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ー四六勝鹿文の対句論的分析法の意義と根拠ー - ECHO-LAB

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ー四六勝鹿文の対句論的分析法の意義と根拠ー - ECHO-LAB
﹃三教 指 帰 ﹂ と 対 句 表 現
こ こ で こ の手法 に よ り本 著 作 の始 原 的 意 義 を み よ う。 弘 法
- 四 六 駐儂 文 の対 句 論 的 分析 法 の意義 と根 拠-
大師 教 学 の特 徴 は第 三に能 説 の仏 身 ・所説 の教 法 ・成 仏 の遅
宏
一、弘 法 大 師 空海 (七七四- 八三五) の ﹃三教 指 帰 ﹄ 三 巻 は大
速 ・教 益 の勝 劣 を綱 格 と す る顕 密 二 教 の教 判、 第 二 に十 住 心
聖
師 の 入唐 前 の唯 三の著 作 であ り、 そ の概 観 は儒 ・道 ・仏 教 の
の教判、 第 三 に 即身 成 仏 思 想 の形 成、 第 四 に菩 提 心 の重 視 と
島
浅 深 優 劣 を 論 述 し て仏 教 が 最 勝 と す る三 教 綱 要 書 であ る。 ま
密 教戒 の強 調、 第 五 に鎮 護 国 家 ・済 世 利 民 思 想 であ る。 二方
荒
た、 本 書 は大 師自 身 のそれ 迄 の思 想 遍 歴 を 如 実 に示 し ﹁出 家
文 で、 そ の成 立 要 件 は、 四 ・六 字 句 を 基 本 句 調 に、 故 事 成 語
こ の著 作 の文 体 は中 国 の六 朝 から 唐 代 に盛 行 し た 四 六餅 麗
し て第 五 に は泰 伯 ・羅 ト を 例 示 す る大 小 の忠 孝 説 等が 各 々先
戒 一致 説 や 五戒 ・十 善 戒 の戒 律 思 想 及 び 菩 提 心 の主 張 が、 そ
証 と し た 速疾 成 仏 及び 三切 衆 生 皆 成 仏 思 想 が、 第 四 は 五 常 五
観 で の批判 ・調 和 の 二面 論 の展 開 が、 第 三 は ﹃法 華 経 ﹄ を 経
(1)
宣 言 ﹂ を な す 自伝 的 な著 作 でも あ る。 した が って、 以 後 の真
﹃三 教 指 帰﹄ 三 教観 に お い て はま ず 第 三に対 し て ﹃大 乗 起 信
等 の典 故 を 用 い、 音 調 の譜 和 を 図 った 対 句 構 成 を 主 と す る こ
行 思 想 に相 応 し、 ﹃三 教指 帰 ﹄ はそ の三 教 観 と密 教 思 想 に よ
(3)
言 教 学 形 成 の著 作 と は自 ず か ら位 置 付 け は異 な るが、 本 書 の
論﹄ を 基調 とす る 理智 不 二 の真 如 観 ・仏 身 観 が、 第 二 は三 教
と であ る。 し たが つて、 文 体 成 立 の条 件 を 前 提 に、 典 故 を 考
(2)
教 学 形 成上 の始 原 的 意 義 は問 題 であ る。
察 し、 対 句 毎 に前 句 の内 容 と 後 句 の内 容 の意 味 上 の対 応 関 係
り 大師 教 学 の始 原 形 態 と いえ よ う。
一一三
成仏 ・ 三切 衆 生 皆 成 仏 思 想、 五常 ・五戒 一致 説 は対 句 論的 手
そ し て、 上 記 思 想 のう ち 理智 不 二 の真 如 観 ・仏身 観、 速疾
を 検 討、 把 握 し た 対 句 理解、 さ ら には前 後 の対 句 を含 め 構 成
卒成 二年 三月
意 味 を 加味 し た解 釈 を な す、 対 句 論 的 な 分析 法 が 要 請 さ れ
る。
印度學佛教學研究第 三十八雀第 二號
-491-
﹃三教指帰﹄と対句表現 (荒 島 )
ク
リ
二四
こ こ で は相 反 す る記 述 を 併 説 し か つ両 句 の比較 に ょ り後 句 を
バ
法 にょ り初 め て大 師 独 自 の体系 的 と も いえ る主 張 と し て 解 釈
ノ
テ
ニ テ
ラ
モパハ(8)
不 レ学 而能 覚。
r
乖 レ教 以 自 通。
ヲ
本旨 と す るが、 語 句 上、 反 対 語 の対 応 が 認 め ら れ る。
(4)
(ハ) 一三
極刑工対句
タ
シ
未 レ有
さ れ う る。 し たが つて、 四 六駐 麗文 に お い て は対 句 論 的 分析
法 が ﹃三教 指 帰 ﹄ 理解 にお いて 重 大 な意 義 を持 つの であ る。
ニ
﹁
上 達 二天 子 鱒
シ
二、対 句 表 現 は前 句 と 後 句 の二 句 に よ る対 照 関 係 を も つ構 成
デ 瓦.凡発
こ の対 句 は上 ・下 や天 子 ・凡 童 と いう 両 極 間 の全 て の要 素.
が常 に 三単 位 と いう条 件 に制 約 さ れ る こと か ら、 そ の対 照 に
よ って 一つの新 し いも のを象 徴 さ せ る、 つま り、 字 面 以 上 の
カ
トス
へ
てヲ
ヲ
﹁宜 レ示 二 三隅
鵜 拡コ三海 )
ト
フ
ヲ
ト
ニ
キ
スル
(1)
0
ヲ
二 つ の分 類 基 準 (対句 四種)を 示す が 後 者 は前 ・後 句 の趣 意 の
也。 (
中略)反 対 者 理殊 趣 合 者 也。 正 対 者 事 異 義 同 者 也。﹂ と
ニ
﹁麗 辞﹂ に は ﹁反 対 為ン優 正 対 為 レ劣。 言 対⋮
者 双二比 空 辞 幡者
ヲ
響 を も つ梁 の劉 鋸 (四六 五1五 三二 ) の ﹃文 心 雛 竜 ﹄ 巻 七 下
三、 中 国 の文 学 理論、 文 章 論 で対 句 論 と し て後 世 に大 き な 影
例、 二 極型 対 句が 一二 八 例、 論 理 型 対 句 が 七 五 例 と な る。
発 生概 数 を 示 す と 並列 型 対 句 が 二 一八 例、 比 較 型 対 句 が 四 一
﹃三教 指帰 ﹄ の各対 句 は全 て四 分 類 に相 応 す る。 参 考に 各
上 の展開 が 認 め ら れ る対 句 であ る。
け る後 句 は結 論 が 示 され る の であ り、 前 句 か ら後 句 へと 論 理
こ こ で は対 句内 で動 機 や条 件 を 述 べ る 前 句 が あ り、 こ れ を 承
聯 事 二擢 揚 叩
﹁不 レ得 二抑 忍 二
ヲ
範 囲 を指 示す る表 現 で、 語 句 上 は反 対 語 と 同 義 語 と の両者 が
ヲ
ス
あ り、 同 一方 向 と も反 対 方 向 と も 考 え ら れ る表 現 であ る。
ヒ
ク
一つ の新 し い内 容、 別 の高 次 の世 界 が 展 開 し てぐ る こと であ
ニ
ニ
(二) 論理型 対句
(5)
る。 対 句 表 現 の象 徴 性 の本 要 因 であ る前 句 の内 容 と 後 句 の内
容 と の相 互 関 係、 及 び隔 句 対 で の第 一 ・二句 の内 容 と 第 三・
四 句 の内 容 と の相 互 関 係 を指 し て対 照 関 係 と し、 以 下、 対 句
論 的 分析 法 を模 索 し て ﹃三 教 指 帰 ﹄ 中 にあ る各 対 句 内 に おけ
る内 容面 で のそ の対 照 関 係 そ のも のを 検 討 し、 そ の分 類 化 の
チ
論理型
試 行 を な した。 そ の結 果、 ﹃三 教 指帰 ﹄ では前 句 と後 句 の 各
リ
パ
々 の内容 面 で の対 照 関 係 は並 列 型 ・比 較 型 ・二 極 型
ヲ
踏二
墓 阿国大滝嶽 一
の四 種 に分 類 ・限 定 さ れ る(補 1)。
ノ
(イ)並列型対句
信 二大 聖之 誠 言 殉
{望ム二飛 焔 於 鑛 燧ニー。(勤 二盒 土 州 室 戸ノ崎昌一心
(6)
トノ
こ こで は語 句 も 同 種 の対 応、 類 似 の内 容 が 並 列 さ れ て いる。
ヲ
﹁
鐘 鼓 鰹 鍵 已奪 二耳 聰 殉
ト モ
{
錦 璽
昌ハ
内心 瀬・
仙
欄トメ忽ニ損スご目 明ヲ繍O(7)
{
外 事ハ 同シレ俗ニ
(ロ)比較型対句
ノ
﹁
秦始皐
{
濁武帝
-492-
異同 について同方向 の対句を正対 とし、逆方向 を反対 とした
が 挙げ られ る。 こ の覆 意 之 例 は反 型 (比較型対句) に、 上 句 意
る技 法、 さ ら にそ の第 三 ・第 四 は いず れ も 比喩 に関 す る も の
そ の構成分析 と 典故論的
2
堀内 寛 仁 ﹃弘 法 大 師 の出家 宣 言 書 三教 指 帰 ﹄ 訳 注 篇 三〇
8
7
6
5
﹃和 刻 本 漢籍 筆 集 ﹄ 一六 ・四七
﹃弘 法 大 師 全 集 ﹄ 三 ・三 二七
﹃弘 法 大 師 全 集 ﹄ 三 ・三 二 入
﹃弘法 大 師 全 集 ﹄ 三 ・三 三 五
﹃弘 法 大 師 全 集 ﹄ 三
あ る。 表 現 と は句 格 が 如 何 に ﹁意﹂ と 関 連 す る か であ る。 正
対 ・反 対 の分 類 基 準 に よ り論 理 的 に弁 別 す れ ぽ 並 列 型 ・比 較
四 六駐催文 の対
勝 又俊 教 博 士 ﹃密 教 の日本 的 展開 ﹄ 一七
4 拙稿 ﹁
﹃三教指帰 ﹄ にみられ る 対句表現-
3
考 察 Il ﹂ (﹁
豊 山 学 報 し 二六/ 二 七合 ・ 三 一三)
1 拙稿 ﹁﹃三教指帰﹄ の成立問題1
別 化 と これ に よ る対 句 の定 型 的 解 釈 の確 立 が 認 め ら れ よう。
に相 応 し各 々そ の根 拠 と い え よ う。 ま た こ の結 果、 対 句 の類
下 句 以意 成 之 例 及 び 比 喩 に関 す る 二例 は基準 外 (論 理型 対句)
内容面 にかかわる分類基準を説ぐ のであ る。
(1)
1
次 いで弘法大師 の編著的著作 ﹃
文鏡秘府論﹄ 六巻 の対句論
を み よ う。 そ の東 巻 の大 師 の ﹁二 十 九 種 対 ﹂.
は 餐 来 説 の集 大
成 と す るが 分 類 基 準 は 不統 三で雑 多 で あ る。 古 田 敬 三氏 は こ
中間型
れ を 承 け、 網 羅 的 ・体 系 的 なそ の分 類 基準 で 対 句 を 形 式 的 七
分 類 と 内容 的 三 分類 に 分け、 内 容 面 で は反 型 ・同 型
(1)
2
と さ れ るが、 要 は伝 統 的 分類 基 準 によ る 反 対. 正 対 と そ の中
間 であ る と いえ よ う。 こ の他、 二十 九 種 対 に関 し て は、 そ の
内 容 面 で の対 句 を 的名 対、 同対、 異 類 対 ・意 対 の四 分 類 と す
9
﹃弘 法 大 師 全 集 ﹄ 三 ・六七
三 二四
九
六
上
二五
(大 正 大 学 総 合 仏 教 研 究 所 研 究 員 )
八
﹂ (﹁
豊 山教 学 大 会 紀 要 ﹂ 三六)
10
前 註 (5 ) 古 田 氏 前 掲 書 四 八- 一二 五
(1)
4
古 田敬 一 ﹃中 国文 学 にお け る 対句 と 対句 論 ﹄ 二 七 五
る青 木 正 児博 士 の説 が あ り、 や は り反 対 ・正 対 と そ の中 間、
11
青 木 正 児 ﹃支 那 文 学 概 説 ﹄ 一四 五- 八
句 論 的分 析 法 を めぐ つて-
さ ら に基 準 外 を も 認 め る も のであ る。
12
(1)
3
型 ・二極 型 ・論 理 型 の四 であ る 対句 の対 照 関 係 こそ、﹁意﹂を
13
二十 九 種 対 句 は主 に語 句 に着 目 し た修 辞 的 範 疇 の分 類 説 で
如 何 に形 態 化 す る か の問 題 であ るが、 こ う い う考 察 の 一つが
14
﹃弘 法 大 師 全 集 ﹄ 三 ・三・
四- 六
補 1 考 察 対 象 の対 照 関 係 は太 字 カ ッ コで示 し た
﹃文 鏡 秘府 論 ﹄ 地 巻 の絞 然 ﹃詩 議﹄ 所 説 に よ る ﹁十 四 例 ﹂ に
見 ら れ る ので比 較 ・論 理型 の根 拠 を探 り た い。 こ の説 も や や
< キ ー ワ ード >
-
﹃三教 指 帰 ﹄
乱 雑 であ るが、 そ の第 十 二 の ﹁覆 意 之 例 ﹂ は前 句 で述 べ た趣
意 と 逆 の こと を後 句 で 展開 す る手 法が、 第 六 の ﹁上 句 意 下 句
島)
以意 成 之 例 ﹂ は句 が す べ て意 か ら意 への受 け 継 ぎ で構 成 さ れ
﹃三教 指 帰 ﹄ と 対 句 表 現 (荒
-493-
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