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あやせ下水道中期ビジョン

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あやせ下水道中期ビジョン
あやせ下水道中期ビジョン
『蓼川沿いの綾南公園』
「新時代 あやせプラン21」による将来都市像
緑と文化が薫るふれあいのまち あやせ
の実現に向けて
『蓼川』
『綾瀬市浄水管理センター』
平成23年7月
神
奈
川
県
綾
瀬
市
目
次
はじめに ............................................................1
第1章
1-1
1-2
1-3
1-4
1-5
綾瀬市下水道の概要 ..........................................3
綾瀬市下水道の事業経緯 .......................................4
綾瀬市下水道の整備状況 .......................................6
綾瀬市下水道の計画概要 .......................................8
主な下水道施設 ..............................................10
綾瀬市下水道と市民のみなさまとのパートナーシップ ............12
第2章 下水道中期ビジョン策定の目的と位置づけ .....................13
2-1 下水道中期ビジョン策定の目的 ................................14
2-2 下水道中期ビジョンの位置づけ ................................15
2-3 下水道中期ビジョンの計画期間 ................................16
第3章 綾瀬市下水道の現状と課題
綾瀬市下水道の現状と課題 総括
3-1 綾瀬市下水道の現状と課題
3-2 綾瀬市下水道の現状と課題
3-3 綾瀬市下水道の現状と課題
3-4 綾瀬市下水道の現状と課題
3-5 綾瀬市下水道の現状と課題
...................................17
...................................18
∼安全・安心∼ ....................20
∼暮らし∼ ........................23
∼環境∼ ..........................24
∼施設再生∼ ......................29
∼下水道の経営と管理∼ ............32
第4章 下水道中期ビジョンの基本理念と基本方針 .....................37
4-1 基本理念 ....................................................38
4-2 5つの柱と基本方針 ..........................................39
第5章 事業目標と主な施策 .........................................45
5-1 主な施策の体系 ..............................................46
5-2 主な施策の内容 ..............................................48
柱 1:安全・安心
∼安心して住み続けられるまちづくりに貢献します∼ .............48
柱2:暮らし
∼健康で快適な市民生活の実現に貢献します∼ ...................56
柱3:環境
∼環境への負荷を低減する都市づくりに貢献します∼ .............58
柱4:施設再生
∼安全・快適な暮らし、良好な環境を守り続けるために、
効率的な施設再生に努めます∼ .................................62
柱5:下水道の経営と管理
∼下水道サービスの維持・向上のために、経営基盤の強化に努めます∼....65
第6章 事業経営 ...................................................67
6-1 下水道財政の見通し ..........................................68
6-2 下水道経営方針 ..............................................69
第7章 下水道中期ビジョンの実現に向けて ...........................73
7-1 下水道中期ビジョンの進行管理 ................................74
7-2 下水道中期ビジョンの評価指標(アクションプログラム) ........75
用
語
集 .........................................................77
『あやせ下水道中期ビジョン』
平成23年7月
編集
綾瀬市 建設部 下水道課
神奈川県綾瀬市早川550番地
電話 0467-77-1111(代表)
はじめに
綾瀬市では、下水道事業着手以前より首都圏のベッドタウンとして大規模な住宅開
発による宅地化・工業団地の形成がされており、家庭雑排水や事業場からの排水など
により比留川、蓼川、目久尻川の汚濁が進行し、周辺環境を著しく悪化させていまし
た。また、雨水幹線が未整備であった昭和 51 年9月の集中豪雨においては、床上浸
水を含む大規模な被害が発生しました。
これらの状況をふまえ、浸水対策と公共用水域の水質保全を図る目的から公共下水
道の整備が急務となり、分流式下水道の整備に着手しました。相模川流域関連処理区
は昭和 49 年度、東部処理区は昭和 52 年度に事業着手し、昭和 62 年8月東部処理区
の深谷・上土棚の一部地域及び同年 10 月相模川流域関連処理区の小園の一部地域が
供用開始しました。
その後、順次整備区域を拡大し、平成 21 年度末現在、雨水管渠の整備率は都市計
画事業面積の約 67.6%、下水道処理人口普及率(汚水)は約 93.8%となり、市民の
安全・暮らし・環境を守っています。
しかし、依然、公共下水道未整備の地区があり、また施設の老朽化対策や耐震化対
策など、取り組むべき課題も多くあります。このため、市民の皆様へ継続的に下水道
サービスを提供し続けるために、下水道の取り組み課題を明確にし、今後 10 年間の事
業目標と具体的施策を示すものとして、
『あやせ下水道中期ビジョン』を策定しました。
■昭和 49 年度■
浸水対策と生活環境の改善を目的に、下水道事業に着手しました。
■昭和 62 年度■
一部の地区(深谷・上土棚・小園)で供用開始しました。
■平成 21 年度末現在■
下水道事業着手後、約 36 年が経過し、下水道整備を拡大してきた結果
雨水管渠は約 687ha、汚水管渠は約 1,073ha で整備が完了し、
下水道処理人口普及率(汚水)は約 93.8%に達しました。
■これからの公共下水道事業の取り組み課題■
下水道は安全・快適な市民生活と地域環境の保全のために不可欠な都市施
設となっています。市民の安全・暮らし・環境を守り続けるために、これか
らは老朽化施設の再生や安定経営などの課題にも取り組んでいく必要があ
ります。
暮らし
安全・安心
環境
経営と管理
施設再生
『あやせ下水道中期ビジョン』
市民の皆様へ継続的に下水道サービスを提供し続けるため
下水道の取組み課題を明確にし、今後 10 年間の事業目標と施策を示します。
用語:幹線、公共用水域、分流式、処理区、管渠、下水道処理人口普及率、耐震化
-1-
-2-
第1章
綾瀬市下水道の概要
- 3-
1-1
綾瀬市下水道の事業経緯
綾瀬市の下水道は、浸水対策と公共用水域の水質保全を図る目的から、相模川流域
関連処理区は昭和 49 年度に市西部の既成市街地を中心に 115ha、東部処理区は昭和
52 年度に 160ha を対象に事業着手しました。
表 1-1-1
綾瀬市下水道の事業経緯
(●:計画策定・見直しの経緯 ★:工事等の事業経緯 ◎その他の経緯)
相模川流域関連処理区
~S49年度
●昭和45年 3月
公共下水道基本計画を策定
●昭和49年12月
綾瀬都市計画第1号公共下水道計画
決定(225ha)
●昭和50年 2月
下水道法事業認可(115ha)
★昭和50年 3月
中央汚水幹線工事に着手
S50年度
★昭和52年12月
~S59年度
稲荷谷雨水幹線工事に着手
◎昭和54年10月
下水道条例制定
●昭和58年 7月
下水道運営審議会設置
東部処理区
●昭和50年3月
基本計画を策定
(1,096.2ha、処理能力73,800m3/日)
●昭和52年 5月
綾瀬都市計画第2号公共下水道計画
決定(667ha)
●昭和52年12月
下水道法事業認可(160ha)
★昭和53年12月
並塚雨水幹線工事に着手
★昭和54年 9月
上土棚汚水幹線工事に着手
★昭和57年 9月
終末処理場に着手
◎昭和62年 8月
S60年度
★昭和62年 9月
~H7年度
相模川流域下水道綾瀬寒川幹線完成
公共下水道供用開始、終末処理場
◎昭和62年10月
処理開始
公共下水道供用開始
◎平成元年 4月
上土棚中継ポンプ場運転開始
●平成 2年 3月
基本計画を見直し
●平成 4年 3月
東部公共下水道基本計画を見直し
H8年度
●平成17年 2月
●平成15年 3月
~H17年度
基本計画を見直し
基本計画を見直し
●平成18年 3月
基本計画を一部見直し
H18年度~
●平成22年度
●平成22年度
基本計画を見直し
基本計画を見直し
平成22年度 市民のみなさまへ継続的に下水道サービスを提供し続けるために、下水道の取り組み
課題を明確にし、今後10年間の事業目標と具体的施策を示した『あやせ下水道中期ビ
ジョン』の策定検討を進める。
用語:基本計画(全体計画)、公共用水域、処理区、都市計画決定、下水道法事業認可、幹線
- 4-
■綾瀬市下水道の概要■
綾瀬市の下水道は市西部を中心とした相模川流域関連処理区と、市東部を中心と
した東部処理区に区分されます。
相模川流域関連処理区
東部処理区
目
久
尻
川
東名高速道路
引
地
川
厚木基地
蓼
川
綾瀬市役所
綾瀬市
浄水管理センター
上土棚中継ポンプ場
東海道新幹線
●相模川流域関連処理区の汚水処理
●東部処理区の汚水処理
下水管渠により集められた汚水は
下水管渠により集められた汚水は、
神奈川県の相模川流域下水道幹線に
一部が上土棚中継ポンプ場を経由し
流入し、柳島管理センタ-で、関連9
て綾瀬市浄水管理センタ-に送り、処
市3町の汚水とともに処理されてい
理しています。きれいになった水は蓼
ます。きれいになった水は相模湾へ放
川へ放流しています。
流しています。
●相模川流域関連処理区の雨水排水
●東部処理区の雨水排水
まちに降った雨は雨水管渠により
まちに降った雨は雨水管渠により
集水し、一級河川・目久尻川へ排除し
集水し、二級河川・蓼川や準用河川・
ています。
比留川などへ排除しています。
用語:処理区、浄水管理センター、ポンプ場、管渠、流域下水道、一級河川、二級河川、準用河川
- 5-
1-2
綾瀬市下水道の整備状況
綾瀬市内で発生する汚水は下水管渠やポンプ場を経由して、処理場へ送られます。
相模川流域関連処理区では神奈川県が管理する柳島管理センター(茅ヶ崎市)へ、東
部処理区では綾瀬市浄水管理センターへ送り、きれいな水へ処理して、相模湾や蓼川
へ放流しています。また、綾瀬市内に降った雨は下水管渠で送り、目久尻川・比留川・
蓼川などの公共用水域へ排除しています。
浸水対策と公共用水域の水質保全目的として、相模川流域関連処理区では昭和49年
度に、東部処理区では昭和52年度に事業着手し、両処理区とも昭和62年度に供用開始
しました。昭和49年度の事業着手から約36年が経過した平成22年4月1日現在、雨水管
渠の整備率が都市計画事業面積の約67.6%、下水道処理人口普及率は約93.8%となり
ました。
整備の拡大と共に、市民の安全・暮らし・環境を守るために、現在までに整備して
きた下水道施設の適正な維持管理と再構築を進めています。
表 1-2-1 綾瀬市下水道
汚水管渠の整備状況(平成 22 年 4 月 1 日現在)
相模川流域関連処理区
東部処理区
合計
住民基本台帳人口
19,117 人
62,369 人
81,486 人
供用開始区域内人口
16,230 人
60,164 人
76,394 人
水洗化人口注1)
16,116 人
59,328 人
75,444 人
84.9%
96.5%
93.8%
99.3%
98.6%
98.8%
事業計画面積(下水道法)
約 346 ha
約 820 ha
約 1,166 ha
整備面積
312.4 ha
760.2 ha
1,072.6 ha
90.3 %
92.7 %
92.0 %
整備延長
55,536.4 m
195,405.5 m
注1)平成 22 年 3 月 31 日現在
注2)下水道処理人口普及率=供用開始区域内人口÷住民基本台帳人口
注3)水洗化率=水洗化人口÷供用開始区域内人口
注4)整備率=整備面積÷事業計画面積(下水道法)
250,941.9 m
下水道処理人口普及率
水洗化率
整備率
注2)
注3) 注1)
注4)
表 1-2-2 綾瀬市下水道
雨水管渠の整備状況(平成 22 年 4 月 1 日現在)
相模川流域関連処理区
東部処理区
合計
事業計画面積(都市計画法)
約 267 ha
約 749 ha
約 1,016 ha
整備面積
227.4 ha
459.3 ha
686.7 ha
85.2 %
61.3 %
67.6 %
31,150.4 m
59,590.5 m
整備率
注1)
整備延長
28,440.1 m
注1)整備率=整備面積÷事業計画面積(都市計画法)
用語:管渠、ポンプ場、処理区、浄水管理センター、公共用水域、事業計画、下水道処理人口普及率、
供用開始区域、水洗化率、下水道法、都市計画法
- 6-
■綾瀬市下水道 整備済み区域の概要■
綾瀬市役所
綾瀬市
浄水管理センター
上土棚中継ポンプ場
整備済み
図 1-2-1
汚水管渠整備済み区域概要(平成 21 年度末現在)
綾瀬市役所
綾瀬市
浄水管理センター
上土棚中継ポンプ場
整備済み
図 1-2-2
雨水管渠整備済み区域の概要(平成 21 年度末現在)
用語:処理場、ポンプ場、管渠
- 7-
1-3
綾瀬市下水道の計画概要
下水道事業を実施するために、
「下水道全体計画」で概ね 20~30 年後の都市像を想
定し、地域に必要な下水道施設の規模等を設定しています。この「下水道全体計画」
は土地利用・開発状況、人口動向、使用水量の動向などの社会情勢変化や、都市計画・
市総合計画などのマスタープランの見直しなどに応じて定期的に見直しを行い、効率
的な下水道事業を実施しています。
相模川流域関連処理区では昭和 45 年3月に当初全体計画を策定して以来3回、東
部処理区では昭和 50 年3月に当初全体計画を策定して以来4回(うち1回は事業計画
の中で一部変更)、「全体計画」の見直しを行っています。現行の全体計画は平成 22
年度に見直し、下記のように設定しています。
表1-3-1
綾瀬市下水道の全体計画(平成22年度見直し計画値)
相模川流域関連処理区
東部処理区
計画目標年次
綾瀬市合計
平成 42 年度
排除方式
分流式
(汚水と雨水を別々に集めて処理します)
行政面積
2,228.0 ha
下水道計画面積
640.6 ha
計画行政人口
下水道計画人口
1,102.0 ha
1,742.6 ha
80,100 人(下水道計画の推計値)
18,800 人
61,300 人
80,100 人
日平均
約 12,800 m3/日
約 34,100 m3/日
約 46,900 m3/日
日最大
約 14,200 m3/日
約 38,400 m3/日
約 52,500 m3/日
神奈川県
綾瀬市
-
柳島管理センター
浄水管理センター
標準活性汚泥法
標準活性汚泥法
-
相模湾
二級河川 蓼川
-
下水道計画汚水量
汚
水
処
理
処理場
処理方式
放流先
雨 対象降雨
時間降雨量 50mm/h
水 確率年
排 主な放流先
5年確率
一級河川 目久尻川
水
二級河川 蓼
川
-
準用河川 比留川
用語:基本計画(全体計画)、処理区、分流式、計画汚水量、日平均、日最大、処理場、標準活性汚泥法、
二級河川、一級河川、準用河川
- 8-
■綾瀬市下水道全体計画の見直し経緯■
相模川流域関連処理区
当初
策定
第1回
見直し
第2回
見直し
策定年度
目標年度
全体計画面積
(うち市街化区域)
全体計画人口
計画汚水量
(日最大)
昭和 45 年 3 月
昭和 65 年度
717.0ha
(228.0ha)
41,000 人
策定年度
目標年度
全体計画面積
(うち市街化区域)
全体計画人口
計画汚水量
(日最大)
平成 2 年 3 月
平成 22 年度
717.0ha
(226.0ha)
30,100 人
策定年度
目標年度
全体計画面積
(うち市街化区域)
全体計画人口
計画汚水量
(日最大)
平成 17 年 2 月
平成 32 年度
641.2ha
(266.0ha)
27,400 人
39,102m3/日
30,330m3/日
18,655m3/日
策定年度
昭和 50 年 3 月
目標年度
昭和 70 年度
全体計画面積
1,096.2ha
(うち市街化区域)
(677.0ha)
全体計画人口
81,000 人
計画汚水量
73,800m3/日
(日最大)
策定年度
目標年度
全体計画面積
(うち市街化区域)
全体計画人口
計画汚水量
(日最大)
平成 4 年 3 月
平成 22 年度
1,110.0ha
(699.0ha)
80,000 人
61,500m3/日
策定年度
平成 15 年 3 月
目標年度
平成 32 年度
全体計画面積
1,102.0ha
(うち市街化区域)
(758.6ha)
全体計画人口
72,600 人
計画汚水量
56,200m3/日
(日最大)
策定年度
平成 18 年 3 月
目標年度
平成 32 年度
全体計画面積
1,102.0ha
(うち市街化区域)
(758.6ha)
全体計画人口
72,600 人
計画汚水量
50,500m3/日
(日最大)
第3回
見直し
平成 22 年
見直し
東部処理区
策定年度
目標年度
全体計画面積
(うち市街化区域)
全体計画人口
計画汚水量
(日最大)
平成 22 年度
平成 42 年度
640.6ha
(269.9ha)
18,800 人
14,200m3/日
策定年度
目標年度
全体計画面積
(うち市街化区域)
全体計画人口
計画汚水量
(日最大)
用語:基本計画(全体計画)、処理区、市街化区域、計画汚水量、日最大
- 9-
平成 22 年度
平成 42 年度
1,102.0ha
(758.6ha)
61,300 人
38,400m3/日
1-4
主な下水道施設
下水道施設は、まちに降った雨を川などに流し、まちを浸水から守る「雨水排水施
設」と、家庭や事業場などから発生する汚水をきれいにして川などへ放流する「汚水
処理施設」があります。
■主な下水道施設■
処理場
ポンプ場
汚水管渠
雨水調整池
雨水管渠
■雨水排水施設の概要■
●雨水管渠
雨が降っても道路の冠水や建物の
浸水が起こらないよう、まちに降った
雨は雨水管渠を経由して川へ排水さ
れます。
綾瀬市内には現在、約 60km の雨水
管渠が設置されています。
●雨水調整池
川の能力を超える雨水を一気に流
すと、川が氾濫してしまいます。雨水
調整池は一時的に雨水を溜めて、後日
徐々に雨水を排除するように調節す
る役割があります。
綾瀬市では、住宅開発などと合わせ
て整備された 12 箇所の雨水調整池を
活用しています。
用語:管渠、ポンプ場、処理場、雨水調整池
- 10-
■綾瀬市下水道
汚水処理施設の概要■
●汚水管渠
家庭や事業場などから発生する汚
水は、道路下に埋められている汚水管
渠に流れ込み、ポンプ場や処理場へ送
られます。また、汚水管渠には点検用
のマンホールが設置されています。
綾瀬市内には現在、約 251km の汚水
管渠が設置されています。
●ポンプ場・マンホールポンプ
マンホール
ポンプ
汚水管渠が深くなる場所などでは
汚水管渠の途中にポンプ場をつくり、
汚水を処理場へ流れるようにしてい
ます。規模が小さい場合は、マンホー
ル内にポンプを設置し、汚水をくみ上
げています。
綾瀬市内には1箇所の中継ポンプ
場(上土棚中継ポンプ場)と 14 箇所
のマンホールポンプがあります。
上土棚
中継ポンプ場
●処理場(浄水管理センター)
下水管渠やポンプ場を経由し
て送られた汚水は、処理場でき
れいな水に処理されます。相模
川流域関連処理区の汚水は神奈
川県の柳島管理センター(茅ヶ
崎市)で処理し、相模湾へ放流
しています。東部処理区の汚水
は綾瀬市浄水管理センターで処
理し、蓼川へ放流しています。
綾瀬市浄水管理センター
用語:管渠、ポンプ場、処理場、マンホールポンプ
- 11-
1-5
綾瀬市下水道と市民のみなさまとのパートナーシップ
下水道は市や県が整備し維持管理していますが、下水道使用料や下水道施設を適切
に使用して頂くなど、市民のみなさまの協力が必要不可欠です。このため、綾瀬市で
は市民のみなさまに下水道をより良く知って頂くために下水道広報活動を推進して
います。
綾瀬市「浄水管理センター 夏休み親子下水道教室」
施設を見学し、下水処理の仕組みを学びます。
小・中学生と保護者を対象として、年1回夏休み期間中に実施しています。
平成 21 年度は「夏休み親子下水道教室」35 名、
「学校施設見学」91 名ご来場頂きました。
神奈川県「下水道ふれあい祭り」
国土交通省では、毎年9月 10 日を「下水道の日」と定めています。
神奈川県では「下水道の日」の関連行事として
毎年「下水道ふれあいまつり」を開催しています。
平成 21 年度は相模川流域下水道四之宮管理センターに 912 名ご来場頂きました。
用語:下水道使用料、下水処理
- 12-
第2章
下水道中期ビジョン策定の目的と位置づけ
- 13-
2-1
下水道中期ビジョン策定の目的
綾瀬市の下水道は、市民の皆様の暮らし・環境・安全を守るために整備され、その
機能を維持しています。しかし、これからは下水道の建設・普及から、施設の維持管
理と改築が重要課題となってきています。また、少子高齢化社会に向けて、より安全
で暮らしやすい環境が求められ、下水道に多くの役割が期待されています。
多種多様な役割を持つ下水道が、市民の皆様のニーズに応え、下水道サービスをよ
り向上するために、下水道中期ビジョンでは下記について検討を行います。
●下水道の基本理念 ~地域の将来像の実現に向けた下水道の考え方~
●下水道の事業目標 ~市民のみなさまのニーズに応え、分かりやすい目標像を~
●具体的施策・事業内容
●管理と経営方針
~長期的な事業運営を見据えて~
下水道へのご理解をいただくと共に、市民のみなさまのニーズをふまえ、
下水道の事業目標や具体的な施策内容を定めます。
また、市民のみなさまから頂く下水道使用料等を有効に利用し、
最も効率的な下水道を推進できるよう、下水道事業経営方針を定めます。
下水道は安全・快適なまちづくりに貢献し続けます。
用語:改築、下水道使用料
- 14-
2-2
下水道中期ビジョンの位置づけ
下水道は都市基盤・まちづくりを支える多目的な施設であり、都市計画や流総計画
などと密接な関係があります。このため、『あやせ下水道中期ビジョン』は本市の総
合計画「新時代 あやせプラン21」と都市計画「あやせ都市マスタープラン」を踏
まえ、関連する計画と整合を図りながら、本市の将来像を実現するものとして位置づ
けられます。
総合計画
「新時代 あやせプラン21」
都市計画
「あやせ都市マスタープラン」
関連する計画
関連する計画など
・改定
かながわ下水道 21
・境川等流総計画
「あやせ下水道中期ビジョン」
第1章 綾瀬市下水道の概要
・綾瀬市環境基本計画
・綾瀬市地域防災計画
など
第2章 下水道中期ビジョン策定の目的と位置づけ
・相模川流総計画
第3章 綾瀬市下水道の現状と課題
・神奈川県生活排水
処理施設整備構想
・相模川
流域下水道計画
市民ニーズなど
第4章 下水道中期ビジョンの基本理念と基本方針
・まちづくり市民
第5章 事業目標と主な施策
アンケート調査報告書
第6章 事業経営
など
第7章 下水道中期ビジョンの実現に向けて
下水道の各種事業実施
管渠・処理場整備、浸水対策、地震対策、施設の長寿命化など
図 2-2-1
下水道中期ビジョンの位置づけ
用語:都市計画、新時代 あやせプラン21、あやせ都市マスタープラン、
流域別下水道整備総合計画(流総計画)、生活排水処理施設整備構想、流域下水道、環境基本計画、
地域防災計画、管渠、処理場、長寿命化
- 15-
2-3
あやせ下水道中期ビジョンの計画期間
『あやせ下水道中期ビジョン』は、本市下水道が目指す将来像の実現に向けて、今
後 10 年間の事業目標と具体的施策を示すもので、平成 32 年度を目標年とします。事
業計画はアクションプログラム(平成 23~27 年度の5年間)、中期計画(平成 32 年
度まで)に分類し、計画策定します。
また、
『あやせ下水道中期ビジョン』は PDCA サイクルにより概ね5年ごとに事業評
価を行い、必要に応じて計画見直しを行い、より効率的・効果的な下水道事業運営を
目指します。
あやせ下水道中期ビジョン
目標年次:平成 32 年度
●中期計画●
目標年次:平成 32 年度
あやせ都市マスタープランと整合を図り、事業目標と施策内容を定めます
●アクションプログラム●
目標年次:平成 27 年度
実施事業の内容や事業箇所、事業規模等を定めます
5 年ごとに
下水道中期ビジョンの
改善見直しを行い、
より効率的・効果的な
事業実施を目指します
アクションプログラム(平成 23~27 年度)
中期計画(
~平成 32 年度)
P(PLAN)
D(DO)
C(CHECK)
A(ACT)
各種計画策定
各種事業の実施
各種事業の評価・分析
下水道中期ビジョンの
改善見直し
図 2-3-1
下水道中期ビジョン目標年次と PDCA サイクルによる実行計画
用語:PDCA サイクル、あやせ都市マスタープラン
- 16-
第3章
綾瀬市下水道の現状と課題
-17-
綾瀬市下水道の現状と課題
総括
綾瀬市の下水道は、安全・快適な市民生活と地域環境保全を目的として整備され、
その機能を維持しています。今後も下水道サービスを維持・向上させるためには、下
水道施設再生や安定的な経営と管理も重要です。
第3章では、下水道に求められる役割と合わせ、「1.安全・安心」「2.暮らし」
「3.環境」
「4.施設再生」
「5.経営と管理」の5つの柱に分類して、下水道事業
の現状把握を行い、継続的に下水道運営をしていく上での課題を整理しました。
表 3-1
5つの柱
柱1
安全・安心
綾瀬市下水道の現状と課題
総括
項目
(1)浸水対策
(2)地震対策
(3)道路陥没の未然防止対策
柱2
暮らし
柱3
環境
(1)公衆衛生の向上と生活環境の改善
(1)公共用水域の水質改善
(2)健全な水循環の再構築
(3)省エネルギー・創エネルギー対策、資源循環の促進
柱4
施設再生
(1)下水道施設の資産管理
(2)下水道施設空間の活用
柱5
経営と管理
用語:公共用水域
(1)下水道財政
-18-
現状
課題
浸水が発生しやすい市街地を中心に整 ● 浸水発生地区での雨水管渠等の整備
備を進めてきましたが、依然、局所的に ● 河川・道路事業等と連携した浸水対策の推進
は浸水が発生しています。
耐震化基準が大幅に見直された平成 9 ● 被災時にも下水道が使用できるよう、3つの視点
年度以前に施工された下水道施設が多
を持った地震対策の推進が必要
く、重要施設から順次、耐震診断を進め
視点1:
「防災」(施設の耐震化)
る予定です。
視点2:
「減災」(被害の最小化)
視点3:
「被災時の事業継続性確保」
(BCP)
下水道管渠(本管)の老朽化による道路 ● 下水道管渠の予防保全型維持管理
陥没は起きていませんが、危険性がある
(点検、調査、修繕など)
と さ れ る 30 年 を 経 過 し た 管 渠 が 約 ● 下水道管渠の計画的改築の推進
24km あります。
下水道処理人口普及率は 93.8%に達 ● 公共下水道(汚水処理施設)普及率 100%の早期
しましたが、依然、約 5,100 人の市民が
達成
公共下水道を使用できない状況です。
公共下水道(汚水処理施設)の普及拡大 ● 公共下水道(汚水処理施設)の機能維持と施設再
に伴い、河川の水質は大きく改善されま
生
した。しかし、下水道未普及地域では水 ● 公共下水道(汚水処理施設)未接続対策の実施お
質改善の必要がある小水路などがありま
よび普及率 100%の早期達成
す。
開発事業者への雨水貯留浸透施設の設 ● 開発事業者や各家庭との協働による雨水貯留浸
置指導や公共施設での設置や雨水利用に
透施設の設置促進
取り組んでいます。
綾瀬市浄水管理センターで脱水処理し ● 下水を排除・処理する従来のシステムから、下水
た汚泥は民間事業者によりコンポスト(堆
道資源・エネルギーを回収・活用・再生する循環
肥)等に資源化し、有効利用を推進してい
型システムへの転換
ます。しかし、処理水や雨水の有効利用 ● 「綾瀬市地球温暖化対策実行計画」に基づく省エ
率は比較的低い状況です。
ネ・創エネ対策の推進
● 下水汚泥や処理水、雨水などの有効利用促進
下水道施設の標準的な耐用年数は管渠 ● 施設の機能維持と事故未然防止のための計画的
施設 50 年、建築・土木施設 50 年、機械・
な維持管理への転換
電気設備が概ね 15 年とされています。 ● 施設の計画的改築(長寿命化や更新)
本市の下水道管渠は昭和 48 年に住宅 ● 地震対策等と合わせた効率的施設再構築
団地開発で整備されたものを移管したも ● 将来事業費の増大に対応した事業費の平準化等
のが最も古く、約 37 年経過しています。
の検討
処理場は施工から約 28 年が経過し、老
朽化した施設から順次、改築工事を進め
ています。
浄水管理センターでは施設見学会や多 ● 環境教育や下水道PRの場としての綾瀬市浄水管
目的広場(テニスコート)の一般開放を行
理センターの有効活用
い、下水道施設空間を活用しています。 ● 太陽光発電等、綾瀬市浄水管理センターの未利用
地や施設上部の有効利用
汚水処理費を下水道使用料のみでは賄 ● 持続可能な下水道事業経営基盤の確立
えず、一般会計を繰入れている状況です。 ● 管理の効率化による維持管理費の削減
このため包括的民間委託等を進め、維持 ● 一般会計からの繰入れの適正化
管理費等の削減対策を進めています。
用語:管渠、耐震化、防災、減災、BCP、本管、予防保全型維持管理、下水道処理人口普及率、
雨水貯留浸透施設、脱水処理、汚泥、コンポスト、綾瀬市地球温暖化対策実行計画、耐用年数、
-19-
処理場、長寿命化、更新、再構築、下水道使用料、一般会計、包括的民間委託
-19-
3-1
綾瀬市下水道の現状と課題
~安全・安心~
本市では、雨水幹線が未整備であった昭和51年9月の集中豪雨
で床上浸水を含む大規模な被害が発生しました。このため、昭
和52年12月に相模川流域関連処理区で稲荷谷雨水幹線工事に
着手、昭和53年12月に東部処理区で並塚雨水幹線工事に着手し
ました。
以来、浸水が発生しやすい市街地等を中心に、時間降雨
50mm/hに対応した雨水管渠の整備を進めてきました。また、土
地区画整理事業などの開発事業で整備された雨水調整池等も
活用し、市街地の浸水対策に取り組んでいます。平成21年度末
現在、行政区域2,228haのうち686.7haの区域で約59.6kmの雨水
管渠等が整備・維持されています。
しかし、依然、大雨や台風時には雨水管渠の能力不足や河川
の氾濫影響などにより局所的に浸水被害が発生しています。こ
のため、浸水被害発生地区での雨水管渠等整備や河川・道路事
業等と連携した浸水対策の推進が必要です。
(1)浸水対策の
現状と課題
■浸水対策に関する課題
● 浸水発生地区での雨水管渠等の整備
● 河川・道路事業等と連携した浸水対策の推進
整備済み延長【東部処理区】
整備済み延長【相模川流域関連処理区】
整備済み面積【2処理区合計】
整備済み延長(km)
70
800
700
※雨水整備済み面積は平成8年度以降のみ
データ整理済み
60
600
50
500
40
400
30
300
20
200
10
100
図 3-1-1
雨水管渠の整備状況
用語:幹線、床上浸水、処理区、雨水調整池、管渠
-20-
H21年度
H19年度
H17年度
H15年度
H13年度
H11年度
H 9年度
H 7年度
H 5年度
H 3年度
H元年度
S62年度
S60年度
S58年度
S56年度
S54年度
S52年度
S50年度
0
S48年度まで
0
整備済み面積(ha)
80
(2)地震対策の
現状と課題
下水道施設は被災時においても『公衆衛生の保全』
『浸水被害
の防除』『トイレ使用の確保』
『応急活動対策の確保』といった
役割を果たす必要があり、阪神淡路大震災のような大地震が発
生した場合でも、下水道施設の本来の機能が維持できるよう、
下水道施設には高い耐震性能が求められています。
下水道施設の耐震化基準は平成9年度に大きく見直されてい
ますが、本市の下水道施設の大部分は平成9年度以前に建設さ
れており、古い耐震化基準で建設されています。これらの施設
は現在、重要施設から順次、耐震診断を進めていますが、概ね
レベル1地震動(震度5が目安)に耐えられるものと考えられ
ます。今後は、レベル2地震動(震度7が目安)にも耐えられ
るよう、重要施設から順次、耐震補強等の対応を図る必要があ
ります。
■地震対策に関する課題
● 被災時にも下水道が使用できるよう、3つの視点を
持った地震対策の推進が必要
視点1:「防災」(施設の耐震化)
視点2:「減災」(被害の最小化)
視点3:「被災時の事業継続性確保」(BCP)
図 3-1-2
下水道が被災した場合の重大な影響
出典:国土交通省下水道部
用語:耐震化、耐震補強、防災、減災、BCP、公共用水域
-21-
(3)道路陥没未然
防止対策の
現状と課題
下水道に起因する道路陥没事故は、管渠の継ぎ手部分のズレ
や、木根の侵入、管渠の破損等による隙間に、地下水や地面に
浸透した雨水等と共に管渠周辺の土砂が下水管渠に流出するこ
とにより、地下空間に空隙が出来ることにより発生します。全
国の実績では、30年以上を経過した管路施設で、管路劣化によ
る道路陥没事故などが増える傾向にあります。
平成21年度末現在、綾瀬市には約311kmの下水道管渠がありま
すが、このうち約24kmが施工後30年を経過しています。
現在のところ、綾瀬市内では下水道管渠(本管)の老朽化に
よる道路陥没事故の報告はありませんが、地下の空洞は目に見
えないため、下水道管渠の適切な維持管理を行い、道路陥没事
故を未然に防ぐ必要があります。
■道路陥没事故の未然防止対策に関する課題
● 下水道管渠の予防保全型維持管理
(点検、調査、修繕など)
● 下水道管渠の計画的改築の推進
図 3-1-3
下水道管渠施設の劣化が原因となった道路陥没事故の例
出典:国土交通省下水道部
用語:管渠、継ぎ手、管路、本管、予防保全型維持管理、修繕、改築
-22-
3-2
綾瀬市下水道の現状と課題
~暮らし~
本市では、下水道事業着手以前より首都圏のベッドタウンと
して宅地化・工業団地の形成がされており、これらの排水によ
り比留川、蓼川、目久尻川の汚濁が進行し、周辺環境を著しく
悪化させていました。この対策として昭和50年3月に相模川流
域関連処理区で中央汚水幹線工事に着手、昭和54年9月に東部
処理区で上土棚汚水幹線工事に着手しました。昭和62年8月に
東部処理区、同年10月には相模川流域関連処理区が供用開始し
ました。
以来、人口が密集している市街化区域等を中心に汚水管渠の
整備を進めてきました。平成21年度末現在、行政区域2,228ha
のうち1,073haの区域で約251kmの汚水管渠が整備され、下水道
処理人口普及率は93.8%に達しました。
しかし、依然、市街化調整区域を中心とする地区の約5,100
人の市民が公共下水道を使用できない状況となっており、普及
率100%の早期達成が課題となっています。
(1)公衆衛生向上
生活環境改善の
現状と課題
■公衆衛生向上と生活環境改善対策に関する課題
● 公共下水道(汚水管渠)普及率 100%の早期達成
整備済み面積【東部処理区】
整備済み面積【相模川流域関連処理区】
普及率【2処理区合計】
1,200
100%
90%
80%
70%
800
60%
50%
600
40%
400
30%
20%
200
10%
図 3-2-1
汚水管渠の整備と普及率状況
用語:処理区、幹線、市街化区域、管渠、下水道処理人口普及率、市街化調整区域
-23-
H21年度
H19年度
H17年度
H15年度
H13年度
H11年度
H 9年度
H 7年度
H 5年度
H 3年度
H元年度
S62年度
S60年度
S58年度
S56年度
S54年度
S52年度
S50年度
0%
S48年度まで
0
普及率(%)
整備済み面積(ha)
1,000
3-3
綾瀬市下水道の現状と課題
(1)公共用水域の
水質改善の
現状と課題
~環境~
近年の都市化が発展していく中で、河川空間に残された緑や
水とのふれあいは貴重な地域の自然資源として認識されてきて
おり、下水道等の整備による水質改善や河川の親水機能に対す
る市民の期待は高まりつつあります。
本市には一級河川の目久尻川(相模川水系)、二級河川の蓼川
(引地川水系)、準用河川の比留川が流れています。これらの河川
には水質環境基準が設定されており、目久尻川はB類型・BOD水
質3mg/l以下、蓼川および比留川はD類型・BOD水質8mg/l以下
という基準が設定されています。
本市では下水道(汚水管渠)の普及に伴い河川の水質も大幅
に改善し、カモやカワセミが訪れる川が復活しています。
今後は、公共用水域の水質保全に貢献し続けるために、下水
道施設(汚水処理施設)の機能維持や施設再生が必要です。
また、公共下水道未普及地域の小水路などでは、更なる水質
改善の必要があり、下水道普及率100%の早期達成も必要となっ
ています。
■公共用水域の水質改善に対する課題
● 公共下水道(汚水処理施設)の機能維持と施設再生
● 公共下水道(汚水管渠)普及率 100%の早期達成
用語:公共用水域、一級河川、二級河川、準用河川、環境基準、BOD、管渠
-24-
表 3-3-1
綾瀬市の河川の BOD 水質
単位:mg/l
目久尻川
蓼川
比留川
備考
小園橋
用田橋
基地上
境橋
観音橋
3
3
8
8
8
(相模川流域関連処理区)
最大値
最大値
最大値
最大値
最大値
下水道の普及
~
55
15
68
29
153
拡大に伴い、
環境基準値
1974(S49)年度
事業着手
1986(S61)年度
BOD 水質は
供用開始前年
1987(S62)年度
供用開始(2 処理区)
2000(H12)年度
普及率 90%に達する
2009(H21)年度
現況
改善しています。
18
7
32
12
36
3
3
15
6
5
2
2
4
3
2
表 3-3-2
BOD 水質の目安
BOD 水質
水質状況の目安
1mg/l
環境基準AA
水道1級で、ろ過等の簡易な処理で水道として利用できます
生物はヤマメやイワナ等が生息でき、
自然探勝を楽しむことができる清流です
2mg/l
環境基準A
水道2級で、ろ過等の簡易な処理で水道として利用できます
生物はヤマメやイワナ等が生息できます
3mg/l
環境基準B
水道3級で、高度な処理で水道として利用できます
生物はサケ、アユ等が生息できます
5mg/l
環境基準C
備考
目久尻川の
環境基準
水道-:水道使用の基準には該当しません
生物はコイ、フナ等が生息できます
8mg/l
環境基準D
農業用水への利用が可能です
蓼川、比留川の
環境基準
10mg/l
環境基準E
日常生活で不快を感じない限度とされています
15mg/l
公共下水道の放流基準で、年間を通して最大でも 15mg/l以下
で放流する必要があります
100mg/l
処理場で沈殿・消毒程度の簡易処理を行った場合の水質
200mg/l
生活雑排水と同程度の水質です
用語:BOD、処理区、環境基準
-25-
(2)健全な水循環
の再構築の
現状と課題
まちに降った雨は地下に浸透したり、水路や雨水管渠などを
経由して川や海に流れ込み、蒸発して雲となり、再び雨となり、
循環しています。しかし都市化の進展は、河川や水路の水質悪
化、雨水浸透量の減少による地下水や湧き水の減少、雨天時の
急激な雨水流出、平常時の河川流量の減少など、水循環に影響
を及ぼしてきました。
本市では、家庭や事業場から発生する汚水を処理場できれい
な水に処理して川または海へ戻しています。また、開発事業者
には雨水貯留・浸透施設の設置指導を行い、綾瀬市庁舎などの
公共施設でも積極的な雨水利用を図り、本来の水循環の再構築
を目指しています。
今後も開発事業・道路事業・家庭での雨水貯留浸透施設設置
を促進し、健全な水循環の再構築を推進する必要があります。
■健全な水循環の再構築に対する課題
● 開発事業者や各家庭との協働による雨水貯留浸透施設
の設置促進
雨
雲
蒸発
雨
ダム
浸透
浄水場
まちへ
川や海へ
下水処理場
まちへ
汚水管渠
雨水管渠
図 3-3-1
用語:管渠、雨水貯留浸透施設、再構築、浄水場、処理場
-26-
水の循環
■綾瀬市庁舎の雨水貯留・浸透施設■
綾瀬市庁舎
透水性の舗装や、雨水浸透管等の埋設により
敷地内に降った雨の地下浸透を図っています
修景施設(滝)
修景施設(南側せせらぎ)
敷地内に降った雨は沈澱処理・消毒処理し、修景用水として利用しています
トイレ洗浄用水
トイレ洗浄用水や冷房用水としても
使用しています
雨水流出抑制槽内部
雨水利用量を超える雨が降った際は
雨水流出抑制槽に雨水を貯留し
施設内の地下浸透設備へ
送水します
出典:国土交通省土地・水資源局水資源部 HP
用語:雨水貯留浸透施設、雨水浸透管、修景施設、沈殿処理、消毒処理、修景用水、雨水流出抑制槽、
地下浸透設備
-27-
(3)省エネルギー・
綾瀬市浄水管理センターでは年間約290万kw(平成20年実績)
創エネルギー
の電力を使用しています(内訳は水処理160万kw、場内ポンプ44
資源循環促進の 万kw、汚泥処理35万kw、その他48万kw)。これは一般家庭の650
現状と課題
戸程度分と考えられます。近年は処理水量あたりの電力使用量
は減少傾向にありますが、今後も、省エネ機器の導入や処理の
効率化で省エネルギーに努める必要があります。
また、下水汚泥は綾瀬市浄水管理センターで脱水処理した後、
民間事業者へ委託し、コンポスト(堆肥)やセメント材料など
に資源化し、有効利用を推進しています。一方、処理水は浄水
管理センター内の消泡水や洗浄水等に一部利用しているもの
の、多くは未利用となっています。
ひっぱく
地球温暖化の顕在化やエネルギー・資源需要の逼迫が懸念さ
れることから、これからの下水道は、下水を排除・処理する従
来のシステムから、集めた物質等を資源・エネルギーとして活
用・再生する循環型システムへと転換することが必要です。
■省エネルギー・創エネルギー対策、
資源循環の促進に対する課題
● 下水を排除・処理する従来のシステムから、下水道資
源・エネルギーを回収・活用・再生する循環型システ
ムへの転換
● 「綾瀬市地球温暖化対策実行計画」に基づく省エネ・
創エネ対策の推進
● 下水汚泥や処理水、雨水などの有効利用促進
500
0.050
0
0.000
図 3-3-2
H20年度
0.100
H19年度
0.150
1,000
H18年度
1,500
H17年度
0.200
H16年度
2,000
H15年度
0.250
H14年度
2,500
H13年度
0.300
H12年度
0.350
3,000
電力原単位(kWh/m3)
使用電力量:場内ポンプ
使用電力量:その他
3,500
H11年度
使用電力量(千kWh)
使用電力量:水処理
使用電力量:汚泥処理
電力原単位
綾瀬市浄水管理センターでの電力使用量
用語:水処理、汚泥処理、汚泥、脱水処理、コンポスト、消泡水、地球温暖化、綾瀬市地球温暖化対策実行計画
-28-
3-4
綾瀬市下水道の現状と課題
(1)下水道施設の
資産管理
現状と課題
~施設再生~
下水道施設の標準的な耐用年数は管渠施設50年、建築・土木
施設50年、ポンプ等の機械・電気設備が概ね15年とされていま
す。
本市の管路施設は住宅団地開発にて整備された施設を昭和48
年に移管されたものが最も古く、平成21年度末現在、移管後約
37年が経過しています。これらの施設は特に取付管の損傷や老
朽化が進んでおり、順次、調査・修繕・更新等の対策を進めて
います。全国の実績では、30年以上を経過した管路施設で、管
路劣化による道路陥没事故などが増える傾向にあります。平成
21年度末現在、綾瀬市には約311kmの下水道管渠がありますが、
このうち約24kmが施工後30年を経過しており、道路陥没未然防
止対策が必要となっています。
綾瀬市浄水管理センターは昭和57年に建設開始し、平成21年
度末現在、施工から約28年が経過しています。機械・電気設備
の更新工事は平成17年から開始し、平成21年度末現在、水処理
設備の機械電気設備第1期更新が完了しています。また、上土
棚中継ポンプ場は昭和62年に建設開始し、平成21年度末現在、
施工から約23年が経過しています。平成21年からポンプ等の機
械設備更新工事に着手しました。
下水道サービスを維持・向上させるためには、下水道施設の
適正な維持管理と計画的な改築が必要です。また今後は下水道
施設の更新事業量の増大が見込まれるため、地震対策等と合わ
せた効率的な施設再構築や事業費の縮減・平準化に対する検討
も必要です。
■下水道施設の資産管理に対する課題
● 施設の機能維持と事故未然防止のための計画的な維持
管理への転換
● 施設の計画的改築(長寿命化や更新)
● 地震対策等と合わせた効率的な施設再構築
● 将来事業費の増大に対応した事業費の平準化等の検討
用語:管路、取付管、修繕、更新、管渠、ポンプ場、再構築、改築、長寿命化
-29-
単年度整備延長【汚水管渠】
単年度整備延長【雨水管渠】
整備延長 累計【雨水・汚水 合計】
30 年経過
約 24km
25
250
200
図 3-4-1
H21年度
H19年度
H17年度
H15年度
H13年度
H11年度
H 9年度
H 7年度
H 5年度
H 3年度
H元年度
0
S62年度
0
S60年度
50
S58年度
5
S56年度
100
S54年度
10
S52年度
150
S50年度
15
下水道管渠施設の整備状況
5,000
実績値
4,500
4,000
3,500
百万円
300
H9 以前に施工 約 223km
(耐震化基準変更前)
20
S48年度まで
単年度整備延長(km)
30
350
整備延長 累計(km)
35
3,000
推計値
管渠:改築費
管渠:建設費
ポンプ場:改築費
ポンプ場:建設費
処理場:改築費
処理場:建設費
2,500
2,000
1,500
1,000
500
S44年度
S46年度
S48年度
S50年度
S52年度
S54年度
S56年度
S58年度
S60年度
S62年度
H 1年度
H 3年度
H 5年度
H 7年度
H 9年度
H11年度
H13年度
H15年度
H17年度
H19年度
H21年度
H23年度
H25年度
H27年度
H29年度
H31年度
H33年度
H35年度
H37年度
H39年度
H41年度
0
図3-4-2 「綾瀬市下水道事業再評価 平成20年度」による建設改良費の実績と見通し
用語:管渠、改築、ポンプ場、処理場、下水道事業再評価
-30-
(2)下水道施設
空間の活用
現状と課題
綾瀬市では市民の皆様に下水道をより良く知って頂くため
に、綾瀬市浄水管理センターでの施設見学会を実施しています。
また、将来の施設用地を暫定利用した綾瀬市浄水管理センター
多目的広場(テニスコート)の一般開放を行い、下水道施設空
間の活用を図っています。
今後は浄水管理センター内の未利用地の有効活用について、
より積極的な検討が必要です。
■下水道施設空間の活用に対する課題
● 環境教育や下水道 PR の場としての綾瀬市浄水管理セン
ターの有効活用
● 太陽光発電等、綾瀬市浄水管理センターの未利用地や
施設上部の有効利用
綾瀬市「浄水管理センター 夏休み親子下水道教室」
平成 21 年度は綾瀬市浄水管理センターへ
「夏休み親子下水道教室」で 35 名、
「学校施設見学」で 91 名
ご来場頂きました。
用語:浄水管理センター、太陽光発電
-31-
3-5
綾瀬市下水道の現状と課題
~下水道の経営と管理~
(1)総歳出・総歳入
近年の下水道事業の歳出入額は約33~40億円/年となってお
の状況
り、改築事業費の増加等に伴い、若干増加傾向にあります。
平成21年度の歳出額の内訳は、用地費・建設費・流域下水道
事業費が約14億円、維持管理費が約7億円、公債費(地方債償還
金)が約19億円となっています。また、歳入額の内訳は、国や県
からの補助金が約6億円、地方債が約7億円、市民の皆様から
頂く下水道使用料・受益者負担金が約12億円、一般会計からの
繰入金が約15億円となっています。
7,000
歳 出 額 (百 万 円 )
6,000
5,000
4,000
公債費
管理費
流域下水道事業費
建設事業費
用地費
3,000
2,000
1,000
H10年 度
H12年 度
H14年 度
H16年 度
H18年 度
H20年 度
S5 9 年 度
S6 1 年 度
S6 3 年 度
H2年 度
H4年 度
H6年 度
H8年 度
S4 5 年 度
S4 7 年 度
S4 9 年 度
S5 1 年 度
S5 3 年 度
S5 5 年 度
S5 7 年 度
0
図3-5-1
下水道事業決済状況【歳出】
図 下水道事業決算状況【歳出】
7,000
歳 入 額 (百 万 円 )
6,000
5,000
一般会計繰入金
その他諸収入
下水道使用料等
受益者負担金等
地方債
補助金(国、県、他)
4,000
3,000
2,000
1,000
H12年 度
H14年 度
H16年 度
H18年 度
H20年 度
H2年 度
H4年 度
H6年 度
H8年 度
H10年 度
S5 5 年 度
S5 7 年 度
S5 9 年 度
S6 1 年 度
S6 3 年 度
S4 5 年 度
S4 7 年 度
S4 9 年 度
S5 1 年 度
S5 3 年 度
0
図3-5-2
下水道事業決済状況【歳入】
図 下水道事業決算状況【歳入】
用語:改築、流域下水道、公債費(地方債償還金)
、地方債、下水道使用料、受益者負担金、一般会計
-32-
地方債償還計画(利子)
地方債償還計画(元金)
地方債償還金(利子)
地方債償還金(元金)
地方債残高(元金)
3,000
2,500
償還額(百万円)
平成21年度末現在の地方債償還残高(元金)は約211億円です。
平成21年度の償還金は元金分が約12億円、利子分が約7億円と
なっています。建設ピーク時の地方債償還費が増加していまし
たが、平成20年度が地方債償還金のピークとなり、今後は減少
していく見通しです。現時点までの地方債償還は平成51年度に
完了となる見通しです。一方、今後も下水道施設の再構築事業
に伴い、地方債も増加していきます。
処理区域内人口1人当りの地方債残高は288千円/人となって
おり(H20年度実績)、全国の同規模自治体の平均284千円/人の
実績と比べると若干高くなっています。今後の再構築事業費等
の縮減に努め、地方債の増加を抑えていく必要があります。
平成21年度末
地方債償還残高
約 21,137 百万円
30,000
25,000
2,000
20,000
1,500
15,000
1,000
10,000
500
5,000
実績値
計画値
0
S45~49年度
S52年度
S55年度
S58年度
S61年度
H元年度
H 4年度
H 7年度
H10年度
H13年度
H16年度
H19年度
H22年度
H25年度
H28年度
H31年度
H34年度
H37年度
H40年度
H43年度
H46年度
H49年度
0
図3-5-3
平成21年度末までの地方債に対する償還実績及び償還計画
(平成 22 年度以降の下水道事業にかかる地方債償還金を考慮しない場合)
用語:公債費(地方債償還金)
、地方債、再構築、処理区域
-33-
残高(百万円)
(2)地方債償還金
の状況
(3)汚水処理費と
経費回収の
の状況
下水道の運営にかかる費用(維持管理費と資本費)は、汚水
処理費、雨水処理費に分類されます。このうち汚水処理費の大
部分(総務省基準により算定)は下水道使用料で負担すべき経費
(私費負担)とされ、雨水処理費等は公費負担すべき経費とさ
れています。
本市では建設ピーク時の地方債に対する償還金の増加によ
り、資本費が増加傾向にあります。平成21年度の汚水処理費は
約23.7億円(資本費 約6.6億円、維持管理費 約7.1億円、分流
式下水道等に要する経費10.0億円)となっています。これに対
し、下水道使用料は約11.6億円で約12.1億円の財源不足となっ
ており、一般会計の繰入を行っています。
県内類似自治体※との比較(平成20年度)をみると、汚水処理
原価は260.3円/m3 で類似自治体の平均240.5円/m3 より高くな
っています。これに対し下水道使用料単価は127.3円/m3で類似
自治体の平均131.8円/m3より低くなっています。このため経費
回収率は48.9%で県内類似自治体の平均55%を下回っています
※県内類似自治体=単独処理区と流域関連処理区を有する4自治体
(秦野市、伊勢原市、小田原市、綾瀬市)
建設改良費
国庫補助金
維持管理費
資本費
【汚水処理費(私費負担分)】
【汚水処理費(私費負担分)】
下水道使用料
起
債
受益者負担金
【汚水処理費(公費負担分)】
【雨水処理費】
【汚水処理費(公費負担分)】
【雨水処理費】
一般会計繰入金
一般会計繰入金
図 3-5-4
一般会計からの繰入
「基準外繰入」(不足分)
下水道事業の財源構成概念図
用語:汚水処理費、経費回収率、維持管理費、資本費、下水道使用料、地方債
-34-
一般会計からの繰入
「基準内繰入」(全額)
100.0%
90.0%
80.0%
70.0%
60.0%
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
0.0%
費用 (百万円)
2,500
2,000
1,500
1,000
500
H21年度
H20年度
H19年度
H18年度
H17年度
H16年度
H15年度
H14年度
H13年度
H12年度
H11年度
0
経費回収率(%)
3,000
維持管理費(汚水処理費)
資本費(汚水処理費)
分流式下水道等に要する経費
使用料収入
一般会計繰入金
経費回収率(%)
汚水処理原価(単独処理区のみの自治体)
汚水処理原価(流域関連処理区のみの自治体)
汚水処理原価(単独・流域関連両処理区ありの自治体)
使用料単価
経費回収率
120%
500
100%
400
80%
300
60%
200
40%
100
20%
全国平均
綾瀬市
全国Ba2平均
藤沢市
相模原市
伊勢原市
秦野市
小田原市
海老名市
座間市
厚木市
茅ヶ崎市
平塚市
南足柄市
三浦市
大和市
逗子市
鎌倉市
0%
川崎市
横須賀市
0
経費回収率
600
横浜市
汚水処理原価、使用料単価(円/m3)
図 3-5-5 汚水処理費(資本費と維持管理費)と
下水道使用料、一般会計繰入金、経費回収率の近年実績
図 3-5-6
汚水処理原価(分流式下水道等に要する経費控除前)と
図 汚水処理原価(分流式下水道等に要する経費控除前)と
使用料単価、経費回収率の比較(平成
20 年度)
使用料単価、経費回収率の比較(平成20年度)
※神奈川県内の市および全国平均
※神奈川県内の市および全国平均
用語:維持管理費、汚水処理費、資本費、分流式、分流式下水道等に要する経費、下水道使用料(使用料)
、
一般会計繰入金、経費回収率、処理区
-35-
(4)下水道の経営
と管理の課題
本市の下水道処理人口普及率は93.8%に達し、市街化区域の
ほぼ全域で公共下水道(汚水処理施設)の整備が完了しています
が、過年度の建設費に充てた地方債の償還ピークを迎えており、
今後も公債費(地方債償還金)が大きなウェイトを占めていく状
況が続くものと考えられます。
今後の事業展開としては、市街化調整区域の汚水管渠整備や
浸水発生地区での雨水管渠整備、下水道施設の再構築事業(更
新や耐震化対策)を進めていく必要があり、将来的にも事業歳
出は増加していくものと考えられます。
下水道サービスを維持・向上させるためには下水道事業経営
基盤の強化が必要です。効率的な整備・管理による経費の縮減、
下水道使用料基準の適正化、下水道資源の活用による支出削
減・収入増など、歳出・歳入の両面において経営健全化に向け
た取り組みを進める必要があります。
下水道維持管理費の縮減に関しては包括的民間委託などの外
部委託を進めてきましたが、今後も終末処理場の包括的民間委
託や建設工事の管理委託等を推進し、維持管理費や人件費の削
減を進める必要があります。
また、本市の汚水処理にかかる経費回収率は県内類似自治体
の平均を下回っており、一般会計からの繰入を行っている状況
です。今後も下水道施設維持や改築事業等への投資が必要であ
るため、下水道維持管理費等の支出縮減への取り組みと共に、
下水道使用料の適正化など収入確保への取り組みも合わせて検
討していく必要があります。
■下水道の経営と管理の課題
● 持続可能な下水道事業経営基盤の確立
● 管理の効率化による維持管理費の削減
● 一般会計からの繰入れの適正化
用語:下水道処理人口普及率、市街化区域、地方債、公債費(地方債償還金)
、市街化調整区域、管渠、再構築、
更新、下水道使用料、包括的民間委託、経費回収率、一般会計
-36-
第4章
下水道中期ビジョンの
基本理念と基本方針
-37-
4-1
基本理念
本市の総合計画である「新時代 あやせプラン21」では、本市の重要な資源の一
つである豊富な緑と自然環境等を生かしながら、市民一人ひとりがいつまでもこのま
ちに住み続けたいと思えるまち、一度は住んでみたいと思えるまちを目指し、21 世紀
の綾瀬市の将来都市像を次のように設定しています。
緑と文化が薫るふれあいのまち
あやせ
この将来都市像実現のために下水道は、緑豊かで快適な住環境の中で、市民一人ひ
とりが安心して健やかに暮らせるまちづくりへ貢献する必要があります。
“市民一人ひとりがいつまでもこのまちに住み続けたいと思えるまち”づくりのた
めには、公共下水道は不可欠な都市施設であり、下水道サービスを継続するためには
下水道施設の適正な維持管理、老朽化施設の再構築や耐震化対策などにも取り組む必
要があります。さらには、“緑豊かで快適な住環境”をつくるために、地球温暖化防
止対策や資源循環の促進策など、環境への負荷低減への貢献も目指していく必要があ
ります。
『あやせ下水道中期ビジョン』では、綾瀬市総合計画「新時代 あやせプラン21」
の将来都市像である“緑と文化が薫るふれあいのまち あやせ”の実現を目指すため、
下水道の基本方針を定めるとともに、今後の施策を展開していきます。
用語:新時代
あやせプラン21、公共用水域、管渠、都市計画、下水道処理人口普及率、再構築、耐震化、
地球温暖化
-38-
4-2
5つの柱と基本方針
『あやせ下水道中期ビジョン』では、本市の将来都市像である“緑と文化が薫るふ
れあいのまち あやせ”の実現を目指し、5つの柱と基本方針をもとに下水道施策を
展開して行きます。
■『あやせ下水道中期ビジョン』基本理念と基本方針■
「新時代 あやせプラン21」による将来都市像
緑と文化が薫るふれあいのまち
あやせ
の実現に向けて
柱1.安全・安心
安心して
住み続けられる
まちづくりに
貢献します
柱2.暮らし
柱3.環境
健康で快適な
市民生活の実現に
貢献します
環境への負荷を
低減する都市づくり
に貢献します
安全・快適な暮らし
良好な環境を
守り続けるために
効率的な施設再生に努めます
柱4.施設再生
下水道サービスの維持・向上のために、経営基盤の強化に努めます
柱5.経営と管理
次に5つの柱と基本方針に対する施策目標を示します。
用語:新時代 あやせプラン21
-39-
柱1.安全・安心
(1)浸水対策
安心して住み続けられるまちづくりに貢献します
●総合的な浸水対策の推進により
浸水被害の軽減を目指します
本市では浸水被害が起きやすい市街地で、雨水管渠の整備を
進めてきました。これからは雨水管渠の整備と合わせ、河川管
理者、防災部局や市民との連携によるソフト対策や、道路・各戸
等の雨水貯留浸透施設設置促進など、総合的な浸水対策に取り
組んでいきます。
(2)地震対策
●総合的な地震対策の推進により
地震に強い下水道を目指します
地震時にも安心して下水道を使えるよう、下水道施設の耐震
化を推進する必要があります。しかし、全施設の耐震化には長
い時間と多額の費用を要します。このため、
「防災(耐震化)」
「減
災(被害の最小化)」「被災時の業務継続性確保(BCP)」の3つの
視点を持った総合的な地震対策に取り組んでいきます。
(3)道路陥没の
未然防止対策
●予防保全型維持管理と計画的改築の推進により
道路陥没事故の未然防止を目指します
管渠の老朽化による道路陥没事故の発生は、交通障害や人身
事故など、社会的に大きな影響を与える可能性があります。こ
のため、計画的な管渠の点検・調査や修繕・改築を進め、道路
陥没事故未然防止対策を推進します。
用語:管渠、ソフト対策、雨水貯留浸透施設、耐震化、防災、減災、BCP、予防保全型維持管理、修繕、改築
-40-
柱2.暮らし
(1)公衆衛生向上
生活環境改善
健康で快適な市民生活の実現に貢献します
●公共下水道(汚水処理施設)の整備推進により
下水道処理人口普及率の向上を目指します
平成21年度末現在、本市の下水道処理人口普及率は93.8%に
達しました。しかし依然、市街化調整区域を中心とする地区の
約5,100人の市民が公共下水道を使用できない状況となってお
り、普及率の向上が課題となっています。
このため、低コスト型・効率的な汚水管渠整備手法を取り入
れ、早期の下水道処理人口普及率向上を目指します。
用語:下水道処理人口普及率、市街化調整区域、管渠
-41-
柱3.環境
(1)公共用水域の
水質改善
環境への負荷を低減する都市づくりに貢献します
●公共下水道(汚水処理施設)の整備・維持により
公共用水域の水質維持と一層の改善を目指します
公共下水道(汚水処理施設)の普及拡大に伴い、河川の水質は
大きく改善されています。今後は公共下水道(汚水処理施設)の
適正な維持により、公共用水域の良好な水質を維持するととも
に、整備拡大と未接続解消対策の推進により小水路などの水質
改善にも努めていきます。
(2)健全な水循環
の再構築
●雨水貯留浸透施設の設置促進により
健全な水循環の再構築を目指します
都市化の進展は、河川や水路の水質悪化、雨水浸透量の減少
による地下水や湧き水の減少、雨天時の急激な雨水流出、平常
時の河川流量の減少など、水循環に悪影響を及ぼします。本市
では公共事業のほか、開発事業や家庭での雨水貯留浸透施設設
置を促進し、健全な水循環の再構築を目指していきます。
(3)省エネルギー・
創エネルギー
資源循環促進
●省エネ・創エネ対策推進と下水道資源有効利用促進により
下水道資源・エネルギーの循環型システム構築
を目指します
下水の処理には多くの電力を使用する一方、下水道は処理水
や下水汚泥、熱、バイオマスエネルギー、施設空間など、様々
な資源を有しています。下水処理の省エネ対策や温室効果ガス
排出量削減に努めるとともに、下水道資源・エネルギーの利活
用に努め、循環型社会構築への貢献を目指します。
用語:公共用水域、環境基準、雨水貯留浸透施設、再構築、バイオマス、温室効果ガス
-42-
柱4.施設再生
(1)下水道施設の
資産管理
安全・快適な暮らし、良好な環境を守り続けるために、
効率的な施設再生に努めます
●下水道施設の効率的維持管理と再構築の推進により
下水道の機能維持と機能向上を目指します
下水道の普及により安全・快適な暮らしと良好な環境が築か
れてきました。今後も下水道サービスを維持・向上させるため
に、老朽化しつつある下水道施設の適正な維持管理と計画的な
改築を推進します。また地震対策や省エネ対策等と合わせた施
設再構築を推進し、機能向上もあわせて推進していきます。
(2)下水道施設
空間の活用
●下水道施設空間の活用により
地域に開かれた下水道を目指します
市民の皆様に下水道を知って頂き、適切に使用して頂くこと
で、より効果的な下水道事業運営が可能となります。このため、
環境教育の拠点として、綾瀬市浄水管理センターを活用してい
きます。また、新エネルギー導入等、施設上部空間や未利用地
の活用を検討し、地域環境への貢献も目指します。
用語:再構築、改築
-43-
柱5.経営と管理
(1)下水道の経営
と管理
下水道サービスの維持・向上のために
経営基盤の強化に努めます
●継続的な経営改善や効率的な経営手法の導入により
持続可能な下水道事業経営基盤の確立
を目指します
本市の下水道事業は整備から維持・再構築へとシフトしてお
り、下水道サービスを維持し続けるためには、維持管理費や再
構築事業費等、今後も多くの費用を要します。このため、経費
削減や経営の合理化など、継続的に経営改善に取り組み、経営
基盤の強化に努めます。
用語:再構築
-44-
第5章
事業目標と主な施策
-45-
5-1
主な施策の体系
『あやせ下水道中期ビジョン』では5つの柱と基本方針に対し、1-1から5-1
の施策を実行し、“緑と文化が薫るふれあいのまち あやせ”の実現を目指します。
5つの柱
施策目標
基本方針
●総合的な浸水対策の推進により
浸水被害の軽減を目指します
柱1
安全・安心
柱2
暮らし
安心して
住み続けられる
まちづくりに
貢献します
●総合的な地震対策の推進により
地震に強い下水道を目指します
●予防保全型維持管理と
計画的改築の推進により
道路陥没事故の未然防止を目指します
健康で快適な
市民生活の実現に
貢献します
●公共下水道(汚水処理施設)の
整備推進により
下水道処理人口普及率の向上を目指します
●公共下水道(汚水処理施設)の
整備推進により
柱3
環境
環境への負荷を低減する
都市づくりに
貢献します
公共用水域の水質維持と
より一層の向上を目指します
●雨水貯留浸透施設の設置促進により
健全な水循環の再構築を目指します
●省エネ・創エネ対策推進と
下水道資源有効利用促進により
下水道資源・エネルギー
循環型システム構築を目指します
柱4
施設再生
柱5
経営と管理
安全・快適な暮らし
良好な環境を
守り続けるために
効率的な施設再生に努めます
下水道サービスの
維持・向上のために
経営基盤の強化に努めます
●下水道施設の効率的維持管理と
再構築の推進により
下水道機能維持と機能向上を目指します
●下水道施設空間の活用により
地域に開かれた下水道を目指します
●継続的な経営改善や
効率的な経営手法の導入により
持続可能な下水道事業経営基盤の
確立を目指します
用語:予防保全型維持管理、改築、下水道処理人口普及率、公共用水域、雨水貯留浸透施設、再構築
-46-
-46-
主な施策
1-1.雨水管渠等の整備
1-2.他事業との連携等、総合的な浸水対策の推進
綾瀬市の将来都市像
1-3.下水道施設の地震対策
1-4.管路の長寿命化対策
3-1.公共下水道(汚水処理施設)普及による公共用水域水質改善
【施策 2-1、2-2、2-3 と合わせた取り組み】
3-2.雨水貯留浸透施設設置促進による健全な水循環の再構築
【施策 1-2 と合わせた取り組み】
3-3.省エネ機器導入【施策 4-2 と合わせた取り組み】
3-4.新エネルギーの導入検討
3-5.処理水・汚泥等の下水資源の有効利用
4-1.管路の計画的再構築【施策 1-4 と合わせた取り組み】
4-2.処理場・ポンプ場の計画的再構築
5-1.アセットマネジメント手法を取り入れた下水道事業経営
用語:管渠、管路、長寿命化、流域下水道、公共用水域、雨水貯留浸透施設、汚泥、再構築、処理場、
ポンプ場、アセットマネジメント
-47-
の実現
4-2.浄水管理センターの空間活用
緑と文化が薫るふれあいのまち あやせ
2-1.公共下水道(汚水管渠)の整備
2-2.浄水管理センターの増設
2-3.流域下水道の建設負担
5-2
主な施策の内容
柱1.安全・安心
(1)浸水被害の
軽減
安心して住み続けられるまちづくりに貢献します
1)方針・目標
本市では浸水被害が起きやすい市街地で、雨水管渠の整備を
進めてきました。これからは雨水管渠の整備と合わせ、河川管
理者、防災部局や市民との連携によるソフト対策や、道路・各
戸等の雨水貯留浸透施設設置促進など、総合的な浸水対策に取
り組んでいきます。
●総合的な浸水対策の推進により
浸水被害の軽減を目指します
2)主な施策
施策1-1.雨水管渠等の整備
■雨水管渠整備
水路能力の不足などにより浸水が発生する箇所に
50mm/h の降雨に対応した雨水管渠を整備します。
施策 1-2.他事業との連携等、総合的な浸水対策の推進
■ソフト対策、自助・共助の充実
台風や集中豪雨等、浸水リスクが高まっています。こ
のため洪水ハザードマップを活用し、浸水想定区域や避
難情報などの周知を図り、被害を最小限にとどめる取り
組みを推進します。
■河川・道路事業等との連携
河川改修、道路排水整備など、他の事業と連携し、流
域全体の治水安全度向上を目指します。
■雨水貯留浸透施設の設置促進
公共施設や開発事業、各家庭での雨水貯留浸透施設設
置を促進し、雨水流出量の抑制に努めます。
用語:管渠、ソフト対策、雨水貯留浸透施設、自助、共助、洪水ハザードマップ
-48-
3)施策実施効果
公共下水道による雨水管渠の整備のほか、市民の皆様や開発
事業等との連携による総合的な浸水対策の推進により、流域全
体での治水安全度の向上が期待されます。また、雨水貯留浸透
施設の設置により、雨水流出量抑制のほか、地下水涵養等の健
全な水循環構築への貢献も期待されます。
図 5-2-1 総合的な浸水対策イメージ
出典:「改定かながわ下水道21」(平成 22 年 3 月策定)
用語:管渠、雨水貯留浸透施設、降雨レーダー、内水ハザードマップ、雨水貯留管
-49-
■河川等対策
○排水施設の整備
流域面積の大きなものは河川事業で河川改修を進めています。市街地に降った雨
を河川に排水する雨水管渠は公共下水道事業で整備を進めています。また、公共下
水道事業計画区域外の水路や道路側溝などは道路事業・水路整備事業で改修を進め
ています。
これらの改修・整備は、浸水被害が発生しやすい地区を中心に進めています。
道路事業・水路整備事業
公共下水道事業
図 5-2-3
河川事業
施策 1-1. 雨水管渠等の整備
浸水被害は川の能力不足や、水路の能力不足ま
たは排水路が設置されていないなど、様々な原因
により発生します。その原因に応じ、河川・公共
下水道・道路事業・水路整備事業とで役割分担を
して、雨水排水施設整備を進めています。
綾瀬市では市街化区域の公共下水道管渠(雨
水)整備を推進してきたことにより、市街地での
浸水は少なくなっています。このため「あやせ下
水道中期ビジョン」では市街地で依然浸水発生の
恐れがある箇所を絞り込み、対策を図ります。
雨水排水施設整備イメージ
■流域対策
○雨水流出抑制施設設置の推進
公共施設や区画整理事業などでは雨水流出量を抑制するために、雨水貯留施設・
調整池や雨水浸透施設の設置を推進しています。また、民間開発事業者にも雨水流
出抑制施設設置指導を行うとともに、各家庭での雨水貯留槽購入に対する補助制度
を導入するなど、流域全体での雨水流出量抑制に取り組んでいます。
○無秩序な開発の抑制、農用地の保全
現状の土地の雨水貯留浸透機能を保持することにより、雨水流出量の増大を防ぎ
ます。
■浸水被害軽減対策
○防災体制の充実
洪水ハザードマップを作成・配布し、浸水想定区域や避難情報などの周知を図ると
ともに地域の防災意識を高め、被害を最小限にとどめる取り組みを推進しています。
また、浸水の発生しやすい地区での土のうの配布・設置など、市民による自助・
共助活動を支援します。
用語:管渠、事業計画、市街化区域、雨水流出抑制施設、雨水貯留施設、雨水調整池、雨水浸透施設、
雨水貯留槽、洪水ハザードマップ、自助、共助
-51-
(2)地震に強い
下水道
1)方針・目標
地震時にも安心して下水道を使えるよう、下水道施設の耐震
化を推進する必要があります。しかし、全施設の耐震化には長
い時間と多額の費用を要します。このため、「防災(耐震化)」
「減災(被害の最小化)」
「被災時の業務継続性確保(BCP)」の3
つの視点を持った総合的な地震対策に取り組んでいきます。
●総合的な地震対策の推進により
地震に強い下水道を目指します
2)主な施策
施策1-3.下水道施設の地震対策
■下水道総合地震対策計画策定
以下の3つの視点での地震対策計画を策定します。
視点1:「防災(耐震化)」
視点2:「減災(被害の最小化)」
視点3:「被災時の業務継続性確保(BCP)」
■計画に基づく施設の耐震化等の推進
地震対策計画の基づき、重要な施設から順次、耐震診
断と耐震補強を進め、地震に強い下水道を構築します。
■危機管理体制の強化
地震発生時にも被害を最小化し、早期復旧を図れるよ
う、関係機関との連携して非常時対応計画や事前対応計
画の策定、非常時対応訓練等を推進します。
図 5-2-4 新潟県中越地震における下水道施設の被害状況
出典:国土交通省 HP
用語:耐震化、防災、減災、BCP、下水道総合地震対策、耐震診断、処理場
-52-
3)施策実施効果
下水道施設が被災した場合、公衆衛生問題や交通障害の発生
ばかりか、トイレの使用が不可能となるなど、住民の健康や社
会活動に重大な影響します。重要な施設の耐震化を図る「防
災」、被災を想定して被害の最小化を図る「減災」を組み合わ
せた総合的な地震対策を推進することで、地震時にも安心して
下水道を使用できるようになります。
図 5-2-5 総合的な地震対策イメージ
出典:国土交通省 HP
図 5-2-6 マンホールに直接設置するトイレ
出典:国土交通省 HP
(下水道地震対策技術検討委員会報告書)
用語:耐震化、防災、減災、管渠、水処理、処理場
-53-
(3)道路陥没事故
の未然防止
1)方針・目標
管渠の老朽化による道路陥没事故の発生は、交通障害や人身
事故など、社会的に大きな影響を与える可能性があります。全
国の実績では布設後 30 年を経過すると道路陥没事故が増える
傾向にあります。本市でも 30 年経過した老朽管が増えている
ため、計画的な管渠の点検・調査や修繕・改築を進め、道路陥
没事故未然防止対策を推進します。
●予防保全型維持管理と計画的改築の推進により
道路陥没事故の未然防止を目指します
2)主な施策
施策1-4.管路の長寿命化対策
■計画的な維持管理(点検・調査・修繕)
管渠は地中に埋まっていて状態把握が困難です。この
ため定期的にマンホール内や管内の点検・調査を行い、
状態に応じてマンホール蓋の交換や管渠の補修等を行
います。
■計画的な改築(長寿命化または更新)
管渠等の劣化が激しい場合は、管渠内の更生(ライニ
ング)や布設替え(リニューアル)を行います。
■施設の情報管理
目に見えにくい管路施設の維持管理・修繕情報などを
一元管理し、維持管理の効率化を図ります。
図 5-2-7 経過年数別道路陥没箇所数(全国)
出典:国土交通省 HP
用語:管渠、修繕、改築、予防保全型維持管理、長寿命化、更新、更生、ライニング
-54-
3)施策実施効果
下水道管路施設の計画的な維持管理・改築により、道路陥没
事故を未然に防止し、安定した下水処理を継続することができ
ます。また管渠の更生を行うことで、管渠破損部分からの地下
水や雨水の浸入を防いだり、管路の耐震化を図れるなど、機能
向上も期待されます。
※ライニング
図 5-2-8 下水道管渠の老朽化対策の例
※ライニング
図 5-2-9 マンホールの老朽化対策の例
※傷んだ管渠やマンホールなどの表面を合成樹脂やモルタルなどの保護材で被覆
(ライニング)しています。
用語:管路、改築、更生、耐震化
-55-
柱2.暮らし
(1)公衆衛生向上
生活環境改善
健康で快適な市民生活の実現に貢献します
1)方針・目標
平成21年度末現在、本市の下水道処理人口普及率は93.8%に
達しました。しかし依然、市街化調整区域を中心とする地区の
約5,100人の市民が公共下水道を使用できない状況となってお
り、普及率の向上が課題となっています。
このため、低コスト型・効率的な汚水管渠整備手法を取り入
れ、早期の下水道処理人口普及率向上を目指します。
●公共下水道(汚水処理施設)の整備推進により
下水道処理人口普及率の向上を目指します
2)主な施策
施策2-1.公共下水道(汚水管渠)の整備
■汚水管渠整備
整備効果・優先度を考慮し、市街化区域に隣接する地
区等から順次、汚水管渠整備を推進します。
■低コスト型の新たな汚水管渠整備手法の検討
小口径マンホールの採用や管渠の浅層埋設、管渠工事
で発生する土砂の有効利用などにより、管渠整備コスト
の縮減に努めます。
施策2-2.浄水管理センターの増設
■綾瀬市浄水管理センターの増設
汚水管渠の整備、普及拡大による処理場への流入水量
増加に合わせ、綾瀬市浄水管理センター内の処理施設を
増設します。
施策2-3.流域下水道の建設負担
■流域下水道施設増設等の事業費負担
相模川流域下水道施設の増設等の事業費を一部負担
します。
図 5-2-10 公共下水道施設整備のイメージ
用語:下水道処理人口普及率、市街化調整区域、管渠、市街化区域、浅層埋設、処理場、流域下水道
-56-
3)施策実施効果
汚水管渠整備を行い下水道処理人口普及普及率を向上させ
ることにより、市民の皆さまが公共下水道(汚水)が使用でき、
衛生的で快適な住環境や、水洗トイレの使用による快適な生活
環境を創造・維持できます。さらに、河川や水路の水質改善等、
環境改善効果も期待されます。
表 5-2-1
公共下水道(汚水管渠)の整備計画
平成 21 年度
整備面積
普及人口
行政人口
普及率
平成 42 年度
(現況)
(全体計画)
1,072.6ha
76,394 人
81,486 人
93.8%
1,742.6ha
80,100 人
80,100 人
100%
うち
市街化調整区域
残事業
117.3ha
3,430 人
3,430 人
整備業費
約 3.3 億円
●衛生的な住環境●
公共下水道(汚水管渠)の普及で
カやハエが発生しにくくなり
快適な住環境が創造されます
●快適な住環境●
公共下水道(汚水管渠)の普及で
水洗トイレの使用や台所・風呂
などの生活排水処理ができ
快適な生活環境が創造されます
●河川等の環境改善●
公共下水道(汚水管渠)の普及で
河川や水路の水質改善・維持など
環境改善効果も期待されます
用語:下水道処理人口普及率、管渠
-57-
柱3.環境
(1)公共用水域の
水質改善
環境への負荷を低減する都市づくりに貢献します
1)方針・目標
公共下水道(汚水処理施設)の普及拡大に伴い、河川の水質は
大きく改善されています。今後は公共下水道(汚水処理施設)
の適正な維持により、公共用水域の良好な水質を維持するとと
もに、整備拡大と未接続解消対策の推進により小水路などの水
質改善にも努めていきます。
●公共下水道(汚水処理施設)の整備・維持により
公共用水域の水質維持と一層の改善を目指します
2)主な施策
施策3-1.公共下水道(汚水処理施設)普及による
公共用水域水質改善
⇒施策 2-1、2-2、2-3 と合わせた取り組みを推進します
施策2-1.公共下水道(汚水管渠)の整備
施策2-2.浄水管理センターの増設
施策2-3.流域下水道の建設負担
3) 施策実施効果
公共下水道(汚水処理施設)の普及拡大と適正な維持管理に
より、良好な水環境を維持することができ、潤いあるきれいな
まちが形成されます。
用語:公共用水域、環境基準、管渠、流域下水道
-58-
(2)健全な水循環
の再構築
1)方針・目標
都市化の進展は、河川や水路の水質悪化、雨水浸透量の減少
による地下水や湧き水の減少、雨天時の急激な雨水流出、平常
時の河川流量の減少など、水循環に影響を及ぼします。本市で
は公共事業のほか、開発事業や家庭での雨水貯留浸透施設設置
を促進し、健全な水循環の再構築を目指していきます。
●雨水貯留浸透施設の設置促進により
健全な水循環の再構築を目指します
2)主な施策
施策3-2.雨水貯留浸透施設設置促進による
健全な水循環の再構築
⇒公共施設や開発事業、各家庭での雨水貯留浸透施設設置促
進など、施策1-2と合わせた取り組みを推進します
施策 1-2.他事業との連携等、
総合的な浸水対策の推進
3) 施策実施効果
雨水貯留浸透施設の設置により、まちに降った雨は地下へ浸
透するなどして、ゆっくり川へ流れます。このため、雨天時の
浸水被害軽減効果の他、地下水涵養や平常時の河川流量の確保
など、健全な水循環構築への貢献が期待されます。
図 5-2-11 雨水浸透対策のイメージ
出典:下水道雨水浸透技術マニュアル-H13-より編集
用語:雨水貯留浸透施設、再構築
-59-
(3)下水道資源 ・ 1)方針・目標
エネルギーの
下水の処理には多くの電力を使用する一方、下水道は処理水
循環型
や下水汚泥、熱、バイオマスエネルギー、施設空間など、様々
システム構築
な資源を有しています。下水処理の省エネ対策や温室効果ガス
排出量削減に努めるとともに、下水道資源・エネルギーの利活
用に努め、循環型社会構築への貢献を目指します。
●省エネ・創エネ対策推進と下水道資源有効利用促進により
下水道資源・エネルギーの循環型システム構築
を目指します
2)主な施策
施策3-3.省エネ機器導入【施策 4-2 と合わせた取り組み】
■施設改築時の省エネ機器導入
処理場やポンプ場の機器の改築(長寿命化または更
新)計画検討時には、高効率型・省エネルギー型機器の
導入についても検討します。
施策3-4.新エネルギーの導入検討
■太陽光発電等の導入検討
「綾瀬市地球温暖化対策実行計画」に基づき、太陽光
発電等の創エネルギー対策についても検討を進めます。
施策3-5.処理水・汚泥等の下水資源の有効利用
■民間事業の活用による汚泥有効利用の継続
民間事業者による下水汚泥の有効利用(コンポストや
セメント材料)を継続します。
■新技術導入による汚泥減量化および有効利用方法検討
新技術動向に応じ、汚泥減量化、燃料などへの資源化
等、新たな汚泥有効利用方法や、処理水・雨水の有効利
用方法の研究を進めます。
用語:汚泥、バイオマス、処理場、ポンプ場、改築、長寿命化、更新、綾瀬市地球温暖化対策実行計画、
コンポスト
-60-
3)施策実施効果
省エネ・創エネ対策の推進により、汚水処理にかかる電気代
等の維持管理コスト縮減効果や温室効果ガス排出量削減効果
が期待されます。また、下水道資源の利活用により、循環型社
会構築への貢献が期待されます。
送風機の消費電力を
約2~3割削減見込み
汚水の生物処理に必要な空気を送る散気装置を、微細な気泡を発生させるものとす
ることで、酸素が溶解しやすくなり、処理場で最も多くの電力を消費する送風機の
消費電力を約 2~3 割削減見込み
図 5-2-12 散気装置変更による消費電力削減例
出典:国土交通省 HP より編集
図 5-2-13 下水道施設の上部を利用した太陽光発電の例
相模川流域下水道(右岸処理場)
出典:神奈川県 HP
用語:温室効果ガス、散気装置、送風機、太陽光発電、処理場
-61-
柱4.施設再生
(1)下水道施設の
機能維持
機能向上
安全・快適な暮らし、良好な環境を守り続けるために、
効率的な施設再生に努めます
1)方針・目標
下水道の普及により安全・快適な暮らしと良好な環境が築か
れてきました。今後も下水道サービスを維持・向上させるため
に、老朽化しつつある下水道施設の適正な維持管理と計画的な
改築を推進します。また地震対策や省エネ対策等と合わせた施
設再構築を推進し、機能向上もあわせて推進していきます。
●下水道施設の効率的維持管理と再構築の推進により
下水道の機能維持と機能向上を目指します
2)主な施策
施策4-1.管路の計画的再構築
⇒施策 1-4 と合わせた取り組みを推進します
施策1-4.管路の長寿命化対策
施策4-2.処理場・ポンプ場の計画的再構築
■計画的な維持管理(点検・調査・修繕)
処理場・ポンプ場には様々な機器があります。これら
の機器は日常点検のほか、定期的に劣化診断・劣化予測
を行い、状態に応じて修繕を行います。
■計画的な改築(長寿命化または更新)
機器や部品の劣化が進行している場合は、長寿命化
(部品交換)や更新(施設取替え)を行います。
■施設の情報管理
機器の適切な維持管理や劣化予測のためには、施設の
維持管理・診断情報などの蓄積が重要です。施設台帳と
維持管理台帳の一元化により、維持管理の効率化を図り
ます。
用語:改築、再構築、管路、長寿命化、処理場、ポンプ場、修繕、更新
-62-
3)施策実施効果
下水道施設の予防保全型維持管理により、機器故障等によ
る事故発生や機能停止を未然に防止し、安定した下水処理を継
続することができます。また、施設の長寿命化対策は、改築コ
ストの縮減や事業費の平準化など、下水道の安定経営にもつな
がります。
施設更新の際に、省エネ機器や高効率型機器の導入などを
行うことにより、維持管理費等の低減・効率化も期待できます。
5,000
4,500
4,000
百万円
3,500
管渠:改築費
管渠:建設費
ポンプ場:改築費
ポンプ場:建設費
処理場:改築費
処理場:建設費
耐用年数サイクルでの
改築の場合の事業費推計値
施設の長寿命化による
事業費の平準化
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
S44年度
S46年度
S48年度
S50年度
S52年度
S54年度
S56年度
S58年度
S60年度
S62年度
H 1年度
H 3年度
H 5年度
H 7年度
H 9年度
H11年度
H13年度
H15年度
H17年度
H19年度
H21年度
H23年度
H25年度
H27年度
H29年度
H31年度
H33年度
H35年度
H37年度
H39年度
H41年度
0
図 5-2-14 施設の長寿命化対策による改築事業費平準化のイメージ
図 5-2-15 ポンプの老朽化対策の例
出典:国土交通省 HP
用語:予防保全型維持管理、長寿命化、改築
-63-
(2)下水道施設
空間の活用
1)方針・目標
市民の皆様に下水道を知って頂き、適切に使用して頂くこと
で、より効果的な下水道事業運営が可能となります。このため、
環境教育の拠点として、綾瀬市浄水管理センターを活用してい
きます。また、新エネルギー導入等、施設上部空間や未利用地
の活用を検討し、地域環境への貢献も目指します。
●下水道施設空間の活用により
地域に開かれた下水道を目指します
2)主な施策
施策4-3.浄水管理センターの空間活用
■環境教育や下水道PRの場としての
浄水管理センター活用
浄水管理センターでの施設見学実施など、下水道PR
や環境教育の場として、施設を活用していきます。
■浄水管理センターの未利用地や施設上部の有効利用検討
浄水管理センター内には将来、施設を増設する予定の
土地で現在は未利用の土地もあります。これらの土地の
有効利用方法を検討するとともに、管理棟上部を利用し
た太陽光発電などの導入検討を行います。
3)施策実施効果
下水道事業に対するご理解・ご協力を頂くことで、下水道施
設の適切な維持管理や事業運営が可能となります。また、新エ
ネルギー導入等、施設上部空間や未利用地の活用により地域環
境への貢献も期待されます。
用語:浄水管理センター、太陽光発電
-64-
柱5.経営と管理
(1)持続可能な
経営基盤の
確立
下水道サービスの維持・向上のために
経営基盤の強化に努めます
1)方針・目標
本市の下水道事業は整備から維持・再構築へとシフトしてお
り、下水道サービスを維持し続けるためには、維持管理費や再
構築事業費等、今後も多くの費用を要します。このため、経費
削減や経営の合理化など、継続的に経営改善に取り組み、経営
基盤の強化に努めます。
●継続的な経営改善や効率的な経営手法の導入により
持続可能な下水道事業経営基盤の確立
を目指します
2)主な施策
施策5-1.アセットマネジメント手法を取り入れた
下水道事業経営
■中長期経営計画策定
下水道中期ビジョンや全体計画を基に、中長期の下水
道経営計画を策定し、経営基盤強化への取り組み方針を
検討します。
■効率的な経営手法の導入
コスト縮減への取り組み(包括的民間委託による維持
管理の効率化、新技術導入による建設コスト縮減など)
や収入確保への取り組み(雨天時浸入水削減による有収
率の向上、下水道使用料の適正化など)、企業会計方式
導入などの検討を進めます。
■PDCA サイクルによる下水道中期ビジョンの実行と
アカウンタビリティの向上
下水道中期ビジョンに位置付けた事業の実施状況や
経営状況は、市民の皆様に分かりやすく公表し、事業の
透明化を図ります。また下水道中期ビジョンは原則的に
5 年サイクルで評価・計画見直しを行い、より効率的・
効果的な下水道事業運営を目指します。
用語:再構築、アセットマネジメント、基本計画(全体計画)、包括的民間委託、雨天時浸入水、有収率、
下水道使用料、企業会計、PDCA サイクル、アカウンタビリティ
-65-
3)施策実施効果
将来を見据えた下水道事業経営方針を明らかにし、コスト
縮減への取り組みを推進することにより、市民の皆様から頂く
下水道使用料を有効に活用した安定的下水道事業運営を推進
することが可能です。
またアカウンタビリティの向上により、市民の皆様に下水
道事業への理解を深めて頂くとともに、市民ニーズを把握・反
映した、より効率的・効果的な下水道事業運営が可能となりま
す。
下水道使用料
の適正化
新たな経営
手法の導入
下水道財政
の現状分析
健全な
下水道 事業
経営
維持管理
コストの縮減
図 5-2-16
経営計画
の策定
整備
コストの縮減
健全な下水道事業経営への取り組みイメージ
用語:下水道使用料、アカウンタビリティ
-66-
第6章
事業経営
-67-
6-1
下水道財政の見通し
普及拡大・建設事業のピークが過ぎ、近年の下水道総歳出・総歳入額は約 33~40
億円/年となっています。しかし、今後は老朽化施設の改築事業量の増加などが見込
まれ、平成 23~32 年度の 10 年間では平均約 37 億円/年の歳出入が見込まれます。普
及率が約 94%に達し、節水傾向などの影響により、下水道使用料収入の大幅な変動は
無いものと見込まれるなか、改築事業費や地方債償還金などの財源を確保し、安定し
た下水道経営を行うためには、コスト縮減や収入確保の取り組みが重要です。
7,000
ほか
用地費
建設事業費
流域下水道事業費
管理費
地方債償還金
6,000
歳出額(百万円)
5,000
4,000
実績および見込み(H22)← ⇒中期ビジョン見通し
3,000
2,000
1,000
図 6-1-1
H32年度
H30年度
H28年度
H26年度
H24年度
H22年度
H20年度
H18年度
H16年度
H14年度
H12年度
H10年度
H8年度
H6年度
H4年度
H2年度
S63年度
S61年度
S59年度
S57年度
S55年度
S53年度
S51年度
S49年度
S47年度
S45年度
0
下水道事業総歳出の実績と見通し
7,000
補助金(国、県、他)
地方債
受益者負担金等
その他 諸収入
一般会計繰入金
下水道使用料等
6,000
4,000
3,000
2,000
1,000
図 6-1-2
下水道事業総歳入の実績と見通し
用語:改築、下水道使用料、公債費(地方債償還金)、流域下水道、受益者負担金、一般会計
-68-
H32年度
H30年度
H28年度
H26年度
H24年度
H22年度
H20年度
H18年度
H16年度
H14年度
H12年度
H10年度
H8年度
H6年度
H4年度
H2年度
S63年度
S61年度
S59年度
S57年度
S55年度
S53年度
S51年度
S49年度
S47年度
0
S45年度
歳入額(百万円)
5,000
実績および見込み(H22)← ⇒中期ビジョン見通し
6-2
下水道経営方針
平成 21 年度現在、本市の下水道事業の経費回収率は約 49%となっており、県内類
似自治体※の平均 55%を下回っています。経費不足分は一般会計から繰入れている状
況ですが、経営の健全化・独立採算制・事業の継続の観点から、経費回収率の向上を
目指す必要があります。
『あやせ下水道中期ビジョン』では“事業効果~コスト~リスク”のバランスを考
慮し、最小のコストで最大の効果が得られるよう、ハード対策(施設整備)のほか自
助・共助(市民との協働)なども考慮した事業計画を立案しました。
※
県内類似自治体=単独処理区と流域関連処理区を有する4自治体
(秦野市、伊勢原市、小田原市、綾瀬市)
市民
収入
(使用料)
コスト
行政
市民
リスク
効果
ソフト
自助・共助
ニーズ
図 6-2-1
市民
下水道中期ビジョンおよび下水道事業経営の視点
「事業効果~コスト~リスク」
用語:経費回収率、一般会計、ハード対策(ハード)、自助、共助、ソフト対策(ソフト)
-69-
■事業効果とニーズ
綾瀬市公共下水道事業は昭和 45 年3月に当初全体計画策定以来、市民ニーズや社
会情勢変化に応じ、定期的に計画見直しを行いながら整備を拡大してきました。
下水道中期ビジョンでは、下水道サービス維持とより一層のサービス向上をめざし、
施策の必要性・重要性等を考慮して、施策内容と事業量を決定しました。今後も下水
道ビジョンの実現のため、下記に示す対応を図りながら、効率的・効果的な事業実施
を目指します。ただし、事業効果(事業量)とコストはトレードオフの関係にあるた
め、事業執行の工夫やコスト縮減を講じたとしても財政制約上やむを得ない場合には、
施策目標や事業量を調整しながら、最も効率的・効果的事業実施を目指します。
●社会情勢変化に応じた事業規模の定期的見直し
・ 人口動態、水使用状況の変化や都市計画の見直し等に合わせ、定期的に下水
道全体計画を見直しています。平成 22 年度には全体計画見直しを行い、計
画人口 100,000 人(平成 32 年目標)から 80,100 人(下水道計画の平成 42
年推計値)に見直しを行い、適正規模の施設を整備・維持していく方針とし
ています。
・ 相模川流域関連処理区に隣接する江戸道処理分区(東部処理区)の流域下水
道への編入検討を行い、流域下水道の余能力活用やスケールメリットを活か
した効率的な事業実施を目指します。
●事業の重点化
・ 財政的、時間的制約の中で早期に事業効果を発揮できるよう、事業優先度を
考慮し、「選択と集中」の考えに基づく事業実施を目指します。
・ 今後事業量の増加が見込まれる改築事業については、施設・設備が故障した
場合の“影響度”と“老朽度・故障確率”などを総合的に判断し、対策優先
度の大きい施設から改築を進め、優先度の低い施設は修繕等での延命化を図
るなど、事業優先度に応じた対応を図ります。
●事業の平準化・安定化
・ 図 6-1 に示すように、今後は市街化調整区域の管渠整備や綾瀬市浄水管理セ
ンターの施設増設などの増設事業と老朽化施設の改築事業を同時に進めて
いく必要があり、建設改良事業費が増加していく見通しです。このため、改
築事業の平準化についても検討を行い、事業の平準化・安定化を目指します。
用語:基本計画(全体計画)、トレードオフ、都市計画、処理区、流域下水道、スケールメリット、改築、
修繕、市街化調整区域
-70-
■コストと収入
最小のコストで最大の効果を発揮するために、最新技術導入や維持管理の効率化な
どによるコスト縮減への取り組みと、未接続の解消や下水道使用料金の適正化などに
よる収入確保への取り組みを引き続き推進します。
【コスト縮減への取り組み】
●新技術や高効率型機器等の導入による建設・改築事業費、維持管理費の縮減
・ 管渠の浅層埋設や小口径マンホールの採用などの新技術導入により建設事
業費を縮減します。
・ 高効率型機器の導入による建設・改築機器台数の縮減や、高効率・省エネ機
器の導入により維持管理費を縮減します。
●事業の総合化(事業分野を越えた総合的取り組み等)
・ 河川事業・道路事業・開発事業や各家庭と連携した総合的な雨水排水対策実
施により、効率的・経済的な事業を実施します。
・ 改築事業と耐震化事業を一体的に進めることにより、効率的・経済的な事業
実施します。
●維持管理の効率化(包括的民間委託導入など)
・ 包括的民間委託や建設工事の監理委託等を推進し、維持管理費や人件費の縮
減に努めます。
●不明水の削減
・ 雨天時浸入水や地下水等の不明水削減対策を推進し、汚水処理費の縮減を目
指します。
【収入確保への取り組み】
●未接続の解消による有収水量の確保
・ 平成 21 年度末現在、水洗化率は 98.8%となっていますが、供用開始区域内
の市民のうち約 950 人が公共下水道未接続となっています。また、事業場・
営業施設等でも未接続のものもあるため、早期に接続して頂き、有収水量を
確保するよう努めていきます。
●汚水量の適正把握
・ 井戸水や地下水等を利用し、排水している施設については、それらの排水量
を適正に把握し、下水道使用料を徴収するよう努めていきます。
●下水道使用料の適正化
・ 私費負担が原則である汚水処理費のうち、下水道使用料での経費回収率は約
49%にとどまっています。コスト縮減への取り組みと合わせて、下水道使用
料の適正化についても検討を進めます。
用語:水洗化率、下水道使用料、浅層埋設、耐震化、包括的民間委託、不明水、雨天時浸入水、有収水量、
汚水処理費、経費回収率
-71-
■リスクとソフト・自助・共助対策
地震・浸水対策(リスク対策)については、施設整備(ハード対策)のみでは十分
な効果の発揮までに多額のコストや時間を要するため、ハザードマップなどの市民へ
の情報発信(ソフト対策)、自主避難訓練などの市民との協働(自助・共助)によっ
て、被害の軽減対策を検討します。
●浸水発生地区での自助・共助の支援
・浸水の発生しやすい地区での土のうの配布・設置など、市民による自助・共助
活動を支援します。
●洪水ハザードマップの活用
・洪水ハザードマップ等を活用し、浸水想定区域や想定される被害の程度、避難
場所などの情報を発信します。
●総合地震対策計画・業務継続計画(BCP)の策定
・下水道施設の耐震化には費用と時間を要するため、被災時の下水道サービス水
準を設定しながら段階的に耐震化を進める必要があります。このため、全下水
道施設の耐震化がなされていない段階で被災した場合にも、最低限必要な処理
機能は果たし、かつ早期に本来の機能を発揮できるよう復旧するための業務継
続計画(BCP)を策定し、対策を推進します。
●劣化診断の実施、劣化予測精度の向上、施設維持管理システムの確立
・下水道管渠や処理場・ポンプ場の設備など、下水道施設ストックは膨大にあり、
劣化が進んでいきます。これらの施設を適正に管理し、事故を未然防止するた
めに、劣化診断の実施、劣化予測精度の向上、施設維持管理システムを確立し、
リスク評価に基づいた適正な施設管理と改築(長寿命化または更新)を推進し
ます。
用語:ハード対策(ハード)、ソフト対策(ソフト)、ハザードマップ、自助、共助、洪水ハザードマップ、
BCP、管渠、処理場、ポンプ場、改築、長寿命化、更新
-72-
第7章
下水道中期ビジョンの実現に向けて
-73-
7-1
下水道中期ビジョンの進行管理
「あやせ下水道中期ビジョン」は PDCA サイクルにより、定期的に事業評価を行い、
必要に応じて計画見直しを行いながら、より効率的・効果的な事業実施を目指します。
P
(PLAN)
各種計画策定
平成
綾瀬市下水道が目指す将来像
を示すものとして
『あやせ下水道中期ビジョン』
を策定しました。
市民
ニーズ
の反映
22
定
期
的
な
改
善
見
直
し
で
レ
ベ
ル
ア
ッ
プ
年度
D
(DO)
各種事業の実施・運営
平成
23
~
使用料負担
や
自助・共助
など
市民との
年度
市民への
平成
アクションプログラムで定めた
施策目標や事業実施状況を
評価・分析・公表します。
C
27
年度
「目標どおりの事業進捗か?」
「効果は出ているのか?」などを評価し、
市民の皆さまにも公表します
平成
事業評価結果や
市民の皆さまのニーズをお聞きし、
『あやせ下水道中期ビジョン』の
改善見直しを行います。
A
(ACT)
下水道中期ビジョン
の改善見直し
『あやせ下水道中期ビジョン』
アクションプログラムに基づき、
各種事業を実施します。
各事業の中でも、
最新技術導入やコスト縮減等を検討し、
より効率的・効果的な事業実施を目指します
27
(CHECK)
各種事業の
評価・分析
基本理念・基本方針を定め、
アクションプログラム(H23~H27)
中期計画(H23~H32)を策定しました
27
年度
公表
市民による
評価と
新たな
ニーズ
または
32
協働
事業実施状況や市民ニーズ等に応じ、
5 年ごとに改善見直しを行います
『あやせ下水道中期ビジョン』の定期的改善見直しで
綾瀬市の将来都市像実現へ
緑と文化が薫るふれあいのまち あやせ
用語:PDCA サイクル、下水道使用料、自助、共助
-74-
7-2
下水道中期ビジョンの評価指標(アクションプログラム)
「あやせ下水道中期ビジョン」で位置付けた事業を確実に実施し(D)
、効果を上
げるために、評価(C)・改善(A)のための評価指標等を設定し、アクションプロ
グラムを実行します。
また、これらの実施状況は市民の皆様に分かりやすく開示します。さらに、市民の
皆様の意見を聞きながら、必要に応じて施策目標や事業計画の見直し・改善(A)を
行っていきます。
-75-
表7-1
柱
施策目標
浸水被害の軽減
柱1
安全・安心
地震に強い
下水道
道路陥没事故の
未然防止
柱2
暮らし
柱3
環境
柱4
施設再生
柱5
経営と管理
「あやせ下水道中期ビジョン」の施策評価指標(アクションプログラム期間)
アクションプログラム
活動内容
1-1.雨水管渠等の整備(並塚・中原・深谷中央地区等)
1-2.他事業との連携等、総合的な浸水対策の推進
1-3.下水道施設の地震対策.
■「下水道総合地震対策計画」策定
■「施設の耐震診断調査と耐震設計」
(処理場:管理棟・消毒施設・汚泥処理棟など)
(上土棚中継ポンプ場)
1-4.管路の長寿命化対策.
■「管路の長寿命化計画」策定
■「管路の劣化診断調査」
(下水道管渠(本管) 約 3.6km)
2-1.公共下水道(汚水管渠)の整備
■ 深中地区・上土棚地区および市街化調整区域
下水道処理人口普及率
2-2.浄水管理センターの増設
の向上
■ 7~8/10 池目等の増設設計および造成
2-3.流域下水道の建設負担
公共用水域の
3-1.公共下水道(汚水処理施設)普及による公共用水域水質改善
水質・維持向上
【施策 2-1、2-2、2-3 と合わせた取り組み】
健全な水循環の
3-2.雨水貯留浸透施設設置促進による健全な水循環の再構築
再構築
【施策 1-2 と合わせた取り組み】
3-3.省エネ機器導入【施策 4-2 と合わせた取り組み】
下水道資源
3-4.新エネルギーの導入検討
エネルギー
■ 太陽光発電等の導入検討
循環型システム構築 3-5.処理水・汚泥等の下水資源の有効利用
■民間事業の活用による汚泥有効利用の継続
■新技術導入による汚泥減量化および有効利用方法検討
4-1.管路の計画的再構築【施策 1-4 と合わせた取り組み】
4-2.処理場・ポンプ場の計画的再構築
下水道機能維持と
■老朽化施設の更新工事
機能向上
(処理場:沈砂池・ポンプ設備、汚泥処理設備、電気設備など)
■「処理場・ポンプ場の長寿命化計画」策定
■「処理場・ポンプ場の劣化診断調査」
4-2.浄水管理センターの空間活用
地域に開かれた
■下水道PRの場としての浄水管理センター利用
下水道
■未利用地・上部利用等の研究
5-1.アセットマネジメント手法を取り入れた下水道経営
持続可能な
■中長期経営計画策定
下水道事業経営基盤
■効率的な経営手法の導入
の強化
■PDCA サイクルによる下水道中期ビジョンの実行と
アカウンタビリティの向上
評価指標等
現状
雨水管渠整備面積率
地震対策の推進
管路の長寿命化対策の推進
下水道処理人口普及率
河川水質環境基準達成率
【施策 1-2 と合わせた取り組み】
下水汚泥の有効利用率
処理場・ポンプ場の長寿命化対策の推進
下水道 PR の場としての
浄水管理センター利用
経費回収率
H21
アクションプログラム
目標
H27
67.6%
68.0%
-
■計画・診断に基づき具体的な対策事業量を設定
老朽化した取付管の
修繕・更新を実施中
■計画・診断に基づき具体的な対策事業量を設定
93.8%
94.3%
100%
100%
-
-
100%
100%
耐用年数を超えた
処理場・ポンプ場施
設の一部の更新を
実施中
■計画・診断に基づき具体的な対策事業量を設定
夏休み親子下水道教室
施設見学会を
実施中
約49%
夏休み親子下水道教室、施設見学会の継続実施
約52%
用語:管渠、下水道総合地震対策、耐震診断、管路、長寿命化、取付管、下水道処理人口普及率、市街化調整区域、浄水管理センター、流域下水道、公共用水域、雨水貯留浸透施設、太陽光発電、汚泥、再構築、処理場、ポンプ場、更新、沈砂池、汚泥処理、
アセットマネジメント、PDCA サイクル、アカウンタビリティ、経費回収率
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