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算数科 - 北九州市立学校
算数科<小学校第6学年> 上津役小学校 研究主題 教諭 藤 田 正 博 問いをもち、主体的に学び合う子どもを育てる授業の創造 Ⅰ 目指す子ども像と目指す授業像 目指す子ども像 ○ 具体物、言葉、数、式、図、表、グラフなどを適切に用いて問題解決を図り、算数用語を使って自分の考え を表現する姿。また、話合いを基に自分と友達の考えを比較し、有用性、簡潔性、一般性などの視点から考え を見直したり深めたり、疑問を解決したりする姿。 目指す授業像 ○ 子ども自ら課題を見いだし、解決する授業 ○ 課題解決のための視点を明確にもち、子どもが主体的に活動する授業 ○ 子どもが自ら考えを集団の中で伝え合い、それぞれの考えを比較、検討し、学び合う授業 問いをもつ 主体的に学び合うことができる状況づくり 学び合い 視点2 一単位時間 問いをもつことができる状況づくり 全体を貫く問い ① 視点を明確にした話合い 視点1 ① 既習事項との比較・検討による課題の明確化と 解決の見通しをもたせる活動 問いをもち、主体的に学び合うこども 子 ど も の 実 態 Ⅱ 研究の実際 1 授業研究Ⅰ 1 授業研究Ⅰにおける研究の視点 視点1 問いをもつことができる状況づくり 視点2 主体的に学び合うことができる状況づくり ① 関係図、線分図を用いた前時との比較による課 ① 基にしている量は何かという、視点を明確にし 題の明確化と見通しをもたせる活動 た話合い 2 授業研究Ⅰの実際 ⑴ 単元名 比とその利用 ⑵ 単元の目標 ○ 比について関心をもち、日常生活のいろいろな場面で使われ 算数への関心・意欲・態度 る二つの量の大きさの割合を、比を使って表そうとする。 ○ 比の表し方を考えたり、比を割合と関連付けてとらえたりす 数学的な考え方 ることができる。 ○ 二つの数量の関係を比を使って表したり、比の問題を解いた 数量や図形についての技能 りすることができる。 数量や図形についての知識・理解 ○ 比の意味や相当関係、問題解決に利用する仕方を理解する。 1 ⑶ 指導計画(総時数9時間) 1 比の意味を理解し、それを用いて二つの量の割 合を表したり、比の値を求めたりする。 ② 2 等しい比の意味を知り、その性質について調べ る。 ④ ⑷ 3 比を使った問題を解く。 ② ⑴ 比の一方の数量を求める問題を解く。 ⑵ 全体を決まった比に分ける問題を解く。 【本時】 ○ 「たしかめましょう」をする。 ① 本時の学習 主 眼 (第三次第2時) 関係図や線分図を用いて考える活動を通して、全体と部分の比の関係を理解し、 計算で求めることができるようにする。 ① ② 展 開 主な学習活動 ◎研究の視点に沿った手だて 【観点】評価規準(評価方法) 1 学習問題を知り、めあてをつかむ。 1 □ 6年2組の子どもたちが、お楽しみ会でコーヒー牛乳を作ることにしました。 250mLのコーヒー牛乳を作るのに、牛乳とコーヒーの量の比を3:2にするには、それ ぞれ何mLずつまぜたらよいですか。 ○ 前時のものと比較しながら教師とのやり取りで黒板に線 ⑴ 学習問題を把握する。 分図を描き、数量の関係を確認する。そして、前時のよう ⑵ 線分図を描く。 に線分図にかき表した数値を使えば、解決できそうだとい 全体の割合を考えて線分図をかく。 う見通しから、めあてを導き出す。 <視点1①> ⑶ めあてをもつ。 めあて 2 3 全体の量から、3:2のそれぞれの値を求める方法を考えよう。 牛乳とコーヒーの量の求め方を考える。 牛乳とコーヒーの量について話し合う。 ⑴ 考えを提示し、どのような考え方を 使っているのか、みんなで考える。 ⑵ 考えの特徴からそれぞれの考えに小 見出しをつける。また、似ているとこ ろを見付ける。 ア 比の1つ分を求める方法 ○ イ 全体の何倍かを使って求める方法 ○ ウ 比の値を使う方法 ○ 4 適用問題を解決し、発表する。 5 本時のまとめをし、振り返りを行う。 まとめ ○ 「○○の考え」など、算数的なアイデアに視点を置いた 小見出しを表記する。 ◎ どの考えも認めながら、全体量に着目した考えに目を向 けさせる。また、前時と比較することで、基にしている量 (本時では全体)の何倍かを表したものが比の値であるこ とを想起させ、その有用性に気付かせる。 <視点2①> 【考】全体の数量を決まった比に分け、それぞれの部分にあ たる数量を求めることができる。 (ワークシート分析) もとになっているものの何倍かが分かるとよい。 授業改善の余地 子どもの実態 ⑸ 授業後の考察 ○ 全体の比と部分の比からの問題解決が難し かった。 ○ 話し合う段階で、友達の考えと比較し、代 わりに発表することができた。しかし、 「比の 一つ分」にこだわる児童がいた。 ○ 前時とのちがいを明確にするために、可視 化した手だてをとる必要がある。 ○ 比の値のよさに気付かせる発問が必要だっ た。まとめでは、 「もとになる量」を意識させ、 既習の割合の学習と同じであることに気付か せる必要があった。 視点1の有効性や課題、新たに分かったこと 視点2の有効性や課題、新たに分かったこと ○ 導入段階において、線分図を用いて問題把握を ○ 児童が自然と、比の値のよさに気付き、既習の したことは、有効であった。しかし、「全体の比」 割合の考え方と同じであることを実感することが 大切である。そのためには、関係図や線分図に十 と「部分の比」を可視化して問題把握をする手だ 分慣れている必要がある。 てをとらなければ、 「問い」をもつ状況づくりがで きたとはいえない。 2 2 授業研究Ⅱ 1 授業研究Ⅱにおける研究の視点 視点1 問いをもつことができる状況づくり ① 道のり、時間など、速さを表すために必要な数 値を考えることで課題を明確にする問題提示の 工夫 2 視点2 主体的に学び合うことができる状況づくり ① 単位量当たりの考えを基にした話合い 授業研究Ⅱの実際 単元名 速さ 単元設定の理由 ○ 本学級の児童は、これまでに第5学年の「単位量あたりの大きさ」の学習で、「単位量あたり」 という言葉を理解している。基礎的な四則計算については、速さに個人差はあるものの、ある程度 の児童ができる。しかし、基の数の何倍になっているかという考え方や、比べる量や基にする量の 関係についての文章問題になると60%台の正答率にとどまり、2つの量の関係が十分にとらえら れていないことが分かる。また、問題を解くことはできても、説明がうまくできていなかったり、 説明ができていても、適切な算数用語を使えず、相手に自分の考えが、うまく伝わらなかったりす ることがある。 そこで、これまでの学習において、思考カード(既習の数理をまとめたもの)や毎時間のノート を基に、既習事項を使って問題を解くことができるように、授業中や家庭学習で、繰り返し指導し てきた。また、話し合う段階においても、代表児童が説明した後に、説明を繰り返したり、友達の 考えをペアで考えたりするなど、話合いや教え合いをする中で、問題解決をすることができ、達成 感を味わうことができる場づくりを心がけている。 ○ 本単元は、速さの意味を知り、その比べ方や表し方を理解するとともに、速さ、道のり、時間の 関係を理解させることをねらいとしている。速さについては、幼いときから感覚的、経験的に理解 してはいるが、その意味について理解しているわけではない。そこで、短距離走などの身近な事象 の中で実感させるとともに、表し方を、自動車の速さなどの具体的なもので数値化し、理解させる ことが大切である。 ○ 指導に当たっては、以下の手だてを取り、指導の充実を図る。 速さについて豊かなイメージをもたせた上で、単位量当たりの考え方の延長線上で速さの表し方 が理解できるようにさせたい。速さは、単位時間当たりに移動する長さを表している。そこで、数 直線や線分図を用いることで、単位時間の考え方を十分に理解できるようにしたい。 本時では、道のりと時間が異なる3頭の動物が走る様子を提示し、どの動物が一番速いのかを問 い、速さを比べる活動を位置付ける。動画を用いて、バラバラに走る動物の映像から、話合いの中 で道のりと時間の必要性に気付かせていきたい。 学び合いの場面では、最小公倍数を用いた考えと単位量当たりの考えを比較させることで、児童 の考えを深めさせたい。つまり、速さを比べる際には、単位時間で比べる方法と単位距離で比べる 2つの方法が有効であることに数直線を用いて理解させるとともに、どちらの方法も生活に結び付 いていることに気付かせたい。 ⑴ ⑵ ⑶ 目 標 算数への関心・意欲・態度 ○ 単位量当たりの考え方を用いて、速さ・道のり・時間の関係を調べよ うとする。 数学的な考え方 ○ 道のりと時間の関係から、速さの意味や表し方を考えることができる。 数量や図形についての技能 ○ 速さの意味を理解し、速さ、道のり、時間を求めることができる。 数量や図形についての 知識・理解 ○ 速さの意味や、比べ方を理解する。 3 ⑷ 指導計画(総時数7時間) 主な学習活動・内容 指導上の留意点 【観点】評価規準(評価方法) 1 速さの意味を知り、速さ についての問題を考える。 ⑴ 速さの意味を理解し、 ○ カンガルー、ダチョウ、キリンの 【考】単位量当たりの考え方や数 走った道のりと時間の表から、単位 直線などの図を使って、速さを比 単位時間当たりの距離、 量当たりの考え方を使って速さを比 べることができる。 および単位距離当たり (ノート分析) べることができるようにする。 の時間で速さを比べる。 <視点1①><視点2①> 【本時】① ⑵ 速さの表し方を知り、 ○ 数直線を使って、1時間当たりに 【知】数直線を使って、道のりと 進む道のりを求めることができるよ 時間から、速さを求めることがで 道のりと時間から、速さ うにする。<視点1①><視点2①> きる。 (発言分析・ノート分析) を求める。 ① ⑶ 速さと時間を知って、 ○ 数直線を使って、速さと時間から、 【知】数直線を使って、速さと時 道のりを求める。 ① 進む道のりを求めることができるよ 間から、道のりを求めることがで うにする。<視点1①><視点2①> きる。 (発言分析・ノート分析) ⑷ 道の りと速 さを 知っ ○ 数直線を使って、道のりと速さか 【知】数直線を使って、道のりと て、時間を求める。 ① ら、時間を求めることができるよう 速さから、時間を求めることがで にする。 <視点1①><視点2①> きる。 (発言分析・ノート分析) ⑸ 時 速と分 速と秒 速と ○ どちらか一方の単位にそろえるこ 【技】時速、分速、秒速の速さの の相互の関係を調べ、い とで、速さを比べられるようにする。 単位を換算することができる。 ろいろな速さを比べる。 <視点1①><視点2①> (ノート分析) ① ⑹ 練習問題をする。 ① ○ 速さ、時間、道のりの関係を使っ 【技】速さ、道のり、時間を求め て学習内容を確実に見付けることが る公式を活用することができる。 できるようにする。 (ノート分析) ○ 「たしかめましょう」を 【考】速さの求め方を活用して、 する。 ① 時間を求めることができる。 (ノート分析) ⑸ 授業の実際 ① 主 眼 速さを比べる活動を通して、単位量当たりの考えに気付かせ、時間と道のりのどちらかに単位をそろ えることで、速さを比べることができるようにする。 ② 準 備 教師…大型TV、数直線、児童…思考カード ③ 展 開 主な学習活動・内容 1 ○ 指導・支援上の留意点 ◎ 視点1、視点2に関わる手だての詳細 学習問題を知り、めあてをつかむ。 1 □ カンガルー、ダチョウ、キリンの中 で、どの動物が一番速いか調べましょ う。 ⑴ 【観点】評価規準(評価方法) 道のり カンガルー 0.2km ダチョウ キリン 0.18km 125m 学習課題を把握する。 4 時間 1 分 6 8秒 8秒 <視点1①>道のり、時間など、速さを表すために必要な数値を考えることで課題を明確にする問題提示の 工夫 ◎ 実際に草原を走る動物の映像を用意し問題の状況を把握 させた。動物がバラバラに走るため、映像だけではどの動物 が速いのか分からないことから、児童は時間と道のりの数値 が必要なことに気付くことができた。 T :どの動物が速いかな。 C1:これじゃ、分かりません。バラバラだから。 T :何が分かれば比べられそうかな。 【バラバラに走る動物の動画】 C2:方向と距離。 C3:時間。 T :じゃあ、同じ方向に走ってもらおうかな。 C4:方向が同じでもだめ。時間と距離がいる。 ◎ ダチョウとキリンは時間が同じことから、道のりで比べら れることに表を基に気付かせた。また、m、km、秒、分な どの単位を統一して比べる必要性があることにも気付かせた。 T :この中ですぐに比べられそうなものはないですか。隣の 人と相談して。 C1:ダチョウとキリン。秒数が一緒なので比べられる。ダチ 【時間と道のりを基に課題を明確化】 ョウの方が長い距離を走るので、速いといえます。 T :じゃあ、今日見付けることは何ですか。 C2:ダチョウとカンガルーはどちらが速いか。 ⑵ めあてをもつ。 めあて カンガルーとダチョウのどちらが速いか、比べる方法を考えよう。 2 速さの比べ方を考える。 ア 1秒あたりに何m走ったかで比べる ○ カンガルー 予想される児童の考え カンガルー 0.2km=200m 20 1 0 分=10秒 200(m) 6 200÷10=20 A 20m ダチョウ 0.18km=180m 180÷8=22.5 A22.5m 1秒あたりに走る道のりが長いのはダチョウ 一番速いのはダチョウ 0 1 10(秒) ダチョウ 22.5 0 0 1 180 (m) 8 (秒) 10 (秒) イ 1m走るのに何秒かかったか比べる ○ カンガルー カンガルー 0.2km=200m 1 分=10秒 0.05 0 6 10÷200=0.05 A 0.05秒 ダチョウ 0.18km=180m 8÷180=0.04 A 0.04秒 1mあたりにかかる時間が短いのはダチョウ 一番速いのはダチョウ 0 1 200(m) ダチョウ 0.04 8 (秒) 0 0 1 5 180 (m) ウ 最小公倍数を使って考える ○ エ 100m走るのに何秒かかったか比べる ○ カンガルー カンガルー 10×4=40 200×4=800 A 40秒では800m 200÷100=2 10÷2=5 100mでは5秒 ダチョウ 180÷100=1.8 8÷1.8=4.4… A ダチョウ 8×5=40 180×5=900 A 40秒では900m 一番速いのはダチョウ 速さの比べ方について話し合う。 ⑴ 考えを提示し、どのような考え方を 使っているのか、みんなで考える。 ⑵ 考えの特徴からそれぞれの考えに小 見出しをつける。また、似ているとこ ろを見付ける。 ア 1秒あたりに進む道のり ○ イ 1mあたり走るのにかかる時間 ○ ウ 最小公倍数 ○ エ 100mあたり走るのにかかる ○ 時間 A 100mでは4.4秒 一番速いのはダチョウ 3 ○ 算数用語を使ってまとめさせる。 (1秒当たり、1m当たり、最小公倍数) ○ 個別に支援が必要な児童には数直線や関係図をかいて個 別指導する。 ○ 順序よく説明が書けるように接続詞を使ったり、番号を 付けたりして、自分の考えを整理して書く。 ○ 自分とは違う友達の考えをノートにまとめ、考えを理解 する時間をとる。 <視点2①>単位量当たりの考えを基にした話合い ◎ 「1mあたりにかかる時間」 「1秒あたりに進む道のり」という小見出しを表記させることによっ イ )を基に、課題を解決できる ア と○ て、速さについても単位量当たりの考え方(児童から出た考え○ ことを理解することができた。 ◎ 「最小公倍数」や「100mにかかる時間」を教師が提示し、児童に考えを読み解かせる活動を ウ と○ エ) 。さらに、児童の考えを比較、検討させ、単位量当たりの考え方 行った(教師が出した考え○ のよさに気付くことができるようにしたところ、時間と道のりのどちらかに単位をそろえることの 必要性について以下のように話し合い、課題を明確にしていった。 T :先生の考えた「最小公倍数」や「100mにかかる時間」を求めた考え方が一番すごいよ。 C1:え、ぼくたちの考えの方が便利です。 T :どうしてそう思ったのかな。 C2:だって、ぼく達の考えは、単位量あたりの考えだから、一方を他方で割るだけでよいです。 だから、分かりやすいし、比べやすいです。 C3:先生のやり方は、式が多くなります。 C4:それに、ぼくたちの考えは、数直線で表すと、どちらが速いか一目で比べることができるか らです。 【教師の考えを基に話し合っている様子】 【数直線を用いた比較】 6 4 適用問題を解決し、発表する。 2 □ 【思】 単位量当たりの考え方や数直線などの図を使って、 速さを比べることができる。 (ノート分析) 一番速いのはどれでしょう。 ○ 162mを15秒で走るアフリカゾウ ○ 100mを9.58秒で走るウサイン・ボルト ○ 50mを7.7秒で走るA君 1秒あたりで進む道のりで比べる 1mあたりにかかる時間で比べる ゾウ 162÷15=10.8 10.8m ボルト 100÷9.58=10.43… 約10.4m A君 50÷7.7=6.553… 約6.5m 1秒間あたりに走る道のりが長いのはゾウ 一番速いのはゾウ 5 ゾウ 15÷162=0.0925… 0.093秒 ボルト 9.58÷100=0.0958 0.096秒 A君 7.7÷50=0.154… 約0.15秒 1mあたりにかかる時間が短いのはゾウ 一番速いのはゾウ ○ 単位量あたりで、比べることができることを実感させる。 本時のまとめをし、振り返りを行う。 まとめ 速さは、1秒あたりに進む道のりや1mあたりにかかる時間など、単位量あたりの考えで比べるこ とができる。 ⑹ 授業後の考察 視点1の有効性や課題、新たに分かったこと ① 道のり、時間など、速さを表すために必要な数値を考えることで課題を明確にする問題提示の工夫 ○ 速さを表すために必要な単位、時間、道のりを導き出すために、ICTを活用した。最初、ばらばら な向きに走る動物の動画を見せることで、それぞれが走る道のりが必要であることに気付かせた。次に、 走る時間が動物によって違う動画を見せることで、走った時間が必要であることに気付かせた。また、 道のりや時間の単位をばらばらにしたことで、比較するためには、まず単位をそろえる必要があること を児童に理解させることができ、このことが単位量当 たりの考えに結び付いた。そして、既習の数理を書き 1秒あたりに進む道のり 15 記した思考カードや掲示物を活用することで、数直線 1mあたりにかかる時間 や線分図を使って、問題解決をする姿が見られた。そ 11 の結果、36名中、33名の児童が、「1秒あたりに 両方の考えをつかって 7 進む道のり」 「1mあたりにかかる時間」又は、 「両方 考えがまとまらなかった 3 の考え方」で答えを導き出すことができた(資料1)。 また、思考カードの活用については、日常から既習 0 10 20 事項の振り返りに使用しており、本時においても十分 に活用していた(資料2)。これらのことから、本時 【資料1 児童が考えた単位量当たりの において視点1は有効であったといえる。 考え方】 【資料2 思考カードとそれを基にした考え】 7 視点2の有効性や課題、新たに分かったこと ① 単位量当たりの考えを基にした話合い ○ 9割以上の児童が数直線図または線分図を基に立式することで、既習事項である「1mあたりにかか る時間」「1秒あたりに進む道のり」という単位量当たりの考えのよさを実感した。そして、課題を解 決することができた。しかし、2つの考えのどちらも使ったという児童は2割程度であったため、友達 の考えを読み解く場面を取り入れた。その結果、自分の考えと友達の考えを比べながら、改めて課題を 解決していく姿が見られた。また、それぞれの考えに小見出しを付けたことで、既習事項と結び付けた 理解を容易にし、自他の考えのよさを実感することができた(資料3)。ただ、数直線図や線分図を用 いた考えだけで話合いが進んだために、単位量当たりの考えのよさについて、実感させることが必要だ と思われた。そこで、教師から別の解法を示すことにした。 友達の考 数直線図を用いるこ とで、単位量当たり の考えのよさを実感 している。 友達の考えのよさ を実感している。 【資料3 数直線図のよさと自他の考えをまとめたノート】 ○ 単位量当たりの考え方のよさを実感させるため に、教師が「最小公倍数をつかった考え方」や「1 00mにかかる時間で求める考え方」を提示した。 その際、児童の考えと比較、検討させたことで、 「先 生の考えは、式が長くなって、めんどうくさい」 「計 算が難しい」などの発言が相次ぎ(P6参照)、単位 量当たりの考え方のよさを実感する姿が見られ(資 料4)。児童は、別の解法でも課題解決できることに 【資料4 教師の考えについての感想】 納得しつつも、「より簡単に」「いつでも使えそう」 な単位量当たりの考えのよさに気付くことができたといえる。本時における児童と教師のやり取りやノ ートの見取りから、8割の児童が単位量当たりの考えと最小公倍数の考えの比較を行っており、自分た ちが見いだした単位量当たりの考えのよさを改めて感じ取ることができたといえる。これらのことか ら、本時において視点2は有効であったといえる。 さらに、最小公倍数では速さを比べることのできない適用問題を解かせることで、単位量当たりで速 さを求めるよさをさらに感じ取らせることができた。 Ⅲ 研究のまとめ 1 研究の成果 ⑴ 視点1の手だて ① 「既習事項との比較・検討による課題の明確化と解決の見通しをもたせる活動」について 第一学期から、単元や授業場面において、問いをもつ児童の姿を目指し、実践を積み重ねてきた。 課題設定の工夫を行うことで、児童は既習事項との比較を行い、本時の課題を見付けることはでき た。しかし、一方で線分図等を十分に活用することができないために、授業研究Ⅰでは、解決の手 だてを確実にもたせることができなかった。つまり、児童が解決の見通しをもてないまま個人思考 に入ったために、自力解決をすることができた児童は、約85%にとどまった(資料5)。しかし、 第二学期の授業研究Ⅱでは、単元導入時における数値の工夫・改善等を行い、課題を明確にしたこ とで、見通しを基に自力解決をすることができた児童は約92%に増加した。その内訳についても、 8 数直線図と言葉を用いて解決した児童が第一学期の約62%から約80%に増えた(資料6)。こ れは、思考カードやノート、前時の掲示物やICT教材から課題解決の見通しをもって、既習事項 と結び付けたことで自分の考えを確立することができたものと考えられる。 85 第一学期 92 第二学期 0 50 15 第一学期 8 第二学期 100 ■自力解決した児童の割合 ■自力解決できなかった児童の割合 【資料5 62 38 80 0 20 40 20 60 80 100 ■図を用いた児童の割合 ■図を用いなかった児童の割合 【資料6 自力解決した児童のうち、図を用 いた児童の割合(%)】 既習事項を生かして課題を見いだす環境を整えたことで、第一学期に比べて既習事項とのつなが りを意識したり、数理につながる友達の考えのよさに着目したりする児童が増えてきたといえる。 この、問いをもち、主体的に問題解決をしようと意欲を高めた姿は、本研究において目指してきた ものである。 ⑵ 自力解決した児童の割合(%)】 視点2の手だて 「視点を明確にした話合い」について 第一学期は、数名の児童の考えに学級の多くの児童が賛成を表明し、学習をまとめることが多か ったが、本当に納得しているかどうかは、疑問が残っていた。そこで、この考え方が本当に正しい かどうかを確認させる意図で、教師から、誤答や別の解法を提示した。その際はペアや少人数、学 級全体等の形態を活用して、話合いを行った。その結果、多くの児童が教師の考えと比較して、自 分達の考えのよさや正しさを主張することとなった。その結果、視点を明確にしながら本時の主眼 にせまることにつながったといえる。 また、考えの根拠となる数量関係を表すための数直線図や線分図等を用いて個人の考えをまとめ るように年間を通じて指導してきた。その結果、第二学期、本時以後の単元においても、数直線図 や線分図を用いて課題解決を図ろうとする様子が見られた(資料7)。 ① 【資料7 線分図を用いて課題解決を図ったことが見取れるノート】 また、話合いの場面では、数直線図や線分図を基に説明したり、友達の考えを図を基にして読み 取ったりすることでそれぞれの考えの根拠が明らかになり、一人一人の考えを深めることにつなが った。また、教師の提示した別の解法について考える際には、ペア学習による話合いを行ってきた。 この時、ペアでは図を指し示しながら、自分たちの考えと教師の考えとの比較・検討をすることで 話合いの視点が明確になり、活発な意見交換が行えた。その結果、全体での話合いが自分達の考え のよさをさらに実感できる場となった(資料8)。 9 T :先生の考えた「それぞれの割合を分けて合わせる」考え方の方が分かりやすいよ。 C1:え、ぼくたちの方が便利です。 T :どうしてそう思ったのかな。 C2:だって、ぼくたちの考え方は、割合の一つ分を基にした考え方だから、それぞれ先にたして、全 体の一つ分を求めた方が、求めやすいからです。 C3:先生のやり方は、全体の割合が分かりにくいです。 C4:それにぼくたちの考えは、線分図で表すと、一つ分の割合が一目で分かるからです。 【資料8 教師の考えとの比較で、視点を明確にした場面 <割合を使って>】 このように、視点を明確にした話合いは、主眼をよりよく達成するために有効な手だてであった といえる。 2 今後の課題 ○ 「問い」は、単元や授業の導入場面だけにあるものではなく、連続したものである。一つの課題が 解決すると、また新たな「問い」が生まれてくる。つまり、展開や終末の段階においても、「問い」 が芽生え、それを常に解決しようとする態度が必要である。そして、その「問い」に対して、常に複 数の考えで解決を試みようとする姿勢が大切である。今回の研究では、複数の考えの一部を教師が提 示することで、話合いを活性化させた。今後は自分たちの考えとして、できるだけ多くの解決策を見 付け、その中からよりよい方法を模索する態度を育成したいと考える。そのためには、友達の考えや 先生の考えを、ノートにまとめ、自分の考えを付け加えるなどの学習習慣を身に付けさせることが大 切であると考える。 ○ 既習事項を基にしながら、論理を組み立てていくことができるように、考えの根拠となる思考カー ドを活用したが、教師の発問とカードの活用がうまくかみ合わずに児童の思考を妨げることがあった。 「既習事項の何と関連があるのか」「それを引き出すために必要な発問は」等、教材研究を深めるこ とで、発問を精選することが大切である。 <参考文献> ・文部科学省 「小学校学習指導要領解説 ・北九州市立教育センター 算数科編」 平成20年 「平成24・25年度研究紀要」 ・中村 光晴 「思考過程を問う愉しい算数話し合いづくり」 ・伊藤 幹哲 「算数授業のユニバーサルデザイン」 東洋館出版社 平成27年 ・宮本 博規 「算数学び合い授業スタートブック」 明治図書出版 平成27年 ・筑波大学附属小学校算数教育研究部 「問題解決の算数授業」 東洋館出版社 10 東洋館出版社 平成26年 平成27年