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根室地域におけるサケの自然再生産の現状と評価に関する研究
Title Author(s) 根室地域におけるサケの自然再生産の現状と評価に関す る研究 市村, 政樹 Citation Issue Date 2015-03-25 DOI Doc URL http://hdl.handle.net/2115/58604 Right Type theses (doctoral) Additional Information File Information Masaki_Ichimura.pdf Instructions for use Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 根室地域におけるサケの自然再生産の 現状と評価に関する研究 (Present status and evaluation on natural reproduction of chum salmon in the Nemuro area, Hokkaido, Japan ) 北海道大学大学院水産科学院 海洋生物資源科学専攻 Graduate School of Fisheries Sciences Division of Marine Bioresource and Environmental Science 市 村 政 樹 Masaki Ichimura 平 成 27 年 ( 2015) 目次 第 1章 緒 言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.1 人 工 ふ 化 放 流 事 業 の 歴 史 1.2 野 生 魚 の 現 状 と そ の 重 要 性 1.3 シ ロ ザ ケ の 産 卵 行 動 と 産 卵 環 境 1.4 根 室 海 峡 に 流 入 す る 河 川 の 特 徴 1.5 本 研 究 の 目 的 第 2章 北 海 道 東 部 根 室 海 峡 周 辺 で 採 集 さ れ た 「 サ ケ マ ス 」 の DNA 分 析 に よ る 交 雑 判 別 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ 10 2-1. 材 料 お よ び 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 2.1.1 試 料 と DNA 抽 出 2.1.2 ミ ト コ ン ド リ ア DNA 分 析 2.1.3 核 DNA 分 析 2.1.4 種 特 異 的 な PCR 分 析 2.1.5 人 工 交 雑 個 体 の 親 種 の 確 認 2-2. 結 果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 2.2.1 ミ ト コ ン ド リ ア DNA 分 析 2.2.2 核 DNA 分 析 2.2.3 種 特 異 的 な PCR 分 析 2.2.4 人 工 交 雑 個 体 の 親 種 の 確 認 2.2.5「 サ ケ マ ス 」 の 父 親 種 と 母 親 種 の 確 認 2.2.6 交 雑 個 体 の 外 部 形 態 2-3. 考 察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ 30 2.3.1 DNA 分 析 に よ る 親 種 の 判 別 2.3.2 交 雑 個 体 の 形 態 特 徴 2.3.3 交 雑 個 体 の 出 現 背 景 i 第 3章 3-1. 実 験 水 槽 に お け る シ ロ ザ ケ の 産 卵 行 動 の 観 察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34 材 料 お よ び 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 36 3.1.1 実 験 水 槽 の 概 要 3.1.2 実 験 魚 3.1.3 産 卵 回 数 ・ 放 卵 数 測 定 実 験 3.1.4 河 床 か ら の 湧 出 水 と 産 卵 場 所 3-2. 結 果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 40 3.2.1 産 卵 回 数 お よ び 産 卵 各 回 の 放 卵 数 3.2.2 産 卵 時 に お け る 湧 出 水 の 選 択 性 3.2.3 産 卵 ま で に 要 す る 時 間 3-3. 考 察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 50 3.3.1 産 卵 回 数 と 放 卵 数 3.3.2 シ ロ ザ ケ の 湧 出 水 選 択 性 第 4章 4-1. 根 室 地 域 に お け る シ ロ ザ ケ の 自 然 再 生 産 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52 材 料 お よ び 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 53 4.1.1 産 卵 状 況 4.1.2 産 卵 床 に お け る 生 残 率 の 推 定 4.1.3 産 卵 適 地 の 推 定 4.1.4 シ ロ ザ ケ の 来 遊 数 と 河 川 回 帰 率 4-2. 結 果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59 4.2.1 自 然 産 卵 魚 の 分 布 4.2.2 自 然 産 卵 魚 の 産 卵 時 期 4.2.3 発 眼 卵 の 生 残 率 4.2.4 産 卵 適 地 面 積 4.2.5 各 河 川 に お け る シ ロ ザ ケ の 河 川 回 帰 率 と 遡 上 尾 数 ii 4-3. 考 察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77 4.3.1 自 然 再 生 産 状 況 と 産 卵 適 地 4.3.2 発 眼 卵 の 生 残 率 と 湧 水 の 選 択 状 況 4.3.3 各 河 川 に お け る 野 生 魚 由 来 の 自 然 産 卵 魚 4.3.4 野 生 魚 に よ る 再 生 産 第 5章 総 合 考 察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 82 5.1 根 室 地 域 に お い て 産 卵 す る シ ロ ザ ケ の 現 状 と 問 題 点 5.2 産 卵 時 期 に よ る 野 生 魚 の 資 源 管 理 5.3 地 域 主 体 の 資 源 管 理 の 策 定 摘 要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 89 謝 辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 94 引 用 文 献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 95 iii 第 1 章 1.1 緒言 人工ふ化放流事業の歴史 我 が 国 に お け る サ ケ O n c o r h y c h u s k e t a( 以 下 ,シ ロ ザ ケ と す る )と カ ラ フ ト マ ス O. gorbuscha の 人 工 ふ 化 放 流 事 業 は , 栽 培 漁 業 や 管 理 型 漁 業 の 成 功 例 と み な さ れ て い る ( 帰 山 1 9 9 8 )。 し か し な が ら , 近 年 , 遺 伝 学 , 生 態 学 な ど 様 々 な 視 点 か ら 人 工 ふ 化 放 流 事 業 に よ る 弊 害 も 指 摘 さ れ る よ う に な っ て い る (例 え ば ,永 田 ・ 山 本 2 0 0 4 ) 。人 工 ふ 化 放 流 事 業 が 本 格 的 に 導 入 さ れ る 以 前( 1 8 7 7 ~ 1 8 9 3 年 )の 北 海 道 で の シ ロ ザ ケ の 漁 獲 尾 数 は お よ そ 500〜 700 万 尾 で あ り , そ の ほ と ん ど が 野 生 魚 由 来 の 資 源 で あ っ た ( 小 林 2 0 0 9 )。 ここで,本論文では,ふ化場魚とはふ化場から放流され数年後に回帰している 個体,野生魚とは 1 世代以上にわたり産卵している個体,自然産卵魚とは親がふ 化 場 魚 か 野 生 魚 か 区 別 が つ か な い が 産 卵 し て い る 個 体 と 定 義 し た ( D r. P e t e r S . R a n d , Wi l d S a l m o n C e n t e r 私 信 )。 明治時代に入り,産卵の保護を意図した河川内におけるサケ漁に関する規制が 行われ,加えて「蕃殖場」と呼ばれる区画では監視人を配置するなどの繁殖保護 策 が 行 わ れ た ( 秋 庭 1 9 8 8 )。 さ ら に , 江 戸 時 代 に 新 潟 県 三 面 川 で 行 わ れ て い た 産 卵 場 所 の 造 成 な ど 自 然 再 生 産 を 助 長 し 保 護 す る 方 策 で あ る 「 種 川 の 制 」( 横 川 2 0 0 5 ; 須 藤 1 9 8 5 )に 模 し た 制 度 を 導 入 し た こ と に よ り ,シ ロ ザ ケ の 資 源 は 維 持 さ れ た と 考 え ら れ る 。 そ の 後 , 1 8 8 8( 明 治 2 1 ) 年 に 千 歳 川 に 「 千 歳 中 央 ふ 化 場 」 が 開設されたことにより,人工ふ化放流技術が導入される過程で,こういった自然 再 生 産 を 助 長 す る 施 策 は 急 速 に 後 退 し た( 秋 庭 1 9 8 8 ; 小 林 2 0 0 9 )。シ ロ ザ ケ の 増 殖体制が自然再生産からふ化事業へ施策が転換した背景には,当時,野生魚によ る 稚 魚 の 生 残 率 が ふ 化 事 業 の も の と 比 べ て 1/4~ 1/7 と い う 誤 っ た 判 断 が な さ れ た た め ,野 生 魚 に よ る 資 源 管 理 は 過 小 評 価 さ れ た た め と 考 え ら れ る( 小 林 2 0 0 9 )。 この時期シロザケの生態学的知見は乏しく,増殖・人工ふ化技術研究も見るべき 研 究 は 少 な か っ た( 佐 野 1 9 8 2 )。さ ら に ,1 9 3 4 年 ま で の ふ 化 事 業 は 民 間 ふ 化 場 に よる経営であり,民間ふ化場の経営が捕獲した親魚の売却金に依存していたこと から,ふ化放流よりも魚の捕獲自体を目当てとした経営体もあったためとも言わ れ て い る ( 小 林 2 0 0 9 )。 そ の た め , 本 格 的 な 人 工 ふ 化 放 流 事 業 導 入 後 の , 1 9 0 0 ~ 1 9 7 0 年 ま で の 漁 獲 尾 数 は お よ そ 3 0 0 ~ 5 0 0 万 尾 で あ り ,放 流 事 業 が 展 開 さ れ る 以 1 前 よ り も 低 い 水 準 で 推 移 し た( 帰 山 2 0 0 2 ; 小 林 2 0 0 9 )。そ の 後 ,給 餌 放 流 技 術 の 導 入 と 適 期 放 流 技 術 の 開 発 な ど 人 工 ふ 化 放 流 事 業 の 技 術 革 新 ( Kobayashi 1980; M a y a m a 1 9 8 5 ; K a e r i y a m a 1 9 9 9 )に 加 え ,長 期 的 な 気 候 変 動 と 連 動 し た 要 因 に よ り ( 帰 山 1 9 9 8 ), シ ロ ザ ケ 資 源 は 大 幅 に 増 加 し た と 考 え ら れ て い る 。 そ の 結 果 , 2000 年 代 以 降 の 北 海 道 で の シ ロ ザ ケ の 沿 岸 へ の 来 遊 尾 数 は 年 変 動 が あ る も の の 5 0 0 0 万 尾 近 く に 上 り ( M i y a k o s h i a n d N a g a t a 2 0 1 2 ), 放 流 事 業 開 始 以 前 の 資 源 をはるかに上回っている。 1.2 野生魚の現状とその重要性 ふ化場魚は人為的な選抜による人工授精のため,野生魚のような産卵に参加す る た め の 雄 同 士 の 争 い や ,雌 に よ る 産 卵 場 所 の 選 択 な ど の 自 然 淘 汰( G r o s s 1 9 8 5 , 1 9 9 1 ) が 欠 け て い る ( M c L e a n e t a l . 2 0 0 5 )。 1 9 7 0 ~ 1 9 8 0 年 代 に か け て の 北 海 道 さけ・ますふ化場事業成績書によると,シロザケの人工ふ化放流に使用された親 魚 は ,お よ そ 雄 1 尾 に 対 し 雌 3 尾 で あ る 。人 工 受 精 で の 雄 と 雌 の 使 用 比 率 を 一 対 一 に 近 づ け る な ど 努 力 が な さ れ て い る が ( 石 黒 1 9 9 8 ), 現 在 も 雄 の 受 精 へ の 使 用 に人為的な選択が働いている。国内のシロザケは北米やロシアの野生魚と比べる とハプロタイプ多様度が高いため,遺伝的多様性は大きいと考えられている ( Sato et al. 2004; Beacham et al. 2009) が , こ の 高 い 遺 伝 的 多 様 性 は , 1960 年代から頻繁に行われた発眼卵の移植により固有の河川群への遺伝的攪乱をもた ら し た 可 能 性 が 高 い ( 永 井 ら 2 0 1 2 )。 現 在 の シ ロ ザ ケ の 資 源 状 況 に 多 く の 漁 業 者 が依存している現状において,その資源管理はあくまでも人工ふ化放流事業をベ ースとすることは避けられない。しかしながら,シロザケ資源の持続可能な利用 のためには,人工ふ化放流事業によってもたらされる遺伝学的なリスクなども検 討 す る こ と が 必 要 で あ る ( A l t u k h o v e t a l . 2 0 0 0 ; M o r i t a e t a l . 2 0 0 6 )。 ま た , 近 年,サケ属魚類は海洋から栄養塩などを陸域生態系へもたらす物質循環の担い手 と し て の 重 要 性 も 指 摘 さ れ て い る ( 帰 山 2005; 伊 藤 ら 2004; Koshino et al. 2 0 1 3 )。し か し ,親 魚 の 大 部 分 は 遡 上 前 に 漁 獲 さ れ る の で ,我 が 国 の 野 生 サ ケ 類 に よる物質循環は,河川生態系の構造と機能を維持するためには現時点では十分で な い と 考 え ら れ て い る ( 帰 山 2 0 0 9 )。 し た が っ て , 遺 伝 的 観 点 や 健 全 な 河 川 生 態 系の維持の観点から,自然再生産による資源管理をおろそかにし,ふ化放流魚だ けによる資源管理は好ましくない。これを改善するためには,野生魚による再生 2 産により資源を維持できる環境づくりが必要であり,そのためには現状の自然再 生産の実態を把握しなければならない。 我が国におけるシロザケの多くは人工ふ化放流事業によるものと考えられてい た( 例 え ば ,佐 野 1 9 8 2 ; 秋 庭 1 9 8 8 )。し か し ,近 年 の 研 究 で は ,北 海 道 に お い て 野 生 魚 由 来 の 資 源 の 存 在 が 確 認 さ れ て い る ( 長 谷 川 ら 2 0 1 3 )。 北 海 道 内 の 流 路 延 長 8 km 以 上 の 230 余 り あ る 河 川 の な か で , 自 然 産 卵 魚 が 確 認 さ れ た 河 川 は 100 以 上 に の ぼ る 。 そ の う ち , 放 流 が 行 わ れ て い な い 河 川 は 50~ 60 河 川 で あ り , そ の バ イ オ マ ス は 小 さ い と 推 定 さ れ て い る ( Miyakoshi et al. 2012) も の の , 現 時 点で自然産卵魚の保護は極めて現実的である。また,高度成長期以降,治水・利 水 を 目 的 と し た 河 川 工 事 が 進 み ,全 国 の 一 級 河 川 の 中 下 流 部 の 川 岸 の う ち 約 2 0 % が 人 工 化 さ れ , ダ ム や 堰 な ど の 河 川 を 横 断 す る 工 作 物 も 増 加 し ( 中 村 2 0 1 3 ), 北 海 道 に お け る 河 川 地 形 の 多 様 度 は , 1950 年 代 か ら 2000 年 代 に か け て 平 均 し て 7 3 % 程 度 低 下 し た ( 福 島 ら 2 0 0 5 )。 そ の た め , シ ロ ザ ケ が 再 生 産 可 能 な 河 川 環 境 は,以前と比べて大幅に減少しているものと推察されるが,これを改善し,自然 再生産による資源の造成を図ることも,現状においてある程度可能であると考え られる。 アメリカ合衆国におけるサケ科魚類の人工ふ化放流事業は,野生魚が減少する 要因となった乱獲やダム建設などの影響から,漁獲量を維持,保証するための安 易 な 政 治 的 な 手 段 と し て も 利 用 さ れ て い た ( B r o w n 1 9 9 5 )。 一 方 , 我 が 国 に お い て は ,大 規 模 な 河 川 工 事 が 行 わ れ る 以 前 か ら 人 工 ふ 化 放 流 事 業 が 展 開 さ れ て お り , 政治的手段としてではなく,純粋に資源増殖を目的としてものであったと考えら れ る 。し か し な が ら ,1 9 7 0 年 以 前 に は シ ロ ザ ケ の 自 然 再 生 産 に 関 す る 研 究 は 少 な く ( 佐 野 1 9 5 5 ; 佐 野 ・ 長 沢 1 9 5 8 ; 小 林 1 9 6 8 ), そ の 目 的 は , あ く ま で 低 迷 し て い た 人 工 ふ 化 放 流 事 業 に 応 用 す る た め の も の で あ っ た( 佐 野 1 9 8 2 ; 秋 庭 1 9 8 8 )。 さらに,ふ化放流事業において河川で捕獲されたシロザケのうち,余剰親魚が生 じた場合,河川へ再放流することなく売却されていた。したがって,これらの研 究や事業において自然再生産による資源管理は考えられていなかったと推察され る。シロザケの自然再生産による繁殖保護が継続し,人工ふ化放流事業と併用さ れ て い た な ら ば ,1 9 0 0 ~ 1 9 7 0 年 ま で の 長 期 に わ た る 資 源 低 迷 は 避 け ら れ た と 考 え られる。さらに,自然再生産するシロザケへの配慮から北海道における河川管理 体 制 お よ び そ の 保 全 方 法 も 大 き く 変 わ っ て い た 可 能 性 も あ る ( 帰 山 2002; 小 林 3 2 0 0 9 )。 1.3 シロザケの産卵行動と産卵環境 シロザケの自然再生産の実態を把握するためには,その産卵行動および産卵環 境 に 関 す る 基 礎 的 な 情 報 が 不 可 欠 で あ る 。 Duker (1977) お よ び Schroder (1973, 1 9 8 2 ) に よ る と ,シ ロ ザ ケ の 雌 個 体 は ,河 川 の 下 流 か ら 上 流 方 向 に か け ,4 〜 6 回 に分けて産卵を行い,一つの産卵床を形成する。サケ科魚類の産卵床内における 生残率の調査を進める上で重要である孕卵数および産卵回数については,これま で に 多 く の 知 見 が あ る ( 例 え ば , S c h r o d e r 1 9 8 2 )。 し か し な が ら , 自 然 河 川 に お いて,正確な産室場所およびその場所での各回の産卵数などを計測することは物 理 的 に 困 難 で あ る た め , そ の 研 究 例 が 少 な い ( Hawke 1978; Gaudemar et al. 2 0 0 0 )。ま た ,サ ケ 科 魚 類 が 産 卵 場 所 を 選 定 す る 条 件 と し て ,産 卵 場 所 の 流 速 ,水 深,底質および河床からの湧昇流などがあげられており,産卵場所は河床が砂礫 の 場 所 が 好 ま れ る ( 例 え ば , Bjornn and Reiser 1991) 。 さ ら に , シ ロ ザ ケ は 河 床から地下水や伏流水が湧きだす場所を選んで産卵するが,カラフトマスは河川 水 が よ く 浸 透 す る 場 所 を 選 択 す る と さ れ て い る( 佐 野・長 沢 1 9 5 8 ; 小 林 1 9 6 8 )。 矢 野 ら (2012) は , 砂 州 地 形 に よ り 発 生 す る 湧 水 ( 伏 流 水 ) が , 産 卵 環 境 に 寄 与 し て い る と 報 告 し て い る が ,細 部 に わ た る 実 証 は 自 然 河 川 で は 困 難 な 部 分 が 多 い 。 1.4 根室海峡に流入する河川の特徴 石 城 ( 1984) に よ る と , 北 海 道 東 部 根 室 海 峡 に 流 入 す る 河 川 は , 標 津 町 内 に あ る 忠 類 川 と 伊 茶 仁 川 を 境 に 2 つ 対 照 的 な 河 川 形 態 が 存 在 す る( 図 1 - 1 )。そ の た め , 河川ごとに現状を把握し,対策を検討する必要がある。忠類川以北の知床半島の 河川では,河床勾配が急であり,河川形態はほぼ全域が一つの蛇行内に複数の瀬 と 淵 が 存 在 し 白 瀬 で 淵 が 連 結 し て い る Aa 型 で あ り , 海 岸 線 近 く で は , 一 つ の 蛇 行 内 に 複 数 の 瀬 と 淵 が 存 在 す る Bb 型 の と こ ろ も 見 ら れ る が , 水 面 勾 配 が 緩 や か な B c 型 は 見 ら れ な い 。一 方 ,忠 類 川 の 南 に 隣 接 す る 伊 茶 仁 川 よ り 南 の 河 川 で は , 低 湿 な 原 野 の 湧 き 水 か ら は じ ま る た め , 標 津 川 の 上 流 域 を 除 い て Aa 型 の 部 分 は な く ,部 分 的 に B b 型 の と こ ろ が 見 ら れ る 他 は ,ほ と ん ど が B c 型 の 流 れ に な っ て い る ( 市 村 未 発 表 )。 つ ま り , 忠 類 川 以 北 の 河 川 で は , 通 常 の 河 川 の 上 流 域 が そ のまま海へ流れ込んでおり,伊茶仁川以南の河川は典型的な湿原地帯の河川とい 4 える。この河川形態の違いを反映し,そこに住む魚類相が違う。例えば,イトウ H u c h o p e r r y i の 生 息 域 は ,伊 茶 仁 川 以 南 の 湿 原 地 帯 の 河 川 で あ り ,忠 類 川 以 北 で は 確 認 さ れ て い な い 。ま た ,ア メ マ ス Salvelinus leucomaenis も ,伊 茶 仁 川 以 南 では全ての河川で確認されているものの,忠類川以北ではごくまれに生息が確認 さ れ て い る 程 度 で ( 市 村 未 発 表 ), そ の 繁 殖 は 確 認 さ れ て い な い ( 石 城 1 9 8 4 )。 シロザケの産卵場所は,忠類川以北の河川では,ほぼ河口域から産卵が確認され ているのに対し,伊茶仁川以南の河川では中流域から上流域で確認されている。 さらに,標津地域の河川においてシロザケが産卵を行っている河川について詳し く見ると,その要因は不明であるが,上流域の産卵適所がまったく利用されない 河 川 が 複 数 あ る 。一 方 ,ふ 化 場 近 辺( 図 1 - 1 )に お い て は 産 卵 親 魚 の 分 布 密 度 が 高 く,雄による雌の産卵を阻害する行動や雌同士の繁殖競争が頻繁に観察されてい る。さらに,同河川ではすでに形成された産卵床で再び産卵が行われる重複産卵 が 確 認 さ れ ,そ こ で は 掘 り 返 し に よ る 卵 の 流 失 が 観 察 さ れ て い る( 市 村 未 発 表 )。 したがって,根室海峡に流入する河川の将来にわたる自然再生産による資源の管 理体制を確立する上で,それら河川の自然再生産状況および産卵環境を定量的に 評価することが必要不可欠である。 知床半島内の河川ではダムなどの人工工作物によりサケ科魚類が遡上障害を受 け て い る( 例 え ば ,横 山 ら 2010)。そ の た め ,知 床 半 島 で は シ ロ ザ ケ と カ ラ フ ト マ ス , 両 種 が 狭 い 範 囲 で 重 複 し て 産 卵 し て い る 河 川 も 多 い ( 小 宮 山 2 0 0 3 )。 シ ロ ザケおよびカラフトマスは通常,同種間でペアリングを行うが,雄が異種の雌に 対 し て 求 愛 行 動 を す る ケ ー ス も ま れ に 観 察 さ れ て い る 。根 室 海 峡 で は , 「サケマス」 と呼ばれるシロザケとカラフトマスの交雑種と考えられている個体も漁獲されて いるが, 「 サ ケ マ ス 」個 体 に 関 す る 遺 伝 学 的 分 析 結 果 は な く ,そ の 親 種 の 特 定 は さ れていない。 「 サ ケ マ ス 」が 交 雑 個 体 で あ れ ば ,こ れ ら が 自 然 環 境 下 に お い て シ ロ ザケおよびカラフトマスと戻し交配することにより,さらには人工ふ化の現場で 種 を 見 誤 る な ど の 人 為 的 ミ ス よ り ,遺 伝 子 浸 透( 向 井 2 0 0 1 )が 起 こ り ,遺 伝 的 な 攪乱およびその資源に影響する可能性も考えられる。 1.5 本研究の目的 我が国のサケ属魚類の野生魚による再生産は,効率的なふ化事業を続ける上で も,河川ごとの遺伝的固有性を維持する上でも,また河川流域の生物多様性と生 5 物 生 産 力 を 高 め る 視 点 か ら も , 重 要 で あ る ( 帰 山 2 0 0 2 )。 し た が っ て , 効 率 的 な ふ化放流事業の推進と合わせて,野生魚をどのように保全して維持させるかは, 我が国のシロザケ資源の持続的利用と適正管理における重要なテーマである(宮 腰 2 0 1 4 )。 シロザケの野生魚の保全を考える上で,産卵場所となり,さらに稚魚の育成場 所となる河川環境の存在は極めて重要である。北海道では,流路延長,勾配,水 量,水温,産卵場所となる河床材料など自然要因に加え,ダムなどの工作物や河 川改修などの人為的な作用により,河川ごとにその構造が異なる。また,シロザ ケの人工ふ化放流事業による放流数,河川捕獲の状況,さらには沿岸での漁獲圧 などの水産業に関わる諸条件も河川により異なる。そのため,それぞれの地域, 河川ごとに産卵環境や人為的な影響などの基礎的データの積み重ね,その実態を 明らかにし,それぞれの地域,河川に即したきめ細やかな方策を打ち出し,野生 魚の保全を図るべきである。 標 津 町 で は , 1892 年 に 標 津 川 , 薫 別 川 お よ び 忠 類 川 に , そ し て 1900 年 に 伊 茶 仁 川 に ふ 化 場 が 建 設 さ れ た ( 標 津 漁 業 協 同 組 合 1 9 8 8 )。 忠 類 ふ 化 場 は 採 卵 成 績 が 悪 か っ た た め 1 8 9 8 年 に 廃 止 さ れ ,1 9 3 4 年 に 再 開 し 捕 獲 と 採 卵 の み 行 わ れ て い る が ( 秋 庭 ・ 末 武 1 9 8 4 ), 他 の 河 川 で は 継 続 的 に ふ 化 放 流 事 業 が 行 わ れ て き た 。 そ の結果として,現在,標津川,伊茶仁川,忠類川,薫別川および元崎無異川の 5 水 系 に あ る ふ 化 場 か ら , 毎 年 約 7,500 万 尾 の シ ロ ザ ケ 稚 魚 が 放 流 さ れ て い る 。 標 津 町 に お け る シ ロ ザ ケ の 漁 獲 尾 数 は , 1990 年 代 に は 600 万 尾 近 く で あ っ た 。 し か し な が ら , 放 流 数 に 大 き な 変 動 が な い に も か か わ ら ず , 近 年 の 漁 獲 尾 数 は 200 万 尾 前 後 と 3 分 の 1 近 く に 減 少 し て お り ,特 に 前 期 群 の 漁 獲 尾 数 が 減 少 し て い る ( 図 1-2) が , そ の 要 因 に つ い て は 不 明 で あ る 。 標 津 町 内 で 漁 獲 さ れ る シ ロ ザ ケ の多くは,北海道内の他の地域同様に人工ふ化放流事業によるものと考えられて い る が , 標 津 町 内 伊 茶 仁 川 に 遡 上 す る シ ロ ザ ケ の う ち , 11 ~ 3 3 % は 野 生 魚 で あ る と の 報 告 も あ る ( 森 田 ら 2 0 1 3 b )。 本研究は,根室地域のシロザケの人工ふ化放流事業と野生魚の共存を可能とす る資源保全と持続的利用の方策を提言することを目的とし,シロザケの自然再生 産の現状を評価した。第 2 章では,シロザケの自然産卵魚に対する他種による遺 伝的侵入とその要因を知るため,シロザケとカラフトマスの交雑の可能性がある 道東地域で「サケマス」と呼ばれる個体の遺伝学的な分析を行い,外部形態によ 6 るその判別を試みた。第 3 章では,シロザケがどのような河川環境を選択して産 卵するかを明らかにするため,実験用人工河川に産卵環境を再現し,シロザケの 産卵行動,産卵回数と各産卵時の放卵数の関係および湧水,河川浸透水による産 卵場所選択などの基礎的なデータを収集した。第 4 章では,標津地域各河川にお けるシロザケの自然再生産の実態と発眼卵の生残率および各河川の産卵適地面積 を明らかにした。これらによって現在の自然再生産状況を精査し,野生魚による 資源維持の可能性を検討した。総合考察では,以上を総括し,根室地域の河川に おける人工ふ化放流事業の枠組みの中で野生魚を増加させる方策を検討した。 7 図 1-1. 標 津 地 域 に お け る 河 川 と ふ 化 場 の 位 置 . 8 図 1-2. 標 津 町 に お け る シ ロ ザ ケ 月 別 漁 獲 数 の 経 年 変 化 .標 津 漁 業 協 同 組 合 さ け 水 揚 げ日報より作成. 9 第 2 章 北海道東部根室海峡周辺で採集された「サケマス」の DNA 分 析 に よ る 交 雑 判 別 シロザケとカラフトマスは北日本における漁業の重要魚種であるが,その資源 の 多 く は 古 く か ら 行 わ れ て い る 人 工 ふ 化 事 業 に よ る と こ ろ が 大 き い ( 永 田 2009; 小 林 2 0 0 9 )。 北 海 道 に お け る 産 卵 の 盛 期 は , カ ラ フ ト マ ス が 9 月 中 旬 か ら 1 0 月 中 旬 , シ ロ ザ ケ が 1 0 月 か ら 11 月 で あ り ( 眞 山 1 9 8 9 ; 永 田 2 0 0 3 ; 加 藤 2 0 0 2 ), カラフトマスがやや早い傾向があるものの,産卵時期は重複する。したがって, 自然環境下で交雑する可能性がある。 第 2 次 性 徴 発 現 時 の 外 部 形 態 に お い て ,シ ロ ザ ケ は 背 部 と 鰭 に 黒 点 が な く ,赤 , 黄 , 紫 色 が 混 じ る 雲 状 斑 が 現 れ る ( 眞 山 1 9 8 9 ; 永 田 2 0 0 3 ; 加 藤 2 0 0 2 )。 一 方 , カラフトマスは背部と尾鰭に大きな楕円形の黒点があり,婚姻色は頭部と背部が 黒 っ ぽ い 灰 色 , 体 側 は 赤 紫 が か っ た 茶 色 で あ り , 腹 部 は 白 い ( 加 藤 2002; 眞 山 1 9 8 9 )。ま た ,産 卵 期 の 雄 は「 背 っ ぱ り 鱒 」と も 呼 ば れ ,体 が 側 偏 し 背 鰭 前 の 背 部 が 著 し く 隆 起 す る ( S u s u k i e t a l . 2 0 1 4 )。 こ れ ま で , 根 室 海 峡 周 辺 の 海 域 お よ び 河川ではシロザケの体型でありながら腹部が白く婚姻色が不明瞭な個体,また, カラフトマスの体型でありながら体側に赤の雲状斑が出現する個体,さらに尾鰭 に小黒点がある個体など両種の混合型,もしくは両種にはない特徴がある個体が 採 集 さ れ て い る ( 小 宮 山 2 0 0 3 )。 こ れ ら を 漁 業 関 係 者 は シ ロ ザ ケ と カ ラ フ ト マ ス の交雑個体として「サケマス」と呼称している。このような個体は,北米大陸ブ リ テ ッ シ ュ コ ロ ン ビ ア に お い て も 採 集 さ れ て い る( H u n t e r 1 9 4 9 )。北 太 平 洋 で も シ ロ ザ ケ と カ ラ フ ト マ ス の 交 雑 個 体 と み ら れ る 「シ ロ マ ス 」と 呼 称 す る 個 体 が 採 集 され,アイソザイム分析の結果,シロザケとカラフトマスの交雑個体とそれらの 個 体 の 戻 し 交 配 し た 個 体 で あ っ た こ と が 報 告 さ れ て い る( 沼 知 ら 1 9 7 9 )。さ ら に , 中部ベーリング海で採集された交雑個体(シロマス)と推察される雌 1 尾は,ミ ト コ ン ド リ ア DNA (mtDNA)と 核 DNA 分 析 の 結 果 , 親 種 が シ ロ ザ ケ 雌 と カ ラ フ ト マ ス 雄 の 交 雑 個 体 で あ っ た ( A b e e t a l . 2 0 0 3 )。 こ の よ う に , 外 洋 域 で 採 集 さ れ た「シロマス」個体は交雑個体であることが遺伝的に確認されている。一方,沿 岸で採集される「サケマス」個体に関する遺伝学的分析結果はなく,その親種の 特定はされていない。 「 サ ケ マ ス 」が 交 雑 個 体 で あ れ ば ,こ れ ら が シ ロ ザ ケ お よ び カラフトマスと交雑することにより遺伝子浸透が起こり,遺伝的な攪乱およびそ 10 の 資 源 に 影 響 す る 可 能 性 も 考 え ら れ る ( 向 井 2 0 0 1 ; B e r n a t c h e z e t a l . 1 9 9 5 )。 ま た,食品としての利用においては,適切な表示を困難とする要因にもなる。その ため,交雑個体を判別する方法を確立させ,その出現をモニターすることは重要 である。 そ こ で ,本 章 で は「 サ ケ マ ス 」が 交 雑 個 体 で あ る か ど う か に つ い て D N A 解 析 手 法 を 用 い て 検 討 し ,「 サ ケ マ ス 」 の 核 D N A を 調 べ る こ と に よ り 交 雑 個 体 で あ る か ど う か を 推 測 し た 。 さ ら に , mtDNA を 調 べ る こ と に よ り 母 親 種 を 推 測 し た 。 ま た,遺伝的に交雑が確認された個体の外部形態における特徴を明らかにし,その 出現背景について考察した。 11 2-1 材料および方法 2.1.1 試 料 と DNA 抽 出 2005~ 2009 年 の 秋 に 根 室 海 峡 地 域 の 沿 岸 ま た は 河 川 で 採 集 さ れ , 外 部 形 態 か ら 漁 業 関 係 者 が「 サ ケ マ ス 」と 判 断 し た 11 尾 を 用 い た( 表 2 - 1 , 図 2 - 1 )。ま た , 同 時 期 ,同 海 域 で 採 集 さ れ た シ ロ ザ ケ 5 0 尾 お よ び カ ラ フ ト マ ス 2 1 尾 を 標 準 サ ン プルとして用いた。持ち帰った「サケマス」の尾叉長,体重および生殖腺重量を 測定した後,側線鱗数および鰓耙数を計数した。同時に採取した鱗を用いて年齢 査 定 を 行 っ た 。ま た , 「 サ ケ マ ス 」の 体 型 ,婚 姻 色 ,尾 鰭 や 背 面 に お け る 黒 点 の 有 無および雄については背部の張り出しの度合いを観察した。また,シロザケ雄と カラフトマス雌,シロザケ雌とカラフトマス雄の組み合わせで人工交雑を行い, 得 ら れ た 後 代 ( 雑 種 F1) の 稚 魚 そ れ ぞ れ 3 尾 を 交 雑 個 体 の 標 準 サ ン プ ル と し た 。 測 定 し た「 サ ケ マ ス 」,シ ロ ザ ケ お よ び カ ラ フ ト マ ス か ら 筋 肉 片 を 採 取 し ,冷 凍 保 存 (- 30℃ )し た 。 こ の 筋 肉 片 か ら 20-30 mg の 組 織 を 切 り 出 し , DNA 抽 出 キ ッ ト ( Quick Gene 810, 富 士 フ ィ ル ム 社 ) に よ っ て DNA を 抽 出 し た 。 2.1.2 ミ ト コ ン ド リ ア DNA 分 析 シ ロ ザ ケ お よ び カ ラ フ ト マ ス の 標 準 サ ン プ ル に つ い て ,m t D N A の AT P a s e 6 お よ び NADH3 の 領 域 を 用 い て 分 析 し た 。 各 領 域 を 増 幅 す る プ ラ イ マ ー と し て , AT P a s e 6 に は P 0 1 と P 0 2 を , N A D H 3 に は P 2 1 と P 2 2 を ( O o h a r a a n d O k a z a k i 1 9 9 6 )そ れ ぞ れ 用 い た( 表 2 - 2 )。Ta q P o l y m e r a s e に は Ta k a r a E X Ta q T M H S( タ カ ラ バ イ オ 社 ) を , ポ リ メ ラ ー ゼ 連 鎖 反 応 (PCR) に は サ ー マ ル サ イ ク ラ ー ( G e n e A m p P C R S y s t e m 9 7 0 0 , A p p l i e d B i o s y s t e m s 社 )を 用 い た 。反 応 溶 液 は , d N T P s 5 0 n m o l , 各 プ ラ イ マ ー 2 5 p m o l , 付 属 の b u f f e r 2 . 5 μ l , Ta q p o l y m e r a s e 2.5 units, 粗 全 DNA 溶 液 を 含 む 25 μl と し た 。 反 応 条 件 は 94℃ で 2 分 加 熱 後 , 熱 変 性 94℃ 30 秒 , ア ニ ー リ ン グ 55℃ 30 秒 , 伸 長 72℃ 2 分 の サ イ ク ル を 30 回 行 い , 最 後 に 72℃ で 7 分 の 伸 長 を 追 加 し た 。 PCR 産 物 は , 1.5% ア ガ ロ ー ス ゲ ル ( NuSieve3:1, タ カ ラ バ イ オ 社 ) で 電 気 泳 動 後 , エ チ ジ ウ ム ブ ロ マ イ ド で 染 色 し て増幅産物を確認した。 PCR 増 幅 の 再 現 性 が 良 好 な 領 域 に つ い て , 塩 基 配 列 を 決 定 し た 。 PCR 産 物 を GFX フ ィ ル タ ー ( Amersham Bioscience 社 ) に よ り 精 製 し た 後 , BigDye Te r m i n a t o r Ve r 3 . 1 C y c l e s e q u e n c i n g k i t ( A p p l i e d B i o s y s t e m s 社 ) と P C R に 用 12 い た 同 じ プ ラ イ マ ー を 用 い て ,シ ー ケ ン ス 反 応 を 行 っ た 。A B I 3 1 3 0 X L ジ ェ ネ テ イ ッ ク ア ナ ラ イ ザ( A p p l i e d B i o s y s t e m s 社 )を 用 い て シ ー ク エ ン ス 反 応 し た 試 料 を 電気泳動し塩基配列を決定した。 2.1.3 核 DNA 分 析 シ ロ ザ ケ お よ び カ ラ フ ト マ ス の 標 準 サ ン プ ル に つ い て , 核 DNA の 各 領 域 を 増 幅 す る た め , rDNA 領 域 に は プ ラ イ マ ー KP2 と 2.8S を ( Philips et al. 1992) 用 い , ま た , ニ ジ マ ス O . m y k i s s で 報 告 さ れ て い る ( D a l l a Va l l e e t a l . 2005) ア ロ マ タ ー ゼ B-1 遺 伝 子 の 塩 基 配 列 を も と に , イ ン ト ロ ン 領 域 を 増 幅 す る プ ラ イ マ ー を 新 た に 設 計 し , PCR 増 幅 で き る か 検 討 し た 。 な お , PCR は 上 記 mtDNA 分 析 と 同 じ 条 件 で 行 っ た 。 再 現 性 よ く PCR 増 幅 で き た 領 域 に つ い て , 標準サンプルのシロザケとカラフトマス 4 尾ずつの塩基配列分析を行った。 PCR 産 物 を 上 記 方 法 と 同 様 に 精 製 後 , TOPO TA Cloning Kit ( Invitrogen 社 ) を 用 い て サ ブ ク ロ ー ニ ン グ し た 。 形 質 転 換 し た 大 腸 菌 8 ク ロ ー ン か ら M13 と M13R の プ ラ イ マ ー に よ っ て PCR 増 幅 さ せ , 同 プ ラ イ マ ー を 用 い て 上 記 方 法 で 塩基配列分析を行った。 2.1.4 種 特 異 的 な PCR 分 析 種 特 異 プ ラ イ マ ー を 用 い た P C R に よ る 種 判 別 手 法 を 開 発 す る た め ,m t D N A 分 析 と 核 DNA 分 析 に よ っ て 得 ら れ た 塩 基 配 列 か ら 遺 伝 子 解 析 ソ フ ト DNA space (日立社)を用いてシロザケとカラフトマスで異なる塩基部位を探索した。この 情 報 を も と に , シ ロ ザ ケ と カ ラ フ ト マ ス 特 有 の 塩 基 が 3’ 末 端 に 位 置 す る よ う に さ ま ざ ま な プ ラ イ マ ー を 設 計 し た 。 検 討 し た 領 域 の forward と reverse の プ ラ イ マ ー と 設 計 し た シ ロ ザ ケ 種 特 異 的 な プ ラ イ マ ー に よ っ て , P C R 分 析 を 行 っ た 。種 特 異 的 な P C R 産 物 の 再 現 性 を 高 め る た め ,ア ニ ー リ ン グ 温 度 を 5 5 ℃ か ら 6 0 ℃ ま で変えて比較検討した。 2.1.5 人工交雑個体の親種の確認 シロザケ精子とカラフトマス卵およびシロザケ卵とカラフトマス精子を人工授 精 し ,ふ 化 さ せ て 卵 黄 が 吸 収 さ れ る ま で 飼 育 し た 。開 発 し た m t D N A と 核 D N A の PCR 法 を 用 い た 親 種 の 判 別 が 有 効 で あ る か 確 認 す る た め , こ れ ら を 材 料 に PCR 13 を 行 い ,そ の 結 果 か ら 親 の 種 を 判 別 し た 。併 せ て ,シ ロ ザ ケ と カ ラ フ ト マ ス の D N A を 等 量 ず つ 混 ぜ て , 上 記 の PCR 分 析 を 行 っ た 。 14 図 2-1. 根 室 地 域 の 沿 岸 お よ び 河 川 で 捕 獲 さ れ た 「 サ ケ マ ス 」 の 外 部 形 態 写 真 . 15 表 2-1. 2005 年 か ら 2009 年 に 根 室 地 域 の 沿 岸 お よ び 河 川 で 捕 獲 さ れ た 「 サ ケ マ ス 」 の生物情報. Sample ID Sakemasu1 Sakemasu2 Sakemasu3 Sakemasu4 Sakemasu5 Sakemasu6 Sakemasu7 Sakemasu8 Sakemasu9 Sakemasu10 Sakemasu11 Sampling date 2008/9/10 2008/9/13 2008/9/22 2008/10/15 2008/10/19 2008/10/19 2008/10/24 2007/9/22 2007/10/30 2005/10/8 2009/9/19 Sampling location Shibetsu R. Shibetsu R. Coast of Shibetsu Shibetsu R. Shibetsu R. Shibetsu R. Shibetsu R. Uebetsu R. Shibetsu R. Shibetsu R. Ichani R. 16 Fork length (mm) 630 558 634 648 680 634 652 614 610 521 488 Body weight (g) 2895 1773 3090 2625 3035 2490 2805 2445 2230 1564 995 Sex Age female 3 male 2 female 2 male 4 female 4 female 4 female 4 male no data female 2 female 1 male 1 表 2-2. シ ロ ザ ケ と カ ラ フ ト マ ス の 種 特 異 的 な プ ラ イ マ ー 情 報 . Primer set 1)ATPase6 Primer name P01 ChumATPSSP P02 Primer Sequence 5'-3' AAACTGACCATGAACCTAAGCTTCTTCGACCA TCTTATCACCCTAAACATACTGtGA GCTGCTGTAGCAATTAGTTG 2) NADH3 P21 ChumND3SSP P22 CGATATGGCATAATCTTATT AGTGCGGATTTGACCCACTAGGGgCC AGACCGGGTGATTGGAAGTC 3) ITS2 ChumITS2SSP PinkITS2SSP 2.8S GCCCGCGTTACGCATGTGtTG GCCTTCGTCCCCCTAAGgTA ATATGCTTAAATTCAGCGGG 4) Aromatase B1 OmAromaB-1-5F1 OmAromaB-1-6R1 TGCCTCTCAACGGTCAGTGG ATAGCAGCTCTTTCTCTGAG 17 2-2 2.2.1 結果 ミ ト コ ン ド リ ア DNA 分 析 シ ロ ザ ケ お よ び カ ラ フ ト マ ス の 標 準 サ ン プ ル で mtDNA の PCR 分 析 を 行 っ た 。 そ の 結 果 , AT P a s e 6 お よ び N A D H 3 は い ず れ も 再 現 性 よ く 増 幅 で き た 。 し た が っ て ,親 種 の 判 別 に 利 用 す る 種 特 異 P C R の 開 発 に は こ れ ら の 領 域 を 用 い た 。こ れ ら の 塩 基 配 列 情 報 は , DDBJ/EMBL/GenBank に AB523886 か ら AB523901 お よ び AB524887 か ら AB524901 と し て そ れ ぞ れ 登 録 し た 。 2.2.2 核 DNA 分 析 P C R 分 析 の 結 果 ,核 D N A で は 増 幅 率 が 高 か っ た I T S 1 と I T S 2 を 含 む r D N A 領 域 を 用 い る こ と に し ,ITS1 と ITS2 を 含 む 領 域 の 塩 基 配 列 を 決 定 し た 。こ れ ら の 塩 基 配 列 情 報 は , DDBJ/EMBL/GenBank に AB524075 か ら AB524078 と し て 登 録した。 ま た ,ニ ジ マ ス ア ロ マ タ ー ゼ B - 1 遺 伝 子 の 第 2 イ ン ト ロ ン を 増 幅 す る よ う 設 計 し た プ ラ イ マ ー セ ッ ト 4( 表 2-2) に よ っ て , シ ロ ザ ケ と カ ラ フ ト マ ス で 安 定 し て P C R 増 幅 産 物 が 得 ら れ た ( 図 2 - 2 )。 P C R 産 物 の 塩 基 配 列 を 比 較 し た と こ ろ , シ ロ ザ ケ と カ ラ フ ト マ ス の 間 に 約 190 bp の 欠 失 挿 入 が 見 ら れ た 。 ま た , シ ロ サ ケ の 個 体 間 で こ れ と は 別 に 1 0 b p の 欠 失 挿 入 が 見 ら れ た ( 図 2 - 3 )。 2.2.3 種 特 異 的 な PCR 分 析 シ ロ ザ ケ お よ び カ ラ フ ト マ ス の 標 準 サ ン プ ル の AT P a s e 6 領 域 と N A D H 3 領 域 のアライメント結果,および種特異的になるように設計したプライマーの位置と シ ー ケ ン ス を ,図 2 - 4 , 2 - 5 に 示 す 。3 末 端 に シ ロ ザ ケ 特 有 の 塩 基 が く る よ う に し , 更に 3 末端から 3 番目の塩基がミスマッチになるように塩基を変えてプライマー を 設 計 し た ( 表 2 - 2 )。 N A D H 3 領 域 を 増 幅 す る プ ラ イ マ ー と シ ロ ザ ケ 特 異 的 な プ ラ イ マ ー を 組 み 合 わ せ た マ ル チ プ レ ッ ク ス PCR を 行 う こ と に よ り , シ ロ ザ ケ で は 約 300 bp と 約 500 bp の 2 本 の バ ン ド , カ ラ フ ト マ ス で は 約 500 bp の 1 本 の バ ン ド が 確 認 さ れ た ( 図 2 - 6 )。 ま た , 同 様 に AT P a s e 6 領 域 を 増 幅 す る プ ラ イ マ ー と ,シ ロ ザ ケ 特 異 的 な プ ラ イ マ ー を 組 み 合 わ せ て P C R を 行 う こ と に よ り ,シ ロ ザ ケ で は 約 280 bp と 約 480 bp の 2 本 の バ ン ド , カ ラ フ ト マ ス で は 約 480 bp の 1 本のバンドが確認された。様々なプライマーを設計してアニーリング温度を変 18 え て P C R に よ り 増 幅 を 行 っ た が ,再 現 性 よ く 増 幅 産 物 が 得 ら れ た の は ,ア ニ ー リ ン グ 温 度 を 55℃ と し て 表 2-2 に 示 し た プ ラ イ マ ー に よ る PCR の み で あ っ た 。 標 準 サ ン プ ル の シ ロ ザ ケ お よ び カ ラ フ ト マ ス に 対 し て , 両 領 域 の PCR で 種 を 判 別 したところ,全て外部形態の種判別結果と一致した。 決 定 し た ITS1 と ITS2 を 含 む rDNA 領 域 の 塩 基 配 列 と , す で に 登 録 さ れ て い る 塩 基 配 列( AF170538 と AF170538)も( Presa et al. 2002)併 せ て ア ラ イ メ ン ト分析を行い,シロザケとカラフトマスをそれぞれ種特異的に増幅するプライマ ー セ ッ ト を 複 数 設 計 し た 。P C R で 増 幅 さ れ た 種 特 異 的 な プ ラ イ マ ー の 塩 基 配 列 を 表 2-2 に , そ の プ ラ イ マ ー 位 置 を 図 2-7 に 示 す 。 そ の う ち , ITS2 領 域 に 設 計 し た 2 つ の 種 特 異 的 な forward プ ラ イ マ ー と 2.8S reverse プ ラ イ マ ー の PCR 法 で , シ ロ ザ ケ と カ ラ フ ト マ ス に そ れ ぞ れ 特 異 的 な 増 幅 産 物 が 得 ら れ た ( 図 2 - 7 )。 シ ロ ザ ケ お よ び カ ラ フ ト マ ス の 標 準 サ ン プ ル に 対 し , ITS 領 域 と ア ロ マ タ ー ゼ B - 1 遺 伝 子 の 第 2 イ ン ト ロ ン を 増 幅 す る P C R で 種 を 判 別 し た と こ ろ ,全 て 外 部 形 態の種判別結果と一致した。 2.2.4 人工交雑個体の親種の確認 シ ロ ザ ケ 雌 と カ ラ フ ト マ ス 雄 の 人 工 交 雑 に よ り 得 ら れ た 個 体 で は , mtDNA の PCR 法 に よ っ て 母 親 種 が シ ロ ザ ケ で あ る こ と を 示 す 2 本 の バ ン ド が 確 認 さ れ た ( 図 2 - 6 )。 ま た , 核 D N A の P C R 法 で シ ロ ザ ケ ま た は カ ラ フ ト マ ス に そ れ ぞ れ 特 有 の バ ン ド が 両 方 見 ら れ た( 図 2 - 8 )。こ の 結 果 は 父 親 種 が カ ラ フ ト マ ス ,母 親 種 が シ ロ ザ ケ を 示 す こ と か ら ,人 工 交 雑 に 用 い た 親 魚 種 の 組 み 合 わ せ と 一 致 し た 。 シ ロ ザ ケ 雄 と カ ラ フ ト マ ス 雌 の 人 工 交 雑 に よ り 得 ら れ た 個 体 は , mtDNA の PCR 法によって母親種がカラフトマスであることを示す 1 本のバンドが確認された ( 図 2 - 6 )。 加 え て , 核 D N A の P C R 法 に よ っ て シ ロ ザ ケ ま た は カ ラ フ ト マ ス に そ れ ぞ れ 特 有 の バ ン ド が 両 方 見 ら れ た( 図 2 - 8 )。こ の 結 果 は ,父 親 種 が シ ロ ザ ケ , 母親種がカラフトマスを示すことから,人工交雑に用いた親魚種の組み合わせと 一致した。 2.2.5 「サケマス」の父親種と母親種の確認 m t D N A と 核 D N A の 種 特 異 P C R 法 に よ っ て ,「 サ ケ マ ス 」 の 親 種 を 判 定 し た 。 分 析 の 結 果 ,「 サ ケ マ ス 」 11 尾 中 , 雄 3 尾 , 雌 3 尾 の 計 6 尾 が 交 雑 個 体 と 判 定 さ 19 れ た ( 表 4 - 3 )。 交 雑 個 体 と 判 定 さ れ た 上 記 「 サ ケ マ ス 」 で は , 全 て の 雄 ( 3 尾 ) は父親種がシロザケ,母親種がカラフトマスと判定された。これに対し,全ての 雌(3 尾)は父親種がカラフトマス,母親種がシロザケと判定された。また,漁 業 関 係 者 が「 サ ケ マ ス 」と 判 定 し た 個 体 の う ち 5 尾 は ,シ ロ ザ ケ と 判 定 さ れ た( 表 2 - 3 , 図 2 - 1 )。 2.2.6 交雑個体の外部形態 シ ロ ザ ケ と カ ラ フ ト マ ス の 交 雑 個 体 と 判 定 さ れ た「 サ ケ マ ス 」は ,年 齢 が 1 ~ 3 歳 , 側 線 鱗 数 が 136~ 143, 鰓 耙 数 が 22~ 28 の 範 囲 に あ っ た ( 表 2-4) ま た , 体 型,婚姻色,尾鰭の斑点,鱗の大きさなど複数の外部形態が両種の混合型もしく は両種にはない特徴を示していた。雄の全ての交雑個体で成熟したカラフトマス 雄 の 特 徴 で あ る 「 背 っ ぱ り 」( 加 藤 2 0 0 2 ; 眞 山 1 9 8 9 ; S u s u k i e t a l . 2 0 1 4 ) が 顕 著ではないが認められた。交雑個体の婚姻色は個体差があるものの両種の混合型 であり,腹部の全体は白くなく,雄では赤の雲状斑が腹部まで出現し,雌では体 側の一部に赤みがあった。さらに,雌雄ともに白色の雲状斑が側線鱗付近から腹 鰭にかけて確認できた。交雑個体の尾鰭にはシロザケやカラフトマスにはない小 黒 点 が 6 尾 中 5 尾 で 確 認 さ れ た 。小 黒 点 は 尾 部 全 体 も し く は 尾 部 付 け 根 付 近 の み に点在していた。加えて,交雑個体の雌では全ての個体で卵径にばらつきが見ら れた。 これに対し,シロザケと判定された 5 尾は,シロザケ特有の赤,黄,紫色が混 じ る 雲 状 斑 の 婚 姻 色( 眞 山 1 9 8 9 ; 永 田 2 0 0 3 ; 加 藤 2 0 0 2 )の 面 積 が 小 さ く 不 明 瞭 ではあるものの,カラフトマスと一致する特徴は腹部全体が白いという点のみで あり,その他の体型,鱗の大きさ,側線鱗数などの形態形質は全てシロザケと一 致していた。 20 M 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 600bp 400bp 200bp 図 2-2. 核 DNA に お け る ア ロ マ タ ー ゼ B-1 遺 伝 子 断 片 の 増 幅 産 物 の ア ガ ロ ー ス 電 気 泳動像. M は サ イ ズ マ ー カ ー , レ ー ン 1 ,2 ,4 − 1 2 は カ ラ フ ト マ ス ,レ ー ン 3 と 1 4 は 人 工 交 雑 個 体 , レ ー ン 13, 15−17 は シ ロ ザ ケ を 示 す . 21 22 65 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 170 177 197 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 243 327 332 345 359 370 394 408 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 Variable site chum1 chum2 chum3 chum4 pink1 pink2 pink3 pink4 pink5 pink6 pink7 pink8 pink9 pink10 A . . . C C C C . . . . . C T . . . G G G G G G G G G G G . . . . . . . . . . . T . . . . . . . . . . . G . . . . . . C C . . . G . . . . . . . . . . . G . . . . . . . . . . . G . . . . . . . . . . . A . . . . G . G . . . . T . C C C C C C C C C C G . . . . . . . . . . . T . . . . . . . . . . . A . . . G G G G G G G G G G A . . . T . . . . . . . . . C . . . G G G G G G G G G G A . . . - C . . . - C . . . - C . . . - C . . . - C . . . - C . . . - C . . . - C . . . - C . . . - C . . . - C . . . - C . - T . . . - T . . . - C . . . - T . . . - C . . . - A . . . - C . . . - A . . . - A . . . . . . G . . . . . . A . . . . . . . . . . . G . A . . . G G G G G G G G G G G . . . T T T T T T T T T T T . . . A A A A A A A A A A G . . . C C C C C C C C C C T . . . . . C . . . . . . . T . . . A A A A A A A A A A G . . . - T . . . - A . . . - A . . . - G . . . - A . . . - G . . . - C T T T - G . . . - T . . . - G . . . - T . . . - T . . . - A . . . - A . . . - A . . . - 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 Variable site chum1 chum2 chum3 chum4 pink1 pink2 pink3 pink4 pink5 pink6 pink7 pink8 pink9 pink10 T . . . - G . . . - A . . . - C . . . - T . . . - C . . . - A . . . - C . . . - T . . . - A . . . - C . . . - T . . . - G . . . - T . . . - A . . . - A . . . - G . . . - T . . . - A . . . - G . . . - C . . . - T . . . - C . . . - T . . . - G . . . - G . . . - A . . . - T . . . - A . . . - A . . . - G . . . - A . . . - G . . . - T . . . - C . . . - T . . . - G . . . - C . . . - T . . . - A . . . - A . . . - A . G . - C . . . - G . . . - A . . . - C . . . - T . . . - C . . . - A . . . - C . . . - T . . . - A . . . - C . . . - C T T T - G . . . - T . . . - A . . . - A . . . - C . . . - T . . . - 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 Variable site chum1 chum2 chum3 chum4 pink1 pink2 pink3 pink4 pink5 pink6 pink7 pink8 pink9 pink10 C . . . - T . . . - C . . . - T . . . - C . . . - T . . . - G . . . - G . . . - A . . . - T . . . - A . . . - A . . . - G . . . - A . . . - G . . . - T . . . - C . . . - T . . . - G . . . - C . . . - T . . . - A . . . - A . . . - A . . . - C . . . - G . . . - A . . . - C . . . - T . . . - C . . . - A . . . - C . . . - T . . . - A . . . - C . . . - T . . . - G . . . - T . . . - A . . . - C . . . - C . . . - T A . . - C . . . - T . . . - C . . . - T . . . - C . . . - T . . . - G . . . - G . A . - A . . . - T . . . - A . . . - A G . . - G . . . - A . . . - G . . . - T . . . - C . . . - T . . . - 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 614 636 650 655 673 686 704 712 715 728 730 733 756 Variable site chum1 chum2 chum3 chum4 pink1 pink2 pink3 pink4 pink5 pink6 pink7 pink8 pink9 pink10 G . . . - C . . . - T . . . - A . . . - A . . . - A . . . - C . . . - G . . . - A . . . - C . . . - T . . . - C . . . - A . . . - C . . . - T . . . - A . . . - C . . . - T . . . - G . . . - T . . . - A . . . - C . . . - C . . . - T . . . - C . . . - T . . . - C . . . - T . . . - C . . . - T . . . - G . . . - G . . . - A . . . . . . . . . G . . . A . . . C C C C C C C C C C A . . . . . . . . . . . . G T . A A . . . . . . . . . . A . . . G G G G G G G G G G C . . . T T T T T T T T T T G . . . A A A A A . . . . . A . . . . . . . . . G . . . G . . . . . . . . T T T T T A . . . . . G . . . . . . . A . . . G G G G G G G G G G A . . . G G G G G G G G G G C G G G G G G G G G G G G G 図 2-3. シ ロ ザ ケ と カ ラ フ ト マ ス の ア ロ マ タ ー ゼ B-1 遺 伝 子 の 塩 基 置 換 部 位 . 点 は chum1 と 同 じ 配 列 を 示 す . ハ イ フ ン は 塩 基 の 欠 失 を 示 す . chum1-4 は シ ロ ザ ケ , pink1-10 は カ ラ フ ト マ ス を 示 す . 22 chum1 chum2 pink1 pink2 1 60 T T A T G A G C C C C A C A T A T T T A G G T A T C C C A C T T A T C G C T G T G G C G T T A A C C C T C C C A T G A A ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ C ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ A ・・ A ・・・・・・・・・・・ G ・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ C ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ A ・・ A ・・・・・・・・・・・ G ・・・・ chum1 chum2 pink1 pink2 61 120 T T C T T T T C C C C A C C C C T T C T G C C C G A T G G C T G A A C A A C C G C C T A A T T A C C C T T C A A G G A T ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ A ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ A ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ chum1 chum2 pink1 pink2 121 180 G G T T C A T C A A C C G A T T C A C C C A A C A A C T T C T T T T A C C A C T T A A T C T A G G C G G T C A C A A A T ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ G ・・・・・・・・・・・・・ ・ A ・・ T ・・・・・・・・ G ・・ T ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ T ・・・・・・・ C ・・・・・・・ ・ A ・・ T ・・・・・・・・ G ・・ T ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ T ・・・・・・・ C ・・・・・・・ ChumATP6SSP 181 T C T T A T C A C C C T A A A C A T A C T G t G A 240 G A G C A G C T C T A C T A A C C T C T C T A A T A C T A T T T C T T A T C A C C C T A A A C A T A C T G G G A C T A C ・・・・・・・・・・ G ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ T ・・・・・・・・・・・ G ・・ A ・・ G ・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ T ・・・・・・・・・・・ G ・・ A ・・ G ・・・・ chum1 chum2 pink1 pink2 241 300 T T C C A T A T A C A T T C A C C C C C A C C A C G C A A C T C T C A C T C A A T A T A G G C C T C G C A G T C C C G T ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ T ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ T ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ C ・・・・・ T ・・・・・・・・・・・・・ chum1 chum2 pink1 pink2 301 360 T A T G A C T C G C C A C A G T A A T T A T T G G T A T A C G A A A C C A A C C T A C C G C C G C C C T A G G T C A T C ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・ T ・・・・・・・・・・・ C ・・ C ・・ C ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ T ・・・・・・・・ C ・ ・・・・・・・ T ・・・・・・・・・・・ C ・・ C ・・ C ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ T ・・・・・・・・ C ・ chum1 chum2 pink1 pink2 361 420 T C T T G C C T G A A G G G A C C C C C G T C C C A C T A A T C C C T G T A C T G A T T A T C A T C G A A A C A A T T A ・・・・・・・・・・・・・ A ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ A ・・・・・・・・・・・ G ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ A ・・・・・・・・・・・ G ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ chum1 chum2 pink1 pink2 421 458 G C C T T T T T A T C C G C C C C C T C G C C C T T G G C G T A C G A C T ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ chum1 chum2 pink1 pink2 図 2 - 4 . シ ロ ザ ケ と カ ラ フ ト マ ス の AT P a s e 6 遺 伝 子 断 片 の 塩 基 配 列 の 比 較 . 点 は c h u m 1 と 同 じ 配 列 を 示 す . C h u m AT P 6 S S P は シ ロ ザ ケ 種 特 異 的 f o r w a r d プ ラ イ マ ー の 配 列 部 分 で あ る . chum1 , chum2 , pink1 , pink2 は そ れ ぞ れ AB523891 , AB523892, AB523893, AB523894 と し て 登 録 し た 配 列 で あ る . 23 図 2-5. シ ロ ザ ケ と カ ラ フ ト マ ス の NADH3 遺 伝 子 断 片 の 塩 基 配 列 の 比 較 . 点 は chum1 と 同 じ 配 列 を 示 す . ChumNADH3SSP は シ ロ ザ ケ 種 特 異 的 forward プ ラ イ マ ー の 配 列 部 分 . c h u m 1 ,c h u m 2 ,p i n k 1 ,p i n k 2 は そ れ ぞ れ A B 5 2 3 8 9 8 ,A B 5 2 3 8 9 9 , AB523900, AB523901 と し て 登 録 し た 配 列 . 24 M 1 2 3 4 M 500bp 400bp 300bp 200bp 100bp 図 2-6. NADH3 領 域 の 種 特 異 的 な マ ル チ プ レ ッ ク ス PCR 法 に よ る 増 幅 産 物 の ア ガ ロース電気泳動像. M: サ イ ズ マ ー カ ー , 1: シ ロ ザ ケ , 2: シ ロ ザ ケ 雌 と カ ラ フ ト マ ス 雄 の 交 雑 個 体 , 3: シ ロ ザ ケ 雄 と カ ラ フ ト マ ス 雌 の 交 雑 個 体 , 4:カ ラ フ ト マ ス . 25 ITS1 chum1 pink1 pink2 chum1 pink1 pink2 5.8S 1 60 T T A G C G G T G G A T C A C T C G G C T C G T G C G T C G A T G A A G A A C G C A G C T A G C T G C G A G A A C T A A ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 61 T G T G A A T T G C A G G A C A C A T T G A T C A T T G A C A C T T C G A A C G C A C T T T G C G G C C C C A G G T T ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 5.8S 120 C ・ - ITS2 chum1 pink1 pink2 121 C T C C T G G G G C T A C G C C T G T C T G A G G G T C G C T T T G T C A T C A A T C G G A A ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ PinkITS2SSP 181 G C C T T C G T C C C C C T G C A G C T G G G G C A G T C G C A G G C G G C C A C C G T G C A G C C T T C G T C C C C C T ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ chum1 pink1 pink2 241 300 G A C G G C T C G G T G G G T T T G T T G A G G A T G A G C T T C T G C T C T A C T T C C G - T T C C C C C G T G C G C ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ A - ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ - A ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ chum1 pink1 pink2 180 C C T C T G G G T T T C C ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ A A ・ ・ A A ・ ・ G G ・ ・ g T ・ ・ T T ・ ・ A C A G A C C A A ・ ・ ・ ・ ・ ・ A ・ ・ ・ ・ ・ ・ 240 G ・ ・ chum1 pink1 pink2 301 T C A T T C C T T T C C C T T T T C G C T T C G G C G A G A G G C G C C C A C G T T C C C ・ ・ - ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ C ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ - ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ C ・ ・ ・ ・ ・ C ・ ・ - ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ChumITS2SSP 361 G C C C G C G T T A C G C A T G G C T G C C G G T G G A C T C T G T C T C T C C G T G C T G C C C G C G T T A C G C A T ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ T ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ T ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ chum1 pink1 pink2 421 G 480 - - G C T C G G G G T T A G G T T T G G G C T G C G G A G C T C C G A C C G C C G A C C T G A A A C G T A T T G A G A A G C ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ G C ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ A ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ chum1 pink1 pink2 481 529 G T G T G A G C C C G G G C G A C C G G C C A C A A T C C - - - - - - - - - - - - - - - - - - ・ - ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ C ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ - - - - - - - - - - - - - - - - - - ・ - ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ - ・ ・ ・ ・ A ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ A T T C A C T T T G A C T A C G A C C chum1 pink1 pink2 360 C G C A T G G T C T G G C G C ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 420 G T G t T G T G G T - - - - - - - - - ・ C ・ ・ ・ T C T C G G G G T A ・ C ・ ・ ・ T C T C G G G G T A 図 2-7. シ ロ ザ ケ と カ ラ フ ト マ ス の ITS2 領 域 の 塩 基 配 列 の 比 較 .点 は chum1 と 同 じ 配 列 を 示 す . 横 線 は 塩 基 の 欠 失 を 示 す .ChumITS2SSP と PinkITS2SSP は そ れ ぞ れ シ ロ ザ ケ 種 特 異 的 forward プ ラ イ マ ー と カ ラ フ ト マ ス 種 特 異 的 forward プ ラ イ マ ー の 配 列 部 分 を 示 す . c h u m 1 ,c h u m 2 ,p i n k 1 ,p i n k 2 は そ れ ぞ れ A B 5 2 4 0 7 7 ,A F 1 7 0 5 3 8 , AB524078, AF170539 と し て 登 録 し た 配 列 . 26 M 1 2 3 4 M 5 00bp 4 00bp 3 00bp 2 00bp 1 00bp 図 2-8. ITS1 領 域 の 種 特 異 的 な マ ル チ プ レ ッ ク ス PCR 法 に よ る 増 幅 産 物 の ア ガ ロ ー ス電気泳動像. M: サ イ ズ マ ー カ ー , 1: シ ロ ザ ケ , 2: シ ロ ザ ケ 雌 と カ ラ フ ト マ ス 雄 の 交 雑 個 体 , 3: シ ロ ザ ケ 雄 と カ ラ フ ト マ ス 雌 の 交 雑 個 体 , 4:カ ラ フ ト マ ス . 27 表 2-3. 交 雑 個 体 と 推 定 さ れ て い た 「 サ ケ マ ス 」 に お け る mtDNA と 核 DNA の 種 特 異 PCR 法 に よ る 判 別 結 果 . Sakemasu1 Sakemasu2 Sakemasu3 Sakemasu4 Sakemasu5 Sakemasu6 Sakemasu7 Sakemasu8 Sakemasu9 Sakemasu10 Sakemasu11 mtDNA ATPase6 NADH3 chum chum pink pink chum chum chum chum chum chum chum chum chum chum pink pink chum chum chum chum pink pink 28 Nuclear DNA ITS2 Aromatase B-1 hybrid hybrid hybrid hybrid hybrid hybrid chum chum chum chum chum chum chum chum hybrid hybrid chum chum hybrid hybrid hybrid hybrid 表 2-4. 「 サ ケ マ ス 」 の 生 物 学 的 な 特 徴 . Sample ID Sakemasu1 Sakemasu2 Sakemasu3 Sakemasu4 Sakemasu5 Sakemasu6 Sakemasu7 Sakemasu8 Sakemasu9 Sakemasu10 Sakemasu11 Species hybrid hybrid hybrid chum chum chum chum hybrid chum hybrid hybrid Parentage male female pink chum chum pink pink chum chum chum chum chum chum pink chum pink chum chum pink Sex female male female male female female female male female female male Nuptial coloration* chum + pink chum + pink silver chum chum chum chum silver silver chum + pink chum + pink * “silver”は 未 成 熟 魚 を 示 す . 29 Abdomen white white white white white Caudal fin small spots small spots small spots no spot no spot no spot no spot small spots no spot no spot small spots Age 3 2 2 4 4 4 4 no data 2 1 1 Lateral line scales 143 141 136 133 128 126 141 no data 133 142 137 Gill raker 27 24 22 24 24 26 23 no data 22 28 28 2-3 2.3.1 考察 DNA 分 析 に よ る 親 種 の 判 別 母 系 遺 伝 す る mtDNA の 2 領 域 の 本 PCR 法 に よ る 母 親 種 の 判 別 結 果 は , 外 部 形態による種判別結果および人工交雑に用いた母親魚種の組み合わせと一致した。 し た が っ て , mtDNA に よ る 親 種 判 別 で , 交 雑 個 体 の 母 親 種 が シ ロ ザ ケ と カ ラ フ ト マ ス の ど ち ら で あ る か を 推 測 で き る 。 ま た , 核 DNA の 2 領 域 の PCR 法 に よ り ,シ ロ ザ ケ と カ ラ フ ト マ ス の 父 親 種 を 判 別 で き る 。本 研 究 に お い て ,核 D N A で あ る I T S 1 と ア ロ マ タ ー ゼ B - 1 遺 伝 子 の D N A 分 析 に よ り 「 サ ケ マ ス 」 11 尾 の う ち 6 尾はシロザケとカラフトマスの交雑個体と判別された。 し か し な が ら ,交 雑 個 体 と 判 定 さ れ た 6 尾 お よ び シ ロ ザ ケ と 判 定 し た 5 尾 に つ い て , シ ロ サ ケ と カ ラ フ ト マ ス の 雑 種 F1 が シ ロ サ ケ ま た は カ ラ フ ト マ ス と 戻 し 交雑した個体,またはそれがシロザケまたはカラフトマスとさらに交配したもの で あ る 可 能 性 は 否 定 で き な い 。 雑 種 F1 が 成 熟 し た 場 合 , 減 数 分 裂 よ り シ ロ ザ ケ ま た は カ ラ フ ト マ ス 由 来 の 配 偶 子 を 持 つ 可 能 性 が あ る 。 そ の た め , 雑 種 F1 が 形 成 す る 配 偶 子 が 持 つ 両 遺 伝 子 の 組 み 合 わ せ や ,戻 し 交 配 の 組 み 合 わ せ に よ っ て は , 確 率 は 低 い と 推 察 さ れ る が ,こ う い っ た 戻 し 交 配 に つ い て は 本 研 究 の 種 特 異 P C R で は 検 出 で き な い 。 し た が っ て , 今 後 , 両 種 を 判 別 で き る 核 DNA マ ー カ ー の 数 を増やし,戻し交配であっても検出可能にする必要がある。また,交雑個体と判 明した「サケマス」6 尾のうち,雄は全て父親種がシロザケ,母親種がカラフト マスであり,雌は全て父親種がカラフトマスと母親種がシロザケの組み合わせで あ っ た( 表 2 - 4 )。サ ン プ ル 数 は 少 な い も の の ,シ ロ ザ ケ と カ ラ フ ト マ ス の 交 雑 個 体は,シロザケ親種と同性の子の生残率が高い可能性が示された。 2.3.2 交雑個体の形態特徴 本研究で交雑個体と判定された「サケマス」の婚姻色は,すべてシロザケとカ ラフトマスの混合型を呈していた。さらに,シロザケおよびカラフトマス両種に はない特徴として白色の雲状斑と尾鰭の小黒点が確認された。また,ほとんどの カ ラ フ ト マ ス は 1 歳 で 成 熟 し ,ご く 稀 に 0 歳 お よ び 2 歳 で 成 熟 す る 個 体 が 出 現 す る が , 本 研 究 で 交 雑 と 判 定 さ れ た 個 体 の 年 齢 は 1~ 3 歳 で あ る た め , シ ロ ザ ケ の 範囲に収まるものの,カラフトマスにはない 3 歳の個体が確認された。加えて, 交雑個体の雌では全て卵径にばらつきが見られた。本研究で確認した個体の卵は 30 全て未成熟であったため,退行卵の可能性があるものの,既報のシロザケとカラ フ ト マ ス の 交 雑 個 体 に お い て も 卵 径 が 不 均 一 で あ る と 報 告 が あ る( 沼 知 ら 1 9 7 9 )。 したがって,交雑個体であるかの判別要素の一つとして卵径の不均一も挙げられ る可能性がある。 このように,シロザケとカラフトマスの交雑個体は,両種の混合型の婚姻色, 尾 鰭 の 小 黒 点 の 有 無 お よ び 年 齢 で も 識 別 で き る ( 表 2 - 4 )。 2.3.3 交雑個体の出現背景 これまで,シロザケとカラフトマスの交雑試験結果では,交雑個体が高い生残 率 を 示 す こ と が 確 認 さ れ て い る( 疋 田・横 平 1 9 6 4 ; S i m o n a n d N o b l e 1 9 6 8 )。1 9 7 0 年代以前,当時のソビエト連邦と我が国ではシロザケとカラフトマスの交雑実験 放 流 が 行 わ れ た こ と が あ っ た ( 沼 知 ら 1 9 7 9 ; S i m o n a n d N o b l e 1 9 6 8 )。 し か し , 現在はそのようなふ化放流実験は全く行われていない。したがって,本研究で確 認された交雑個体は自然環境下において発生したものと推察される。 知床半島内の河川では人工ふ化放流事業がさかんに行われているが,シロザケ と カ ラ フ ト マ ス の 自 然 再 生 産 も 観 察 さ れ て い る ( 横 山 ら 2 0 1 0 )。 知 床 半 島 の 河 川 は川の長さが短く,河床勾配が急であり,河川形態はほぼ全域がほぼ全域が一つ の 蛇 行 区 間 に 多 く の 瀬 と 淵 が 存 在 し 白 瀬 で 淵 が 連 結 し て い る Aa 型 で あ る ( 石 城 1 9 8 4 ; 可 児 1 9 4 4 )。さ ら に 知 床 半 島 内 の 河 川 で は ダ ム な ど の 人 工 工 作 物 に よ り サ ケ 科 魚 類 が 遡 上 障 害 を 受 け て い る 可 能 性 が 指 摘 さ れ て い る( 桜 井・松 田 2 0 0 9 ; 横 山 ら 2 0 1 0 )。 そ の た め , 知 床 半 島 で は シ ロ ザ ケ と カ ラ フ ト マ ス の 産 卵 が 可 能 な 場 所は中流から下流域に限定され,さらにふ化場放水路近辺には,シロザケの親魚 が集中することもあり,両種が狭い範囲で重複して産卵している河川も多い(小 宮 山 2 0 0 3 )。シ ロ ザ ケ お よ び カ ラ フ ト マ ス は ,通 常 同 種 間 で ペ ア リ ン グ を 行 う が , 雄が異種の雌に対して求愛行動をするケースもまれに観察されている(小宮山 2 0 0 3 )。 こ の よ う な 場 合 , 雌 が 求 愛 行 動 を す る 異 種 の 雄 に 対 し て 噛 み 付 く な ど の 拒絶反応を示すものの,ふ化場用水の放水口付近の本流では,実際にシロザケ雌 と カ ラ フ ト マ ス 雄 で 産 卵 に 至 っ た ケ ー ス ( 図 2-9) も 確 認 さ れ て い る ( 森 ・ 内 山 1 9 9 7 )。 標 津 町 内 の 複 数 の 漁 業 関 係 者 に よ る と ,「 サ ケ マ ス 」 は 比 較 的 頻 繁 に 捕 獲 さ れ,市場へ出す前に自家消費されるケースが多い。さらに判別が困難なため,交 31 雑個体がシロザケあるいはカラフトマスとして市場に流通している場合もあるも のと判断される。このように,相当数の交雑個体が遡上し産卵している可能性が 高 い 。 属 は 異 な る が ヨ ー ロ ッ パ で は , タ イ セ イ ヨ ウ サ ケ Salmo salar と ブ ラ ウ ン ト ラ ウ ト S. trutta の 交 雑 の 出 現 は , ダ ム な ど に よ る 遡 上 障 害 に 由 来 す る 産 卵 場 所 で の 過 密 に よ り 増 加 す る こ と が 示 唆 さ れ て い る ( 例 え ば , Jansson and Öst 1 9 9 7 )。 同 様 に , 産 卵 環 境 が 異 な る ( 眞 山 1 9 8 9 ; 小 林 1 9 6 8 ) 両 種 の 間 に 交 雑 個 体が出現した背景には,ダムなどの河川横断工作物,さらには人工ふ化放流事業 によりある産卵場所で産卵親魚の個体群密度が産卵環境収容力を上回ることなど があると考えられる。その原因解明には,当地域における交雑個体の出現数の年 変動と回帰尾数,産卵環境などとの因果関係および他地域における出現数との比 較が必要である。飼育環境下では,シロザケとカラフトマスの交雑個体(雑種 F1) と シ ロ ザ ケ あ る い は カ ラ フ ト マ ス の 交 雑 実 験 が 行 わ れ , そ の 稚 魚 の 生 存 も 確 認 さ れ て い る ( S i m o n a n d N o b l e 1 9 6 8 )。 し た が っ て , 自 然 環 境 下 に お い て 回 帰した交雑個体がシロザケおよびカラフトマスと戻し交配してシロザケおよびカ ラフトマスに遺伝子浸透を引き起こす,さらには,現状においても遺伝的攪乱が すでに起こっている可能性もある。そのため,他地域における交雑個体の出現状 況さらに遺伝子情報も併せ,今後も当地方におけるシロザケとカラフトマスの産 卵状況などの追跡調査を行う必要があると考えられる。 32 図 2-9. 植 別 川 に お け る シ ロ ザ ケ (Chum) と カ ラ フ ト マ ス (Pink) の 産 卵 行 動 の 水中写真(内山りゅう氏撮影). 33 第 3 章 実験水槽におけるシロザケの産卵行動の観察 シ ロ ザ ケ の 産 卵 行 動 に つ い て は ,こ れ ま で 多 く の 知 見 が あ る( 佐 野 1 9 5 9 ; T a u t z a n d G r o o t 1 9 7 5 ; D u k e r 1 9 7 7 ; H e l l e 1 9 8 1 ; S c h r o d e r 1 9 7 3 , 1 9 8 2 )。 こ れらの研究によると,産卵場所に到着したシロザケ雌は,広範囲にわたって下顎 を 川 底 に 向 け る n o s i n g( 産 卵 場 所 の 探 索 )と e x p l o r a t o r y d i g g i n g( 試 し 掘 り )を 繰 り 返 し , し だ い に exploratory digging の 回 数 が 増 え , 小 さ な エ リ ア に よ り 集 中するようになる。そこが産卵場所(産室)となり,尾鰭を川底にたたきつける よ う に nest digging( 堀 り 行 動 ) と probing( 探 査 ) を 何 度 も 繰 り 返 し , 産 室 を 形 成 す る 。完 成 し た 産 室 は 円 錐 型 の 深 さ 20~ 40 cm の 窪 地 で ,雌 は 産 室 に 臀 鰭 を 差 し 入 れ ,口 を 大 き く 開 け て 雄 に 知 ら せ ,雄 が 横 に 並 び 口 を 開 け て 放 卵 放 精 す る 。 産 卵 後 , 雌 は 直 ち に 産 室 の や や 上 流 部 の 砂 利 を 産 室 に か ぶ せ る covering digging ( 埋 め 行 動 ) を 行 う 。 そ の 後 , covering digging に よ り , 上 流 側 に 出 来 た 窪 地 を 次 の 産 卵 場 所 ( 産 室 ) と し , 再 び nest digging を 繰 り 返 す 。 雌 は 下 流 か ら 上 流 に かけて通常 4〜6 回に分けて産卵を行い,一つの産卵床を形成する。雌は,産卵 を 終 え る と 産 卵 場 所 に と ど ま り , post-spawning digging を 行 い な が ら , 他 の 雌 から産卵場所を守り,やがて死亡する。 サケ属魚類が選択する繁殖場所は,水温,水深,流速などのほか,流木や植生 によるカバーの有無,さらに河床材料および河床から湧出する水などの物理的な 要 因 が 影 響 を 及 ぼ し て い る こ と が 知 ら れ て い る( 総 説 と し て ,B j o r n n a n d R e i s e r 1991) 。 特 に , 産 卵 場 所 と し て は 河 床 が 砂 礫 の 場 所 が 選 択 さ れ る が , 同 一 河 川 で はシロザケは冬期間でも水温が大きく低下しない地下水由来の湧水や,河川伏流 水が河床から湧出する場所を選んで産卵する場合が多く,カラフトマスは冬期間 水温が著しく低下する河川水がよく浸透する場所を選択するといわれている(佐 野 ・ 長 沢 l958; 小 林 1968; 鈴 木 l999) 。 シロザケの産卵場所および産室内における生残率との関係に関する基礎的な情 報は,野生魚による再生産を推進するうえで不可欠である。しかしながら,自然 河川ではシロザケ個体の産室場所,産卵回数および産卵毎の放卵数などの正確な 計 測 は 難 し い( 矢 野 ら 2 0 1 2 ) 。そ の た め ,研 究 例 が 少 な く( H a w k e 1 9 7 8 ; G a u d e m a r e t a l . 2 0 0 0 ),野 外 で の 浸 透 水 と の 関 係 を 細 部 に わ た っ て 実 証 す る こ と は 極 め て 困 難である。 34 そこで,本章では,野外では得られていない産卵行動の詳細な科学的情報を得 る こ と を 目 的 と し て ,標 津 サ ー モ ン 科 学 館 の 実 験 水 槽( 魚 道 水 槽 )に お い て ,様 々 な 条 件 下 で シ ロ ザ ケ を 産 卵 さ せ ,シ ロ ザ ケ の 産 卵 回 数 と 産 卵 各 回 の 放 卵 数 の 関 係 , 河床から湧出する水の条件と産卵場所の関係を明らかにした。 35 3-1 3.1.1 材料と方法 実験水槽の概要 実 験 は 2 0 0 3 年 〜 2 0 1 3 年 の 間 の 11 月 に , 標 津 サ ー モ ン 科 学 館 の 敷 地 内 屋 外 を 流 れ る 魚 道 水 路 を 仕 切 っ た 実 験 水 槽 ( 7.6 m×2.9 m, 深 さ 60 cm) で 行 っ た 。 実 験水槽は,館内から硬質ガラス越しに水槽内を観察できる構造となっており,コ ン ク リ ー ト お よ び 鉄 格 子 で 仕 切 ら れ た “ 上 流 側 ” の A 槽 ,“ 下 流 側 ” の B 槽 の 2 つ の 水 槽 か ら な る 。 2 つ の 水 槽 の 底 面 積 は , そ れ ぞ れ 9.55, 10.83 m2 で あ り , 水 深 は 6 0 ~ 7 0 c m の 範 囲 を 維 持 し た ( 図 3 - 1 )。 実 験 水 槽 に は , 曝 気 し た 井 戸 水 ( 水 温 16.8℃ ) を A 槽 の 10 m お よ び 30 m 上 流 部 の 2 か 所 よ り 毎 分 10~ 30 リ ッ ト ル給水した。なお,井戸水は外気で冷却するシステムとなっているため,実験水 槽 へ の 給 水 時 に は 水 温 が 5℃ 以 上 低 下 す る 場 合 も あ っ た 。 3.1.2 実験魚 産 卵 行 動 の 観 察 に は , 2003〜 2013 年 に 標 津 川 に 産 卵 遡 上 し , 河 口 か ら 1.8 km 上 流 に 位 置 す る 捕 獲 装 置( ウ ラ イ )で 捕 獲 さ れ た シ ロ ザ ケ 親 魚 を 用 い た 。親 魚 は , 実験水槽の前後に設置した水槽で数日間馴致し,実験水槽に入れる際は,雌は腹 部の大きさから未産卵であることを確認し,さらに雌雄ともに腹部の触診により その硬さから,生殖腺が完全に成熟し放卵,放精が可能であること確認して供試 魚とした。 3.1.3 産卵回数・放卵数測定実験 本 実 験 は 2 0 0 3 ~ 2 0 0 9 年 ま で の 11 月 に 人 工 湧 水 の 湧 出 地 点 を 計 9 箇 所 と し , 各 年 1 2 ~ 1 7 尾 の 雌 を 用 い て 産 卵 回 数 と 放 卵 数 の 測 定 実 験 を 行 っ た ( 図 3 - 2 )。 産 卵 行 動 の 観 察 は ,A 槽 お よ び B 槽 に そ れ ぞ れ 雌 雄 1 尾 ず つ 投 入 し ,サ ー モ ン 科 学 館 施設内から目視およびビデオ撮影を行った。放卵数の確認は,雌親魚死亡時の腹 腔 内 の 残 卵 が 1 0 0 粒 以 下 で あ る こ と ,か つ 全 て の 産 卵 に お い て 産 室 に 卵 が 収 ま っ たことを目視で確認できた個体について,卵を掘り起こし,産卵各回の卵数を記 録した。卵の掘り起こしは,水槽の水位を低下させた後,砂利を取り除き,正確 な 産 室 の 位 置 を 確 認 し た 後 ,手 で 水 流 を 起 こ し て 扇 ぎ 入 れ る よ う に さ で 網 に 入 れ , 網 に 入 り き ら な か っ た 卵 は 観 賞 魚 用 フ ィ ッ シ ュ ネ ッ ト ( 目 合 い 0.5 mm) を 使 用 して採集した。 36 3.1.4 河床からの湧出水と産卵場所 シロザケが産卵するためにどのような産卵場所を選択するかを明らかにするた め,河床から湧出する水の種類を変えて,実験を行った。実験区としては,自然 条件下での地下水由来の湧水に見立て,曝気した井戸水を人工的に湧出させた湧 水区,水槽内の水をポンプで河床から湧出させた河川水区,そして水を湧出させ な か っ た 無 湧 出 区 ( 図 3-2) に 分 け た 。 河 床 の 砂 利 か ら 湧 出 さ せ る た め に , 実 験 水 槽 底 面 に 敷 き 詰 め た 砂 利 ( 礫 径 5~ 50 mm) の 下 25 cm の 深 さ に , 上 部 に 穴 を 開 け た 直 径 20 mm の ポ リ 塩 化 ビ ニ ル 製パイプを設置して実験水を通した。 2 0 0 9 ~ 2 0 11 年 は ,実 験 水 槽 内 の 環 境 を 自 然 河 川 の 状 況 に 近 づ け る た め に ,湧 水 の 湧 出 地 点 を 9 箇 所 設 け , そ れ ぞ れ の 場 所 か ら 毎 分 2 リ ッ ト ル , 計 18~ 20 リ ッ ト ル の 水 を 湧 出 さ せ た 。ま た ,実 験 水 槽 の A 槽 と B 槽 ,そ れ ぞ れ の ガ ラ ス 面 と 直 角 に 配 置 す る 左 側 コ ン ク リ ー ト 面 の 交 点 を 原 点 と し ,ガ ラ ス 面 と 平 行 方 向 を X 軸 , ガ ラ ス 面 と 直 角 方 向 を Y 軸 と し ,産 卵 し た 個 体 の 各 産 室 中 央 部 の 座 標 を も と め た 。 湧 水 の 湧 出 地 点 の 座 標 ( X , Y: c m ) は A 槽 で は 4 か 所 , B 槽 で は 5 か 所 と し た ( 図 3 - 2 )。 シ ロ ザ ケ 親 魚 は , 雄 雌 各 1 尾 の 条 件 で 実 験 水 槽 に 同 時 に 投 入 し , 投 入 時 刻 および 1 回目 の産卵時 刻を記録 した。産卵場所は 産卵時に おおよそ の産卵位 置を 確認した後,卵の掘り起こしの際に産室および卵塊の中央部分の正確な位置を記 録した。 2 0 1 2 年 お よ び 2 0 1 3 年 に は ,底 面 か ら の 湧 出 水 の 条 件 と 産 卵 場 所 お よ び 産 卵 に か か っ た 時 間 と の 関 係 を 詳 細 に 調 査 す る た め , A 槽 で は 2 0 11 年 ま で と 同 じ 地 点 で 井 戸 水 を 人 工 的 に 湧 出 さ せ ,B 槽 で は 井 戸 水 の 湧 出 地 点 を ,座 標 (80,80)の 1 か 所とした。B 槽ではこの湧出地点から毎分 5 L の実験水を底面から湧出させた。 温 度 デ ー タ ロ ガ ー ( HOBO temperature pendant data logger , Onset 社 製 ) を 水 槽 中 層 部 ( 水 深 25 cm) お よ び 実 験 水 の 湧 出 地 点 ( 地 下 25 cm) に 設 置 し , 1 時間 ごとの 水温を計 測した 。底面から の水の 湧 出地点お よび水槽 内の流速 を計 測 す る た め ,電 磁 流 速 計( V P 3 0 0 0 型 ,K E N E K 社 : 最 小 1 / 1 0 0 0 m / s e c )お よ び プ ロ ペ ラ 式 流 速 計( C R - 11 , コ ス モ 理 研 社 )を 用 い て ,A 槽 お よ び B 槽 内 に お い て , 底 面 に 対 し て 砂 利 直 上 部 の 垂 直 方 向 お よ び 鉛 直 方 向 の そ れ ぞ れ 18 地 点 で 計 測 し た 。 そ の 流 速 は , す べ て の 計 測 地 点 で ほ ぼ 0 cm/sec で あ っ た 。 37 (A) 7550 400 3350 3800 7550 400 3350 2850 A槽 3800 B槽 10.83㎡ 9.55㎡ 硬質ガラス 300 9.55㎡ 格子 300 2850 A槽 (B) B槽 10.83㎡ 格子 硬質ガラス 2850 mm 2850 mm 硬質ガラス 水位 600 硬質ガラス 水位 600 砂利 250 砂利 250 図 3-1. 実 験 水 槽 の 概 要 . (A) 平 面 図 , (B) B 槽 の 断 面 図 ( 長 さ : mm) . 38 (A) (B) 図 3 - 2 . 実 験 水 槽 に お け る 実 験 水 の 湧 出 地 点( 黒 丸 )の 平 面 図 . ( A ) 2 0 0 9 年 ~ 2 0 11 年 , (B) 2012 年 お よ び 2013 年 . 39 3-2 結果 3.2.1 産卵回数および産卵各回の放卵数 産 卵 し た 全 て の 雌 個 体 で n o s i n g ( 産 卵 場 所 の 探 索 ), e x p l o r a t o r y d i g g i n g ( 試 し 掘 り ),p r o b i n g( 探 査 ),n e s t d i g g i n g( 堀 り 行 動 )お よ び c o v e r i n g d i g g i n g( 埋 め行動)が確認された。雌の放卵は,全ての個体で雄の口開け後に行われた。 2 0 0 3 年 〜 2 0 0 9 年 の 間 ,実 験 に 用 い た 親 魚 数 の 合 計 は ,雄 が 9 8 尾 ,産 卵 に 至 っ た 雌 が 96 尾 で あ っ た 。 そ の う ち , 各 回 の 産 卵 時 に 卵 が す べ て 産 室 に 収 ま っ た こ と を 目 視 で 確 認 し ,か つ ,死 亡 時 に 残 卵 数 が 1 0 0 粒 以 内 の 条 件 を 満 た し た 雌 は 2 6 尾 で あ り , そ れ ら 個 体 の 産 卵 各 回 の 放 卵 数 を 解 析 に 用 い た ( 表 3 - 1 )。 2 0 0 3 年 ~ 2 0 0 9 年 の 実 験 に 供 し た 雌 の 尾 叉 長 は 平 均 ± 標 準 偏 差( m m )は ,6 11 ± 3 4 . 9( 範 囲 5 5 4 〜 6 9 0 ) m m で あ り , 算 出 し た 産 卵 前 の 孕 卵 数 は 平 均 2 1 3 6 ± 4 1 3 . 9 ( 範 囲 1 3 7 3 〜 2 8 2 3 ) 粒 で あ っ た 。 総 産 卵 回 数 は 3 回 が 6 尾 ( 2 3 . 1 % ), 4 回 が 1 7 尾 ( 6 5 . 4 % ), 5 回 が 3 尾 ( 11 . 5 % ) で あ っ た ( 表 3 - 1 に 詳 細 を 示 す )。 総 産 卵 回 数 が い ず れ の 個 体 で あ っ て も ,産 卵 回 数 が 増 加 す る ご と に 放 卵 数 が 減 少 し た( 図 3 3 )。 3 回 産 卵 個 体 は 4 回 産 卵 個 体 に 比 べ て 孕 卵 数 が 少 な く ( 図 3 - 4 ), 4 回 産 卵 個 体 は ,1 回 目 ,2 回 目 の 放 卵 数 に つ い て は 有 意 差 が 認 め ら れ な か っ た も の の ,3 回 目 以 降 の 放 卵 数 は 大 き く 減 少 し た( Tu k e y - K r a m e r ; p < 0 . 0 1 )。こ の よ う に 各 個 体 の 産 卵 回 数 は 3~5 回 で あ り , 1 回 目 の 産 卵 で は 孕 卵 数 の 36.2±5.0% (n=26) を 放 卵 し , 4 回 目 は 放 卵 数 が 10.2%±4.5% (n=20) と 大 き く 減 少 し た 。 さ ら に 1 回 目 の 産 室 の 卵 数 と 孕 卵 数 に は 強 い 相 関 (r=0.757, n=26, p < 0.01)が 確 認 さ れ た ( 図 3 - 5 )。 3.2.2 産卵時における湧出水の選択性 実 験 水 槽 の 中 層 お よ び 底 面 か ら の 実 験 水 の 湧 出 地 点 の 水 温 ( 地 下 25 cm) を 測 定 し た 結 果 , 無 湧 出 水 区 の 実 験 水 槽 中 層 と 実 験 水 の 湧 出 地 点 の 水 温 差 は , 0.15± 0.24( 水 温 範 囲 : - 0.38〜 1.6) ℃ , 同 じ く 河 川 水 区 の 場 合 は 0.09±0.17( 同 : - 0 . 3 8 〜 0 . 4 8 )℃ ,同 じ く 湧 水 区 の 場 合 は , 水 温 差 が 2 . 4 ± 0 . 6 1( 同 : 1 . 0 〜 3 . 5 )℃ で あ っ た ( 図 3 - 6 )。 2 0 0 9 〜 2 0 11 年 に , A 槽 お よ び B 槽 に お い て , 湧 出 地 点 を そ れ ぞ れ 4 か 所 お よ び 5 か 所 設 け た 。 産 室 場 所 が 特 定 で き た シ ロ ザ ケ 雌 の 数 と 産 室 の 個 数 は 合 計 61 尾 ,産 室 場 所 は 125 箇 所 で あ っ た 。A 槽 で は 雌 28 尾 が 産 卵 し ,産 室 場 所 は 63 箇 40 所( 湧 水 区 2 3 尾 5 3 箇 所 ,無 湧 出 水 区 5 尾 1 0 箇 所 ),B 槽 で は 雌 3 3 尾 が 産 卵 し , 産 室 場 所 は 6 2 箇 所( 湧 水 区 2 8 尾 5 3 箇 所 ,無 湧 出 水 区 5 尾 9 箇 所 )で あ っ た( 図 3 - 7 )。 各産室場所から最も近い湧出ポイントまでの距離は A 槽においては湧水区 ( 2 6 . 6 ± 1 5 . 1 c m ) と 無 湧 出 水 区 ( 2 7 . 2 ± 3 0 . 7 c m ) で 差 は な か っ た が ( Tu k e y Kramer), B 槽 に お い て は 無 湧 出 水 区 ( 63.5±64.1 cm) よ り 湧 水 区 ( 38.1±32.0 c m ) の ほ う が 近 か っ た ( 図 3 - 8 )。 A 槽 と B 槽 を 合 計 す る と , 無 湧 出 水 区 ( 4 6 . 1 ± 5 3 . 6 c m )よ り 湧 水 区( 3 1 . 1 ± 2 3 . 5 c m )ほ う が 近 か っ た ( Tu k e y - K r a m e r ; p < 0 . 0 5 ) 。 2 0 1 2 年 と 2 0 1 3 年 に B 槽 に お い て ,実 験 水 の 湧 出 地 点 を 1 か 所 と し て 産 卵 行 動 を 観 察 し た 結 果 , 合 計 43 尾 の 雌 の デ ー タ が 得 ら れ た 。 湧 水 区 は 13 尾 16 個 の 産 室 , 河 川 区 は 11 尾 1 4 個 , 無 湧 出 水 区 は 2 0 尾 2 2 個 の デ ー タ が 得 ら れ た ( 図 3 7 )。水 の 湧 出 ポ イ ン ト か ら そ れ ぞ れ の 産 室 ま で の 距 離( 図 3 - 8 )は ,湧 水 区( 2 4 . 1 ±15.2 cm) と 河 川 区 ( 26.1±13.3 cm) の ほ う が 無 湧 出 水 区 ( 123.8±73.2 cm) よ り 近 か っ た ( Tu k e y - K r a m e r ; p < 0 . 0 1 ) 。 3.2.3 産卵までに要する時間 2 0 0 9 ~ 2 0 11 年 の 間 ,湧 水 区 と 河 川 区 の 条 件 下 お よ び 無 湧 出 水 区 の 状 態 で ,親 魚 の 水 槽 投 入 か ら 初 回 の 産 卵 ま で の 時 間 を 計 測 し ,7 8 個 体 の デ ー タ が 得 ら れ た 。2 4 時 間 以 内 に 産 卵 し た 雌 個 体 数 は , 湧 水 区 で は 56 匹 中 49 尾 ( 87.5%) で あ っ た の に 対 し ,無 湧 出 水 区 は 2 2 尾 中 1 0 尾( 4 5 . 5 % )と 産 卵 ま で 長 い 時 間 が か か っ た( 図 3 - 9 )。 2012 年 と 2013 年 に は , B 槽 に お い て 水 の 湧 出 地 点 を 一 箇 所 に し て , 水 槽 投 入 か ら 初 回 の 産 卵 ま で の 時 間 を 計 測 し , 合 計 43 尾 の 雌 の デ ー タ が 得 ら れ た 。 水 槽 投 入 時 か ら 初 回 産 卵 ま で 要 し た 時 間 は と 24 時 間 以 内 に 産 卵 し た 雌 個 体 数 は , 湧 水 区 ( 1 2 尾 ) に は そ れ ぞ れ 6 1 4 . 6 ± 3 8 2 . 9 ( 1 9 3 ~ 1 5 5 8 ) 分 と 11 尾 ( 9 1 . 7 % ), 河 川 区( 1 3 尾 )で は そ れ ぞ れ 7 3 5 . 5 ± 5 1 6 . 7 ( 2 4 0 ~ 1 8 1 7 ) 分 と 11 尾( 8 4 . 6 % )で あ っ た 。 こ れ に 対 し , 無 湧 出 水 区 ( 18 個 体 ) に は そ れ ぞ れ 1270±570.8 (245~2652)分 と 13 尾 ( 72.2%) で あ っ た ( 図 3-9) 。 水 槽 投 入 時 か ら 初 回 産 卵 ま で 要 し た 時 間 に は ,湧 水 区 と 河 川 区 の 間 に は 差 が な く ( Tu k e y - K r a m e r ) ,無 湧 出 水 区 に は こ れ ら に 比 べ 2 倍 ほ ど 長 か っ た ( Tu k e y - K r a m e r ; p < 0 . 0 5 ) 。 41 (A) (B) (C) 図 3-3. 実 験 水 槽 に お け る シ ロ ザ ケ の 各 産 卵 回 に お け る 放 卵 率 (放 卵 数 / 孕 卵 数 )の 平 均 値 . エ ラ ー バ ー は 標 準 偏 差 を 示 す . (A) 3 回 産 卵 個 体 , (B) 4 回 産 卵 個 体 , (C) 5 回 産卵個体. 42 図 3-4. 実 験 水 槽 に お け る シ ロ ザ ケ の 各 産 卵 回 個 体 の 孕 卵 数 の 平 均 値 .エ ラ ー バ ー は 標準偏差を示す. 43 1200 1回目の放卵数(粒) 1000 800 600 y = 0.2603x + 208.47 r = 0.757 p < 0.01 400 200 0 1000 1200 1400 1600 1800 2000 2200 孕卵数(粒) 2400 2600 図 3-5. 実 験 水 槽 に お け る シ ロ ザ ケ の 孕 卵 数 と 1 回 目 の 放 卵 数 の 関 係 . 44 2800 3000 図 3-6. 実 験 水 槽 中 層 お よ び 湧 出 地 点 の 水 温 変 化 . 黒 矢 印 :湧 出 停 止 開 始 , 白 矢 印 :水 槽 循 環 水 開 始 , 赤 矢 印 :湧 水 開 始 . 45 (A) (B) 図 3 - 7 . 実 験 水 槽 に お け る 実 験 水 の 湧 出 地 点 と 産 卵 場 所 の 平 面 図 . ( A ) 2 0 0 9 年 ~ 2 0 11 年 , (B) 2012 年 お よ び 2013 年 . 黒 丸 : 実 験 水 湧 出 地 点 , 赤 四 角 : 無 湧 出 水 区 の 産 卵 場所, 緑三角: 湧水区の産卵場所, 紫丸: 河川区の産卵場所. 縦軸および横軸の数値 は 起 点 と し た ガ ラ ス 面 左 端 か ら の 距 離 ( cm) . 46 ( A) 35 30 個体数 25 20 15 10 5 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 180 190 産室から実験水湧出地点までの距離(cm) 湧水区 n = 106 無湧出水区 n = 19 個体数 ( B) 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 産室から実験水湧出地点までの距離(cm) 湧水区 n = 16 河川水区 n = 14 無湧出水区 n = 22 図 3 - 8 . 実 験 水 槽 に お け る 実 験 水 湧 出 地 点 か ら 産 室 ま で の 距 離( c m ).( A )産 室 中 心 点 と 最 も 近 い 実 験 水 湧 出 地 点 ま で の 距 離( 2 0 0 9 ~ 2 0 11 年 ), ( B )B 槽 に お け る 産 室 中 心 点 と 実 験 水 湧 出 地 点 ま で の 距 離 ( 2012 お よ び 2013 年 ) . 47 ( A) 12 10 個体数 8 6 4 2 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 産卵までに要した時間(h) 湧水区 n = 56 20 22 24 24h < 無湧出水区 n = 22 ( B) 6 5 個体数 4 3 2 1 0 2 4 6 8 湧水区 n = 12 10 12 14 16 18 産卵までに要した時間(h) 河川水区 n = 13 20 22 24 24h < 無湧出水区 n = 18 図 3-9. 実 験 水 槽 に お け る 異 な る 環 境 下 で 雌 親 魚 が 産 卵 ま で に 要 し た 時 間 の 頻 度 分 布 . ( A ) 2 0 0 9 年 ~ 2 0 11 年 , ( B ) 2 0 1 2 年 お よ び 2 0 1 3 年 . 48 表 3-1. 実験水槽における産卵状況.(A)3 回産卵個体,(B)4 回産卵個体,(C)5 回産卵個体. (A) DATE NO ♀3 2003/11/16 ♀7 2004/11/21 ♀9 2004/11/29 ♀ 19 2007/11/11 ♀ 22 2008/11/15 NO DATE ♀ 26 2009/11/24 2003/11/16 平均値±SD ♀ 3 ♀7 2004/11/21 ♀9 2004/11/29 ♀ 19 2007/11/11 NO DATE ♀ 22 2008/11/15 ♀♀26 2009/11/24 1 2003/11/3 NO DATE (B) 平均値±SD ♀ 2 2003/11/7 ♀3 2003/11/16 ♀4 2003/11/27 ♀7 2004/11/21 ♀6 2004/11/3 ♀9 2004/11/29 ♀8 2004/11/27 NO DATE ♀ 19 2007/11/11 ♀ 11 2005/11/21 ♀ 22 2008/11/15 1 2003/11/3 ♀♀12 2005/11/25 2009/11/24 2 2003/11/7 ♀ 26 ♀♀13 2005/11/28 平均値±SD ♀♀14 4 2003/11/27 2006/11/7 6 2004/11/3 ♀♀15 2006/11/13 8 2004/11/27 ♀♀16 2006/11/24 ♀ 18 11 2005/11/21 ♀ DATE 2007/11/6 NO ♀ 20 12 2005/11/25 ♀ 2007/11/22 ♀♀ 1 13 2003/11/3 2005/11/28 ♀ 21 2007/11/24 ♀♀ 2 14 2003/11/7 2006/11/7 ♀ 23 2008/11/18 ♀♀ 4 15 2003/11/27 2006/11/13 ♀ 24 2008/11/20 ♀♀ 6 16 2004/11/3 2006/11/24 ♀ 25 2009/11/2 ♀8 2004/11/27 2007/11/6 平均値±SD ♀ 18 ♀ 11 2005/11/21 ♀ 20 2007/11/22 ♀ 12 2005/11/25 ♀ 21 2007/11/24 DATE ♀ NO 13 2005/11/28 ♀ 23 2008/11/18 ♀ 14 2006/11/7 ♀♀24 5 2008/11/20 2004/11/2 ♀ 1525 2006/11/13 ♀ 10 2009/11/2 2004/11/30 ♀ 16 2006/11/24 ♀ 17 平均値±SD 2006/11/25 ♀ 18 2007/11/6 平均値±SD ♀ 20 2007/11/22 NO DATE ♀ 21 2007/11/24 平 均 2008/11/18 ♀5 最小値 ♀ 23 2004/11/2 2008/11/20 ♀ 10 最大値 ♀ 24 2004/11/30 ♀ 25 2009/11/2 ♀ 17 標準偏差 2006/11/25 平均値±SD 平均値±SD (C) DATE 平 均 最小値 NO ♀5 2004/11/2 最大値 2004/11/30 標準偏差 ♀ 10 ♀ 17 2006/11/25 平均値±SD 尾叉長 1回目 2回目 3回目 4回目 放卵数 放卵率(% ) 放卵数 放卵率(% ) 残卵数 残卵率(% ) 40. 6 451 31. 5 346 24. 1 54 3. 8 1433 577 716 47. 1 413 27. 2 383 25. 2 8 0. 5 1520 561 740 42. 8 629 36. 4 333 19. 2 28 1. 6 1730 632 尾叉長 566 873 36. 7 814 34. 2 603 25. 3 89 3. 7 2379 577 561 632 尾叉長 566 (mm) 尾叉長 588 630 (mm) 579.602 7± 28. 3 554 630 577 584 561 尾叉長 588 632 (mm) 602 566 630 690 588 602 649 579. 7±630 28. 3 608 584 622 588 665 尾叉長 602 674 (mm) 690 633 630 649 573 602 608 620 630 622 606 584 665 625 588 623.674 6± 32. 0 602 633 690 573 尾叉長 649 620 (mm) 608 606 605 622 625 575 665 623. 6± 32. 0 624 674 601. 3± 24. 7 633 尾叉長 573 (mm) 620 (mm) 605 575 624 620 573 690 31. 5 601. 3± 24. 7 3回目 19. 2 264 放卵数 放卵率(% 610 31. 0 ) 346 423. 1± 147. 2 24.24. 0± 1 4. 4 716 47. 1 413 27. 2 383 25. 2 740 42. 8 629 36. 4 333 19. 2 36. 7 814 34. 2 603 873 1回目 647 47. 1 放卵数 (% )* 653 1回目 33.82 842 29. 放卵数 (% )* 701. 742 8± 100. 7 41. 3±45. 6 35. 582 40. 6 883 35. 8 716 47. 1 653 34. 6 740 8 1回目 42. 631 31. 1 873 36. 7 )* 放卵数 (% 901 34. 2 647 47.29. 1 842 886 32. 98 653 33.35. 2 4 742 799 34. 9 701. 8±883 100. 7 41. 3± 5.86 35. 644 36. 6 653 34.26 661 34. 631 1046 901 1回目 1134 放卵数 886 758 842 799 523 742 644 769 883 661 842 653 1046 887 631 800.1134 1± 155. 0 901 758 31.61 40. 34.72 44. (%32. )* 33. 69 29.34. 8 34. 29 35.36. 4 37. 46 35.34. 8 36. 22 34.40. 6 36. 36 31. 1 7 35.44. 4± 3. 4 34.33. 2 6 886 9 2 523 1回目 32.34. 799 34.37. 9 4 769 放卵数 (% )* 644 36.36. 6 842 765 31. 42 661 34.36. 2 887 640 34. 13 1046 40. 64± 3. 4 800. 1± 155. 0 35. 659 26. 7 1134 44. 7 688. 0± 67. 4 30. 7± 3. 7 758 33. 6 1回目 523 34.(% 2 )* 34. 7 放卵数 783 620 769 605 573 765 523 606 842 575 690 640 1134 625 887 624 31. 5 659149. 6 623. 6±3± 32. 0 7 800. 1± 0± 155. 04 601. 24. 688. 67. 尾叉長 2回目 29. 9 410 放卵数 放卵率(% 681 34. 6 ) 451 566. 3± 167. 1 32.31. 3±53. 4 放卵数 765 1回目 783 523 1134 640 149. 6 659 688. 0± 67. 4 37.31. 4 4 26. 7 36.34. 2 1 44. 7 36.26. 3 7 3. 8 35.30. 4±7± 3. 4 3. 7 34. 7 (% )* 26. 7 31. 4 44. 7 34. 1 3. 8 26. 7 30. 7± 3. 7 2回目 410 29. 9 ) 放卵数 放卵率(% 681 2回目 34.36 855 30. 放卵数 放卵率(% )4 566. 640 3± 167. 1 32. 3±53. 30. 451 31. 5 786 31. 8 413 27. 2 542 28. 7 629 4 2回目 36. 621 30. 6 814 34. 2 放卵数 放卵率(% 720 27. 3 ) 410 29.30. 9 855 782 29. 03 681 34.30. 6 640 840 36. 75 566. 3±786 167. 1 32. 3± 3.84 31. 591 33. 6 542 28.47 587 30. 621 30.36 780 30. 720 2回目 27.63 803 31. 放卵数 放卵率(% 782 29.40 ) 708 31. 855 30. 3 7 840 36. 439 28. 7 640 30.33. 5 591 678 32. 96 786 31. 8 587 30.34 798 34. 542 28.30. 7 780 754 30. 93 621 30. 6 803 701. 4± 116. 1 31.31. 1±62. 3 720 27.31. 3 4 708 782 0 7 439 2回目 29.28. 840 36.32. 7 9 678 放卵数 放卵率(% ) 591 33.34. 6 798 750 30. 83 587 30.30. 4 754 564 30. 09 780 30. 31± 2. 3 701. 4± 116. 1 31. 805 32. 6 803 31. 6 706. 3± 126. 3 31. 1± 1. 3 708 31. 4 2回目 439 28. 7 31. 放卵数702 放卵率(% )1 678 750 439 798 564 855 754 805114. 2 701. 4±3± 116. 1 3 706. 126. 放卵数 750 2回目 702 439 855 564 114. 2 805 706. 3± 126. 3 32.30. 9 8 27. 3 34.30. 3 0 36. 7 30.32. 9 6 2. 1 31.31. 1±1± 2. 31. 3 31. 1 放卵率(% )27. 3 30. 8 36. 7 30. 0 2. 1 32. 6 31. 1± 1. 3 3回目 519 3 1 353 3回目 19.23. 503 22.21. 0 5 443 放卵数 放卵率(% ) 286 16.19. 3 458 609 25. 07 490 25.20. 4 509 395 21. 08 505 19. 68± 3. 5 513. 4± 113. 6 22. 462 18. 7 559 22. 0 488. 7± 109. 5 21. 6± 3. 2 675 29. 9 3回目 353 23. 1 22.) 6 放卵数510 放卵率(% 609 3回目 510 286 804 395 110. 5 462 488. 7± 109. 5 21.25. 5 0 16. 3 19.21. 7 0 29. 9 20.18. 8 7 3. 4 22.21. 8±6± 3. 53. 2 22. 6 放卵率(% ) 16. 3 25. 0 29. 9 21. 0 3. 4 18. 7 5回目 放卵率(% ) 25. 3 499 24.66 505 19. 544 3回目 20.06 559 22. 放卵数 放卵率(% 519 19.93) 675 29. 804 28. 5 0 503 22. 353 23. 1 490 23.16. 3 286 443 21. 53 590 23. 9 490 25.74 458 19. 500 26.19. 5 505 509 20. 86 499 24. 6 0 559 513. 4± 113. 6 22.22. 8± 3. 5 544 20.29. 6 9 675 放卵数 4回目 放卵数 放卵率(% ) 放卵数 放卵率(% ) 残卵 52 3. 8 残卵数 残卵率(% ) 22 1. 1 54 3.1. 85 42. 2± 29. 0 2. 4± 8 0. 5 28 264 19. 2 ) 放卵数 放卵率(% 610 3回目 31.50 804 28. 放卵数 放卵率(% )4 423.490 1± 147. 2 24. 0±34. 23. 346 24. 1 590 23. 9 383 25. 2 500 26. 5 333 2 3回目 19. 499 24. 6 603 25. 3 放卵数 放卵率(% 544 20. 6 ) 264 19.28. 2 804 519 19. 35 610 31.23. 0 490 503 22. 03 423. 1±590 147. 2 24. 0± 4.94 23. 286 16. 3 500 26.45 490 25. 443 609 286 458 395 804 509 462110. 5 513. 4±7± 113. 6 5 488. 109. 放卵数 孕卵数 (% )* 582 1回目 47. 1 647 放卵数 (% 2 )* 653 33. 582 701. 8± 100. 7 41.40. 3±65. 6 放卵率(% ) 残卵 放卵数 554 (mm) 588 579.554 7± 28. 3 放卵数 5回目 (mm) 21. 6± 3. 2 4回目 放卵数 4回目 314 放卵数 220 放卵率(% ) 11. 1 放卵率(% ) 10. 5 201 8. 1 191 10. 1 98287 43 199 251 483 238 483117. 1 212. 5±3± 108. 3 9 340. 124. 251 483 5回目 放卵数 放卵率(% ) 4. 11. 8 8 1. 7 8. 13. 5 4 19. 5 9. 19. 7 5 4. 5 9. 41± 4. 14. 1 14. 9± 4回目 232 10. 2 43 放卵率(% ) 1. 7 11. 8 483 19. 5 117. 1 340. 3± 124. 9 13. 4 4. 5 19. 5 14. 9± 4. 1 放卵率(% ) 5回目 放卵数 放卵率(% ) 20 0. 8 29 1. 5 56 2. 3 35± 18. 7 1. 5± 0. 7 5回目 放卵数 35 20 20 29 56 18.56 7 35± 18. 7 残卵 放卵率(%1.) 5 0. 8 0. 8 1. 5 2. 3 2. 3 0. 7 1. 5± 0. 7 35 5回目 1. 5 放卵数 放卵率(% ) 0. 8 20 2056 0. 8 2. 3 29 1. 5 18. 7 0. 7 1520 1. 6 1730 3. 7 2379 孕卵数 1373 52 3. 8 ) 残卵数 残卵率(% 残卵 822 0.1.31 残卵数 残卵率(% ) 42. 2± 2.0.4± 7 29. 0 3 1. 5 54 3. 8 9 0. 4 8 0. 5 0 0. 0 28 6 残卵 1. 4. 88 3 89 3. 7 残卵数 残卵率(% ) 31 1. 2 52 8 3. 80. 3 77 2. 9 22 7 1. 10. 3 0 0. 0 42. 2± 29. 0 2. 4± 1. 5 319 1.0.84 60 088 5回目 放卵数 431 0 8 211 4回目 16.13. 14898 6. 54. 8 放卵数 放卵率(% ) 207 11. 8. 85 199 287 11. 8 188 9. 79. 7 238 251 13. 4 246 9. 5 212. 5± 108. 3 9.19. 41± 483 5 4. 1 43 1. 7 340. 3± 124. 9 14. 9± 4. 1 46 2. 0 4回目 211 13. 8 10.) 2 放卵数232 放卵率(% 287 放卵率(% ) 放卵率(% ) 8. 8 1 11. 10. 9. 71 190 9.54 246 9. 4回目 441 16. 43 1. 77 放卵数 放卵率(% ) 431 16. 46 2. 00 314 11. 1 148 6. 8 5 211 13. 220 10.11. 5 207 98 4. 8 8 201 8. 19. 7 188 199 8. 5 191 10. 9. 1 246 238 9. 75 19043 9. 41. 7 212. 5± 108. 3 9. 41± 4. 1 44146 16. 2. 70 放卵数 放卵数 5回目 放卵数 4回目 9. 4 190 放卵数 放卵率(% ) 441 16. 7 314 11.01 431 16. 220 10. 5 148 6. 5 201 207 191 188 89 5回目 1373 孕卵数 1966 1433 1734± 383. 8 1966 2823 孕卵数 1734± 383. 8 2099 1433 2469 1520 1886 1730 2030 孕卵数 2379 2637 1373 2823 2695 1966 2099 2290 1734± 383. 24698 1759 1886 1932 0.0.30 0.4.03 2030 2577 2637 孕卵数 2539 2695 2256 2823 2290 1529 2099 1759 2058 2469 1932 2329 1886 2577 2442 2030 2255. 2539 9± 358. 9 2637 2256 2695 1529 孕卵数 2290 2058 1759 2329 2435 1932 2442 1879 25779± 358. 9 2255. 2471 2539 2261. 7± 331. 9 2256 孕卵数 1529 2257 2058 2435 1529 2329 1879 2823 残卵 031 0.1.02 残卵数 残卵率(% ) 77 69 3.2.19 8 0 0. 30. 0 3 0. 2 7 31 0. 31. 8 70 3. 4 9 6 0. 40. 3 32 1. 4 0 0 0. 00. 0 54 2. 2 88 0 4. 30. 0 28. 5± 31. 2 1. 3± 1. 4 31 69 1. 23. 1 77 3 2. 90. 2 残卵 0 70 0. 03. 4 残卵数 残卵率(% ) 31 32 1. 81. 4 4 0. 2 6 54 0. 32. 2 0 0. 0 0 5± 31. 2 0.1.03± 1. 4 28. 6 0. 2 0 0. 0 3. 3± 3. 1 0. 1± 0. 1 69 3. 1 残卵 3残卵数 25 0. 2 残卵率(% 1.) 1 70 4 32 0 0 88 54 6 30. 1 28. 5± 21 3. 31. 3± 3. 残卵数 4 0 56 2. 3 6 35± 18. 7 1. 5± 0. 7 3. 3± 3. 1 3. 40. 2 0. 0 1. 40. 0 4. 3 2. 20. 2 1. 4 1. 3± 0.1. 1±40. 1 残卵 25 2442 2471 346. 5 2255. 9± 358. 9 9 2261. 7± 331. 1. 1 0 残卵率(% ) 0. 0 0. 2 88 4. 3 0. 0 30. 1 1. 4 0. 2 0. 1± 0. 1 孕卵数 2257 1529 2435 2823 1879 346. 5 2471 2261. 7± 331. 9 平 均 620 783 34. 7 702 31. 1 510 22. 6 232 10. 2 35 1. 5 25 1. 1 2257 最小値 573 523 26. 7 439 27. 3 286 16. 3 43 1. 7 20 0. 8 0 0. 0 1529 最大値 690 1134 44. 7 855 36. 7 804 29. 9 483 19. 5 56 2. 3 88 4. 3 2823 標準偏差 31. 5 149. 6 3. 8 114. 2 2. 1 110. 5 3. 4 117. 1 4. 5 18. 7 0. 7 30. 1 1. 4 346. 5 49 3-3 3.3.1 考察 産卵回数と放卵数 本 研 究 で の シ ロ ザ ケ の 産 卵 回 数 は 3 ~ 5 回 で あ り ,既 報 の 4 〜 6 回( D u k e r 1 9 7 7 ; Schroder 1973,1982) と ほ ぼ 同 じ で あ っ た 。 シ ロ ザ ケ は 1 回 目 の 産 卵 で 孕 卵 数 の 35%程 度 を 放 卵 し , 最 後 の 産 卵 で 初 回 放 卵 数 の 1/2~1/4 を 放 卵 す る こ と が 知 ら れ て お り( G r o o t a n d M a r g o l i s 1 9 9 1 ),マ ス ノ ス ケ O . t s h a w y t s c h a( H a w k e 1 9 7 8 ) お よ び タ イ セ イ ヨ ウ サ ケ ( Gaudemar et al. 2000) で は , 産 卵 回 数 が 増 え る ご と に放卵数が減少する傾向が報告されている。本研究では,1 回目の産卵で孕卵数 の 3 6 . 2 % を 産 卵 し ,最 後 の 産 卵 に お け る 産 卵 数 の 初 回 産 卵 数 に 対 す る 比 率 は ,3 回 産 卵 個 体 に お い て は 60.2%, 4 回 産 卵 個 体 に お い て は 26.6%, 5 回 産 卵 個 体 に お い て は 5.1%で あ り , 5 回 産 卵 個 体 を 除 い て , Groot and Margolis (1991) と ほ ぼ 同 様 の 値 で あ っ た ( 図 3 - 3 )。 産 卵 床 は 形 成 さ れ て か ら 時 間 が 経 過 す る に 伴 い ,そ の 形 状 の 判 別 が 困 難 に な る 。 その際,産卵床の中で確認が容易な場所は産卵床の上流部にあるピット部分であ るため,北海道内で行われているシロザケの卵の掘り起し調査では,ピット部分 に 近 い 場 所 を 行 う 場 合 が 多 い( 佐 藤 信 洋 氏 ,私 信 )。本 研 究 結 果 か ら ,産 卵 回 数 を 経るに伴い放卵数が減少し,最後の産卵では放卵数が著しく減少することが判明 した。特にシロザケの産卵床の中でピット部分に近い産室は,最後の産卵場所で あり,著しく放卵数が少ない可能性が高い。そのため,野外調査の際には,産卵 直後の産室直上部に目印を付けるなど,できる限り産卵 3 回目までの産室を調査 す べ き で あ ろ う 。 ま た , 本 研 究 で 用 い た 実 験 水 槽 で は , 総 産 卵 回 数 が 3~5 回 の 全 て の 個 体 で あ っ て も , 1 回 目 の 産 卵 で は , 孕 卵 数 の 約 36%を 放 卵 す る こ と が 確 認 さ れ ,1 回 目 の 産 室 の 卵 数 と 孕 卵 数 に は 強 い 相 関 が あ っ た 。し た が っ て ,1 回 目 の 産室の卵数を正確に計測できれば,その個体のおおよその孕卵数の推計が可能で あると判断された。 3.3.2 シロザケの湧出水選択性 シロザケを水槽に入れられてから産卵に至るまでの時間は,河床から水が湧き あ が っ て い な い 場 合 ,湧 い て い る 場 合 に 比 べ は ,有 意 に 長 く な っ た( 図 3 - 9 )。湧 水区と河川水区の条件下では,産卵に至るまでの時間に有意差は認められなかっ 50 た が , 河 川 水 区 で は 120 分 ほ ど 長 く な っ た 。 も し 産 卵 ま で の 時 間 が 長 い こ と が , より好適な産卵場所を期待しての減少だと仮定すれば,産卵場所として河川浸透 水 も 選 択 す る も の の ,地 下 水 由 来 の 湧 水 を よ り 選 択 し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 また,湧水区と河川区のいずれの条件下でも,河床から水が湧出している位置を 判 別 し ,そ の 周 辺 で 産 卵 す る こ と が 確 認 で き た 。こ れ は 既 往 の 知 見 と 一 致 す る( 総 説 と し て , Bjornn and Reiser 1991) 。 河 床 か ら 河 川 水 が 湧 出 す る 場 所 を 選 択 す る理由として,河床が起伏を繰り返して河川水との摩擦抵抗が大きくなるほど河 床礫の間に酸素を多く含んだ水が浸透し,礫に埋められた卵の発生が進む ( E d w a r d s 1 9 9 8 )こ と が 考 え ら れ る 。河 川 改 修 工 事 な ど に よ り ,河 川 の 構 造 が 単 純 化 さ れ た 河 川 で は( 福 島 2 0 0 5 ),産 卵 場 所 が 減 少 す る た め ,シ ロ ザ ケ の 繁 殖 場 所を維持するためにも,河川環境は良好に保たれている必要がある。一方で,湧 出地点を選定する要因については本実験では明らかとはならなかった。本実験で は河床からの湧出水の水流は測定限界以下であり,水槽内と底面での水温差もほ とんど確認できなかった。加えて,嗅覚や味覚による水の違いを認識できない水 槽循環水を用いた実験下でも正確に水の湧出地点を産卵場所として選択しおり, ニオイなどを感知していたとは考えづらい。実験に使用した水槽内ではほぼ止水 であったことから,通常,絶えず流れのある自然河川と比較し,河床から湧昇流 を判別し易い条件下であったと推察されるが,底面からの水の湧出場所について は,水温ばかりでなく,計測機器では検知できない水流を感知する可能性がある と考えられる。 51 第 4 章 根室地域におけるシロザケの自然再生産 根室 海峡に流 入する河 川 は,標津町内に ある忠類 川と伊茶 仁川を境に 2 つ対 照 的 な 河 川 形 態 が 存 在 す る ( 石 城 1 9 8 4 )。 そ の た め , 将 来 に わ た る 自 然 再 生 産 に よ る資源の管理体制を確立する上で,河川ごとに自然再生産状況および産卵環境を 定量的に評価することが必要不可欠である。しかしながら,我が国におけるシロ ザ ケ の 自 然 再 生 産 に 関 す る 研 究 は 少 な く ( 佐 野 1955; 佐 野 ・ 長 沢 1958, 小 林 1 9 6 8 ), こ れ ま で , 標 津 地 域 各 河 川 に お け る シ ロ ザ ケ の 自 然 再 生 産 に 関 す る 詳 細 な調査研究はなされていない。そのため,当地域におけるシロザケの漁業資源を 回復させるためにも,現状におけるシロザケの自然再生産の実態を明らかにし, 野生魚による資源造成の可能性を検討する必要がある。また,近年のシロザケの 来遊数の増減は,北海道 5 海区(オホーツク海区,根室海区,太平洋えりも以東 海 区 , え り も 以 西 海 区 お よ び 日 本 海 区 ) に お い て 異 な っ て お り ( Miyakoshi and N a g a t a 2 0 1 2 ), 河 川 へ の 遡 上 尾 数 も 変 動 が あ る 。 そ の た め , 野 生 魚 に よ る 再 生 産 を図るうえで,当地域におけるシロザケの沿岸来遊数および河川遡上数の変動を 分析する必要がある。 本章では,根室地域の各河川におけるシロザケの自然再生産の現状を評価する ため,産卵状況,発眼卵の生残率および産卵適地面積を算出し,さらに,各河川 の遡上状況を調べるため,沿岸漁業および人工ふ化放流事業の実態について分析 し,野生魚の再生産の可能性を検討した。 52 4-1. 4.1.1 材料および方法 産卵状況 産 卵 状 況 を , 2 0 1 2 年 は 9 月 7 , 3 0 日 , 1 0 月 9 , 1 7 , 2 5 日 , 11 月 1 4 , 2 6 日 , 1 2 月 4 お よ び 1 4 日 の 9 回 , 2 0 1 3 年 は 9 月 5 , 2 4 日 , 1 0 月 8 , 1 5 日 , 11 月 5 , 1 4 , 25 日 , 12 月 3 日 の 8 回 , 標 津 川 , 伊 茶 仁 川 , 忠 類 川 , 薫 別 川 お よ び 元 崎 無 異 川 の 5 水 系 12 河 川 で 行 っ た 。 調 査 場 所 は , こ れ ま で 産 卵 が 確 認 さ れ て い た か , 遡 上 が 完 全 に 阻 害 さ れ る ダ ム や 滝 が 無 く , 産 卵 が 可 能 な 河 床 で あ る 28 定 点 を 選 定 し た ( 図 4 - 1 )。 な お , 定 点 に は ふ 化 場 近 辺 5 カ 所 も 含 ま れ る が , ふ 化 場 用 水 の 放水口には,遡上途中の親魚が数多く観察されることから,定点は放水口から最 低 30 m 以 上 離 れ た 場 所 を 選 定 し た 。 各 定 点 に お い て 流 路 長 100 m 以 上 の 区 間 で , 目 視 に よ り シ ロ ザ ケ の 産 卵 行 動 中の生体と死骸および産卵床の数をカウントし,同時に河川水温を記録した。な お,死骸はそれ以前の調査でカウントした生体と死骸との重複を避けるため,目 視により死後 3 日以上経過した死骸の数を除外した。また,産卵床の確認は, 増水時および増水後にはその判別が難しく,産卵床が集中して重複した定点では 正確な確認が困難であるため,確実に判別できた産卵床の数のみを記録した。 な お ,調 査 を 行 っ た 2 0 1 2 年 と 2 0 1 3 年 に お い て ,標 津 川 で は ,増 水 に よ っ て ウ ラ イ 上 流 部 へ の シ ロ ザ ケ の 遡 上 が 確 認 さ れ た の は , 2012 年 が 10 月 上 旬 お よ び 中 旬 , さ ら に 1 0 月 下 旬 か ら 11 月 の 中 旬 に か け て の 2 週 間 , 2 0 1 3 年 は 9 月 中 旬 , 1 0 月 下 旬 , 11 月 上 旬 で あ っ た 。 4.1.2 産卵床における生残率の推定 産卵床内の発眼卵の生残率の推定は,自然再生産状況調査の際に確認した各産 卵 床 の 1 回 目 も し く は 2 回 目 の 産 室 の 直 上 部 に 目 印 を 付 け ,発 眼 時 期 に あ わ せ て 行った。産卵床上部の礫を掘起こし,産室を構成する礫と卵を確認した後にネッ トを用いて卵を採集し,生きている発眼卵および死卵の数を計測した。その後, 生きている卵のみ,元の産室に埋め戻した。同時に,産卵場所に地下水由来の湧 水が存在するかを判別するため,産卵床上部の河川水温と産室内の水温を測定し た。 産 室 上 の 2 mm 以 下 の 砂 泥 含 有 率 と 生 残 率 と の 関 係 を 明 ら か に す る た め , 産 室 53 直 上 部 の 礫 を ス コ ッ プ と 観 賞 魚 用 フ ィ ッ シ ュ ネ ッ ト ( 目 合 い 0.5 mm) で 採 集 し た 。 礫 は 持 ち 帰 り , 乾 燥 さ せ た 後 , 目 開 き が 50‐ 0.25 mm の JIS 標 準 篩 を 用 い て乾式篩分けを行い,それぞれの重量を記録した。 4.1.3 産卵適地の推定 各河川における産卵可能流路内における産卵適地の推定は下記の基準で行っ た。 ① これまで事前調査でシロザケの産卵が確認されている,もしくは河床 材 料 が サ ケ 科 魚 類 の 産 卵 に 不 適 で あ る 2 mm 径 以 下 の 砂 ( Koski 1 9 7 5 ), も し く は 1 2 8 m m 径 以 上 の 大 礫 ( K o n d o l f a n d Wo l m a n 1 9 9 3 ) が優先していないこと。 ② 下流域にシロザケ親魚の遡上を大きく妨げる滝やダムが無い場所であ ること。 ③ ア メ マ ス , オ シ ョ ロ コ マ S. malma, サ ク ラ マ ス O. masou な ど 他 の サ ケ科魚類が生息していること。 ④ サ ク ラ マ ス の 主 要 な 産 卵 場 所 よ り 下 流 域 で あ る こ と ( 眞 山 2 0 0 4 )。 河 川 の 産 卵 適 地 の 計 測 は , Isaak et al. (2007)に 基 づ き , 次 の よ う に 行 っ た ( 図 4 - 2 )。 各 調 査 地 点 に お い て , 川 幅 を レ ー ザ ー 計 測 計 ( Laser 550AS, Nikon 社 ) あ る い は 巻 尺 で 計 測 し , そ の 川 幅 の 約 10 倍 の 距 離 の 流 路 長 を 調 査 区 間 と し た 。 トランセクト(河川横断線)の間隔は,計測した川幅と等間隔とし,流路に対 し て 10 本 程 度 設 定 し た 。 各 ト ラ ン セ ク ト に お い て 川 幅 を 再 度 計 測 し , ま た , シ ロ ザ ケ が 産 卵 可 能 で あ る 水 深 10 cm 以 上 ( 小 林 1968, Soin 1954) の 川 幅 も 計 測 し た 。 さ ら に , 各 ト ラ ン セ ク ト に 水 深 10 cm 以 上 の 川 幅 に 応 じ て 3~5 箇 所 の 計 測 点 ( 縦 1 m×横 1 m の 方 形 枠 ) を 等 間 隔 で 設 け , 各 計 測 点 で 水 深 , 6 割水深の流速を計測した。その後,箱メガネによる目視および Gravelometer (US SAH-97)を 用 い て 枠 内 の 河 床 礫 の サ イ ズ を 明 ら か に し た 。 礫 の サ イ ズ は 直 径 , 2 mm 以 下 , 2~16 mm, 16~64 mm, 64~128 mm お よ び 128 mm 以 上 に 分 け , そ の 割 合 を 記 録 し た 。 サ ケ 科 魚 類 が 産 卵 す る 河 床 は , 砂 54 ( ~ 2 mm 径 ) , 小 礫 ( 2~ 16 mm 径 ) , 中 礫 ( 16~ 64 mm 径 ) , 大 礫 ( 64~ 256 mm 径 ) お よ び 巨 礫 ( 256 mm 径 以 上 ) な ど の 様 々 な 大 き さ で 構 成 さ れ て い る ( Inoue and Nakano 1998) 。 シ ロ ザ ケ の 場 合 , 卵 が 納 ま る 産 室 に は 大 き な 礫を沈下させ礎石として使用し,さらに,細粒土砂を産卵床から排出している ( P e t e r s o n a n d Q u i n n 1 9 9 6 ) 。 K o n d o l f a n d Wo l m a n ( 1 9 9 3 ) に よ る と , サ ケ 科 魚 類 が 産 卵 す る 河 床 材 料 の 礫 径 ( 50%粒 径 ) は 体 長 の 1/10 程 度 ま で で あ り , 一 方 シ ロ ザ ケ は 粒 径 1~4 cm 程 度 で あ る と 報 告 し て い る 。 こ れ ら の こ と か ら , 本 研 究 で 計 測 し た 礫 径 組 成 の 中 で , 中 礫 ( 16~ 64 mm) が シ ロ ザ ケ の 産 卵 床基質の範囲に当てはまると判断した。したがって,本研究では,既知の報告 ( K o n d o l f a n d Wo l m a n 1 9 9 3 ; J o h n s o n e t a l . 1 9 7 1 ) を 参 考 に , シ ロ ザ ケ が 産 卵 可 能 な 水 深 が 10 cm 以 上 , か つ , 流 速 が 83.8 cm/sec 以 内 で , 礫 径 16-64 mm で 構 成 さ れ る 河 床 を 産 卵 適 地 と し , そ の 面 積 を 計 測 し た 。 各調査区域での産卵適地面積は,次のように算出した。 ① 方 形 枠 内 ( 1 m×1 m) の 水 深 と 流 速 を 測 定 ② 方 形 枠 内 の 中 礫 ( 16~ 64 mm) の 面 積 を 測 定 ③ トランセクト毎に方形枠内の平均産卵適地面積割合を計算 ④ 隣り合ったトランセクトにおける平均産卵適地面積割合を算出 ⑤ 隣 り 合 っ た ト ラ ン セ ク ト 間 の 水 深 10 cm 以 下 面 積 を 計 算 し , ④ の 平 均 産卵適地面積割合から,隣り合ったトランセクト間の産卵適地面積を 算出 ⑥ ⑤から全てのトランセクト間の産卵適地面積を累計 本研究の河川調査では,産卵場としての湧水選択性の有無についての判別が困 難であった。そのため,第 3 章の人工河川での結果を踏まえて,主に湧水域を 産卵場所として選択するが,それ以外の場所でも産卵するとの前提で,湧水の有 無は確認せず,調査を行った 4.1.4 シロザケの来遊数と河川回帰率 北海道内各海区および標津地域における沿岸漁獲尾数と河川捕獲尾数の 55 1967~2013年 ま で の 経 年 変 化 お よ び 単 純 回 帰 率 {( 来 遊 数 / 3年 前 の 放 流 数 ) × 1 0 0 } , 河 川 遡 上 率 {( 河 川 捕 獲 数 / 来 遊 数 ) × 1 0 0 },{( 河 川 捕 獲 尾 数 / 3 年 前 の 放 流 数 ) ×100} を , 北 海 道 さ け ・ ま す 増 殖 事 業 協 会 , 根 室 管 内 さ け ・ ま す 事 業 協 会 ( h t t p : / / s a k e - m a s u . o r. j p / h t m l / 0 7 - 0 1 . h t m l ) お よ び 標 津 漁 業 協 同 組 合 等 の 各 統計資料を用いて算出した。 56 図 4-1. 自 然 再 生 産 状 況 を 調 べ た 河 川 と 定 点 . 57 図 4-2. 産 卵 適 地 計 測 に 用 い た 各 調 査 地 点 設 定 の 模 式 図 . 川 幅 の 約 10 倍 の 距 離 の 流 路 長 を 調 査 区 間 と し , 川 幅 と 等 間 隔 の ト ラ ン セ ク ト ( 河 川 横 断 線 ), 流 路 に 対 し て 10 本 程 度 設 定 各 ト ラ ン セ ク ト に 水 深 10 cm 以 上 の 川 幅 に 応 じ て 3~ 5 箇 所 の 計 測 点 ( 縦 1m×横 1m の 方 形 枠 ) を 等 間 隔 で 設 定 . 58 4-2. 4.2.1 結果 自然産卵魚の分布 シ ロ ザ ケ の 生 体 ,死 骸 お よ び 産 卵 床 を ,全 水 系 で 確 認 し た( 表 4 - 1 )。根 室 地 域 5 水 系 に お け る シ ロ ザ ケ の 産 卵 個 体 ( 生 体 数 と 死 骸 数 の 合 計 ) の 90%以 上 は , ふ 化 場 か ら 0.5 km 以 内 の 河 床 域 ( 全 28 定 点 の う ち 6 定 点 ) に 集 中 し て お り , 特 に 元 崎 無 異 川 と シ ュ ラ 川 の 各 ふ 化 場 近 辺 の 流 路 長 100 m 当 た り の 産 卵 個 体 の 年 累 計 数 は 1,000 尾 以 上 で あ っ た 。 一 方 , ふ 化 場 近 辺 以 外 で は , 忠 類 川 で は ふ 化 場 か ら 4 k m 離 れ た 場 所 に も 全 産 卵 個 体 の 4 . 2 % が 見 ら れ た が ,そ れ 以 外 は ,ほ と ん ど 確 認 さ れ ず ,流 路 長 1 0 0 m 当 た り の 産 卵 個 体 の 年 累 計 数 は 1 0 尾 以 下 で あ っ た( 図 4 - 3 )。標 津 川 水 系 武 佐 川 の 各 支 流 の 1 6 定 点 の う ち ,シ ュ ラ 川 の ふ 化 場 近 辺 の 5 0 0 m 以 内 の 2 定 点 ( st.14 お よ び st.15) に お け る 産 卵 個 体 は 支 流 域 全 体 の 99.2% , 産 卵 床 数 の 9 8 . 6 % が 確 認 さ れ た 。な お ,シ ュ ラ 川 ふ 化 場 放 水 口 か ら 3 0 ~ 3 , 0 0 0 m 上 流 区 間 で は ,平 水 時 に シ ロ ザ ケ の 遡 上 が 困 難 な 落 差 3 0 ~ 7 0 c m 前 後 の 落 差 工 が 1 6 基あった。 4.2.2 自 然 産 卵 魚 の 産 卵 時 期 産 卵 個 体 の 確 認 時 期 は , 全 体 と し て 9 月 か ら 1 2 月 で あ り , 11 月 に そ の 確 認 数 は 多 い 傾 向 が 見 ら れ た が ,河 川 や 定 点 ご と に 異 な っ て い た( 図 4 - 4 )。河 川 捕 獲 が 行 わ れ て い な い 忠 類 川 に お い て , 産 卵 個 体 は 下 流 域 に お い て 9~12 月 の 間 に 確 認 さ れ た が , 上 流 域 ( 河 口 か ら 上 流 13 km 以 上 ) に あ る 4 定 点 で は , 2013 年 の 9 月 に 8 尾 が 確 認 さ れ た も の の ,1 0 月 以 降 は 全 く 確 認 さ れ な か っ た 。ま た ,標 津 川 水 系 の ふ 化 場 が あ る シ ュ ラ 川 で は , 9 月 に お け る 産 卵 個 体 が 全 期 間 の 0.46% で あ り,その数は著しく少なかった。また,シュラ川と同じ水系内の 4 支流での自然 産 卵 魚 の 確 認 数 は , 10 月 に 7 尾 ,12 月 に 1 尾 で あ っ た が ,シ ュ ラ 川 で の 確 認 数 が 一 番 多 か っ た 11 月 に は 全 く 確 認 さ れ な か っ た 。 4.2.3 発眼卵の生残率 発 眼 卵 の 生 残 率 は , 主 に 11 月 下 旬 以 降 に 産 卵 し た 個 体 の 産 卵 床 を 調 べ た ( 表 4 - 2 )。 2012 年 に , 5 水 系 8 河 川 10 定 点 で 75 個 の 産 卵 床 を 掘 起 し , 9,512 粒 の 卵 を 59 採 集 し た 。 そ の 生 残 率 は 44.9±43.8( 範 囲 0~100) %で あ っ た 。 2013 年 に は 5 水 系 5 河 川 7 定 点 で 50 個 の 産 卵 床 か ら 6,242 粒 の 卵 を 採 集 し た 。 そ の 生 残 率 は 51.9±29.1( 範 囲 0~99.1) %で あ っ た 。 発眼卵の生残率の平均値は,河川間および河川内でも産卵床により大きく異な っ て い た ( 表 4 - 2 )。 2 0 1 2 年 と 2 0 1 3 年 に お い て 同 じ 定 点 で 発 眼 卵 の 生 残 率 の デ ー タ が 得 ら れ た 箇 所 は , 元 崎 無 異 川 ふ 化 場 取 水 口 ( st. 2) と 薫 別 川 乳 薫 橋 ( st. 4 ) を 除 い て , ほ ぼ 同 様 の 結 果 が 得 ら れ た ( 図 4 - 5 )。 忠 類 川 , 2 0 1 2 年 の 薫 別 川 , 伊 茶 仁 川 の 発 眼 卵 の 生 残 率 は 他 の 調 査 定 点 と 比 べ て 高 か っ た ( 図 4 - 5 )。 産 室内の水温は,薫別川とシュラ川昭和橋を除いて,河川水とほぼ同じか,それよ り 低 い 値 を 示 し た 。 薫 別 川 で は , 産 室 内 水 温 が 河 川 水 と 比 べ て 2.8~4.6℃ 高 い 値 を示しており,冬期間でも水温の低下は見られなかった。また,伊茶仁川は,冬 期 間 に お い て も 河 川 水 温 が 5.0℃ 前 後 も あ る 湧 水 が 多 い 河 川 で あ る が , 河 川 水 温 と 産 室 内 水 温 の 差 は ほ と ん ど 認 め ら れ な か っ た ( 表 4 - 2 , 図 4 - 6 )。 2012 年 に 元 崎 無 異 川 , シ ュ ラ 川 , 忠 類 川 , 伊 茶 仁 川 お よ び 薫 別 川 の 5 河 川 に お い て , 産 室 上 の 2 mm 以 下 の 砂 泥 比 率 と 発 眼 卵 の 生 残 率 と の 関 係 を 調 べ た が , 両 者 に は 有 意 な 関 係 は 認 め ら れ な か っ た ( 図 4 - 7 )。 4.2.4 産卵適地面積 2012 年 お よ び 2013 年 に , 標 津 地 域 5 水 系 8 河 川 の 25 か 所 に お い て 産 卵 適 地 面 積 を 計 測 し た 。そ の 結 果 , 5 水 系 8 河 川 の 産 卵 適 地 総 面 積 は ,約 1 6 0 , 0 0 0 m 2 で あ り( 表 4 - 3 ),シ ロ ザ ケ の 産 卵 床 の 大 き さ は 平 均 2 . 2 6 m 2 ( S c o t t a n d C r o s s m a n 1973) で あ る こ と か ら , 雌 1 尾 当 た り の 産 卵 面 積 を 2 m2 と す る と , 雌 親 魚 約 80,000 尾 の 産 卵 が 可 能 と 推 計 さ れ た 。 各 調 査 河 川 の 産 卵 適 地 面 積 の 算 出 結 果 は 次 の 通 り で あ る ( 表 4 - 3 , 表 4 - 4 )。 元 崎 無 異 川 : こ れ ま で の 事 前 調 査 の 結 果 か ら , 産 卵 可 能 流 路 を 河 口 か ら 300~ 2780 m の 間 と 判 断 し , そ の 中 の 4 か 所 で 調 査 を 行 っ た 。 調 査 箇 所 の 平 均 川 幅 は 4.4~ 12.2 m で あ り , 流 路 長 100 m 当 た り の 産 卵 適 地 面 積 は 261.9±125.1 m2 で あった。各調査ポイント間の距離と産卵適地面積で推計した結果,元崎無異川全 体 の シ ロ ザ ケ の 産 卵 適 地 面 積 は 15,043 m2 で あ っ た 。 薫 別 川 :河 口 か ら 上 流 2 0 0 ~ 4 4 5 2 m の 間 の 2 か 所 で 調 査 を 行 っ た 。調 査 箇 所 の 60 平 均 川 幅 は 11 . 2 ~ 1 7 . 8 m で あ り , 流 路 長 1 0 0 m 当 た り の 産 卵 適 地 面 積 は 4 9 2 . 6 ± 292.3 m2 で あ っ た 。 累 計 し た 薫 別 川 全 体 の シ ロ ザ ケ の 産 卵 適 地 面 積 は 18,515 m2 であった。 忠 類 川:河 口 か ら 上 流 1 0 0 ~ 1 7 , 5 0 0 m の 本 流 7 か 所 お よ び 支 流 の イ ケ シ ョ マ ナ イ 川 1 か 所 で 調 査 を 行 っ た 。 本 流 域 の 調 査 箇 所 の 平 均 川 幅 は 17.5~ 42.2 m で あ り ,流 路 長 1 0 0 m 当 た り の 産 卵 適 地 面 積 は 3 9 7 . 6 ± 2 8 2 . 2 m 2 で あ っ た 。忠 類 川 は , 上流域では河床が岩盤である場所が多く,さらに中流から下流にかけても流速が 速 く ( 8 3 . 8 c m / s e c 以 上 ), 6 5 m m 以 上 の 大 礫 が 多 い た め , 水 表 面 積 に お け る 産 卵 適 地 面 積 割 合 は 4 . 5 ~ 3 4 . 1 % で あ り ,他 の 調 査 河 川 と 比 較 し 低 い 値 を 示 し た 。し か しながら,忠類川の水表面積は本研究の調査河川の中で最大であるため,産卵適 地 面 積 は 全 調 査 河 川 の 約 半 数 に 当 た る 82,755 m2 で あ っ た 。 伊茶仁川:伊茶仁川は今回の調査河川の中で河川規模が小さく,産卵可能流路 も 最 も 短 か っ た 。す な わ ち ,産 卵 可 能 流 路 は 河 口 か ら 1 3 0 0 ~ 1 6 7 0 m の わ ず か 3 7 0 m の ふ 化 場 近 辺 で あ り ,そ の 中 の 4 か 所 で 調 査 を 行 っ た 。調 査 場 所 の 平 均 川 幅 は 4.3~ 6.4 m と 調 査 河 川 の 中 で 最 も 狭 か っ た 。 流 路 長 100 m 当 た り の 産 卵 適 地 面 積 は 225.6±129.2 m2 で あ っ た 。 各 調 査 定 点 間 の 距 離 と 産 卵 適 地 面 積 を 累 計 し た 結 果 , 伊 茶 仁 川 全 体 の シ ロ ザ ケ の 産 卵 適 地 面 積 は 705 m2 で あ っ た 。 伊 茶 仁 川 で は , 中 流 か ら 下 流 域 の 広 範 囲 で 2 mm 以 下 の 砂 泥 か ら な る 産 卵 に は 適 さ な い 河 床 が多かった。しかしながら,調査地点においては,水表面積に占める産卵適地面 積 割 合 が 60%以 上 と 高 い 値 で あ っ た 。 シ ュ ラ 川( 標 津 川 水 系 武 佐 川 支 流 ): こ れ ま で の 事 前 調 査 の 結 果 か ら ,産 卵 可 能 流 路 を 武 佐 川 合 流 点 か ら 上 流 300~ 4101 m の 間 と 判 断 し , そ の 間 の 3 か 所 で 調 査 を 行 っ た 。 調 査 箇 所 の 平 均 川 幅 は 8.7~ 10.9 m で あ り , 流 路 長 100 m 当 た り の 産 卵 適 地 面 積 は 376.2±203.1 m2 で あ っ た 。 累 計 し た シ ュ ラ 川 全 体 の シ ロ ザ ケ の 産 卵 適 地 面 積 は 14,694 m2 で あ っ た 。 イ ロ ン ネ ベ ツ 川 ( 標 津 川 水 系 武 佐 川 支 流 ): 武 佐 川 合 流 点 か ら 3 , 9 0 6 m 上 流 ま で の 間 の 2 か 所 で 調 査 を 行 っ た 。 調 査 箇 所 の 平 均 川 幅 は 10.0~ 12.0 m で あ り , 流 路 長 100 m 当 た り の 産 卵 適 地 面 積 は 458.3±126.2 m2 で あ っ た 。 累 計 し た イ ロ ン ネ ベ ツ 川 全 体 の シ ロ ザ ケ の 産 卵 適 地 面 積 は 18,821 m2 で あ っ た 。 ク テ ク ン ベ ツ 川 ( 標 津 川 水 系 武 佐 川 支 流 ): 武 佐 川 合 流 点 か ら 上 流 3 , 6 2 5 m の 61 間 の 2 か 所 で 調 査 を 行 っ た 。 調 査 箇 所 の 平 均 川 幅 は 9.1~ 10.2 m で あ り , 流 路 長 1 0 0 m 当 た り の 産 卵 適 地 面 積 は 2 2 8 . 8 ± 2 5 . 8 m 2 で あ っ た 。各 調 査 ポ イ ン ト 間 の 距 離と産卵適地面積を累計した結果,イロンネベツ川全体のシロザケの産卵適地面 積 は 9,462 m2 で あ っ た 。 4.2.5 各河川におけるシロザケの河川回帰率と遡上尾数 根 室 海 区 に お け る シ ロ ザ ケ の 2004年 か ら 2013年 ま で の 10年 間 の 単 純 回 帰 率 {( 来 遊 数 / 3年 前 の 放 流 数 ) ×100}の 平 均 は 6.3%と 他 の 海 区 と 比 べ て 高 か っ た ( 図 4 - 8 ) 。 一 方 で , 根 室 海 区 に お け る シ ロ ザ ケ の 河 川 遡 上 率 {( 河 川 捕 獲 数 / 来 遊 数 ) ×100} は , 近 年 , 減 少 傾 向 に あ り , 2004年 か ら 2013年 ま で の 過 去 10年 で 2 . 7 % と 全 道 で 最 低 で あ っ た ( 図 4 - 9 )。 そ の た め , 根 室 海 区 に お け る 河 川 回 帰 率 {( 河 川 捕 獲 尾 数 / 3 年 前 の 放 流 数 ) × 1 0 0 } の 過 去 1 0 年 の 平 均 も 0 . 1 6 % ( 図 4 10) と 他 海 区 よ り 低 い 状 況 に あ る 。 標 津 地 域 の 河 川 回 帰 率 は , 標 津 川 で 0.41%, 薫 別 川 で 0.08%お よ び 伊 茶 仁 川 で 0 . 11 % と 河 川 に よ り 差 が あ っ た ( 図 4 - 11 )。 現 在 , 標 津 地 域 で シ ロ ザ ケ の 放 流 事 業を行っている河川は,標津川,伊茶仁川,忠類川,薫別川および元崎無異川の 5水 系 で あ る が , 忠 類 川 は 1995年 か ら 捕 獲 を 廃 止 し て 稚 魚 の 放 流 の み を 行 っ て い る 。 さ ら に , 元 崎 無 異 川 で は , 2006年 以 降 に 捕 獲 が 減 少 し , 2009年 以 降 の 河 川 に お け る 捕 獲 数 は 2 2 2 ~ 1 4 11 尾 と 著 し く 少 な く , 種 卵 が 不 足 し た 際 に 捕 獲 を 行 う 補完河川と位置づけられている。 62 (A) (B) 図 4-3. 各 調 査 定 点 の 流 路 長 100m あ た り に お け る シ ロ ザ ケ の 産 卵 個 体 数 ( 生 体 数 と 死 骸 数 の 合 計 ) . (A) 2012 年 , (B) 2013 年 . 63 図 4-4. 各 河 川 に お け る シ ロ ザ ケ の 産 卵 個 体 数 の 月 別 変 化 . 64 図 4-5. 2012 年 と 2013 年 に 確 認 し た 産 卵 床 内 の 発 眼 率 の 平 均 値 と 標 準 偏 差 . N は 産 卵床の調査数. 65 100 90 80 発眼時生残率(%) 70 元崎無異ふ化場 60 元崎無異国道 シュラ昭和橋 50 シュラふ化場 40 忠類上忠類 忠類ふ化場 30 伊茶仁ふ化場 20 薫別乳薫橋 10 0 -3 -2 -1 0 1 2 水温差(℃) 3 4 5 6 図 4-6. 各 河 川 に お け る 発 眼 卵 の 生 残 率 と 水 温 差 と の 関 係 . 水 温 差 と は 産 室 内 水 温 と河川水温との差を指す. 66 産卵床内の発眼卵の生残率 (%) (A) 100 80 60 40 20 0 0 10 20 30 2 mm以下の砂泥含有率 (%) 40 50 0 10 20 30 2 mm以下の砂泥含有率 (%) 40 50 0 10 20 30 2 mm以下の砂泥含有率 (%) 40 50 産卵床内の発眼卵の生残率 (%) (B) 100 80 60 40 20 0 産卵床内の発眼卵の生残率 (%) (C) 100 80 60 40 20 0 図 4-7. 各 河 川 に お け る 発 眼 卵 の 生 残 率 と 産 室 上 の 砂 泥 含 有 率 と の 関 係 . (A)元 崎 無 異 川 , (B)忠 類 川 , (C)シ ュ ラ 川 . 67 12 単純回帰率(%) 10 8 6 4 2 0 年 根室海区 オホーツク海区 日本海区 えりも以東 えりも以西 図 4-8. 北 海 道 内 各 海 区 に お け る シ ロ ザ ケ の 単 純 回 帰 率 の 経 年 変 化 . 68 70 60 河川遡上率(%) 50 40 30 20 10 0 年 根室海区 オホーツク海区 日本海区 えりも以東 えりも以西 図 4-9. 北 海 道 内 各 海 区 に お け る シ ロ ザ ケ の 河 川 遡 上 率 の 経 年 変 化 . 69 1.2 河川単純回帰率(%) 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 年 根室海区 オホーツク海区 日本海区 えりも以東 えりも以西 図 4-10. 北 海 道 内 各 海 区 に お け る シ ロ ザ ケ の 河 川 単 純 回 帰 率 の 経 年 変 化 . 70 1.2 河川単純回帰率(%) 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 年 元崎無異川 薫別川 伊茶仁 川 標津川 図 4 - 11 . 根 室 地 域 の 4 河 川 に お け る シ ロ ザ ケ の 単 純 回 帰 率 の 経 年 変 化 . 71 表 4-1(A). 2012 年の各定点における流路長 100 m あたりのシロザケの生体数と死骸数および産卵床数. st 河川 水系 調査ポイント st. 1 本流 元崎無異橋 元崎無異川 st. 2 本流 ふ化場上流 st. 3 本流 薫別橋上流 薫別 st. 4 本流 乳薫橋 st. 5 本流 忠類橋 st. 6 本流 ふ化場横 st. 7 本流 上忠類橋 忠類川 st. 8 本流 砂防ダム下 st. 9 本流 討伐沢出会 st. 10 討伐沢 st. 11 イケショマナイ 下流 st. 12 伊茶仁川 本流 ふ化場下流 st. 13 東橋 st. 14 昭和橋 シュラ川 st. 15 ふ化場横 st. 16 平川橋 st. 17 ウラップ橋 st. 18 道々橋 ウラップ st. 19 桜井橋 st. 20 西川北橋 標津川 st. 21 上武佐橋 イロンネベツ 西4号小橋 st. 22 st. 23 西4号橋 st. 24 クテクンベツ橋 クテクンベツ st. 25 銀橋 st. 26 出雲橋 武佐 st. 27 とさ橋 st. 28 むさ橋 合 計 生体 23 1 0 0 10 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 37 9月 死骸 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 産卵床 12 0 0 0 5 0 7 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 24 生体 832 76 145 9 51 55 8 0 0 0 0 0 2 51 169 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 1401 10月 死骸 産卵床 11 11 6 67 5 62 0 46 5 35 14 47 0 9 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 1 2 9 12 16 120 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 67 703 72 生体 83 50 12 6 16 100 3 0 0 0 0 100 1 87 456 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 914 11月 死骸 産卵床 25 28 9 50 0 8 2 20 40 11 0 33 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 50 50 0 1 50 30 232 200 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 408 435 12月 生体 死骸 産卵床 101 53 62 0 0 21 1 0 0 0 0 0 0 0 0 20 0 30 0 0 0 - - - - - - - - - - - - 30 34 29 1 0 3 15 107 18 161 108 52 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 329 302 216 生体 1039 127 158 15 77 175 14 0 0 0 0 130 4 153 786 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 2681 累計 死骸 産卵床 89 402 15 138 5 70 2 66 45 51 14 110 0 17 0 0 0 0 0 0 0 0 84 82 1 6 166 60 356 372 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 777 1378 表 4-1(B). 2013 年の各定点における流路長 100 m あたりのシロザケの生体数と死骸数および産卵床数. st st. st. st. st. st. st. st. st. st. st. st. st. st. st. st. st. st. st. st. st. st. st. st. st. st. st. st. st. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 河川 元崎無異川 薫別 忠類川 伊茶仁川 標津川 水系 本流 本流 本流 本流 本流 本流 本流 本流 本流 調査ポイント 元崎無異橋 ふ化場上流 薫別橋上流 乳薫橋 忠類橋 ふ化場横 上忠類橋 砂防ダム下 討伐沢出会 討伐沢 イケショマナイ 下流 本流 ふ化場下流 東橋 昭和橋 シュラ川 ふ化場横 平川橋 ウラップ橋 道々橋 ウラップ 桜井橋 西川北橋 上武佐橋 イロンネベツ 西4号小橋 西4号橋 クテクンベツ橋 クテクンベツ 銀橋 出雲橋 武佐 とさ橋 むさ橋 合 計 生体 40 3 27 0 4 6 3 2 3 0 1 8 0 1 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 102 9月 死骸 0 0 2 0 1 0 1 0 0 1 1 2 6 1 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 19 産卵床 12 1 17 3 0 4 4 1 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 44 生体 212 22 10 5 12 12 6 0 0 0 0 33 0 0 18 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 2 0 0 334 10月 死骸 産卵床 14 85 5 12 9 23 4 5 1 5 1 4 2 7 0 0 0 0 0 0 0 0 1 30 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 37 174 73 生体 755 32 12 5 63 21 2 0 0 0 0 280 1 91 1083 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2345 11月 死骸 産卵床 114 377 10 30 24 100 0 3 50 84 9 30 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 94 50 5 0 145 70 235 323 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 686 1068 12月 死骸 生体 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 産卵床 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 生体 1007 57 49 10 79 39 11 2 3 0 1 321 1 92 1105 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 2 0 0 2781 累計 死骸 産卵床 128 474 15 43 35 140 4 11 52 89 10 38 3 12 0 1 0 0 1 0 1 0 97 81 11 0 146 71 239 326 0 0 1 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 743 1288 表 4-2(A). 2012 年の各河川の産卵床内におけるシロザケ発眼卵の生残率と河川状況. 卵数(粒) 河川名 定点 月日 産卵床数 元崎無異川 st. 1 0203 10 123 ± 元崎無異川 st. 2 0316 6 118 ± 元崎無異川 - 0327 9 忠類川 st. 5 0203 10 忠類川 st. 7 0327 3 81 薫別川 st. 4 0214 6 伊茶仁 st. 12 0214 10 シュラ川 st. 15 0301 シュラ川 st. 14 0316 st. 17 0301 ウラップ川 合 計 平均±SD 発眼卵の生残率(%) 河川水温 産室水温 範囲 (℃) (℃) 27.0 0~78.6 1.8 - 14.8 0~35.0 1.8 1.6 5.6±4.1 ± 24.3 0~65.7 2.7~3.5 2.0~4.7 13.7±8.5 ± 32.3 0~100 6.1 5.9〜6.2 2.2±2.1 ± 32.6 15.2~94.3 1.8~3.5 1.8~3.9 34.0±8.6 ± 15.8 53.4~96.5 2.5 6.3〜6.9 19.5±9.6 79.8 ± 24.2 17.5~97.0 5.1 5.1〜5.2 25.6±11.6 1300 30.8 ± 33.3 0~77.4 6.4 6.2 - 1024 37.7 ± 34.2 0~80.0 5.8 5.6~7.7 7.4±4.5 110~130 363 25.3 ± 40.3 0~71.5 2.1 - - 33~323 9512 44.9 ± 43.8 0~100 1.8~6.4 1.6~7.7 11.9±10.2 平均±SD 範囲 合 計 76.5 53~323 1230 14.8 ± 40.1 60~171 708 15.5 ± 133 ± 65.8 38~258 1197 23.1 134 ± 64.4 48~259 1340 69.6 ± 45.1 33~143 243 70.5 111 ± 31.8 58~147 667 82.1 144 ± 44.2 58~191 1440 10 130 ± 48.5 55~212 8 128 ± 46.3 47~188 3 121 ± 10.1 75 127 ± 53.7 産室上の砂泥含有率 (平均+SD) 12.6±4.2 表 4-2(B). 2013 年の各河川の産卵床内におけるシロザケ発眼卵の生残率と河川状況. 卵数(粒) 河川名 定点 月日 産卵床数 平均±SD 発眼卵の生残率(%) 範囲 合 計 平均±SD 河川水温 産室水温 範囲 (℃) (℃) 産室上の砂泥含有率 (平均+SD) 元崎無異川 st. 1 0322 8 109 ± 11.9 85~120 869 17.2 ± 28.2 0~80.8 4.0 1.4~4.1 - 元崎無異川 st. 2 0322 7 107 ± 40.0 37~164 750 57.4 ± 29.9 0.9~89.6 3.3 0.1~3.1 - 忠類川 st. 5 0225 10 140 ± 40.6 106~200 1395 69.3 ± 38.7 0~98.3 1.6 0.1~2.3 - 忠類川 st. 7 0225 2 79 ± 51.6 42~115 157 92.4 ± 9.5 85.7~99.1 2.9 2.1~2.6 - 薫別川 st. 4 0215 7 127 ± 25.1 97~175 887 47.8 ± 29.3 0~76.3 0.3 3.1~4.9 - 81 伊茶仁 st. 12 0215 6 シュラ川 st. 15 0205 10 シュラ川 st. 14 0315 6 合 計 56 ± 37.9 25~119 483 91.4 ± 4.4 83.1~96.0 6.0 4.6~6.1 - 117 ± 26.6 81~171 1169 29.6 ± 28.0 2.3~80.0 3.2 3.0~3.5 - 89 ± 36.3 33~120 532 43.3 ± 45.5 0~96.3 2.6 2.8~7.1 - 111 ± 36.4 37~200 6242 48.3 ± 37.7 0~99.1 0.3~6.0 0.1~7.1 - 74 表 4-3. 根 室 地 域 各 河 川 に お け る シ ロ ザ ケ の 産 卵 域 調 査 結 果 . 河川 忠類川 調査地点 本流 イケショマナイ川 元崎無異川 本流 薫別川 本流 伊茶仁川 本流 シュラ川 標津川 イロンネベツ川 クテクンベツ川 討伐沢合流点 砂防ダム上流 上忠類橋上流 上忠類橋 p3から下 p3から上 ふ化場上流 国道下 支流合流点上流 砂利採取場上流 ふ化場上流 国道橋上流側 上流(乳薫橋) 下流(小学校裏) ふ化場上流 ふ化場横 ふ化場下流 最下流 上流(ふ化場横) 中流 東橋 上流(西4号橋) 下流(上武佐橋) 上流(銀橋) 下流( クテクンベツ橋) 調査年月日 調査区間長 (m) st. 9 2012/8/9 st. 8 2013/8/22 - 2013/7/17 st. 7 2012/8/9 - 2013/7/17 - 2013/7/17 st. 6 2012/8/9 st.11 2013/8/22 - 2013/7/25 - 2013/7/25 st. 2 2012/12/11 st. 1 2013/7/25 st. 4 2012/12/11 st. 3 2012/12/11 - 2012/8/28 - 2012/8/28 st.12 2012/8/28 - 2012/8/28 st.15 2012/8/28 - 2012/8/28 st.13 2012/8/28 st.21 2012/12/14 st.23 2012/12/14 st.25 2012/12/14 st.24 2012/12/14 180 240 180 240 600 270 180 100 45 78 100 63 100 100 50 45 45 30 90 70 90 100 100 100 100 st トランセ クト数 10 13 10 13 13 10 13 11 10 14 11 10 11 11 11 10 10 6 10 8 10 11 11 11 11 75 川幅(m) 平均±SD 水深10cm以下 19.2±2.4 18.2 22.9±11.8 21.9±12.0 24.8±9.0 23.9±9.1 17.5±4.7 16.5 42.2±10.5 41.6±10.4 21.4±7.9 20.7±7.7 15.0±2.4 13.5 8.1±2.1 7.0±2.1 4.4±1.2 3.5±1.3 5.4±1.4 4.2±1.4 12.2±3.8 11.2 8.4±1.1 8.4±1.1 17.9±5.1 16.6 11.2±2.3 9.5 4.8±0.6 3.8 4.8±0.8 3.8 4.3±1.2 3.5 6.4±1.3 5.7 10.9±2.4 10.1 9.4±1.5 8.2 8.72±1.3 7.8 11.9±2.1 11.3 10±1.4 9.4 10.2±0.7 8.9 9.1±2.3 8.2 産卵適地面積(㎡) 調査区間 流路長100m 1,180.0 665.6 1,299.8 541.6 859.7 477.6 187.1 78.0 5,035.9 839.3 924.5 342.4 153.4 85.2 151.3 151.3 67.3 149.6 140.8 180.5 425.5 425.5 184.0 292.1 699.3 699.3 286.0 286.0 144.6 289.3 137.4 305.4 123.7 274.9 9.8 32.6 389.4 432.7 269.4 384.8 279.9 311.0 369.1 369.1 547.5 547.5 210.6 210.6 247.0 247.0 水表面積(㎡) 調査区間 適地面積割合(%) 3456 34.1 5790 22.4 5838 14.7 4200 4.5 25753 19.6 9491 9.7 2700 5.7 809 18.7 198 34.0 390 36.1 1100 38.7 541 34.0 1796 38.9 1120 25.5 239 60.6 217 63.3 195 63.3 160 6.1 981 39.7 660 40.8 785 35.7 1195 30.9 941 58.2 1020 20.6 910 27.1 表 4-4. 根 室 地 域 各 河 川 に お け る シ ロ ザ ケ 産 卵 適 地 面 積 の 推 定 . 河川名 元崎無異川 薫別川 忠類川 伊茶仁川 シュラ川 イロンネベツ川 クテンクンベツ川 合 計 調査箇所 調査区間長 (m) 4 2 8 4 3 2 2 25 286 200 1,990 170 295 200 200 3,341 トランセクト 数(合計) 45 22 93 37 43 22 22 284 流路長100m当たりの産卵適地面積(㎡) 産卵適地 推定した流 平均 261.9 492.6 397.6 225.6 376.2 458.3 228.8 76 ± SD ± 125.1 ± 292.3 ± 282.2 ± 129.2 ± 203.1 ± 126.2 ± 25.8 範囲 面積(m2) 149.6~425.5 15,043 286.0~699.3 18,515 78.0~839.3 82,755 32.6~305.4 705 311.0~432.7 14,694 369.1~547.5 18,821 210.6~247.0 9,462 159,995 路長(m) 2,480 4,052 19,800 370 3,801 3,906 3,625 38,034 4-3. 4.3.1 考察 自然再生産状況と産卵適地 本研究では,自然再生産している個体を明確にふ化場魚と野生魚に識別するこ とができなかった。そこで,それらの個体は自然産卵魚として扱った。シロザケ の 自 然 産 卵 魚 は 5 つ の 水 系 の 全 て で 確 認 さ れ た 。 シ ロ ザ ケ の 産 卵 個 体 の 90%以 上 は , ふ 化 場 か ら 0.5 km 以 内 の 河 床 域 ( 全 28 定 点 の う ち 6 定 点 ) に 著 し く 偏 っており,それ以外の水系と支流では,忠類川を除いて,確認できない場所も多 く , 確 認 さ れ て も そ の 数 は き わ め て 少 な か っ た ( 図 4 - 3 , 表 4 - 1 )。 特 に , 標 津 川 水 系 武 佐 川 の 各 支 流 に お い て ( 1 6 定 点 ), そ の 傾 向 が 顕 著 で あ り , ふ 化 場 か ら 500 m 以 上 離 れ た 14 定 点 に お け る 自 然 産 卵 魚 の 確 認 数 は 全 体 の わ ず か 0.8% で あり,その多くが産卵場所として利用されていなかった。 シュラ川にあるふ化場近辺と,武佐川の各支流を比較すると,産卵適地総面積 お よ び 1 0 0 m 当 た り の そ の 割 合 に 大 き な 違 い が な く ( 表 4 - 3 ), 河 川 形 態 も 大 き な違いが認められなかった。さらに,シロザケの遡上を大きく阻害する人工工作 物も存在しないことから,河床から湧出する湧水および河川水については考慮に 入れていないものの,遡上が確認されない河川においても,シロザケの産卵環境 に大きな問題はないと判断される。さらに,シュラ川に遡上するシロザケはふ化 場用水の放水口には多数のシロザケが集まることから,ふ化場由来である可能性 が高いため,今後,その確認の必要がある。 また,シュラ川ふ化場近辺における産卵個体の集中は,ふ化場放水口より上流 域の落差工の存在もその要因の一つと考えられる。また,本研究において,ふ化 場のある忠類川およびシュラ川の 9 月における産卵個体の確認数は少なかっ た。特に,産卵個体の密度が高いシュラ川においては,9 月における産卵個体の 確 認 数 が 全 期 間 の 0.46% と 著 し く 少 な か っ た 。 根 室 管 内 さ け ・ ま す 増 殖 事 業 協 会 事 業 報 告 書 に よ る と , 忠 類 川 お よ び シ ュ ラ 川 の ふ 化 場 で は , 過 去 10 年 , 前 期 群 ( 10 月 20 日 ま で の 採 卵 個 体 ) の 稚 魚 の 放 流 は な さ れ て い な い 。 シ ロ ザ ケ は , 親子の産卵時期がほぼ一致することが知られているため(例えば,高橋 2 0 1 3 ), こ の ふ 化 場 に お い て 前 期 群 を 放 流 し て い な い こ と が , 9 月 に お け る 自 然 産卵魚が少ない要因と考えられる。したがって,本研究で調査を行った河川,特 に標津川水系のおいては,自然産卵魚の多くがふ化場魚である可能性が高く,野 77 生魚による再生産は少ないと考えられる。 本 研 究 で 調 査 し た 標 津 地 域 の 5 水 系 8 河 川 の 産 卵 適 地 面 積 は 約 160,000 m2 で あ る が , こ れ ら の 産 卵 適 地 の 中 で , 100 m2 あ た り の 産 卵 床 数 が 1 個 以 下 の 総 面 積 は 全 体 の 55.6%で あ り , そ の 多 く は 利 用 さ れ て お ら ず , さ ら に ふ 化 場 近 辺 で は 自 然 産 卵 魚 の 密 度 が 極 め て 高 い こ と ( 産 卵 適 地 面 積 1 m2 あ た り 0.86~1.33 尾 ) が明らかとなった。今後の自然産卵魚による資源の育成には,産卵可能域でこれ らの問題の解決が必要であると考えられる。 4.3.2 発眼卵の生残率と湧水の選択状況 既 存 の 報 告 で は , 自 然 産 卵 魚 の 発 眼 卵 の 生 残 率 は 90%を 超 え て い る ( 例 え ば , 佐 野 1 9 5 5 , 佐 野 ・ 長 沢 1 9 5 8 )。 一 方 , 本 研 究 結 果 で 得 ら れ た 発 眼 卵 の 生 残 率 は 平 均 4 4 . 4 % ~ 5 1 . 9 % と 低 か っ た ( 表 4 - 2 )。 特 に 流 路 長 1 0 0 m 当 た り の 産 卵 個 体 の 年 累 計 数 が 1000 個 体 以 上 確 認 さ れ た 元 崎 無 異 川 と シ ュ ラ 川 の ふ 化 場 近 辺 に お け る 発 眼 卵 の 生 残 率 の 2 か 年 の 平 均 値 は , そ れ ぞ れ 15.9% , 30.8% と 低 い 値 を 示 し た ( 図 4 - 5 )。 砂 泥 ( 直 径 < 2 mm) の 含 有 率 が 高 ま る と 産 室 内 部 の 水 の 透 過 が 阻 害 さ れ 溶 存 酸素量の低下により,サケ属魚類の産卵床内の生残率が低下することが知られて い る ( K o s k i 1 9 7 5 )。 し か し , 本 研 究 で は , 各 河 川 に お い て 産 室 上 の 2 m m 以 下 の 砂 泥 含 有 率 と 発 眼 卵 の 生 残 率 と の 間 に 明 瞭 な 関 係 は み ら れ な か っ た ( 図 47 )。 ま た , 2 年 間 の 発 眼 卵 の 生 残 率 に 大 き な 年 差 が 確 認 さ れ な い 調 査 定 点 が 多 か っ た ( 図 4 - 5 )。 産 卵 親 魚 の 密 度 が 高 い 場 合 , 掘 り 返 し や ( H a y e s 1 9 8 7 ; R o b e r t s a n d W h i t e 1 9 9 2 ), 通 水 性 や 溶 存 酸 素 量 が 十 分 で な い 不 適 な 環 境 に お け る 産 卵 個 体も多くなる。これらの要因が発眼卵の生残率が低下させた可能性も考えられる が,本研究では要因を特定することができなかった。また,本研究で得られた結 果 は , 両 年 と も に 主 に 12 月 上 旬 か ら 中 旬 に 産 卵 が 確 認 さ れ た 後 期 群 の 産 卵 床 で あ っ た 。 卜 部 (2013)に よ る と , 白 老 町 の ウ ヨ ロ 川 で は 前 期 群 と 後 期 群 で は , 産 卵 床 内 の 水 温 が 異 な り , 前 期 群 は 冬 季 に 水 温 が 0℃ 近 く ま で 低 下 す る の に 対 し , 後 期 群 は 最 低 で も 4℃ 程 度 に ま で し か 下 が ら な い 。 つ ま り 後 期 群 は 水 温 が 高 い と ころに産卵場所を選択することにより,産卵時期の遅れを取り戻していると推測 し て い る 。 本 研 究 の 発 眼 卵 の 生 残 率 調 査 に お い て は , 11 月 中 旬 以 降 に 産 卵 し た 78 と考えられる産卵床で調査を行った。その中で,薫別川乳薫橋とシュラ川昭和橋 では河川水と産室内の水温差から,湧水がある場所において産卵を行っているこ とが確認されたが,それ以外の河川では河川水温と同様か,もしくは低い値を示 し た ( 図 4 - 6 )。 し た が っ て , 薫 別 川 と シ ュ ラ 川 以 外 の 河 川 で 産 卵 を 行 う 後 期 群 の シ ロ ザ ケ は , 前 期 群 の シ ロ ザ ケ と 同 じ く , 冬 期 間 に 水 温 が 0℃ 近 く ま で 低 下 す る河川水が湧出している場所,もしくは,産室内の水の動きが停滞している場所 を も 産 卵 場 所 と し て 利 用 と し て い る 可 能 性 も あ り ( 表 4 - 2 , 図 4 - 6 ), そ の こ と も発眼卵の生残率が低い要因であると考えられる。 これまで,ふ化場魚由来の子は生活史初期の段階でその生残率が低いとの報告 も あ る (Fleming et al. 2000)。 北 米 の 春 遡 上 の マ ス ノ ス ケ で ふ 化 場 魚 ( 1 世 代 ) と野生魚では,抱卵数や産卵場所での寿命,産卵行動などには差異が見られない が , 野 生 魚 の 雌 か ら 生 ま れ た 卵 が 稚 魚 に な る 確 率 は ふ 化 場 の そ れ よ り 6%ほ ど 高 く,その要因は産卵場所の選択,卵の埋め戻しの効率などわずかな差異が原因と 考 え ら れ て い る ( S c h r o d e r e t a l . 2 0 1 0 )。 し た が っ て , ふ 化 場 近 辺 に お い て 発 眼 卵の生残率の低い要因として,産卵したシロザケの分布密度が高いことに加え, 産卵親魚の多くがふ化場魚由来であったことも考えられる。 4.3.3 各河川における野生魚由来の自然産卵魚 本研究の結果において,標津川および元崎無異川では,ふ化場近辺で産卵個体 の密度が高いことが確認されたが,伊茶仁川,薫別川および忠類川における産卵 個体は比較的分散している傾向が見られた。 伊 茶 仁 川 に お け る 捕 獲 事 業 は , 例 年 11 月 下 旬 に 終 了 し て い る が , 1 2 月 中 旬 に おいても自然産卵魚が確認されており,その産卵場所はふ化場より上流域でも確 認された。薫別川の産卵床内の水温は河川水温よりも高いため,シロザケは地下 水 由 来 の 湧 水 の 場 所 に 産 卵 し て お り , さ ら に , こ の 場 所 は ふ 化 場 か ら 700 m ほ ど上流に位置していた。また,忠類川の産卵個体は,上流域において 9 月のみ 産 卵 が 確 認 さ れ , 10 月 以 降 は ふ 化 場 近 辺 に や や 集 中 す る も の の , 下 流 域 の 比 較 的広い範囲分布していた。したがって,これらの河川では,野生魚由来の親魚が 存在する可能性もあるため,今後,耳石標識放流などにより野生魚であるかの確 認をする必要があると考えられる。 79 4.3.4 野生魚による再生産 宮 腰 ら ( 2 0 11 ) は , 北 海 道 全 域 の 流 路 延 長 8 k m 以 上 の 2 3 8 河 川 を 対 象 と し て シ ロ ザ ケ の 遡 上 と 自 然 産 卵 魚 の 有 無 を 調 査 し た 。 そ の 結 果 , 85の 非 放 流 河 川 に お い て も シ ロ ザ ケ が 産 卵 を し て お り , 放 流 河 川 を 合 わ せ る と 206河 川 に お い て シ ロ ザ ケの遡上が確認され,さらに沿岸漁業が始まる前の時期に多くのシロザケが遡上 している河川の存在も明らかとなった。したがって,沿岸漁業による漁獲圧が高 いことが,野生資源を保全する上での重要な課題であると考えられている ( M i y a k o s h i e t a l . 2 0 1 3 )。 根 室 海 区 に お け る シ ロ ザ ケ の 河 川 遡 上 率 {( 河 川 捕 獲 数 / 来 遊 数 ) × 1 0 0 } は , 1999年 に 増 殖 河 川 の 河 口 域 の 規 制 が 緩 和 さ れ , 定 置 網 の 位 置 が 河 口 域 近 く へ 移 動 し て 以 降 , 減 少 し て お り , 2004年 か ら 2013年 ま で の 過 去 10年 で 2.7%と 全 道 で 最 低 で あ り ( 図 4 - 9 ), 河 川 回 帰 率 {( 河 川 捕 獲 尾 数 / 3 年 前 の 放 流 数 ) × 1 0 0 } の 過 去 10年 の 平 均 も 0.16%( 図 4-10) と 他 海 区 よ り 低 い 。 そ の た め , 根 室 管 内 の多くの河川で採卵親魚が不足しており,河川間での移植が実施されている(平 成 2 0 - 2 5 年 度 根 室 管 内 さ け ・ ま す 増 殖 事 業 協 会 事 業 報 告 書 )。 さ ら に 根 室 地 域 に お け る 河 川 回 帰 率 は , 河 川 に よ り 大 き く 差 が あ り ( 図 411 ), 河 川 に お け る 捕 獲 尾 数 は , 2 0 0 4 ~ 2 0 1 3 年 平 均 値 で , 標 津 川 が 1 5 3 , 5 0 0 尾 で 河 川 捕 獲 計 画 数 ( 1 0 0 , 0 0 0 尾 ) を 上 回 っ て お り , 伊 茶 仁 川 ( 捕 獲 計 画 数 11 , 0 0 0 尾 ) が 8,267尾 , 薫 別 川 ( 同 13,500尾 ) が 7,543尾 で あ り , 計 画 数 を 上 回 っ た の は 両 河 川 と も 2年 に 過 ぎ な か っ た 。 そ の た め , 標 津 町 内 の 標 津 川 以 外 の 河 川 で は,親魚に余剰のある標津川由来の稚魚を移植し放流している状況にあり,さら に,標津川由来の稚魚は隣町である羅臼町内の河川でも放流されている。 2009~ 2013年 の 根 室 地 域 に お け る シ ロ ザ ケ の 増 殖 事 業 で は , 雌 親 魚 1尾 あ た り 2,063粒 を 採 卵 し , そ の う ち 1,660尾 の 稚 魚 を 放 流 し , そ の 稚 魚 が 約 100尾 の 親 魚 と な っ て 回 帰 す る と 試 算 さ れ て い る ( 平 成 20-25年 度 根 室 管 内 さ け ・ ま す 増 殖 事 業 協 会 事 業 報 告 書 )。 こ の こ と は , 河 川 遡 上 率 か ら 1 0 0 尾 中 9 7 尾 は 沿 岸 で 漁 獲 さ れ , 3 尾 が 河 川 へ 遡 上 し 捕 獲 さ れ た 計 算 と な る ( 図 4 - 9 )。 野 生 魚 に よ る 再 生 産 を 考 え た 場 合 , 雄 1尾 と 雌 1尾 か ら 生 ま れ た 子 供 の 内 , 2尾 ( 雄 1尾 , 雌 1尾 ) 以 上が河川に回帰し,産卵しなければならない。現状における根室海区の河川回帰 率 ( 0.16%) か ら 2尾 の 親 魚 の 回 帰 を 逆 算 す る と 雌 1尾 か ら 生 産 さ れ る 稚 魚 が 80 1,250尾 必 要 に な る 。 前 述 の と お り , 同 海 区 の 人 工 ふ 化 放 流 に 使 用 さ れ る シ ロ ザ ケ の 雌 1尾 あ た り 採 卵 数 は 2,063粒 で あ り , 本 研 究 結 果 か ら , 根 室 地 域 各 河 川 の 発 眼 卵 の 平 均 生 残 率 が 50%程 度 で あ る こ と か ら , こ の 時 点 で 生 残 数 は 約 1,000粒 となり,仔魚期と降海までの減耗を考慮に入れなくても,野生魚による再生産に よって個体群を維持することはできない。 そのため,根室地域では河川回帰率が低いことにより,河川ごとの再生産が出 来ない状況にあり,さらに親魚を捕獲している河川において,ウライの上流へ親 魚が遡上するのは,ほぼ増水時のみに限られている。したがって,当地域におけ る増殖親魚を確保するうえでも,野生魚による再生産を確立する上でも何らかの 形で現状の沿岸漁獲圧を軽減すること,さらには,自然再生産計画を立て,必要 に応じた親魚をウライの上流へ再放流することが重要である。 また,野生魚による再生産を確立する上で,ふ化場近辺において自然産卵魚が 集中し,さらに発眼卵の生残率が低い問題を解消する必要であるが,これら原因 は自然産卵魚の多くがふ化場由来である可能性がある。そのため,産卵する親魚 の遡上数を増やした上で,利用されていない産卵適地において,野生魚による再 生産を確立させることにより,これらの問題はある程度解決される可能性があ る。 81 第 5 章 総合考察 以下 の総合考 察では ,第 4 章ま での結果 をもとに 根室地域 にお いて 産卵する シ ロ ザ ケ の 現 状 と 評 価 を 行 い ,当 地 域 に お い て 野 生 魚 に よ る 自 然 再 生 産 を 向 上 さ せ , 人工ふ化放流事業と共存させる資源保全と持続的利用について提言を行う。 5-1. 根室地域において産卵するシロザケの現状と問題点 本 研 究 か ら ,交 雑 個 体「 サ ケ マ ス 」の 出 現 を D N A 分 析 に よ っ て 確 認 で き た が , その出現要因については,明らかとならなかった。シロザケの産卵には,湧水や 河 川 水 が 河 床 か ら 湧 出 し て い る よ う な 河 床 が 必 要 で あ る こ と が 確 認 さ れ た 。ま た , 現状において,産卵適地の多くが利用されていないことも明らかとなったため, 自然再生産状況,産卵環境の変化および人工ふ化放流事業の人為的要因などの経 年変化など,当地域における継続的な調査が必要である。 現状のシロザケの漁業資源を維持する上で,将来にわたっても人工ふ化放流事 業 は 北 海 道 に お け る 主 要 な 増 殖 手 段 で あ る ( 宮 腰 2 0 1 4 )。 帰 山 (1996)は , 日 本 産 シ ロ ザ ケ に つ い て は , 今 後 , 地 域 個 体 群 の 固 有 性 と 多 様 性を高め,数少ない野生個体群を維持増大していく必要があり,そのためには, 次の目的別に生産河川を四つに区分して管理していくことが重要であると述べて いる。 野生資源:原種として,野生種として産卵により維持される個体群 遺伝資源:地域個体群の遺伝的特性をふ化放流により維持される個体群 漁業資源:漁獲を目的としたふ化放流により維持される個体群 多目的資源:環境・情操教育,知的観光,釣りなど多目的利用のための 個体群 ま た , 帰 山 (1996)は , 基 本 的 に こ れ ら 目 的 別 資 源 は 河 川 毎 に 区 分 さ れ る べ き と し,目的別資源を維持するためには各河川において十分な遡上親魚を確保する必 要がある,としている。 第 4 章で示したように,根室海区では,他海区と比べシロザケの沿岸におけ る 漁 獲 率 の 推 定 値 97% と 非 常 に 高 い こ と に よ り , 河 川 遡 上 数 が 少 な く , 人 工 ふ 化放流事業のための親魚確保に課題が残されている。したがって,現状の人工ふ 82 化放流事業を維持する上でも,野生魚による自然再生産を図る上でも,現状の沿 岸漁獲圧を何らかの形で緩和し,河川への遡上数を増加させ,さらに,必要に応 じた親魚をウライの上流へ再放流する方策を講じなければならない。そのために は,河川の近辺にある定置網の位置の変更や,遡上数を確保するための漁獲量制 限などが考えられる。しかし,北海道もしくは海区全体でその方策を実行するに あたり,各漁業協同組合および地元漁業者の合意形成が欠かせない。 本研究結果により,当地域においては,自然産卵魚による産卵密度に著しい偏 りが見られ,ふ化場周辺に集中していることから,自然産卵魚はふ化場魚が多い と考えられた。各水系のシロザケ集団における遺伝的特性を維持することは重要 であるが,人工ふ化放流事業が行われている河川において卵の移植が盛んに行わ れていたことから,各河川固有の遺伝子は攪乱を受けている可能性がある ( Yo k o t a n i e t a l . 2 0 0 9 ; 永 井 ら 2 0 1 2 )。 そ の た め , 各 河 川 固 有 の 遺 伝 子 を 受 け 継 いでいるシロザケは,発眼卵移植の対象外であって,ふ化放流に利用されていな い 1 2 月 以 降 に 産 卵 し て い る 野 生 魚 で あ る と 考 え ら れ て い る ( 帰 山 2 0 1 3 )。 標 津 地 域 各 河 川 に お い て も ,ふ 化 放 流 事 業 が 120 年 以 上 に わ た り 続 け ら れ ,標 津 地 域 各 河 川 の シ ロ ザ ケ は ,千 歳 川 な ど の 系 統 も 移 植 さ れ て き た( 平 成 3 - 5 年 度 北 海 道 さ け ・ ま す ふ 化 場 事 業 成 績 書 )。ま た ,現 在 に お い て も 各 河 川 の 遡 上 親 魚 が 不 足 し ていることから,近隣の他水系の親魚由来の稚魚の放流が行われている。そのた め,根室地域においても,その川由来の遺伝的特性を持つ可能性があるのは,放 流 事 業 が 行 わ れ て い な い 12 月 以 降 に 遡 上 す る 系 統 で あ る と 考 え ら れ る 。 本研究結果から標津川の場合,増水時にウライ上流部へ遡上したシロザケは, ふ 化 場 の あ る シ ュ ラ 川 に 遡 上 が 集 中 し ,さ ら に ふ 化 場 か ら 5 0 0 m 以 内 の 区 間 で 確 認 さ れ た 産 卵 個 体 は 全 体 の 99.2% を 占 め ,そ の 産 卵 密 度 は 非 常 に 高 か っ た 。そ の 一 方 ,ふ 化 場 が 無 い 各 支 流 に お い て は ,産 卵 に は 支 障 が な い も の の 判 断 さ れ た が , ほとんど遡上が確認されず,中には全く確認されない支流も見られた。標津川水 系において,自然産卵魚を増やすために,ふ化場近辺に集中している親魚を同じ 水系内の産卵が確認されていない支流へ移植放流することが考えられる。しかし ながら,自然産卵魚を増やすにあたり,このように短期的な人為的な移植を行う か , 長 期 的 に 自 然 状 況 に 任 せ る か は 議 論 の 余 地 が あ る 。 有 賀 ら (2014)に よ る と , シ ロ ザ ケ の 遡 上 が 途 絶 え た 豊 平 川 に お い て ,千 歳 川 由 来 の 稚 魚 が 放 流 さ れ て 以 降 , 83 野生魚による再生産が続いたことによって,野生魚と放流魚の間で成熟年齢や繁 殖の 時期の違 いがみら れるよう になって おり,これは約 7 世 代で生 じた豊平 川 の 環境へ適応だと考えている。そのため,各支流において本来より生息していた個 体,さらには,現状のそれぞれの水系に遡上する個体をベースとすべきではある が,長期間にわたり野生魚の再生産の維持を図ることにより,それぞれの河川の 特性に合った「野生魚集団」を創出できる可能性がある。 5-2. 産卵時期による野生魚の資源管理 本研究結果により,標津川水系のふ化場があるシュラ川において,9 月の産卵 個 体 確 認 数 は 16 尾 ( 全 期 間 確 認 数 の 0.46% ) と 著 し く 少 な か っ た が , こ れ は , シュラ川のふ化場において前期群を放流していないことが原因であると考えられ た。シロザケは,親子の産卵時期がほぼ一致することが知られているため(例え ば , 高 橋 2 0 1 3 ), 人 工 ふ 化 放 流 事 業 が 行 わ れ て い る 河 川 に お い て も , ふ 化 場 魚 と 野生魚の産卵時期を区別することによって遺伝資源と漁業資源の併用,さらには 野生魚の保全と人工ふ化放流事業との共存がある程度可能であると考えられる。 北 海 道 に 回 帰 す る シ ロ ザ ケ の 場 合 ,9 月 上 旬 か ら 1 0 月 上 旬 に か け て 沿 岸 で 漁 獲 さ れ る 前 期 群 は ,流 路 延 長 が 長 く 産 卵 場 が 上 流 域 に あ る 河 川( 小 林 1 9 8 5 )に ,1 0 月下旬以降に漁獲される後期群は,中~下流域に産卵場がある中小河川に回帰す る 傾 向 が あ る ( 小 林 1 9 7 8 )。 し た が っ て , 当 地 域 に お い て も , 標 津 川 の よ う に 流 路 延 長 が 長 く ,さ ら に 忠 類 川 の よ う な 産 卵 場 所 が 上 流 域 に 多 く み ら れ る 河 川 で は , 上流で産卵する前期群を活用すべきであろう。 現 状 に お い て , 根 室 海 区 の シ ロ ザ ケ 漁 の 期 間 は 9 月 1 日 ~ 11 月 3 0 日 で あ る が , 2004~ 2013 年 ま で の 標 津 町 内 の 9 月 1~ 5 日 間 の シ ロ ザ ケ の 水 揚 金 額 は 5 4 , 6 6 1 千 円 ( 年 間 水 揚 金 額 の 1 . 8 % ) で あ り , 11 月 11 日 以 降 の 水 揚 金 額 は 4 6 , 6 7 3 千 円 ( 年 間 水 揚 金 額 の 1 . 5 % ) に 過 ぎ な い ( 表 5 - 1 )。 し た が っ て , 漁 業 者の負担を少ない実現可能な方策として,これらの時期に陸側の落とし網(金庫 網)を撤去するなどの自主的漁業規制により河川遡上数を増加させることが考え られる。特に後期群については,採卵計画数が早期に達した場合などに,すべて の シ ロ ザ ケ を 自 然 遡 上 さ せ る こ と も 可 能 で あ る と 考 え ら れ る 。 高 橋 ( 2013) に よ る と , 11 月 下 旬 に 採 卵 し た 親 魚 の 子 の 回 帰 時 期 ( 河 川 捕 獲 時 期 ) は 11 月 中 旬 84 が ピ ー ク で あ る も の の 9 月 下 旬 か ら 12 月 上 旬 ま で の 広 範 囲 の 期 間 に わ た っ て い ると報告している。したがって,その川由来の遺伝的特性を持つ可能性が高く 11 月 下 旬 以 降 に 産 卵 す る 野 生 魚 の 増 加 は , 河 川 ご と の 野 生 魚 集 団 を 維 持 す る だ けでなく,漁業資源の増加につながる可能性もある。 5-3. 地域主体の資源管理の策定 現在,シロザケの増殖事業は道総研さけます・内水面水産試験場が総括管理を 行 っ て い る も の の ,野 生 魚 の 管 理 体 制 は 確 立 さ れ て い な い 。序 章 で 述 べ た と お り , 野生魚を増やすためには,それぞれの地域,河川に即したきめ細やかな管理体制 づくりが必要不可欠であるが,このような問題点を解決し,管理体制を確立する に あ た り ,「 里 海 」 づ く り の 手 法 ( 柳 1 9 9 8 ) を 導 入 す る こ と が 有 効 で あ る と 考 え ら れ る 。里 海 づ く り に お い て は ,沿 岸 域 の 住 民 だ け で な く ,流 域 の 都 市 や 農 村 の 住民等の幅広い参画・協働によるボトムアップ型の取組が重要であるとされてい る ( 西 田 2 0 1 4 )。 現在,北海道の各地域でシロザケの野生魚の復元へのボトムアップ型の取り組 み が 行 わ れ て い る 。 札 幌 市 内 を 流 れ る 豊 平 川 で は ,「 カ ン バ ッ ク ・ サ ー モ ン 運 動 」 に よ り シ ロ ザ ケ が 回 帰 す る よ う に な り ( 例 え ば , 岡 本 2 0 0 0 ), 北 見 地 区 で は , 北 見 管 内 さ け・ま す 増 殖 事 業 協 会 が 野 生 サ ケ の 調 査 事 業 を 行 っ て い る( 石 井 2 0 1 3 )。 また,石狩川上流域では,独立行政法人水産総合研究センターによる大規模な稚 魚 放 流 が 行 わ れ て お り ( 鈴 木 2 0 1 0 ), 放 流 し た 河 川 で は そ の 回 帰 が 確 認 さ れ て い る ( 有 賀 ら 2 0 1 2 )。 本 研 究 の 調 査 地 で あ る 根 室 地 域 の 標 津 町 で は 自 然 再 生 産 に よ る漁業資源づくりを目的として,標津漁業協同組合,標津さけ定置漁業部会,標 津町,根室管内さけ・ます増殖事業協会によって「標津町サケマス自然産卵調査 協 議 会 」が 発 足 し て い る 。地 域 主 体 の 方 策 を 実 行 す る た め に は , 「標津町サケマス 自然産卵調査協議会」のような地域に根ざした活動も有効であると考えられる。 実 際 ,本 協 議 会 の 設 立 に あ た り ,野 生 魚 に よ る 再 生 産 を「 コ ス ト の 低 い 増 殖 事 業 」 ( 森 田 ら 2013a)と 位 置 づ け ,漁 業 資 源 と 捉 え た こ と に よ り ,関 係 機 関 の 合 意 形 成 が 得 ら れ た 。さ ら に ,標 津 町 で は ,サ ケ の 水 族 館 で あ る「 標 津 サ ー モ ン 科 学 館 」 を設立し,たとえば,忠類川における産卵行動観察会など,サケに関わる様々な 教育活動を実践している。また日本で初めて河川におけるサーモンフィッシング 85 を 可 能 と し た 「 忠 類 川 サ ケ ・ マ ス 有 効 利 用 調 査 」 な ど , 帰 山 (1996)の い う 「 多 目 的資源」の活用を独自に行っている。このように当地域においてはシロザケを単 なる漁業資源という観点だけではなく,多目的資源の認識も他地域と比べ理解が 深いものと考えられる。 また,地域主体の管理体制による利点の一つに,シロザケが産卵する河川の管 理体制が挙げられる。河川法の適用される河川は,国が管理する一級河川,都道 府県が管理する二級河川に区分され,これら以外の河川は,市町村が管理する河 川法の規定が準用される準用河川と,河川法が適用されない普通河川に区分され る。なお,普通河川は河川法の適用・準用を受けないが市町村が必要と考えた 時,条例などで河川範囲を独自に指定し管理している。本研究で調査を実施した 河川の中では,忠類川,標津川およびその支流であるウラップ川は二級河川であ るが,その他の河川は普通河川に区分されている。したがって,準用河川および 普通河川に人工工作物などシロザケの遡上を妨げる障害物が存在した場合,その 河川がある市町村の裁量で改修が可能となる。加えて,本研究により確認された 産卵個体が集中している場所では,北米で行われているような自然石を河川に投 入 し て 産 卵 場 所 を 人 工 的 に 造 成 す る こ と も ( 例 え ば , House and Boehne 1985; K l a s s e n a n d N o r t h c o t e 1 9 8 8 ), そ の 河 川 が あ る 市 町 村 の 裁 量 で 可 能 と な る 。 標津町サケマス自然産卵調査協議会は,その活動の一環の中で地元漁業者が現 地調査へ積極的に参加している。これにより,自然再生産による漁業資源の育成 ばかりでなく,野生魚による遺伝子保全や河川環境への理解も深まっている。実 際,標津川支流シュラ川のふ化場上流近辺の産卵個体密度が高いことを,調査の 参加者である漁業者関係者が問題視したことにより,遡上の障害となっていたふ 化 場 上 流 に あ る 落 差 工 に ス リ ッ ト を 開 け る 工 事 を 標 津 町 の 予 算 で 2014 年 に 行 っ た。その結果,落差工の上流部でもシロザケの自然産卵魚が確認されている。さ らに,標津川では,これまで売却されていた余剰親魚をウライの上流部へ放流し て 追 跡 調 査 を 行 っ て い る ( 平 成 26 年 度 標 津 町 サ ケ マ ス 自 然 産 卵 調 査 協 議 会 役 員 会 報 告 資 料 )。 以上のことから,根室地域の河川におけるシロザケの野生魚を増加させるため には,地域主体の資源管理方針の策定も有効な手段の一つであると考えられる。 シロザケの野生魚による再生産を,漁業資源さらには多目的資源として捉えるこ 86 とにより,単にシロザケの野生資源,遺伝資源の復活ばかりでなく,現状の河川 生態系における諸問題を地域単位で解決する原動力となる可能性がある。しかし ながら,これら政策の実行に当たり,公的資金の投入を伴うことから,その効果 を的確に予測することが不可欠である。さらに,実行された政策についてはその 評価と説明責任があるため,高度な専門的知識が必要となるが,地域単位でその 効果を予測し,評価を行うことは困難である。さらに地域単位での漁業関係者の みの取り組みは,生態系全体への配慮よりもシロザケの漁業資源の造成に偏る可 能性もある。したがって,これらの問題を解決するため,第三者による外部専門 家組織の立ち上げ,大局的な視点から現状の評価および将来行う方策について客 観的な評価を得る必要があると考えられる。 87 表 5-1. 標津町内におけるサケ定置網によるシロザケの水揚金額. 年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 平均 標津町水揚 金額(千円) 2,940,715 3,958,646 3,798,016 4,383,361 2,830,084 2,280,612 2,292,345 2,382,817 3,421,362 2,906,842 3,119,480 9月1~5日 金額(千円) % 71,891 2.44 62,083 1.57 77,713 2.05 84,825 1.94 43,574 1.54 50,937 2.23 16,384 0.71 41,059 1.72 36,940 1.08 61,208 2.11 54,661 1.75 尾数 95,192 61,678 64,240 76,207 36,083 40,482 11,773 21,905 33,888 40,805 48,225 金額(千円) 17,264 24,039 43,541 35,447 101,612 15,217 11,177 32,174 19,421 13,292 31,318 88 11月11~15日 % 0.59 0.61 1.15 0.81 3.59 0.67 0.49 1.35 0.57 0.46 1.00 尾数 38,732 37,703 55,284 41,011 79,483 15,961 11,555 27,759 18,997 13,321 33,981 11月16~30日 金額(千円) % 尾数 14,357 0.49 42,729 18,458 0.47 34,437 16,655 0.44 24,076 22,644 0.52 28,318 36,983 1.31 33,987 7,824 0.34 9,654 8,201 0.36 9,768 15,435 0.65 13,996 8,046 0.24 7,923 5205 0.18 5,850 15,381 0.49 21,074 摘 要 1. 根 室 海 峡 周 辺 の 沿 岸 域 と 河 川 で は ,シ ロ ザ ケ と カ ラ フ ト マ ス の 中 間 的 な 外 部 形 態 を 有 す る 「 サ ケ マ ス 」 と 呼 ば れ る 個 体 が 採 集 さ れ る 。 そ こ で , DNA 分 析 に よ り 「 サ ケ マ ス 」 が 交 雑 個 体 で あ る か を 検 討 し た 。 両 種 の mtDNA と 核 DNA の 塩 基 配 列 か ら 特 定 種 の 増 幅 産 物 が 得 ら れ る よ う に プ ラ イ マ ー を 設 計 し , 種 特 異 PCR 分 析 に よ り 親 種 を 特 定 し た 。 DNA 分 析 の 結 果 , 漁 業 関 係 者 が 「 サ ケ マ ス 」 と 判 定 し た 11 個 体 中 , 6 個 体 が 交 雑 個 体 で あ り , 5 個体はシロザケと判定された。交雑個体の複数の外部形態は両種の混合 型を示した。 2. 交 雑 個 体 が 出 現 し 回 帰 し た 個 体 が 確 認 さ れ た 背 景 に は ,知 床 半 島 地 域 に お け る 人 工 ふ 化 放 流 事 業 お よ び ダ ム な ど の 人 為 的 な 要 素 に よ り ,両 種 の 産 卵 親 魚 が 局 所 的 に 集 中 し て い る 可 能 性 も 考 え ら れ た 。回 帰 し た 交 雑 個 体 が シ ロ ザ ケ お よ び カ ラ フ ト マ ス と 戻 し 交 配 す る 可 能 性 も あ る 。し た が っ て ,交 雑 個 体「 サ ケ マ ス 」は シ ロ ザ ケ 遺 伝 子 の 集 団 構 造 を 脅 か す 可 能 性 も あ る こ と か ら ,戻 し 交 配 で あ っ て も 検 出 可 能 な 手 法 を 確 立 し ,さ ら に 自 然 河 川 に おける継続的なモニタリングの必要性がある。 3. 野 外 で は 得 ら れ な い 詳 細 な 産 卵 行 動 を 観 察 す る こ と を 目 的 と し て ,標 津 町 の標津サーモン科学館の実験水槽にシロサケの産卵河川の環境を再現さ せ,その産卵行動,産卵回数と各産卵時の放卵数の関係を精査した。その 結 果 ,各 個 体 の 産 卵 回 数 は 3~5 回 で あ り ,1 回 目 の 産 卵 で は 孕 卵 数 の 36% を 放 卵 し , 4 回 目 以 降 は 放 卵 数 が 10%と 大 き く 減 少 し た 。 そ の た め , 自 然 河 川 に お け る 発 眼 率 ,浮 上 率 な ど の 調 査 を 行 う 際 は ,で き る 限 り 放 卵 数 の 多 い 1 ~ 3 回 目 の 産 室 の デ ー タ の 適 用 が 重 要 で あ る 。さ ら に ,ま た ,1 回 目 の産室の卵数と孕卵数には強い相関があったため,1 回目の産室の卵数を 正確に計測できれば,その個体の孕卵数を推計できると判断された。 89 4. 実 験 水 槽 に お い て ,河 床 か ら 湧 出 す る 水 が シ ロ ザ ケ の 産 卵 場 所 選 択 に 及 ぼ す 影 響 を 調 べ る た め ,河 川 水 と 温 度 差 が あ る 地 下 水 を 湧 出 し た 湧 水 区 ,水 槽 内 の 水 を 湧 出 し た 河 川 水 区 ,お よ び 湧 出 水 の な い 無 湧 出 水 区 の 3 条 件 下 で,正確な産卵場所を記録した。その結果,シロザケは湧水区と河川区に お い て も ,河 床 か ら 水 が 湧 出 し て い る 地 点 を 正 確 に 判 別 し て ,産 卵 場 所 と して選択していることが確認できた。 5. 実 験 水 槽 に お い て , 水 槽 投 入 か ら 初 回 の 産 卵 ま で の 時 間 を 湧 水 区 , 河 川 区 お よ び 無 湧 出 水 区 の 3 条 件 下 で 計 測 し た 。そ の 結 果 ,産 卵 ま で 要 し た 時 間 は 湧 水 区 と 河 川 区 の 間 に は 有 意 差 が 認 め ら れ な か っ た も の の ,河 床 か ら 湧 出 水 が 無 い 場 合 ,産 卵 床 選 択 か ら 産 卵 に 至 る ま で の 時 間 は ,1 , 2 7 0 ± 5 7 1 分 で あ り , 湧 出 水 が あ る 湧 水 区 ( 615±383 分 ) や 河 川 水 区 ( 736±517 分 ) に比べ,2 倍ほど長かった。そのため,標津川における後期群のシロザケ は産卵場所として河床から河川水および地下水由来の湧水が湧出する場 所も選択することが確認された。 6. 根 室 地 域 の シ ロ ザ ケ の 産 卵 状 況 を 明 ら か に す る た め , 5 水 系 に 28 定 点 を 設け,その生体,死骸および産卵床の数を記録した。5 つの水系における シ ロ ザ ケ の 産 卵 個 体 の 90%以 上 は , ふ 化 場 か ら 0.5 km 以 内 の 河 床 域 に 集 中 し て お り , 忠 類 川 で は ふ 化 場 か ら 4 km 離 れ た 場 所 に も 全 産 卵 個 体 の 4.2%が 見 ら れ た が , そ れ 以 外 は , ほ と ん ど 確 認 さ れ な か っ た 。 7. 根 室 地 域 の 各 河 川 に お け る 産 卵 床 内 の 生 残 率 を 推 定 す る た め , 発 眼 卵 の 掘り起し調査を行った。第 3 章の結果をもとに産卵床内の発眼卵の生残 率の推定は,各産卵床の 1 回目もしくは 2 回目の産室と推察される直上 部を付けたマークし,発眼時期に掘り起し調査を行った。各河川より採 集 し た 発 眼 卵 の 生 残 率 は , 2012 年 ( 44.9±43.8%, n=8 河 川 ) お よ び 90 2013 年 ( 48.3±37.7%, n=5 河 川 ) と も に 半 分 程 度 で あ り , 北 海 道 内 に お け る 既 報 の 結 果 ( 92~ 98%) よ り も 低 か っ た 。 そ の 要 因 と し て , 産 卵 し た産卵親魚の密度が高いことに加え産卵親魚の多くがふ化場魚由来であ る可能性が示唆された。 8. 根 室 地 域 各 河 川 に 自 然 再 生 産 に よ る 資 源 造 成 の 可 能 性 を 探 る た め , 産 卵 可能面積の推定を行った。根室地域 5 水系 8 河川のシロザケ産卵適地面 積 は , 約 160,000 m2 と 推 定 さ れ た 。 た だ し , こ れ ら の 産 卵 適 地 の 中 で 100 m2 あ た り の 産 卵 床 数 が 1 個 以 下 の 総 面 積 は 全 体 の 55.6%で あ り , そ の多くは利用されていなかった。この要因として,人工ふ化放流事業に よる河川での親魚捕獲と沿岸での漁獲圧が高いため,野生魚の再生産が 少ない状況にあると推定された。野生魚の再生産を確保するためには, 河川遡上数を増加させるとともに,ふ化場近辺で高い密度で産卵する個 体を分散させる方策が必要であると考えられた。 9. 根 室 海 区 は 他 海 区 と 比 べ シ ロ ザ ケ の 沿 岸 に お け る 漁 獲 率 の 推 定 値 は 97% と非常に高く,放流事業においても使用する親魚数に余裕がない状況で ある。そのため,野生魚による再生産を図るためばかりでなく,ふ化場 魚の人工ふ化放流事業における親魚確保のためにも,現状の沿岸漁獲圧 を何らかの形で緩和する方策が必要であると考えられた。さらに親魚を 捕獲している河川でウライの上流へ親魚が溯上するのは,ほぼ増水時の みに限られているため,自然再生産計画を立て,必要に応じた親魚をウ ライの上流へ再放流することが重要である。 10. 各水系のシロザケ集団における遺伝的特性を維持することは極めて重 要 で あ る が ,根 室 地 域 各 河 川 の シ ロ ザ ケ は ,千 歳 川 な ど の 系 統 も 移 植 さ れ ており,さらに,現在においても,根室 地域の多くの河川で採卵親魚が不 足 し て い る こ と か ら ,河 川 間 で の 移 植 が 行 わ れ て い る た め ,定 置 漁 業 お よ 91 び 放 流 事 業 が 終 了 す る 12 月 以 降 に 産 卵 す る 後 期 群 を 除 い て 河 川 ご と の 遺 伝的特性が失われている可能性が示唆された。 11. 各 河 川 由 来 の 野 生 魚 も し く は ,現 状 の 各 河 川 の 遡 上 個 体 を ベ ー ス に し て , 長 期 間 に わ た り 野 生 魚 の 再 生 産 の 維 持 を 図 る こ と に よ り ,そ れ ぞ れ の 河 川 の 特 性 に 合 っ た 野 生 魚 集 団 を 創 出 す べ き で あ る 。11 月 下 旬 に 採 卵 し た 親 魚 の 子 の 回 帰 時 期 ( 河 川 捕 獲 時 期 ) は 9 月 下 旬 か ら 12 月 上 旬 ま で の 広 範 囲 の 期 間 に わ た っ て い る た め , そ の 川 由 来 の 野 生 魚 の 可 能 性 が 高 い 11 月 下 旬 以 降 に 産 卵 す る 自 然 産 卵 魚 を 増 加 さ せ る こ と は ,河 川 ご と の 多 様 な 野 生 資 源 お よ び 遺 伝 資 源 を 維 持 す る だ け な く ,漁 業 資 源 の 増 加 に つ な が る 可 能 性もある。 12. 根 室 海 区 の シ ロ ザ ケ 漁 の 期 間 は 9 月 1 日 ~ 11 月 3 0 日 で あ る が ,2 0 0 4 ~ 2013 年 ま で の 標 津 町 内 の 9 月 1~ 5 日 間 の シ ロ ザ ケ の 水 揚 金 額 は 年 間 水 揚 金 額 の 1 . 8 % で あ り , 11 月 11 日 以 降 の 水 揚 金 額 は 年 間 水 揚 金 額 の 1 . 5 % に 過ぎない。そのため,漁業者の負担を少ない実現可能な方策として,水揚 金 額 の 少 な い 9 月 上 旬 お よ び 11 月 中 旬 以 降 な ど の 期 間 に , 河 川 遡 上 促 進 の た め の 自 主 的 漁 獲 規 制 な ど が 考 え ら れ る 。そ の 期 間 の 沿 岸 漁 獲 を 大 幅 に 低下させることにより,河川遡上数を増加させることが考えられた。 13. シロザケが産卵する小規模河川は市町村が管理もしくは管理可能な準 用 河 川 と 一 般 河 川 が 多 く ,こ う し た 小 河 川 に 遡 上 す る シ ロ ザ ケ の 産 卵 環 境 の保全と維持は,野生魚の再生産を促す可能性を秘めている。例えば,標 津 町 が 独 自 予 算 で 実 施 し て い る 小 河 川 の 落 差 工 の 改 修 な ど は ,地 域 行 政 が できる人工ふ化放流魚と野生魚が共存可能な資源保全と持続的利用に資 するものと評価できる。 92 14. 野生魚を増やすためにはそれぞれの地域,河川に根ざした,きめ細や かな管理体制づくりが必要であると考えられる。そのためには,地域主 体の資源管理方針の策定が有効であると考えられた。野生魚を漁業資源 として捉えることにより,現状の河川生態系における諸問題を地域単位 で解決する原動力となる可能性がある。 93 謝 辞 本研究を取りまとめるにあたり,懇切なるご指導とご校閲を賜った北海道大 学大学院水産科学研究院海洋生物資源科学部門資源生物学分野の桜井泰憲特任 教 授 な ら び 綿 貫 豊 教 授 ,同 部 門 海 洋 生 物 資 源 保 全 管 理 学 分 野 の 工 藤 秀 明 准 教 授 , 中央水産研究所経営経済研究センターの牧野光琢博士,そして北海道大学国際 本部の帰山雅秀特任教授に心から感謝申し上げます。 本研究を行う上で,数々のご協力を頂いた北海道大学大学院水産科学研究院 日 本 学 術 振 興 会 特 別 研 究 員( PD)の 越 野 陽 介 博 士 に 感 謝 い た し ま す 。 本 研 究 の 実施にあたり,標津町サケマス自然産卵調査協議会のメンバーである標津町役 場農林水産課の熊谷純郎参事,山崎忠仁係長,標津漁業協同組合の織田美登志 専務,西山易男課長,標津サケ定置部会の中村憲二部会長,根室管内さけ・ま す増殖事業協会の吉川正基専務,蠣崎宏参事,北海道区水産研究所さけます資 源部伊茶仁さけます事業所の小野郁夫事業所長をはじめとする関係団体の職員 の皆様にはサンプリングに対して多大なご協力を賜りました。また,中央水産 研 究 所 の 柳 本 卓 主 任 研 究 員 に は DNA 解 析 の 解 析 を 行 っ て い た だ き , 釧 路 市 立 博物館の野本和宏博士にはフィールド調査の手法をご指導いただきました。水 中写真家の内山りゅう氏には,シロザケとカラフトマスの交雑の瞬間を撮影し た貴重な写真の使用をご許可いただきました。日本大学生物資源科学部海洋生 物資源科学科の牧口祐也助教,豊平川さけ科学館の佐藤信洋氏には産卵床調査 に関してご助言を頂いた。心から感謝申し上げます。 最後になりましたが,終始研究にご協力と激励をいただいた標津サーモン科 学 館 の 西 尾 朋 高 副 館 長 ,福 地 久 美 子 氏 ,大 畠 鐘 子 氏 ,大 久 保 誠 氏 ,村 上 眞 澄 氏 , 小野寺小百合氏,菊池勝祀氏をはじめとする職員の皆様に心から感謝いたしま す。 94 引 用 文 献 A b e , S . , K o j i m a , H . , N a n c y, D . 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