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16 2 欧州における廃棄物法の諸側面 2−1 欧州廃棄物法

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16 2 欧州における廃棄物法の諸側面 2−1 欧州廃棄物法
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欧州における廃棄物法の諸側面
2−1 欧州廃棄物法を理解するための重要な廃棄物管理における諸原則
2−1−1 汚染者負担の原則及び近接原則
汚染者負担原則は廃棄物管理のためのコストを廃棄物の占有者または発生者(占有者、
その前の占有者または生産者)が負担すべきことを意味する。
この汚染者負担減速こそ欧州の廃棄物法の基調に流れる重要な基本原則である。この考
えは環境汚染を起こしたものがその復旧のための費用を支払うとする考えである。
また近接原則は廃棄物を物を移動する前に発生源またはその近くで廃棄物発生に対する
有効策を実施またはそのための改善をする行為を言う。特に有害物質を含む物の国境を超
える移動に関してはこの近接原則が重要な意味をもつ。
2−1−2 廃棄物回避を頂点とする廃棄物管理の優先順位
EU 廃棄物枠組指令(75/442/EEC)の第3条、ドイツの循環経済廃棄物法の第4条では廃棄
物管理の優先順位が明確に謳われている。
これらは、廃棄物の量的・質的(有害性)の両面で発生が回避されることが廃棄物管理
において最も重要であることを示している。
廃棄物回避の措置には、廃棄物処理の方法を閉鎖的な循環型にすること、廃棄物になり
にくい製品、汚染の原因にならない製品も含まれる。
次にとるべき手段は廃棄物の再生である。再生にはリサイクルと代替燃料としての有効
利用がある。リサイクルには3つの意味があり、ひとつは廃棄物からの原料抽出、廃棄物
自体が持っていた目的をそこなわずして再利用すること、エネルギー利用以外のその他の
目的で有効利用されることである。
ドイツ・循環経済法第5条4項によれば、利用の義務は、利用が技術的に可能、経済的
に合理性があること、特に経済面では市場が存在するか市場を創造可能である場合に生じ
る。
また、ドイツ連邦大気汚染防止法では、新しい施設(工場や廃棄物処理施設等)を導入
する場合には発生する廃棄物の処理方法と廃棄物の発生を最小化するために採る措置の内
容に関して行政当局に書類で提出しなければならない。
2−1−3 廃棄物の混合を禁止する原則
異なった種類の廃棄物を混合しない原則は廃棄物処理をより良い条件で実行できること
を保証するための考え方で EU 及びドイツの廃棄物法で要求されている。
ドイツでは「廃棄物処理に関する技術指針」が異なる廃棄物品目同士を混合することを
16
禁止している。
ドイツの廃棄物管理当局は廃棄物発生者の廃棄物管理台帳を調べることで異なった廃棄
物の混合がなされていないかを検査する。
2−2 独・仏・英 各国における廃棄物の定義
2−2−1 ドイツにおける廃棄物の定義
ドイツにおける廃棄物の定義は循環経済廃棄物法の第 3 条に次のように定義されている。
「廃棄物」とはアネックス 1 に掲載される種類に属する動産、あるいは占有者が捨てる、
捨てようとする、または捨てなければならないものを意味する。
「利用廃棄物」とは利用(再生)される廃棄物であり、「処分廃棄物」とは利用されない廃棄
物をいう。
ドイツ・循環経済法における廃棄物の定義には以下の 3 つの基本的な要素がある。
①アネックス1が 16 ある廃棄物のすべての品目(カテゴリー)を定義する。これらの廃棄
物品目は欧州廃棄物カタログにより取り決められている。
②廃棄物の占有者の役割はごみに対する主観的な側面のみであり、主観的に捨てる意志の
あるものは廃棄物となるが、一方で客観的に捨てなければならないと判断されたものもま
た廃棄物となる。
③廃棄物は利用と処分によって区分される。
最も大きな変化は利用廃棄物の定義においてなされた。循環型廃棄物管理を追及するが
故、廃棄物利用の道を大きく開くべく経済条件に縛られない廃棄物の定義となった。
この定義の変更に伴い、循環経済法以前のドイツの廃棄物法と比較し廃棄物の範囲は大
幅に物質的に拡大され、定義が拡大された分だけ廃棄物の量も増大した。
ドイツ・循環経済法における廃棄物の定義では述べられていないが、ドイツにおいても
一般廃棄物(家庭系廃棄物)と産業廃棄物の区別は法的にも運用上においても区別されて
いる。この区別は廃棄物管理に対する責任を「公法上の処理主体」(自治体)が負うべきか
否かに関して重要である。自治体が廃棄物管理の責任を負う家庭系廃棄物に関しては、産
業廃棄物の処理を行う民間処理業者の場合と同様に循環経済法の基本原則に従うよう規定
されており、廃棄物管理コンセプト等廃棄物管理の評価をするための書類の作成も義務付
けられているものの、証明手続では廃棄物が利用または処分されるかにかかわらず、また
有害物質を含んでいる廃棄物の場合においても免除される(証明政令 1 条 2 項、
25 条 4 項)
。
なお、ドイツにおいて廃棄物の定義または区分に関して近年最も議論の対象となるのが
次の2つに関する議論である。
17
●「廃棄物か、製品か」に関する議論
この点に関して EU 及びドイツの環境関連の法令は明確な区別を提示していない。した
がって、製品か廃棄物かに関する判断は個々の事例毎になされることになり物議を醸すケ
ースが絶えない。
●「利用か処分か」に関する議論
ドイツ及び EU はともに廃棄物を処分廃棄物と利用廃棄物(物質的な利用とエネルギー
的な利用)に区分する。
こうした区分は次のような面で重要な意味をもつ。
・廃棄物の発生者または占有者の廃棄物に対する責任のあり方が変化する。
・処分廃棄物となることで証明手続の義務が生じる場合がある。
・EU の近接原理により処分廃棄物は国境の移動に対して規制が存在するが、利用廃棄物で
は規制が存在しない。
・国境をまたがる廃棄物の移動において利用廃棄異物と処分廃棄物とでは運搬に関する報
告手続が異なる。
また EU 及びドイツの法律で、利用廃棄物と処分廃棄物を明確に区別する十分な法的理
解につながるだけの記述が不充分である。
ドイツ・循環経済法では第 3 条 1 項及び 2 項、第 4 条、第 6 条、第 10 条で廃棄物処理に
おける利用と処分の区別に関して触れている。
利用と処分の区別は、その最初の基準を与えるアネックス II において述べられる手続に
対する行動の主な理由によってなされなければならない。これにより利用の手続(2B)
と処分の手続(2A)が区別される。
物質的な利用は次の条件が成り立ったときになされると考えることができる。
・経済性がある
・廃棄物中に含まれる不純物への対応が可能、利用目的の合理性がある
・利用処理工程における環境負荷が(少なくとも処分される場合よりも)低い。
また、廃棄物の利用がなされるのは廃棄物の発生者や占有者の意志のみではなく多くの
要因が互いに連繋したり客観的な評価が与えられることによって決定される。
エネルギー利用では、廃棄物は燃料のための代替品として用いられる。その行動の目的
は廃棄物の焼却処分と似ている。したがって、そこでの区別は再び客観的な基準に基づく
必要がある。しかしながら、このとき廃棄物のアネックスは役に立たず、次の 2 つの基準
に対する配慮のみが求められる。
・廃棄物のタイプや純度等の品質
・廃棄物処理の結果として起こり得る排出への配慮
しかしエネルギー利用の場合における利用廃棄物と処分廃棄物を分ける基準(廃棄物燃焼
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時 11,000kj/kg の発熱量と 75%以上の燃効率)はそれほど厳しくなく、そこで様々な異論を
挟む余地もあり、間違った運用も可能となり様々な議論を巻き起こしている。
2−2−2 フランスにおける廃棄物の定義
①フランスにおける廃棄物定義の一般的側面
フランスにおける主な廃棄物に関する法的な取り決めは、1975 年 7 月 15 日に制定され
1992 年に改正された「廃棄物の処分及び素材の再生に関する法律」(以下 フランス・廃棄
物法)によりなされている。
同法(第 1 条第 2 項)は廃棄物の定義に関して以下のように述べている。
廃棄物は製造、転換あるいは使用のプロセスにおけるすべての残余物であり、占有者が
処分したか、或いは処分する意志のあるすべての物質、素材、製品及びその他の一般的な
動産をいう。
上記の廃棄物に関する定義は、1975 年に規定され、1992 年の改正においての見直しはな
されていない。
フランスの廃棄物に関する定義は、上述のように客観的な要素(モノ(グッズ)の具体
的な処分)そして主観的な要素(占有者の廃棄物を処分する意志)に基づいてなされてい
る。
廃棄物の定義において主観的な要素が持ち込まれるのは常に必須の要件である。時には
主観的な要素だけで廃棄物を定義する場合もある。
フランスにおける廃棄物の法的な定義は明らかに EU の廃棄物管理に基づく廃棄物概念
を言及していない。したがって、それは EU 廃棄物カタログを参照しないため EU 法によ
る廃棄物定義とは明らかに異なる。フランス・廃棄物法では EU の廃棄物枠組指令のアネ
ックス1を公式に支持しておらず、また、同法を含めてフランス国内には EU 廃棄物枠組
指令の準拠法はまだ存在しない。
そのために、フランスの廃棄物定義は EU の一般的なレベルとは異なり EU には再三に
わたって適切に EU 廃棄物枠組指令に準拠する廃棄物定義に置き換えるように求められて
きた。
しかし一方で、EU 廃棄物カタログは、いわゆるフランス版「廃棄物品目表」として導入
され、フランス・廃棄物法での正式な明言なしに、フランスにおける廃棄物管理のための
廃棄物の基礎的な定義を実質的に行う目的で同表が設定され位置付られたのである。
フランス廃棄物法における廃棄物の定義では、固形(動物の死体を含めて)液体、気体、
産業が排出する熱放出も含まれる(フランス・廃棄物法第 4 条 1 項)
。
廃棄物の占有者は廃棄物を他者に無料で譲渡したり製品として販売する振りをして廃棄
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物法の適用を逃れることができないよう、フランスの廃棄物法は譲与や販売においても適
用されるよう定めている(フランス・廃棄物法第3条 4 項)
。
②廃棄物リサイクルの視点から見たフランスの廃棄物定義
フランスでは、法的な取り決め、自主規制及び経済的な手法によって廃棄物の再生を促
進する政策が採られてきた。
1975 年のフランス・廃棄物法の改正の主な目的は廃棄物のリサイクルと再生を促進する
ことにあった。それまで、個々の法令が使用済のオイル、PCB.、フロンガス(CFC)、乾
電池、蓄電池及び容器包装廃棄物に関してリサイクル及び再生の規定を行っていた。なぜ
なら、それらの廃棄物管理のベースが生産者責任に基づくためである。
そして、これらの施策の法的根拠を明確にするために 1975 年の法改正によってフラン
ス・廃棄物法がそれらに関する法的な規定と規則を明確にした(フランス・廃棄物法 第 4
章の3)
。
1992 年改正のフランス・廃棄物法では、「最終廃棄物」という概念を導入している。
「最終廃棄物」とは、もはや処理不能と考えられる廃棄物である(フランス・廃棄物法
第 2 条 2 項)
。即ち、例示的に述べるならば、当該の廃棄物を処理するには、最新の技術及
びその処理に要する経済条件が、再度使用が可能な一部分を抽出したり、汚染度を低減し
たりすることが、非常に強い有害性を有する等の条件によって現実的な処理の実施を不可
能にするような廃棄物を「最終廃棄物」と呼ぶ。
廃棄物のリサイクルと再生を促進するために、フランス・廃棄物法は 2001 年 7 月 1 日か
ら、廃棄物処分施設(埋立地)への処分は最終廃棄物と認められた廃棄物以外の廃棄物は
一切許可しないと定めている。しかしながら、2001 年 7 月 1 日という期限の予定通りの実
施はかなり難しいと多くの関係者は見ている。
フランスにおける廃棄物管理政策のもうひとつの柱が「環境ノルム」(Norme NF
Environnement)である。
「環境ノルム」は環境に対して優れた技術と環境にやさしい製品
の生産を要求する内容になっている。
また、プラスチック産業及び自動車産業においてリサイクルと熱利用を含む再生に関す
る自主規制が一定の成果をあげている。
その他には、グリーン技術の採用及び廃棄物のマテリアルリサイクルに対する経済的な
優遇措置が実施されている。
グリーン技術と持続可能な( sustainable)生産の開発及び採用に対して官民両方の多くの
機関・協会が表彰をしたり補助金を支給するなどの促進策を講じている。
2−2−3 英国における廃棄物の定義
英国における持続可能な廃棄物管理はまだ緒についたばかりである。
これまでのところ、英国では廃棄物の回避(予防措置)と再生を促すのに適切な廃棄物管
理のための法律を策定する努力がほとんどなされてこなかった。したがって、英国の廃棄
20
物はそのほとんどすべてがまだ埋立か焼却処分されている。
英国では 1 家庭当り平均約 1 トン、トータルで約 2,700 万トンの家庭廃棄物が発生して
いる。その家庭廃棄物の約 85%が埋立処分されている(ETSU 1998 年)
。
廃棄物規制のための法的権限は 1996 年4月に地域当局から新しい環境庁に移された。英
国環境庁は政府または議会によって合意された法規制を実施する役割を担う。
廃棄物管理の法的状況に関して言及すれば、英国では廃棄物管理のための法的整備の遅
れから、他の EU 各国と比較し、廃棄物及び環境に関する訴訟などの法的手続においてか
なりの部分既存の慣習法を拡大して用いなけれればならない。
しかし一方で、英国の廃棄物管理法において注目に値するひとつの特徴がある。それは、
異なるタイプの廃棄物の区分に関する詳細な規制である。
英国の廃棄物関連法のシステムはフランスに類似している。なぜなら英国の廃棄物関連
法は、家庭系廃棄物と産業系廃棄物、そして有害廃棄物と非有害廃棄物を明確に区別する
からである。
また、英国の廃棄物関連法は処分廃棄物と再生廃棄物の区別も行う。しかし、これらの
異なる諸々の法的アプローチは、ドイツのような包括的な廃棄物法によって統合されてい
ない。廃棄物の定義に関して見れば、廃棄物の一般的な定義と再生廃棄物及び処分廃棄物
の区別に関しては「廃棄物管理に関する許認可法」(the Waste Management Licensing
Regulations 1994)が行い、家庭系廃棄物と産業系廃棄物の区別に関しては、
「廃棄物管理
法」(the Controlled Waste Regulations 1992)が行っている。
英国・廃棄物管理に関する許認可法(第 1 条第 3 項)において廃棄物は次のように定義
されている。
廃棄物とは、生産者または占有者が廃棄したか廃棄する意志がある、または廃棄の必要
がある廃棄物管理許認可法の第 2 部第 4 表(Schedule 4)に示されるすべての物質または物体
である。但し、EU の廃棄物枠組指令(75/442/EEC…)に含まれない物質は除く。
さらに、英国の廃棄物関連法は、特に廃棄物の発生源により、廃棄物が正確に家庭系廃
棄物または産業系廃棄物のいずれに分類されるべきかを理解することが可能な詳細な廃棄
物リストを有している。これらの廃棄物リストは、
「スケジュール」と呼ばれ、英国・廃棄
物管理法(1992 年)のアネックス(SI 1992/558)で定められている。
類似の廃棄物リストが再生廃棄物と処分廃棄物を区別するために制定されている。両者
を 区別する主な基準は廃棄物に対してなされる廃棄物管理活動に基づくものである。した
がって、廃棄物処理と廃棄物管理オペレーションのためのリストが用意されている。これ
に照らして廃棄物を再生廃棄物と処分廃棄物に区別することになる。
再生廃棄物と処分廃棄物の区別を廃棄物管理活動に基づき行うことは、廃棄物管理施設
の認可と同様に、廃棄物処理に対して責任ある主体の廃棄物管理方法を規定する機能をも
21
っている。
2−3 欧州における廃棄物の分類
2−3−1 EU レベルにおける廃棄物の分類
EU では 1993 年 10 月 EU 廃棄物カタログ(EWA 巻末資料参照)を定義した。この EU
廃棄物カタログが EU における廃棄物の定義の基礎にある。EU の加盟国においてそれぞれ
の国内法でこの廃棄物カタログを導入しなければならない。
EU 廃棄物カタログは 20 章にまたがる 645 の廃棄物品目をもち、それらはさらに 111 の
廃棄物分類がなされている。
廃棄物カタログは 645 品目の廃棄物につき、それおぞれ単一の 6 桁のコードを与えてい
る。それぞれの桁は廃棄物の種類を特定するのに役立つように構成されている。廃棄物コ
ードはそれが処分廃棄物か再生廃棄物かにかかわらず内容物が同じであれば同一コードが
使用される。
但し、最初に設定された廃棄物コードはその廃棄物の有害性に関しては何ら示唆を与え
なかった。その後の EU 廃棄物カタログの改正時にはこの点は徐々に補われ、また改善さ
れていく予定である。
1994 年に EU の有害廃棄物リストが導入された。この有害廃棄物リストでは廃棄物カタ
ログに未掲載の廃棄物の有害性を補う情報が加えられた。この有害廃棄物リストでも廃棄
異物カタログと同様に 237 種類の有害廃棄物を特定の 6 桁コードで定義している。
この EU 有害廃棄物リストも EU 諸国共通のリストとして各国の廃棄物関連法に準拠さ
れ導入されるものである。但し、それぞれの国情に合わせて有害廃棄物の範囲を EU 有害
廃棄物リスト(アネックス III)に未掲載の廃棄物を新たに含んで掲載することは許される。
2−3−2 ドイツ・循環経済法による廃棄物分類における変化
ドイツは EU 廃棄物カタログ(EWC)政令の布告によって EU 廃棄物カタログが完全に導
入された。これによって 1999 年1月1日からすべての廃棄物施設の承認、処分証明と他の
管理上の決定は EU 廃棄物カタログに基づいてなされなければならない。
ドイツ・循環経済法添付資料1と EU 廃棄物カタログの連係に関して述べるならば、あ
らゆる動産が廃棄物と見なされたならば直ちに EU 廃棄物カタログの法的要件に従わなけ
ればならない。
ドイツのおける廃棄物品目に関する基本的な定義は 1994 年に制定の循環経済法に基づい
ていた。循環経済法は、
・処分廃棄物と利用廃棄物を区分する一方、
・監視を必要としない廃棄物、要監視廃棄物、要特別監視廃棄物を区分し、
その結果として、処分及び利用の両方の廃棄物において特別監視を要するものもあり、利
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用廃棄物で監視を要するものもある(下図参照)。
要特別監視利用廃棄物
利用廃棄物
要監視利用廃棄物
廃棄物
監視不要利用廃棄物
要特別監視処分廃棄物
処分廃棄物
要監視処分廃棄物
【図 2-3-2-1 ドイツ・循環経済法における廃棄物の定義と分類】
循環経済法に従ってタイプわけされたこれらの廃棄物は、この度追加された EU 廃棄物
カタログ政令が定める手段に従うよう求められる。
要特別監視廃棄物のリストは EU 廃棄物カタログの有害廃棄物リストに従って決定され
ることになった。
【表 2-3-2-1 EU 及びドイツにおける廃棄物カタログの比較】
EU 廃棄物カタログ
237 有害廃棄物
EWC コード
ドイツ廃棄物カタログ
処分廃棄物
利用廃棄物
246 特別監視廃棄物
246
特別監視廃棄物
(9)
408 非有害廃棄物
645
総
数
ドイツのみ追加され (9)
た特別監視廃棄物品
目数
399 監視廃棄物
79
処分廃棄物には非監 320
視廃棄物はない
654
654
総 数
ドイツのみ追加さ
れた特別監視廃棄
物品目数
監視廃棄物
非監視廃棄物
総
数
作成:OEko-Institut,Darmstadt
しかしながら、ドイツの廃棄物カタログには EU 廃棄物カタログにはない 18 の廃棄物カ
テゴリーが追加されている。これらの廃棄物はドイツでは特別に監視が必要とされる廃棄
物とされるが、それらは EU 廃棄物カタログでは有害廃棄物として認められていない。そ
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れらのうちの9品目は EU レベルでは有害性ではない廃棄物として扱われることが明確に
されているが、残りの9品目に関しては EU 廃棄物カタログでは全く言及されていない廃
棄物である。
ドイツにおける廃棄物管理法はおもに連邦が定める。ドイツ憲法(Grundgesetz)74 条
1項の 24 番によれば州(Bundeslaender)は連邦レベルの棄物管理に関する立法者が取り
決めていない場合に限りその内容を独自に定める資格を有するとしている。
連邦が循環経済廃棄物法を制定しそれに基づくいくつかの政令を制定したことにより、
それらの法が及ぶ範囲では州の立法能力は非常に限定されたと考えることが出来る。
しかしながら、監視と廃棄物処理の実際に関する監視とコントロールに対しては主に州
と地自治体が権限を握っている。それらの権限が連邦または州のどちらに帰属するかは連
邦法が定めた法律(循環経済法及び法に基づく各種政令)による。
廃棄物管理のおける義務に関しては概して次のようなことが述べられている。
第 13 条 1 項 家庭系廃棄物の排出者または占有者は自ら排出する廃棄物を自らが利用でき
ず、またはその意志がない場合に限り、州法により処理義務のある自治体(公法上の廃棄
物処理の責任主体)に当該の廃棄物を引き渡さなければならない。
ドイツでは廃棄物を利用可能にすることはすべて家庭の基本的な義務のひとつである。
そしてこの義務は同時に家庭の廃棄物管理に関する責任をもつ自治体の収集を要求し利用
する権利に対応している。
ほとんどの州において廃棄物管理は自治体(Kreise、kreisfreie Staedte)の最も基本的
な業務のひとつであるから、廃棄物管理のために責任所在を明確にする権限と義務が州に
はある。
しかし、このような自治体の廃棄物管理の責任は、容器包装や電池、使用済み自動車等
の第3者にその処理責任が移った廃棄物品目においては存在しない。また、同様に通常の
定期収集ごみ以外の分別収集される紙やガラスの資源ごみ、粗大ゴミの収集に関しても循
環経済法 13 条1項の自治体の廃棄物管理責任は存在しない。
要特別監視処分廃棄物の管理に関して州は廃棄物の処分方法が適切でないと判断した場
合、その変更に関して指導・命令を発する法的権限を有する。同様にして要特別監視利用
廃棄物の利用方法に関してもその安全性等に関して確証が十分でない場合、変更の指導ま
たは命令を発する権限を有する(循環経済法 13 条4項)
。
ほとんどすべての州は州がもつこれらの権限を十分行使している。しかし、極めて一部
の州に限り、廃棄物管理会社を設立して、家庭系廃棄物の収集・処理・処分の一切を設立
した民間企業に任せて、州をはじめとする自治体が廃棄物管理にほとんど関わらず、実際
にそれらの権限と責任を行使しない例もある。
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2−3−3 フランスにおける廃棄物の分類
EU 廃棄物枠組指令(75/442/EWC)のアネックス1及び EU 廃棄物カタログに関して、フ
ランス廃棄物法の廃棄物定義は未だそれらを包括していない。しかし、
「フランス廃棄物品
目表」(Waste Nomenclature)では、EU 廃棄物カタログを何ら修正することなく再現して
いる。
実際の廃棄物の組成に関する主な照合対象となるこの廃棄物品目表は 1997 年に設定され
た。フランス廃棄物品目表の導入は廃棄物を取り扱うすべての事業者(製造者、輸入者、
卸売り業者、輸送業者、収集業者、処理・処分業者等)に対して特別な意味をもつ。なぜ
なら EU 廃棄物カタログと全く同等のフランス廃棄物品目表に掲載された廃棄物を扱って
いる事業者は、行政または地域の条例等の特別に追加された法規の下で、廃棄物に関する
情報の提供を求められるからである。
1994 年に設定の EU 有害廃棄物リストは、「埋立地からの排水」を除いて 1997 年から
EU の有害廃棄物の分類に係る指令に導入され統合された。
一方、フランスにおいては EU 有害廃棄物リストに示される有害性に関する情報の追加
に関してはまだ国家レベルでは通達が出ていない。
法律改正等の公式な変化が未完であるにもかかわらず、EU の廃棄物概念の導入は、フラ
ンスにおける欧州全体的な廃棄物に対する見方の導入、廃棄物定義の司法上の解釈や EU
廃棄物カタログの再現等の面でフランスの廃棄物に係る法制度面での補強に関して重要な
役割を果たしているといえる。
フランスの法律はまた有害廃棄物と非有害廃棄物とを区別する。非産業系廃棄物に関し
ては自治体系一般廃棄物といくつかの特別廃棄物に区別される。それらの特別廃棄物の内、
引火性、有毒性、腐食性、爆発性等の特性をもつ「拡散性有毒廃棄物」と呼ばれる廃棄物
に関しては、自治体の特定処理施設以外で処理を行うことができない。
産業系廃棄物に関しては 1997 年に EU で導入された EU 有害廃棄物リストの廃棄物分類
に対応しようとする努力がなされた結果、「産業特別廃棄物表」と呼ばれる廃棄物品目表が
設けられ、この「産業特別廃棄物表」に準拠した廃棄物管理がなされるよう取り組みが続
けられている。
フランスにおける有害廃棄物に関する規定はいくつもの法令にわたっており、有害廃棄
物品目全体に係る一般的または調和した法規制は存在しない。したがって、
「産業特別廃棄
物」の取り決めもまた体系だった包括的な法令の下に管理されるのではなく、地域毎の計
画(産業特別廃棄物の地域別システム)のなかで管理される。なお、そうした管理計画は、
通常非産業系の特別廃棄物も含んで実施される場合が多い。
ドイツの法律と同様に、有害廃棄物であることの条件は、廃棄物の証明手続の必要性を
意味する。その他に特別廃棄物は次のような意味をもつ。
・有害廃棄物(特別廃棄物)は非有害廃棄物から分離されなくてはならない。
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・非産業的系特別廃棄物は産業系特別廃棄物に取り込まれる。
・有害廃棄物を取り扱うすべての活動(収集、運搬、再生と処分)は特別な技術的要件、
非常に厳格な管理メカニズムと情報提供義務に従わねばならない。
廃棄物の再生・処分を行う事業者は、人体や環境に及ぼす事故が発生した場合の最中ま
たはその後、あるいは不法な施設の運営を休止するかすでに改修した後においても、ある
いは不法な施設の運営を廃業した後においても、それに要する調査及び施設の安全管理に
関するすべてのコストを賄う経済的な保証をしなければならない。経済的な保証は第三者
によって引き起こされた偏見・思い込みに対する民事責任に関するコストには適用されな
い。
自治体系または産業系の特別廃棄物(有害廃棄物)の再生・処分を行っている事業者は
廃棄物の処理・保管に関する特別税を支払わねばならない。
この特別税は、自治体系または産業系の特別廃棄物を焼却または混焼(co-incineration)、
保管、物理・化学的処理、生物学的処理を行うすべての事業者に課せられる。但し、産業
系特別廃棄物のマテリアルリサイクルを行っている施設に関してのみ特例として免除され
る。
税率は廃棄物入荷量1トン当り約9ユーロであり、保管をし、なおかつその後処分する
事業者に対しては2倍の税率が適用される。処理・処分に関する税制は証明手続の脈絡に
組み込まれた一般的な義務である。
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