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母娘研究論文のメタ分析

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母娘研究論文のメタ分析
2003 年度 修了
現代の母娘関係についての一考察
―母娘研究論文のメタ分析的研究を通して―
立命館大学応用人間科学研究科
対人援助学領域
家族機能・社会行動クラスター
要約
現 代 の母 娘関 係 の特 徴と し て「 仲 の良 い母 と 娘」 とい う もの が 一般 的に 広 く認 知され て
いる が 、臨 床現 場 から は、 密 着し た 母娘 関係 は 双方 の心 理 的問 題 を引 き起 こ すと いう指 摘
が多 く なさ れて い る。 世間 で 言わ れ てい る母 娘 のイ メー ジ と臨 床 場面 での 母 娘は 全く異 な
る側 面 を見 せて い るよ うに も 思わ れ るが 、果 た して 現代 の 母娘 関 係の 実態 と はど のよう な
もの な のだ ろう か 。そ れを 知 るた め には 、母 娘 関係 につ い て何 が 語ら れ、 何 を問 題とし て
研究 さ れて いる の かを 理解 す る必 要 があ る。 よ って 本研 究 では 、 母娘 関係 を 扱っ た研究 論
文を メ タ分 析風 に 対象 化し て 概要 的 な研 究を 行 なう こと を 通し て 、そ こか ら 見え てくる 現
代の 母 と娘 の姿 に つい て考 察 する こ とを 目的 と する 。
本 研 究 に お け る 対 象 論 文 は 、デ ー タ ベ ー ス に よ る 検 索 か ら 母 娘 関 係 に 関 す る 78 の 研 究 論
文を 抽 出し 、そ れ らを 分析 対 象と し た。 まず こ れら の論 文 を社 会 学系 の論 文 と臨 床心理 学
系の 論 文と に分 け 、そ れぞ れ にお い て論 文の テ ーマ を分 類 した 。 その 上で 、 第一 に社会 学
系の 論 文に おけ る 研究 テー マ の変 遷 と最 近の 母 娘研 究の 傾 向に つ いて 、第 二 に社 会学系 の
論文 と 臨床 事例 に 表わ れる 母 娘関 係 の特 徴に つ いて それ ぞ れ分 析 を行 なっ た 。こ れらを 踏
まえ 、 最後 に母 娘 研究 の流 れ とそ の 背景 、今 後 の母 娘研 究 の課 題 につ いて 考 察し た。
従 来 の伝 統的 な 研究 テー マ とし て は、 ライ フ スタ イル 選 択や ジ ェン ダー 、 娘の 発達な ど
母親 の 娘へ の影 響 や、 娘の 母 親認 知 に関 する 研 究が 挙げ ら れる が 、こ れら を 概観 すると 、
こ の 20 年 ほ ど の 間 で 大 き な 内 容 の 変 化 は 見 ら れ ず 、ほ ぼ 確 立 さ れ た 領 域 で あ る こ と が う か
がえ る 。一 方最 近 の母 娘研 究 のト レ ンド とも 言 える 、母 と 娘の 関 係性 に焦 点 を当 てた研 究
から は 、心 理的 距 離が 非常 に 近い 母 娘像 が見 え てく る。 こ のよ う な研 究が 過 去に はほと ん
ど行 な われ ず、 近 年に なっ て 急増 し てい るこ と から 、こ う した 母 娘像 が現 代 に特 徴的な も
の で あ り 、臨 床 的 知 見 を 含 め て 多 く の 論 議 の 対 象 と な っ て い る こ と が う か が え る 。た だ し 、
伝統 的 な研 究テ ー マと 比べ て まだ 確 立さ れて い ない 分野 で ある こ とも 事実 で あり 、母娘 間
の介 護 問題 や母 娘 関係 と父 親 との 関 連な どを 含 めて 、母 と 娘の 関 係性 につ い ては 検討す べ
き点 が 多く 残さ れ てい ると 言 える で あろ う。
社 会 学系 の論 文 にお いて は 、母 と 娘の 関係 が 密接 であ る とい う 前提 で研 究 され ている 。
一方 臨 床事 例に お いて は、 思 春期 に おけ る不 登 校や 摂食 障 害の 背 景に 、母 子 密着 の様相 が
みら れ るも のが あ る。 この 場 合の 母 と娘 の密 着 は、 親密 と いう よ り依 存的 ・ 支配 的な側 面
が強 調 され てい る よう であ る 。し か し、 社会 学 系の 論文 に おい て 母娘 関係 の 前提 とされ て
いる “ 母と 娘の 密 接し た関 係 ”が 、 臨床 事例 に 見ら れる 母 子密 着 と同 質の も ので あるか ど
うか は 明ら かで は ない 。こ れ はす な わち 、臨 床 的問 題が 顕 在化 し てい ない 非 臨床 群の母 娘
にお い ても 、臨 床 的に 指摘 さ れて い るよ うな 傾 向が 内在 化 して い るの かと い う問 題であ る
と言 え る。 今の と ころ この 問 題に 関 する 研究 は 少な いが 、 今後 非 臨床 群を 対 象と した研 究
立命館大学 大学院
2003 年度 修了
を重 ね てい く中 で 、現 代の 母 娘関 係 の特 徴で あ ると され る 密接 し た母 と娘 の 関係 が、果 た
して 本 当に 危惧 さ れる べき 関 係で あ るの か明 ら かに され て いく で あろ う。
以 上 の分 析を 踏 まえ て総 合 的に 考 察す ると 、 近年 の母 娘 研究 の 流れ とし て 、母 と娘の 関
係性 を 扱っ た研 究 の増 加と い う特 徴 があ り、 そ の背 景に は 、現 代 社会 の変 化 とそ れに伴 う
家族 形 態の 変化 を 受け て母 娘 関係 も 変化 した こ とが 考え ら れる 。 特に 、現 代 社会 の大き な
特徴 で ある 少子 高 齢化 の流 れ は母 娘 関係 にも 多 大な 影響 を 及ぼ し てい ると 思 われ る。少 子
化社 会 では 、親 は 子に 対し て 精神 的 な価 値を 期 待し 、特 に 息子 よ りも 密度 の 濃い 交流が で
き精 神 的な 面で 支 えて くれ る 娘を 望 むよ うに な って きて い る。 こ うし た背 景 の中 で、母 と
娘が 相 互に 心理 的 に結 びつ き 、密 接 な母 娘関 係 が生 まれ た と考 え られ る。 ま た平 均寿命 の
伸長 は 成人 同士 の 親子 関係 の 延長 を もた らし 、 それ によ っ て中 期 親子 関係 で の親 の側の 身
体的 ・ 経済 的な 余 裕が 生ま れ てい る 。特 に中 年 期の 女性 の ライ フ スタ イル は 近年 大きく 変
化し て おり 、こ う した 状況 の 中で 、 母親 が健 在 であ りな お かつ 経 済的 にも 余 裕が ある状 態
が生 じ 、母 親か ら 娘へ の援 助 とい う 形を 通し て 、娘 が独 立 した 後 も母 と娘 の 密接 した関 係
が継 続 され てい く ので はな い かと 考 えら れる 。
今 後 の母 娘研 究 に残 され た 第一 の 課題 とし て 、情 緒的 依 存と 絆 とい う親 密 さの 二つの 側
面を 考 慮に 入れ な がら 、臨 床 的問 題 が顕 在化 し てい ない 非 臨床 群 にお いて も 臨床 的に指 摘
され て いる よう な 傾向 が内 在 化し て いる のか を 明ら かに し てい く 必要 性が 挙 げら れる。 第
二の 課 題は 、母 娘 関係 に影 響 を及 ぼ す要 因と し て夫 との 関 係に つ いて も検 討 して いくこ と
であ る 。母 と娘 と いう 一元 的 な関 係 性だ けで な く、 夫や 周 囲の 人 との 関係 を 踏ま えた多 元
的な 関 係性 の中 で 母娘 関係 を 捉え て いか なく て はな らな い だろ う 。方 法論 的 な課 題とし て
は、 質 問紙 調査 に よる 同時 相 関的 研 究の みな ら ず、 継時 的 変化 を 捉え る縦 断 的研 究が望 ま
れる 。 また ほと ん どの 研究 に おい て 対象 者が 限 定さ れて い ると い う問 題が あ り、 今後は よ
り幅 広 い層 のサ ン プル から デ ータ を 収集 し検 討 を重 ねて い く必 要 があ ると 思 われ る。
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