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WHITE PAPER SDA(シリアル・データ・アナライザ

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WHITE PAPER SDA(シリアル・データ・アナライザ
WHITE PAPER
SDA(シリアル・データ・アナライザ)および
SDM(シリアル・データ・マスク)オプションの
動作理論
Michael Schnecher, Product Manager
LeCroy Corporation
シリアル・データ・アナライザ(SDA: Serial Data Analyzer)は、シリアル・データ信号を解析する
ための統合的な測定機能を提供するように設計された機器です。SDA には、WaveMaster の標準的な
波形解析機能のほかに、アイパターン測定機能や統合的なジッタ解析機能があります。SDA のジッタ
解析では、ランダム・ジッタ(Rj)とデタミニスティック・ジッタ(Dj)を分離したり、周期性ジッタ(Pj)、
データ依存ジッタ(DDj)、デューティ・サイクル歪み(DCD)を直接測定したりすることができます。
SDA には、エラー・ビットを直接測定してビット・ストリーム内におけるエラー・ビットの位置を表
示する機能もあります。
SDAの機能
SDA では、WaveMaster の標準的な測定機能(波形解析など)のほかに、ジッタ解析、アイパターン
測定、ビット・エラー測定という 3 種類の測定機能を利用できます。これらの測定機能は
「Summary」画面に一緒に表示されますが、個別に表示することもできます。
SDA における測定では、測定対象の信号が長時間にわたり連続的に捕捉されます。捕捉可能なサンプ
ル数は、測定機器で利用可能なメモリーによってのみ制限されます(たとえば、XXL メモリー・オプシ
ョンでは最大 100M サンプルを捕捉可能)。連続的な捕捉とは、外部トリガーなしですべての測定を実
行できることを意味します。したがって、ジッタ解析でもアイパターン測定でも、測定結果はトリガ
ー・ジッタ(誤差を発生させる主要な要因)の影響を受けません。
SDA による測定では、マスク測定やジッタ・パラメータ(Rj、Dj、Tj、DDJ、Pj、DCD)などの標準機
能を使用するか、標準機能と ASDA(Advanced Serial Data Analysis)オプションを組み合わせて使用す
ることができます。ASDA オプションを使用すると、標準的な測定機能のほかに、数多くの高度なシリ
アル・データ解析機能がサポートされます。SDA で利用できる様々な測定機能を表 1 に示します。
SDMオプションの機能
SDM(Serial Data Mask)オプションの機能は SDA に標準装備されているため、SDM オプション単体
を SDA で使用することはできません。SDM オプションは、WaveMaster シリーズと WavePro7000
シリーズ、Waverunner6000 シリーズのオシロスコープのみで使用できます。SDM オプションを使用
すると、これらのオシロスコープでアイパターン測定を実行できるようになります。また、SDM オプ
ションには、基本的なオシロスコープ用の主要な解析パッケージ(TIE@lvl パラメータを使用する
JTA2 パッケージなど)が含まれています。
注記:
SDA ─機器の名称:シリアル・データ・アナライザ(Serial Data Analyzer)
ASDA─SDA で利用できる Advanced Serial Data Analysis(高度シリアル・データ解析)
パッケージ
SDM ─WaveMaster シリーズと WavePro7000 シリーズ、Waverunner6000 シリーズの
オシロスコープで利用できる Serial Data Mask(シリアル・データ解析)ソフトウェア・パ
ッケージ(SDA では使用できない)
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TIE@lvl パラメータでは、測定対象の信号のエッジと理論上の基準クロック間のタイム・インターバ
ル・エラー(TIE: Time Interval Error)が測定されます。SDM オプションには、外部トリガーなしで
アイパターンを形成するときに使用できる「golden PLL」クロック再生モジュールも含まれています。
表 1 に示すように、SDM オプションには標準的なマスク測定機能があります。測定可能なデータ速度
は、オシロスコープのモデルごとに異なりますので注意してください。測定可能なデータ速度の上限は、
オシロスコープのアナログ帯域幅によって制限されます。
ASDAオプションの機能
ASDA(Advanced Serial Data Analysis)は、複数の高度な測定機能を SDA に追加するオプションです。
SDA の標準的な測定機能には、マスク試験における不良個所表示機能付きアイパターン測定、ジッタ
「バスタブ」計算のようなジッタ解析、ジッタをランダム要素(Rj)とデタミニスティック要素(Dj)に分
離する機能などがあります。また、デタミニスティック・ジッタ(Dj)を周期性ジッタ(Pj)、データ依存
ジッタ(DDj)、デューティ・サイクル歪み(DCD)に分解する機能もあります。
ASDA オプションを使用すると、標準機能に次の解析機能が追加されます。
•
マスク試験における不良個所位置検出 – 選択されたマスクに合致しない個々のビットを検出して表
示します。
•
ジッタのフィルタリング — ユーザーが指定するバンドパス・フィルタをタイム・インターバル・
エラー(TIE)を時間の関数としたトラック波形に適用する事ができます。この機能を使用すると、
フィルタリングされた波形上で、ジッタのピーク間差や RMS 値などを測定できます。
•
ISI プロット — データ依存ジッタ(DDj)に起因する効果のみを示すアイパターン図を作成します。
この機能では、3∼10 ビットのパターン長を選択して、選択されたビット長で構成される個々のビ
ット・パターンの寄与度を表示できます。
•
N サイクル VS N プロット —捕捉される波形の全体に渡って、ユーザーが指定するビット間隔で
平均ジッタまたはピーク間ジッタのプロット図を表示します。ユーザーは、開始点と終了点のビッ
ト間隔、およびステップ値を指定します。プロット図には、ジッタがビット間隔の関数として表示
されます。
•
エラー・マップを使用したビット・エラー測定 — 捕捉された波形についてビット・エラーの個数
とエラー・レートを測定するために、波形をビット・ストリームに変換し、変換後のビット・スト
リームとユーザーが指定する基準パターンを比較します。ビット・ストリームをさらに複数のフレ
ームに分割し、それらのフレームを 3 次元マップに編成することもできます。この 3 次元マップで
は、ビット番号が X 軸、フレーム番号が Y 軸に表示され、エラー・ビットが明るい色で示されま
す。
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表1. SDA、ASDA、SDMで利用できる測定方法
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表2. 必要な測定モード
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はじめに
SDAによる測定の概要
SDA による測定を開始するには、解析メニューから「Serial Data」を選択します。代替方法として、
前面パネルの「Serial Data」ボタンを押してもかまいません。
次に示す SDA メイン・ダイアログが画面の下部に表示されます。測定機能を制御するには、左側のボ
タンを使用します。
•
「Scope」ボタンを押すと、通常の操作モードに戻ります。
•
「Mask Test」ボタンを押すと、アイパターン測定モードが起動されます。
•
「Jitter」ボタンを押すと、ジッタ測定画面が表示されます。
•
「BER」ボタンを押すと、ビット・エラー・レート(BER)測定が起動され、エラー・マップが表示さ
れます。
•
「Summary」ボタンを押すと、ジッタ、マスク試験、信号のパラメータを 1 つの画面に示す表示
モードが起動されます。
特定の測定モードを起動するには、最初に信号をセットアップする必要があります。「Data Source」
からデータ信号を選択し、「Recover clock from data」をチェックしてください。ほとんどの場合、こ
れらの設定を変更する必要はありません。データ信号の選択肢として、入力チャンネル、演算トレース
またはメモリー・トレースなどがあります。
「Recover clock from data」チェックボックスをオフにすると、クロック入力が有効になり処理ソフト
ウェア内部でその信号がクロックとして取り扱われます。つまり、立ち上がりエッジから次の立ち上が
りエッジまでの区間が 1 つのサイクル(UI [Unit Interval]: 単位間隔)になります。これに対して、通常
の設定では、データ信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジに関係なく、エッジから次のエッ
ジまでの区間がデータ・ビット(UI:単位間隔)になります。アイパターン測定およびジッタ測定のデータ
速度とマスクを指定するには、「Signal Type」コントロールを使用します。信号タイプとして
「Custom」を選択したときに設定できる標準モードのデータ速度は「Signal Frequency」で指定しま
す。選択した信号タイプに応じて特定の信号モード(Transmitter、Receiver など)を指定するには、
「Signal Mode」コントロールを使用します。たとえば、送信マスクと受信マスクを別々に定義できま
す。
ダイアログの PLL セクションには、「Cutoff Divisor」および「PLL Frequency」という 2 つの連動
するコントロールがあります。「Cutoff Divisor」コントロールでは、PLL ループ帯域幅フィルタがデ
ータ転送レートの何分の1になるのかを指定します。PLL ループ帯域幅は「PLL Frequency」コント
ロールで直接指定することもできます。
「Cutoff Divisor」のデフォルト値は 1667 です。このデフォルト値は、ファイバーチャンネルにおけ
る Golden PLL 用に定義された値です。PLL では「Data Source」コントロールで指定されたチャンネ
ルからクロックを再生し、そのクロックを基準クロックとして使用し、ジッタ(TIE)の測定、アイパタ
ーンの生成、ビット・エラーの検定を実行します。「PLL On」チェックボックスをオフにすると、
PLL が無効(オフ)になり、「Signal Frequency」コントロールで指定された固定速度で動作する基
準 ク ロ ッ ク に 戻 り ま す 。 指 定 さ れ た 信 号 周 波 数 と 実 際 の 信 号 周 波 数 が 異 な る 場 合 は 、 「 Find
Frequency」を押すと、実際の信号周波数が検出されます。検出された周波数は「Signal Frequency」
コントロールに表示されます。
SDAによる捕捉時の設定
SDA ではアイパターン・パラメータとジッタ・パラメータを測定するために、ロングメモリー・レコ
ードを処理し、クロックの再生とジッタ統計情報の測定を行います。また、同じロングメモリー・レコ
ードを複数のセグメントに分割し、再生されたクロックを使用してアイパターンを生成します。レコー
ド長とサンプリング速度は、これらの測定の精度に極めて大きな影響を与えます。
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サンプリング速度はクロックの再生時およびジッタの測定時の時間分解能を決定し、レコード長は
PLL のセットアップ時間と統計的精度に影響を与えます。パフォーマンスを最適化するには、サンプ
リング速度を最大値に設定することが重要です。立ち上がり時間が 300 ps より短いすべての標準モー
ドでは、この最大値が 20 G サンプリング/s になります。PLL のセットアップでは、どのような場合も、
最低限 3,000 個のデータ・エッジが必要です。したがって、たとえば、ビットあたり 12 個のサンプル
からなる信号では、レコード長として少なくとも 50,000 個のサンプルが必要になります。実際の測定
で満足できる結果を得るためには、レコード長として少なくとも 400,000 個のサンプルが必要です。
SDA の動作理論
SDA はロング・メモリー信号を捕捉することによって動作します。SDA によって実行されるプロセス
には、クロックの再生、アイパターンの計算、ジッタの計測、ビット・エラーの検定などがあります。
これらのすべてのプロセスが同じ信号データ・レコードに対して実行されます。以下の節では、これら
のプロセスについて詳しく説明します。
クロックの再生
基準となるクロックが正確であることは、SDA による測定の鍵となります。再生されたクロックは、
時間上のクロス・ポイントの位置によって定義されます。クロックのエッジは、ゼロから出発し、一定
の時間間隔で計算されます。たとえば、2.5 GHz のクロックの場合、エッジ間の時間間隔は 400 ps に
なります。クロック信号を作成する最初のステップは、デジタル位相検出器を作成することです。
これは単なるソフトウェア・コンポーネントであり、信号が特定のスレッショールド・レベルを通過す
る時間点を測定します。最大のサンプリングレートが 20 G サンプリング/s であることから、ほとんど
の場合、補間が必要になります。補間は、エッジ上のサンプルが 3 個以下のときに SDA で自動的に実
行されます。補間は波形全体に対して実行されるわけではありません。スレッショールド・レベルをク
ロスする付近のいくつかのポイントが補間されるだけです。クロス・ポイントは 3 次関数による補間を
使用してデータ点が追加され、追加されたデータ点を結んだ直線とすれっショールド・レベルとの交点
として求めます。図 1 はこれを示しています。
図1 SDAスレッショールド・レベル通過アルゴリズム
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図 2 は、SDA におけるクロック再生のブロック図を示しています。このアルゴリズムは特定のデータ
転送レートのクロックに対応するタイミングを生成します。試験されるデータ・ストリームの変動はフ
ィードバック制御ループを通じて計算されます。フィードバック制御ループは、再生されたクロック・
エッジと至近のデータ・エッジ間の誤差部分を加算することによって、クロックの各期間を補正します。
図2 SDAのクロック再生アルゴリズム
図 2 では、出力の初期値とデジタル位相検出器はゼロに設定されています。次のタイミング出力は公称
データ速度と等しくなります。このタイミングは左端のコンパレータにフィードバックされ、データ位
相検出器から出た次のデータ・エッジの測定時間と比較されます。両方の値の差は、データ転送レート
と再生されたクロックの間にある誤差です。この差をフィルタし、初期ベース周期に加算して、補正さ
れたクロック周期が生成されます。フィルタは、クロック周期計算にフィードバックされた誤差量に基
づいて補正率を制御します。このフィルタは SDA では単一ポール無限インパルス・レスポンス
(infinite impulse response:IIR)のローパス・フィルタとして実装されており、次の方程式になり
ます。
yk は k 番目の計算の補正値であり、xk は k 番目のデータ・エッジとそれに対応するクロック・エッジ
の間にある誤差です。補正率は現在の誤差と以前のすべての補正値の加重合計値と等しくなります。逓
倍の値は SDA では 1 に設定されています。カットオフ周波数は Fd/2πn です(Fd はデータ転送レー
ト)。このフィルタは「インパルス不変式」という設計プロセスを通じてアナログ・フィルタに関連付
けられ、データ速度よりずっと低いカットオフ周波数に対してのみ有効です。こうした事情から、SDA
では最低 PLL の「Cutoff Divisor」は 20 に設定されています。
係数 n は、現在の補正値の計算に使用される補正値 y の以前の値の数を決定します。理論的にはこの数
は無限ですが、実際には使用する以前の値には限りがあります。特定の n の値についてデータ信号の
UI の数に等しい「スライディング・ウィンドウ」を定義すれば、有限ウィンドウ上でクロック再生を
呼び出すシリアル ATA や PCI-Express などの信号を測定するのに役立ちます。
スライディング・ウィンドウの帯域幅は sin(x)/x 関数によって与えられます。この関数の最初のヌルは
x = πまたは 1/2 のビット速度で発生します(サンプリング速度での信号のデジタル周波数は 2πであ
り、クロック再生用のサンプリング速度はデータ速度です)。これはウィンドウのサイズに応じて 2π
/N に拡大縮小されます(N は UI 内のウィンドウ)。sin(x)/x 関数の 3 dB ポイントは、N のウィンド
ウ長さでは 0.6π/N または 0.3Fd/N です。これによって N と n の関係が与えられます。
Fd/2πn = 0.3Fd/N or n = N/0.6π
スライディング・ウィンドウのサイズが 250 の場合、n の値は 133 になります。
アイパターンの測定
アイ・ダイヤグラムは、ビット期間中にデジタル信号がとるすべての値を表示します。ビット期間また
は UI(unit interval)はデータ・クロックによって定義されます。したがって、アイパターンの測定
にはなんらかのデータ・クロックが必要になります。アイパターンを生成する従来の方法では、デー
タ・クロックをトリガーとして使用してオシロスコープ上でデータを取得します。トリガーごとに1個
以上のサンプルがとられます。サンプルはパーシスタンス・マップに保存されます。マップの垂直長さ
は信号レベルを表し、水平位置はトリガー(あるいはデータ・クロック)に対するサンプルの位置を表
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します。収集するデータ・ポイントの数が多くなれば、アイパターンを埋める時間値と振幅値も増えま
す。これらの値は x,y の各「ビン」の中で 1 つずつ増えるカウンタによってカウントされます。タイミ
ング・ジッタは、データ・クロス・ポイントの周りの水平分布によって表されます。クロス・ポイント
周辺のビンのヒストグラムは、ジッタの大きさの分布を表します。
データ・クロックにアクセスできないときには、再生されたクロックが使用されます。再生されたクロ
ックは、通常ハードウェアの PLL であり、特定のデータ速度と Fd/1667 のカットオフ周波数で稼動す
るように設計されています。ハードウェアのクロック再生回路を使用することの問題の 1 つは、トリガ
ー回路に関連するジッタが測定されたジッタに追加され、アイパターンのサンプルの横位置が確実でな
くなることです。
SDA はトリガーを使用せずにパターンを測定します。SDA は上述のソフトウェアのクロック再生を使
用し、データ・レコードをクロックの時間値に沿ったセグメントに分割します。時間ラインをセグメン
トに分割できるよう、波形レコードの時間分解能は無限になっています。サンプルは 50 ps/pt の固定間
隔で発生します(20 Gs/s のサンプリング速度の場合)。サンプルは再生されたクロックのタイミン
グ・ポイントを基準として配置され、クロック・サンプルによって区分されたセグメントが各セグメン
トのクロック・サンプルを位置揃えすることによってオーバーレイされます。アイパターンのデータは、
モノクロまたはカラーのパーシスタンス・ディスプレイを使って表示されます。測定システムを原因と
するジッタはこの場合にはサンプリング・クロックからのものですが、SDA ではこれはごく少なく、1
ps rms 程度です。
ジッタ分布を示すアイパターンのゼロ・クロスのヒストグラム
アイ・バイオレーション・ロケータ(ASDA)
アイパターンは連続取得した信号をセグメントに分けて重ね書きすることによって作成されます。完全
な波形データ・レコードを記憶しているため、個々のビットの位置は、オリジナルの波形の各ビットを
選択したマスクと比較することによって判別できます。マスクは平均ビット間隔に沿って水平に位置揃
えされ、平均ビット間隔とゼロ・レベル(相対マスクの場合)に沿って垂直に位置揃えされています。
いくつかの規格については絶対マスクが存在し、特定の電圧値によって垂直軸の大きさ定義されていま
す。下記の図 3 はこの位置揃えを示しています。マスク・テストをオンにすると、波形全体がビットご
とにスキャンされ、マスクと比較されます。マスク違反が検出されたときには、ビット番号が保存され、
ビット値のテーブルが作成されます。このテーブルには番号が付きます。番号は波形の最初のビットか
ら始まり、オリジナルの波形へのインデックスとして使用され、失敗したビットの波形を表示するのに
役立ちます。
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図3 バイオレーション・ロケータ用のアイ・マスク位置揃え
アイパターンの測定
アイパターンを対象としていくつかの重要な測定を実行できます。これらの測定は多くの規格のテスト
で必要になります。下記のように、測定では主として振幅とタイミングを扱います。
アイの振幅
アイの振幅はデータ信号の振幅の尺度であり、アイの中心付近(通常はゼロ・クロス・ポイント間の
20%の距離)の振幅値の分布を使って測定されます。‘0’レベル付近の分布の単純平均が‘1’レベル付近の
分布の平均から差し引かれます。この差は信号振幅の単位(通常はボルト)で表されます。
アイの高さ
アイの高さは信号ノイズに対する信号の比の尺度です。アイの振幅を測定する場合と同様、‘0’レベルの
平均が‘1’レベルの平均から差し引かれます。この値は‘1’レベルと‘0’レベルの標準偏差を差し引いて調整
されます。この測定はアイの開口を示します。
アイの幅
この測定は信号内のジッタ合計を示します。クロス・ポイント間の時間は、信号内の 2 つのゼロ・クロ
スのヒストグラムの平均を測定して計算されます。これら 2 つの平均値の差から各分布の標準偏差が差
し引かれます。
消光比率
これは光信号についてのみ定義されている測定であり、オンの状態のレーザの光パワーとオフの状態の
レーザーの光パワーの比を示します。レーザ・トランスミッタが完全にシャットオフになることはあり
ません(レーザをオンの状態に戻すのに比較的長い時間が必要になり、レーザの稼動速度が制限される
ためです)。消光比率は 2 つのパワー・レベルの比率です。一方のパワー・レベルはゼロに限りなく近
く、その精度は測定システムの入力のオフセットに大きく影響されます。光信号は、SDA のフロン
ト・エンドで OE コンバータを使って測定されます。消光比率を測定するときには、O/E の DC オフセ
ットをあらかじめ除去しておく必要があります。この手順はダーク・キャリブレーションと呼ばれます。
信号が付いていない状態(ダークの状態)で O/E の出力が測定され、この値が後続のすべての測定値
から差し引かれます。
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アイ・クロス
アイ・クロスとは、0 から 1 への移行遷移と 1 から 0 への遷移が同じ振幅になるポイントを指します。
アイ・ダイヤグラム上では、これは立ち上がるエッジと下降するエッジがクロスするポイントです。ア
イ・クロスは、全アイ振幅に対するパーセント値で表されます。アイ・クロスのレベルを測定するには、
アイ・ダイヤグラム上のを水平方向にスライスして得られるヒストグラムの内、最小幅のヒストグラム
を見つけます(このスライスの方向を垂直方向に置き換えると結果は一定しません)。
平均パワー
平均パワーとは、データ・ストリームに含まれているすべてのレベルの平均値を指します。
この値は波形のビット間隔全体に渡る縦方向スライスのヒストグラムの平均でもあります。アイ振幅の
測定では 1 のヒストグラムと 0 のヒストグラムを分離しましたが、平均パワーは両方のヒストグラムの
平均です。使用しているデータ・コーディングによっては、平均パワーはデータ・パターンに影響され
ることもあります。たとえば、1 の密度が高ければ、平均パワーは大きくなります。ほとんどのコーデ
ィング方式は 1 の密度を均一に保つようになっており、平均パワーはアイ振幅全体の 50%になります。
Qファクター(BER)
Q ファクターはデータ信号の SN 比を測定します。Q ファクターを求めるには、アイ振幅を測定し、そ
の値を 0 レベルと 1 レベルの標準偏差の合計値で除算します。これらの測定はすべてアイの中心部(通
常は 20%)で実行されます。
ジッタ測定
SDA はデータ・クロス・ポイントと理想的な基準クロックとの間の時間差を評価することによってジ
ッタを測定します。SDA のジッタ測定で使用される基準クロックは、先に説明したソフトウェア PLL
です。基準クロックとしてソフトウェア・クロックを使用すれば、サンプリング・クロックによるごく
少量のジッタが信号に加わるだけであり、ほぼ理想的な測定結果が得られます。基準クロックをソフト
ウェアとして実装現することにより、クロック帯域幅を厳密に制御しながら、同時に大幅な柔軟性を確
保できます。
TIE測定
タイム・インターバル・エラー(Time interval error:TIE)は、データ(またはクロック)信号のエ
ッジとジッタのない理想的なクロックのエッジ間の時間的ズレを測定します(図 4)。
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図4 データ(上)と理想クロック(下)間のTIE測定
理想クロックとして別に用意した基準クロックを使用することもできますが、データ・ストリームから
復元再生したクロックを使用するほうが一般的です。
再生したクロックでは、低周波成分がジッタ全体に与える影響を制御できます。ファイバ・チャンネル
の仕様で広く使用されている「ゴールデン PLL」は、データ速度/1667 のループ・カットオフ周波数を
備えています。この PLL は、再生したクロックによるデータ転送レート内の遅い変動に追従する事が
できるので、低周波成分によるジッタの増加を抑制します。SDA における PLL では、「Cutoff
Divisor」を 20 から 10,000 の範囲で調整して(ゴールデン PLL の場合は 1667)、特定の速度でのジ
ッタを適切に制御できます。SDA ではクロック再生と TIE 測定は、単一のロングメモリ信号の連続エ
ッジ上で行われます。
TIEヒストグラム
データ信号から測定した TIE 値は、各値の発生回数を縦軸として示すヒストグラムにまとめられます。
このヒストグラムは捕捉した信号のすべてのエッジで得られた測定値を対象として計算され、後続の信
号捕捉ごとに更新されます。このため、ヒストグラムは最後の信号捕捉終了の時点でのすべての測定値
の累積結果を表すことになります。TIE のヒストグラムの基本目的は、ジッタ値が指定されたマージン
を超過しそうかどうか判別することです。ビット・エラー・レートは一般に 10-12 の範囲で指定されて
います。ジッタ測定の主要な目的は、ディテクタによるデータのサンプリングと同時にデータ遷移が発
生する確率を判別することです。ここから、ビット期間内の特定の時点にデータ・エッジが発生する条
件付き確率を知ることができます(その時点にデータがサンプリングされている場合)。この関係は、
すぐあとで説明するバスタブ曲線にグラフィカルに表示されます。
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上: TIEヒストグラム,
下: TIEヒストグラムのログ
(赤) と外挿されたテール(青)
10-12 の確率のイベントを測定するには、こうしたイベントの可能性を判別できるだけの十分な数のエッ
ジをサンプリングする必要があります。どのような計測器を使用するにしろ、ジッタ・ヒストグラムを
このレベルまで直接に測定するのは現実的ではありません。このため、測定値のもっと小さい集合から
ヒストグラムが外挿されます。ジッタ・ヒストグラムは、限定された(デタミニスティックな)ソース
とランダムなソースの複雑な組み合わせです。限定された成分の値は一定の範囲に収まります。この範
囲はサンプルのサイズが大きくなっても変わりません。つまり、限定された成分は観察時間を長くして
も、大きくなることはありません。これに対し、ランダムなジッタ・成分はガウス分布を特徴とし、観
察時間を長くすれば限界なく大きくなります。ジッタ・ヒストグラムを外挿することの目的は、デタミ
ニスティックな成分の特性を完全に明らかにし、ヒストグラムの両端がガウス分布になるように、十分
に長く信号を観察することです。
ヒストグラムが作成されたら、分布の対数にします。この曲線の裾野は 2 次形式 (log(exp(x )) = x )にな
ります。続いて、ログ・スケール(log-scale)されたヒストグラムの各裾野に対して 2 次曲線の最小自
乗法を使って近似(least squares fit)を実行します。この結果として合成される曲線は、非常に長い
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観察(最大 1016 ビット)と同等のヒストグラムになります。このヒストグラムは TIE の完全な確率分
布関数(PDF)を表しています。
この測定の目的は、特定の時点で発生するデータ遷移の確率を判別定することです(データがそのタイ
ミングでサンプリングされている場合)。TIE の PDF はデータのゼロ・クロスを中心としており、そ
の平均は理想的なゼロ・クロスにあります。どこかでデータ・クロスが発生する確率は 1 であり、した
がって負の無限から正の無限への PDF の積分は 1 になります。たとえば、クロス・ポイントの右側の
x ps(あるいはこれ以上)でエッジが発生する確率を求めるには、PDF を無限から x へ積分します。
これは、x でサンプリングを行った場合にサンプリング・ポイントでエッジが発生する確率です。もち
ろん、この確率は、x ポイントでデータをサンプリングした場合にビット・エラーが発生する確率でも
あります。「特定のジッタ値が発生する確率」という概念はビット・エラー・レートに直接に関連して
います。オフセットのすべての値について TIE の PDF を積分することにより、CDF(トータル・ジッ
タ曲線)が作成されます。トータル・ジッタ曲線もデータのゼロ・クロスを中心としています。クロ
ス・ポイントの右側のジッタ値の確率は曲線の右側の値によって示され、左側のジッタ値の確率は曲線
の左側の値によって示されます。
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データ・ストリームは連続する膨大な数のビットから構成され、ジッタ分布はデータ・ストリーム内の
どの遷移にも適用されます。トータル・ジッタ曲線の左側は、特定の遷移に先立ってエッジが発生する
確率を表していると見ることができます。あるいは、次の遷移に先立ってエッジが発生する確率を表し
ていると見ることもできます。トータル・ジッタ曲線をこのようにアレンジすれば、バスタブ曲線にた
どり着きます。バスタブ曲線はビット・エラー・レートとジッタの関係を見る便利な手法となります。
バスタブのサイドは、ビット間隔内の任意のサンプリング・ポイントのビット・エラー・レートを示し
ます。特定の垂直位置(あるいはビット・エラー・レート)での曲線間の水平距離は、そのビット・エ
ラー・レートでのアイ・オープニングを示します。曲線のサイドが相互に接触していない限り、指定し
たビット・エラー・レートを達成できるサンプリング・ポイントが存在します。
トータル・ジッタ、Rj、Dj
トータル・ジッタはトータル・ジッタ曲線の幅で示されます。ビット・
エラー・レートが低くなるにつれて、トータル・ジッタ曲線の幅は大き
バスタブ曲線
くなります(図 5)。
図5 ランダム・ジッタとデタミニスティック・ジッタ
したがって、トータル・ジッタを参照するにはビット・エラー・レートを指定しなければなりません。
トータル・ジッタは TIE の測定値とそれを外挿したデータによって作られたヒストグラムヒストグラ
ムです。トータル・ジッタは十分に理解されており、いろいろなテクニックを使って正確に測定できま
す。しかし、ランダム・ジッタとデタミニスティック・ジッタの分離はあまり明確に定義されていませ
ん。トータル・ジッタからランダム・ジッタとデタミニスティック・ジッタを分離させるには、いつか
のテクニックがあります。SDA はファイバ・チャンネルの仕様に定義されている等価 Dj モデルを採用
しています(図 5)。このモデルは BER スキャン・メソッドでも使用されています。この規格で定義
され、Dj 測定を必要とするその他の規格でも採用されているデタミニスティック・ジッタは、次のモ
デルをベースとしています。
Tj = αRj + Dj
Dj パラメータは、ヒストグラムの部分に近似された 2 つのガウス分布間の分離です。上記の方程式は、
トータル・ジッタをランダムの成分とデタミニスティックの成分の関数とします。トータル・ジッタ曲
線は総トータル・ジッタをビット・エラー・レートの関数として表示します。特定の垂直位置(ビッ
ト・エラー・レート)でのこの曲線の幅は、そのビット・エラー・レートのトータル・ジッタを示して
います。ランダム・ジッタはガウス分布であり、平均値と標準偏差によって完全に定義できます。2 つ
のガウス分布の平均値は、上記の方程式と図 5 に定義されているように、Dj の値によって分離されま
す。標準偏差は Rj であり、両方のテールで同じと仮定されます。a は選択したビット・エラー・レー
トに対応する(あるいは確率がビット・エラー・レートより低いところの)ガウス分布の平均からの標
準偏差です。a の値は既知であるため、トータル・ジッタの方程式を解くには Rj と Dj を見つける必要
があります。このためには最低 2 つの Tj 値が必要ですが、トータル・ジッタ曲線から数多くの Tj 値を
見つけることができます。図 6 は Tj の 2 つの測定値を使った例を示しています。測定値は次のとおり
です。
258.5 = 12.7Rj + Dj
270 = 13.4Rj + Dj
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これによって、Rj = 16.43 ps と Dj = 49.86 ps が得られます。SDA は 10-10 から 10-16 までのビット・エ
ラー・レートの数多くの Tj 値についてこの計算を行います。計測器に最終的に表示されるのは、計算
されたすべての Rj 値と Dj 値の平均値です。
図6
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Djの成分
デタミニスティック・ジッタはいろいろな原因によって発生します。周期的に発生するジッタもあり、
サイン曲線やその他の反復的な形で現れます。ジッタのソースがデータ・パターンに依存していること
もあります。周期的に発生するジッタは周期性ジッタ(Pj)と呼ばれ、データ・パターンに依存するジ
ッタはデータ依存ジッタ(DDj)または符号間干渉(ISI)と呼ばれます。デタミニスティック・ジッ
タの第 3 のソースはデューティ・サイクル歪(DCD)です。DCD は論理 1 と論理 0 間のパルス幅の尺
度です。さらに第 4 のソースとして、限定された非相関のジッタがあります。このソースはデータ速度
やパターンに関連していません。
周期性ジッタ
周期性ジッタは反復性のあるデータ速度(またはビット間隔)の変動です。多くの場合、周期性ジッタ
の原因は基準クロックまたは電源ハーモニクスが不安定であることに関連しています。クロック・エネ
ルギーを波及させるために、データ速度が一定のペースと大きさで変動することもあります。これはス
プレッド・スペクトラム・クロッキングと呼ばれる現象です。SDA はジッタの全体的な分布を解析し
て Dj を検出しますが、周期性ジッタは FFT を使って周波数ドメイン内のジッタを観察することによっ
て測定されます。タイム・インターバル・エラーのトレンドをフーリエ変換し、スペクトラムを評価し
て、周期性ジッタの存在を判別します。
タイム・インターバル・エラーはビット遷移ごとに測定されるため、スペクトラムの中で見られる最大
周波数はデータ転送レートの 1/2 になります(これは Nyquist レートと同じ値です)。データに反復パ
ターンが含まれている場合、データ・パターンの反復レートでスペクトル線が現れます。これらのポイ
ントにおけるスペクトル・成分は、SDA の Pj アルゴリズムによって無視されます。ジッタ内のデー
タ・パターンをソフトウェアに認識させるには、SDA ジッタ・ダイアログでパターン長さを入力しな
ければなりません。スペクトルには適応的スレッショールド・レベルが適用され、このスレッショール
ド・レベルを超過するすべてのスペクトル・成分のレベル(パターン反復レートのレベルを除く)を合
計して、総周期性ジッタが計算されます。
データ依存ジッタ(またはISI)
このタイプのジッタは、異なるデータ・パターンが伝
送媒体を伝播する時間の差違の結果として発生します。
ローパス・フィルタとして機能する伝送媒体はこの簡
単な例です。この例を単純化するために、ビット・レ
ートにおけるカットオフ周波数が 3 dB であると仮定
しましょう。1 と 0 の反復からなるデータ・パターン
(1010101….)はビット・レートでは強い成分を持ち
ますが、フィルタを通過すると成分は減衰し、場合に
よってはフェーズもシフトします。これよりも遷移の
少ない別のパターン(11001100…)では、エネルギ
ーが低い周波数に偏っているので、エネルギーの弱化
減衰はほとんど発生せず、フェーズもシフトしません。
最初のパターンの低い信号レベルは、遷移のスロープ
の位置をシフトさせ、したがってクロス・ポイントを
シフトさせがちです。これにフェーズのシフトが追加
されます。2 番目のパターンはもちろんフィルタによ
っては影響されず、歪みなくシステムを伝播します。
2 つのクロス・ポイント間の時間差はデータ依存ジッ
タです。
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ローパス・フィルタを原因とするDDj。ローパス・
フィルタによって誘発される遅い立ち上がり時間に
注目。
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SDA は取得した波形上で DDj を直接に測定し、Tj 測定用に計算された統計を使用しません。DDj の測
定はロングメモリで捕捉した波形データを使用して、選択した長さのパターンを持つ波形をサーチしま
す。この長さは 3 ビットから 710 ビットの範囲で選択できます。パターンの長さを選択したら、その
長さのパターン内のすべてのビットの組み合わせについて波形をサーチします。たとえば、5 ビットの
パターンを選択した場合、5 ビットがとることのできる 32 種類のビット・パターンのすべてについて
波形をサーチします。波形内のビットのタイミングの基準は再生されたクロックによって与えられるた
め、波形をサンプリングする場所を正確に知り、そのビット値を判別できます。この例では、波形は一
度に 5 ビットずつスキャンされ、5 ビット・ウィンドウが 1 ビットずつ進行して比較されます。同じ値
のビット・パターンの波形はまとめて平均化されます。
ここでの 5 ビットの例では、測定が完了すると、32 個の平均化された 5 ビット長の波形がサーチされ
ます。ランダムなノイズとジッタ、周期性のジッタ・成分は平均化によって除去されます。これらの波
形は、最初のビットを位置会わせ、最後のビットへの遷移を表示するように重ね書きされます。ディス
プレイにはアイ・ダイヤグラムが表示されます。アイ・ダイヤグラムは 4 番目のビットを中心としてい
ます。DDj パラメータはこのアイパターンの右側のゼロ・クロスの幅を表示します。
デューティ・サイクル歪み
デューティ・サイクル歪みは、1 レベルと 0 レベルのパルス幅の相違を測定します。Dj 成分の他の測定
と同様、この測定も SDA で捕捉した波形に対して直接に行われます。デューティ・サイクル歪みは正
対負トランザクションと負対正トランザクションの 50%における幅として測定されます。
この測定がユニークなのは、50%のレベルで行われることです。タイム・インターバル・エラーをはじ
め他の測定はすべてユーザーが選択したレベルで行われます。このレベルは真のクロス・ポイントとし
て設定できます。クロス・ポイントが 50%から大きく離れている信号については、高い DCD が観察さ
れるにもかかわらず、デタミニスティック・ジッタ(Dj)がごくわずかまたはゼロと測定される可能性
があります。こうしたことが発生するのは、ジッタ測定用のクロス・ポイントがデータのクロス・ポイ
ントに設定されている場合です。クロス・ポイントにおけるデューティ・サイクル歪みの測定は常にゼ
ロの値となるため、これは特に問題ではありません。したがって、クロス・ポイントで DCD を測定す
るのは無意味です。
ビット・エラー・レート
SDA は捕捉したビット・ストリームを対象としてビット・エラー・レートを直接測定します。この測
定では、再生されたクロックとユーザー指定のスレッショールド・レベルを使用して波形をサンプリン
グします。データは NRZ であると仮定され、したがって高ハイ・レベルは ‘1’として、低ローレベルは
‘0’として解釈されます。このプロセスでデコードされたビット・ストリームは、ユーザー定義の既知の
パターンとビットごとに比較されます。計測器は受け取ったパターンの中のビットに関しては何の情報
も持っていないため、サーチ・アルゴリズムを使用して、受け取ったデータに沿って既知のパターンを
シフトし、合致する位置を見つけます。
既知のパターンをシフトしたときに半数以上のビットが正しくなった場合、合致したと判断されます。
ビット・エラー・レートが 50%を上回る場合、あるいは間違ったパターンが選択された場合、合致す
る位置を見つけることはできません。この場合、ビット・エラー・レートは 0.5 となり、ビットの 1/2
がエラーになります。もちろんこれは最悪のケースです。
ビット・エラー・マップ
ビット・エラー・マップを通じてさらに詳細なレベルのデバッグが可能になります。ビット・エラー・
マップは、信号内に存在するフレームを基準としてデータ・ストリームのビット・エラーを表示します。
フレームについてはいくつかのオプションを設定できます。データ信号の一般形式は下に示すとおりで
す。
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ヘッダ部分は固定パターンであり、任意のパターンに設定できます。ヘッダは 1 個以上のバイトからな
ります。ソフトウェアはヘッダをサーチして、ヘッダとヘッダの間にあるビットをフレームとして扱い
ます。各フレームは x-y マップ上にピクセルの線として表示され、連続する各フレームはピクセルの並
びとしてそれぞれ直前のフレームの下に表示されます。ビット・エラーはデータ・ストリームのペイロ
ードのセクションにおいてのみ判定されます。フレームはヘッダなしのビットの特定の数によっても定
義できます。
こ の 例 と し て は 、 特 定 の 長 さ ( た と え ば 127 ビ ッ ト ) の 疑 似 ラ ン ダ ム ・ ビ ッ ト ・ シ ー ケ ン ス
(pseudorandom bit sequence:PRBS)があります。この場合、フレーム・サイズを 127 に設定する
と、このシーケンスがそれぞれエラー・マップの各ラインごとに表示されます。ビット・エラーは淡色
で、非エラー・ビットは濃い青で表示されます。ビット・エラーをフレームごとに表示することにより、
エラー・マップ内でパターン依存エラーを淡色の垂直線としてはっきりと見ることができます。図 7 と
図 8 を参照してください。
図7 ランダム・エラー(白い方形)を含む127ビット・パターンのビット・エラー・マップ
図8 パターン依存エラーを含む127ビット・パターンのビット・エラー・マップ
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参考
メインのSDAダイアログ
メインの SDA セットアップ・ダイアログを開くには、解析メニューから「Serial Data」を選択するか、
または SDA 前面パネルの SERIAL DATA ボタンを押します。SDA 測定の任意のラベルにタッチして
も、このダイアログが開きます。
SCOPE
このボタンを押すと、スコープ・モードに入り、SDA 測定はすべて不可能に
なります。SDA モードに入ったときにシャットオフされた波形が再度表示さ
れます。
MASK TEST
選択されたマスクと並べて、試験されている信号のアイパターンを表示します。
ダイアログは「Mask Test」になります。選択されたマスクの測定値がパラメ
ータとして波形グリッドの下に表示されます。
JITTER
ジッタ・テスト・モードに入り、「Jitter」ダイアログが現れます。選択した
ジッタの測定値もグリッドの下に表示されます。
BER
ビット・エラー・テストの画面とダイアログが現れます。
SUMMARY
サマリの画面が現れ、アイパターン、ジッタ・バスタブ、ジッタ・ヒストグラ
ム、振幅ヒストグラムに加えて、Tj、Rj、Dj、立ち上がり/立ち下り時間が表
示されます。
Data Source
このコントロールは試験する信号を選択します。信号はチャンネルまたは演算
トレースです。たとえば、差動信号を試験するには、多くの場合、実際の差動
クロス・ポイントの測定が求められます。これはあるチャンネルから別のチャ
ネルを差し引いた数学トレースを形成することによって可能になります。
Clock Source
このチャンネルは SDA 内でソフトウェアのクロック再生アルゴリズムによっ
て処理され、すべての測定の基準となるクロックを提供します。これは同じデ
ータ・チャンネルでも別の入力チャンネルでも構いません。
Signal Frequency
信号周波数(ビット・レート)は、試験されている信号のシンボル伝送レート
です。この値は選択した信号のタイプによって設定されます。あるいは、
「Custom」を選択すれば、この値を手動で設定できます。この値はソフトウ
ェアによるクロック再生の開始周波数を表します。この値がータ速度と大幅に
異なると、再生したクロックが収れんしません。
Find Frequency
Find frequency は取得した波形全体の平均ビット・レートを測定します。こ
のコントロールを使用して、指定したビット・レートどおりに作動していない
信号の PLL 周波数の初期推定値を調整できます。このコントロールは非標準
のビット・レートで規格マスクを使用するための便利な手段ともなります。
PLL Cutoff Divisor
これは PLL ループ帯域幅をビット・レートの比率として設定します。デフォ
ルト値は 1667(ファイバ・チャンネル仕様に定義されているいわゆる「ゴー
ルデン PLL」の標準値)です。20 から 10,000 の範囲で任意の値を指定するこ
とにより、他のループ帯域幅を使用することもできます。
PLL Frequency
このコントロールは PLL のカットオフ周波数を表示します。カットオフ周波
数は PLLCutoff Divisor に連動しており、Cutoff Divisor の変化に応じて変化
します。
PLL On
「PLL On」のチェックボックスは、PLL を使用しない測定を可能にします。
このチェックボックスをオフのままにしておけば、どのタイミング測定でも平
均データ速度が使用されます。
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Mask Test
「Mask Test」ダイアログは、SDA によるアイパターンのテストを制御します。このダイアログでは、
アイパターン・テストの各種測定やパラメータを選択します。
Eye Mode
「Eye Mode」はアイパターンを作成する方法を設定します。「Traditional」
と「Sequential」のいずれかを選択できます。Traditional モードは、外部ク
ロックを使用して波形のサンプルをディスプレイ上に配置します。これは、オ
シロスコープで外部トリガを使用してアイパターンを構築するのと同じやり方
です。Sequential モードは、ソフトウェアのクロック再生を使用し、波形を
ビット・サイズのサンプルに分割してアイパターンを作成します。これについ
ては前述の「理論」のセクションで詳しく説明しました。これらのモードで使
用するクロックは、SDA のメイン・ダイアログの「Clock Source」コントロ
ールで選択します。
Eye Persistence
パーシスタンスはカラーまたはグレイスケールのモードで表示されます。カラ
ーモードでは、頻繁でない発生は青、頻繁な発生は白で表示されます。グレイ
スケールのモードでは、グレイの濃度で頻度が示されます。
User Signal
任意のチャンネルまたは演算トレースを指定できます。選択したチャンネルは
試験対象の信号と同時に捕捉されます。信号はメイン・ダイアログの「Data
Source」コントロールで選択します。この信号はマスク・バイオレーション・
ロケータの画面に表示されます(マスク・バイオレーションを表示するのと同
じタイム・スケールが使用されます)。この相関ビューを使用して、信号干渉
によるマスク違反の原因を診断することができます。
Mask Margins
これらのコントロールは、マスクの「違法な」エリアのサイズを X 方向また
は Y 方向に指定したパーセント値だけ拡大します。マスク・マージンはより
厳しい標準での信号のテストを可能にし、x と y を別々にコントロールするこ
とによってジッタとノイズのマージンを相互に独立して指定できます。
Vertical Auto Fit
このチェックボックスをオンにすると、縦方向でマスクに適合するようにアイ
パターンが自動的に拡大縮小します。拡大縮小はマスク・ポリゴン間の 1 値と
0 値の平均を中心にすることによって行われます。この自動適合機能はどの信
号タイプでも利用できますが、絶対値として定義されているマスクの場合はデ
フォルトでオフになっています。絶対値マスクは縦軸の電圧値と波形振幅の絶
対値で定義されます。絶対値マスクを使うときにこのチェックボックスをオン
にすると、指定した標準規格について測定が無効になります。指定した値から
大きく離れた波形では、マスクが消失したかのようになることがあります。絶
対値マスクの位置は電圧値によって決まることから、こうした事態は異常では
ありません。
Clock Setup
SDA におけるソフトウェアによるクロック再生システムは、スレッショール
ド・レベルのクロスを検出することをベースとしています。スレッショール
ド・レベルのタイプのコントロールによって、絶対値(電圧)または相対値
(p-p 信号のパーセント)のいずれかのタイプを選択できます。スロープのコ
ントロールによって、クロック再生に使用する最初のゼロ・クロスのスロープ
を指定できます。「Positive」を指定すればクロック再生はデータ中の最初の
立ち上がりエッジで開始し、「Negative」を指定すれば最初の立ち下りエッジ
で開始します。「Percent Level」のコントロールは、スレッショールド・レ
ベルの絶対レベルまたはパーセント・レベルを設定します。
Testing
このチェックボックスをオンにすると、マスクのテストが有効になります。テ
ストは波形の各ビットに対して実行されます。バイオレーションはアイパター
ン内の赤い丸で示されます。
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