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資料5 埼玉県産木材を積極活用した幼稚園づくり (PDF:1160KB)
木材を活用した学校施設づくり講習会 『埼玉県産木材を積極活用した幼稚園づくり』 「杉戸町立中央幼稚園管理棟・遊戯棟」 杉戸町建築課 営繕担当 渡辺 景己 埼玉県杉戸町の紹介 z 埼玉県東部に位置 z 人口約47,000人、 z 面積30k㎡ z 東京都心より北に約40 kmの田園都市 z 旧日光街道の宿場町 z 地理的には、江戸川や 大落古利根川に囲ま れる『川下』地域である z 町の木「杉」 z 町の花「菊」 杉戸町立中央幼稚園の概要 z 所在地 : 埼玉県北葛飾郡杉戸町大字杉戸2199 z 敷地面積: 3230.45㎡ z 建築面積: 451.61㎡ (既存棟696.25㎡) 内訳(管理棟:184.42㎡ 遊戯棟:267.19㎡) 新旧合計 1147.86㎡ z 延床面積: 446.64㎡ (既存棟696.25㎡) 内訳(管理棟:179.45㎡ 遊戯棟:267.19㎡) z 構造:木造在来軸組工法 z 小屋組: 管理棟:和小屋、遊戯棟:洋小屋トラス z 使用構造材 柱・土台:県産桧、長スパン梁:国産唐松集成材 他部位:県産杉 杉戸町立中央幼稚園の事業経費等 z 【意匠設計・監理】 杉戸町建築課 z 【構造設計・監理】 設計委託費:903,000円 監理委託費:388,500円 z 【設備設計・監理】 設計委託費:451,500円 監理委託費:472,500円 z z z z z 【建築工事費】 64,022,700円(追加工事含) 【電気設備工事費】 9,945,600円(変更契約有) 【機械設備工事費】 19,614,000円(変更契約有) 【外構工事費】 4,000,500円(変更契約有) 【総工事費】 97,582,800円 杉戸町立中央幼稚園管理棟・遊戯棟の改築に至るまでの経緯 z 昭和51年 : 旧管理棟、保育教室棟 竣工 z 平成20年 : 木造耐震精密診断及び鉄骨造第2次耐震 診断を実施。 保育教室棟(純木造)は、Iw値1.0を超えるが、 管理棟(木造、S造の平面混構造)は、診断値が Iw値1.0、Is値0.6を下回る。 z 平成21年 : 応急耐震化工事が予算化されて 工事の実施計画が立てられる。 z 平成21年 : マニフェストのひとつに幼稚園や保育園 の建替えを掲げた新町長が初当選した。 z 平成21年 : 町長就任後すぐに全職員に対する職員 提案の募集を実施する。 z 平成21年 : 耐震補強予定の幼稚園を職員設計による 木造建替え方式で提案した所、採択された。 中央幼稚園旧管理棟の状況 z竣工時の状態での 幼稚園の航空写真 z昭和62年撮影 z下段:旧管理棟の写真 z手前 管理部門(木造) z奥側 遊戯部門(S造) なぜ、木造を提案したか? z 設計担当者が埼玉県が主催する木づかいコーディネーター の初回受講者(平成16年度)で木造の公共施設に関心があり 木造の優位性を理解していた。 z 埼玉県が平成16年に公共施設の木造化の指針を策定して いたため県内市町村としてそれを考慮した。 z 国が公共施設木造化の法律施行に向けて動いていた。 z 県の営繕技術者会議での県や他市職員設計発表会の影響。 z 職員設計を検討していたため他市でも実績のある木造は取 り掛かりやすいと考えた。 木造のメリットや優位性 z 構造躯体が軽い→基礎や杭の仕様が軽減 できる z 構造躯体に木を使用するので環境にやさし い z 構造体がCO2(二酸化炭素)を固定できる z 子供たちに木のぬくもりのある園舎を提供 できる z 調湿作用があると言われている 地域産材や国産材にこだわった理由 z 地産地消を行うことで輸送コストや輸送CO2を低 減できる。 z 地域や日本国内の森林整備に貢献できる。 z 地域材の方がその地方の気候で育っているため 周辺環境に馴染む。 z 川上の林業が主要産業である自治体での木造公 共施設の実績例は多いが、川下地域での木造公 共施設の実績はたいへん少ない為新しい流れを 作りたかった。 地域産材や国産材への懸念 z 価格について高くないか・・・県内の複数の 材木店や森林組合と綿密に打合わせ及び 見積り調査を行った。 その結果、節有り材や規格材は高額でな い事が判明した。 z 納期についての懸念・・・事前の調査で500 ㎡弱の木造施設であれば予め分離発注し なくても可能な事が判明した。 使用構造材の概要について z z z z z z z 主に埼玉県産桧材・杉材、国産唐松集成材を使用 県産桧材: 19.66m3 県産杉材: 36.78m3 県産材計56.44m3(約82%) 国産唐松集成材: 11.86m3 国産木材使用量: 68.29m3 木材調達事業者:埼玉県中央部森林組合 埼玉県小川町 木材発注時期:建築施工者決定後、速やかに施工者に部材 発注を要請。 z 木材の特記仕様:木造建築工事標準仕様書による。 z 木材の産地指定:県産材及び長野県産材の指定を行う。 県産木材及び地域材の使用にあたり z 単価設定は? ①見積り徴収実施。基本的に地域指定が入った場合は、積算 資料本などは採用しない。 z コストに関する比較検討資料は? ①積算資料などの物価本関係の設定価格との開きを比較検 討する。 z コストダウンを図るアイデアは? ①幅広い供給元への見積り徴収。 ②材の等級の緩和(非JAS材、有節など)。 ③流通材を極力使用する(特注材は使わない) ④部位により製材、集成材、LVLと樹種の比較 コストダウンへの工夫 z なぜ、流通材①? →木材の流通価格が特注材とかなり違う z なぜ、流通材②? →流通材使用で住宅用のアルミサッシが使用可能 →ビル用サッシより安価である z 学校木造校舎の柱 →建築基準法施行令第48条により4.5寸角以上が必要 →構造計算によって安全を確認して4寸角へ →木材もサッシも流通品へ z 無節にこだわらない z 遊戯室などの無柱ロングスパンへの構法検討 →小屋組トラスの採用と使用材の検討 →陸梁の2本継ぎから1本ものへ 1000㎡超える木造の計画テクニック z ①1000㎡以内ごとに防火壁で区画 z ②1000㎡以内の建物間隔を3m離す z ③1000㎡以内で区切り間に3m以上の耐火 構造を入れる z 上記のような手法で準耐火構造にしないで木 造で建てられる可能性が高くなる z 純木造であれば燃え代設計が不要になり(非 JAS)規格材を多く使える可能性が広がる z 結果、コストダウンが可能になる 中央幼稚園管理棟・遊戯棟の事業工程 z 平成21年 9月 町長に職員提案実施 z 平成21年12月 耐震補強から改築へ方針決定 z 平成22年1月∼7月 設計業務(職員による 自前設計) z 平成22年4月∼7月 構造、設備設計外部委託 z 平成22年7月∼9月 入札・議会承認 z 平成22年9月∼翌年3月 工事 z 平成22年12月 木材搬入 z 平成23年3月 完成 中央幼稚園の配置図 中央幼稚園の改築園舎平面図 平面図 中央幼稚園の改築園舎立面図 管理棟 中央幼稚園の改築園舎立面図 遊戯棟 完成予想パース図 z杉戸町は、旧宿場町で あることから宿場町の町 並みにあった外観案も 候補として挙げる。 z上図:管理棟 z下図:遊戯棟 使用原木の伐採後の状況確認 z場所:埼玉県小川町 z埼玉県中央部森林組合 z写真上:桧原木の様子 z写真下:杉原木の様子 製材の検査 z 場所:秩父市ウッディコイケ z 写真上:桧製材の材寸測定 z 写真下:桧製材の含水率の測定 管理棟建て方時の様子 z写真上:柱の建て入れが 完了して梁を入れている 様子 z写真下:小屋組まで建て 方が終了した様子 遊戯棟建て方時の様子 z写真上:小屋組トラスの 組立時の様子 z写真下:トラス吊上げ時 の様子 内装材の木質化① z写真:遊戯棟腰壁 杉羽目板施工時の様子 zコスト性を重視して節 有り材を使用 内装材の木質化② z写真上:遊戯棟の床材 張り付け時の様子 県産桧フローリング z写真下:玄関下駄箱 搬入時の様子 県産杉材 内装材の木質化③ z写真:内装木製建具 搬入時の様子 z県産杉ハギ材使用 中央幼稚園完成写真 『外観』 z 上段:管理棟の北側からの 完成写真 z 玄関部分のみ外部に製材を 使用している z 下段:遊戯棟の西側からの 完成写真 中央幼稚園完成写真『管理棟』① z 上段:職員室 z ハイサイドライト採用 z 収納棚:埼玉県産杉材 z 下段:資料室 z 腰壁:埼玉県産杉羽目 板 z 書棚:埼玉県産杉材 z 照明:LED照明 中央幼稚園完成写真『管理棟』 ② z玄関ホール z下駄箱:埼玉県産杉材 z床材:埼玉県産桧 フローリング z建具:埼玉県産杉材 中央幼稚園完成写真『遊戯棟』 z 上段:遊戯室 z 小屋組トラス構造 z ハイサイドライト z ライトシェルフ z 下段:児童用トイレ z ブースの絵や色は 園児と相談して決定 新しい試み・・・園児たちに新しい幼稚園を 知ってもらうため勉強会を実施する z 目的 ・・・建築と言う仕事を身近に感じてもらう z 今まで・・・夏休みに工事を行うなど子どもたち のいない時期に集中して工事を実 施していた z 今回 ・・・安全に配慮した上で子どもたちの目 の前で行っている工事を見てもらい 監督員が説明を行った z 結果 ・・・子どもたちに建築の仕事を知って もらう良いきっかけになった 園児勉強会のようす・・・その① z第1回は杭工事勉強会を 実施 z第2回はコンクリート工事勉強 会を実施 園児勉強会のようす・・・その② z第3回は木工事勉強会を 実施 z第4回は窓・屋根・断熱材 工事勉強会を実施 埼玉県ではCO2の貯蔵認定を行っている z 埼玉県では県産木材を使用して 建設された建物に対してCO2の 貯蔵認証制度を行っている z 左の認証書が中央幼稚園改築 工事完成後発行される 埼玉県産木材販売伝票 z さいたま県産木材認証事業体を 通して木材を購入することで販売 伝票が発行される z 左伝票・・・中央幼稚園建設時の 販売伝票の一部 木造化に伴うトラブルについて z 杉戸町では、今の所これと言った大きなトラブルは発生して いない。 z 逆に町議、園の先生、保護者などから好評を得ている。 z 耐久性やメンテナンス性を考慮して外部には玄関の見せ柱 など一部を除いて現しの木材を使用しなかった。その事と施 設が出来て間もないせいか外部トラブルも発生していない。 z 腰壁の羽目板納品時に、製材店の見本と納品された建材に 差があったために多少問題になった。初めから納入仕様の 材を見本で渡してもらえれば問題にならなかった。 木造化について課題 z 県産製材のJAS材指定を行うと製材所が限られるため大量 発注するとスケジュール管理が難しい。 z 天然乾燥を指定するとスケジュール的に難しい。 z 今後は、木材の分離発注も検討した方が良い。 z 杉戸町では、中央幼稚園は構法指定をしなかったが使用量 が少なかった大幅な工期の遅れは生じなかった。泉保育園 は、構法指定(金物)により事前に構法選定会社の下請材木 店が準備を進めていたため大きな工程の遅れは生じなかっ た。 完成後の先生たちの意見 z木の香りやぬくもりが感じられる z旧園舎より調湿性があるように感じられる →木の呼吸を妨げない自然塗料を使用 zエアコンを使用する場合も利用頻度が減った という意見があった z明るく開放的な感じがする 終わりに z杉戸町は、林業が盛んな地域ではない川下 地域になりますが、関係者の協力のおかげで 地域材(埼玉県産材)を8割以上使用した幼稚 園を完成させる事が出来ました。 z木材を活用した学校施設を普及させるために は、首長の理解と組織内に一人キーマンを置 く事が重要であります。 ご静聴ありがとうございました。 杉戸町マスコット キャラクター 『すぎぴょん』