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デジタルカメラのための 被写界深度制御ソフトウェア
デジタルカメラのための 被写界深度制御ソフトウェア 大島商船高等専門学校 電子機械工学科 准教授 岡崎 秀俊 研究の背景 ~ デジタルカメラの特長 1.小型、軽量、高画質 2.撮影後、すぐに画像を確認できる 3.ランニングコスト不要 4.画像の整理が容易 あらゆる点でフィルムカメラを凌駕している? 置き去りにされた問題 デジタルカメラは被写界深度が深いため、背景をぼかして 被写体を注視させる写真表現を用いることが困難! フィルムカメラの画像 デジタルカメラの画像 なぜこうなるのか? 光学的原理 フィルムカメラ デジタルカメラ CCD 24mm 画面サイズ 4.8mm 6.4mm 36mm 長さ比: 約1/5 レンズの焦点距離 (同一画角) f=50mm f=9.24mm 約1/5 ぼけの大きさの比 1 約1/25 ぼけの大きさはスケールの2乗に比例するため、画面が小さ くなるほど被写界深度が深くなる。 従来の解決案 ①フィルムカメラと同等の画面サイズ(約36mm×24mm)を持 つ大型の撮像素子を搭載する方法 ②特殊な光学系を用いて被写界深度を浅くする方法 問題点 ①では、撮像素子のコストが高く、光学系のサイズが大きい。 ②では、光学系が複雑で製造コストが高い。 いずれも、カメラの小型化が困難 ・・・・・光学的問題を光学的手法で解決しようとしている 目標とするシステム その1.ユーザーが係数を調整することにより、被写界深度を 自由に調整できるシステム(PCアプリケーション等) その2.予め設定したフィルムカメラのデータから、同等の被写 界深度を自動的に得られるシステム (デジタルカメラのファームウェア等) 基本方針 ・背景をぼかすために大きなCCDや光学系を作りたくない・・・・。 ・ソフトウェア(ウェーブレット変換)を用いて、デジタルカメラ画像の 小さなぼけを、元のぼけの大きさに比例して拡大する。 ウェーブレット変換の例 スケール1 原画像 2 1 スケール3 スケール2 3 平滑 成分 再構成画像 水平 方向 エッジ 成分 順変換(分解) 垂直 方向 エッジ 成分 逆変換(合成) 2 3 高周波 2倍 1 周波数 1/2 低周波 ウェーブレット変換の特徴 1.画像を多重スケールの微分(エッジ)成分と平滑成分に分解 (スケールが1つ増えると、周波数が1/2になる) 2.任意の座標について、スケールごとの解析、操作が可能 3.分解した周波数成分を合成することにより画像を再構成 原画像 スケール1 の成分 2 3 順ウェーブレット 変換(分解) 再構成画像 逆ウェーブレット 変換(合成) 解析・操作 提案する方法 1.デジタルカメラ画像の小さなぼけを、元のぼけの大きさに比例し て拡大することにより自然なぼけが得られる。(多重スケール) 2.ピントの合っている所は、ピントを保持する。(任意座標の処理) ぼけの大きさ ウェーブレット変換による修正特性 フィルムカメラの特性 ピントが合って いる座標は修正 を行わないため しきい値 デジタルカメラの特性 ピント位置 ピント位置からの距離 エッジ成分のデータ操作による、ぼけ拡大の原理 輝度 デジタルカメラのエッジ a ウェーブレット変換により 修正したエッジ a b スケール 1 スケール2 ぼけが小さいのでスケール間の エッジの差分値の変化が小さい スケール 1 b 画像の座標 スケール2 スケール1の差分値aを小さくするとエッ ジが滑らかになり、ぼけが大きくなる 提案するシステム 逆ウェーブレット 変換 順ウェーブレット 変換 スケール1 のエッジ成分 2 3 原画像 しきい値 設定 制御係数 設定・乗算 ピントが合っている座標は係数の乗算を行わない 条件:スケール1の振幅>しきい値 再構成 画像 1.ユーザーが自由 に係数を設定 2.フィルムカメラの データから得ら れた係数を設定 ユーザーが自由に設定した係数による実施例 デジタルカメラで 撮影した入力画像 制御係数 C1,C2,C3 = 0.3, 0.5, 0.7 制御係数 C1,C2,C3 = 0.1, 0.2, 0.3 係数の組み合わせで、背景のぼけを自由に修正できる。 想定したフィルムカメラと同等の被写界深度を得る方法 1.予め、実験データより被写界深度補正係数Rj を求める 2.撮影時の距離から、距離補正係数 を求める 3.ウェーブレット変換の各スケール( j = 1,2,3・・)の微分画像に制御 係数 Cj を乗じる 4.逆ウェーブレット変換により、想定した被写界深度の画像を得る ウェーブレット変換の微分成分に乗 じる制御係数(スケール j =1,2,3・・ ) C j = Rjb 想定したフィルムカメラと実際のデジタ ルカメラのぼけの差による補正係数 Rj 設定時と、実際の撮影時 の距離の比による補正係数 ぼけの補正係数 Rj を求める 背景(テストパターン) a' テストパターンの撮影 1)被写体距離aと背景距離a を設定 2)カメラのピントを被写体に合わせる 3)被写体を取り除く 4)ピントを保持したまま撮影 被写体 a カメラ テストパターンの撮影システム デジタルカメラ フィルムカメラ エッジのウェーブレット変換値の 比から補正係数 Rjを得る ウェーブレット変換の3スケールの振幅比Rj Rj = W W F j D j 180 160 R3 W1 W2 W3 R2 140 120 R1 100 80 60 40 20 ピントを合わせた 0 被写体では、ス -20 ケール1(W1)の 振幅が大きい デジタルカメラによ る背景のウェーブ D レット変換 j W フィルムカメラによ る背景のウェーブ F レット変換 j W 距離補正係数 の導出 Rj 設定時の距離a, a と、実際の撮影時の距離ar, ar が異なる ため、制御係数の補正を行う必要がある。 Back Object e (e r ) a (a r ) a ' ( ar ' ) (a'-a) f Rj設定時のぼけ e = D (a - f )a' b (br ) b ' (br ' ) (ar '-ar ) f 撮影時のぼけ er = D (ar - f )ar ' a ' (a - f ) a r '- a r e r . b = e = a '- a (ar - f )ar ' 制御係数 Cj の計算 ar a 被写体 a ar Rj 設定時のデジタルカメラ画像 a=200, a =400mm デジタルカメラの撮影画像 ar=150, ar =400mm 撮影距離a, a ,とar, ar より 距離補正係数 を算出 Cj=Rj より制御係数を得る C0=0.584 C1=0.765 C2=1.156 制御係数Cj=Rj の計算による結果画像 デジタルカメラ 出力画像 フィルムカメラ 入力画像のウェーブレット変換に制御係数 Cj を乗じて逆変換す ることにより、想定したフィルムカメラと同等の被写界深度を持つ 画像が得られた。 現在(特許出願後)の開発状況 フィルムカメラと同等の被写界深度を自動的に得る方法について テストパターンの撮影を行わず、机上計算からRj を導出できるようにアル ゴリズムを改善した。 デジタルカメラ画像 出力画像 フィルムカメラ画像 想定される用途 デジタルカメラの組み込みファームウェア オートフォーカス用の多点測距機能を利用 被写体と背景の距離情報ar, ar が得られるので 制御係数の自動計算が可能 パソコン用アプリケーションソフトウェア ユーザーが自由に被写界深度を調節できるGUI プロバイダーによる、携帯画像の被写界深度 調整サービス 何種類かの被写界深度画像を一度にユーザーに提供 今後の課題~実用化に向けて カラーRGB画像に対応したウェーブレット変換 (研究室が主体) 高画素画像に対応したウェーブレット変換 (研究室が主体) PC用ユーザーインターフェイスの開発 (企業が主体) 小型デジタルカメラ用ファームウェアの検討 (企業が主体) 企業&研究室による共同開発 研究室 これまでの成果 及びシーズ提供 開発した基本プロ グラムの提供 企業 実用化・ビジネス化 開発成果の 共有 アプリケーション プログラム開発 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 : 被写界深度制御方法、画像処理装置及び プログラムと記憶媒体 • 出願番号 : 特願2007-084630 • 出願人 : 独立行政法人国立高等専門学校機構 • 発明者 : 岡崎秀俊 お問い合せ先 加治哲徳 徳山高専/テクノ・リフレッシュ教育センター 文部科学省産学官連携コーディネーター E-mail : [email protected] TEL(携帯):090-7504-3851 〒745-8585山口県周南市学園台