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グループワークで学ぶ 「消費者市民社会

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グループワークで学ぶ 「消費者市民社会
相談現場に役立つ情報
第
2
回
グループワークで学ぶ
「消費者市民社会」
● 取材協力 日本消費者教育学会 ● 取材・文 小西
慶太(ライター)
らん ざん
2013年9月5~6日に、埼玉県嵐山町にある独立行政法人国立女性教育会館において、
「2013
年度消費者教育学生セミナー」が開催されました。
このセミナーは1982年に始まり、途中中断はありましたが、2002年以降、毎年開催され続けて
います。今年も全国から大学生、大学院生およそ60名が集い、2日間にわたり消費者教育につ
いて理解を深めました。
続可能な社会の形成に積極的に参画する社会の
広い視野で社会全体に関わっていく
こと。自分だけでなく、まわりの人々や将来生
まれてくる子どもたち、地球環境まで考え、社
セミナーは9月5日13時にスタート。まず、
会の発展と改善に積極的に参加する社会です。
最初の1時間強で3つの講義です。消費者教育
とは何か、消費者市民社会とは何か、そして若者
の消費者トラブルと消費生活相談現場の生々し
実践演習で実際の取り組みを体験する
いレポートという内容でした(表、写真1)
。
ハイペースで進んでいく講義ですが、盛りだ
その具体的な事例に触れるのが、休憩後の実
くさんの内容の中から「消費者市民社会」とい
践演習2つ。まず初めに実践演習1としてNPO
うキーワードがくっきり浮かび上がってきます。
法人「育て上げ」ネットから金銭基礎教育プロ
そのねらいについて、今回のセミナーで中心
グラムの紹介がありました。その中身は、お金
的な役割を果たされた日本女子大学家政学部教
と仕事、さまざまな働き方との関係について、自
授天野晴子先生にお話を聞きました。
発的な気づきを得られるようなプログラムです。
「2002年以降、セミナーのメインを学生たち
その手法を、カードを使ったリアルなシミュ
のグループワークによるワークショップにして、
レーションで体験します。
消費者教育の提案をプレゼンテーションすると
次に実践演習2ではユニーグループ・ホール
いうスタイルで続けてきました。ただ、最初の
ディングス株式会社から、スーパーマーケット
頃は、どうすれば被害にあわないかというレベ
の地球にやさしい環境活動の紹介がありまし
ルにとどまるものも多かった。そこで、自分た
た。この事例を学んだ後に、環境にやさしい文
ちだけがだまされなければいいということでは
房具のPOP広告を実際に作ってみます。
なくて、自分たちの生活世界を社会に広げて深
理念から実践へ。
ここで学生たちは自ら考え、
く考察をしてほしい、社会全体を自分たちでつ
表現する方向に一歩足を踏み出します。
くるという視点を持ってほしいということで、
「消費者市民社会という考え方を理解するま
消費者市民社会をメインテーマにカリキュラム
でのカリキュラムをどう組み立てるかというと
を考えるようにしたのです」
(天野先生)
きに、以前はミニ講義をたくさん組んでいまし
消費者市民社会、それは消費者が公正かつ持
た。でも一方向の講義が続くと学生は疲れてし
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まう。そこで参加型の実践演習を取り入れるよ
野に入れながら依頼をしています」
(天野先生)
うになりました」
(天野先生)
この体験を通じて、学生たちは次のステップ
その代わり、学生たちは事前準備として、
「消
のイメージをつかむのです。
費者市民社会、関連機関・組織・資格とその役
割、法律」について、参考になるウェブサイト
初対面のメンバー同士でディスカッション
や図書資料などであらかじめ学習したうえで参
加することが求められます。
休憩をはさんで16時前後からいよいよワーク
「実践演習は、学生たちの関心が高い企業の
ショップ。参加者は7名ないし8名ずつの全7
実践をひとつ、そして企業以外の、例えばNPO
グループに分かれています。同じ大学から参加
法人などの実践をひとつという形で固まってき
した学生も別々のグループに振り分けられてい
ました。大変なのは、限られた時間内で演習に
るため、ほとんど初対面のメンバーでグループ
できるような事例を探すことです。よい実践を
ワークをすることになります(写真2)
。
行っている団体はたくさんあるのですが、最大
テーマは「消費者市民社会をめざすための消
40分の演習にできそうな事例を探すのが意外に
費者教育の提案」
。誰に向けてどのようなことを
難しい。消費者教育支援センターの消費者教育
何のために教育するのか、その具体的な教材や
用教材資料で優秀賞に選ばれた企業・団体も視
実践方法を考え、グループ全員でプレゼンテー
表
2013年度消費者教育学生セミナー カリキュラム
■ 第1日 9月5日(木)
13:00−13:05【開講挨拶】
13:05−13:20
【講演・演習1】
消費者教育入門
■ 第2日 9月6日(金)
国民生活センター
理事
井守 明央
日本女子大学
家政学部教授
天野 晴子
【ワークショップ2】
※ワークショップ1で検討した訴求対象と訴求方法を踏まえ、
9:00−12:00
各グループで発表に向けた教材・プレゼン資料等を作成
する。
12:00−13:00
<昼 食> 【講演・演習2】
横浜国立大学
13:20−13:50 消費者市民社会における 教育人間科学部教授
消費者の役割
日本消費者教育学会長
西村 隆男
13:00−13:10【プレゼンテーション準備】
【講演】
国民生活センター
13:50−14:10 若者の消費者トラブルの 相談情報部
現状と課題
消費生活相談員
鹿田 正子
【グループ別プレゼンテーション】(10分×7グループ)
13:10−14:50 ※ワークショップで検討した内容についてグループ別に発表
を行い、参加者の投票によって優秀賞グループを選出する。
14:10−14:20 <休 憩>
【実践演習1】
自立した消費者を育成す
るためのNPO法人の取り
14:20−15:00
組み ーニート化予防を目
指した金銭基礎教育プロ
グラムを使ってー
NPO法人「育て上
げ」
ネット若年支援
深谷 友美子
事業部
広域担当部長
ユニーグループ・ホー
【実践演習2】
ルディングス株式会社
持続可能な社会構築に向
15:00−15:40
グループ業務本部
けた企業の取り組み
グループ環境社会
ーお買い物が地球を救うー
貢献部長
15:40−15:50 14:50−15:20【講 評】
15:20−15:40【修了証書・優秀賞グループへの賞状授与】
15:40
【閉 会】
参考:公益財団法人消費者教育支援センター
http://www.consumer-education.jp/2013GS/
百瀬 則子
<休 憩>
【ワークショップ1】
テーマ:消費者市民社会をめざすための消費者教育の提案
15:50−17:00
⑴ワークショップの進め方
日本女子大学
家政学部教授
⑵教材紹介
消費者教育支援センター
柿野 成美 総括主任研究員
天野 晴子
⑶グループディスカッション
※全体テーマに基づきグループ別にテーマを設定し、訴求
対象と訴求方法について
18:00−20:00
横浜国立大学
教育人間科学部教授
西村 隆男
日本消費者教育学会長
<夕食(懇親会)>
写真1 いよいよ開講です!
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とりあえず、司会と書記を決めて、ワークシー
トを活用しながら進めます。各グループにアド
バイザー講師がつきますが、発想とまとめ方は
あくまで学生主体です。
「最初は緊張感でいっぱい。硬いですね。ムー
ドメーカーのような学生がいるグループは早く
溶け込めます。ただ、どんどん時間が迫ってき
ますから、必死になってくる。1日目の夕食後
にはぐっと距離が近づくという感じでしょうか」
(天野先生)
夕食時には懇親会もあり、和んだ雰囲気に。そ
写真2
ワークショップとは、参加者による自主的な共同作業のこ
とです。講義や実践演習、インターネット、書籍などをヒ
ントに作業を進めていきます。
の後は自由時間ですが、各グループともディス
カッション、インターネットや参考資料を活用
した調査や教材作りの実作業を続けました。
結果よりもプロセスに着目する
2日目は午前中いっぱいがワークショップの
作業時間。
午後からは、
グループ別プレゼンテー
ションとなります。
写真3
手作り紙人形を使って小学生に賢い買い物を知ってもらう
という人形劇です。千切りキャベツを買ったが使い切れず、
翌日使おうとしたら中身が腐っていたようです。
「ここでは、プレゼンの表現力や完成度といっ
た結果だけでなく、プロセスを大事にしたいと
思っています。例えば、制作過程でいろいろな人
ションするのです。
の話を聞けたか、まわりの人の話を引き出せた
「ワークショップのよさは、大学も地域も年齢
かというような観点です。消費者教育について
も違う人同士が、ひとつのテーマについて深く
さまざまな人の意見を聞いて、たくさんディス
ディスカッションできることです。最初はぎこ
カッションをしてほしい、ということがワーク
ちないのですが、進んでいくうちに大きな刺激
ショップの大きな目的のひとつです。そのプロ
を受けてどんどんまとまっていきます」
(天野
セスを通じて、自分たちなりに消費者市民社会
先生)
について考えを深めてほしいのです」
(天野先生)
学部も家政学部、教育学部、法学部などさま
果たして、7グループのプレゼンテーションは
ざま。大学院生の中には、豊かな社会人経験を
共同作業の試行錯誤を積み重ね、パワーポイン
もつ人もいます。
トを効果的に使ったり、寸劇(ロールプレーイン
ゴールは翌日、9月6日の13時。それまでに各
グ)を使ったり、工夫を凝らした手法で、フェア
グループ10分の持ち時間に発表する内容をまと
トレードや契約トラブル、食料の大量廃棄など
めなければなりません。さあ、スタート。といっ
の環境問題といった多彩なテーマを自分たちな
ても、まったく白紙のところから活発な意見交
りの表現で伝える熱気あふれるものとなりまし
換というわけにはいかず、最初は手探りです。
た(写真3、4)
。
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発表後、学生と講師の投票によって、最優秀
賞、優秀賞、アドバイザー講師票のみの特別賞
が選出されました(写真5)。
「発表は型にはまらない、学生らしい新しい
発想を期待しています。得票が少なかったから
といって必ずしもよくなかったということでは
ないとしっかり伝えたいですね」
(天野先生)
写真4 こちらは売れ残った大量のから揚げが捨てられて
いることを知ったアルバイトが奮闘するという劇
です。劇を通じて食品ロス問題の一端を知ること
ができます。
参加型の学習で「消費者市民社会」を体感する
概念的だった「消費者市民社会」の理解が現
実の生活の中に落ちてきた――参加した学生た
ちはそんな手応えを感じていたようです。
「消費者教育を進めていくうえでは、一方的な
講義だけではなく、いかに参加型で成果を上げ
ていくか、いかに全員が参加できるか、主催者
側でうまく目配りしながら、そんな環境作りを
進めていく必要があると思います」
(天野先生)
参加型の学習を通じて、学生たちは視野を広
げ、コミュニケーションを深め、情報発信の内
容と方法を自ら考え出して実践しました。この
写真5 最後は表彰式。最優秀賞、おめでとうございます!
活動スタイルこそが、消費者市民社会に参画す
る明日の消費者像にぴったり重なるといえそう
です。
受講者の声
◦子どもを対象に劇を作ったのですが、子どもに
意見を言いづらいかなという感じだったんです
も分かりやすくと思うと、シナリオの言葉の使
けど、役割分担したらみんな一生懸命やってく
い方も考えなきゃいけないし、ちゃんと伝えた
れて、まとめるのも簡単でした。企業の人の視
いことも盛り込まなきゃいけない。そのバラン
点や大学の研究者の視点、学生の視点とか、そ
スを考えるのが難しかったです。印象に残った
れぞれの視点がみられて勉強になりました。
のは、テーマを決める話し合いで、自分では全
◦みんなの意見を踏まえてひとつのものを作り上
然考えつかないようなレベルの意見があって、
げる創造活動自体がいいのかなと思います。声
自分とは違うなって、インパクトを受けました。
が大きい人、小さい人というのは集団になると
ふ せん
◦付箋に自分のやりたいテーマや発表の方法を書
どうしても出てしまうので、そのバランスをど
いて、貼って、グルーピングして絞り込んでい
うとるかが課題かもしれません。重要だと思っ
きました。
「せーの」で決めようと言ったらみ
たのは、いろんな方がいろんな問題意識を持っ
んな同じところで意気投合。最初は58歳の大
ていて、それぞれ違った視点で考えているとい
学院生の方もいらっしゃって、ちょっとジェネ
うところ。消費者教育の中には思った以上に多
レーションギャップを感じたり、逆に1年生は
様性があると感じました。
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