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血圧はどこまで下げましょう? どうやって下げま
血圧はどこまで下げましょう? どうやって下げましょう? 高血圧治療ガイドライン2009 を踏まえての改変版 横浜市立市民病院循環器内科 根岸耕二 血圧が高いとは? どこからが高血圧? 外来血圧の正常値は 収縮期130mmHg未満 かつ 拡張期85mmHg未満 外来血圧の高血圧診断基準は 収縮期140mmHg以上 又は 拡張期90mmHg以上 (収縮期130-140、拡張期85-90を正常高値血圧) 家庭血圧での高血圧診断基準は 収縮期135mmHg以上 又は 拡張期85mmHg以上 血圧が高くて何が悪い! 脳血管疾患(脳梗塞など)、心筋梗塞が増える。 140/90mmHgを境界値とし危険度が高くなる。 言い換えれば、高血圧の治療はポックリ病(突然死)、 半身不随による寝たきり状態の予防になる。 脳卒中死亡者の半数以上は160/100mmHg 未満の患者であった(NIPPON DATA80より) 。 ひとたび病気になってしまったら? 脳梗塞で半身不随や寝たきりになると、バラ色の 老後は難しくなります。家族に大変な介護の労を 払わせることになる可能性があります。 心筋梗塞で心不全になると、身体を動かすと息 切れがしたり、呼吸困難で入退院を繰り返すこと になる可能性があります。 運良く後遺症がなかったとしても、保険に入れな かったり、更新できなかったりします。また入れて も通常より高い保険料が必要になったりします。 なのに、なぜ治療を受けない? 驚くべきことに・・・血圧140/90mmHgを超える高 血圧患者のうち、治療を受けている割合は 30歳代、40歳代では1~2割 50歳代でも3~4割 にすぎない ①就労年齢のため医者にかかる時間がない、 ②お金がかかる(保険金より高い?)、 ③たかが血圧が高いだけ・・・という認識の甘さ ④まだ若いから、もしくは自分だけは病気になる はずがない(根拠のない思い込み) 家庭血圧のすすめ 医者の前に行くと血圧が上がるから行かない! これは根拠のないことではなく、白衣(性)高血圧 という名前もついています。ならば、自分に言い 訳のできないように自分で血圧を測りましょう。 -望ましい測定条件として- 朝:起床後1時間以内で、排尿をすまし座って 1~2分休んでから (朝食前、服薬前に) 晩:就寝前に座って1~2分休んでから この2回を原則に仕事中、夕食前など適宜追加 データの信頼性は、家庭血圧の方が高いです。 心血管病の高リスク群とは? 危険の高い人ってどんな人? リスクの層別化 (危険度の高さは何で決まるのか?) ①心血管病の危険因子 ②血圧のレベル・・・軽症159/99未満 重症180/110以上 ③既に臓器障害・心血管病を起こしているか 低リスクの高血圧は、軽症高血圧で、危険因子がなく、 かつ③のない者のみ 高リスクは重症高血圧か、糖尿病または③を有する者、 または危険因子を3つ以上持つ者 心血管病の危険因子 年 齢 (☆65歳以上) 喫 煙 (唯一“ゼロにできる”危険因子) 高血圧 (治療介入でかなりコントロールは可能) 脂質異常 (☆LDLコレステロール高値、☆高中性脂肪、 HDL-C低値) 糖尿病 (境界例ふくむ) 肥 満 (BMI≧25、腹部肥満) メタボリック症候群☆ 若年(50歳未満)発症の心血管病の家族歴 臓器障害・心血管病 脳 :脳出血・脳梗塞、一過性脳虚血発作(TIA) 無症候性脳血管障害(認知障害につながる?) 心 臓: ☆狭心症・心筋梗塞・心不全、 ☆左室肥大 腎 臓:蛋白尿(微量アルブミン尿含む) 慢性腎臓病(CKD eGFR<60ml/分/m2) 血 管:大血管疾患、動脈硬化性プラーク ★閉塞性動脈硬化症(ABI<0.9) ★頚動脈内膜・中膜壁厚(IMT>1.0mm) 眼 底:高血圧性網膜症 《当院での取り組み》 当院では心血管疾患の早期発見を目的として、まだ 自覚症状のない患者さんを対象にスクリーニング検査 を行っています。 心臓の臓器障害である☆狭心症・心筋梗塞・心不全と ☆左室肥大に関しては心エコー図、トレッドミル多段階 運動負荷試験をセットにした循環器スクリーニング検査、 血管の病気としての下肢動脈閉塞、頚動脈プラークに 関しては★ABIと下肢動脈の血流速波形、★内頚動脈 内膜・中膜壁厚は血管スクリーニング検査でチェックす ることができます。 事故の生じる前に早期発見・治療を目指しましょう! ATIS(アテローマ血栓症)とは? (非心原性)脳梗塞、狭心症・心筋梗塞、下肢閉 塞性動脈硬化症(PAD)はいずれも動脈硬化とい う共通の基盤から生じた病態です。 ATISの属する一つの疾患を発症した患者さんは 他の臓器にも他の動脈硬化性疾患を併発してい る可能性が15-30%程度あるというレジストリー データがあります。 当院では、当科と神経内科・脳神経外科、糖尿病 内科、腎臓内科(特に透析症例)と相互に連携を とり、ATIS発症後の他の臓器を含めた二次予防 を目標にスクリーニング検査を推進しています。 治療目標値(日本高血圧学会) どこまで下げる? 高齢者(60歳以上) :140/90mmHg未満 若年~中年者 : 130/85mmHg未満 糖尿病・腎障害患者: 130/80mmHg未満 (尿蛋白1g/日以上なら125/75未満) 但し注意が必要なのは合併する病態、特に心臓 のポンプ機能障害の患者さんでは心臓の負担を 減らすために更に血圧を下げることがあります。 高血圧の治療法 どうやって下げる? ①全ての患者で、第一に生活習慣の改善 ②それで降圧目標に達しなければ薬物治療 低リスク群は3ヵ月後、中等リスク群は1ヶ月後 に140/90mmHg以上で薬物治療開始 高リスク群は直ちに140/90以上で薬物開始 ③糖尿病・腎疾患では130/80以上で薬物開始 血圧を下げる生活習慣 1)塩分制限 1日6g未満 2)野菜・果物(カロリー制限の範囲内で)の積 極的摂取 3)適正体重の維持(BMI<25) BMI=体重kg÷(身長m)2 例)私なら62kg÷1.7÷1.7=21.5 4)運動療法 速歩き・水泳・サイクリング等を できる限り毎日、30分以上行う。 5)アルコール制限 エタノール換算で 男性20-30ml 、女性10-20ml 一番難しい食事制限に関して 具体的な食事指導をするのであれば・・・ 梅干し・漬物・佃煮・濃い味噌汁はとらない 麺類の汁は飲まずに残す 自分で塩・醤油・ソース等の調味料を加えない 野菜は生で食べるより熱を加えると沢山とれる ナッツ(特にクルミ)は健康に良いが、塩味に注意 コレステロール高ければ、乳製品は低(無)脂肪 のもの、動物性脂肪の制限(脂身をカット、網焼き にする等)、卵は調理に使う分含めて週に3-4個 注) 塩分(食塩g) = Na量(g)×2.54 アルコールの適正量とは? ビール(アルコール分5%として) 大まかには 男性中瓶・ロング缶(500ml)1本 女性缶ビール(350ml)1本 焼酎(アルコール分25%として) 男性は100ml(通常のコップ半分位) 女性は40-60ml 日本酒・ワイン(アルコール分10-15%として) 男性は1合-1合半、女性は1合でも多い ウィスキー・ブランデー(アルコール分40%強) 男性は75ml未満(コップ1/3位、ダブル1杯) 女性は50ml未満(コップ1/4位) 降圧剤を開始したら 血圧は基本的には年齢とともに上がるので、 降圧剤は一生涯飲み続けるのが原則です。 クスリの飲み始めは降圧に伴い気分不快、なんと なくだるい、立ちくらみ等の症状が新しい下がった 血圧に慣れるまでの1~2ヶ月出やすい。 2剤目、3剤目とクスリ変えていって、初めて自分に 合ったクスリが見つかることもよくあります。 合わなければクスリは変えても良いし、医者も変え てもよいが、くすりを勝手に中止することは絶対に してはいけない。