の 2,300 万ユーロからほぼ 3 倍の 6,500 万ユーロになった。
ほかには KWB 社があるが、
2009 年の売上げを 2008 年対比で 1,000 万ユーロ増の 6,500 万ユーロと見込んでいる。
表 5 欧州の主要バイオマスボイラーメーカー(2008 年)
企業名
国名
Ökofen
オ ー ス ト 家庭・小企業用ボイラ
Heiztechnik
リア
HDG Bavaria
ドイツ
ETA Heiztechnik
ー・バーナー
家庭・小企業用ボイラ
ー・バーナー
オ ー ス ト 家庭・小企業用ボイラ
リア
ー・バーナー
オ ー ス ト 家庭・小企業用
KWB
リア
Compte-R
フランス
Weiss France
フランス
MW Power Oy
*百万€
製品の種類
フィンラ
ボイラー・バーナー
自治体・産業用
ボイラー・バーナー
ターンキー * * 熱プラ
ント・ボイラー
売上高*
従業員数
2-224kWth
39
300
4.5-380kWth
32
200
7.7-200kWth
65
120
10-300kWth
55
190
22.3
80
15
65
出力幅
250-8,000kWth
500kWth 45MWth
3-10MWe
130
200
ンド
3-25MWth
**
ややこしい初期設定が不要なこと(システムを導入して一発で動く)
。
出典:EurObserv’ER 2009
コジェネ発電所
44
NEDO海外レポート
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Ökofen 社のペレット燃
焼型ボイラー製造ライン
バイオマスのコジェネ市場および集合住宅用、産業用ボイラー設備部門の開発も、中容
量および高容量のバイオマスボイラー部門の成長を促進している。
バイオマスのコジェネは、主として森林産業および木材処理産業(製材所、紙パルプ産
業、パーティクルボード注15メーカー)に依存している。コジェネにより、こうした産業は
木質廃棄物を有効利用することができるようになる。奨励制度(固定買取価格制度、入札、
グリーン証書、設置補助)を通じて再生可能電力の生産を促進するという中央政府や地方
政府の意欲は、顧客基盤を他部門にも多様化させた。特に特殊なタイプのバイオ廃棄物(わ
ら、穀類産業の残渣、各種食品処理副産物および残渣など)の転換を図っている農業食品
(agrifood)および農業部門がそうした分野である。
もう一つの消費者開拓方法としては、地方自治体ネットワークおよびエネルギーサービ
ス企業といった形態がある。後者は、スカンジナビア諸国の行動を見習ったもので、地域
暖房ネットワークへの燃料供給用にバイオマスコジェネボイラー工場に対する投資を次第
に増やしている。
独自のバイオマス資源をもたない純粋な暖房設備企業が、市場に流入してきている。こ
うした企業の目的は、単に熱の生産コストの価格優位性を利用することであり、また、CO2
割り当てや炭素税の対象になった際に経済的理由および環境上の理由から CO2 の排出を
注15
木材その他の植物繊維質の小片(パーティクル)に合成樹脂接着剤を塗布し、一定の面積と厚さに熱圧成形
してできた板状製品。この種のボードには種々の名称があり、わが国では削片板と称されることもあるが、
JIS A5908 ではパーティクルボードという名称に統一している。
(出典:
(財)日本木材総合情報センター
「木 net」(http://www.jawic.or.jp/tech/syurui/syurui4.php))
45
NEDO海外レポート
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削減することである。
中容量および高容
量のボイラー市場の
発展は、フランスで
特に顕著である。同
国では、フランス企
業の Weiss 社およ
び Compte R 社が、
コジェネを開発する
た め に Ademe や
CRE(フランスエネ
ルギー規制委員会)
が実施した熱基金の
入札を活用した。こ
れらの企業はまた、消費者に対する付加価値税の税率を 19.6%から 5.5%へ削減すること
で暖房ネットワークにバイオマス施設を導入しようという地域当局の要請を利用した。
2008 年に Weiss France 社は 20 のターンキー注16ボイラー工場(総容量 81.3MWth)を引
き渡した。このうちの 80%は暖房ネットワークに接続され、残りの 20%は企業から直接
注文されたものであった。
Weiss 社の 2008 年の売上げは 1,500 万ユーロ
(2007 年対比 23%
増)で、2010 年には節目の数字である 2,000 万ユーロを超えるとみられる。
Compte R 社も、2008 年に 70 の設備を設置し、際だった活動を展開した。同社の 2008
年の売上げは、2007 年の 1,700 万ユーロから 2,230 万ユーロへと 30%増加した。2009 年
の売上げは 2,600 万ユーロへさらに増加すると見込んでいる。同社によれば、ボイラーの
高容量化が市場のトレンドになっているとのことである。
スカンジナビアの企業は、バイオマスコジェネ市場で良い位置につけている。フィンラ
ンドのメーカー、Wärtsila 社と Metso 社の参入はトップ記事になった。両社は 2008 年 9
月に、Metso 社の熱電部門と Wärtsila 社のバイオパワー事業を合弁した MW Power Oy
社の設立を発表した。今やこのジョイントベンチャーは、中小バイオマスコジェネ設備市
場、および中容量バイオマスボイラー設備市場における欧州最大の企業の一つである。MW
Power Oy 社は、2008 年に 200 名を雇用し、およそ 1 億 3,000 万ユーロを売り上げた。
3.
2010 年に消費は 75 Mtoe を超える見通し
欧州に打撃を与えた金融経済危機は、将来の固形バイオマスエネルギーを減速させた。
注16
完成品としてすぐに利用可能という意味合いで使われる言葉。
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スカンジナビア諸国では、固形バイオマス燃料の大半がこの危機の影響を受けて縮小した
林業の活動により生み出されるため、さらに大きな打撃を受けた。とはいうものの、現在
ほとんどの EU 加盟国は、このエネルギーを将来的により普及させようとしている。具体
的な政治的約束により、同部門関連の産業活動はすでに非常に活発になっている。
欧州諸国の政府がこのエネルギーに関心を示すのは、電力および暖房用途の双方で急速
に成長する可能性があるためである。再生可能エネルギー新指令(2009/28/EC)で設定さ
れた目標を達成しようとすれば、固形バイオマスエネルギー部門の開発が決定的に重要に
なる。
新司令の目標を達成するために、各国政府は重大な課題に対処しなければならない。す
なわち、固形バイオマス燃料の化石燃料に対する価格競争力を確実に維持しなければなら
ない。デンマークとスウェーデンでは 1990 年代初頭から導入され、今ではフランスでも
導入された炭素税は効果が証明されており、解決策の一部と考えられる。欧州諸国は、固
形バイオマス燃料の供給を確実に増加させるだけでなく、確保する必要がある。これに伴
って、スカンジナビア諸国の充実し
た例に学んで供給ネットワークを確
立し、残存木や木質廃棄物の転換を
促進し、短期生育木などエネルギー
穀物を大規模に開発する必要がある
(囲み記事 2)。固形バイオマスの収
穫が、EU の約束の達成にとって重
要な要因になるとみられる。なぜな
ら、非常に大きな可能性を秘めてい
Böblingen の バ イ オ
マス発電所の敷地に、
毎年約 2 万トンのフ
ァインウッドの削り
くずが埋められる。
るものの、廃棄物資源の再利用だけ
では十分ではないからである。これ
らの新たな活動にも、地域での雇用
を創設し富をもたらすといった大き
な利点がある。
全てのバイオエネルギー(固形バ
イオマス、液体バイオマス、バイオ
ガス、再生可能な都市廃棄物)を利
用して 149Mtoe を消費する(2010
年 末 ま で に 、 電 力 55Mtoe 、 熱
75Mtoe、運輸部門 19Mtoe)という
2005 年欧州行動計画に記載された
バイオマスの目標は、長期にわたり
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達成できなかった。この目標に対する固形バイオマスの貢献は 2010 年に 75Mtoe を超え
るとみられる。これには、EU 域外からの 1.6Mtoe の純輸入分が含まれる(図 3)。このギ
ャップを後退と考えるべきではない。この部門は 2010 年から欧州全域で普及し始め、2010
年代末を迎えるよりはるか前に節目の数字である 100Mtoe を超えると期待されているの
である。
合計:固形バイオマス由来一次エネルギー消費量
固形バイオマス由来一次エネルギー生産量
固形バイオマスの純輸入
バイオマス行動計画:
固形バイオマス+液体バイオマス+バイオガス+
再生可能な都市廃棄物
傾向
バイオマス
行動計画
図 3 欧州「バイオマス行動計画」の目標に対する固形バイオマスの寄与
度(Mtoe)
出典:EurObserv’ER 2009
注意:バイオマス行動計画は、一次エネルギー消費量の目標を設定して
いる。EurObserv’ER は、この目標値に対する固形バイオマスの寄
与度を評価するために、EU 域外からの固形バイオマスの純輸入量
の推定値を自己が算出した一次エネルギー生産量の推定値に追加
した。
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囲み記事 2:短期生育木の将来の可能性
2009 年初めに採択された欧州再生可能エネルギー新指令(2009/28/EC)は、バイオ
マスの投入量を欧州全域で確実に 100 Mtoe 以上追加的に増やすよう要請した。森林資
源(木材および樹木の副産物)、農業および食品加工産業からの廃棄物の利用は、現在
目標値を達成していない。バイオ燃料の生産はすでに農業に依存しているが、農業は熱
および電気の生産にも参加するよう義務づけられる予定である。このためには、エネル
ギーに富んだある種の植物の栽培が欧州中で普及しなければならない。こうした植物の
例としては、短期生育木(ヤナギ、ポプラなど)やミスカンザスのような植物がある。
こうした植物は、食料用でもある通常のエネルギー穀物(菜種、ビートの根、穀草類な
ど)より 1 ヘクタール当たりのエネルギー生産量がずっと多い。実際には、短期生育木
の作付けは珍しく、いくつかの先駆的な国での栽培に限られている。たとえば、スウェ
ーデンでは 2010 年に栽培面積を 3 万ヘクタールに拡大する計画があり、イタリアでは
すでに 6,000 ヘクタール、ドイツでは 2,000 ヘクタール、オーストリアでは 1,000 ヘク
タールで栽培されている。農民は自己の農地でこうした植物を栽培して最初の収穫まで
少なくとも 4 年待たなければならないため、短期生育木の開発を促進するという政治的
決断が直ちに下される必要がある。今日そのような決定が下されても、バイオマスエネ
ルギーの成長に寄与するのは 5 年先のことになるのである。
出典:DGEC(フランス)
、ZSW(ドイツ)
、Statistics Sweden、Statistics Finland、Central Statistical
Office(ポーランド)、IDAE(スペイン)
、Statistics Austria、DGGE(ポルトガル)、ENEA
(イタリア)
、Ministry of Industry and Trade(チェコ共和国)
、Central Statistical Bureau
of Latvia、ENS(デンマーク)
、CRES(ギリシャ)
、DECC(英国)
、Statistics Lithuania、
ICEDD(ブリュッセルおよびワロン地方)
、Flemish Energy Agency、Statistics Netherlands、
Statistical office of the Slovak Republic、Statistical office of Slovenia、SEI(アイルランド
共和国)、STATEC(ルクセンブルク)
、Malta Resources Authority、国際エネルギー機関
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翻訳:NEDO(担当
総務企画部
吉野
晴美)
出典:Solid Biomass Barometer
(http://www.eurobserv-er.org/pdf/baro194.pdf)
フランスの Observ’ER(Observatoire des énergies renouvelables:再生可能エネルギ
ー観測所) が作成した刊行物を許可の基に翻訳・掲載した。この刊行物は「EurObserv’ER
プロジェクト」の成果であり、その詳細は下記のとおりである。
This barometer was prepared by Observ’ER in the scope of the “EurObserv’ER” Project
which groups together Observ’ER (FR), ECN (NL), Eclareon (DE), Institute for Renewable
Energy (EC BREC I.E.O, PL), Jozef Stefan Institute (SL), with the financial support of
Ademe and DG Tren (“Intelligent Energy-Europe” programme), and published by Systèmes
Solaires, Le Journal des Énergies Renouvelables. The sole responsibility for the content of
this publication lies with the authors. It does not represent the opinion of the European
Communities. The European Commission is not responsible for any use that may be made
of the information contained therein.
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2008 年*の固形バイオマス由来一次エネルギー生産量
固形バイオマス由来一次エネルギ
ー生産量(Mtoe)
*
推計
固形バイオマス由来総発電量
(TWh)
**
フランス海外県を含む
出典:EurObserv’ER 2009
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本記事関連の NEDO 成果報告書
本記事で扱っているテーマに関連した最近の NEDO 成果報告書を以下に示します。
成果報告書を閲覧する場合は、NEDO ホームページから利用登録をしてから管理番号欄に
管理番号を入力し、検索してください。
http://www.nedo.go.jp/database/index.html
1) 平成 19 年度中間年報
新エネルギー技術フィールドテスト事業
用フィールドテスト事業
地域バイオマス熱利
木屑燃焼熱利用木材乾燥事業
管理番号 100012565
2) 平成 17 年度∼平成 18 年度成果報告書
バイオマス先導技術研究開発
バイオマスエネルギー高効率転換技術開発
選択的白色腐朽菌−マイクロ波ソルボシリスによる木
材酸素糖化前処理法の研究開発
管理番号 100010995
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