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LOFT シナリオを通した CRM 技量の向上及び実践的

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LOFT シナリオを通した CRM 技量の向上及び実践的
2015 年度秋学期航空操縦学専攻卒業研究前刷
LOFT シナリオを通した CRM 技量の向上及び実践的訓練システムの構築
指導教員 山口 治郎 教授
研究者 2BEO1103 笹木 拓実
2BEO1213 内藤 広樹
1.緒言
現在、就職活動を終えた学生の多くは、入社まで
の間に FTD を使用した訓練を行う機会が少ないの
が実状である。また、本専攻の訓練課程で CRM に触
れる機会は非常に少なく、LOFT 訓練に至っては数
える程度しか行われてこなかった。その為、本専攻
の学生は経験に基づいた CRM の技術や知識が乏し
いのが現状である。就活終了後から入社までの間に、
LOFT シナリオを通して CRM に対する知識や実践的
な CRM を学べる環境を構築することが必要である
と考えた。
本研究では、実際の訓練の中で LOFT 訓練が容易
に行えるよう、シナリオの数を充実させるとともに、
その質の向上を図る。そして、完成したシナリオの
実用化・実運用化を目指す。
2.研究方法
2.1 前年度の LOFT シナリオの考察
前年度までの結果から、今回作成するシナリオに
ついての検討を重ねた。また被験者に渡す資料につ
いて、前年度のものを踏襲する部分や新規に作成す
るものについて検討を行った。
2.2 シナリオの作成
作成するルートの策定にあたり、以下の点に留意
した。
① 距離が適切なこと(40NM から 60NM)
② SID に Reversal Departure がある
③ ILS, VOR approach がある
④ MEA が高すぎない
⑤ 空港が水没していない
⑥ 到着空港と代替飛行場にレーダー設備があ
ること
次に emergency の策定を行った。策定にあたり、
1つのシナリオにつきエマージェンシーを2つま
で組み込むこととした。また、様々なタイプのエマ
ージェンシーを組み込むことで差をつけた。
天候については適度なスレットとなる状況に設
定し、時系列に沿った複数の METAR や ATIS を作成
した。前年度までは作られていなかったが、天候の
変化が分かるように、TAF だけでなく METAR の過去
分も作成した。
出発時間についても差をつけることで、シナリオ
ごとに細かな変化を持たせた。
2.3 シナリオの検証
卒業研究Ⅰで作成したシナリオを使用し、LOFT
訓練を行った。就職活動が終了した4年次学生2名
のペアを対象に、被験者とシナリオを変えて計 4 回
の訓練を行った。第1回検証と第2回検証では同一
のシナリオを使用し、被験者の対応を比べた。ATC
及び FTD のコンピュータの操作は全て研究者が行
った。
2.3.1 第1回検証 11 月 13 日実施
新千歳空港~函館空港間のルートを使用した。巡
航 中 に Icing を 発 生 さ せ 、 ア プ ロ ー チ 中 に
Autopilot Malfunction を発生させた。被験者には
訓練当日に資料の配布や説明を行ったが、被験者の
LOFT 訓練に対する準備期間が想定よりも多く必要
なことが分かった。また ATC に対する課題が多く、
台本が必要であるという結論に至った。気象の伝達
方法についても課題が見つかった。訓練をスムーズ
に進めるために、気象情報は小さな紙に書いた状態
で被験者に渡すこととした。
2.3.2 第2回検証 12 月 4 日実施
前回と同一のシナリオを使用した。前回の反省を
踏まえ、今回は被験者に予め必要資料を渡すことと
した。また、前回と同じくエマージェンシーとして
Icing を発生させたが、被験者の対応が大きく異な
った。前回の被験者は飛行を続けるという判断をし
たが、今回の被験者は引き返すという判断を行った。
このことから同一シナリオでも被験者によって
様々な decision making があり、それらを CRM の観
点からディスカッションを行うことで CRM 技量の
向上に繋がると感じた。被験者のあらゆる判断に対
して、訓練の監督者側が臨機応変な対応ができるよ
うに、予備の気象データを用意することが望ましい
ことがわかった。
2.3.3 第3回検証 12 月 11 日実施
庄内空港~新潟空港間のルートを使用した。エン
ルート中に右の Alternator fail、Approach 中に左
2015 年度秋学期航空操縦学専攻卒業研究前刷
の Engine fail を行い、Both alternator fail の
状況を作り出した。訓練の監督者側の資料について、
種類を増やし、よりスムーズにシナリオを運用でき
るように改善した。検証中、FTD の気象の設定が意
図したものとならず、計画したシナリオよりも気象
状態が良い状態となってしまった。そのため、本来
視認できるはずのない滑走路が、見える状態となっ
てしまった。シナリオ通りにすべてを操作するため
には、FTD のシステムについて、より習熟する必要
があると感じた。ATC や気象の伝達方法においては
改善がみられ、しっかりと機能した。
2.3.4 第4回検証 12 月 21 日実施
岡山空港~高松空港間のルートを使用した。エマ
ージェンシーは Fuel pump fail、Approach 中に
Landing gear malfunction を実施した。今回も FTD
に意図した気象状態がうまく反映されないことが
あったが、すぐに対処することができたため、大き
な問題には至らなかった。また、適切な Fuel 量を
パイロットが設定しなかったことにより、計画して
いたシナリオを変更せざるを得なかった。シナリオ
の変更については臨機応変に対応することができ
た。
3.研究結果・成果
卒業研究Ⅰでは、前年度までに作成されたシナリ
オでは数が不十分であり、シナリオの内容が似てい
ることが分かった。前年度は仙台空港 – 福島空港
間の数シナリオのみであった。これを踏まえ、今回
は複数のルートでシナリオを作成した。
卒業研究Ⅱでは3つのシナリオについて検証を
行った。検証後、被験者全員を対象に LOFT 訓練の
有効性及び作成したシナリオについてのアンケー
トを実施した。アンケート及び検証結果を元にシナ
リオの改善点を明確にし、より完成度の高いシナリ
オを作成した。また、今回の検証において ATC や
FTD の設定を学生が行ったため、ともに不十分な点
が多々見受けられた。実際に訓練として行う場合に
は担当教官に ATC 及び設定を行ってもらうほうが
効率良く訓練を行えると考える。
4.結言
前年度までに作成されたシナリオを含め、複数パ
ターンのシナリオを作成した。これらのシナリオに
ついて卒業研究Ⅰ時点では未検証であったが、卒業
研究Ⅱで行った。
卒業研究Ⅱでは、実際に作成したシナリオを使
用し、検証した。検証は就職活動が終了した学生2
名を対象に行った。検証結果を元により完成度の高
いシナリオへと改善を図った。今回の研究を通し、
LOFT シナリオの量と完成度を上げることができた。
本研究で、作成及び検証した3つの LOFT シナリオ
においては、実訓練に組み込める状態であると考え
ている。
今回の研究では、CRM 技量の向上に対する研究は
十分に行うことができなかった。今後は、複数のペ
アで同一のシナリオを使用し、その対処の差を研究
するなど、被験者の CRM にスポット当てた研究がさ
れることを期待する。
参考文献
[1] AIM-JAPAN 編纂協会,AIM-J(2015 年後期版),
日本航空機操縦士協会,2015
[2] 狩野烈 丸山健太, LOFT を通じた訓練技法の研
究, 2014
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