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印刷機製造会社における 生産工程/製造原価管理システムの開発

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印刷機製造会社における 生産工程/製造原価管理システムの開発
印刷機製造会社における
生産工程/製造原価管理システムの開発
荒木
孝行(電子情報システム工学専攻)
Development of the process and cost management system
for the printer product company
Takayuki Araki (Advanced Engineering Faculty of Electronic and Information Systems)
Abstract
This paper discusses how to systemize the management of the local printer product company. It is essential
to confirm that every part has been stocked before assembling. Therefore, there should be a system to
supervise the real-time status of the stock. This suggested system can visualize the status of the stock as
well as everyday expenditure to the budget. It can be concluded that this system is much more cost effective
and much cheaper than one that has been existed.
Keywords:
Keywords:Management System, Ordering, Stock, Budget, Progress
ム化が求められている.しかし,そのシステム化に対し
1. はじめに
てはA社独自の工程や作業などに対応したカスタマイズ
が必至のため,その分必然的に高価格となり,中小企業
本研究は地元企業のシステム化促進を目標に行ってい
では資金的に導入が困難であるのが現状である.
る.今回は島根県内の印刷機製造会社(以下,A 社)を対
象に行った.まず,本論文の構成について説明する.2
そこで我々は,これらの問題を解決するために,産業
章では,A 社の問題点について説明し,その問題点に対
技術総合研究所が開発した設計製造支援システム開発の
する解決策について述べる.3 章では,それらの問題点
ためのプラットフォームである MZ Platform[1]をベー
を解決するために開発した生産工程/製造原価管理シス
スに,A 社と共同で生産工程/製造原価管理システムの
テムについて,その構成,機能などに関して詳細に説明
開発に着手し,研究開発を進めてきた[2] [3] [4] [5].
現在,A 社で利用されているシステム環境の問題点は
する.続いて 4 章では,現時点までに開発したシステム
について評価する.A 社の問題点を解決する具体的なシ
大きく以下の 3 点である.
ステム機能について評価するとともに,他システムと比
①リアルタイムでの工程進捗管理が実現されていない.
較して評価する.最後に 5 章では,本研究のまとめと今
②テキストデータしか扱えず,グラフや図などデータの
後の課題について述べる.
視覚化機能がない.
③日常業務の電子化が不充分である.
2. 共同開発企業の問題点と解決策
①については,A社では,発注した部品の納品状況を
大型印刷機の製造の流れは図 1 の通りである.
月単位で確認しているため,発注・納品状況がリアルタ
イムで把握できないという問題がある.納品状況がリア
製造計画
ルタイムで把握できないと,納品数が間違った場合や,
予算登録
希望納品日に対して納品日が遅れた場合にその検出が遅
部品発注/
部品発注/納品登録
組立
れる.すると部品の再発注や納品取消しなどの余分な業
務が発生する上に,製造計画に遅れが生ずる.希望納品
図 1 大型印刷機製造の流れ
日に対する遅れは,組立工程の遅延となり,その分,組
予算には加工部品費,購入部品費,設計費,組立費な
立費が余分にかかり,利益を圧迫する.全ての部品や材
ど 9 種類もの費用が存在し,部品発注/納品登録では大
料が,希望納品日に納品されているか否かをリアルタイ
型印刷機を構成する数千点もの部品を登録しなくてはな
ムで確認することとその対応が組立工程の計画通りの実
らないため,A 社のコスト管理はかなり複雑なものとな
っている.したがって,原価割れを防ぐためにはきめ細
行の鍵となるので,リアルタイムでの発注・納品管理の
かな原価管理や工程進捗管理が必要であり,そのシステ
実現がA社には必要不可欠であった.
1
②については,
現在A社で使用しているシステムでは,
いる.MySQL はネットワーク対応となっているため,
検索や集計結果をテキストデータとしてしか表示できず,
JDBC を用いることで,任意の PC から MySQL のデータ
図やグラフ表示ができない.そのため,検索集計データ
参照が可能である.
を視覚的直感的に捉えることができず,データの理解や
サーバ PC
把握に時間がかかり,確認ミスも多発していた.
③については,A 社では紙伝票を用いて納品部品金額
など,多くの計算処理を人手で行っていた.紙伝票では
MZPlatform
ネ ットワーク
計算ミスや伝票紛失が起こる可能性が高いので,全て電
子データとして格納し,自動計算できるようなシステム
が必要であった.
以上の問題点に対する解決策について,以下のように
JDBC
MySQL
検討・立案し,システム化した.
①については,上記に示したとおり,A 社で最も重要
JDBC
JDBC
なことは,日単位で納品部品を管理し,予算計画との比
MZPlatform
較がリアルタイムで行えることである.A 社における工
MZPlatform
程進捗管理は,発注部品金額に対する納品部品金額の割
合で行っている.つまり希望納品日までに部品が納品さ
れれば予定通り開発が進捗しているという考え方である.
クライアント PC
クライアント PC
現在,この進捗管理は月単位で行われているが,それを
図 2 システム構成図
日単位の任意の時点で確認可能なリアルタイムシステム
として開発することが我々の目標である.
以上を踏まえ,
リアルタイムでの工程進捗管理と原価管理を実現するた
3.2 システムの機能
め,以下の 2 機能を実装した.
本システムは,部品管理,工程進捗管理と原価管理の
(1)リアルタイムでの部品管理
3 つのサブシステムから構成される.部品管理,工程進
任意の時点(日単位)での工程進捗管理を実現するた
捗・原価管理のサブシステムは合計 6 つの機能を有し,3
めに,データベースと連動した操作しやすい GUI
を工夫し,発注・納品登録と検索,及び部品コスト
種類のデータベースを使用している(図 3).順を追って詳
算出機能を開発した.
しく説明する.
(2)リアルタイムでの原価管理
データベースと連動した任意の時点(日単位)での部
品原価合計を算出し,予算と比較表示する機能を開
登録
①予算登録
発した.
予算管理 DB
作成
部品管理
②については,日単位の工程進捗を製品の機能ブロッ
ク別にグラフ表示して,リアルタイムでの工程進捗や予
定との差異を視覚化する機能を実装した.
③については,発注処理や納品管理の GUI を工夫して
自動記入や自動計算機能を組み込み,入力ミスがないよ
②部品発注・
納品登録
③部品検索
部品管理 DB
④グラフ表示
うに自動化した.
工程進捗 ・
原価管理
3. 生産工程/製造原価管理システム
3.1 システム設計
本システムの開発に際しては,A 社の幹部技術社員と
⑤進捗登録
進捗管理 DB
⑥進捗一覧表示
のミーティングを重ね,A 社の開発要望事項を明確に把
MZPlatform
握して,システム設計を行った.まずシステムの全体構
図 3 システム詳細図
成図を図 2 に示す.
全ての PC に MZPlatform をインストールし,サーバ
PCにデータベースであるMySQL[6]をインストールして
2
データベース
字は,図 3 の丸付き数字に対応している.
① 予算登録機能について
予算登録機能について
原価は印刷機単位で管理する.まず,図 4 の印刷機予
算登録画面の a 部分の項目を入力し,b 部分に“原価”
a
~“設備費”までの予算を割り当てる.そして“SET ボ
タン”クリックにより,
“開発開始日”と“開発完了日”
から“日数”が自動計算・表示される[7].また,
“全予
算額”と予算配分(%)より予算配分額が自動計算・表示
d
b
される.
“登録ボタン”をクリックすると予算データが予
算管理 DB(表 1)に登録される.そして,新たに進捗管理
e
c
DB が作成される.
一覧表示
a
図 5 部品発注・納品登録画面
② 部品発注・
部品発注・納品登録機能について
納品登録機能について
(a) 部品登録
b
部品登録では“機械番号”から“メーカー”(図 5 の
a 部分)までの項目を入力し,
“部品登録ボタン”クリ
ックにより“登録日”が自動記入され,部品登録テー
ブル(表 2)に登録される.
図 4 予算登録画面
表 2 部品登録テーブル (部品管理 DB)
表 1 予算管理 DB
フィールド
型
データ
機械番号
varchar(50)
S29-354
フィールド
型
データ
パート
varchar(50)
A
機械番号
varchar(50)
S29-354
部品番号
int
105
識別記号
varchar(50)
S
全予算額
int
3,000,000
日
int
60
品
名
varchar(255)
ベアリング
式
varchar(255)
698ZZ
数
int
2
数
開発開始日
varchar(50)
2009/05/08
形
開発完了日
varchar(50)
2009/07/06
個
加工部品費(%)
int
10
メーカー
購入部品費(%)
int
30
登録日
varchar(255)
NTN
varchar(50)
2002/11/01
材料費(%)
int
5
表面処理費(%)
int
5
機械費(%)
int
15
部品発注時には,部品登録データを検索表示して,
電気費(%)
int
10
発注作業を簡略化し,かつミスが生じないように工夫
組立費(%)
int
15
した.
利 益(%)
int
5
設備費(%)
int
5
状
int
0
況
(b) 部品発注
図 5 の b 部分で部品登録テーブルに対して検索を行
い,結果を一覧表示の部分に表示させる.この中から
発注した部品の行を選択し,
“発注数”と“単価”
,
“備
考”(同図 c 部分)を記入して“確定ボタン”クリック
3.2.1 部品管理サブシステム
リアルタイムでの原価管理と工程進捗管理を実現する
により“発注日”と“金額”が自動記入される.
“登録
ため,部品登録,部品発注,部品納品の 3 段階に分けて,
ボタン”をクリックすると,図 6 の発注候補一覧画面
部品発注・納品登録画面(図 5)を通して部品管理 DB(表 2
のテーブルに入力した発注部品データが格納される.
~表 4)に登録する.なお,以下の説明で用いる丸付き数
この処理を発注部品数繰返し,
“発注”~“希望納品日”
3
表 3 部品発注テーブル (部品管理 DB)
の項目に記入して,
“帳票ボタン”をクリックすると図
7 の注文書が自動印刷される.そして“発注登録ボタ
フィールド
型
データ
ン”クリックによりテーブルデータが一括して部品発
機械番号
varchar(50)
S29-354
注テーブル(表 3)に登録される.このとき,最新納品日
パート
varchar(50)
A
=””,納品個数合計=0,納品金額合計=0,残り納品数=
発注数としておく.
図 6 発注候補一覧画面
部品番号
int
105
発注日
varchar(50)
2009/05/08
発注数
int
50
単
価
int
200
金
額
int
10,000
発
注
bit
1
発注者
varchar(255)
福田
発注先
varchar(255)
株式会社 AM
希望納品日
varchar(50)
2009/05/13
最新納品日
varchar(50)
納品個数合計
int
納品金額合計
int
0
残り納品数
int
50
備
考
0
varchar(255)
表 4 部品納品テーブル (部品管理 DB)
フィールド
型
データ
機械番号
varchar(50)
S29-354
パート
varchar(50)
A
部品番号
int
105
発注日
varchar(50)
2009/05/08
希望納品日
varchar(50)
2009/05/13
納品日
varchar(50)
2009/05/13
納品単価
int
200
納品個数
int
50
納品金額
int
10,000
③部品検索機能
部品検索機能について
検索機能について
図 7 自動作成された注文書
登録した部品管理 DB からは,図 8(a)に示す通り,
“品
名”や“発注先”
,及び“発注日”など様々な項目に対し
(c) 部品納品
部品納品時は,図 5 の d 部分で部品発注テーブルに
て任意の AND 検索が可能である.また,図 8(b)に示す
対して検索を行い,結果を一覧表示の部分に表示させ
通り,同時に発注金額(発注数)と納品金額(納品数)及び差
る.その中から実際に納品された部品を選択して,入
額(残り)を表示させているため,未納品の部品の数が一
力項目(同図 e 部分)を記入し,
“確定ボタン”クリック
目でわかるようになっている.これにより,発注した部
により“納品日”と“納品金額”が自動記入される.
品が希望納品日までに納品されているか否かをリアルタ
そして“納品登録ボタン”クリックにより納品部品デ
イムで把握できる.
ータが部品納品テーブルに登録される.このとき,表
3 の最新納品日,納品個数合計,納品金額合計,残り
納品数を更新する.
4
工部品費”~“表面処理費”までの費用が自動計算・
表示される(図 10(b)の a 部分).識別記号が“”ならば
加工部品費,
“S”ならば購入部品費,
“M”ならば材料
費,
“-”ならば表面処理費である.
“機械費”~“利益”
については現在手動入力であるが,今後 A 社の幹部技
術社員とミーティングを行い,自動記入できるように
改善したいと考えている.
“登録ボタン”をクリックす
ると①で作成した進捗管理 DB(表 5)に登録される.
尚,
開発が完了した場合は,画面右下の“開発完了ボタン”
をクリックする.すると,予算管理 DB の状況のフィ
図 8(a) 検索項目指定部分(部品検索画面)
ールドが 0 から 1 に変化し開発が完了した印刷機とみ
なされる.
状況
図 8(b) 納品状況算出部分(部品検索画面)
識別記号
本日納品数
図 10(a) 進捗登録画面①
④グラフ表示機能
グラフ表示機能について
表示機能について
必要に応じてグラフ表示も可能である.図 9 には例
として発注先毎の発注金額合計(赤)に対する納品金額
開発完了ボタン
開発完了ボタン
合計(青)の棒グラフを示す.表データだけでなく視覚
表示することで,データの理解と把握が正確かつ,容
a
易に行うことで可能である.
図 10(b) 進捗登録画面②
表 5 進捗登録 DB (S29-354)
フィールド
型
データ
予算残高
int
1,607,260
残り日数
int
34
付
varchar(50)
2009/06/03
締切日
varchar(50)
2009/07/06
日
日
数
int
26
加工部品費
int
8500
購入部品費
int
0
材料費
int
0
表面処理費
int
0
機械費
int
0
3.2.2 原価管理サブシステム
電気費
int
0
⑤進捗登録機能について
進捗登録機能について
組立費
int
6300
利
益
int
0
設備費
int
0
図 9 グラフ表示画面
進捗管理 DB には日単位で納品部品費用や組立費な
どを登録する(図 10).まずは“機械番号”と“日付”
を入力し“参照ボタン”をクリックすると,画面右上
に登録済か未登録かが表示され,未登録のときに登録
⑥進捗一覧表示機能について
進捗一覧表示機能について
可能である.その日納品予定日または納品された部品
予算管理 DB と進捗管理 DB を利用して,現在まで
の一覧が中央に表示される.
“本日納品数”に数字が入
の納品部品費用合計を算出し,予算と比較表示する(図
力されている部品はその日に納品された部品というこ
11).また,
“表示ボタン”クリックにより,図 12 に“配
とになる.そして,
“識別記号”により納品された“加
分額”と“執行額”の部分をわかりやすく棒グラフで
5
表示される.
“配分(%)”は予算管理 DB,
“配分額(円)”
ャート表示する.つまり,その日納品予定である発注部
は進捗管理 DB より取得する.これらのデータは図 12
品の合計金額に対する実際の納品部品金額を算出し,予
の
“印刷ボタン”
クリックにより印刷可能であるため,
定との差異を表示する.つまり,差し引き 0 であれば予
予算に対してどれだけ消費したかを連続的に分析する
定通り進捗していることになる.これにより工程進捗が
こともできる(図 13).
ほぼリアルタイムで確認できる.
パート
48.5 / 48.5 (千円
(千円)
千円)
26.5 / 52.5 (千円
(千円)
千円)
101 / 149 (千円
(千円)
千円)
図 11 予算との比較表示(表)
図 14 工程進捗ガントチャート(開発中)
4. システムの評価
現時点までに開発したシステムに対して,以下の 2 点
で評価した.
・A 社の問題点に対する解決度
・類似システムとの比較
以下で具体的に説明する.
図 12 予算との比較表示(棒グラフ)
4.1 A 社の問題点に対する解決度
これまでに A 社から受けた要望を項目別に列挙する.
なお,⑤については,要望事項を全て満たしている.
①印刷機予算登録に
印刷機予算登録に関する要望事項
する要望事項
1)印刷機毎予算配分 GUI の構築.
②部品発注・
部品発注・納品登録に
納品登録に関する要望事項
する要望事項
2)入力ミスを防止のための登録日・発注日・納品日
の自動記入化.
3)発注時/納品時の入力データの明確な分離化.
4)
データベース更新履歴の蓄積と過去データの参照
可能化.
5)消費税項目の削除.
6)識別記号項目の追加.
図 13 予算との比較表示(印刷版)
7)発注時における注文書の自動生成.
③部品検索に
部品検索に関する要望事項
する要望事項
3.2.3 工程進捗管理サブシステム
8)
チェックボックスグループを用いた部品データ検
現在は図 14 のようなガントチャートの開発を行って
索機能の実現.
いる.印刷機毎にパート単位(A,B,C,…)でガントチ
6
④グラフ表示
グラフ表示に
表示に関する要望事項
する要望事項
で機能のカスタマイズが容易である点が優れており,価
格性能比は極めて高いと言える.
9)機械番号毎部品金額の合計算出.
10)機械番号指定でのパート毎発注金額の合計算出.
表 6 本システムと類似システムとの比較
11)機械番号指定での発注先メーカー毎発注金額の
合計算出.
12)発注日・納品日双方での日単位部品金額算出.
価
⑥進捗一覧表示に
進捗一覧表示に関する要望事項
する要望事項
格
本システム
ACROSS
PREGARE
1000 円/年(*1)
100 万円
300 万円~
カスタマイズ
○
×
○
13)原価管理表・グラフの作成.
予算登録
○
○
○
14)工程進捗管理ガントチャートの作成.
加工入力
○
○
○
A 社からの要望に対して 4)
と 14)
以外は全て開発した.
①については,図 4 に示すように,印刷機毎の予算配
分が可能になっている.
進捗登録
△
○
○
原価グラフ
○
○
○
部品検索
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
部 品 発 注・
②については,図 5 示すように,部品登録,発注,納
納品登録
品を行う際の入力項目が分けられており,登録日は“部
工
程
スケジュール
品登録ボタン”クリックにより日付が自動記入される仕
E メ ー ル,
組みになっている.発注日,納品日に関しても“確定ボ
電話サポート
タン”クリックによりその日の日付が自動記入される仕
*1 MZPlatform の年間使用料
組みになっている.また,図 7 に示すように注文書の自
動印刷が可能になっている.ただし,4)については,デ
5. まとめと今後の課題
ータベース更新履歴のファイル蓄積機能について開発中
A 社の問題点を解決するための工程進捗管理・原価管
である.
理システムを開発した.本システムは次の 3 機能
③については,図 8(a)に示すとおり,チェックボック
(1)リアルタイムでの部品管理
スグループにより AND を組合せての部品検索が可能に
(2)リアルタイムでの原価管理
なっている.
(3)工程進捗管理の視覚化
④については,11)の場合を図 9 に示している.本論
から構成され,A 社の最要望事項である「日単位で納品
文には記載できなかったが,9)
,10)
,12)に関しても
部品を管理し,予算計画との比較がリアルタイムで行え
る」を実現した.工程進捗管理は,発注部品金額に対す
11)を応用して可能となっている.
⑥については,図 11 と図 12 に示すように,予算に対
る納品部品金額の割合で行い,希望納品日までに部品が
する執行額の表・グラフ表示は可能となったが,図 14
納品されれば予定通り開発が進捗しているというA社の
に示す工程進捗管理ガントチャートは開発途中であるた
進捗管理方法をシステムとして実装できた.現在,(1),
め,14)に関しては開発中である.
(2)に関する部品発注・納品登録,部品検索,グラフ表示,
印刷機予算登録,進捗登録までを開発した.(3)の工程進
捗管理ガントチャートを開発中である.
4.2 類似システムとの比較
既存する類似システムのうち,個別受注型原価管理シ
また,昨年 11 月に A 社に対してシステムをインスト
ステム ACROSS[8]と EPM システム PREGARE[9]の 2 つ
ールし,ネットワークテストとプロトタイプシステムの
のシステムを取り上げ,本システムとの比較を行った.
デモを行った(図 15).要望通りのシステムに近づいてい
結果を表 6 に示す.
ると高い評価を受けた.現在,テスト運用中である.ま
他の 2 つのシステムは本システムに比べて多くの機能
た,その際に,更なる機能追加と改良要望も出された.
を有するが,その分高価格である.特にユーザに合わせ
今後は,それらの機能の追加・改良を加えたシステムを
てカスタマイズ可能なシステムは高額となる.本システ
近日中にインストールする予定である.今回の研究開発
ムは,機能に関しては他システムと遜色なく,他システ
を通して,実際の企業で利用されるシステム開発を経験
ムと比べて価格は圧倒的に安い.また画面構成の変更や
することができた.具体的なシステムの仕様や設計のた
機能のカスタマイズも容易である.本システムは低価格
めに,企業幹部社員の方との開発会議も経験でき,ビジ
7
ネスの現場で用いられるシステム開発の厳しさを体験す
参考文献
ることができた.この貴重な経験を将来に役立てたい.
[1] 独立行政法人 産業技術総合研究所,デジタルものづくり
センター:MZPlatform,http://www.aist.go.jp/.
[2] 柳楽佑太:
“印刷機製造会社における生産工程/製造原価
管理システムの開発”
,国立松江工業高等専門学校 情報
工学科 2006 年度卒業論文,2007 年 2 月.
[3] 荒木孝行:
“印刷機製造会社における生産工程/製造原価
管理システムの開発”
,国立松江工業高等専門学校 情報
工学科 2007 年度卒業論文,2008 年 2 月.
[4] 荒木孝行,柳楽佑太,越田高志:
“印刷機製造会社におけ
る生産工程/製造原価管理システムの開発”
,第 70 回情
報処理学会全国大会 5ZM-2,2008 年 3 月.
[5] 荒木孝行,越田高志:
“部品発注・納品管理における生産
工程管理システムの開発”
,第 71 回情報処理学会全国大
会 3ZB-8,2009 年 3 月.
[6] 松信 嘉範:現場で使える MySQL,株式会社 翔泳社,2006
年.
[7] 朝井 淳:SQL ポケットリファレンス,株式会社 技術評
論社,2006 年.
[8] 個別受注型原価管理システム ACROSS,
http://www.across-go.net/ind ex.htm.
[9] EPM システム PREGARE,
http://www.webi.co.jp/products/pregare/.
図 15(a) ネットワークテストの様子
図 15(b) システムのデモの様子
8
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