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[月刊ウィンドウズ・ 2000・ワールド]

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[月刊ウィンドウズ・ 2000・ワールド]
 3
Windows2000日本語版
オフィシャルバイブル
1996年10月11日第三種郵便物認可2003年3月1日発行(毎月1回1日発行)第8巻第3号通巻91号
パワーユーザーを目指す人のためのWindows2000活用マガジン
[ 月 刊 ウィンドウズ・2 0 0 0・ワールド ]
る!
はこうな
2003年
無線LAN大予測
802.11bよりも速く、802.11aよりも通信距離が長い!
魅力満載の新規格802.11g
2003年5月以降に正式発表される予定の802.11g。これはどのような特徴を持つ規格なのか。ここでは、802.11bと802.11a
の通信の仕組みを基に、注目の新規格802.11gの秘密に迫りたい。
手の識別信号などが含まれるため、実際にデータを転送できる
802.11bと802.11aの
違いを明らかにする
速度(実効スループット)
はおよそ半分程度になる。802.11bでは
4Mbps∼5Mbps、802.11aでは20Mbps∼25Mbpsといったとこ
802.11gの特徴を説明する前に、802.11bと802.11aの違いに
ついて理解する必要がある。802.11bと802.11aの最も大きな違
ろだ。なお、一般的に電波は距離が離れるほど減衰するため、
無線LANの通信速度も遅くなり、スループットも低下する。
いは、両者の無線通信速度である。よく知られているように、80
2.11bでは理論上11Mbpsの通信が行える。一方、802.11aでは
通信速度の差は
信号伝送の仕組みの違いにある
その約5倍にもなる54Mbpsでの通信が可能だ。802.11bと802.
11aの両者ともに、電波の送受信状況がよいときには高速、悪い
802.11bと802.11aの通信速度の差は、信号伝送の仕組みが
ときには低速で通信を行い、802.11bでは1Mbps/2Mbps/5.5M
bps/11Mbpsの4段階、802.11aでは6Mbps/9Mbps/12Mbps/
違うことから生じる。
無線LANの当初の規格である802.11では、電波の送受信方
18Mbps/24Mbps/36Mbps/48Mbps/54Mbpsの8段階に接続
式に「FH-SS方式」
(Frequency Hopping-Spread Spectrum:
速度を動的に切り替えることができる。
これらは、電波信号がリンクする速度である。無線LANで送
周波数ホッピングスペクトラム拡散)
を採用していた。これは、単
受信される信号には、接続維持やエラーキャンセル、送受信相
一の送受信チャンネルの中で、利用する周波数をすばやく変更
しながら信号を伝送する仕組みで、ノイズが混入してもその部分
を飛ばして次の周波数を利用する
(図4)
。切り替えのオーバヘ
ッドが大きいため、通信速度は上がりにくいが、低コストで小型
(dB)
信
号
強
度
化も容易である。ちなみに、BluetoothはこのFH-SS方式を採
(dB)
信
号
強
度
用している。
802.11bの信号伝送には、
「DS-SS方式」
(Direct Sequence-
信号
ノイズ
周波数を高速
に切り替えて
通信を行う
周波数
ノイズのある
部分はジャン
プして、別 の
周波数を使う
いる。これは、送信時に電波を広い周波数帯に拡散させ、受信
側で逆の変換を行って信号を抽出する仕組みとなっている。途
周波数
図4● FH-SS方式の概略。通信に利用する周波数を一定の周波数帯(チャンネル)
の中で高速に切り替える
(dB)
信
号
強
度
Spread Spectrum:直接拡散型スペクトラム拡散)
が採用されて
中で混入したノイズ成分は、受信時の変換によって拡散するた
め、信号/ノイズ比を高くできる
(図5)
。ノイズに強く高速通信が
信 号を幅 広い周
波数に拡散する
変換前の
元の信号
周波数
ノイズ
復調すると信号は
元に戻るが、ノイ
ズ成分は拡散する
拡散された
信号
周波数
周波数
図5● DS-SS方式の概略。信号を幅広い周波数に拡散させて送る。途中で混入したノイズは受信時の変換時に拡散するため、信号成分を取り出しやすい
802.11bよりも速く、802.11aよりも通信距離が長い!
魅力満載の新規格802.11g
可能だが、回路が複雑でコストが高くなってしまう。また、拡散幅
なっているため、近接チャンネルとの間で干渉が起きにくい。そ
が広いため、近接するチャンネルの信号と干渉すると通信できな
のため、802.11aでは4チャンネルぶんが非干渉であり、近隣でも
くなる。
同時利用が可能だ。
802.11bでは14チャンネル
(日本国内の場合)が利用できるが、
電波が交じり合うような狭い範囲では、1/5/9/14チャンネルのよ
802.11gは802.11bと802.11aの
優位点を集めたような規格
うに間をおいた4チャンネルぶんしか使えない。DS-SS方式の電
波信号は、図6のようになる。
802.11gでは、利用する周波数帯は2.4GHz帯で、信号伝送に
はOFDM方式を用いている。現在はまだドラフト案のため詳細
802.11aでは通信速度を
向上させやすいOFDM方式を採用
は不明な部分も多いが、802.11aと802.11bの優位点だけを集め
た規格になるだろう。
一方、最高54Mbpsの通信が可能な802.11aでは、電波の送
例えば、電波の届きやすさを考えてみよう。規格上の最高通
受信方式に「OFDM方式」
(Orthogonal Frequency Division
信速度が802.11aと同じ54Mbpsであっても、802.11aと802.11g
Multiplexing:直交周波数分割多重)
を採用している。これは、
では利用する周波数帯が異なる。電磁波の特性から言うと、周
通信に利用する1チャンネルぶんの周波数帯をさらに細かく分割
波数が低いほうが散乱しないで遠くまで届く。理論的には、同一
して多数の送受信キャリアを生成して信号を送る方式だ
(図7)
。
の出力でも2.4GHz帯のほうが、5.2GHz帯よりおよそ2倍の距離
大きなノイズが入った部分は利用せず、信号をチャンネル周波数
まで届くことになる。
内に詰め込めるため伝送効率が高く、通信速度を向上させやす
つまり、通信速度は802.11bの約5倍、通信可能距離は802.11a
い。また、近接するキャリア
(搬送波)
を水平/垂直方向に直交
の約2倍となり、これが802.11gの大きな特徴と言える。また、80
させるため、各キャリアの信号が分離しやすく、キャリアの密度
2.11bとの互換性があり、アンテナなどの既存の設備がそのまま
を高めることができる。
利用できるということに加えて、屋外でも制限なく使えるのも魅力
ADSLでも同じような原理を利用しており、地上波デジタルテ
だ。指向性アンテナなどを用いたビル間での無線LANリンク、ケ
レビ放送や電灯線を用いたデジタル信号の送受信(電灯線イン
ーブル敷設が困難な山間部などでの高速通信、気球などの低空
ターネット)
などにも応用されている。なお、OFDM方式の電波
飛行体を用いた広域サービスなど、無線LANの活用範囲も大い
信号は図8のようになる。キャリアを含む信号部分の山が凸状に
に拡大することだろう。
d
B
m
20
10
0
−10
−20
d −30
B −40
m
:
:
受
信
感
度
−40
−50
−60
−70
−80
−90
−100
−110
−120
−130
−140
−150
−160
−170
−180
−190
2320 2330 2340 2350 2360 2370 2380 2390 2400 2410 2420 2430 2440
受 −50
信 −60
感 −70
度
−80
250
−90
2300
2460 2470 2480
2320
2340
2360
2380
MHz:周波数
図6● DS-SS方式の信号を受信すると、この図のようなパターンになる。中心周波
数帯の上下に反射成分が多く、近接チャンネルと干渉しやすい
キャリア
(dB)
信
号
強
度
2420
2440
2460
2480
2500
図8● OFDM方式信号のパターン。拡散処理がないため反射成分も少なく、近接チ
ャンネルとの干渉が起きにくい。中央の凸部が、キャリア部分である
ノイズ
ノイズ の 影 響 の
少ないキャリアで
送受信する
周波数
2400
MHz:周波数
ノイズが大きいキャ
リアは利用しない
周波数
周波数
図7● OFDM方式の概略。一定周波数帯(チャンネル)
を多数のキャリアで分割し、各キャリアに信号をのせる。ノイズの影響が大きいキャリアは通信に利用しない
る!
はこうな
2003年
無線LAN大予測
802.11g製品&802.11b/802.11aデュアルバンド製品に注目!
ブレイクするのはこの製品だ!
2003年の無線LANのトレンドとなるのは、802.11g対応製品と802.11b/802.11aのデュアルバンド対応製品だろう。Part3
では今後の無線LAN市場を担う主力製品として、メルコの無線LANアクセスポイント
「WLA-G54」
と無線LANカード「WLICB-G54」
、アイコムの無線LANカード「SL-5000」
、無線LANアクセスポイント
「AP-5000」
を紹介する。また実際にスループ
ットを計測したので、参考にしてほしい。
802.11g対応予定製品が早くも登場!
WLA-G54
WLI-CB-G54
を試用したが、どちらも試作機のため出荷
時には仕様が変わる可能性がある点を了
承してほしい。
販売元
メルコ
問い合わせ先 103-5326-3754
URL
価 格
802.11bの上位互換
既存の資産を流用可能
http://www.melcoinc.co.jp/
3万500円(WLA-G54)
1万3,200円(WLI-CB-G54)
発売日
2003年2月予定
ファームウェアのアップグレードにより
802.11gに正式対応予定
t「WLA-G54」
は、802.11g対
応予定の無線
L A N アクセス
ポイントだ
「WLA-G54」は縦置きタイプとなってお
り、前面に各種インジケータ、背面に1 0
BASE-T/100BASE-TX対応のスイッチ
ングハブを兼ねたLANポート4基と電源コ
ネクタ、リセットボタン、外部アンテナ取り
メルコは、802.11gの策定を視野に入れ
「WLA-G54」
、無線LANカード「WLI-CB-
た無線LAN製品群を2002年12月に発表
G54」の3製品だ。いずれの機種も2003年
参考までに内部を開けてみたところ、シ
した 。SNMP( Simple Network Mana
2月の出荷が予定されている。現在802.11g
ンプルな基盤の上に無線LAN機能を提
gement Protocol)
やRADIUS( Remote
がドラフト段階のため、正式な対応製品で
供するミニPCIカードがあり、ダイバーシテ
Authentication Dial-In User Service)
あるとは言えないものの、802.11gが標準
ィタイプの小型アンテナが上部に配置され
サーバ対応など管理・セキュリティ機能を
化されればファームウェアのアップグレード
ていた。なおミニPCIカードは、802.11g対
応チップセットを開発した米国ブロードコ
高めたインテリジェントアクセスポイントの
によって802.11g正式対応を予定している。
「WLM2-G54」
、また、アクセスポイントの
なお今回、WLA-G54とWLI-CB-G54
▲802.11g対応の無線LANカード「WLI-CB-G54」
。80
2.11g/802.11bの両方のアクセスポイントに接続できる
tアクセスポイントWLA
-G54の背面。10BASE
-T/100BASE-TX自動
切り替えの4ポートスイッ
チングハブ機能を搭載し
ている
付け用のケーブルコネクタがある。
ム製のものを採用している。
▲WLA-G54上部のレバー状のフタの中には、外部アン
テナ接続コネクタがある。既存の802.11b用の指向性
アンテナなどの装着が可能だ
802.11g製品&802.11b/802.11aデュアルバンド製品に注目!
ブレイクするのはこの製品だ!
設定はWebブラウザから行うようになっ
付属のCD-ROMから統合インストーラ
だろう。ただし、クライアントマネージャを
ており、出荷時の初期IPアドレスを入力す
「AirNavigator」
を起動し、専用のデバイ
用いての接続モード/接続先の変更は
るか、インストーラの「AirNavigator」ある
スドライバをインストールしたあとにWLI-C
少々面倒である。タスクトレイからワンクリ
いはクライアントマネージャから設定画面を
B-G54をPCに装着すれば、専用のプロト
ックで変更できるようなユーティリティが欲
呼び出せる。Web設定は、WEPとMAC
コルがネットワーク接続のプロパティにセッ
しいところだ。
アドレスによる接続制限の設定のみを行う
トされた状態でドライバが起動する。その
WLA-G54とWLI-CB-G54を至近距離
簡易版と各種詳細設定が可能な詳細版
あと、接続ユーティリティ
(クライアントマネ
で用い、両者を802.11gモード
(54Mbps)
に別れており、詳細版では通信モードの
ージャ)を用 いて 接 続 先 や 接 続 モード
で接続してデータ転送を行ってみた。今
変更(802.11g固定/802.11bと802.11gの
(802.11g優先の自動接続か802.11b固
回の試作機では約20Mbpsのスループッ
自動選択/802.11b固定)
、通信チャンネ
定)
、接続速度を設定すると無線LANで
トが得られた。これは標準的な802.11a準
ル、WEP強度(64/128ビットWEP)
などの
の通信が行える。なお、WindowsXPの
拠製品のスループットとほぼ同程度だ。80
標準機能「ワイヤレスネットワーク接続」を
2.11gは、802.11aの代替製品として十分
用いて接続することも可能だ。
に実用的であると言える。
変更が可能だ。
そのほか、DHCPクライアントからの時
間取得、Syslog対応のロギング機能を有
興味深いのは、専用デバイスドライバの
ユーザーにとってありがたいのは、WL
している。802.11gと802.11bの差異はな
無線電波出力を25%刻みで調整できる機
A-G54とWLI-CB-G54の2製品とも低価格
く、802.11gに特有の設定項目も特にない。
能だ。オフィスなどの込み合った場所で周
で販売されることだ。本製品は、2003年
従来の802.11b対応製品と同じような使い
囲の無線LAN環境との干渉を避けたり、
の無線LANの台風の目になることはまち
勝手であり、初心者でも安心して使えるだ
モバイルノートブックPCでの運用時にバッ
がいないだろう。
ろう。WLA-G54は、次に紹介するWLI-
テリ消費量を抑えたりするのに使うとよい
CB-G54の802.11g接続と、既存の802.11b
対応クライアントの同時接続をサポートす
る1台2役の無線LAN製品となる。
スループットは約20Mbps
802.11aの代替製品として問題なし
アクセスポイントと同時に発売されるの
が、CardBus(3.3V)対応の無線LANカ
ード「WLI-CB-G54」である。今回試用し
た機器は、メーカー発表時の写真と外観
t W L A - G 5 4 のW e b 設定画面。
無線LANの動作モードは「802.11
g 固定」あるいは「A u t o 」
(1 1 g /
11b自動認識+同時利用)
、
「11b
固定」が選択できる。通常はAuto
で問題ないだろう
が若干異なっており、PCカードスロットか
ら突出するアンテナ部分が半透明のプラ
スチック製となっている。このアンテナ部
分は、従来の802.11b対応製品と比べて
一回り小さくなっており、携帯時に邪魔に
ならないだろう。
▲無線LANカード側の接続設定を行うクライアントマネ
ージャ。同社のAirStationシリーズを検索したり、接続
状況(電波感度/接続速度)
を表示したりできる
▲総合インストーラの「AirNavigator」
。アクセスポイン
トの設定画面の呼び出しやデバイスドライバのインストー
ルが可能
▲クライアントマネージャを使わずに、WindowsXP標準
のワイヤレスネットワーク接続機能を用いても802.11g
対応機器に54Mbpsで接続できる
る!
はこうな
2003年
無線LAN大予測
通信速度や通信距離を徹底的にテストする!
ウワサどおりの実力を発揮した802.11g
54Mbpsの無線LANを導入する予定がある場合、802.11aと802.11gのどちらの製品を選ぶべきなのか。それを判断するた
めに、ここではPart3で紹介した製品を使って、802.11aと802.11gの無線LAN性能比較テストを行った。なお、メルコ製品は
ファームウェアが802.11g正式対応前であるため測定結果は参考値となるが、導入する際の目安にしてほしい。
802.11a製品と802.11g製品を
4つのテスト項目で比較
今回試用したのは、802.11g製品としてメルコ「WLA-G54/
WLI-CB-G54」
、802.11a製品としてアイコム
「SL-5000/AP-5000」
だ。製品詳細は、どちらもPart3で紹介したのでそちらを参照し
なお、実験に用いた製品はともに試作機である。測定結果に
ついては、あくまで参考値として理解してほしい。
テスト① スループット
きん差で11aに軍配
最新チップの威力を発揮
てほしい。今回テストした項目は次の4つだ。
図9 のようなテスト環境下において、アクセスポイントと無線
①スループット
(実際の伝送速度の高さ)
LANクライアントを約2m離して
(間に障害物なし)
、約50MBの
②耐障害物特性(障害物がある場合の電波の届きやすさ)
ファイルをクライアント/サーバ間で連続10回送受信し、平均デ
③伝送距離(通信可能な距離の長さ)
ータ転送速度を測定した。各無線LAN機器は、最高の54Mbps
④電力消費(ノートブックPCでのバッテリ消費電力量)
で接続しており、パフォーマンスに影響を与えるセキュリティ機能
サーバPC
スイッチングハブ
CPU:Celeron 600MHz
メモリ:512MB
OS:WindowsXP Professional
FTP/Webサーバとして稼働
インターネット
802.11g無線LANアクセスポイント
(メルコ「WLA-G54」)
802.11g無線LANカード
(メルコ「WLI-CB-G54」)
無線LANクライアントPC
CPU:PentiumⅢ 1.2GHz
メモリ:512MB
OS:WindowsXP Professional
802.11a無線LANアクセスポイント
802.11a無線LANカード
(アイコム「AP-5000」)
(アイコム「SL-5000」)
図9● 今回の無線LAN送受信テスト環境。家庭やSOHOなど比較的小規模なネットワーク環境を想定し、テスト環境を構築した
5
Windows2000 World ● Mar 2003
通信速度や通信距離を徹底的にテストする!
ウワサどおりの実力を発揮した802.11g
規格
IEEE802.11a
IEEE802.11g
実効スループット
測定機器の組み合わせ
送信時
22.85Mbps
アクセスポイントAP-5000
受信時
21.12Mbps
無線LANカードSL-5000
送信時
21.63Mbps
アクセスポイントWLA-G54
受信時
18.31Mbps
無線LANカードWLI-CB-G54
テスト② 耐障害物特性
接続の維持か速度の維持か
設計思想の違いが明らかに
同じく図9のテスト環境で、アクセスポイントと無線LANカード
表3● 実効スループットの測定結果。サーバPCのFTPサーバに対し、無線LANク
ライアントPC側から約50MBのファイルを連続10回送受信した平均値である
の間に障害物があるとどうなるのだろうか。ここでは屋内(木造
モルタルの2階建て家屋)
と見通しのよい屋外でテストを行ってみ
は一切使っていない。その結果を表3に紹介する。
た。
テスト環境のハードウェアの影響か、データ送信時/受信時で
まず屋内だが、アクセスポイントを2階に設置し、クライアントPC
速度差が生じたが、802.11a/802.11gともに送受信状況はほぼ
を1階に置いて利用してみた。お互いの距離は直線にして約6m
安定しており、クライアントPCのCPU負荷も20%程度であった
ほどだが、間には木製のドア、床、壁などの障害物がある。その
(画面1 、画面2 )。結果、8 0 2 . 1 1 a に準拠したアイコムのS L -
結果、802.11gのほうが受信感度が高く、安定していた
(画面3、
5000/AP-5000に軍配が上がった。実験結果からは、およそ23
画面4)
。テスト①と同様にスループットも測定してみたが、802.11a
Mbpsというのがピーク性能と考えてよさそうである。
では6Mbps∼10Mbpsの間を激しく変動した。一方の802.11g
なお、SL-5000/AP-5000は802.11bにも対応しているので、参
では12Mbps程度で比較的安定している。これは、電波の強弱
考までに802.11bでの接続(最高11Mbps)
も試してみた。その結
に応じて接続速度をすぐに変更して接続を維持しようとする傾
果、スループットは約5.1Mbpsで、業界最速クラスの性能であっ
向のあるアイコム製品と、ギリギリまで54Mbpsの速度を維持し
た。アセロスコミュニケーションズの最新チップを搭載した効果が
ようとする傾向のあるメルコ製品の個々のデバイスドライバやファ
現れているようだ。
ームウェアの設計思想の違いが現れていると筆者は考えた。
画面1● 802.11a近接環境(54Mbps接続)
でのデータ送受信の様
子。比較的安定しているのがわかる
(送信時:赤線、受信時:黄線)
画面2● 802.11g近接環境(54Mbps接続)
でのデータ送受信の様子。ノ
イズの影響を受けたのか、後半で乱れている
(送信時:赤線、受信時:黄線)
Windows2000 World ● Mar 2003
6
る!
はこうな
2003年
無線LAN大予測
テスト③ 伝送距離
定した通信が可能になるだろう。
100mの距離で通信可能
アンテナを用いればさらに長距離もOK
テスト④ 電力消費
そもそも802.11aが利用する5.2GHz帯の電波は屋外での利用
カード装着時・通信時ともに
802.11gのほうが低い消費電力
が認可されていない。認可される見通しも立っていない。とはい
うものの、ユーザーにとっては802.11aと802.11gのどちらの電波が
バッテリ駆動のモバイルノートブックPCなどで無線LANを用い
遠くまで届くのか気になるところだ。今回は、筆者宅のベランダに
るとき、気になるのが消費電力である。ここでは無線LANのク
アクセスポイントを置き、無線LANクライアントPCを屋外に持ち出
ライアントPCとして利用したモバイルノートブックPC(日本IBM
「ThinkPad X30」
)
の機能を使い、バッテリ消費電力を比較して
して、約100mの距離から信号の受信感度を確認してみた。
結果として、100mの距離ならば802.11aも802.11gも問題なく
みた。結果は、表4のとおりだ。
通信できる受信感度であった。特に2 . 4 G H z 帯を利用する
計測値では、アイコム製品は通常の状態の約1.7倍の消費電力
802.11gは、接続速度54Mbps時に電波状態69%、接続速度を
となる。モバイル環境で用いるなら802.11g製品を選択すべきで
12Mbpsに固定すると電波状態100%という屋内と変わらない通
ある。しかし、今回試用した802.11a準拠の無線LANカードは、
信環境を保ち、インターネットアクセスも快適に行えることが確認
802.11a/802.11bのデュアルバンド対応のため消費電力も大きい
できた
(画面5)
。指向性アンテナを用いれば、さらに長距離の安
と考えられるので、あくまで参考値としてとどめてもらいたい。
画面3● 機器間に障害物があると、802.11aでは電波の品質
(強度)
が30%∼40%に落ち、スループットも18Mbpsに低下する
画面4● 障害物がある場合の802.11gの接続状況。電波状態は51%だが、54M
bpsでの接続を保っている
(ウィンドウの左下に注目)
規格
802.11a
802.11g
画面5● 802.11gでは約100mの
距離でも、低速の接続モードにする
と良好な電波/接続状態を保てる
状態
消費電力
カード装着時
14.12W
54Mbps通信時
17.73W
カード装着時
12.68W
54Mbps通信時
14.78W
表4● 無線LANクライアントPCとして利
用したノートブックPCのバッテリ消費電力の
比較。なお、各無線LANカードをセットして
いない状態は10.94Wである
Fly UP