...

PDFファイル/262KB

by user

on
Category: Documents
30

views

Report

Comments

Transcript

PDFファイル/262KB
【平成 28 年 3 月更新】
17 賃金の体系と決定(最低賃金含む)
1 賃金とは
*下記【】内で法令等の記載のないものは全て労働基準法。
労働基準法では、賃金を「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使
用者が労働者に支払うすべてのもの」と定めている【法第 11 条】
。すなわち、就業規則や労働協約等で
その支給が具体的に決められており、使用者に支払義務のあるものは、労働の対償であり賃金である。
労働の対償となるかどうかは、給付の性質・内容に照らし個別的に判断されるが、行政実務上、①任
意的恩恵的給付、②福利厚生給付、③企業設備・業務費、の概念にあたるものは賃金ではないとされて
いる。そのため、使用者が労働者に支払う病気見舞金等の慶弔禍福の給付については、予め就業規則や
労働協約などで支給条件が明確でなければ、使用者が労働者に対して任意に恩恵的に支払われるものと
され、労働基準法上の賃金とはならない【昭 22.9.13 発基 17 号】
。賃金請求権(災害補償やその他の
労基法上の請求権含む)の消滅時効は 2 年(退職金のみ 5 年)である【法第 115 条】
。
◇ 一時金(年末・夏季賞与など)
支給の有無、金額や算定方法が専ら使用者の裁量に委ねられている恩恵的給付の場合は賃金ではな
いが、労働協約、就業規則、労働契約などに支給時期・金額・計算方法が定められ、それらに従って
支払われるものは、労働の対償としての賃金である。
◇ 退職金
通常は賃金とはみなされないが、労働協約、就業規則、労働契約などで予め支給条件の明確なもの
は賃金(臨時の賃金等)にあたる【昭 22.9.13 発基 17 号】
。退職金の時効は 5 年【法第 115 条】
。
◇ 解雇予告手当
賃金ではなく(しかし、なるべく直接払・通貨払が望ましいとされる)
【昭 23.8.18 基収 2520 号】
、
退職後 7 日以内に支払うべき金品にも含まれない(解雇の申渡しと同時に支払われるべきもの)
【昭
23.3.17 基発 464 号】
。支払われない場合、解雇予告手当そのものの請求権はないが、即時解雇が成
立するまでの間(予告期間)の賃金請求権があると考えられている。
[
「№47」参照]
参考:労働債権として扱われるか否か
・ 付加金:違反行為があった場合の制裁として規定されたもの【法第 114 条】で、裁判所を通じて支払
命令がなされる。法律上、労働者に請求権があるところから労働債権として扱われる。
・社内預金:労使間の金銭の消費寄託契約と解され、通常は労働債権とはみなされない。ただし倒産等
の場合、手続き開始前 6 月間の賃金総額か、社内預金額の 1/3 のいずれか多い方までは、最優先に弁
済されるべき「共益債権」とされる【会社更生法第 130 条 5 項】
。賃金の支払は「№18」
、
[平均賃金は
「№21」
、賞与は「№22」
、退職金は「№23」
、社内預金は「№43」参照]
2 賃金体系とは
*下記【】内で法令等の記載のないものは全て労働基準法、労働基準法施行規則。
一般に、賃金は、月々に支払われる「月例賃金」と「それ以外の賃金」に分かれる。月例賃金は、所
定内労働に対する所定内(基準内)賃金(基本給及び諸手当)と、所定外労働に対する所定外(基準外)
賃金(時間外・休日労働手当、深夜業手当など)に大別される。
基本給については、定額給(時間給制、日給制、月給制[※1]
、年俸制[※2]など)
、出来高に応じ
て支払われる出来高給(歩合給)
[※3]
、両者を併用した総合給がある。その金額は、多くの企業で「賃
金表」として定められており、労働者の職務内容(事務職、技術職、専門職など)ごとに作成され、そ
の各職内で資格や等級区分で格付けされている。
[※1]月給制には、①完全月給制(1 か月の賃金が 1 か月間の労働日数に関係なく固定しているもの。
欠勤があっても賃金を控除しないもの)
、②月給日給制(賃金が月単位で決められているが、欠勤
の場合には、欠勤日数に応じて欠勤控除がなされるもの)
、③日給月給制 (1 日いくらという日給
制でありながら、その支払いは毎月 1 回の給料日に支払うもの)などがある。
Ⅲ-17-1
ただし、完全月給制であっても、労務の提供がない限り、賃金請求権は発生しないため、労働者
からある程度の労務の提供がなければ、使用者が賃金を支払う義務は発生しない。
[※2]賃金が 1 年単位に決定され、年間の労働日数に関係なく固定される制度。一般には、前年の勤務
成績や成果などにより翌年の賃金額を決定する方法がとられている。
年俸制であっても、月 1 回の一定期日払いの原則が適用され【法第 24 条第 2 項】
、年俸額を 12
で除して 1/12 ずつ支払わなければならない。一方、賞与分を見込み、予定賞与の月数に 12 を加え
た月数で年俸額を除した額を毎月支払う方法もある。
年俸制の労働者が時間外労働や休日労働を行った場合にも、
当然に割増賃金が発生する。
ただし、
年俸額のうち、割増賃金分が明確に定められている場合は、その額に達するまでの時間外労働に対
して別に割増賃金を支払う必要はない。また、年俸額の決定については、次のような判例がある。
「就業規則によることなく 20 年以上前から実施されてきた年俸制における年俸額の決定について、
使用者に評価決定権があるとしつつも、年俸額決定のための成果・業績評価基準、年俸額決定手続、
減額の限界の有無、不服申し立て手続などが制度化され、かつ、その内容が公正な場合に限るとい
う条件が充足されない場合には、使用者は評価決定権を行使することが許されず、労働者と使用者
との間で年俸額の合意が成立しなければ、前年度の年俸額が次年度の年俸額になるとされた。
」
【日
本システム開発研究所事件 東京高判 平 20.4.9】
[※3]出来高払制その他の請負制で働く労働者について、一定額の賃金の保障を義務づけており【法第
27 条】
、
「労働者に対し、常に通常の実収賃金と余りへだたらない程度の保障給の額」
【昭和 22.9.13
発基 17 号、昭 63.3.14 基発 150 号】とされている。
3 賃金の決定・明示・周知
*下記【】内で法令等の記載のないものは全て労働基準法、同法施行規則。
賃金は、労使双方の合意により決定されるが、使用者は労働契約の締結に際し、
「賃金の決定、計算及
び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」について明示しなければならな
い(※ 昇給に関する事項を除き、書面による明示義務がある)
【法第 15 条、施行規則第 5 条】
。
記載する具体的な内容としては、基本賃金の額(出来高払制による賃金にあっては仕事の量(出来高)
に対する基本単価の額及び労働時間に応じた保障給の額)
、手当(ただし臨時に支払われるもの、1 か月
を超える期間の出勤成績等で支払われる精勤手当、勤続手当、奨励加給手当は除く)の額又は支給条件、
時間外、休日又は深夜労働に対して支払われる割増賃金について特別の割増率を定めている場合にはそ
の率並びに賃金の締切日及び支払日とされている【昭 51.9.28 基発 690 号、昭 63.3.14 基発 150 号、
平 11.3.31 基発 168 号】
。
また、就業規則の作成義務のある使用者は、当該就業規則の中に、賃金に関する事項を記載しなけれ
ばならず【法第 89 条 2 号】
、作成した就業規則は労働者に周知しなければならない【法第 106 条】
。
4 最低賃金(最低賃金制度)とは
*下記【】内は全て最低賃金法。
最低賃金とは、国が賃金の最低額を定めたもので、使用者は、それ以上の賃金を労働者に支払わなけ
ればならない【法第 4 条第 1 項】
。最低賃金に達しない賃金を定めた労働契約は、労使双方の合意であっ
ても、その部分は無効となり、無効となった部分は最低賃金によることとなる【法第 4 条第 2 項】
。
最低賃金は、時間額のみで定められ【法第 3 条】
、これには、●精・皆勤手当、●通勤手当、●時間外・
深夜労働及び休日労働に対する賃金、などは含まない。また、原則としてすべての労働者に適用される
が、試用期間中の労働者や軽易な業務に従事する労働者などについては、都道府県労働局長の許可を受
けることを条件に減額特例がある【法第 7 条】
。通達において基準が示されている【昭 34.10.28 基発
第 747 号、改正平 16.3.16 基発第 0316002 号、改正平 20.6.1 基発第 0601001 号】
。
[試用期間の最賃は「№10」参照]
最低賃金には「地域別最低賃金【法第 9 条】
」と特定の産業の労使に適用される「特定最低賃金(産業
別最低賃金)
【法第 15 条】
」がある(※派遣労働者は、派遣先に適用される最低賃金を適用)
【法第 13
条】
。
地域別最低賃金違反に対しては、50 万円以下の罰金が科せられる。
【法第 40 条】
Ⅲ-17-2
◇定期昇給とベースアップ
定期昇給とは、一定の条件を満たした個別の労働者を対象に、就業規則や労働協約であらかじめ定
められた金額を増額させること、すなわち、給料表上の個別の昇給をいい、ベースアップとは、集団
を対象とするその給料表全体を増額書き換えすることをいう。
Ⅲ-17-3
Fly UP