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第4章 外部性 - 教員用WWWサービス
第4章 外部性 外部性とその内部化 コースの定理 1 外部性(外部効果)の定義 外部性(技術的外部性)とは ある経済主体の活動が他の消費者の効用関数,他の企業の 生産関数に対して,市場を経由しないで直接に与える影響 大気汚染,水質汚染,煤煙など 市場の普遍性が満たされない 外部性による市場の失敗 外部性はそれを目的とする活動が存在しない,すなわち他の 活動に付随して生じる 市場を経由せず取引されない その効果・影響そのものに対して所有権が設定されていなかっ たり,責任の所在が不明確 2 消費に伴う外部性(1) 外部不経済の例 2人の共同生活者(A,B) A:喫煙者 B:非喫煙者 Aの喫煙による限界効用は逓減 Bの受ける限界不効用は逓増 タバコの限界費用=一定 3 Aの限界効用 M’ C Bの限界不効用 E’ D 0 N’ E M G N F’ F 本数 0 N 本数 4 CG:個人Aの限界効用曲線 NM:個人Bの限界不効用曲線 DE:私的限界費用曲線 点E:個人Aの効用最大化 CGとDEの交点 私的限界便益=私的限界費用 DN’M’:社会的限界費用曲線 点E’:社会的便益の最大化 DN’M’とCGの交点 社会的限界便益=社会的限界費用 5 消費に伴う外部性(2) 外部経済の例 教育サービス 個人Aの消費する教育サービス 社会の受け取る外部便益 6 Aの限界効用 社会の限界効用 C D H 0 E K E’ N G M F F’ 教育 0 教育 7 CG:個人Aの限界効用曲線 NM:社会の限界効用曲線 DE:私的限界費用曲線 点E:個人Aの効用最大化 CGとDEの交点 私的限界便益=私的限界費用 HK:社会的限界効用曲線 点E’:社会的便益の最大化 HKとCGの交点 社会的限界便益=社会的限界費用 8 Aの限界効用 N’ 社会の限界効用 C D E E’ N G 0 M F F’ 教育 0 教育 9 N’G:社会的限界効用曲線 点E’:社会的便益の最大化 私的限界効用+限界外部便益=社会的限界便益 N’GとDEの交点 社会的限界便益=社会的限界費用 いずれの見方でもよい 私的便益と社会的便益の区別 私的費用と社会的費用の区別 10 社会的に望ましい資源配分 契約曲線 → 効用可能フロンティア 社会的厚生関数 W=W(UA,UB) ↓ 社会的に望ましい組み合わせ 社会的厚生関数を変えれば,望ましい組み合わ せも変わる 11 効用可能フロンティア P UAE E Q W3 W2 W1 0 UBE 12 Emin EE EU Emax 13 外部効果の対策 外部性の内部化 市場の創設 → 自発的交渉 コースの定理 課税・補助金 ピグー的課税・補助金政策 14 市場の創設 権利賦与の問題 喫煙の例 ① 個人Aに喫煙権があるケース 個人Bは個人Aに対価を払って喫煙をやめてもらう Bが不効用の減少に見合う対価を払うところで均衡 ② 個人Bに嫌煙権があるケース 個人A は個人Bに対価を払って喫煙させてもらう Aが不効用の増加に見合う対価を払うところで均衡 15 ① Aの喫煙権 → Bへの対価要求 Aの限界効用 M’ C Bの限界不効用 E’ D 0 N’ H E D’ M G N F’ F 本数 0 N 本数 16 ② Bの嫌煙権 → Aへの対価要求 Aの限界効用 M’ C Bの限界不効用 E’ D 0 N’ H E D’ M G N F’ F 本数 0 N 本数 17 コースの定理 加害者,被害者いずれの側に権利が与えら れても,交渉の結果はパレート最適になる 制度設計の基本命題 取引費用の非存在 18 定理の限界 当事者を明確に区別することが一般に困難 当事者数の増加→交渉のための費用が急速に増大 交渉のための取引費用が交渉による利益より大きい 限り交渉は始まらない 交渉のための諸費用が十分低いときに限り,コース の定理は成立可能となる 19 ピグー的課税・補助金政策 外部性に見合う税金の賦課 外部性減少に見合う補助金の提供 新たな限界費用=従来の限界費用+税金 最適行動の変化 パレート最適の実現 補助金=機会費用の増加 新たな限界費用=従来の限界費用+補助金 パレート最適の実現 分配上の効果はまったく逆 20 税金・補助金 → 限界費用曲線の上方シフト Aの限界効用 M’ C S D 0 E’ N’ H E Bの限界不効用 S’ D’ M G N F’ F 本数 0 N 本数 21 外部性の部分均衡分析 外部性による市場の失敗 個々の経済主体の意思決定が社会的費用ではなく私的費 用のみを考慮してなされる 社会的費用と社会的便益とが一致する社会的に最適な状 態が実現できない 図解 RR’:社会的限界費用曲線, SS’:私的限界費用曲線 DD’:需要曲線, RS:外部費用 RR’=SS’+RS 市場均衡:E 総余剰最大点(パレート最適点):P 市場の失敗=点Pと点Eの不一致 点Eでは点Pより△PFE=△PQEだけ総余剰が少ない 22 23 外部性の内部化 部分均衡分析 課税政策 補助金政策 政府が単位当たりRR'とSS'の差額RSだけ,生産者に課税 する.このとき,1単位の追加的生産に対してRSの費用が 追加されるから,生産者の限界費用曲線SS'は上方にシフ トしRR'に一致する.その結果,新しい市場均衡としてP点 が達成される. Ox*の水準から生産量を1単位減少させるごとに,RSの補 助金を生産者に与える.1単位の生産増は私的限界費用 と補助金を失う機会費用の和となるから,限界費用曲線 SS’は補助金の額だけ上昇し,RR’一致する.その結果, 新しい市場均衡としてP点が達成される. 汚染者負担原則 24