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がんの化学療法

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がんの化学療法
がんの化学療法
あさひまち内科クリニック
小林 淳子
良性腫瘍と悪性腫瘍
• 細胞内の遺伝子の異常がいくつか組み合わ
さると、今まで生体がコントロールしていた秩
序を無視して細胞が増殖し、腫瘍ができる。
• 良性腫瘍 増殖は遅く周囲の細胞を破壊した
り、転移しない。生命にかかわることがない。
• 悪性腫瘍;速い速度で無制限に増殖。転移し
生命に危険を及ぼす。
がんの治療法
①外科手術 固形がんの治療で最も多く実施
②放射線療法 全身に放射線をあてると様々 な障害がでるため部位を限定
③薬による治療(化学療法、ホルモン療法)
消化器癌の治療
診断
治癒切除可能
治癒切除不可能
術前化学療法
内視鏡治療
外科手術
術後化学療法
再発
Best supportive care
再発
内視鏡手術・外科手術
治癒
化学療法(抗癌剤)
(放射線治療)
緩和治療
がん細胞と抗がん剤
• 正常な細胞は必要以上の分裂はしないのに
対し、がん細胞は無制限に分裂増殖する。
• 抗がん剤は細胞分裂の過程に関与し、がん
細胞が増殖できないようにするもの
=正常な細胞にも作用するため、これが
副作用となる。
抗悪性腫瘍薬
• 抗がん剤 :殺細胞作用 トポイソメラーゼ阻害剤、チュブリン
重合・脱重合阻害剤、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗がん性抗生物質
など
• 分子標的治療薬 :がん細胞の浸潤、増殖、転移などにか
かわる因子に作用する
小分子化学物質(small molecule)抗体療法、細胞性免疫療法、
など
• ホルモン療法剤 乳がん、前立腺がんなどに対するホルモン療法
より効果をあげるため、作用の違う薬をいくつか組み合わせて使う場合もある。
がん薬物療法の適応の原則
①がん薬物療法がそのがん腫に対して標準的
治療またはそれに準ずる治療法として確立し
ていること
②患者さんの生活自立度:performance
status(PS),
栄養状態が良好なこと
③がん薬物療法に適切な臓器機能(骨髄、腎、
肝、心、肺機能など)を有すること
④インフォームド・コンセントが得られていること
ECOGのPerformance Status
Grade Performance Status
0 全く問題なく活動できる。
発病前と同じ日常生活が制限なく行える。
1
肉体的に激しい運動は制限されるが、歩行可能で、 軽作業や座っての作業は行うことができる。
2
歩行可能で自分で身の回りのことはすべて可能だが 作業はできない。日中の50%以上はベット外で過ごす
3
限られた自分の身の回りのことしかできない。
日中の50%以上をベットか椅子で過ごす。
4
全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。
完全にベットか椅子で過ごす。
Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status
抗癌剤による化学療法の役割
1.進行、再発がんに対する化学療法
がんの増殖、転移を阻止する
2.術後化学療法
再発予防を目的とする
3.術前化学療法
手術前に腫瘍を縮小する目的
乳がん、食道がん、喉頭がん、肛門がん、胃がん
膀胱がん、肺がんなど 4.他の治療法(手術、放射線)と組み合わせた集学的治療
最適な次期に最適な治療法を併用することにより、お互いの短所を補い、治
療効果向上を目指したもの
抗がん剤の投与法
・飲み薬
・点滴、注射 (末梢血管や中心静脈 )
・カテーテル(ポートの留置) 動脈、中心静脈
・髄注
・膀胱内注入
治療前評価
• 大腸癌治療においてはPS=0,1,2の患者が化学療法の対象
• 基礎疾患の有無を評価 :主要臓器機能
• 前治療からの回復状況;回復が不十分だと副作用が発現し
やすい
• 治療当日の全身状態の評価
• 一般に、PSが3以上、38℃以上の感染を疑わせる発熱、毒
性がgrade 2以上、水様下痢を認める場合は治療を延期し、
毒性がgrade3(血液毒性は場合によりgrade4)以上の場合
は抗がん剤投与量の減量が行われる。
有害事象共通用語基準 v3.0 JCOG/JSCO版 抜粋
有害事象Adverse Event (AE):治療や処置の際に観察される、あらゆる意図しない兆候(臨床検査値の以上も含む)、症状、疾患であり、治療や処置との因果
関係は問わない。
Grade1: 軽度のAE Grade2;中等度のAE Grade3:高度のAE Grade4:生命を脅かすまたは活動不能とするAE Grade5:AEによる死亡
LLN:(施設)基準値下限 ULN:(施設)基準値上限
Grade1
2
3
4
白血球
<LLN-3000/mm3
<3000-2000/mm3
<2000-1000/mm3
<1000/mm3
好中球
<LLN-1500/mm3
<1500-1000/mm3
<1000-500/mm3
<500/mm3
<LLN-75000/mm3
<75000-50000/mm3
<50000-25000/mm3
<25000/mm3
<LLN-10g/dl
<10-8 g/dl
<8-6.5 g/dl
<6.5 g/dl
食欲不振
食習慣の変化を伴わない食欲低下
顕著な体重減少や栄養失調を伴わない摂取量
の変化:経口栄養剤による補充を要する
顕著な体重減少または栄養失調を伴う(カロ
リーや水分の摂取が不十分)静脈内輸液/経管
栄養/
TPNを要する。
生命を脅かす
下痢
ベースラインと比べて<4回/日の排
便数の増加、ベースラインと比べて
人工肛門からの排泄量が軽度に増加
ベースラインと比べて4―6回/日の排便数の
増加:<24時間の静脈内輸液ベースラインと
比べて人工肛門からの排泄量が中等度増加
日常生活に支障がない
ベースラインと比べて≧7回/日の排便数の増
加:便失禁:≧24時間の静脈内輸液を要する:
入院を要する:ベースラインと比べて人工肛
門からの排泄量が高度に増加
日常生活に支障あり
生命を脅かす
(例;循環動態の虚脱
)
疲労
ベースラインに比して経度の疲労の
増強
中等度の疲労、または日常生活の一部に困難
を生じる
高度の疲労、日常生活に支障あり
活動不能/
動作不能
発熱(好中球1000未満でな
い)
38.0-39.0℃
>39.0-49.0℃
>40.0℃が≦24時間持続
>40.0℃が>24時間持
続
ALT AST
>ULN-2.5×ULN
>2.5×ULN-5×ULN
>5×ULN-20×ULN
>20×ULN
ビリルビン
>ULN-1.5×ULN
>1.5×ULN-3.0×ULN
>3.0×ULN-10×ULN
>10×ULN
クレアチニン
>ULN-1.5×ULN
>1.5×ULN-3.0×ULN
>3.0×ULN-6.0×ULN
>6.0×ULN
神経障害:感覚性
症状がない(深部腱反射消失または
知覚異常(疼きを含む)があるが機
能障害なし
知覚変化または知覚異常(疼きを含む)によ
り機能障害はあるが、日常生活には支障がな
い
日常生活に支障がある知覚変化または知覚異
常
活動不能/
動作不能
血小板
ヘモグロビン
治療効果の判定
• 血液検査
• レントゲン検査、超音波、CT、MRI
骨シンチグラフィー 内視鏡など
PET
治療効果判定 RECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)
①標的病変 (一方向計測の最長径の和)
完全奏効(complete response:CR) すべての標的病変の消失 4週間 response:PR) 30%以上の縮小、4週間で確認 進行(progressive disease:PD) 部分奏効(partial
20%以上の増大
安定(stable disease :SD) PRおよびPD基準に満たないもの
②非標的病変 CR,non-CR/non-PD,PDで評価
経口抗がん剤
一般に経口抗がん剤は、静脈内投与薬より、
効果が劣り、副作用が少ないと思われている
が、近年 5-FUの誘導体をはじめ、注射と同
等の効果を期待できる薬剤が開発されている
5-FUは、制限付時間依存性薬剤→
注射剤では、持続静注が有効
→5-FUそのものの経口投与では抗腫瘍効果低い
→S-1(テイーエスワン)、カペシタビン(ゼローダ)
TS-1(ティーエスワン)
•
日本で開発されたフッ化ピリミジン系経口抗癌剤 フルオロウラシル(5-FU)のプロドラッ
グであるテガフール(FT)にdihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)拮抗剤のギ
メスタット(CDHP)と消化管粘膜での5-FUのリン酸化を阻害するオタスタットカリウム
(Oxo)をモル比1:0.4:1で配合した合剤
• 切除不能、再発胃癌での単剤の奏効率44-49%
• 未分化型癌での高い治療効果(52.5%) 分化型34.7%
• 単剤でのGrade3以上の毒性も全体で19.8%と比較的
軽微
• シスプラチン、CPT-11,タキサンなどとの併用でより高い奏
効率
• 大腸癌で35.5-35.9%の奏効率 • 膵臓癌で21%、胆道癌で21%の奏効率
タキサン系薬剤
•
微小管蛋白重合を促進することにより微小管の安定化、過剰形成を惹起し紡錘
体の機能を障害することにより細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮
• パクリタキセル(タキソール) 重篤な過敏症防止のため前投薬必要
投与間隔を短縮した方がcellkinetics上有利
進行胃癌で既治療例でも約25%の奏効率
• ドキタキセル(タキソテール) ‥
• 胃癌では既治療の有無にかかわらず20%前後の
奏効率
食道癌でのsecond line
61歳女性・切除不能
治療前:
胃前庭部大弯 Type3
多発肝転移・門脈腫瘍塞栓
S-1+CDDP開始20ヶ月後、CR確定し中止
現在もCR継続、34ヶ月生存中
副作用を知ることの大切さ
• 分裂の早い血液細胞、口腔粘膜、胃腸粘膜
毛根細胞などは影響を受けやすい
⇒感染症、出血、貧血、下痢、嘔気、脱毛
薬剤に特異的な副作用
・心毒性(アントラサイクリン系、ハーセプチン)
・肺毒性(ブレオマイシン)
・末梢神経障害(シスプラチン、タキサン系)
・中枢神経障害(ビンカアルカロイド系)
・筋肉痛、関節痛(タキサン系)
・出血性膀胱炎(シクロフォスファミド、イホスファミド)
吐き気、嘔吐
脳の神経の刺激でおこる⇒制吐剤
予防⇒治療日は食事を少なめ、衣服が体をしめつけないよう
・横向きで体を内側に曲げる
・冷たい水や氷をふくむ
・室内の換気、においの強いもの(花、香水)を避ける
・食事はゆっくり
・煮物、煮魚、焼き魚など臭うものは避ける
・料理は冷まして
・胃の辺りを保冷剤(アイスノン)で冷やす
・ゆっくり腹式呼吸
下痢
• 多くは2~10日後におこる ⇒消化剤、下痢止め、整腸剤、
輸液
•
•
•
•
•
•
•
•
繊維の多い食べ物は避ける
食事の回数を増やし、少しづつ
消化のよいもの(お粥、煮込んだうどん)
香辛料、刺激物、牛乳、乳製品、脂っこい物、お酒は避ける
生野菜や生の果物を減らす
下痢がつづけばカリウムの多いバナナ、果物ジュース
十分な水分の摂取
トイレのあとウォシュレット(肛門を清潔に)
便秘
くすりの影響で便秘になることもあります。⇒緩下剤
水分を十分にとる
繊維の多いものをとる(ただし術後は禁)
おなかを時計方向にさする
軽い運動
口内炎
•
薬の粘膜に対する直接的障害と局所感染による二次性障害
• 症状:できもの、歯茎の晴れ、びらん、潰瘍による痛み、出血
⇒治療前に歯科受診 入れ歯の点検やブラッシング、リンスの指導 うがい
薬の使用 塗り薬、貼り薬
・塩分や酸味の強いものは避ける
・料理はさまして やわらかいもの、牛乳、卵豆腐など
・とろみをつけたり 裏ごし
予防;うがい、歯磨きで口腔内を清潔に イソジンガーグルやハ チアズレ 口の中を乾燥させない(マスクの使用)
柔らかい歯ブラシ、タバコ、アルコールを避ける
感染症
白血球の減少で最近に対する抵抗力が低下⇒いろいろな部位
(口、肺、皮膚、尿路、腸、肛門、性器など)で感染症の危険
ときに菌血症、敗血症
症状;38℃以上の発熱、寒気、悪寒、咳、咽頭通、下痢、腹痛
排尿時通、血尿、残尿、肛門痛、皮膚の発赤 虫歯、
検査;血液、尿検査、画像検査など ⇒抗生物質
注意;手洗い、うがい、人ごみを避ける、感染症の人に近づか ない にきびをつぶさない、爪を切る、水分を多めにとる
皮膚の保湿、庭いじりやペットの世話は手袋、切り傷に注意
体を清潔に保つ
出血
• 骨髄機能低下による血小板減少⇒出血傾向
• 症状;内出血(皮下出血)、打ち身、手足胴の締め付け
歯磨きによる口の中の出血 鼻血、血便、血尿
皮膚の点状出血
治療;止血剤、輸血(血小板)
注意;激しい動作の運動、スポーツを避ける
転倒、外傷、打撲に注意 衣服をしめつけない
長時間の同じ姿勢を避ける
排便が力まない
歯磨き、鼻かみはやさしく行う
貧血
• 骨髄機能低下による赤血球の減少 ⇒体に十分酸素がいき
わたらない ⇒倦怠感、疲れやすい、めまい、息切れ
• 症状;手足の冷感、爪の色が白い、顔色が青白い
頭痛、頭重感、結膜が白い、耳鳴り
脈拍が増える、動悸がする、息切れ
食欲不振、便秘、めまい、倦怠感
治療;輸血(赤血球) 造血剤
注意;ゆっくり動き始める
十分な休養
買い物、車の運転、家事など家族の協力を
脱毛
薬によって、抜けるものと抜けないものがある、個人差
投与2~3週間後に多くおこる。体毛、眉毛、陰毛でも
⇒治療終了後3ヶ月くらいで生えてくる。
日常の工夫:毛染め、パーマはしない
柔らかいヘアブラシ、ドライヤーの温度は低めに
髪は短く(脱毛時処理しやすい ⇒粘着テープ)
洗髪はやさしく
帽子やナイトキャップの使用
かつら
外来化学療法での日常生活
●食事:バランスよく
(高カロリー、高タンパク、高ビタミン)
●嗜好品 アルコールは控えめ タバコはやめる
●睡眠を十分に
●外出;体調を考慮して 気分転換
●仕事;体調に応じて主治医と相談
●他の薬;主治医と相談
病期、身体の状態に合わせた適切
な治療法の選択が必要
•
•
•
•
•
手術
化学療法
放射線治療
緩和治療
Best supportive care
患者さん自身が納得のいく治療を
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