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地上デジタル放送IP再放送方式審査ガイドライン
地上デジタル放送IP再放送方式審査ガイドライン 平成23年8月1日 地上デジタル放送補完再放送審査会 1.はじめに IP再放送は、地上波中継局の補完措置として、条件不利地域における地 上デジタルテレビジョン放送の受信を可能とするための有効な手段であり、さ らに都市部における地上デジタルテレビジョン放送の視聴方法の選択肢にも 活用されることで、地上デジタルテレビジョン放送の一層の普及・促進に資す ることが期待される。 本IP再放送方式審査ガイドラインは、有線テレビジョン放送事業者(有線電 気通信設備を用いてテレビジョン放送の業務を行う一般放送事業者のうち、 地上デジタルテレビジョン放送をIP再放送する事業者に限る。以下同じ)が地 上デジタルテレビジョン放送をIP再放送する際、電気通信事業者から提供を 受けるIP再放送方式が満たすべき基準を規定する。 地上デジタル放送補完再放送審査会(以下、審査会)では、有線テレビジョ ン放送事業者が審査申請したIP再放送方式が、本ガイドラインの2、3、5章 で規定する基準を満たしているかどうかについて審査を行い、基準を満たして いると判断されるIP再放送方式に対して判定書を発行する。ただし、判定書 発行後、基準に照らし合わせて疑義が生じた場合、審査会は事業者に説明を 求めたうえで判定書を取り消すこともある。 有線テレビジョン放送事業者から再放送同意申請を受けた地上基幹放送 事業者は、審査会の判定を参考に、再放送同意の判断を行う。 本ガイドラインの内容は、関連技術の進展にあわせ必要に応じて見直すも のとする。 2.技術要件 2.1 地域限定性 ① IP再放送サービスの対象地域を、当該地域で地上デジタルテレビジョン放 送を行っている地上基幹放送事業者の放送対象地域に限定することが可 能であること。 ② 不正アクセス、その他地上基幹放送事業者が想定しないアクセスに対して 送信が行われないこと。 1 2.2 著作権保護 ① 地上デジタルテレビジョン放送の電波による受信の場合と同等のコンテンツ 保護機能が継承されること。 ② コンテンツ保護のエンフォースメントが実現可能なこと。 2.3 サービス・編成面の同一性 ① ハイビジョン放送、標準テレビジョン放送、5.1チャンネルサラウンド放送 (CMを含む)について、IP再放送サービスの対象地域において、あまねく、 地上デジタルテレビジョン放送の電波による受信の場合と同等の品質が保 たれること。 ② 映像・音声について、表示形式が地上デジタルテレビジョン放送の電波によ る受信の場合と同等であること。 ③ データ放送について、画面表示形式、番組連動データの映像・音声に対す る表示タイミング、双方向機能(インターネットを用いて通信と連携するサー ビスがある場合はこれも含む)が、地上デジタルテレビジョン放送の電波に よる受信の場合と同等であること。 ④ 字幕サービスについて、画面表示形式、映像・音声に対する表示タイミング が、地上デジタルテレビジョン放送の電波による受信の場合と同等であるこ と。ただし、文字スーパ(速報ニュース、編成ことわり、時報、緊急地震速報 など)については、映像・音声と同期表示させることなく、速やかに表示する ことが望ましい。 ⑤ 電子番組ガイド(EPG)について、番組予約機能、画面表示形式、流動編 成対応機能が、地上デジタルテレビジョン放送の電波による受信の場合と 同等であること。 ⑥ マルチ編成サービスが、地上デジタルテレビジョン放送の電波による受信 の場合と同等に実施できること。 ⑦ 緊急警報放送が地上デジタルテレビジョン放送の電波による受信の場合と 同等に配信できること。 ⑧ 地上デジタルテレビジョン放送で使用するCAS方式と異なるCAS方式を使 用する場合でも、地上デジタルテレビジョン放送で実施するCASを利用した 2 サービスと同等のサービスが実施できること。 2.4 技術面の同一性 ① IP再放送サービスの対象地域における地上デジタルテレビジョン放送のチ ャンネルが全て選択可能であること。 ② サービス一契約あたり2チャンネル以上または2箇所以上で、同時視聴ま たは録画できることが望ましい。 ③ 通信トラフィックが輻輳した場合でも、再放送品質に低下をきたさないよう優 先制御等の品質保持機能、パケット損失に対処できる誤り訂正機能を有す ること。 ④ 映像・音声・データ放送の遅延は、地上デジタルテレビジョン放送の電波に よる受信の場合に比べて、システム全体で2.5秒以下であること。 ⑤ 緊急警報放送の遅延は、映像・音声・データ放送の遅延と同等であること。 ⑥ 映像品質は、地上デジタルテレビジョン放送の画像(MPEG-2で符号化し た画像)とIP再放送の画像(MPEG-2で符号化した画像を再符号化した画 像)の画質評価結果で、指定された画像の数の75%以上について有意差 がないこと。画質評価は、原画と地上デジタルテレビジョン放送の画像、お よび、原画とIP再放送の画像について、ITU-R BT.500-11 で定める二重刺 激連続品質尺度法で実施し、有意差の検定はt検定で行うこと。 尚、画質評価に関する条件、環境などについては、別途規定する。 ⑦ 音声品質は、地上デジタルテレビジョン放送の電波による受信の場合と比 べて劣化がないこと。 ⑧ IP再放送方式に起因する映像に対する音声の相対タイミング誤差は、±1 フレーム以内であること。 ⑨ データ放送の情報が欠落しないようデータ放送帯域を確保すること。チャン ネル選択時にデータ放送を画面に表示するまでの平均待ち時間は、地上 デジタルテレビジョン放送の電波による受信の場合と同等であること。現状 よりデータ放送帯域を拡大してサービスの拡張を行う場合も同様に満足す ること。 ⑩ イベントメッセージによる番組連動データの映像・音声に対する表示タイミン 3 グ誤差は、地上デジタルテレビジョン放送の電波による受信の場合に比べ て、2.4④で定義するシステム遅延±5フレーム以下であること。 ⑪ TOTを用いて更新する受信機の内部時計の誤差は、2.4④で定義するシ ステム遅延と同等であること。 ⑫ NPT(Normal Play Time)等による時刻指定発火サービスのタイミング誤差 は、地上デジタルテレビジョン放送の電波による受信の場合に比べて、±2 フレーム以内であること。 ⑬ 映像・音声に対する字幕の表示タイミング誤差は、地上デジタルテレビジョ ン放送の電波による受信の場合に比べ、±3フレーム以下であること。 ⑭ 地上デジタルテレビジョン放送のエンジニアリングサービス(ES)と同等の 機能を有すること。 ⑮ 視聴者の視聴履歴の秘匿性が確保されること。また、外部からの不正な視 聴履歴収集の要求を防御する手段を有すること。 ⑯ マルチ編成切替時の映像・音声などの乱れを軽減する機能を有すること。 ⑰ IP再放送と同時にIP自主放送やビデオ・オン・デマンドサービスを提供する 場合、受信端末は、これらのサービスが地上デジタルテレビジョン放送の再 放送ではないことが視聴者に明確にわかる機能・操作性を有すること。 ⑱ 受信端末は、現行地上デジタルテレビジョン放送受信機と同等の初期設定 機能、操作性を有すること。 ⑲ チャンネル切替時間は地上デジタルテレビジョン放送受信機と同等である こと。 3.運用条件 ① 視聴履歴や契約内容など個人情報の管理について適切な指針を策定し公 開すること。 ② 有線テレビジョン放送事業者が視聴履歴を取得できる技術方式を使用する 場合は、視聴履歴の取り扱いに関する方針を明示するとともに、地上デジタ ルテレビジョン放送の視聴履歴については、データを保持せず、速やかに 破棄されることが明記されていること。また、そのとおり運用できる体制を確 保すること。 4 ③ IP再放送のサービス内容、および受信端末の機能や性能によって生ずる サービスの体感品質(QoE:Quality of Experience)の違いについて、 当該有線テレビジョン放送事業者が説明責任を負うこと。また、そのために、 視聴者コールセンターのような体制を整備すること。 ④ 当該有線テレビジョン放送事業者が視聴契約を締結する加入者と交わす 約款に、当該有線テレビジョン放送事業者が本ガイドラインに定める基準を 満足せず再放送同意の取り消しを受け、若しくは再放送同意の更新を得ら れなかった場合、地上基幹放送事業者は視聴者の利便性の低下について 責任を負わないことが明記されていること。また、地上基幹放送事業者は 再放送同意の取り消しにともなう有線テレビジョン放送事業者の経済的不 利益について責任を負わない。 ⑤ 災害時等何らかの理由でサービスが中断した場合、他のサービスに優先し て、可能な限り短時間で復旧作業を行うことが可能なシステム・運用体制と なっていること。 ⑥ サービス・編成および技術面の同一性の保持について、地上基幹放送事 業者から求められれば、すみやかにサービスの説明と対応を行うこと。 ⑦ 受信端末が番組情報を効率よく取得するために番組配列情報(SI)専用信 号を送出する場合は、地上基幹放送事業者の許諾を得て実施すること。 ⑧ 著作権の保護、端末の改ざんや不正なストリームの送出などについて、地 上デジタルテレビジョン放送と同等の監視運用が行われていること。 ⑨ 有線テレビジョン放送事業者は、電気通信事業者が提供する伝送路の管 理権限を有すること、若しくは確保すること。 ⑩ 再放送にともなう著作権や著作隣接権などの関連する権利処理は、当該 有線テレビジョン放送事業者が行うこと。 ⑪ 成人向け番組や「R15」などレーティングがあり、視聴制限が必要な番組を 自主放送で提供する事業者の場合、必要な運用規定を設けること。 4.審査に関する考え方 ① 「2.技術要件」において規定した項目については、関連技術の現状を踏ま えて、総合的な審査・判定を行う。尚、その場合でも、今後の技術の進展に 応じた性能の改善を期待し、改善状況の報告を求めることがある。 5 ② 「2.技術要件」は、受信端末を含めた総合性能を規定したものである。ここ に含まれる受信端末の性能は審査会が期待・想定する性能であり、個別の 受信端末の性能を規定するものではない。 5.他標準との関係 ① 運用にあたってはARIB標準規格、地上デジタルテレビジョン放送運用規定 (ARIB TR-B14)に準拠すること。尚、それらと異なる運用をする場合は、異 なる部分を開示するとともに、必要に応じて関連する団体との調整を行うこ と。 ② 再放送方式で用いる標準規格は、そのリストを仕様書に示すこと。 ③ 再放送方式に標準化団体へ提案中の技術が含まれている場合は、審査申 請時に説明すること。 6.審査申請のための必要書類 審査会に審査申請を行う有線テレビジョン放送事業者は、以下の書類を審 査会事務局に提出すること。 尚、提出される書類・情報に関して、当事者間で機密保持契約の締結が必 要でないことを原則とする。 ○ 審査申請書 ○ 電気通信事業者から提供を受けるIP再放送方式の技術仕様を示す書類 ○ 本ガイドラインの技術要件に適合することを示す測定データ ○ 本ガイドラインの運用条件に適合することを示す書類 ○ IP再放送サービスに係る視聴契約約款 ○ サービス提供地域と提供開始時期に関する書類 ○ その他、審査会が必要と認めた書類 6 (付録) 画質評価に関する条件、環境 本ガイドライン2.4 ⑥の画質評価について、以下に規定する。 (1)二重刺激連続品質尺度法について 画質評価法には、ITU-R 勧告 BT.500-11 で定められている画質の主観 評 価 方 法 で あ る 二 重 刺 激 連 続 品 質 尺 度 法 を 用 い る 。 通 称 DSCQS (Double-Stimulus Continuous Quality-Scale)法と呼ばれ、放送画質の技術 基準を定める際に一般的に用いられている。 (2)使用する評価画像について 評価画像は ITU-R 勧告 BT.1210-3 で定められる画像(1125/60 HDTV)の うち、審査会が指定する次の 12 種類の画像とする。 尚、指定する画像については、適宜見直すことがある。 Scene No. Scene No. Title Title 7 European market 23 Green leaves 10 Streetcar 25 Japanese room 12 Harbor scene 30 Crowded crosswalk 16 Whale show 34 Ice hockey 19 Opening ceremony 43 Bronze with credits 20 Soccer action 46 Chromakey (sprinkling) (3)t 検定について 二つの集団の性質の差の有無を統計的に判断する方法のひとつで、平 均値の差の検定を行う場合に用いる。統計学上の t 分布(標本数を増して いくと標準正規分布に近づく)を使うため t 検定と呼ばれている。指標 t およ び標本数に基づく自由度の値を計算し、t 分布の表に示す有意水準(仮説 を棄却するための臨界値あるいは棄却域)を超えたとき,有意差(意味のあ る違い)があると判定する。 7 (参考) 審査および再放送同意の手続き ① 地上デジタルテレビジョン放送のIP再放送を希望する有線テレビジョン放送 事業者は、5章に示す書類を添えて審査会に審査申請を行う。 ② 審査会は、有線テレビジョン放送事業者が利用するIP再放送方式が本ガイ ドラインに適合するかどうかについて審査を行い、判定書を発行する。なお、 審査会は、必要に応じて有線テレビジョン放送事業者にヒアリングを行うこ とがある。 ③ 有線テレビジョン放送事業者は、地上基幹放送事業者への再放送同意申 請書に、IP再放送方式に関する本審査会の判定書、及び、審査申請書類 の写しを添えて、再放送同意申請を行う。 ④ 地上基幹放送事業者は、必要な検討を行ったうえで、再放送同意書を発行 する。 有線テレビジョン放送事業者 ④ 再放送同意書の発行 ③ 再放送同意申請 添付(判定書、審査申請 書類の写し) ② 判定書の発行 書類による審査申請 ① 地上デジタル放送補完再放送審査会 地上基幹放送事業者 本ガイドラインにより判定 各社の再放送同意基準により判断 8 改版履歴 (平成19年10月26日 制定) (平成23年8月1日 一部改正) ・ 新放送法施行に伴う用語変更 「再送信」を「再放送」に変更 「電気通信役務利用放送」を「有線テレビジョン放 送」に変更 「電気通信役務提供事業者」を「電気通信事業者」 に変更 「地上放送」を「地上基幹放送」に変更 ・ 2.3 サービス・編成面の同一性④に「ただし、文 字スーパ(速報ニュース、編成ことわり、時報、緊急 地震速報など)については、映像・音声と同期表示 させるこ となく、速やかに表示するこ とが 望ま し い。」の記述を追加 9