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3.芹沢銈介美術工芸館に行ってみよう

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3.芹沢銈介美術工芸館に行ってみよう
第9章
社会・文化
TFU リエゾンゼミ・ナビ『学びとの出会い』
3.芹沢銈介美術工芸館に行ってみよう
皆さんは芹沢銈介美術工芸館へ足を運んだことがありますか? 国見キ
ャンパス 2 号館の正面にある半円形の自動扉が、
美術工芸館への入口です。
日本を代表する染色作家・芹沢銈介の作品と蒐集品を中心に収蔵し、1・5・
6 階に合わせて 6 つの展示スペースをもつ、大学美術館として有数の規模
を誇る施設です。ここでは利用方法や施設内容などについて紹介し、展示
美術工芸館入口
品の魅力について多くは語りません。百聞は一見に如かず、ぜひ展示室で
実物をご覧になってください。身近なオアシスとして美術工芸館を活用し
大学生活をより豊かにしてもらえることを願っています。
1
場
利用案内
所 2 号館 1・5・6 階
開館時間 10:00~16:30
休 館 日 日曜・祝日 展示替期間
ほか
※開館日は展覧会ごとに異なります。詳しくは美術工芸館 HP でご確認ください。
こーひーかん
併設施設 ミュージアムショップ(1F)
・カフェ「可否館」
(5F)
入館の際は、1 階の受付カウンターで学生証を提示してもらいます。分
からないことがあれば、受付のスタッフに気軽に質問してください。
また博物館・美術館には、みんなが気持ちよく利用するための「鑑賞マ
ナー」があります。展示されている作品や資料を守り、快適な鑑賞環境を
つくるために必要なことですので、ぜひ覚えてください。
〔1〕展示品には手を触れない。
〔2〕メモをとる際、ペンなどインクの出る筆記具は用いない。
〔3〕展示室内での飲食はしない。
(館内で持込みの飲食はできません)
ミュージアムショップ
〔4〕傘は持ち込まない。
〔5〕携帯電話は使用しない。
〔6〕展示室内では大きな声を出さない。
〔7〕貴重品は身につけておく。
美術工芸館は一般の方々へも有料で公開されている施設です。鑑賞マナ
ーを守って、気持ちよく利用しましょう。
1
カフェ「可否館」
2
大学美術館としての役割
美術工芸館の開館は平成元年に遡り、以来二十余年にわたり福祉大学と
共に歩んできました。大学内における当館の役割は大きく 3 つあります。
〔1〕学生の皆さんの感性を育む場となること。
〔2〕博物館学芸員資格取得のための実習の場となること。
〔3〕地域に開かれた大学として社会貢献の場となること。
一つめの感性教育は、本学が掲げる教育の柱のひとつです。当然と思わ
れるかもしれませんが、美術館には実物が展示されています。私たちは本
やテレビ、インターネットを通じて、日々多くの美術品を目にしています。
しかしそれらはコピーであって、大きさや質感、実物のもつ存在感を伴っ
てはいません。自分の目で見て、「ホンモノ」のもつエネルギーを感じる
ことはとても重要なことです。
二つめに、本学では所定の課程を修めることで学芸員資格を取得するこ
とができます。学芸員を目指す学生たちは、受付やワークショップ指導、
資料の扱いなど、当館を舞台にさまざまな実務を体験します。
三つめの社会貢献では、一般の来館として年間約 15,000 人が利用し、
社会学級、PTA、小中高等学校などの団体見学も年々増加しています。
また、美術工芸館で主宰するワークショップには、福祉大生が指導員とし
て参加し、その丁寧で親身な対応は高い評価を得ています。
この他にも、受付業務を担うアルバイトや、ワークショップをはじめ各
種のイベントをサポートするボランティアサークルなど、たくさんの福祉
大生が運営に携わっていることは、当館の大きな特色といえるでしょう。
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芹沢銈介とは?
芹沢銈介は大正から昭和にかけて活躍した日本を代表する染色作家で
す。芹沢は、通常職人らが分業によって行う型染を一貫して自ら作業し、
創造性の高い「芹沢ならでは」の作品を生み出しました。そのため作家と
しての絵画性を有する芹沢の作品は、「型絵染」と呼ばれます。みずみず
しい配色と独創的な文様に彩られた作品は、私たちの生活空間を明るく楽
しい雰囲気にするもので、どれも創造することの喜びに満ちています。
芹沢は 1885 年に静岡市の大きな呉服商の家に生まれ、1916 年に東京高
等工業学校図案科を卒業しました。転機は 1927 年 32 歳の時に訪れます。
柳宗悦の論文「工藝の道」を読み、
「長年悩んでいた疑問が氷解し、工藝
の本道が拓ける」ほどの感動を覚えたといいます。そして翌年には、大礼
2
型染(かたぞめ)
型紙を用いて防染糊を
置き、文様を染めだす
日本の伝統的染技法。
文様を考える人、型紙
を制作する型彫り師、
これを仕上げる染物師
がそれぞれ専門化して
分業により品々を完成
させる。
柳宗悦(1889~1961)
民衆の使う日用品の美
に注目する民芸運動を
通じて、工芸家に多大
な影響を与えた思想
家。
記念国産振興博覧会特設の日本民藝館に展示された沖縄の紅型に出会い、
その文様と晴れやかな色彩に魅了され、そこに染色の理想を見出しました。
染技の深奥を追い求めた紅型との出合い、生涯の師・柳宗悦との出会い、
さらに民芸運動を推進する人々との交流の中で、民芸思想をよりどころに
88 歳で亡くなるまで染色作家としての道を歩みつづけました。
1956 年 61 歳で人間国宝(型絵染)に認定され、1966 年紫綬褒章、1976
年文化功労者となりました。また 1976 年にはフランスの国立グラン・パ
レ美術館で開催した「芹沢銈介展」が大好評を博し、1981 年にフランス政
府から「文化芸術功労賞」を授与されるなど、世界的にも評価の高い工芸
作家の一人です。近年では 2009 年 10 月~2010 年 1 月にニューヨークの
Japan Society Gallery にて、本館の収蔵品を中心とした「SERIZAWA:
Master of Textile Design」展が開催され、来館者が 7,000 名を超える大
成功を収めました。
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なぜ東北福祉大学に芹沢銈介の美術館があるの?
芹沢銈介は 1984 年に 88 歳で亡くなりましたが、生前に制作した作品は
膨大な量におよび、さらには「もうひとつの創造」と呼ばれる世界の諸民
族の工芸品を中心とした豊富なコレクションが遺されました。
芹沢作品の展示施設は、当時すでに東京の日本民藝館、東京国立近代美
術館工芸館、千葉県柏市の砂川美術工芸館、静岡市立芹沢銈介美術館、倉
敷の大原美術館工芸館がありましたが、東京より西に限られていました。
生前芹沢は東北の地に愛着をもち、中でも仙台は 1947 年に次女が嫁ぎ、
1963 年に長男が東北大学へ赴任するなど縁深い地であったことから、「仙
台にも自分の作品を陳列する施設が欲しい」と口にしていました。
そうした中で、東北福祉大学が「地域に開かれた大学構想」
「感性教育」
を掲げ美術館の設立を計画していることを聞いた長男・芹沢長介氏(東北
福祉大学名誉教授・東北大学名誉教授)は、故人の遺志を継ぎ芹沢の陳列
施設をつくるべく、遺品の一部を東北福祉大学に寄贈することを申し出ら
れたのです。芹沢銈介美術工芸館は 1989 年 6 月 23 日に開館し、以後 2006
年 3 月まで芹沢長介氏は、本学で考古学の教鞭を執られる傍ら、初代館長
として資料の収集・保管・展示、調査・研究と凡てにわたり美術工芸館を
牽引してこられました。
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NY展バナー
5
どのような所蔵品があるの?
美術工芸館の収蔵品は 3 つの大きなグループからなります。
〔1〕芹沢銈介の作品
約 3,000 点(他に型紙約 10,000 点)
〔2〕芹沢銈介の蒐集品
約 1,300 点
〔3〕東北福祉大学コレクション
約 360 点
芹沢銈介の作品は、着物、帯地、のれん、壁掛け、風呂敷、卓布、うち
わ、扇子、カレンダー、絵はがきなど生活で使われるもの、屏風、軸、額
絵などの鑑賞用作品、本の装丁、挿絵、蔵書票、マッチボックスのラベル、
ポスター、包装紙、熨斗紙、商標などの商業デザインの分野、鉄行灯、看
板、緞帳、寺院の荘厳布、ステンドグラスのデザイン、建築設計、そして
肉筆画、ガラス絵、板絵、陶器の絵付けと、その多彩さに目を見張ります。
独創的な文様とはれやかながら落ち着いた配色の作品は、どこかなつかし
5 階ロビー
い世界を創り出し、やさしく心に響きます。また所蔵品の中にはこれまで
紹介されることの少なかった下絵や、作品の根幹ともいえる型紙もあり、
それらを完成した型絵染作品と対照させた展示は当館ならではの面白い
ものです。
また、芹沢は世界の民族工芸品のコレクターとしても知られ、蒐集品の
内の約 1,000 点が当館に所蔵されています。アフリカのマスク、染織、木
工、土偶、土器など 180 点、中南米の染織を中心とする資料 150 点、東南
アジア、インドの染織、装飾品 380 点のほか、中近東の敷物、中国、台湾、
朝鮮の染織、日本の染織、絵馬、箪笥、漆器などがあります。どれも人々
の生活を豊かにするために生みだされたものばかり。芹沢はこれらのもの
に創造のエネルギーを感じ、常に身辺に置いて楽しんでいました。
東北福祉大学コレクションは、宮城県のやきものである堤焼と切込焼を
はじめ、日本や東南アジアの染織など芹沢銈介の蒐集を引き継ぎ、東北福
祉大学で購入した品々からなります。特に堤焼コレクションは質のよさが
専門家の間でも高く評価されており、切込二彩、三彩の所蔵は当館が最多
を誇ります。
この膨大な量にのぼる美術工芸品を一度に展示することはできません。
そこで美術工芸館では、年間に 3~4 回の展示替えを行いながらテーマを
決めて陳列し、展覧会を開催しています。展示の変るごとに新たな世界が
広がります。皆さんもぜひ美術工芸館に足を運んで、身近にある大きな感
動を味わってください。
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